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インドネシアの投資環境 132 物流・インフラ 第20章 この章ではインドネシアの物流インフラ(港湾、空港、道路、鉄道)及び電力、水道、ガス、 通信インフラの現状を紹介する。 主要な国際空港と港湾の位置 1. 図表 20-1 はインドネシアの主要な国際空港と港湾の位置を表している。以下、それぞれについ ての特徴と利用状況について解説する。 図表 20-1 インドネシアの主要な国際空港と港湾 (出所)各種資料より作成 港湾 2. インドネシアは 1 7,500 あまりの島から構成される海洋国家であるため、国際輸送のみなら ず国内輸送においても海運が重要な役割を果たしている。 インドネシアの港湾は PT.Pelabuhan IndonesiaPELINDOIIV という 4 つの国営港湾会社に よって管理・運営されている。 1998 4 月に合意された IMF との経済構造改革協定により、ター ミナル整備、運営の一部について民間企業との合弁会社を設立する形で民営化された。港湾運営 合弁会社の例は図表 20-2 を参照のこと。 A:スカルノ・ハッタ国際空港 ①タンジュンプリオク港 D:クアラナム国際空港 C:ジュアンダ国際空港 B:デンパサール国際空港 ハサヌディン国際空港 タンジュンウマス港 ボジョネガラ港 ④スカルノ・ハッタ港 ③ベラワン港 ②タンジュンペラク港 :空港 :港湾

7 '5‚¤ンドネシアの港湾はPT.Pelabuhan Indonesia(PELINDO)I~IV という4 つの国営港湾会社に よって管理・運営されている。1998 年4 月に合意されたIMF

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インドネシアの投資環境

132

物流・インフラ 第20章

この章ではインドネシアの物流インフラ(港湾、空港、道路、鉄道)及び電力、水道、ガス、

通信インフラの現状を紹介する。

主要な国際空港と港湾の位置 1.

図表 20-1 はインドネシアの主要な国際空港と港湾の位置を表している。以下、それぞれについ

ての特徴と利用状況について解説する。

図表 20-1 インドネシアの主要な国際空港と港湾

(出所)各種資料より作成

港湾 2.

インドネシアは 1 万 7,500 あまりの島から構成される海洋国家であるため、国際輸送のみなら

ず国内輸送においても海運が重要な役割を果たしている。

インドネシアの港湾は PT.Pelabuhan Indonesia(PELINDO)I~IV という 4 つの国営港湾会社に

よって管理・運営されている。1998 年 4 月に合意された IMF との経済構造改革協定により、ター

ミナル整備、運営の一部について民間企業との合弁会社を設立する形で民営化された。港湾運営

合弁会社の例は図表 20-2 を参照のこと。

A:スカルノ・ハッタ国際空港

①タンジュンプリオク港

D:クアラナム国際空港

C:ジュアンダ国際空港

B:デンパサール国際空港

ハサヌディン国際空港

タンジュンウマス港

ボジョネガラ港

④スカルノ・ハッタ港

③ベラワン港

②タンジュンペラク港

:空港:港湾

第 20 章 物流・インフラ

133

図表 20-2 港湾運営合弁会社の例

(出所)各種資料より作成

現在、インドネシアには 725 の公共港湾があり、そのうち 26 港は国際商業港湾である。外航フ

ルコンテナ船(本船クレーンを装備していない船舶)が入港可能な設備を有している港湾は 14 港

である。このうち最大の港湾はジャカルタ市内のタンジュンプリオク港(図表 20-1①)であり、

同国最多の 41 のクレーン設備を有している。近年、同国全体の取扱貨物量が増加傾向にあるなか、

港湾の絶対的な容量不足のために港湾混雑による物流停滞が深刻な問題となっている。図表 20-3

はインドネシアの主要港湾の貨物取扱量の推移を示しているが、港湾インフラの整備不足による

取扱可能量の限界により 2000年代を通じて 1億トンを上限に貨物取扱量が横ばいとなっているこ

とが分かる。

図表 20-3 主要港湾の貨物取扱量推移

(注) 主要港湾は、ベラワン、タンジュンプリオク、タンジュンペラク、スカルノ・ハッタの 4 港 (出所)国家統計局資料より作成

タンジュンプリオク港(図表 20-1①)は、ジャカルタ特別州に位置し、インドネシア全体の国

際物流のうち約 5 割の取扱シェアを誇るインドネシア最大の国際商業港湾である。

設立年合弁会社名

Jakarta International Container Terminal

New Priok Container Terminal One

(タンジュンプリオク港) HutchisonPortHoldings(香港) TPK-Koja(Koja Container Terminal) 2000年

PELINDOⅢTerminal Petikemas Surabaya

1999年

2014年

2000年(タンジュンペラク港)

合弁先(国・地域)

HutchisonPortHoldings(香港)

三井物産、PSA International

(シンガポール)、日本郵船

P&O社(英国)

国営会社(運営港)

PELINDOⅡ

22 2429 30

3641 42

5043

3323

31 29 29 32 34 34 34 34 31 34 3641 39 39 36

3335

3739

41

42 43

47

37

37

37

4756 61

6163

5664 62

6164 61

6360 57

53

0

20

40

60

80

100

120

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万トン)

