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1 ”円偏光蛍光キラリティをスイッチング” できるフルカラー発光材料 京都大学 工学研究科 合成・生物化学専攻 ◯長田裕也, 西川剛, 杉野目道紀

”円偏光蛍光キラリティをスイッチング” できるフル …...3 従来技術とその問題点 既に開発されている多くの円偏光蛍光材料では 円偏光のキラリティは左右どちらか一方のみ

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”円偏光蛍光キラリティをスイッチング”できるフルカラー発光材料

京都大学 工学研究科 合成・生物化学専攻

◯長田裕也, 西川剛, 杉野目道紀

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研究背景

http://www.sony.jp

https://www.hologram-pro.jphttps://www.thermofisher.com

円偏光蛍光バイオプローブ・コピー防止特殊印刷・3Dディスプレイ等への応用

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従来技術とその問題点

既に開発されている多くの円偏光蛍光材料では

円偏光のキラリティは左右どちらか一方のみ

であるために応用範囲が制限されている

特に、外部刺激によって円偏光キラリティが

スイッチングできれば応用範囲は格段に広がる

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従来技術とその問題点

・希少性の高い希土類元素(ユーロピウム)を用いる必要がある・ユーロピウムからの発光に基づいているため、発光波長制御は難しい

Yuasa, J.; Ueno, H.; Kawai, T. Chem. Eur. J., 2014, 20, 8621.

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ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の溶媒依存性らせん反転

溶媒依存性らせん反転

クロロホルム中で右巻き

1,1,2-トリクロロエタン中で左巻き

Nagata, Y.; Yamada, T.; Adachi, T.; Akai, Y.; Yamamoto, T.; Suginome, M. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 10104.

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ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の溶媒依存性らせん反転

1,1,2-TCE/Toluene (2/1)60 ℃, 6 h

CHCl3, 60 ℃, 1 h

93% ee (R)97% ee (S)

Yamamoto, T.; Yamada. T.; Nagata, Y.; Suginome, M. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 7899.

SiCl3 SiCl3HSiCl3 +

高分子不斉触媒への応用

右巻き触媒 左巻き触媒

HSiCl3 +

[Pd] [Pd]

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ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の溶媒依存性らせん反転

高分子不斉触媒への応用

発明の名称:光学活性らせんポリマーの製造方法および光学活性らせんポリマー重合開始剤・WO 2006/095810発明の名称:配位性側鎖を有する光学活性らせんポリマー・WO/2007/094362

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従来技術とその問題点

蛍光量子収率が低く(1%以下)材料として現実的でないNagata, Y,; Nishikawa, T.; Suginome M. Chem. Commun. 2014, 50, 9951.

gCPL = +2.3 × 10-4 (CHCl3)

gCPL = -4.1 ×10-4 (1,1,1-TCE)

CHCl3 1,1,1-TCE

Fluorescent quantum yield: 0.6%

1,1,1-トリクロロエタン中で右巻き

クロロホルム中で左巻き

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Ar N

N

N

NN

N

NN

N

N

NN

N

N

N

N

*RO*RO

OR*

OR*

OR*OR*

OR*

OR**RO*RO

Ar

らせん高分子触媒

蛍光発光部位触媒部位らせん構造形成部位 らせん構造形成部位

円偏光蛍光材料

本設計の利点:らせん構造形成機能と蛍光発光団を独立に設計可能

機能団をらせん構造を利用してねじる

本発明のコンセプト

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Ar =

a b d e1a-e

クロロホルム中での蛍光スペクトル

OMeOMeMeO

S

NMe2

c f

1a 1b 1c 1d 1e 1f

極大発光波長[nm] 473 512 536 569 577 605

蛍光量子収率[%] 3.1 33.0 12.7 40.7 49.7 24.6

蛍光

発光

強度

(規

格化

後) 1a 1b 1c 1d 1e 1f

蛍光発光波長のチューニング

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Ar =

1g

Ar =N

N

OO

100

蛍光量子収率 0.3%

CF3

PQ 1b’

芳香環の導入無し 電子不足芳香環の導入

N

N

Ar

片方だけ芳香環を導入

蛍光量子収率 0.5% 蛍光量子収率 8.6%

Ar =OMe

1b

蛍光量子収率 33.0%

蛍光発光部位導入の効果

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蛍光

発光

強度

(規

格化

後)

