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化学G1 7回目2014.5.26
薬を求めて
梶本興亜
マラリア
年間3 ~5 億人の罹患者と150 ~270 万人の死亡者。大部分はサハラ以南アフリカにおける5歳未満の小児。
(世界保健機関(WHO )の推計)
コガタハマダラ蚊写真はWikimediaより引用
赤血球中の原虫
写真は濱田篤郎氏講演より引用
ロナルド・ロス1902ノーベル賞
?
世界三大感染症マラリア 150万人結核 170万人AIDS 180万人
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Cinchona ledgeriana(アカネ科)
写真は、渡辺弘之、日本熱帯生態学会ニューズレター No. 60 (2005)より引用
写真はAsiatic Society of Bangladeshのページ「Search Engine of Bangladesh」引用
ジャワのキナ林
天然生薬の分析と合成-キニーネ
キニーネ
Robert Burns Woodward
肖像写真は、Univ. of Michigan のHomepageから引用
原虫は自分に有害なヘムをヘムポリメラーゼで無毒化するが、これを阻害することよって原虫に対して毒性を発揮
キニーネ(キナの樹皮から採るマラリヤの特効薬)
・南米の原住民は、アンデスの高地に生えるキナの樹皮が発熱などに有効であることを古くから知っていた。イエズス会の宣教師が1630年頃、このキナがマラリアに有効であることを知り、ヨーロッパに持ち帰ったとされる。欧州の植民地経営のために抗マラリア剤は必須であった。20世紀なかごろまでは、インドやインドネシアにキナのプランテーションを作って、キニーネを得ていた。
1943年 キニーネの代替薬品が発売された。
1944年 Robert Burns Woodward[米]が全合成に成功
1908年 Rabe[独]キニーネの構造を解明
1820 年 PelletierとCaventou[仏]キナ皮からキニーネを純粋に取り出すことに成功
3
クロロキン
メフロキン
1934年 ドイツでクロロキンが合成されたが、毒性が問題視された。
合成抗マラリア剤
キニーネ
キヌクリジン骨格
1980以降 クロロキン・メフロキン耐性マラリアが拡がる。他の薬剤との併用、マラリアワクチンの開発
1970年代 メフロキンがアメリカで開発・発売。1959年 クロロキン網膜症と言う副作用による薬害が拡がる。1944年 Robert Burns Woodward[米]がキニーネの全合成に成功。1943年 アメリカで抗マラリア剤として発売。
薬の歴史-天然生薬
先史時代 おそらく、呪文を唱えて病人から悪霊を追い出し、薬草を飲ませたのが薬の最初であったろう。
BC202年~AD220年(漢)中国のいわゆる漢方の基礎が出来た。「黄帝内経」:中国医学の古典、人体の生理を基礎に治療。「神農本草経」:中国最古の薬物書、365品の薬物記載。「傷寒雑病論」:200年頃に出た薬物治療の古典、張仲景著。
BC460-377年 ギリシャのヒポクラテス:医学を科学として確立。この頃には、薬草の専門家が存在した。
BC1700頃 ハムラビ法典には、医療行為に関する定めがある。古代エジプト文明の記録の中に数百種に上る薬草の記述がある。
BC3000頃 古代メソポタミア文明では、僧侶が宗教的権威の中で薬草を用いる医療行為を行っていた。
4
ヒポクラテス(BC460-BC377)
医学を科学として確立。
張仲景(150-219)
漢方薬物の集大成
写真はWikimediaより引用
130~198年 ローマのガレノス:それまでの医学的知識を集大成。
松柏堂医院のHPより引用しました。
医心方 ジェンナー 日本では緒方春朔が先に実施
朝倉市HPより引用しました。
19世紀 薬草の化学成分の分析が始まり、細菌学・微生物学などがドイツを中心として盛んとなり、近代医学が
花開く。
18世紀 自然科学が起こり、科学的医学が進む。1796年にはジェンナーが種痘法を実施。
中世 多くの薬草などのデータが蓄積されたが革命的変化は無し。錬金術は医薬には寄与しなかった。
984年(平安時代)宮廷医・丹波康頼:日本最古の書「医心方」を著す。全30巻に、それまでに伝来した漢方を纏めた。その後、丹波と多気の二家系が日本の漢方医家の代表として続いた。 丹波哲朗
5
Salix babylonica
acetylsalicylic acid
合成医薬品-アスピリン
・ヒポクラテスはヤナギの樹皮を鎮痛・消炎に用いた。古代中国では、歯痛を止めるために、柳の小枝で歯をこすった(楊枝)。
1820年 ヤナギの有効成分サリシンが解明された。Salicineß Salix。苦くて使えない。
1899年 Aspirinとして発売
1897年 Bayer社のホフマンがアセチルサリチル酸を合成。
