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715 Aeromonas属 の薬剤耐性,溶 血 活 性 と保 有 す る プ ラス ミ ド 杏林大学保健学部臨床微生物学教室 森田 耕司 渡辺 金森 政人 (平成1年9月8日 受付) (平成1年11月27日 受理) Key words: Aeromonas, antimicrobial resistance, hemolytic activity, plasmid ヒ ト由来(海 外 旅 行 下 痢 症,散 発 下 痢 症 の 国 内 例,健 常 人 の糞 便 由 来)のA. hydrophila(57株), A . sobria(38株), A.caviae(5株)と 河 川 水,河 川 土 壌,淡 水 魚(多 摩 川,相 模 川),海 水(東 よ び 食 品 か ら分 離 し た 環 境 由 来 のA. hydrophila(40株), A.sobria(27株), A.caviae て 薬 剤 耐 性,プ ラ ス ミ ドの 保 有 お よ び 各 種 動 物(ウ マ,ウ サ ギ,ヒ ツ ジ,ニ ワ トリ,モ ル モ ッ ト)赤 球 に 対 す る溶 血 活 性 を 調 べ 以 下 の 成 績 を 得 た. 1. 全 株 を 通 じて99.4%の 株 がABPC耐 性 で あ った が,CP,TC耐 性 株 は極 め て 少 な か っ た.ま た,環 境 由 来 のA.hydrophilaに は 多 剤 耐 性 化 の 傾 向 が 認 め られ た. 2. 環 境 由 来 株 の37%,ヒ ト由 来 株 の39.2%か らプ ラス ミ ドが検 出 され た.ま た,環 境 由 来 のA.hydro- phila 7株 お よ びA.sobria 3株 に63~150kb,さ ら に,散 発 下 痢 症 の 国 内 発 症 例 お よ び 健 常 成 人 由来 A.hydrophila 2株 に58kb, 90kbの 接 合 性Rプ ラ ス ミ ドの 保 有 を 認 め た が,海 外 旅 行 下 痢 症 由来 の 株 は,い ず れ も保 有 を 認 め な か った. 3. 溶 血 活 性 の 高い 株 は,由 来 に か か わ らずA.hydrophila>A.sobria>A.caviaeの 順 に 多 か っ た. A. hydrophilaに つい て は,環 境 由来 株 の80%以 上,ヒ ト由 来 株 の98%以 上 の株 が そ れ ぞ れ 溶 血 毒 素 陽 性 株 で あ る こ とが 確 認 され た. Aeromonas属 の細 菌 は河 川,湖 沼,海 水,土, 食 品 な ど に広 く分 布 し,水 産 領 域 に おい て は 魚類 をは じめ とす る水棲動物 の病原菌 として注 目され て きた1)2).本菌 に よ る ヒ トの 感 染 症 に 関 し て は統 一 的 な 知 見 が得 られ てい ない が ,基 礎 疾 患 が ない 下 痢 患 者 か ら分 離 され,そ の下痢起病性が示唆 さ れ てい る3).さ らに 本 菌 の腸 管 病 原 性 と関 連 す る 毒 素(hemolysin, cytotoxin, enterotoxin)の 状 につい て議論 が展開 されてい る4)~7).また,わ が 国 に お いて も食 中 毒 発 生 事 例 お よ び起 因 菌 検 出状 況 の 集 積 結 果 か ら,急 性 胃腸炎あるいは下痢発症 にかかわ る本菌属 中 のAeromonas hydrophila (A.hydrophila)とA.sobriaが,食 品衛生 とづ く食中毒起 因菌 として対拠 され るに至 った. 著者 ら は, Aeromonas属 の病原的意義を明確に す るための基礎的研究の一環 として,健 常成人お よび下痢症患者か ら分離 された ヒト由来株 と河 川,海 水,食 品等 か ら分 離 され た 環 境 由来 株 を 対 象 に,薬 剤耐性 とその発現,伝 播にかかわ るプラ ス ミ ドの 保 有 に つい て パ タ ー ン解 析 を行い,さ に本菌の下痢起病性との関連性が論議されてい る 溶血性につい て検討を行ったので,そ の成績につ て報 告 す る. 材料 と方法 1) 使用菌株:ヒ ト由来 株 と し て,1987~88年 分離 された海外旅行下痢症,散 発下痢症の国内発 別刷 請 求 先: (〒192)八 王 子市 宮 下 町476 杏林大学保健学部臨床微生物学教室 森田 耕司 平 成2年6月20日

Aeromonas属 の薬剤耐性,溶 血活性と保有するプラ …journal.kansensho.or.jp/kansensho/backnumber/fulltext/64/...715 Aeromonas属 の薬剤耐性,溶 血活性と保有するプラスミド

