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第9回医報編集委員会
次 第
日 時 平成24年12月25日(火)
午後7時30分
場 所 秋田県医師会館 会議室
1.開 会
2.挨 拶
3.報 告
4.協 議
(1)1月15日号、2月1日号の編集について
資料1~4
(2)その他
資料5
5.閉 会
秋田医報執筆担当者(案)
No. 号 締切巻頭言(2400字)
郡市医師会報点描休診日(2000字)
若手医師(2000字)
開業しました(2400字)
深呼吸(1000字)
1395 4月1日 〆3/15 小山田会長 生い立ち;妹尾和己ギター柳田龍一
蓮沼直子
1396 4月15日 〆4/1 坂本副会長 蛍の光;鈴木明子ハンドボール大森佑貴
後藤 尚
1397 5月1日 〆4/15 西成副会長医者のカルテ;伊藤久美子
自転車渡辺 一
柳谷直樹
1398 5月15日 〆5/1 小笠原理事商品の過剰なPRを規制せよ;佐々木宣明
ゲーマー渡邊秀太
佐藤常任理事
1399 6月1日 〆5/15 佐藤常任理事 母子手帳;金由美子寄席櫻田 徹
井田理事
1400 6月15日 〆6/1 奈良理事北秋田市グルメスポット;小林 真
なまはげ柳谷昌弘
伊藤委員長
1401 7月1日 〆6/15 島常任理事 いいちこ;平田 温猫の王国寺邑朋子
岩崎副委員長
1402 7月15日 〆7/1 大澤理事 チェンバロ;高橋彰彦小山昌平(日赤)
肥田野文夫 後藤委員
1403 8月1日 〆7/15 鈴木常任理事GoldenWeek;近田龍一郎、肉の話;木村愛彦
場所小野寺佳奈
柳谷委員
1404 8月15日 〆8/1 井田理事 蓮沼委員
1405 9月1日 〆8/15 小玉常任理事高齢者に優しい病院;中鉢明彦
登山銭谷 明
小西永晃 安岡委員
1406 9月15日 〆9/1 佐藤理事源義経と奥州平泉;佐々木静一郎
佐藤 望(市立大森)
井田理事
1407 10月1日 〆9/15 大山常任理事口から食べられなくなったら;圓谷智夫
登山高橋正喜
佐藤常任理事
1408 10月15日 〆10/1 坪井理事 釣同好会;嶌田泰之塩田奈央(秋田組合)
伊藤委員長
1409 11月1日 〆10/15 小泉常任理事秋田に勤めて一年;中澤堅次
英語佐々木静一郎
岩崎副委員長
1410 11月15日 〆11/1 松岡理事マイ・ウォーキング;菅原真砂子
高橋和之(秋田組合)
後藤委員
1411 12月1日 〆11/15 稲村常任理事脳血管撮影の思い出;和田修
囲碁高橋理論
柳谷委員
1412 12月15日 〆12/1 高橋理事 名山漫歩;鈴木邦男渡部 健(秋田大学)
蓮沼委員
1413 1月1日 〆12/15 小山田会長 安岡委員
1414 1月15日 〆1/1 五十嵐常任理事保浦慶之(秋田大学)
井田理事
1415 2月1日 〆1/15 奥山理事クラシック田口圭樹
佐藤常任理事
1416 2月15日 〆2/1 伊藤常任理事 伊藤委員長
1417 3月1日 〆2/15 長谷川理事野球鈴木哲哉
岩崎副委員長
1418 3月15日 〆3/1 坂本副会長 後藤委員
秋田医報1月15日号(案)
表 紙
巻 頭 言 (未) 五十嵐常任理事
論 壇 ・ 解 説
代 議 員 会
名 簿
理 事 会 第9回理事会報告
座 談 会 ワクチンについて 医報編集委員会
講 演
県 医 師 会 か ら
特 集
逝 去 会 員
委 員 会 報 告
県 医 報 告
日 医 報 告
東 北 医 連 報 告
報 告
会 長 室 か ら
郡市医師会トピックス 平成24年12月の動き
郡 市 医 師 会 だ よ り
郡 市 医 師 会 報 点 描
