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森林にはたくさんの働きがあります。そして私たちの暮らしにとても役にたっていることをご存知ですか?
ハルさん
大井川治山センターマスコットキャラクター
Ⅰ 森林の働き
森林の土壌は、落葉などによる有機物の供給や土壌生物の働きにより、穴の多いスポンジのようになっており、雨水などを速やかに地中に浸透させる働きがあります。この働きにより、森林は雨水などを貯えてゆっくりと河川に流すことで、洪水や渇水を緩和しています。またその過程で濁りを抑えたり、水の汚れにつながる物質を取り除くなど水質を浄化しています。
森林内は樹根によって土壌が保持されているとともに、落葉落枝やかん木、草などによって地表が覆われているため、降雨などによる土壌の侵食や流出が抑えられています。
水を貯え、きれいにする
山が崩れるのを防ぐ
木材やきのこを生産する
生き物のすみかとなる
やすらぎの場となる
ここで紹介したほかにも、風を防いだり、空気をきれいにするなど生活環境を快適にするという働きもあり、森林は私たちの暮らしに様々な恵みを与えてくれています。さらに森林は地球温暖化の原因とされる、二酸化炭素を光合成により吸収して成長し、幹や枝などに長期間たくわえることから、地球温暖化防止に貢献することが注目されています。
日本では古くから、生活に木材を利用してきました。この生活に必要な木材を生産しているのが森林です。木材は森林を適切に管理することで、半永久的に再生産することができるため、循環利用が可能な資源といえるでしょう。 また、きのこも森林の恵みのひとつです。
日本は地形的、気候的にも様々な森林が存在します。これらの多様な森林環境は、多くの野生動植物の生息・生育の場となっています。
森林はレクリエーションなどを通じて、心身のやすらぎの場となります。
森林には様々な働きがあり、私たちの暮らしに深くかかわっています。
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急峻な地形で、ぜい弱な地質の日本では局地的な集中豪雨や台風、地震などに伴い、山崩れや土石流、地すべり等が度々発生し、時には人家などに大きな被害を及ぼしています。また、大井川の流域は複雑に断層が交錯していることから地質が特にぜい弱で、また標高が高く寒暖の差が大きいこと、そして降水量も多いことから、侵食が著しく進行し、山崩れが多い地域です。左下の二枚の写真は大井川流域での山崩れの状況ですが、この写真からも山崩れが多い地域であることがご理解いただけると思います。
Ⅱ 山崩れの発生
上の二枚の写真は土石流による被害の状況です。
(写真上)大井川上流二軒小屋付近の状況です。正面の上千枚崩れは約60haの面積があります。(写真右)榛原川地区の状況です。右端のホーキ薙は当地区最大の崩壊地で、現在資材の運搬路を開設しており、平成23年度より復旧に着手する予定です。
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Ⅲ 森林を治す治山工事
山崩れが発生した場合、これ以上拡大しないようにして森林に復旧する工事を「治山工事」と呼びます。治山工事のなかでも、山崩れそのものを復旧する工事を「山腹工事」と呼び、山崩れの状況により様々な工種を使い早期の復旧に努めています。また山崩れから沢へ流出した土砂などは、必要に応じて治山ダム等を施工することで、下流域に被害を及ぼすことがないよう努めています。 大井川治山センターのホームページで、上のイラストの治山工事をしている箇所をクリックすると詳しい説明がご覧いただけます。 Menu→治山事業について→いろいろな治山工事 4
山崩れを森林に戻す
山崩れを起している急な斜面は、表土の土がたえず動いているので、たとえ植物が生えたとしても大きく育つ前に流されてしまいます。そこに、土留工を造ると表面の土が動かなくなり、植物が大きく育つことができるようになります。
治山ダムで森林を守る
治山ダムは水を貯めるダムではありません。水の勢いを弱めたり、土砂を貯めることによって森林を守っています。