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715

Aeromonas属 の薬剤耐性,溶 血活性 と保有す るプラス ミ ド

杏林大学保健学部臨床微生物学教室

森 田 耕 司 渡 辺 登 金 森 政 人

(平成1年9月8日 受付)

(平成1年11月27日受理)

Key words: Aeromonas, antimicrobial resistance, hemolytic activity, plasmid

要 旨

ヒ ト由来(海 外 旅行 下痢 症,散 発 下痢 症 の国 内例,健 常 人 の糞 便 由来)のA. hydrophila(57株), A .

sobria(38株), A.caviae(5株)と 河 川水,河 川土 壌,淡 水 魚(多 摩 川,相 模川),海 水(東 京湾)お

よび食 品 か ら分 離 した環境 由来 のA. hydrophila(40株), A.sobria(27株), A.caviae(7株)に つい

て 薬剤 耐性,プ ラス ミ ドの保 有 お よび各種 動物(ウ マ,ウ サ ギ,ヒ ツジ,ニ ワ トリ,モ ル モ ッ ト)赤 血

球 に対 す る溶 血 活性 を調 べ以 下 の成績 を得 た.

1. 全 株 を通 じて99.4%の 株 がABPC耐 性 であ った が,CP,TC耐 性株 は極 め て少 なか った.ま た,環

境 由来 のA.hydrophilaに は多 剤耐 性化 の傾 向が 認め られ た.

2. 環 境 由来株 の37%,ヒ ト由来株 の39.2%か らプ ラス ミ ドが検 出 され た.ま た,環 境 由来 のA.hydro-

phila 7株 お よびA.sobria 3株 に63~150kb,さ らに,散 発下 痢症 の 国内発 症例 お よび健 常成 人 由来 の

A.hydrophila 2株 に58kb, 90kbの 接 合性Rプ ラス ミ ドの保 有 を認め たが,海 外 旅行 下痢症 由来 の株 に

は,い ずれ も保 有 を認め な か った.

3. 溶 血活 性 の高い 株 は,由 来 にか かわ らずA.hydrophila>A.sobria>A.caviaeの 順 に多 か った.

A. hydrophilaに つい ては,環 境 由来 株 の80%以 上,ヒ ト由来株 の98%以 上 の株 が それ ぞれ溶 血毒 素陽 性

株 で あ る ことが確 認 され た.

緒 言

Aeromonas属 の細菌は河川,湖 沼,海 水,土,

食品などに広 く分布 し,水 産領域においては魚類

をはじめ とす る水棲動物の病原菌 として注 目され

てきた1)2).本菌によるヒトの感染症に関しては統

一的な知見が得 られていないが,基 礎疾患がない

下痢患者から分離され,そ の下痢起病性が示唆 さ

れてい る3).さ らに本菌 の腸管病原性 と関連す る

毒素(hemolysin, cytotoxin, enterotoxin)の 性

状につい て議論が展開 されてい る4)~7).また,わ が

国において も食中毒発生事例および起因菌検出状

況の集積結果から,急 性 胃腸炎あるいは下痢発症

にかかわ る本菌属 中のAeromonas hydrophila

(A.hydrophila)とA.sobriaが,食 品衛生法にも

とづ く食中毒起因菌として対拠 されるに至 った.

著者 らは, Aeromonas属 の病原的意義を明確に

す るための基礎的研究の一環 として,健 常成人お

よび下痢症患者か ら分離 された ヒト由来株 と河

川,海 水,食 品等から分離 された環境由来株を対

象に,薬 剤耐性 とその発現,伝 播にかかわ るプラ

ス ミドの保有についてパターン解析を行い,さ ら

に本菌の下痢起病性との関連性が論議されてい る

溶血性につい て検討を行ったので,そ の成績につ

いて報告する.

材料 と方法

1) 使用菌株:ヒ ト由来株 として,1987~88年 に

分離 された海外旅行下痢症,散 発下痢症の国内発

別刷請求先: (〒192)八 王子市宮下町476

杏林大学保健学部臨床微生物学教室

森 田 耕司

平成2年6月20日

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716 森田 耕司 他

症 例 お よび 健 常 成 人 糞 便 由来 のA. hydrophila 57

株, A. sobria 38株, A. caviae 65株 の合 計100株,

環 境 由 来 株 と して, 1982~88年 に東 京 都,神 奈 川

県 内 の 河 川 水,河 川 土 壌 と淡 水 魚(多 摩 川,相 模

川),海 水(東 京 湾)お よ び食 品 か ら分 離 され たA.

hydrophila40株, A.sobria 27株, A. caviae 7株

の 合 計74株 を使 用 した.ま た,接 合 伝 達,形 質 転

換 の レシ ピ エ ン トと して は, Escherichia coli (E.

coli) K-12 CSH-2 (F-, met, NAr)あ る い はE.

coli K-12 HB101(recA, str)を 用い た.

