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<受賞者> 岡田 随象(大阪大学 大学院医学系研究科 遺伝統計学分野 教授) 遺伝統計学を駆使した「ゲノム個別化医療」への貢献 <功績> 岡田氏は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点より評価する「遺伝 統計学」の先駆的開拓者で、自ら開発した複数の解析手法を用いることで、ヒト 疾患メカニズムの解明と新規治療戦略に関する研究開発を推進し、ゲノム個別化 医療への貢献を果たした。また、人材不足が指摘される遺伝統計学の領域におい て、若手人材の育成にも尽力し、多くの研究者を輩出することに成功している。 <概要> ○ 大規模全ゲノムデータを利用して、日本人集団の構造化を解明するために、ゲノムワイドに 自然選択圧を推定する遺伝統計解析を行い、日本人集団が飲酒や肥満、腎機能への適応進化 を遂げてきたことを報告した。更に、日本人集団内のゲノム多様性が、多因子疾患に対する 個別化医療実装時のバイアスとなることを世界で初めて明らかにした図1○ 疾患ゲノム情報と組織特異的マイクロRNA発現情報を統合する遺伝統計解析手法 MIGWAS)を開発し 、関節リウマチのマイクロRNAバイオマーカーを同定した図2また、大規模疾患ゲノム情報を基軸とした横断的オミクス解析を活用し、多因子疾患や難病 に対する個別化医療に資するコンパニオン診断薬の開発を進めている図32016年度より毎年、遺伝統計学および疾患ゲノム解析のハンズオンセミナーを主催し、 多くの若手研究者に専門的知識や技術を教育する等、次世代のライフサイエンスを担う人材 の育成に積極的に取り組んでいる図4AMED理事長賞 図1 図2 図3 核酸ゲノム創薬ソフトウェア MIGWASの開発

AMED理事長賞rs6715284 rs657075 rs2228145 chri7:38031857 rsu536443 13 SNPs > GREPI Dnn ATC code CFLAR CSF3 CSF3 JAK1/2'3 ELANE PCSK9 PCSK9 ICDIO code (GWAS) RNA FANTOM5 m RNA MIGWAS

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Page 1: AMED理事長賞rs6715284 rs657075 rs2228145 chri7:38031857 rsu536443 13 SNPs > GREPI Dnn ATC code CFLAR CSF3 CSF3 JAK1/2'3 ELANE PCSK9 PCSK9 ICDIO code (GWAS) RNA FANTOM5 m RNA MIGWAS

<受賞者>岡田 随象(大阪大学 大学院医学系研究科 遺伝統計学分野 教授)

遺伝統計学を駆使した「ゲノム個別化医療」への貢献

<功績>岡田氏は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点より評価する「遺伝

統計学」の先駆的開拓者で、自ら開発した複数の解析手法を用いることで、ヒト疾患メカニズムの解明と新規治療戦略に関する研究開発を推進し、ゲノム個別化医療への貢献を果たした。また、人材不足が指摘される遺伝統計学の領域において、若手人材の育成にも尽力し、多くの研究者を輩出することに成功している。

<概要>○大規模全ゲノムデータを利用して、日本人集団の構造化を解明するために、ゲノムワイドに自然選択圧を推定する遺伝統計解析を行い、日本人集団が飲酒や肥満、腎機能への適応進化を遂げてきたことを報告した。更に、日本人集団内のゲノム多様性が、多因子疾患に対する個別化医療実装時のバイアスとなることを世界で初めて明らかにした(図1)。

○疾患ゲノム情報と組織特異的マイクロRNA発現情報を統合する遺伝統計解析手法(MIGWAS)を開発し 、関節リウマチのマイクロRNAバイオマーカーを同定した(図2)。また、大規模疾患ゲノム情報を基軸とした横断的オミクス解析を活用し、多因子疾患や難病に対する個別化医療に資するコンパニオン診断薬の開発を進めている(図3)。

○ 2016年度より毎年、遺伝統計学および疾患ゲノム解析のハンズオンセミナーを主催し、多くの若手研究者に専門的知識や技術を教育する等、次世代のライフサイエンスを担う人材の育成に積極的に取り組んでいる(図4) 。

AMED理事長賞

図1

図2 図3核酸ゲノム創薬ソフトウェア

MIGWASの開発