14
2017 Microchip Technology Inc. DS00002375A_JP - p.1 AN2375 はじめに スイッチング モード電源 (SMPS) の電流モード制御に は電圧モード制御に比べ多くの利点がありますが、 1 問題があります。電流ループの発振です。これは分数 調波 ( 低調波またはサブハーモニック ) 発振としてよく 知られています。分数調波発振を修正するには、スロー プ補償ランプを電流帰還型に足し合わせるか、または 誤差電圧からランプを差し引きます。PIC16F176X/7X マイクロコントローラ (MCU) はスロープ補償ランプを 生成できるプログラマブル ランプ ジェネレータ (PRG) 周辺モジュールを内蔵しています。本書では、他の SMPS コントローラが採用しているスロープ補償加算 法とそれらのソリューションの短所について説明しま す。そして、PIC16F176X/7X のランプ ジェネレータが それらの短所をどのように克服しているかを示します。 動作原理 分数調波発振はデューティ サイクルが 50% に近づく と発生し (45% でも発生し得る )、長いパルスとその後 に続く短いパルスとして現れます。 1 に、電流ルー プ発振の様子を示します。クロックによってスイッチ のオン時間が開始し、デューティ サイクルが 50% 超えた時点で制御波形 ( オレンジ ) によってオン時間 が終了し、ピーク電流がレギュレートされます。定常 電流波形 ( ) は攪乱がない場合の動作を示し、攪乱 のあったインダクタ電流 ( ) はシステムが発振する 様子を示しています。攪乱は同じピーク電流に達しま すが (A) 次のクロックサイクルで負になり (B) 振幅が 増大しています。もう 1 つのスイッチサイクル後、攪 乱は再び正になりますが(C) 振幅がさらに増大します。 その結果 PWM 信号に長いパルス (D) とその後に短い パルス (E) が発生してシステムが発振します。不安定 な電流ループの解決法は周知の通り補償ランプの加算 です ( スロープ補償 )1: 分数調波発振 Author: Gheorghe Turcan Microchip Technology Inc. Current Sense threshold Perturbed Steady State Clock Clock Clock Clock Clock Clock TIME VOLTAGE A B C TIME VOLTAGE PWM SIGNAL D E CIP によるスロープ補償の利点 注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。 最新情報は必ずオリジナルの英語版をご参照願います。

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AN2375CIP によるスロープ補償の利点

注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジナルの英語版をご参照願います。

はじめに

スイッチング モード電源 (SMPS)の電流モード制御に

は電圧モード制御に比べ多くの利点がありますが、1 つ

問題があります。電流ループの発振です。これは分数

調波 (低調波またはサブハーモニック )発振としてよく

知られています。分数調波発振を修正するには、スロー

プ補償ランプを電流帰還型に足し合わせるか、または

誤差電圧からランプを差し引きます。PIC16F176X/7Xマイクロコントローラ (MCU) はスロープ補償ランプを

生成できるプログラマブル ランプ ジェネレータ (PRG)周辺モジュールを内蔵しています。本書では、他の

SMPSコントローラが採用しているスロープ補償加算

法とそれらのソリューションの短所について説明しま

す。そして、PIC16F176X/7X のランプ ジェネレータが

それらの短所をどのように克服しているかを示します。

動作原理

分数調波発振はデューティ サイクルが 50% に近づくと発生し (45% でも発生し得る )、長いパルスとその後に続く短いパルスとして現れます。図 1 に、電流ループ発振の様子を示します。クロックによってスイッチのオン時間が開始し、デューティ サイクルが 50% を超えた時点で制御波形 ( オレンジ ) によってオン時間が終了し、ピーク電流がレギュレートされます。定常電流波形 ( 紫 ) は攪乱がない場合の動作を示し、攪乱のあったインダクタ電流 ( 赤 ) はシステムが発振する様子を示しています。攪乱は同じピーク電流に達しますが (A) 次のクロックサイクルで負になり (B) 振幅が増大しています。もう 1 つのスイッチサイクル後、攪乱は再び正になりますが(C)振幅がさらに増大します。その結果 PWM 信号に長いパルス (D) とその後に短いパルス (E) が発生してシステムが発振します。不安定な電流ループの解決法は周知の通り補償ランプの加算です ( スロープ補償 )。

図 1: 分数調波発振

Author: Gheorghe TurcanMicrochip Technology Inc.