2) 薬 剤 耐 性 パ タ ー ン:抗 生 剤 は,ア ミ ノペ ン ジ

ル ペ ニ シ リン(ABPC,明 治 製 菓),セ フ ァ ロ リジ

ン(CER,塩 野義 製 薬),セ フ ォペ ラ ゾン(CPZ,

台 糖 フ ァ イザ ー),ク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ール(CP,三

共),カ ナ マ イ シ ン(KM,明 治 製 菓),ナ リジ ク ス

酸(NA,第 一 製 薬),ス トレプ トマ イ シ ン(SM,

明 治 製 菓),ス ル フイ ソキ サ ゾ ール(SIX,山 之 内

製 薬),テ トラ サ イ ク リン(TC,武 田 薬 品)を 使

用 した.薬 剤 感 受 性 は,バ ー トイ ン フ ユー ジ ョン

寒 天 培 地(HIA,日 水 製 薬)にABPC,KMは 終

濃 度25μg/ml, CER, CPZ, CP, NA, SM, TCは

12.5μg/mlに 添 加 し, SIXはDavisの 最 小 培 地8)

に50μg/ml添 加 した も の を用い て 確 認 した.

3) 接 合 性Rプ ラ ス ミ ドの 検 出:耐 性 株 を ド

ナ ー, E. coli K-12 CSH-2(NAr)を レシ ピェ ン

トと し て,こ れ らをPenassay broth (PAB, antibi-

otic medium 3, DIFCO)で 一 夜 培 養 後, 5mlの

PABに ドナ ーを0.2ml,レ シ ピエ ン トを1.0ml加

え て 一 夜 混 合 培 養 し,接 合 伝 達 を行 つた.Rプ ラ

ス ミ ド ・ トラ ン ス コン ジ ュ ガ ン トの選 択 に は,ド

ナ ーが 耐 性 を 示 す 薬 剤 を1剤 と ドナ ー発 育 阻 止 の

た め にNA(25μg/ml)を 添 加 したHIA平 板 を 使

用 した.

4) プ ラ ス ミ ドの 検 出:Kadoら の 方 法9)にご従

い,ア ル カ リーSDSに よ る溶 菌 の 後 に ク ロ ロ ホ ル

ム ー フ ェ ノー ル でDNAを 抽 出 し,0.7%ア ガ ロ ー

ス(宝 酒 造,LO3)ゲ ル で 電 気 泳 動 後,エ チ ジ ウ ム

ブ ロ マ イ ドで 染 色,紫 外 線 照 射 を 行 っ て プ ラ ス ミ

Table 1 Antibiotic resistance patterns of Aeromonas species isolated from environmental sources

a Examined at Shinagawa health center.b Fresh water (Tama River) and sea water (Tokyo Bay).c Soil and fresh-water fishes collected at Tama River and Sagami River.

感染症学雑誌 第64巻 第6号

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Aeromonasの 薬 剤 耐 性,溶 血 性 とプ ラ ス ミ ド 717

ドDNAを 検 出 した.

5) プ ラ ス ミ ドの 精 製: Gotoら の 方 法10)に 従 っ

て 調 製 したcleared lysateを,エ チ ジ ウ ム ブ ロ マ

イ ド・CsCl密 度 勾 配 平 衡 遠 心 法 で 分 離 して精 製 し

た.

6) 形 質 転 換:Cohenら の 方 法11)に 従 つて 行

い,レ シ ピエ ン トをLプ ロ ス(バ ク ト ト リプ トン

10g,バ ク ト イ ー ス ト エ キ ス5g, NaCl 5g/l,

pH7.4)で 培 養 後,集 菌,洗 浄,0.1M CaCl2処 理

し,コ ン ピテ ン トセ ル と した.

7) 溶 血 活 性 の 測 定: Burkeら の 方 法12)に 準 じ

て,各 菌 株 を ハ ー ト イ ン フ ユー ジ ョン プ ロ ス

(HIB,日 水 製 薬)で37℃,一 夜 培 養 後,上 清 を 分

離 し,そ れ ぞ れphosphate-buffered saline(PBS)

で 倍 数 希 釈 した 希 釈 系 列 を作 成 して 行 った.赤 血

球 は,ウ マ,ウ サ ギ,ヒ ツジ,ニ ワ ト リお よ び モ

ル モ ッ トの5種 類 を 用 い・,PBSで1%浮 遊 液 と し

た も の を 使 用 した.溶 血 活 性値 は50%溶 血 を 示 す

最 大 希 釈 倍 数 を と つた.