国際貨物 国内貨物

インドネシアの投資環境

134

2015 年のコンテナ貨物取扱量は約 520 万 TEU(前年比 9%減)であり、取扱量では世界で 27 番

目である(図表 20-5)。ASEAN 諸国の主要国の港のコンテナ貨物取扱量をみると、シンガポール

が 3,092 万 TEU(世界 2 位)であり、マレーシアのポートクラン港が 1,189 万 TEU(同 12 位)、

タンジュンペラパス港が 910 万 TEU(同 17 位)であり、大きく水を開けられていることが分か

る。また、タイのレムチャバン港の取扱量も 682 万 TEU(同 22 位)であり、既に同港の取扱量

を越えており、ベトナムのホーチミン港の 531 万 TEU(同 26 位)とはほぼ同水準の位置づけと

なっている。

タンジュンプリオク港は PELINDO II(別名:Indonesia Port Corporation, IPC)が管理しており、

ターミナルは複数の会社によって運営されている。コンテナ貨物取扱量が限界に達しつつあるこ

とを受け、現在、2023 年の完工を目標としターミナル拡張計画(Newpriok 計画)が進められてお

り、2016 年 8 月には年間 150 万 TEU の取扱が可能な新ターミナルが操業開始している。同ター

ミナルは全長 850m、喫水 16m と最新鋭の大型船の寄港が可能であり、運営会社には三井物産と

日本郵船が出資している。

しかし、このような取扱能力の増強にも拘らず、①2020 年以降は再び容量不足が予想されてい

ること、②ジャカルタ首都圏の道路が慢性的な渋滞となっており、自動車産業などの日系企業が

多く集積する首都圏東部の西ジャワ州カラワン県から首都中心部に立地するタンジュンプリオク

港のアクセスに引き続き相応の時間を要することから、インドネシア政府はジャカルタの東部近

郊に新港を建設する計画である。当初は西ジャワ州カラワン県のチラマヤが想定されていたが、

2015 年 4 月に沖合の石油ガス施設と船舶航行の安全性に懸念がある等の理由で白紙化され、その

後同州スバン県パティンバンに決定した(図表 20-4)。パティンバン港の第 1 期から第 3 期工事の

総費用は、約 43 兆ルピア(約 3,600 億円)が見込まれており、建設費用には日本国政府による円

借款も活用される。2016 年 11 月時点では、建設着工が 2017 年下期から 2018 年初頭に延期され

る模様との現地報道があり、新港の稼働には時間を要するものと思われるが、これによりジャカ

ルタ首都圏東部の工業団地群に立地する日系企業の利便性は高まるものと期待される。

図表 20-4 パティンバン港の建設予定地

(出所)Google

第 20 章 物流・インフラ

135

タンジュンペラク港(図表 20-1②)は、東ジャワ州都のスラバヤに位置している。同港はスラ

バヤ大都市圏と東部、西部インドネシア、近隣アジア諸国を結ぶ物流拠点である。インドネシア

第2の港湾であり、2015年のコンテナ貨物取扱量は約312万TEUと世界46位であった(図表20-6)。

スラバヤコンテナターミナル会社(PT. Terminal Petikemas Surabaya)が管理する国際船埠頭は喫水

13m と十分な水深を有する。港湾の管理は PELINDO III が行い、コンテナターミナルは 24 時間

営業している。

ベラワン港(図表 20-1③)は、北スマトラ州メダンに位置している。マラッカ海峡の国際航路

に面しているが、インフラ施設不備のため取扱量に制限があり好立地を活用しきれず、また、水

深は 10m と浅く、大型船の寄港は難しい。港湾の管理会社は PELINDO I が行い、コンテナター

ミナルは 24時間営業している。コンテナターミナルの取扱能力が低く年間 130万TEU(図表 20-7)

にとどまることから、PELINDO I は拡張工事に着手しており、これにより年間 200 万 TEU の取扱

が可能となる見込みである。

スカルノ・ハッタ港(図表 20-1④)は、南スラウェシ州マカッサルに位置する。同港の荷揚げ量

は増加を続けてきたが、近年は減少傾向にある(図表 20-8)。港湾の管理は PELINDO IV が行い、

コンテナターミナルは 24 時間営業している。2014 年には自動車専用ターミナルが設置され、2016

年には港湾業務管理システムが他港に先駆けて導入されるなど、インフラ整備が進んでいる。

図表 20-5 タンジュンプリオク港の貨物積荷量・荷揚量の推移

(出所)国家統計局資料より作成

図表 20-6 タンジュンペラク港の貨物積荷量・荷揚量の推移

(出所)国家統計局資料より作成

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万トン)タンジュンプリオク港

積荷量 荷揚量

0

5

10

15

20

25

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万トン)タンジュンペラク港

積荷量 荷揚量

インドネシアの投資環境

136

図表 20-7 ベラワン港の貨物積荷量・荷揚量の推移

(出所)国家統計局資料より作成

図表 20-8 スカルノ・ハッタ港の貨物積荷量・荷揚量の推移

(出所)国家統計局資料より作成

空港 3.