Ar =OMe

1b

N

N

Ph

Ph

Ar

Ar

Ar =OMe

モデル化合物 2

N

N

OO

100PQ

低分子モデル化合物との比較

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Ar =

エネルギー移動効率:34.0%

N

N

Ar

Ar

エネルギー移動

励起光(350 nm)

効率的な蛍光発光(512 nm)

励起光(350 nm)

N

N

Ph

Ph

Ar

Ar

Ar =+PQ モデル化合物 2

PQ と モデル化合物 2 の混合物 (PQ/2 = 95/5)

N

N

OO

N

N

Ph

Ph

Ar

Ar

(95当量→多くの励起エネルギーは熱として失われてしまう)

(5当量)蛍光発光(512 nm)

励起光の一部(350 nm)

ポリマー中でのエネルギー移動

蛍光量子収率 33.0% 蛍光量子収率 5.1% (合計)

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OMe

S

a b c d e

(1a と 1fでは溶解性向上の為、THFを共溶媒として用いた)

*

f

ポリマーの溶媒依存性らせん反転

1,1,2-トリクロロエタン中で右巻き

クロロホルム中で左巻き

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1b 1f1c1a 1d

1,1,2-TCE CHCl3

OMe

S

1e

1a‒f

(1a と 1fでは溶解性向上の為、THFを共溶媒と

して用いた)

円偏光キラリティのスイッチング

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(1g) 1a 1b 1c 1e 1f

CHCl3 1,1,2-TCE

1d

1d1d

1f1f

1b1b

円偏光キラリティのスイッチング

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Ar = シクロオクタンn-オクタン

Polymer 3

シクロオクタン中で右巻き

n-オクタン中で左巻き

Nagata, Y,; Nishikawa, T.; Suginome M. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 15901.

gCPL = +8.9 ×10-4

at 500 nm

gCPL = -7.7 × 10-4

at 506 nm

OMe

蛍光発光部位らせん構造形成部位

炭化水素溶媒によるスイッチング

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固体フィルム状態での蛍光発光

固体フィルム状態でも強い蛍光発光を示す

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固体フィルム状態での蛍光発光

固体フィルム状態では、発光波長はわずかに長波長側にシフト

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想定される用途

• 本技術の特徴を生かすためには、偽造防止印刷やバイオ研究用色素等への展開が効果的であると考えられる。

• また、円偏光蛍光発光に着目すると、ELデバイス用発光材料や3Dディスプレイといった用途に展開することも可能と思われる。

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 本技術を用いることで、従来技術では困難であった円偏光蛍光のキラリティの切り替えが可能である。

• 特に、希少元素を用いることなく円偏光蛍光発光を発現できるため、コストの削減に繋がることが期待される。

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実用化に向けた課題

• 現在、発光波長のチューニング、円偏光蛍光のキラリティスイッチングに関する溶媒の制御まで開発済みである

• 一方で、円偏光度のさらなる向上が必須であると考えている。

• また、今後固体薄膜状態での円偏光発光挙動について実験データを取得し、薄膜材料に適用していく場合の条件検討を進める。

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企業への期待

• 円偏光度については、円偏光検出技術の向上によっても克服できると考えている。

• 円偏光検出技術/高分子薄膜作製技術を持つ、企業との共同研究を希望する。

• また、バイオ研究用色素を開発中の企業には本技術の導入が有効と思われる。

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産学連携の経歴

• 2014年- JST CREST 「キラリティのスイッチングと

増幅を特徴とする次世代キラル触媒システムの創製」 (研究代表者 杉野目道紀)

• 2009年-2013年 JST CREST 「キラルナノ分子ロッドによる機能の階層的不斉集積と組織化 」 (研究代表者 杉野目道紀)

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 : ポリキノキサリンを主骨格とする

キラリティスイッチング型円偏光蛍光材料の作成方法

• 出願番号 : 特願2016-159587• 出願人 : 国立大学法人京都大学

• 発明者 : 杉野目道紀・長田裕也・西川剛

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お問い合わせ先

関西TLO株式会社 京大事業部

ライセンスアソシエイト

伊勢 賢太郎(いせ けんたろう)

TEL 075-753-9150FAX 075-761-7681

e-mail [email protected]