結 果

1. 薬 剤 耐 性

1) 環 境 由来 株 の薬 剤 耐 性(Table 1):河 川 水,

河 川 土 壌 と淡 水 魚(多 摩 川,相 模 川)海 水(東 京

湾)お よ び食 品 か ら分 離 され たA. hydrophila, A.

sobria, A. caviae 74株 中73株(98.7%)がABPC

耐 性 で,TCに 対 し て は す べ て の 株 が 感 受 性 で

あ った.以 下 耐 性 率 を 菌 種 別 に ま と め る と,A.

hydrophilaで はSM100%, CER97.5%, KM

75%, CPZ70%, SIX60%, CP2.5%, A.sobriaで

はSM59.3%, CER33.3%, KM11.1%, SIX

7.4%, CPZお よ びCP3.7%, A.caoiaeで はSM

100%, CER85.7%, KM57.1%, CPZ, CPお よ び

SIX0%で あ つた.耐 性 型 はA.hydrophilaで は

ABPC CER CPZ KM SIX SM耐 性 型(32.5%),

ABPC CER CPZ KM SM耐 性 型(15%), ABPC

CER KM SM耐 性 型(12.5%), A. sobriaで は

Table 2 Antibiotic resistance patterns of Aeromonas species isolated from human feces

aSporadic cases in Tokyo.

平成2年6月20日

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718 森田 耕司 他

ABPC SM耐 性 型(40.7%), ABPCCER耐 性 型

(14.8%), ABPC単 剤 耐 性 型(14.8%), A.caviae

で はABPC CER KM SM耐 性 型(57.1%),

ABPC CER SM耐 性 型(28.6%)の 順 に 多 く, A.

hydrophilaの 多 剤 耐 性 化 傾 向 を 認 め た.

2) ヒ ト由来 株 の 薬 剤 耐 性(Table 2):海 外 旅

行 下 痢 症,散 発 下 痢 症 の 国 内発 症 例 お よび 健 常 成

人 由来 のA.hydrophila, A. sobria, A. caoia6 100

株 す べ て がABPC耐 性 で あ った.以 下 菌 種,由 来

別 に 耐 性 率 を み る と,健 常 成 人 お よび 散 発 下 痢 症

の 国 内 発 症 例 由 来 のA. hydrophila 21株 で は, SM

95.2%, CER81%, KM57.1%, CPZ52.4%, SIX

33%, CP19%で あ った.海 外 旅 行 下 痢 症 由 来 の

A.hydrophilaで は, SM86.1%, CER69.4%,

CPZ33.3%, SIX25%, KM16.7%, CP0%,同

じ く海 外 旅 行 下 痢 症 由 来 のA.sobriaで はSM

100%, KM76.3%, CPZ63.2%, CER47.4%,

SIX10.5%, TC5.3%, CP2.6%,同 じ く海 外 旅

行 下 痢 症 由 来 のA. caviaeで は, SMとCER

100%, KM40%,そ め 他ABPCを 除 く薬 剤 に対

し て は感 受 性 で あ った.各 薬 剤 に対 す る耐 性 型 は,

健 常 成 人 由来 のA.hydrophilaで は, ABPC CER

CPZ KM SM耐 性 型(40.0%), ABPC CER CPZ

KM SIX SM耐 性 型(30.0%), ABPC CER CPZ

SIX SM, ABPC CPZ KM SIX SMお よ びABPC

CER CPZ CP KM SMの 各 耐 性 型(10.0%)で

Table 3 Drug resistance and plasmid profiles of plasmid-carrying Aeromonas isolates from environmental

sources

a,b,c See the footnote in Table 1.*Conjugative R plasmid . **ƒÀ -lactamase plasmid .