Current Sense threshold

PerturbedSteady State

Clock Clock Clock Clock Clock ClockTIME

VOLT

AGE

A

B C

TIME

VOLT

AGE

PWM SIGNAL D E

2017 Microchip Technology Inc. DS00002375A_JP - p.1

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AN2375

従来のソリューション

比較のために、絶縁型および非絶縁型 SMPS の制御に使用でき、特定の回路方式または電力レンジに制限されないレガシー コントローラを選びました。 図 2 に示す通り、従来のソリューション (UC3843a または

KA3842B)、さらには新しいソリューション (UCC3803コントローラ ) さえも、外付け部品 RT/CT によって生成されるクロック信号を使って補償ランプを作ります。

図 2: 従来のソリューションにおけるスロープ補償の実装

多くのエンジニアが今でも従来の部品を使用して設計

しているため、このソリューションは現在でもまだ使

われています。しかし、このソリューションにはいく

つかの問題があります。

1. スロープ補償を生成するために使われる外付け部品は、不適当なレイアウトが原因によるノイズの影響を受けやすい傾向にあります。それが、正確さと良好な制御を確保するためにはできるだけクリーンである事が望ましいISENSE信号に影響を与えます。

2. また、スロープ補償を生成する RT/CT ラインもノイズの影響をきわめて受けやすく、早期終了によるクロック周期のばらつきが生じます。これはランプオフセットとスロープに影響を及ぼします。

3. R/C 部品から生成されるスロープ補償ランプは非直線であり、このランプが ISENSE に加算されると、非直線によるデューティ サイクルジッタが発生します。

4. スロープ補償を生成するための外付け部品が必要なため、レイアウト設計工数と部品コストが増えます。

5. ランプレベルの変更には外付け抵抗の値を変える事が必要なため、変更または更新が制限されます。

6. デバッグ中は信号の分離も問題です。フィルタ処理済みISENSEまたはスロープ補償信号にノイズが乗っている場合、問題箇所の切り分けができず設計期間が長引きます。

TLE6389 等の新しいコントローラは、固定の内部電流源によってスロープ補償ランプを生成します ( 図 3B参照 )。LM5021、LTC3803 等の場合、外付け抵抗値を変える事で内部電流源を設定する事ができ、それをISENSE 波形に加算します ( 図 3C と図 3A 参照 )。

これらの方法で改善できるのは、前のセクションで挙

げた問題の一部のみです。

ISENSE

VREF

RT/CT

0.1 uF

RT

CT

R1

R2

RSENSEC

ISENSE

DS00002375A_JP - p.2 2017 Microchip Technology Inc.

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AN2375

図 3A: 従来のコントローラ (LTC3803) での内部スロープ補償

図 3B: 従来のコントローラ (TLE6389) での内部スロープ補償

2017 Microchip Technology Inc. DS00002375A_JP - p.3

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AN2375

図 3C: 従来のコントローラ (LM5021) での内部スロープ補償

これらの方法で直線性の問題、クロックからのノイズを解消できます。内部補償版では外付け部品が不要です。まだ残っている問題は以下の通りです。設定変更が不可能 ( 修正版の場合 )、外付け部品の必要性、外付け部品のレイアウトに起因するノイズ、外付け部品の変更のみによる設定、スロープ補償ランプが内部的にISENSE に追加され、実際のランプを計測する方法がない事に起因するデバッグの難しさ等です。

上述の問題があってもSMPSアプリケーションは動作

しますが、それらの問題に適切に対処すべきです。

CIP ソリューション

SMPS 専用の周辺モジュールを持つ Microchip 社のマ

イクロコントローラ (例 : PIC16F176X/7X)は電流モー

ド制御ループを実装できます。このようなデバイスは

コアから独立して動作し、内部的に接続できるアナログ

およびデジタル周辺モジュールを備えています。これら

をコアから独立した周辺モジュール (CIP) と呼んでい

ます。オペアンプ、コンパレータ、出力ジェネレータ、

スロープ補償器等 CIP はアナログ、非同期であり相互に

接続してマイクロコントローラ内に完全な SMPS コン

トローラを作り出せます。

これらのデバイスの詳細およびSMPSアプリケーション

での使い方は www.microchip.com/design-centers/8-bit/peripherals/intelligent-analog/slope-comp-program-ramp