インドネシアには、27 の国際空港、269 の国内空港がある(小規模飛行場を含む)。

利用者数はリーマン・ショック後の 2009 年に落ち込んだ後大きく伸びたものの、2013 年以降

は 1 億人前後と横ばい傾向にある(図表 20-9)。貨物輸送量についても同様であり、2015 年の輸

送量は 7.5 億トン kmであり、近年、8 億トン kmを前後に横ばいで推移している(図表 20-10)。

インドネシアの主要空港は、スカルノ・ハッタ国際空港(ジャカルタ、国内線旅客数 3,995 万人、

国際線旅客数 1,233 万人)(図表 20‐1A)、ングラ・ライ国際空港(デンパサール、同 840 万人、

854 万人)(図表 20‐1B)、ジュアンダ国際空港(スラバヤ、同 1,457 万人、169 万人)(図表 20‐

1C)、クアラナム国際空港(メダン、同 625 万人、161 万人)(図表 20‐1D)の 4 空港である(利

用者数は図表 20-11 参照)。

0

2

4

6

8

10

12

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万トン)ベラワン港

積荷量 荷揚量

0

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3

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00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万トン)スカルノ・ハッタ港

積荷量 荷揚量

第 20 章 物流・インフラ

137

図表 20-9 空港利用者数の推移

(出所)国家統計局資料より作成

図表 20-10 輸送貨物量の推移

(出所)世界銀行資料より作成

4 5 6 7 8 9 10 10 8 8 9 9 9 9 11 11 11 13 13 15 17 19 21 23 24 2417 1718 20

2325 27 26

15 18 18 2124

36

4549

5659

42

48

58

66

77

81 77 76

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120

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万人)

国際線 国内線

409 408 405 424 434 440469 485

395

277

666

754

880

768836

747

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900

1,000

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万トンkm)

インドネシアの投資環境

138

図表 20-11 主要空港の利用者数(2015 年)

(注) 乗換旅客は含まない数値 (出所)国家統計局資料より作成

スカルノ・ハッタ国際空港(図表 20‐1A)は、国際線と近距離路線を除く国内線が発着するイ

ンドネシア最大規模の空港であり、ジャカルタの都市部から 20km 離れた場所に位置している。

1985 年に現在の第 1 ターミナルが開港し、1992 年には第 2 ターミナルが、2016 年に第 3 ターミ

ナルが供用開始した。同空港には 2 本の滑走路があり、24 時間営業している。空港運営は PT

Angkasa Pura II が行っている。

同空港の 2015 年の利用旅客者数は 5,405 万人と、世界 18 位であった。これは、シンガポール

(5,545 万人:16 位)、バンコク(5,290 万人:19 位)に並び、ASEAN 最大級の旅客数を誇る。

ングラ・ライ国際空港(図表 20‐1B)は南バリの大規模なリゾート地の近くに位置し、24 時間

営業である。1930 年開港し、1966 年より国際線が就航している。インドネシアでは 2 番目に利用

旅客者数が多い空港であり、1990 年より段階的に拡張、整備が行われ、2013 年に新国際線ターミ

ナルが開業した。2025 年までに年間 2,460 万人の利用を目標としている。

ジュアンダ国際空港(図表 20‐1C)は、スラバヤ市から南に 20km ほどの場所に位置し、PT

Angkasa Pura I が運営している。1964 年に海軍航空基地として発足、1985 年に民間航空機の離発

着が始まった。1990 年より国際線が就航し、2014 年に第 2 ターミナルが供用開始した。営業時間

は 6 時~24 時。利用旅客者数ではインドネシア国内 3 位の空港。

クアラナム国際空港(図表 20‐1D)は北スマトラ州の最大都市であるメダンから 39kmの場所

に立地しており、インドネシア西部のハブ空港としての機能を持つ。空港運営は PT Angkasa Pura II

である。従来、メダンへの航空便はポロニア国際空港(現在は空軍基地)に発着していたが、旅

客数の急増に対応するため、2013 年に開設されたクアラナム国際空港に全ての民間路線が移管さ

れた。滑走路は 1 本であり、営業時間は 24 時間である。

道路 4.

概要 (1)

インドネシアの道路総延長は、約 52 万 km(2015 年)。2007 年から 2009 年にかけて約 8 万 km

伸びた後、年 1 万 km 前後のペースで整備が進んでいる(図表 20-12)。2015 年時点の道路の内訳

は、国道が約 4.6 万 km、州道 5.4 万 km、県道 42 万 km となっている。

近年、道路の総延長距離は伸びているものの、舗装率は 2000 年前後から横ばいとなっている。

都市名

ジャカルタスカルノ・ハッタ

空港名

クアラナム

1,233

メダン161

854

625国内線

旅客数(万人)