感染症学雑誌 第64巻 第6号

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Aeromonasの 薬 剤 耐性,溶 血 性 とプ ラス ミ ド 719

あ つ た.ま た,散 発 下 痢 症 の 国 内 発 症 例 で は,

ABPC CER SM耐 性 型(45.5%), ABPC KM

SM, ABPC CER, ABPC CER SIX SM, ABPC

CP KM, SM, ABPC CER CPZ CP SIX SMお よ

びABPC CER CPZ CP KM SIX SMの 各 耐

性 型(9.1%)で あ っ た.海 外 旅 行 下 痢 症 由来 のA.

hydrophilaで はABPC CER SM耐 性 型(16.7%),

ABPC CER CPZ SM耐 性 型(16.7%), ABPC

SM耐 性 型(13.9%),同 じ く海 外 旅 行 下 痢 症 由来

のA. sobriaで は, ABPC CER CPZ KM SM

耐 性 型(34.2%), ABPC CPZ KM SM耐 性 型

(18.4%), ABPC KM SM耐 性 型(13.2%),

ABPC SM耐 性 型(15.8%),同 じ く海 外 旅 行 下 痢

症 由来 のA. caviaeで は, ABPC CER SM耐 性型

(60%), ABPC CER KM SM耐 性 型(40%)で

あ つた. TC耐 性 は 環 環 由来 株,ヒ ト由 来 株 を通 じ

Table 4 Drug resistance and plasmid profiles of plasmid-carrying Aeromonas isolates from human feces

a Sporadic cases in Tokyo.*Conjugative R plasmid . **ƒÀ-lactamase plasmid .

平成2年6月20日

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720 森田 耕司 他

て 海 外 旅 行 下 痢 症 由来 のA. sobria 2株 に の み 認

め られ た.

3) β-ラ ク タ ム剤(ABPC, CER, CPZ)の 耐 性

型:β-ラ ク タ ム剤 耐 性 に 関 し て は,由 来 に か か わ

らずA. sobriaのCER耐 性 株 が 比 較 的 少 な くA.

oaoiaeの す べ て が,CPZ感 受 性 で あ る こ とが 特 徴

的 で あ った(Table1,2).β-ラ ク タ ム剤 に 対 す る

耐 性 型 を 比 較 す る と,環 境 由来 のA. hydrophila

で はABPC CER CPZ耐 性 型(67.5%), ABPC

CER耐 性 型(30%), ABPC CPZ耐 性 型(2.5%)

で あ った.同 じ く環 境 由 来 のA. sobriaで は

ABPC CER CPZ耐 性 型(3.7%), ABPC CER耐

性 型(29.6%), ABPC単 剤 耐 性 型(63%), A.

caviaeで はABPC CER耐 性 型(85.7%), ABPC

単 剤 耐 性型(14.3%)で あ った.健 常 成 人 お よ び

散 発 下 痢 症 の 国 内発 症 例 由来 のA. hydrophila 21

株 で は, ABPC CER CPZ耐 性 型(47.6%), ABPC

CER耐 性 型(38.1%), ABPC単 剤 耐 性 型

(9.5%), ABPC CPZ耐 性 型(4.8%)で あ っ た.

海 外 旅 行 下 痢 症 由 来 のA. hydrophilaで は,

ABPC CER CPZ耐 性 型(30.6%), ABPC CER

耐 性 型(38.9%), ABPC単 剤 耐 性 型(27.8%),

ABPC CPZ耐 性 型(2.8%)で あ つた.同 じ く海

外 旅 行 下 痢 症 由来 のA. sobriaで は, ABPC CER

CPZ耐 性 型(42.1%), ABPC単 剤 耐 性 型

(31.6%), ABPC CPZ耐 性 型(21.1%), ABPC

CER耐 性 型(5.3%),同 じ くA. caviaeで は

ABPC CER耐 性 型(100%)で あ った.

2. 保 有 す る プ ラ ス ミ ド

1) 環 境 由来 株:74株 中29株(39.2%)に プ ラ ス

ミ ドの保 有 を 認 め た.プ ラ ス ミ ド保 有 株 の 耐 性 パ

タ ー ン,接 合 性Rプ ラ ス ミ ド有 無 お よ び検 出 され

Table 5 Hemolytic activity of Aeromonas species isolated from environmental sources

*Hemolytic titer : hemolysis of 50% of the erythrocytes was considered the end point, and results were expressed as the

reciprocal of the greatest dilution showing the hemolysis.

感染症学雑誌 第64巻 第6号

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Aeromonasの 薬剤 耐 性,溶 血 性 と プ ラス ミ ド 721

た プ ラ ス ミ ドの サ イ ズ をTable 3に 示 した .接 合

性Rプ ラ ス ミ ドの サ イ ズ と耐 性 マ ー カ ー は, A.

hydrophilaで は150ki1obase pair(kb) KM SIX

SM(1株 が保 有), 120kb KM SM(2株 が 保 有),

130kb KM SIX SM(1株 が 保 有), 110kb KM

SIX SM(1株 が保 有), 90kb CP SIX SM (1

株 が保 有), 63kb SM(1株 が 保 有), A.sobriaで

は150kb KM SM(1株 が保 有), 110kb KM SIX

(2株 が 保 有)を 確 認 した がA.caviaeに は 保 有 を

認 め な か った.