で『TB3140 - プログラマブル ランプ ジェネレータ』

(DS90003140) を参照してください。

スロープ補償信号を生成するにはプログラマブル ランプ

ジェネレータ (PRG) モジュールを使います。この CIPは幅広いスロープ値を複数の方法で構成できます。他の

CIP に内部的に接続でき、また出力を出力ピンで計測

できます。PRG は、電流モード制御 SMPS アプリケー

ションではスロープ補償、電圧モード制御 SMPS では

鋸波信号が可能です。

PRG は内部電流源を使って立ち上がりおよび立ち下がり線形ランプを生成し、信号に加算します。ほとんどの SMPS コントローラでは ISENSE 信号にこのランプを加算しますが、この機能ではスロープ補償ランプを立ち上がりランプとして ISENSE に加算する事、または立ち下がりランプとして帰還誤差信号から差し引く事ができます。これにより、電流波形からスロープ補償波形を分離できます。PRG はこのように柔軟であるため、ランプを他の信号および電流制限に加算できます。PRG は複数条件ランプの開始と停止、さらに電圧モード制御用鋸波信号も生成できます。

PRG を ISENSE 波形の従来のランプとして使う方法の例を図 4 に示します。

立ち上がりおよび立ち下がりイベントは各種CIPからトリガできます。この例では COG 出力を使ってパルスが High になった時に立ち上がりを始め、デューティサイクル値に同期して立ち下がりを始めるランプを生成しています。この方法では、スロープ補償ランプはISENSE 波形に加算されるためランプを分離して計測できませんが、誤差帰還波形に加算できます (図 5参照 )。また、内部オペアンプをバッファとして使うとスロープ補償を ISENSE 信号から分離して計測できます。

DS00002375A_JP - p.4 2017 Microchip Technology Inc.

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AN2375

図 4: ISENSE 波形に実装されたスロープ補償

図 5: 誤差帰還波形に実装されたスロープ補償

PIC16F1769

RC3

RA0

RC0

ERROR VOLTAGE

ISENSE

COG1ACOG1

RS

FS

OUT

CCP15

6

19

CMP1+

_

PRG1RE

FEIN

OUT

COG1A_OUT

FB

ISENSE

PRG1_OUT

PIC16F1769

RC3

RA0

RC0

ERROR VOLTAGE

ISENSE

COG1ACOG1

RS

FS

OUT

CCP15

6

19

CMP1+

_

PRG1RE

FEIN

OUT

COG1A_OUT

PRG1_OUT

ISENSE

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AN2375

ランプ値を変更できるかどうかは SMPS アプリケー

ションにとって非常に重要であり、その効果は電流

モードループで確認できます (図 6 参照 )。スロープ補

償が実装されていない回路のボード線図は赤で示して

います。この挙動は SMPS 制御が不安定である事を示

しています。ランプを加算すると改善します。0.2 V の

ランプで改善しますが、システムはまだ不安定です。

0.9 V のランプでシステムはほぼ安定しますが、少し

でも変化があるとまだ不安定です。2 V のランプでシ

ステムが安定します。通常、SMPS コントローラは外

付け部品を調整してランプ値を変える必要があります

が、PRG を使う事でこの処理をマイクロコントローラ

内部で行えます。

補償ランプのスロープをCIPで変えられる事は設計お

よびテスト段階で大変重要です。一度スロープを設定

してしまえばこの機能は不要に思えますが、SMPS の

出力レンジが広い場合、出力に合わせてランプを調整

する機能を実装できるため便利です。

これにより、高電力供給では適切に補償されるが低電

力供給ではランプが大き過ぎて補償が過剰になるとい

う問題を排除できます。この機能のもう 1 つの使い方

は、複数の電流モード制御ループ間の切り換えや電流

モード制御と電圧モード制御ループの切り換えができ

る複雑なスマート SMPS です。

このCIPはよりスマートな制御ループの管理に使えま

図 6: 補償ランプスロープの値を変えた電流モードループ

80

40

0

-40

Gain (dB)

10 100 1000 10000 100000 1000000

No Ramp0.2V

0.9V

Ramp = 2V

0

-100

-200

-300

Phase (deg)