代替品としてサリチル酸-胃を荒らす。
6
アスピリンは進歩する
1897年 Bayer社のホフマンがアセチルサリチル酸を合成。1899年 Aspirinとして発売
1960年 英のBootsグループがイブプロフェンを合成。世界80カ国で販売。WHOの必須薬品にも入る。
1963年 米でインドメタシンが開発される。鎮痛消炎貼り薬。
10倍の消炎・鎮痛
2000倍の消炎・鎮痛
なぜアスピリンは効くのか
細胞膜
膵臓からの消化酵素
プロスタグランジンH2合成酵素アスピリンはこの酵素の働きを阻害する。
アスピリンはこの部分に化学的に結合することにより、アラキドン酸の吸着・反応を妨げる。
1982年のノーベル賞
平山令明著「分子レベルで見た薬の働き」(講談社)から引用
7
細菌との戦い-抗菌剤・バクテリアの発見(1670年代)
・19世紀:パスツール、コッホなどにより細菌が病原であることが示された。
・1910年:エーリッヒが最初の抗菌物質サルバルサンを合成。
・1935年:サルファー剤のプロントジルを合成。
・1940年:抗生物質ペニシリンの利用始まる。
(ペニシリンの発見は 1928年)
・1960年頃よりMRSA(メチシリン
耐性黄色ブドウ球菌)出現。
19401920 2000年198019601900
10
1
100
0.1
1000
抗菌作用
①細胞壁を作らさない-ペニシリン
②葉酸の合成を阻害する-サルファ剤
③蛋白質の合成を阻害する-テトラサイクリン
④遺伝情報の伝達を阻害する-プロフラビン
①
②、③
④
平山令明著「分子レベルで見た薬の働き」(講談社)から引用
8
ペニシリン
細胞壁の合成連鎖を止める
平山令明著「分子レベルで見た薬の働き」(講談社)から引用
最近の薬の作用機序
酵素原料物質 生成物質
酵素 Iは伝達物質を作る酵素 IIは伝達物質を元に戻す
酵素 II阻害は伝達を昂進酵素 I阻害は伝達を抑制
スタチン系高脂血症治療薬
肝臓のコレステロール合成酵素を阻害
SSRI系うつ病薬神経伝達物質のセロトニン再取り込みを阻害
アンギオオテンシン系降圧剤
アンギオテンシンIIが伝達されると血管の平滑収縮筋が収縮して血圧を上げる。この生成を阻害したり、受容体への取り込
みを阻害したりする。
II
I
受容体受容体
9
血管拡張剤-ニトログリセリン/バイアグラ
ニトログリセリン
シルデナフィル(バイアグラ)
京都大学大学院薬学研究科編「新しい薬をどう創るか」(講談社)から引用
アルツハイマー治療薬
京都大学大学院薬学研究科編「新しい薬をどう創るか」(講談社)から引用
10
医薬品合成の発展
天然生薬の発見
構造の解析
人工的合成
成分の抽出
薬理作用の解析 新薬の合成
安全性の確認
薬効の確認by-products
活性物質(リード化合物)
ランダムスクリーニング ドラッグデザイン
10-18年
株式会社メディサーチのホームページより引用
(山内・藤沢)
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山之内
藤沢
第一製薬
三共製薬
ミレニアル・ファーマシューティカルズTOB
ナイコメッド
ワイスファルマシア
株式会社メディサーチのホームページより引用
(米)
(英)
(スイス)
(スイス)
(仏)
(英)
(米)(米)
(米)
(独)(独)
(スイス)(米)
(米)
(デンマーク)
シェリングブラウ
薬の2010年問題
利益を稼いでいる薬の特許が切れる
ジェネリック薬の販売が始まる
新薬が出ない
薬効基準・副作用検査の強化
新しい薬の探索法が必要だ
難病の薬が中心になる
研究の難しさと小さな市場
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株式会社メディサーチのホームページより引用
トルセトラピブ
アバンティア
バイオックス
売上高ランキング 2010年
医薬品と健康食品
国立健康・栄養研究所のホームページより引用
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健康食品の広告
H20年度厚生労働科学研究補助金(主任梅垣敬三)の冊子より引用
14
薬の使用に関する留意点
1.病気を治すのは人体に備わった力であり、薬では
ない。薬は支援。2.薬には副作用がある。
漫然と飲んで飲み過ぎてはいけない。
3.薬の多重大量投与に注意。(そんな医師は信用しない。)
特に向精神剤(廃人になる)。4.抗生物質はきちんと処方通りに飲む
ー耐性菌を作らない。
5.健康食品の広告に踊らされない。
6.しかし、良い薬は1000人の医者に勝る。
小テスト 7
1.抗マラリア剤を2つ挙げよ。 (1行程度)
2.アスピリン/バファリンはどのようにして鎮痛・解熱をするのか。 (3行程度)
3.医薬品の2010年問題とは何か。また、ジェネリック医薬品とは何か。 (3行程度)
氏名と学籍番号を忘れずに記入すること。