開 業 し ま し た
若 手 医 師 の ペ ー ジ Badmintonと自分 保浦慶之
投 稿
本
会 員 の 声
連 載 ボケないためのボケの話 17 久場政博
各 委 員 会 か ら
通 達 ・ 文 書
通 達 ・ 文 書 か ら
医療センターだより
医 師 国 保 だ よ り
放 送 ・ 講 演 会 等
県 医 師 会 掲 示 板
お 知 ら せ
帰 ・ 去 ・ 来 平成24年12月1日~31日受付分
深 呼 吸 (未) 井田理事
秋田医報2月1日号(案)
表 紙
巻 頭 言 (未) 奥山理事
論 壇 ・ 解 説
代 議 員 会
名 簿
理 事 会 第10回理事会・郡市医師会長協議会報告
座 談 会
講 演
県 医 師 会 か ら
特 集
逝 去 会 員
委 員 会 報 告
県 医 報 告 第2回医療行政懇談会
日 医 報 告
東 北 医 連 報 告
報 告
会 長 室 か ら
郡 市 医 師 会 だ よ り
郡 市 医 師 会 報 点 描
開 業 し ま し た
休 診 日 京都でのクラッシックコンサート鑑賞 田口圭樹
投 稿
本
会 員 の 声
連 載 ボケないためのボケの話 18(未) 久場政博
各 委 員 会 か ら
感 染 症 発 生 情 報 平成24年12月分
通 達 ・ 文 書
通 達 ・ 文 書 か ら
医療センターだより
医 師 国 保 だ よ り
放 送 ・ 講 演 会 等
県 医 師 会 掲 示 板
お 知 ら せ
深 呼 吸 (未) 佐藤常任理事
「Badmintonと自分」 秋田組合総合病院研修医 保浦慶之
秋田組合総合病院研修医の保浦慶之と申します。7,8 月と麻酔科で研修させて頂きました。
自分の力不足を感じる毎日でしたが、毎日先生方から温かく指導して頂き、大変勉強にな
りました。将来的に先生方から教えて頂いたことを無駄にすることのないように、今後も
一生懸命頑張っていきたいです。
麻酔科研修後は地域医療研修で北秋田市民病院、男鹿みなと市民病院とローテートしてい
ます。組合病院から足が遠のいていたためか、白衣を取りに病院へ寄った時や、川反に飲
みに出かけた時偶然会った先生方から「研修ドロップアウトしたと思った(笑)」などと冗
談を言われることもありましたが、おかげ様で研修も続けています。11 月からまた組合病
院に戻りますので、残り 5か月間も宜しくお願い致します。
さて今回は中学生の頃から始めた、自分の大好きなスポーツであるバドミントンについて
書かせて頂きます。
小学生の頃、Jリーグが全盛期でありカズに憧れ、サッカーが大好きでした。カズのカード
が出るまで J リーグチップスを食べ続け、カズのカードは 9 枚集めたこともあります。中
学では絶対サッカー部に入ろうと考えていたのですが、クラスで一番仲の良かった友人か
らの熱い勧誘により何故かバドミントン部に入部したのでした。それまで本物のバドミン
トンを知らなかったために、正直かなり甘く見ていたのですが、早々に入部したことを後
悔することになりました。実はバドミントンはボクシングよりも体力を要するスポーツと
言われており、練習メニューも半分以上が体力をつけるための厳しいトレーニングでした。
中学の近くに「建中寺」という寺があったのですが、その寺を含めてぐるっと一周してか
ら中学に戻る、というのが伝統的な東海中学のランニングコースでした。それを 5周回る、
というのがバドミントン部の一日の練習の始まりで、練習が始まる前は皆雑談や試合をし
ているのですが、キャプテンの「けーんちゅーじー」という一声で皆とても憂鬱な気持ち
になるのでした。
一年生の頃は実際に羽を打たせてもらえる時間はほとんどなく、素振りやフットワークを