国内線

国内線

3,995

1,457

169

840

国際線

国内線

国際線

国際線

D

B

C

A

スラバヤ

デンパサール

ジュアンダ

ングラ・ライ

国際線

第 20 章 物流・インフラ

139

2015 年の約 52 万 km の内、アスファルト舗装総延長は約 29 万 km であり、道路舗装の余地は大

きい。

高速道路については日本の道路公団にあたる国営の PT. Jasa Marga(PERSERO)が道路開発・

運営の殆ど実施している。尚、道路の整備・運営は 1985 年から民間の参入が認められ、BOT(Build,

Operate and Transfer)方式による道路建設も行われている。2014 年には NEXCO 西日本と日本高速

道路インターナショナル(JEXWAY)が地場民間企業との協業により高速道路 PPP 事業に参入し

ている。

図表 20-12 道路距離と舗装率の推移

(出所)国家統計局資料より作成

首都ジャカルタでは交通渋滞が慢性化しており、渋滞が複数の交差点を超えて伸びることで広

範囲の交通が麻痺する「グリッドロック(金縛り)」が生じている。インドネシア政府はインフラ

整備に尽力するも、自動車や二輪車の台数増加を受け、少なくとも 2025 年までは劇的な改善に至

らないという見方も報じられている。PT. Jasa Marga 管理下の高速道路の交通量は増加の一途をた

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

70%

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100

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500

600

70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14

(1,000㎞)

道路総延長 舗装率(右軸)

市街を走る乗合タクシー

専用レーンを走るトランスジャカルタ

市街を走る乗合バス

インドネシアの投資環境

140

どっており、2015 年は前年比 5%の増加となった(図表 20-13、20-14)。

渋滞緩和に向けた対策として、ジャカルタ特別州では 2004 年から専用バスレーンを走行する新

型バス(トランスジャカルタ、写真参照)の運行を開始した。第 12 路線まで開業しており、バス

レーンの総延長は 208kmと世界最長級のサービスとなっている。

図表 20-13 PT. Jasa Marga 管理下の高速道路交通量の推移

(出所)PT. Jasa Marga アニュアルレポートより作成

図表 20-14 PT. Jasa Marga 管理下の高速道路交通量

(出所)PT. Jasa Marga アニュアルレポートより作成

1.09

1.20 1.26 1.32

1.38

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

11 12 13 14 15

(10億台)

+5%

(単位:100万台)

Semarang-Solo 18.8

Bogor Outer Ring Road/BORR 15.3

127.4

159.4

43.7

24.7

60.0

6.3

89.6

50.4

24.8

23.0

13.0

2.8

1,379.6

Ulujami-Pondok Aren

Kebon Jeruk-Ciledug (JORR W2 Utara)

Gempol-Pandaan

合計

Surabaya-Gempol

Semarang

Belmera

Palikanci

Surabaya-Mojokerto

Nusa Dua-Ngurah Rai-Benoa 16.5

2015年

204.2

215.0

76.2

208.5

Padaleunyi

Cipularang

Jakarta-Tangerang

Jakarta Outer Ring Road

路線名

Jagorawi

Jakarta-Cikampek

Prof. Dr. Ir. Sedyatmo

Dalam Kota Jakarta-JIRR

第 20 章 物流・インフラ

141

ジョコ政権による道路開発計画 (2)

2014 年 10 月に大統領に就任したジョコ大統領は、地域格差是正を目的とした地方開発を最重

要課題の一つに掲げており、道路開発も積極化している。就任直後の 2015 年 1 月に公表された「国

家開発計画 2015-2019」によると、5 年間で道路を 2,650km、高速道路を 1,000km 延長し、既存道

路のうち 46,770kmに対してもメンテナンスを行う方針である(ジョコ大統領のインフラ政策の全

体的な概要については、第 23 章 3.「地方開発の動き」参照)。

高速道路については、国家戦略プロジェクトの推進に関する「大統領令 2016 年第 3 号」におい

て、ジャワ島内外の 47 区間が国家戦略プロジェクトに指定された。うち 8 区間を含むスマトラ島

縦断高速道路(トランス・スマトラ)や、6 区間を含むジャカルタ内環状道路などの大規模なプ

ロジェクトに加えて、地方部における港湾と工業団地を結ぶ高速道路も既に建設が開始、一部区

間で既に開通している。尚、2017 年 6 月に施行された大統領令 2017 年第 58 号では、新たに 13

区間が追加されている。

アジアハイウェイ (3)

アジア諸国の幹線道路網を有機的に結び付ける国際幹線道路網の「アジアハイウェイ」につい

ては、インドネシアでは路線番号 AH2 と AH25 の 2 路線、総延長にして 4,115kmが該当する(図

表 20-15)。

ジャワ島を横断する AH2 は、バリ島のデンパサールから西に向けて、スラバヤ、スラカルタ、

セマラン、チレボン、チカンペック、ジャカルタ、メラクと進む。尚、チカンペックからはジャ

カルタ方面の他にバンドン方面にも延びており、これらの総延長距離は 1,545kmに及んでいる。

メラクからフェリーでスマトラ島のバカフニに渡り、スマトラ島を南北に縦断する AH25 では、

バカフニから北に向かってパレンバン、ジャンビ、ペカンバル、ドゥマイ、メダン、バンダアチ

ェまで続く。AH25 の総延長距離は 2,570kmに達する。

双方ともに、工業中心地連絡、農業集積地連絡・主要港湾連絡のため等により選定されたルー

トである。片側 2 車線以上かつ一定の規格を満たす区間(Class 1 以上)は約 1,000kmで、全体の

およそ 4 分の 1 を占める。

尚、ジャワ島とバリ島間(バリ海峡:最狭部 2.5km)に架橋する計画は長年議論されているが、

バリ島住民の反対から実現していない。また、ジャワ島とスマトラ島間(スンダ海峡:最狭部 24km)

への架橋計画も議論が進められてきたが、2014 年に就任したジョコ大統領は他のインフラ整備を

優先する方針を定め、以後、同計画は棚上げされている。

インドネシアの投資環境

142

図表 20-15 インドネシアのアジアハイウェイ路線網

(出所)国土交通省ホームページ

鉄道 5.