No Ramp0.2V

0.9VRamp = 2V

Frequency (Hz)

Frequency (Hz)10 100 1000 10000 100000 1000000

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AN2375

外付け部品と比べた場合、CIP で得られるスロープ補

償の線形性も重要です ( 図 7 参照 )。

図 7: 各種手法のスロープ補償の線形性比較

1.988µs -216.7mV2.788µs -216.7mV800.0ns 0.000VdV/dt 0.000V/s

44.00ns 540.0mV2.988µs 540.0mV2.944µs 0.000VdV/dt 0.000V/s

1.988µs 1.100V2.788µs 1.100V800.0ns 0.000VdV/dt 0.000V/s

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AN2375

これらの結果から、PRG を使って実装したスロープ補

償は他の方法で直面する全ての問題を解決できる事、

内部接続の柔軟性によりスマートな制御ループ管理を

実装できる事が分かります。

この周辺モジュールを使うと、他の方法で通常使われ

ている外付け部品が不要になり、従来のスロープ補償

も、特定の回路を改善できる変更もできます。

例 1:

SMPS に必要であった変更の一例は、ランプの開始遅

延です。

このSMPS設計ではスロープ補償ランプを小さくする事が必要でしたが、ランプを十分に小さくする事ができませんでした。ランプの開始遅延によりランプを十分に小さくできました (図 8 参照 )。スロープ補償ランプを立ち下がりランプとして誤差帰還信号に加算しました。開始遅延がスイッチング期間の 40% 未満であるため、ランプの未実装期間では分数調波発振が発生しません。

スロープ遅延 (SD) は CCP1 で設定するため、スイッ

チング期間の何%でランプを開始するか自由に選べま

す。この例では SD はデューティ サイクルの 30% です。

COG が MOSFET を OFF にするとすぐにランプはリ

セットされます。これにより、遅延による誤トリガを

排除できます。

図 8: スロープ補償開始遅延を実装するよう構成された PRG

Note: SD = スロープ遅延

PIC16F1769RC3

RC1

RC0

ERROR VOLTAGE

ISENSE

COG1ACLC1

COG1RS

FS

OUT

CCP116

7

15

CMP2+

_

PRG1RE

FEIN

OUT

CCP1

SD COG1A_OUT

PRG1_OUT

ISENSE

DS00002375A_JP - p.8 2017 Microchip Technology Inc.

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計測結果を図 9 と 10 に示します。

図 9 では、誤差帰還波形と電流検出波形の上にスロー

プ補償波形を示しています。このランプ補償の結果、

きれいな電流モード制御に入っているのが分かりま

す。図 10 は、フライバック コンバータのデューティ

サイクルが 80% の状態でも、きれいな制御状態にある

事を示しています。

図 9: スロープ補償開始遅延が設定された PRG の結果

図 10: スロープ補償開始遅延が設定された PRG の結果

Note: DMAX = 0.48、SC は 30% で開始しターンオフでリセットする。

Filtered CurrentWaveform

Buffered Slope Compensation Waveform

Note: DMAX = 0.8、スロープ補償は 30% で開始しターンオフでリセットする。

Filtered CurrentWaveform

Buffered Slope Compensation Waveform

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AN2375

例 2:

CIPを使ったソリューション改善のもう1つの好例が、

スロープ補償の早期開始です。

この例でも、帰還誤差信号への立ち下がりランプ加算

時に PRG を使ってスロープ補償を生成しますが、他

の CIP を PRG に接続してカスタムランプを生成する

事でさらに高精度なデューティ サイクル制御を実現

しています。

図 11 に、早期開始ランプに使う CIP の内部接続を示

します。これにより、他の方法では難しい高精度の

デューティ サイクル制限が実現します。これは、この

結果を達成できる多くの実装方法の一例にすぎません。

図 11: スロープ補償の早期開始を実装するよう構成された PRG

PIC16F1769

RC3

RA0

RC0

ERROR VOLTAGE

ISENSE

COG1A

CLC1

COG1RS

FS

OUT

CCP15

6

19

CMP1+

_

PRG1RE

FE

IN

OUT

CCP1

COG1A_OUT

/CCP1

CCP1

PRG1_OUT

ISENSE

CLC1_OUT

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この方法では、良好で狭いデューティ サイクル制御を

行うためにはIsense波形に優れたフィルタを適用する

必要があります。ブランキングを使う事もできますが、

最小デューティ サイクルが大きくなります。

図 12 に、この方法の計測結果を示します。ほとんど

のSMPSコントローラでは大きなジッタが発生する開

ループから閉ループへの移行時または閉ループからパ

ルス スキッピングへの移行時でもデューティ サイク

ル制御が非常にクリーンで安定している事を示してい

ます。

図 12: スロープ補償早期開始が設定された PRG の結果

図 13 に、計測結果を拡大した低デューティ サイクル分解能を示します。この例では、ISENSE 波形に優れたフィルタを適用し、デューティ サイクルを小さくできるようにブランキングは使っていません。この方法は0.5% (SWF = 125 kHz) という低デューティ サイクルで良好な制御と優れたシステム安定性を示しています。

Note: 早期ランプ開始ソリューションを使ったDMAX = 50%でのクリーンな調整、および狭いデューティサイクルでのクリーンな調整

High Duty Cycle:Clean entering into regulation

Low Duty Cycle:Clean regulation into pulse skipping

Error feedback signal with Slope Compensation

ISENSE signal

PWM signal

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図 13: CIP を使った早期ランプ開始ソリューションで得られる低デューティ サイクル分解能

まとめ

SMPS 設計に電流モード制御を選択する場合、デュー

ティ サイクルが 50% に近づくと発生する分数調波発

振を解決するためのスロープ補償が非常に重要です。

分数調波発振はデューティ サイクルが 45% でも見ら

れるためコントローラの最大デューティ サイクルが

50% でもスロープ補償を使う事を推奨します。

スロープ補償を加算するにあたって従来のコント

ローラが採用している方法も限定的な状況では問題

なく機能しますが、不安定さにつながる問題をかかえ

ています。

コアから独立した周辺モジュールである PRG を使う

事で上述の問題を全て排除できます。例えば、レイア

ウトに起因するノイズ感受性、線形性、外付け部品の

必要性、構成、クロックノイズ、信号分離です。また、

この方法により柔軟性が高まり、機能を追加できます。

PRG を使う事で、よりスマートな制御ループ管理、設

計期間の短縮、容易なデバッグと計測、容易なレイア

ウト設計、CIP による内部制御と機能の追加を実現で

きます。これら全てがあいまって、より安定性が高く

よりスマートな SMPS を設計できます。

低デューティ サイクル分解能

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Microchip 社製デバイスのコード保護機能に関して以下の点にご注意ください。

• Microchip 社製品は、該当する Microchip 社データシートに記載の仕様を満たしています。

• Microchip 社では、通常の条件ならびに仕様に従って使用した場合、Microchip 社製品のセキュリティ レベルは、現在市場に流

通している同種製品の中でも最も高度であると考えています。

• しかし、コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在する事もまた事実です。弊社の理解では、こうした手法

は Microchip 社データシートにある動作仕様書以外の方法で Microchip 社製品を使用する事になります。このような行為は知的

所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。

• Microchip 社は、コードの保全性に懸念を抱くお客様と連携し、対応策に取り組んで参ります。

• Microchip 社を含む全ての半導体メーカーで、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はありません。コード保護

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コード保護機能は常に進歩しています。Microchip 社では、常に製品のコード保護機能の改善に取り組んでいます。Microchip 社の

コード保護機能の侵害は、デジタル ミレニアム著作権法に違反します。そのような行為によってソフトウェアまたはその他の著作

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国における Microchip Technology Incorporated の登録商標です。

ClockWorks、The Embedded Control Solutions Company、EtherSynch、Hyper Speed Control、HyperLight Load、IntelliMOS、mTouch、Precision Edge、Quiet-Wire は米国におけ

る Microchip Technology Incorporated 社の登録商標です。

Adjacent Key Suppression、AKS、Analog-for-the-Digital Age、Any Capacitor、AnyIn、AnyOut、BodyCom、CodeGuard、CryptoAuthentication、CryptoCompanion、CryptoController、dsPICDEM、dsPICDEM.net、Dynamic Average Matching、DAM、ECAN、EtherGREEN、In-Circuit Serial Programming、ICSP、Inter-Chip Connectivity、JitterBlocker、KleerNet、KleerNet ロゴ、Mindi、MiWi、motorBench、MPASM、MPF、MPLAB Certified ロゴ、MPLIB、MPLINK、MultiTRAK、NetDetach、Omniscient Code Generation、PICDEM、