重ねる毎日でした。たまに羽を打たせてもらえるとしても、「クリア」というコートの端か
ら端まで山なりに高く打つショットだけで、始めなかなかクリアの飛距離が出ず、二年生
に上がる頃には本気で部活をやめることを考えていました。
しかし二年生に上がったことでそれまでシングルスしか教わっていなかったのが、今度は
ダブルスを教わるようになったのがきっかけで状況が少しずつ変わっていきました。ダブ
ルスのコンビネーション、息もつかせないような素早い展開に魅了されてしまい、もとも
とダブルスで良く使われるドライブ(肩の高さで打つような速いショット)やヘアピン(ネ
ットショットのこと)が得意だったこともあり、「シングルスは下手だけどダブルスは上手
いじゃないか!」と顧問の先生からも言ってもらえるようになりました。
その頃からバドミントンに全てを捧げるようにのめりこんでしまい、休日は朝から晩まで
練習し、夜家に帰ってからもランニングや素振りをするようになりました。練習の甲斐あ
って、中学三年生の時に名古屋市大会でダブルス三位という成績を治めることが出来まし
た。
その後怪我がきっかけで一時バドミントンから離れるのですが、秋田大学に進学しまたバ
ドミントン部に入部しました。始め医学部の部活で中学の頃の様にたくさん練習できるか
不安に感じていましたが、ちょうど時期的に強い先輩(一つ上の先輩は東北大会に出たこ
とがある先輩でした)が多く、環境的に恵まれた時期での入部でした。団体戦のレギュラ
ーは、皆決して東医体で個人戦でメダルを取るとこまではいけないけれど、ベスト 8~32
あたりまでは行ける、という選手が集まったチームでしたが、6年間で銅メダル 3個、銀メ
ダル 1個という成績を治めることが出来ました。
バドミントンを始めたことで色々なことを経験しましたが、その中で得られた出会いもま
た大きい財産です。今こうして秋田に残って働いていますが、バドミントンを通じて得ら
れた人間関係というものが、これからも自分の一つの支えになるだろうと考えています。
後悔していることといえば、学生時代夏休みといえば東医体が終わった後たいてい精神的
にバーンアウトしてしまい、実家に帰って廃人になる、というのが毎年のパターンでした。
社会に出て思うことは、何故あの残りの夏休みを使って、親から借金してでも旅行に行か
なかったのか、ということくらいです。
そして研修医として、今はバドミントンから離れてしまっていますが、将来的に自分の生
活に少し余裕が出てきたら、またバドミントンを再開したいと考えています。出来れば秋
田大学医学部バドミントン部の OBチームを作って。
岩崎先生へ
1
ボ ケ な い た め の ボ ケ の 話 - Ⅱ .病 的 ボ ケ
1 7 別 の 世 界 に ひ た る
精 神 症 状 2
秋 田 市 久 場 政 博
は じ め に
本 稿 で は 、精 神 症 状 の う ち の 知 覚 錯 誤 、す な
わ ち 人 ・ 物 誤 認 、 作 話 、人 形 現 象 、 鏡 現 象 、 テ
レ ビ 現 象 、 幻 の 実 家 、 実 体 的 意 識 性 を と り あ
げ る ( 1 6 表 1 6 - 1 参 照 )。
S 家 の 状 況
A は X + 4 年 と な り 、 老 健 入 所 3 年 で 8 9 歳
に な っ て い た 。 B は 8 6 歳 で 、 こ こ 半 年 前 か ら
奇 妙 な こ と を 語 る よ う に な っ た 。 家 族 は 息 子
C 6 5 歳 と 嫁 D 6 2 歳 の 3 人 暮 ら し で あ る 。 季 節
は 晩 秋 の あ る 日 。「 - 」 は 介 護 者 の 、「 … 」 は
A や B の 内 言 で あ る 。