A. hydrophilaが 保 有 す る ミニ プ ラ ス ミ ドに つ

い て は,薬 剤 耐 性 の コ ー ドの有 無 を 確 認 す るた め

に,各 株 の プ ラ ス ミ ドDNAを 分 離 精 製 し,こ れ ら

を 用 い てE. coli K-12 HB101株 の 形 質 転 換 を 行 っ

た.形 質 転 換 菌 を原 株 が 耐 性 を示 した 薬 剤 で選 択

した 結 果, ABPC, CERで の み形 質 転 換菌 が 得 ら

れ た.こ れ らの 形 質 転 換 菌 が 保 有 す る プ ラ ス ミ ド

の サ イ ズ は7.3, 7.5ま た は8.4kbで あ った(Table

3).

2) ヒ ト由 来 株:100株 中37株(37%)に プ ラ ス

ミ ドの 保 有 を認 め た.プ ラス ミ ド保 有 株 の 耐 性 パ

タ ー ン,接 合 性Rプ ラ ス ミ ドの 有 無 お よび検 出 さ

れ た プ ラ ス ミ ドの サ イ ズ をTable4に 示 した.散

発 下 痢 症 の 国 内 発 症 例 お よ び 健 常 成 人 由来 のA.

勿 〃o助 吻2株 か ら90kbABPCSM,58kbKM

SIXSMの 接 合 性Rプ ラ ス ミ ドが 検 出 され た.一

方,海 外 旅 行 下 痢 症 由 来 の3菌 種 か ら は,い ず れ

か ら も接 合 性Rプ ラ ス ミ ドが 検 出 され な か った.

環 境 由来 株 と 同様 にA.hydrophilaが 保 有 す る

ミニ プ ラス ミ ドについ て 薬 剤 耐 性 の コ ー ドの有 無

を 確 認 した結 果,同 じ くABPC, CERで の み 形 質

転 換 菌 が得 られ,形 質 転 換 菌 が 保 有 す る プ ラ ス ミ

Table 6 Hemolytic activity of Aeromonas species isolated from human feces

*See the footnote in Table 5 .

平成2年6月20日

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722 森田 耕司 他

ドの サ イ ズ は7.2, 7.3, 7.8, 8.4ま た は10.5kbで

あ っ た(Table4).

3. 溶 血 活 性

1) 環 境 由来 株 の溶 血 活 性(Table 5)

各 種 動 物 の 赤 血 球 に対 す る溶 血 活 性 値 を 比 較 す

る と,モ ル モ ッ ト〉 ウサ ギ 〉 ウマ 〉 ニ ワ ト リ〉 ヒ

ツ ジ の順 に 溶 血 を受 け や すい 傾 向 を 示 し,菌 種 別

に 比 較 す る と 溶 血 活 性 の 高い 株 はA. hydro-

phila>A. sobria>A.caviaeの 順 に多 か った.食

中毒 起 因 菌 と して 対 処 され るA. hydrophila, 4.

sobriaで は,溶 血 さ れ難 か つた ヒ ツジ 赤 血 球 に 対

す る活 性 値 を 除い た,ウ マ,ウ サ ギ,ニ ワ ト リ,

モ ル モ ッ トの 赤 血 球 に 対 し て は,A. hydrophilaの

80~82.5%, A. sobriaの48.1~63%がBurke

ら12)の基 準 に も とつ く溶 血 毒 素 陽 性(溶 血 活 性

値>2)株 で あ った.

2) ヒ ト由来 株 の 溶 血 活 性(Table 6)

各 種 動 物 の 赤 血 球 に 対 す る溶 血 活 性 値 を比 較 す

る と,モ ル モ ッ ト〉 ウサ ギ 〉 ニ ワ トリ〉 ウマ 〉 ヒ

ツ ジ の 順 に 溶 血 され や すい 傾 向 に あ っ た.環 境 由

来 株 同 様,溶 血 活 性 の 高い 株 はA. hydrophila>

A. sobria>A. caviaeの 順 に 多 く, A. hydrophila

は,赤 血 球 の 種 類 に か か わ らず98.2~100%が 溶 血

毒 素 陽 性 株 で あ った が, A. sobriaで は 赤 血 球 の種

類 に よ る差 が 認 め られ,ウ サ ギ,モ ル モ ッ ト赤 血

球 に対 して は92.1~94.7%が,ウ マ,ヒ ツジ,ニ

ワ ト リ血 球 に対 して は50~68.4%が 溶 血 毒 素 陽 性

株 と判 定 され た.

