7)難治症例を含めた舟状骨偽関節症例に対する治療成績.pdf

― ― 91 日手会誌（J Jpn Soc Surg Hand），第 26 巻第 4 号 309-312，2010 難治症例を含めた舟状骨偽関節症例に対する治療成績 Key words: 【緒言】舟状骨偽関節の原因には，骨折放置，近位部（中枢型）骨折，新鮮骨折への不適切な治療等の様々な原因がある．今回，複数回手術を要した難治性舟状骨偽関節 8 例を含む 27 例を経験し，術後成績および手術術式の選択に検討を加えたので報告する．【対象と方法】対象は舟状骨偽関節と診断し手術的治療を施行した 27 例．男性 24 例，女性 3 例，手術側は右側 12 例，左側 15 例，手術時年齢は 20 から 65 （平均 28）歳であった．受傷時の舟状骨骨折に対する初期治療は，放置 16 例，ギプス固定 6 例，手術的治療が 5 例であった．手術症例 5 例に用いた内固定材料は， Herbert screw 1 例，Herbert Whipple screw 1 例， Bold screw 2 例，Acutrak screw 1 例であった．初期治療から当科で偽関節手術を施行するまでに要した期間は，6 か月から 19 年（平均 3 年 2 か月）で 10 年以上経過例は 4 例存在していた．偽関節発生部位は腰部 22 例，中枢側 3 例であり，他の 2 例は SNAC wrist に進行していた．Filan & Herbert 分類 2）では，D1：4 例，D2：15 例，D3：5 例，D4：3 例で，術前単純 X 線による Radio-lunate angle （RL angle：マイナス表示は月状骨背側回旋を示す）は -35～15 （平均 -5.6）ﾟで -15ﾟ以下が 7 例であった．健側差では，-51～2（平均 -17.8）ﾟで -20ﾟ以下の著明な月状骨背側回旋を示したのは 10 例に認めた．舟状骨偽関節に対する手術は，SNAC wrist に進行した 2 例を除く 25 例に掌側展開による病巣掻爬および腸骨よりの遊離骨移植術を施行した．骨移植術は舟状骨の humpback deformity が高度な 4 例に Fernandez1）の推奨する anterior wedge bone graft， 21 例には海綿骨を主体とした骨移植術を用いた．また内固定材料は，前者の 4 例は移植骨片の脱転を防ぐために kirschner wire のみにて固定，後者の 21 例では Bold screw 5 例，Herbert screw 7 例，Acu- trak screw 9 例であった．術後の外固定期間は，前腕以下のギプス固定を約 6 週間施行した．一方， SNAC wrist の 2 例は舟状骨偽関節の中枢骨片を摘出し，摘出部にできた空隙に腱球あるいは Graner 変法を応用した有頭骨中枢骨片の挿入を各 1 例ずつに施行した 8）．術後経過観察期間は 2 年から 7 年（平均 3 年 2 ヶ月）である．術後評価は，骨癒合の有無，疼痛，可動域，握力および単純 X 線による手根骨配列を評価した．【結果】 SNAC wrist 以外の 25 例中 19 例に骨癒合を獲得できた．骨癒合が得られなかった 6 例は，Filan & Herbert 分類の D2：1 例，D3：4 例，D4：1 例で全例に海綿骨を主体とした骨移植術が施行されていた．また，6 例中 3 例は 10 年以上の放置例であった．内固定材料は Herbert screw 2 例，Bold screw 2 例，Acutrak screw 2 例と一定の傾向はなかった．骨癒合が得られなかった 6 例全例に血管柄付き骨移植術（Zaidemberg 法 2 例，第 2 中手骨基部 6） 4 例）を用いた再手術を施行した．最終的には 1 例を除く 24 例に骨癒合が獲得できた．疼痛は，骨癒合が得られなかった 1 例のみに労作時痛を認め，Zaidem- berg 法を施行した 2 例には採骨部違和感を認めた．握力は健側比で 71～114 （平均 91.2）％，可動域は背屈 30～90 （平均 67.2）ﾟ，掌屈 30～90 （平均 59.2）ﾟ， flexion-extension arc は 65～180 （平均 126.4）ﾟであった．術後単純 X 線による RL angle は，-30～12（平均 -2.8）ﾟで -15ﾟ以下が 4 例であった．健側差では，受理日 2009/10/19 高たか瀬せ勝かつ己み，佐さ藤とう由ゆか佳，河こう野の亮りょう平へい，番ばん場ば泰やす司し，山やまもと本謙けん吾ご舟状骨偽関節，血管柄付き骨移植，Graner 変法，Nonunion of the scaphoid， Vascularized bone graft，Modified Graner procedure 東京医科大学整形外科学教室〒160-0023 東京都新宿区西新宿 6-7-1

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