2
深 夜 か ら 起 床
嫁 D が 姑 B を 起 こ し 、 洗 面 所 に 連 れ て 行 く 。
洗 顔 し 、 鏡 を み な が ら 化 粧 を し て い る が 、 ど
こ か ち ぐ は ぐ 。 顔 を し か め た り 、 手 で 頬 を た
た い た り 、 鏡 の 後 ろ を の ぞ い た り す る 。 D が
「 ど う し た の 」 と 声 を か け る と 、 B は 「 こ れ 、
わ た し の 顔 じ ゃ な い 。 誰 だ ろ う 」と 、 さ か ん に
自 分 の 顔 を 見 な が ら 、 首 を ひ ね る (鏡 現 象 )。
嫁 D 、 自 分 の 顔 が 自 分 で な い な ん て 、 ど
う い う シ ン ケ イ に な っ た の か し ら 。
朝 食 か ら 昼 前
朝 食 後 、仮 眠 を す す め る が 寝 る よ う す も な い
の で 午 前 1 0 時 過 ぎ 、 嫁 D は B を 連 れ て A が 入
所 中 の 老 健 施 設 に 行 く 。 車 で 2 0 分 の と こ ろ に
あ り 、 2 階 の 認 知 症 棟 に い る 。 棟 内 に は い り
本 人 A を み つ け て 手 を ふ る が 、 ま っ た く 関 心
を 示 さ な い 。 B が 「 ジ イ チ ャ ン 。 わ た し よ 」 と
夫 の 名 前 を い う が 、 A は ぴ ん と こ な い 。
3
D が 、 「ほ ら 、あ な た の 奥 さ ん よ 」と 念 を お す
が 、 「こ い つ は 、 別 人 だ 。 顔 は バ バ そ っ く り だ
が 、 ち が う な 。 こ い つ は 替 え 玉 だ 」 ( カ プ グ ラ
症 候 群 )と 真 顔 で い う 。 B は ぷ り ぷ り 怒 り だ す 。
… A 、 誰 が 、 お れ の と こ ろ へ き た っ て 。 な ん
だ か 変 な ひ と 連 れ て き て 。
嫁 D 、こ の 間 実 妹 H と 面 会 し た と き は 、よ
く わ か っ て 喜 ん で い た の に 。 自 分 の 妻 を
忘 れ て し ま う な ん て 、認 知 症 っ て 、怖 い な 。
… B 、せ っ か く 見 舞 い に き た の に 、な に よ こ
の 人 。
つ づ け て A 、 曰 く 。 「 そ れ 、 こ こ の み ん な 、
お れ の 小 学 同 級 の N 郎 ( 男 性 ) だ 。 あ の エ プ ロ
ン を か け た ヒ ゲ 面 の や つ も 、 看 護 の 制 服 を 着
て い る 女 性 も 、 N 郎 の 変 装 だ 」 ( フ レ ゴ リ 症 候
群 )と い う 。
そ こ に ス タ ッ フ が よ っ て き て 、A は と き お り
「 あ の 背 の 高 い 人 は 、 特 殊 メ イ ク し た お れ だ 」
と 言 い 、「 あ の 方 の 顔 を ひ ね っ て 、 け ん か に な
る ん で す 」 (自 己 分 身 症 候 群 )と 苦 言 を 呈 す る 。
4
嫁 D は 顔 を 赤 く し な が ら 平 謝 り し た 。 A も B
も 話 が ゆ き 違 い 、 嫁 D は 汚 れ 物 を 新 し い 物 に
替 え て 、 3 0 分 で 切 り あ げ る 。
帰 途 、道 路 脇 に ス ス キ が な び い て い た 。そ れ
を み て B は 、「 お か し な 。 稲 刈 り お わ っ た の に 。