考 察

わ が 国 で は,A. hydrophilaの 薬 剤 耐 性 に 関 し

て,林 ら13)の養 魚 場 内 の 淡 水 魚 お よび 池 水 由来 株

を 対 象 と し た 報 告 が あ り, ABPC, SIX耐 性 株 に

つい て は 我 々が 得 たA. hydrophila環 境 由来 株 の

結 果 とほ ぼ 同 率 の 数値 を 示 してい る.し か し,CP,

KM,SM,TC耐 性 株 につい て は 両 者 の 成 績 に 著

しい 差 を 認 め た.青 木14),Aokiら15)は,淡 水 魚 養

殖 池 水 の薬 剤 耐 性 菌 出現 に つい て解 析 を 行 つ て き

た が,養 殖 池 水 に お け る魚 病 治 療 と予 防 の 目的 で

SIX,TC,CP等 の 薬 剤 を 投 与 す る こ とが 耐 性 菌 出

現 の 原 因 とな る こ とを報 告 し てい る.我 々 が得 た

結 果 は,ABPC耐 性 と と も にSM耐 性 株 の増 加 傾

向 を 示 した が,SMは 養 魚 の 目的 に 使 用 され ない

こ とか ら15),ABPCと 同様,SMに 対 す る 自然 耐 性

株 が 多い こ とが示 唆 され る.ヒ ト由来 株 に も環 境

由 来 株 と同 様 にABPC,SM耐 性 株 が 極 め て 多

か った.A. hydrophilaに つい て み る と,と くに 国

内 環 境 由来 株 と海 外 輸 入 例 との耐 性 パ タ ー ンに 差

を 認 め た(Table1,2). Australia,東 南Asia,

Saudi Arabiaに おい て も ヒ ト由 来 株 のCP,TC

に対 す る耐 性 率 に地 域 差 を認 め てい る16)17).

ABPC耐 性 にCER,CPZ耐 性 が 加 わ る株 は,環

境 由 来 のA. hydrophilaの67.5%, A.sobriaの

3.7%,散 発 下 痢 症 の 国 内 発 症 例 お よび 健 常 成 人 由

来 のA. hydrophilaの47.6%,海 外 旅 行 下 痢 症 由

来 のA. hydrophilaの30.6%,同 じ く海 外 旅 行 下

痢 症 由来 のA. sobriaの42.1%で あ っ た.ま た, A.

caviaeは,す べ て の 株 がCPZ感 受 性 で あ った.こ

れ ら の 結 果 か ら,株 に よ って 産 生 す る β-ラ ク タ

ゼマ ーゼ の基 質 特 異 性 が異 な る こ と,あ るい は複 数

の β-ラ ク タ マ ー ゼ を 同 時 に 産 生 す る株 が あ る 可

能 性 が示 唆 され た.

接 合 性Rプ ラ ス ミ ドについ て は,林 ら13)が養 魚

場 内 の 淡 水 魚 お よ び 池 水 由 来 株 を 対 象 と し,A.

hydrophila耐 性 株 の26.7%に 接 合 性Rプ ラ ス ミ

ドR(TCSIX),R(SIX)あ るい はR(TCSIX

ABPC)の 保 有 を確 認 してい る.ま た,A. hydro-

philaが 保 有 す る接 合 性Rブ ラ ス ミ ドの 多 くは 不

和 合 性 群C(IncC)に 属 す る と され て い る16)18).

我 々 が得 た 結 果 で は 環 境 由 来 のA. hydrophilaの

17.5%にR(SM), R(KM SM), R(KM SIX

SM), R(CP SIX SM),同 じ く環 境 由来 のA.

sobriaの11.1%にR(KM SIX)あ る い はR(KM

SM),ヒ ト由来 の.A. hydrophila(国 内 例)の9.5%

にR(ABPC SM), R(KM SIX SM)の 保 有 を

認 め た.本 報 告 で は 結 果 を 示 し て い な い が, A.

hydrophilaの 環 境 由 来 株 が 保 有 す る110kbのR

(KM SIX SM)と120kbのR(KM SM)に つい

て はIncCに 属 す る こ とを確 認 し て お り,既 報 の

プ ラス ミ ドとの 関 連 性 に興 味 が もた れ る.