概要 (1)

インドネシアでは 1867 年に最初の鉄道が開業し 1941 年にはほぼ全ての路線で軌間を 1,067mm

(日本と同じ狭軌)に統一した。営業主体は国有企業の PT. Kereta Api であり、同社の鉄道総延長

は 4,816km(2014 年)である。その約 7 割はジャワ島、残り 3 割がスマトラ島に配備されている。

複線化されている区画は、ジャワ島ジャボデタベック圏4の大部分と、スラバヤ近郊の一部の地域

に限られる。スマトラ島の鉄道は、そのほとんどが地域物資の輸送を主体とした貨物鉄道である。

ジャワ島のジャボデタベック圏と呼ばれる都市圏には KA コミューター・ジャボデタベックと呼

ばれる通勤電車網(図表 20-18)があり、PT. Kereta Api の子会社によって管理、運営されている。

同社管理の路線総延長は 185kmで、電化されている。

インドネシアの年間鉄道旅客数は延べ 3.3 億人(2015 年)である(図表 20-16)。路線の新規開

通もあり、前年比 17%の大幅な伸びを記録した。ジャワ島の鉄道による旅客輸送および貨物輸送

は、輸送効率の向上および環境悪化への対策として注目を集めている(図表 20-17)。

4 ジャボデタベック圏:ジャカルタと、西ジャワ州のブカシ、ボゴール、デポック、バンテン州のタン

ゲランの 4 つの都市、西ジャワ州のブカシ地区、ボゴール地区、バンテン州のタンゲラン地区の 3

つの地区から構成されている。

第 20 章 物流・インフラ

143

図表 20-16 鉄道利用者数の推移

(出所)Head Office of State Owned Railways Company より作成

図表 20-17 鉄道輸送貨物量の推移

(出所)Head Office of State Owned Railways Company より作成

121.1 134.1

158.5

208.5

257.5

72.9 63.7

53.5

64.1

63.1

5.3 4.4

4.0

4.9

5.3

0

50

100

150

200

250

300

350

2011 2012 2013 2014 2015

(100万人)

スマトラ島

ジャボデタベック以外(ジャワ島)

ジャボデタベック

スマトラ島

ジャワ島

4.6 6.5

8.3 11.2 10.1

15.9

17.1

18.5

22.2 22.0

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2011 2012 2013 2014 2015

(100万トン)

ジャワ島 スマトラ島

インドネシアの投資環境

144

図表 20-18 KRL ジャボデタベックの路線図

(出所)PT. KAI Commuter Jabodetabek 社ウェブサイトより作成

ジャカルタ都市交通 (2)