こ ん な 道 端 に 稲 を ほ っ た ら か し に し て 、 農 家
の ひ と 、 忘 れ た の か し ら 」( 物 の 誤 認 ) と つ ぶ
や い て い た 。
昼 食 か ら 夕 方
昼 食 後 、昼 寝 の た め 自 室 に こ も る が 、な ぜ か
中 か ら ぶ つ ぶ つ 独 り 言 が き こ え る 。 い つ も の
孫 に か ん す る 作 話 が 持 続 し て い る 。 姑 B は 、
「 孫 息 子 E ( 注 -枕 ) が 私 の と こ ろ に き て 、 お
母 さ ん 忙 し い の で き た 。 ボ ク 、 小 学 校 行 っ た
ら 先 生 に 殴 ら れ て い た か っ た よ 」 と 、 目 の 前
で お こ っ た か の よ う に D に 話 す 。
嫁 D 、孫 の 話 を す る と き は 、 か え っ て 落 ち
着 い て い る わ 。 別 の 世 界 に ひ た っ て い る の
か し ら 。 で も 息 子 E は 3 0 歳 過 ぎ て 会 社 勤
5
め な の に 、 可 笑 し い わ ね 。
… B 、 本 当 に こ の 孫 は い い 子 ね 。 わ た し に な
ん で も 話 し て く れ る ん で す も の 。
孫 は 枕 だ け で は な く 、 と き ど き ク マ や ウ サ ギ
の ぬ い ぐ る み (人 形 現 象 )に か わ る 。1 週 間 前 は 、
通 院 先 の 病 院 に ク マ の 孫 を 連 れ て 行 っ た 。 そ
こ で 、 主 治 医 に ぬ い ぐ る み を み せ な が ら 、 B
は 「 今 日 、 ボ ク も 病 院 に 行 き た い よ 、 と 言 う
の で 連 れ て き ま し た 。 E と い う 名 前 で す 。 素
直 な 子 で す 」 と 紹 介 し て い た 。 ま た 、「 夜 中 に
チ ュ ウ チ ュ ウ い う の で 、 な ん で す か と 聞 い た
ら 、 オ ッ パ イ 、 オ ッ パ イ で す っ て 。 わ た し 7 0
歳 ( 本 人 の 言 ) だ け ど 、 オ ッ パ イ で る の よ 。
ア ハ ハ 」 (空 想 的 作 話 )と 楽 し そ う に 笑 う 。
嫁 は 主 治 医 に 、「 孫 を 大 切 に す る あ ま り 、 姑
は ベ ッ ド の 端 に し か 寝 な い ん で す 。 い ま に も
落 ち そ う で 」 と 注 釈 す る 。 そ の 帰 り 道 、 木 の
葉 の ち ら ち ら 舞 う の を み て 、 B 「 あ ら 、 雪 に
な っ て き た わ 。 も う 冬 ね 」 ( 物 の 誤 認 ) と D に
話 し か け た 。
6
夕 食 か ら 就 寝
夕 食 を お わ る と 、 B は 落 ち 着 か な く な る 。
と き お り 玄 関 に 行 っ て は 、「 ジ イ チ ャ ン が 帰
っ て き て い る 」 ( 実 体 的 意 識 性 ) と 言 い 、 戸 を
あ け よ う と す る 。 内 鍵 を か け て い る の に 気 が
つ か ず 、 ガ タ ガ タ さ せ て い る 。
タ イ ミ ン グ よ く 町 内 会 の 回 覧 板 を 、 隣 の T
さ ん が も っ て き た 。 す る と 、 「わ ー ぁ 、 ジ イ チ
ャ ン だ 。 よ く 帰 っ て き た わ 。 ジ イ チ ャ ン 、 は
い っ て 」 と 、 手 を と っ て 玄 関 の な か に 入 れ る 。
