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7. 高誘電体薄膜の蛍光X線分析 ㈱東芝 研究開発センター 竹村モモ子 [email protected] 高誘電率(high -k) 材料は SiO2に替わる半導体のゲート絶縁膜として技術開発が進められている が欠陥制御などの観点から酸素の高精度分析が可能になれば重要な評価項目となるはずである。 しかし金属元素に比較し薄膜の酸素を高精度に定量することは必ずしも簡単でない。一方、蛍光X 線法は非破壊で広範囲の元素を分析できる方法であり、酸化膜の酸素と金属を精度良く測定する ことが可能である。 我々は組成や膜厚を変化させて作成した high -k膜(Hfシリケート膜)を使い酸素とHfの定量につ いて検討した。BL16XU の WD -XRF 装置を利用しO Kα線は人口多層膜分光素子RX40 、 Hf L α 線は分光結晶 LiF Hf M α線は分光結晶TAP で分光検出した。 Hfシリケート膜中酸素の定量では 共存するHfによる吸収などの影響が大きく膜厚数 10nm以上で無視できなくなるので共存効果補正 についても検討した。 O Kα線ピークとバックグラウンドをそれぞれ 500秒ずつ測定したときの BL16XU での計数精度は 0.3 %であった。即ち酸素量を0.3 %(相対値)の精度で定量することが可能であ る。酸素の検出下限は15ng/cm2 であったが、これは HfO2として膜厚 0.1nm に相当する。実測した酸素 の検出下限を絶対重量で比較すると、ラボ XRF が 120ng 、BL16XUで9ng、BL40XUで360pg であった。 O Kα(Hf -Si -O) 0 400 800 1200 1600 30 32 34 36 38 2θ(deg) Intensity(c O=6.1μg/cm2 O=5.5μg/cm2 O=4.9μg/cm2 Fig.1 O Kα spectra for Hf-Si-O

7. 高誘電体薄膜の蛍光X線分析 - SPring-8...7. 高誘電体薄膜の蛍光X線分析 東芝 研究開発センター 竹村モモ子 [email protected] 高誘電率(high-k)材料は

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  • 7. 高誘電体薄膜の蛍光X線分析

    ㈱東芝 研究開発センター 竹村モモ子

    [email protected]

    高誘電率(high-k)材料は SiO2 に替わる半導体のゲート絶縁膜として技術開発が進められている

    が欠陥制御などの観点から酸素の高精度分析が可能になれば重要な評価項目となるはずである。

    しかし金属元素に比較し薄膜の酸素を高精度に定量することは必ずしも簡単でない。一方、蛍光X

    線法は非破壊で広範囲の元素を分析できる方法であり、酸化膜の酸素と金属を精度良く測定する

    ことが可能である。

    我々は組成や膜厚を変化させて作成したhigh-k 膜(Hf シリケート膜)を使い酸素とHf の定量につ

    いて検討した。BL16XU のWD-XRF装置を利用しO Kα線は人口多層膜分光素子RX40、 Hf Lα

    線は分光結晶LiF、Hf Mα線は分光結晶TAPで分光検出した。Hfシリケート膜中酸素の定量では

    共存するHfによる吸収などの影響が大きく膜厚数10nm以上で無視できなくなるので共存効果補正

    についても検討した。 O Kα線ピークとバックグラウンドをそれぞれ 500 秒ずつ測定したときの

    BL16XU での計数精度は0.3%であった。即ち酸素量を0.3%(相対値)の精度で定量することが可能であ

    る。酸素の検出下限は15ng/cm2 であったが、これはHfO2 として膜厚0.1nm に相当する。実測した酸素

    の検出下限を絶対重量で比較すると、ラボXRF が120ng、BL16XUで9ng、BL40XU で360pg であった。

    O Kα(Hf-Si-O)

    0

    400

    800

    1200

    1600

    30 32 34 36 382θ(deg)

    Inte

    nsit

    y(c

    ps O=6.1μg/cm2

    O=5.5μg/cm2O=4.9μg/cm2

    Fig.1 O Kα spectra for Hf-Si-O

  • 薄膜の蛍光X線分析薄膜の蛍光X線分析

    ㈱東芝 研究開発センター 竹村モモ子

    1)高誘電体薄膜定量の試み2)薄膜中アルゴンの分析

    サンビーム研究発表会 2002/9/12

  • 高誘電体薄膜試料

    1)HfO2膜:膜厚100nm

    2)Hfシリケート膜:膜厚50nm 、HfO2として46モル%、熱処理なし

    3)Hfシリケート膜:膜厚50nm 、HfO2として46モル%、RTO処理900℃

    4)HfO2粉末:加圧成形ディスク

    1)-3)はスパッタ成膜、基板はSi。 4)はトライヤルユース試料を借用した。

  • 蛍光X線測定条件測定線→ O Kα Hf Lα

       (E)→↓項目

    0.5249 keV 7.899 keV

    1次X線エネルギー入射角(視斜角)

    分光結晶RX40

    (人工多層膜)LiF

    スリット 3S 1S検出器 PC SC

    走査ステップ 0.05deg 0.02deg計数時間 1 or 5 sec 1sec

    ビームライン SPring-8 BL16XU

    ビームサイズ幅2mmx高さ0.1mm

    試料の照射面積は2mmx12mm

    10keV0.5度

  • Hf Lαスペクトル

    HfLa

    0

    20000

    40000

    60000

    80000

    100000

    120000

    45 46 472θ(deg)