ジャカルタ MRT とは、インドネシア初の地下鉄を含む本格的な都市鉄道である。交通混雑が深

刻なジャカルタ首都圏において、都市高速鉄道システムを導入することで旅客輸送力の増強を図

り、同首都圏の交通渋滞の改善を通じてジャワ島の投資環境が改善されると期待される。南北線

第 1 期の建設は 2013 年 10 月に起工され、2016 年 10 月時点の進捗は 56%と報じられている。運

行開始予定は 2019 年である。事業全体では南北線と東西線の全長約 87kmの路線が計画されてい

る。

第 1 期事業では、南北路線のうち南ジャカルタ・ルバックブルスから中央ジャカルタ(ホテル・

インドネシア・ケンピンスキー前ロータリー)の区間に高架 7 駅、地下 6 駅を建設する。路線は

ルバックブルス駅からシシンガマンガラジャ通りの 9.8km が高架区間、スディルマン、タムリン

通りの 5.9kmが地下区間となる。第 1期事業では既に円借款で約 480億円の供与が決定している。

選定された日本企業または日本とインドネシアの合弁企業が、資材の 30%以上について日本原産

ジャカルタ コタデュリ

ジャティネガラ

タンゲラン

カンプン バンダン

タンジュンプリオク

ブカシ

ボゴール

マンガライ

ラジャワリ

タナ アバン

ボゴール - ジャカルタ コタ

ボゴール - ジャティネガラ

ブカシ - ジャカルタ コタ

マジャ - タナ アバン

タンゲラン - デュリ

タンジュンプリオク -

ジャカルタ コタ

非停車駅

マジャ

ナンボ

第 20 章 物流・インフラ

145

品を使用することを条件付けられている。

第 2 期事業は、南北路線のホテル・インドネシア・ケンピンスキー前ロータリーからカンプン

バンダン(全長 8.1 ㎞)の区間が予定されているが、現在、北ジャカルタの東アンチョールまで

の延長が決定している。延長区間の事業化調査が未実施のため、同調査と詳細設計完了後に総工

費が算出される見込みである。第 2 期事業は 2019 年初頭の着工が予定されている。

東西線は、バンテン州タンゲラン県バララジャからジャカルタを経由し西ジャワ州ブカシ県チ

カランを結ぶ予定であり、全長約 80km に達する一大路線となる。2017 年中に、第 1 期区間の基

本設計にかかる入札が見込まれている。工事は 2~3 期に分割して実施する予定であり、MRT を

建設・運営する州営公社マス・ラピッド・トランシット(MRT)ジャカルタは、2024 年の第 1 期

区間稼働、2027 年の全線開通を目指している。

一方、ジャカルタ LRT は、ジャカルタ首都圏(ジャカルタ特別州、西ジャワ州ボゴール、デポ

ック、ブカシ)を結ぶ鉄道で、国営建設会社であるアディ・カルヤ社が建設中である。第 1 期事

業では①ジャカルタ・チャワン~西ジャワ州チブブール、②チャワン~中央ジャカルタ・ドゥク

アタス、③チャワン~東ブカシ、の 3 区間が対象となり、2019 年に一部区間で運行が開始する予

定である。国鉄クレタ・アピ・インドネシア社(KAI)が 50 年間の運行権を獲得している。第 2

期工事の建設事業者は未定であるが、2018 年以降に着工の見通しである。

電力 6.

電力概要 (1)

インドネシアでは、国営のインドネシア電力公社(Perusahaan Listrik Negara:PLN)が発電と送

電事業を行っている。うち、送電事業は PLN が独占しているが、発電事業に関しては民間事業者

(IPP: Independent Power Producer)の参入が認められている。PLN の発表データでは、2015 年の

総発電力 2,340 億 kWh のうち、IPP 等の寄与分は 774 億 kWh で、全体の 3 分の 1 を占める。

インドネシアの電力生産のエネルギー源別割合(図表 20-19)を見ると、国内で産出される石炭

と天然ガスへの依存度が高いことが分かる。今後、期待される電源は火山国の特性を活かした地

熱発電である。インドネシアは米国や日本に並び世界最大級の地熱資源を有している。地熱発電

は日本企業にとっても有望な分野であり、単体としては世界最大級(330MW)のサルーラ地熱発

電所プロジェクトが、伊藤忠商事、九州電力、国際石油開発帝石(関連企業)の主導で進められ

ている。

「国家開発計画 2015-2019」の中でも、約 35 ギガワット(GW)の発電容量の増強や 2014 年に

81.5%だった電化率の 96.6%への引き上げが、2019 年までの目標として掲げられている。約 35 ギ

ガワットの発電容量の増強の内訳は、石炭 56%、ガス 38%が主であり、建設は国営 PLN が約 10

ギガワット、民間セクター(IPP)が約 25 ギガワットを担うことが想定されている。

インドネシアの投資環境

146

図表 20-19 インドネシアの発電エネルギー源の内訳(2015 年)

(出所)エネルギー・鉱業省資料より作成

需給状況 (2)

インドネシアでは近年の人口の増加と経済規模の拡大に伴い、電力需要が増加している。金融

危機の影響があった 2009 年こそ需要の伸びが若干鈍ったものの、景気が回復した 2012 年の需要

は前年比で 10%増加するなど、実質経済成長率を上回る伸びとなる年も少なくない。通年での供

給量は消費量を 1 割以上超過し続けているものの、乾季における水力発電能力の低下や定期点検

での発電所停止などが重なると一時的に需要過多となって停電が起こる可能性もある(図表

20-20)。

こうした状況を背景に、国営 PLN との間で優先供給契約を結んでいる工業団地もある。これは

電力料金をやや高めに設定する代わり、電力需給逼迫時に優先供給が行われる契約である。現地

ヒアリングでは、現状、契約を締結している工業団地ではジャカルタ市内で電力不足が発生した

際でも操業には支障が生じておらず、電力の優先供給の恩恵は大きいとのことである。

近年の電力消費の分野別内訳では、工業分野での消費割合が減少しつつあり、商業と家庭分野

での電力消費が徐々に重みを増している。2015 年の総消費に対する割合は工業が 32%、商業が

18%、公共部門 4%、家庭部門 44%となっている(図表 20-21)。

発電エネルギー種別発電電力量(100万kWh)

構成比(%)

石炭 90,275 38.6

天然ガス 46,039 19.7

水力 10,004 4.3

石油 5,783 2.5

地熱 4,392 1.9

太陽光・風力・バイオディーゼル 138 0.1

IPP購入等 77,351 33.1

総計 233,982 100.0

第 20 章 物流・インフラ

147

図表 20-20 インドネシアの電力需給の推移

(出所)エネルギー・鉱業省資料より作成

図表 20-21 インドネシアの電力消費の分野別割合(2015 年)

(出所)エネルギー・鉱業省資料より作成

工業団地での最近の電力事情の実態 (3)

ジャカルタ東部の工業団地周辺では、現地の民間電力業者の存在や PLN との優先供給契約の締

結ににより、最近は特に深刻な電力不足は報告されていない。但し、時折電圧が不安定になり、

電圧の変動幅によっては機械が停止する可能性も残ると聞く。このため、電源の安定化装置や非

常用電源装置を導入している企業もある。

電力料金価格は、工業団地内であっても企業と電力会社との個別契約によって決定され、また、

業種、契約容量、利用時間帯等によっても価格が異なる点、留意を要する。現状、ジャカルタ東

部やバタム島の工業団地ににおける一般的な電力料金は概ね 1,000 ルピア/kWh 程度である。

0

50

100

150

200

250

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

(100万Wh)

供給電力 消費電力

電力消費部門消費電力量(100万kWh)

構成比(%)

工業 64,079 31.6

商業 36,978 18.2

公共部門 7,165 3.5

家庭 88,682 43.7

総計 202,846 100.0

インドネシアの投資環境

148

水道 7.