川の流れが急で水の勢いが強いところでは、川底や岸を削ってしまい両岸の山が崩れることがあります。治山ダムを造ると土砂を貯めて山を支えるので山が崩れにくくなります。
森林環境に配慮する
治山工事を実施するために、資材の運搬路を開設することもあります。開設にあたっては樹木の伐
採を最小限にしています。また、運搬路は治山工事完
了後には森林へ戻すことを前提にしていることから、構造物も撤去が可能な資材を使用しています。
複数の治山ダムを階段状に造ると、川の流れが緩やかになるので、川の水が土砂を運ぶ力を小さくして災害のおそれのある多くの土砂が一度に流れ出ないようにすることができます。(写真:階段状に造った治山ダム)
治山ダムは土砂を貯めて、ふだんから少しずつ下流へ流していきます。
写真:開設中の運搬路現在、榛原川地区のホーキ薙を
復旧するために、開設している運搬路です。運搬路の使命が終わるとコンク
リート舗装を剥がして植栽することにより、森林へ復旧することが可能です。
山腹工の基礎となる土留工(写真左)は、不安定土砂の移動を抑止し斜面の安定を図ります。写真ではコンクリートを使っていますが、状況
山腹工では山崩れの状況に応じて様々な工種を使います。ここではそのうちのいくつかをご紹介します。
により様々な材料を使用します。法枠工(写真中)は、斜面の侵食や崩壊を防止します。また枠内には特殊配合モルタル等を吹付けて緑化を図ります。道路等が無く資材の搬入が困難な奥地の山崩れには、ヘリコプターから種子等
を播いて早期の緑化を図ります。(写真左下)
治山ダム
土留工
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崩壊地の復旧には基礎工として土留工を設置しますが、土留工の材料はコンクリートだけではありません。崩壊地内に堆積している破砕岩を中詰材として利用した「ふとんかご土留工」や間伐材を活用した木製ブロックを使用した「木製ブロック積土留工」などを併用し、コスト縮減や木材利用の推進にも努めています。
土留工、法枠工と特殊配合モルタル吹付工で復旧した箇所。法枠工の枠内も特殊モルタルを吹付けていますが、このモルタルは植生が可能であるため、数年後には緑に覆われることでしょう。
RCMは崩壊地など急斜面での作業が可能な、パワーショベルです。2本のワイヤで車体を懸架し、キャビ
ンを水平に保ちながら作業を行います。以前は人力でこのような急斜面での作業をしていましたが、RCMを導入してからは安全かつ効率的に作業をおこなうことが可能となり、崩壊地を復旧する治山工事の現場で大活躍をしています。
RCM(ロッククライミングマシン)
金 沢
北の沢
ゴボウ薙
ふとんかご土留工
木製ブロック土留工
木製ブロック施工状況
ふとんかご土留工中詰材施工状況
RCM施工前 RCM施工後 法枠工施工後
着工前
着工前
完 成
完 成
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枯木戸崩枯木戸崩は資材を運搬する手段が無く、草や樹木の種子をヘリコプターを使用し播きました。このような工種を航空実播工といいます。着手前(写真左:昭和58年撮影)に比べ、現在(写真中:平成20年撮影)では植生が回復してきています。 写真右は崩壊地内の現在の状況です。
門 沢 昭和57年の台風10号により、門沢の上流部で崩壊が発生し、崩壊土砂が土石流となって沢を流下しました。(写真左) その後、治山工事を実施して復旧に努め、昭和62年に完了しました。(写真中) 治山工事完了後20年が経過した現在では、緑豊かな森林に戻りつつあります。(写真右)
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崩れた森林は、治山工事をおこなうことで元の緑豊かな森林に戻ります。大井川治山センターでは、大井川の中上流域、43,632haの区域で、山崩れなどで荒廃した森林を復旧する治山事業を実施しています。
関東森林管理局 大井川治山センター
〒428-0411
静岡県榛原郡川根本町千頭950-2 電 話 0547-59-3344 FAX 0547-58-7010 http://www.rinya.maff.go.jp/kanto/tisan/index.html
Ⅳ 森林の復活