PICDEM.net、PICkit、PICtail、PureSilicon、QMatrix、RightTouch ロゴ、REAL ICE、Ripple Blocker、SAM-ICE、Serial Quad I/O、SMART-I.S.、SQI、SuperSwitcher、SuperSwitcher II、Total Endurance、TSHARC、USBCheck、VariSense、ViewSpan、WiperLock、Wireless DNA、ZENA は米国およびその

他の国における Microchip Technology Incorporated の商標です。

SQTP は、米国における Microchip Technology Incorporated の

サービスマークです。

Silicon Storage Technology は米国以外の国における Microchip Technology Inc. の登録商標です。

GestIC は、米国以外の国における Microchip Technology Inc. の子

会社である Microchip Technology Germany II GmbH & Co. KG の

登録商標です。

その他の商標は各社に帰属します。

© 2017, Microchip Technology Incorporated, All Rights Reserved.

ISBN: 978-1-5224-1630-2

DS00002375A_JP - p.13

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DS00002375A_JP - p.14 2017 Microchip Technology Inc.

北米

本社2355 West Chandler Blvd.Chandler, AZ 85224-6199Tel: 480-792-7200 Fax: 480-792-7277技術サポート : http://www.microchip.com/supportURL: www.microchip.com

アトランタDuluth, GA Tel: 678-957-9614 Fax: 678-957-1455

オースティン、TXTel: 512-257-3370

ボストンWestborough, MA Tel: 774-760-0087 Fax: 774-760-0088

シカゴItasca, IL Tel: 630-285-0071 Fax: 630-285-0075

ダラスAddison, TX Tel: 972-818-7423 Fax: 972-818-2924

デトロイトNovi, MI Tel: 248-848-4000

ヒューストン、TX Tel: 281-894-5983

インディアナポリスNoblesville, IN Tel: 317-773-8323Fax: 317-773-5453Tel: 317-536-2380

ロサンゼルスMission Viejo, CA Tel: 949-462-9523Fax: 949-462-9608Tel: 951-273-7800

ローリー、NC Tel: 919-844-7510

ニューヨーク、NY Tel: 631-435-6000

サンノゼ、CA Tel: 408-735-9110Tel: 408-436-4270

カナダ - トロントTel: 905-695-1980 Fax: 905-695-2078

アジア / 太平洋

アジア太平洋支社Suites 3707-14, 37th FloorTower 6, The GatewayHarbour City, Kowloon

香港Tel: 852-2943-5100Fax: 852-2401-3431

オーストラリア - シドニーTel: 61-2 -9868-6733Fax: 61-2 -9868-6755

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中国 - 成都Tel: 86-28-8665-5511Fax: 86-28 -8665-7889

中国 - 重慶Tel: 86-23-8980-9588Fax: 86-23-8980-9500

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中国 - 杭州Tel: 86-571-8792-8115 Fax: 86-571-8792-8116

中国 - 香港 SARTel: 852-2943-5100 Fax: 852-2401-3431

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アジア / 太平洋

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マレーシア - ペナンTel: 60-4-227-8870Fax: 60-4-227-4068

フィリピン - マニラTel: 63-2-634-9065Fax: 63-2-634-9069

シンガポールTel: 65-6334-8870Fax: 65-6334-8850

台湾 - 新竹Tel: 886-3-5778-366Fax: 886-3-5770-955

台湾 - 高雄Tel: 886-7-213-7830

台湾 - 台北Tel: 886-2-2508-8600 Fax: 886-2-2508-0102

タイ - バンコクTel: 66-2-694-1351Fax: 66-2-694-1350

ヨーロッパ

オーストリア - ヴェルスTel: 43-7242-2244-39Fax: 43-7242-2244-393

デンマーク - コペンハーゲンTel: 45-4450-2828 Fax: 45-4485-2829

フィンランド - エスポーTel: 358-9-4520-820

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ノルウェー - トロンハイムTel: 47-7289-7561

ポーランド - ワルシャワTel: 48-22-3325737

ルーマニア - ブカレストTel: 40-21-407-87-50

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2016/11/07