インドネシアでは、主に地方自治体に属する水道事業体(PDAM)が水道事業を運営している。

工業用水の料金は 1 立方メートル当たりおよそ 10,000~13,000 ルピア前後であるが、料金水準は

自治体によって異なる。また、現地ヒアリングでは、工業団地への給水について深刻な問題は聞

かれなかった。

日本では水道事業は原則として市町村が経営するのに対し、インドネシアでは運営委託の形式

をとるため、政府による直接的な資金援助は行われない。また、地方部を中心として約 3 割の

PDAM では給水人口が 1 万人以下にとどまる他、9 割以上の PDAM で無収水率が 20%を超えるな

ど、運営の効率化も課題となっている。尚、全国的に水源の管理は中央政府の所掌となっている。

インドネシアの上水道は整備途上にあり、都市部でも普及率は 60%程度と推定される。2014 年

時点で国全体での安全な飲料水(地下水含む)へのアクセス率は 69%に留まり、政府は 2019 年ま

でに 100%へ到達することを目標に掲げている。一方、下水道普及率はさらに低く 5%以下に留ま

るとされ、特に都市部での下水道整備が喫緊の課題となっている。

ガス 8.

インドネシアでは、国有ガス公社(PT Perusahaan Gas Negara:PGN)が最大のガス供給業者で

ある。インドネシアは天然ガス産出国であり、PGN はパイプラインを通じてガス供給を行ってい

る。業務用ガスの料金は、1 立方メートル当たり 0.32~0.34 ドル前後である。報道によれば PGN

のパイプラインは全長約 7,000kmに及び、2016~19 年にかけてさらに約 1,700kmの新設を予定し

ている。

ジャカルタ近郊の工業団地においても PGN が主たるガス供給業者となっているが、一部工業用

ガスについては民間企業からの供給が行われている場合もある。また、国有の石油・ガス開発会

社であるプルタミナ(PT. Pernamina)社も傘下にガス供給子会社(PT. Pertamina Gas)を有してお

り、2016 年には同子会社と PGN の合併案も浮上したが、現在、計画は中断している状況である。

通信 9.

インドネシアは多くの島に分かれており、国内各地を結ぶ情報通信インフラの整備は不可欠で

ある。アジア通貨危機の際には、インドネシア政府は国内政治の安定に追われ、周辺諸国に比べ

情報化に遅れを取った。その後、政府は、2005 年にそれまでの通信情報担当省を通信情報省

(KOMINFO)に再編し、2006 年には通信政策や情報化の戦略方針を策定する国家 ICT 委員会を

設立し、2011 年には省内所掌の再編を行うなど、情報通信分野の開発に注力している。

かつてのインドネシアでは、国営の Telekomunikasi Indonesia(Telkom)が固定電話を、Indosat

が国際電話事業を独占していたが、1989 年の法改正以降の一連の規制緩和により、通信サービス

への民間企業の参入が可能となった。近年では、固定電話の普及を待たずに携帯電話の普及が加

速し、携帯電話を通じてのインターネットの利用者が急増している。

第 20 章 物流・インフラ

149

電話 (1)