隣 の 人 、 「ち が う よ 、 バ ア チ ャ ン 。 ち が う 、 ち
が う 」と 何 回 も 言 う が 、 B は A ジ イ チ ャ ン と 信
じ こ ん で い る 。
D が 、「 ジ イ チ ャ ン は 朝 、 あ っ て き た で し ょ 。
ほ ら 、ス ス キ が あ っ た 施 設 で 」と 説 得 す る が 、
B は 「 あ の 人 、 ジ イ チ ャ ン じ ゃ な い わ 。 こ の
人 が 本 当 の ジ イ チ ャ ン よ 。 わ た し の こ と 知 ら
な い っ て 、 言 っ て た で し ょ 。 あ の ひ と が T さ
ん よ 」 (相 互 変 身 症 候 群 )と 譲 ら な い 。T さ ん は
7
嫁 D と 話 し て 、 そ そ く さ と 退 散 す る 。
午 後 7 時 過 ぎ 、 テ レ ビ 名 画 劇 場 「 七 年 目 の 浮
気 」が あ り 、 ニ コ ニ コ し な が ら み て い る 。 テ レ
ビ に む か っ て 手 を 振 っ た り 、 問 い か け て い る 。
ち ょ う ど 、 マ リ リ ン ・ モ ン ロ ー の ロ ン グ ス カ
ー ト が 、 地 下 鉄 排 気 口 か ら 吹 き 上 が る 風 に あ
お ら れ る 場 面 で あ っ た 。 突 然 、 本 人 も ス カ ー
ト を パ ッ と ま く り 上 げ た ( テ レ ビ 現 象 ) 。 息 子
C と 嫁 D は び っ く り し て 、 お 互 い 目 で 笑 っ て
し ま う 。
息 子 C 、 あ ん な に 上 品 で 、 み ん な が 一 目
お い て い た 母 だ っ た の に 。
午 後 8 時 、 入 浴 を 済 ま せ 2 階 の 自 室 に 行 っ
て 、 就 寝 の 準 備 を す る 。 す べ て に 嫁 D が 付 き
そ う 。 午 後 9 時 、 B は 寝 息 を た て だ し た 。 ほ
っ と し て 嫁 は 退 室 し 、 居 間 で 夫 C と 今 後 の こ
と を 話 す 。
そ ろ そ ろ 夫 の 出 勤 時 間 に な る 、 午 後 1 0 時 で
あ る 。 そ こ へ 、 服 に 着 替 え た B が 、 風 呂 敷 に
な に や ら 包 ん で 居 間 に お り て き た 。 息 子 C と
8
嫁 D の 前 に 神 妙 に 座 り 、 手 を つ い て 「長 ら く お
世 話 に な り ま し た 。 わ た し 家 に 帰 り ま す 」と い
う 。
… B 、 こ こ は わ た し の 家 で な い わ 。 ぜ ん ぜ
ん 温 か く な い も ん ね 。
息 子 C 、 「な に 、 お 母 さ ん の 家 だ よ 。 も う 6 0
年 以 上 住 ん で る じ ゃ な い か 」と 言 う が 、 き き い
れ な い 。 B の 実 家 は 県 内 で も 遠 方 に あ り 、 す
で に 実 兄 は 他 界 し 、 甥 の 代 に な っ て い る 。
「 い や 、 実 家 に 帰 ら せ て も ら い ま す 」 ( 幻 の 実
家 ) と 頑 な に 言 う の で 、 嫁 D 「 わ か り ま し た 、
一 緒 に 行 き ま し ょ う 」と 気 を き か せ る 。 息 子 C
も 「 じ ゃ 、 お れ も 行 こ う ( 実 際 は 、 出 勤 ) 」 と 、
3 人 で 家 を 出 る 。
途 中 で C と 別 れ 、 B と D は 3 0 分 ち か く 歩