    (cps

    )

    HfO2(100nm)Hf-Si-O(as-depo)Hf-Si-O(RTO)HfO2(powder)

  • O Kαスペクトル

    O Kα

    0

    500

    1000

    1500

    2000

    31 32 33 34 35 36 372θ(deg)

    (cps

    )

    HfO2(100nm)Hf-Si-O(as-depo)Hf-Si-O(RTO)HfO2(powder)

  • O Kαスペクトル比較

    O Ka

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    32 33 34 35 362θ(deg)

    inte

    nsit

    y(ar

    bitr

    ary

    unit

    )

    HfO2(100nm)Hf-Si-O(RTO)Hf-Si-O(as-depo)HfO2(powder)

  • Hf Lα線強度とHf量(μg/cm2)の関係>> powder sampleと薄膜

  • O Kα線強度と酸素量 (μg/cm2)の関係>> powder sampleと薄膜

  • 蛍光X線の発生

    This study

    φ ψ=90°

    Io

    I(ip)

    t

    Si

    Matrix effect

    φ ψ

    t

    Io I(ip)

  • 共存元素(Matrix)の吸収を考慮した蛍光X線強度の理論式

    共存元素の効果としては吸収と励起がある。 吸収効果については以下のように定量的に表現できる。

    X線の吸収はランベール-ベアの法則に従い、透過率 I/Io = exp (-Adt) ・・・・・1)

    μ:質量吸収係数、d:密度(g/cm3)、t:厚み(cm)

    厚さtの試料の蛍光X線強度 I = KWi dt {1- exp (-Adt)} / Adt ・・・・・2)K:入射X線と測定線に固有の定数

    A= μ(λ)/sinφ + μ(ip)/sinψ (total absorption coefficient)

    入射X線の吸収 蛍光X線の吸収

    厚さtが極小さい場合(薄膜)は; I = K Wi dt ・・・・・3)厚い試料(バルク試料)では、2)式でt=∞として; I = K Wi dt/ Adt ・・・・・4)

  • 吸収効果の補正係数変化

    HfO2, phi=0.5deg.

    1.E-04

    1.E-03

    1.E-02

    1.E-01

    1.E+00

    1.E+01

    1.E+02

    0.01 0.1 1 10 100 1000sample thickness(nm)

    HfL:Adt/(1-exp(-Adt))HfL:AdtOK:Adt/(1-exp(-Adt))OK:Adt

  • ファンダメンタルパラメータ法(FP法)

    蛍光X線の理論式から求めた蛍光X線強度(理論強度)と実測強度を対比し、両者の差がなくなるような組成を求めて定量値とする方法。

    元々IBMなどで開発されたが、理学が自社装置用に開発したものが広く使われている。

    理学が放射光用に改造したソフトがJASRIトライヤルユースによりBL16に導入されたのでそれを試用した。

  • FP Calibration for O Kα

  • FP Calibration for O Kα and Hf Lα

    HfLα

    0

    50

    100

    150

    0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Theoretical intensity

    Mea

    sure

    d in

    tens

    ity

    O Kα

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    0.0000 0.0001 0.0002 0.0003Theoretical intensity

    Mea

    sure

    d in

    tens

    ity

  • Al薄膜中のアルゴン分析

    Al薄膜中アルゴンを放射光蛍光X線により分析した。

    スパッタ膜 (厚み300nm) から3x1019/cm3 (3x1014/cm2) のArが検出され、アニール(400℃) により2割程度減少することがわかった。-

  • 各種アルミ薄膜中Arの蛍光X線測定

    Ar Kα

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    56.0 56.5 57.0 57.5 58.0 58.52θ(deg)

    ArK

    α(c

    ps)

    SP filmCVD filmEB film

  • Alスパッタ膜中Arのアニールによる変化

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    56.0 56.5 57.0 57.5 58.0 58.5(deg)

    スパ

    ッタ

    膜(c

    ps)

    0

    1000

    2000

    3000

    4000

    5000

    Ar1

    .5E

    16(c

    ps)

    F アニールありE アニールなし標準1.5E16

  • 固体中アルゴンの検出下限比較

    equipment,con d i t i o n ↓

    ArKa netintensity

    L.D.L(atoms/cm2)

    conditions

    SP8 BL16XUWDX-XRF 8600 1.1E+13

    40sec counting,2x5mm2(10mm2), 10keV

    Lab.(RDC)WDX-XRF 175 2.6E+14

    40sec counting,d25(491mm2), Rh target

    Lab.(RDC)EPMA 5300 6.8E+13

    40sec counting, PET,15keV, 0.2uA

    Lab.(RDC)RBS ~5E+14

    sample: Ar 3E16/cm2

  • 薄膜の蛍光X線分析まとめ

    ㈱東芝 研究開発センター 竹村モモ子

    1)高誘電体薄膜定量ハフニウム系高誘電体酸化膜のハフニウムと酸素の蛍

    光X線について、吸収補正、FP法キャリブレーションなどを試みた。十分な補正に至らず検討を継続中である。

    2)薄膜中アルゴンの分析アルミ薄膜にスパッタ成膜の際混入したアルゴンをイオ

    ン注入標準を使って定量した。アルゴンはアニールにより減少するが大部分が残留することが判明した。