①固定電話

固定電話には、基地局と電話器がケーブルで接続される「有線固定電話」と、基地局と電話器

が無線で接続され、一定エリア内であれば無線で通話が可能な「固定無線アクセス電話」がある。

有線固定電話と比較して、無線アクセス電話は、①加入回線あたりの敷設コストが半額以下であ

ること、②敷設に要する期間が短いこと、③限定的ながら携帯が可能で利便性が高いことなどの

利点から、2000 年代に複数の事業者が参入した。しかし現在は携帯電話に大きく押されており、

固定電話全体の加入者数は 2010 年の 4,000 万人超から 2014 年には 2,600 万人まで縮小した。

有線固定電話の事業者は、現在、Telkom と Indosat Ooredoo で、Telkom が事実上独占する状態

となっている。もともとは両社とも国有企業であり、Telkom が国内通話、Indosat が国際通話を独

占的に担ってきた。2000 年代に入り、規制緩和が進められるとともに Indosat が民営化され、相

互参入が行われた。尚、Indosat は 2015 年に Indosat Ooredoo へ改称されている。

②携帯電話

固定電話の契約数が減少する一方、2015 年時点の移動体通信(携帯電話)加入者数は 3 億 1,647

万人に上った。1 人当たりの契約数は約 1.25 台となり、ほぼ全ての人々に普及した状況である。

特に固定電話の普及率が低いスラウェシやパプア等の地方部では、携帯電話は主要通信手段とな

っている。

2014 年 12 月から 4G(第 4 世代)規格での高速通信サービスが開始され、ジャカルタ首都圏、

スラバヤ、メダン、デンパサールといった主要都市部から順次サービス範囲が広がっている。

大手携帯電話会社としては、Telkom系の Telkomsel、Indosat Ooredoo、XL-Axiata の上位 3 社で

契約件数の 8 割超を占めている(図表 20-22)。インドネシアでは、従来から SIM フリー端末でプ

リペイド SIM カードを利用する形態が主流となっているが、スマートフォンの普及に伴いデータ

通信とセットでのパッケージプランも出てきている。一例として、Telkomsel の New Halo Fit My

100k Plan A では、月額 10 万ルピアで 2GB のデータ通信、200 分の音声通話(自社宛)、200 通の

SMS(自社宛)の利用が可能である。

インドネシアの投資環境

150

図表 20-22 インドネシアの主要携帯電話会社とその顧客数(2010 年)

(注) SmartFren の顧客数は、合併前の各社の顧客数を合計したもの (出所)情報通信省資料より作成

郵便・宅配 (2)

インドネシアの郵便事業者は、国営企業の PT. Pos Indonesia である。郵送対象は重量上限が 2kg

の手紙(Surat)と、小包(Paket)の 2 種に分けられる。郵送サービスには普通(Biasa)、特別速

達(Kilat Khusus)、エクスプレス(Express)がある。

このうち、普通郵便については配達の未着や遅延の問題が多い。特別速達とエクスプレスサー

ビスは、地方の村まで配達が可能で、配送状況の追跡も可能である。エクスプレスについては即

日および翌日配達サービスがある。また、ジャカルタ市内で確実に物品を届けるには、GOJEK と

呼ばれるバイクタクシーへの依頼が便利である。

日本向け等の国際郵送および配送サービスには、普通郵便のほかに速達郵便、国際エクスプレ

ス・メール(EMS)、Fedex、DHL などが利用できる。到着までの日数に関しては、日本への普通

郵便物を送る場合、投函する郵便局によって 5 日から 1 ヵ月まで大きく異なることもあるようで

ある。遅延や紛失を避けたい場合は、追跡可能で配達も速い EMSや Fedex、DHL の利用が安全で

ある。これらを利用する場合、ジャカルタやバタム等の主要都市からであれば通常は 2~4 日ほど

で日本に届く。

国際郵送・配送に関する制限重量と所要日数の目安は図表 20-23 の通りである。

図表 20-23 国際郵送・配送に関する制限重量、所要日数(目安)

(出所)PT. Pos Indonesia 資料より作成

会社名

顧客数(千人)

構成比(%)

Telkomsel 88,950 49.9

Indosat 39,100 21.9

XL-Axiata 32,924 18.5

SmartFren 5,406 3.0

Ceria 637 0.4

Axis 4,105 2.3

3 7,311 4.1

総計 178,433 100.0

制限重量 日本向け シンガポール向け

EMS ゾーン1 3日 2日

EMS ゾーン2 4~9日 3日

国際速達小包(Paket Cepat) ~3kg 6日 6日

普通小包(Paket Biasa) ~30kg 45日 30日

~100kg

第 20 章 物流・インフラ

151

インターネット (3)

インドネシアではインターネットの普及が進んでおり、2016 年時点で、全人口の 3 分の 1 超に

あたる約 8,800 万人の利用者がいるとされる。同国のインターネット利用の特徴は、携帯電話か

らのアクセスの多さであり、国民の 27%がモバイル端末から利用していると推定されている。

モバイル端末の普及前は、街中に点在した Warnet と呼ばれるインターネットカフェが、インタ

ーネットの普及を後押しした。ブロードバンド加入者数は 2014 年時点で 301 万人であり、人口比

の普及率は 1%強に過ぎない。最近では、光ファイバーなども広まり始めており、高速インターネ

ットや無線 LAN が利用できるホテルやオフィス等も増加中である。インターネット接続サービス

関連免許は 250 社ほどが取得しているが、実際にサービスを提供しているのは 130 社程度とみら

れている。

主要な工業団地では既に光ケーブルが敷設されて高速インターネット環境が整っており、複数

のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を自由に選択できる。国内の主要な ISP とし

ては、Telkom、Indosat、BiZNET 等があり、様々な回線速度およびそれに応じた価格のプランが

提供されている(図表 20-24)。

しかし、日系企業の場合のように国際通信、特に日本との通信が主となる場合、契約するプロ

バイダが国際回線を独自に持っているかがデータ転送速度を決定的に左右する。これに関しては、

既に NTT が日系の ISP としてインドネシアに進出済みであり、日本向けの高速通信回線の保有を

強みとしてサービスを展開中である。

図表 20-24 Telkom の光ファイバーサービス料金例 (2017 年 1 月時点)

(出所)Telkom 社ホームページより作成

プラン名最大速度(Mbps)

月額料金(ルピア)

10 368,000

20 618,000

30 888,000

40 1,168,000

50 1,368,000

100 1,618,000

Indihome Fiber

Netizen - Dual Play