A.hydrophilaに つい て は,E. coliの 形 質 転 換

を 行 うこ とに よ り,由 来 に か か わ らず10~15%の

株 に7.3~10.5kbの β-ラ ク タ ママー ゼ プ ラ ス ミ ド

感染症学雑誌 第64巻 第6号

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Aeromonasの 薬 剤耐 性,溶 血 性 と プ ラス ミ ド 723

の 保 有 を 認 め た.堀 内 ら19)は,ABPC耐 性Sal-

monella typhimunumの57%に10.4kbあ る い は

7.5kbのABPC耐 性 ミニ プ ラ ス ミ ドの 保 有 と そ

の 構 造 の 類 似 性 を 確 認 し た.ま た こ れ ら が,

110~150kbでABPC耐 性 の 大 型 プ ラ ス ミ ドを保

有 す る 株 に の み 検 出 され た こ とか ら,こ れ ら の

ABPC耐 性 ミニ プ ラ ス ミ ドが 大 型 プ ラ ス ミ ドか

ら派 生 した 可 能 性 を 示 唆 して い る.我 々 は,検 出

され た ミニ プ ラ ス ミ ドの 類 似 性,由 来 を示 唆 す る

知 見 を得 る に至 っ て い な い が,β-ラ ク タ ム剤 耐 性

ミニ プ ラス ミ ドの サ イ ズが7.3~10.5kbに 限 ら れ

て い た こ とは,前 述 のSalmonella typhimunum

等 が保 有 す るABPC耐 性 ミニ プ ラ ス ミ ド との 類

似 性,由 来 を 考 察 す る上 で 興 味 あ る知 見 で あ る.

溶 血 毒 素 の 活 性 と下 痢 起 病 性 との 関 連 性 に つ い

て は,様 々 な 議 論 が展 開 され て い るが12)20),Burke

ら12)はAeromonas sp.ヒ ト由来 株 の 溶血 活 性 と乳

の み マ ウス に よ る エ ン テ ロ トキ シ ン産 生 試 験 の結

果 か ら,溶 血 活 性 とエ ン テ ロ トキ シ ン の 産 生 が 相

関 す る こ とを 示 唆 した.同 『じ くBurkeら5)は,由 来

に か かわ らず エ ンテ ロ トキ シ ン産 生 株 が溶 血 毒 素

陽 性 で あ る こ とを 示 唆 した.こ の 結 果 は環 境 由来

株 に お い て も溶 血 活 性 とエ ンテ ロ トキ シ ンの 産 生

が 相 関 す る こ とを 示 唆 す る もの で あ る.我 々 は,

と くに,ヒ ト由来 のA.hydrophilaに 高 い溶 血 活

性 を示 す 株 が 多 い こ とを確 認 した が,環 境 由来 株

に も溶 血 毒 素 陽 性 と判 定 され た 株 が か な り多 く,

Aeromoas属 の 起 病 性 にか かわ る経 緯 を 考 察 す る

上 で 興 味 深 い.

謝辞:本 研究を行 うにあた り,多 くの菌株を分与 してい

ただ きま した東京都立衛 生研究所 の工藤 泰雄博士,伊 藤

武博士 および麻布大学環境保健学部の福 山正文博士 に感謝

致 します.

本論文 の要 旨は,第63回 日本感染症学会総会(盛 岡)に

おいて発表 した.

文 献

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724 森田 耕司 他

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Resistance to Antimicrobial Agents, Hemolytic Activity and Plasmids in Aeromonas Species

Koji MORITA, Noboru WATANABE & Masato KANAMORI Department of Microbiology, Kyorin University School of Health Sciences

A total of 174 Aeromonas isolates consisting of 100 strains from patients with diarrhea being mainly overseas tavellers and healthy subjects, and 74 strains from environmemtal sources including foods, fish, fresh water, sea water and river soil collected in the area of Tokyo Metropolis and Kanagawa Prefecture was examined for the antimicrobial resistance, presence of plasmids and hemolytic activity.

Almost all the isolates (99.4%) were resistant to aminobenzyl penicillin. The isolation frequency of chloramphenicol- or tetracyline-resistant strain was low. Most environmental isolates of A. hydrophila were resistant to multiple antimicrobial agents. Thirty-seven percent of environmental isolates and 39% of human fecal ones carried plasmids. In environmental isolates, seven A. hydrophila and three A. sobria strains carried 63- to 150-kilobase pair (kb) conjugative R plasmids. Two A. hydrophila strains from both the healthy subject and domestic case with diarrhea carried 58- to 90-kb conjugative R

plasmids, respectively. None of the isolates from the feces of overseas traveller's diarrhea carried the plasmid. Irrespective of the sources, A. hydrophila showed the highest hemolytic activity among three Aeromonas species. Eighty percent or more of A. hydrophila isolates were of hemolysin positive. The hemolytic titer of A. hydrophila strains from human feces was higher than that of the strains from environmental sources.

感染症学雑誌 第64巻 第6号