き 、 D の 計 算 で 「 さ あ 、 実 家 に つ き ま し た 」 と
断 定 し て 自 宅 に 戻 っ た 。 B を 自 室 に 誘 導 し 、
歩 き 疲 れ た 本 人 は 、 バ タ ン キ ュ と 寝 て し ま う 。
嫁 D 、 本 人 の い う 実 家 っ て 、ど ん な イ メ ー
ジ な ん で し ょ う 。 誰 に も 叱 責 さ れ な い 、抱
9
っ こ し て く れ る 母 親 の い る と こ ろ か し ら 。
ま と め と し て
さ ま ざ ま な 症 候 群 を 並 べ た が 、こ れ ら は あ る
対 象 ( 人 、 物 、 状 況 ) を 同 定 す る と き 、 間 違 っ
て ( 錯 誤 ) 判 断 し 、 歪 曲 し て 訂 正 不 能 の ま ま 周
囲 に 表 出 す る 状 態 で あ る 。
と く に 人 物 誤 認 の カ プ グ ラ 症 候 群 や フ レ ゴ
リ 症 候 群 は 、従 来 妄 想 性 人 物 誤 認 症 候 群 3 ) と し
て 検 討 が 加 え ら れ て き た 。 最 近 で は 、 そ れ 以
外 に も 鏡 現 象 2 ) 5 ) 、 自 己 分 身 症 候 群 、 相 互 変
身 症 候 群 、 同 居 人 ・ 物 幻 覚 や シ ャ ル ル ・ ボ ネ
症 候 群 な ど を ふ く め て 、 妄 想 性 同 定 錯 誤 症 候
群 1 ) と 称 す る よ う に な っ た 。
そ し て 、あ る 状 況 を 錯 誤 し て 妄 想 的 に 同 定 す
る 観 点 か ら み れ ば 、 も の 盗 ら れ 妄 想 や 嫉 妬 妄
想 も 、 妄 想 性 同 定 錯 誤 症 候 群 の 範 疇 と 考 え て
よ い か も し れ な い 。
い ず れ に し ろ 、上 述 の 妄 想 形 成 に は 中 核 症 状
と そ の 人 独 自 の 性 格 や 内 的 生 活 史 が 関 与 し て
10
い る と お も わ れ る が 、 こ れ ほ ど 妄 想 化 で き る
こ と は 、 精 神 活 動 の 活 発 さ の み な ら ず 思 考 の
多 様 性 が 残 存 し て い る 証 左 で あ る 。 こ れ ら の
妄 想 を 分 析 し て 、 自 己 と 他 者 の 関 係 を 哲 学 的
に 考 察 4 ) す る 研 究 者 も い る 。
と こ ろ で 、こ の よ う に 認 知 症 者 が 別 世 界 に ひ
た る こ と は 、 自 ら の 厳 し い 現 実 を 逃 れ た い た
め だ ろ う か 。
[ 参 考 文 献 ]
1 ) 深 津 亮 他 :妄 想 性 同 定 錯 誤 症 候 群 と は ,
老 年 精 神 医 学 雑 誌 2 1 ; 6 3 3 , 2 0 1 0
2 ) 熊 倉 徹 雄 : 初 老 期 お よ び 老 年 痴 呆 ( 特 に
A l z h e i m e r 病 型 痴 呆 )に み ら れ る 鏡 現 象 に
つ い て ,精 神 経 誌 8 4 ; 3 0 7 , 1 9 8 2
3 ) 西 田 博 文 : 妄 想 性 人 物 誤 認 症 候 群 ,精 神 医
学 3 3 ; 6 8 4 , 1 9 9 1
4 ) 新 山 喜 嗣 : ソ シ ア の 錯 覚 可 能 世 界 と 他
者 ,春 秋 社 , 2 0 1 1
5 ) 竹 中 星 郎 : 鏡 の な か の 老 人 痴 呆 の 世 界
11
を 生 き る ,ワ ー ル ド プ ラ ン ニ ン グ , 1 9 9 7