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1 修士論文 国立マナド大学日本語科日本語学習者にみられる 日本語の授受表現の誤用分析 ジョンリー」ハーリー」タンキリサン J o h n l y H a r l y T a n g k i l i s a n 学生番号:019686 インドネシア教育大学大学院 日本語教育専攻 2004

Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

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本研究で扱うにおいて使用する動詞は、次の7つ「やる」「あげる」「くれる」「もらう」「さしあげる」「いただく」「くださる」で授受動詞と呼ばれるものである。本研究では、学習者が授受表現の「主語が目的語に何かを授受動詞」文型を知っているから、助詞の使い分けに関することを取り上げない。問題を焦点として、ものと恩恵の授受を表す表現の誤用例文を分析する。

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修士論文

国立マナド大学日本語科日本語学習者にみられる

日本語の授受表現の誤用分析

ジョンリー」ハーリー」タンキリサン J o h n l y H a r l y T a n g k i l i s a n

学生番号:019686

インドネシア教育大学大学院

日本語教育専攻

2004

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第 1 章

1.1 背景

日常生活では、人間が言語の存在に対して避けることはできないと思われる。なぜ

かと言うと、言語ということは、さまざまな人間生活面において大切な役割を演じて

いるからである。社会におけるコミュニケーションの手段としての言語により、人間

が意見を述べたり、相手の感覚、欲望、命令などを解することができたりする。言語

の定義について、クリダラクサナ「2001:201」が次のとおり述べている。言

語というのは自発的な音のある印であって、自分を表したり、付き合ったり、友好関

係を築いたりするのに用いられる。また、ケラフ「1984:16」によれば、言語

とは、人間社会がコミュニケーションで用いられる音のある印だと言っている。

スリアスマントリによると、言語というのは、科学的に思想するための段階である。

つまり、人間が指摘した象徴的な世、実際的な体験の世に応じて生きられる。言語に

よって、その人間自身が自然の秘密の現象を解決したりする要素を組み合わせる。そ

のさまざまな自然の秘密が答えられる学説は、たとえば、電子科学、条件力学、相対

性、量子などである。人間の生活は複雑になればなるほどますます活発になってしま

う。したがって、人間が使用する言語も、重要なものとなってしまうのである。クン

チャラニングラトが全体文化(7つ面)において、言語を一番上に位置つけている。

順番は次のとおりである。言語、知識、社会団体、生活具、技術、職業、宗教と美術

である。言語は、全体文化として具体的に、人間の生活の中に重要な役割を演じてい

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ることは、どこの国でもよく見ることができると思われる。

現在、記号的な言語を用いる唯一の人類として、自分の環境に使用する母国語を理

解しているだけでなく、ある国に用いられる言語(外国語として)を理解するように

なる。そこで外国語をとおして、ある国の文化に関心が生まれてくる。なお、国と国

の間の友好関係では、工業分野の関係などが進むと共に、言語がコミュニケーション

の手段として大切なことになってくる。外国語を学ぶ目的を、ハリム「1980」が

具体的に、次の通り説明する。

ア) その外国語自体を理解するためである。

イ) ある国の言語とその文化などをが知るためである。

ウ) 外国語で書かれた書物を読むことによって、知識を得るためである。

(筆者訳)

外国語を学ぶためには、その言語の文法、言語に関する様々な側面などを無視して

はならない。したがって、よいコミュニケーションができる条件は、言語使用者が文

法的な知識を理解する必要がある。これは、言語能力ということである。文法以外の

要素は、身振り、手振り、場面による語を使用することなどがある。そういうわけで、

効果的に、適当な(会話の)コミュニケーション・パフォーマンスが発生するにほか

ならない。

それに基づいて、意識的ではなくても、相手と会話をする時には、社会言語学と言

語学の側面を、相手とよい関係を築くために自らのコミュニケーション・パフォーマ

ンスとして実行していく必要がある。また、それらを通して伝わる情報は言葉が意味

する内容だけではなく、性格状態、年齢状態、敵意までもが、言葉と一緒に伝わる。

それだけ第一印象が重要であるということである。第一印象がずっと初対面の人の記

憶に残ることを残存効果という。言語学の要素は、文型、統語論、意味論、音韻論な

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どである。どうすれば言語使用者がある言語を、場合にあわせて実現することができ

るようになるのであろうか。言語使用者が、だれと、どこで、なにを会話するかとい

うことを見なければならない。こうして見ると、ナババンが説明したように、言語は

複雑である。

外国語、特に日本語においては言語使用側面と文法規則の習得が重要なことになる

のである。たとえば、日本語の動詞を、ひとつの言語側面として解するために、あら

かじめ動詞の分類によって、動詞活用を注意するほかに方法がないだろう。これを知

らずによい文を作成することはできない傾向があるということである。念のために、

次に簡単に説明しようと思う。一般的に、日本語の動詞活用の分類は三つに分けられ

る。第一は、五段活用である。庵「2001」が、ここでいう五段活用動詞とは、動

詞の語彙的意味を表す部分「語幹」が [a、i、u、e、o] の語幹にわたって変わるこ

とになるものである。ただし、後で見るようにこの場合の語幹は厳密には [a、i、u、

e、o] を除いた子音部分だけである。また、語幹活用をする動詞は子音語幹動詞、

1類動詞(group 1) などとも呼ばれ、日本語教育では後者がよく使われる。第二は、

一段活用である。「庵、2001:48」一段活用という名称は語幹が e 段または I

段で変わらないことになる。古典語では(上一段 i 段で終わる)と(下一段 e 段

で終わる)を区別するが、現代語では両者を区別せずに一段活用という。一段活用の

動詞は母音語幹動詞、II 類動詞(group II)などと呼ばれ、日本語教育では後者がよ

く使われる。最後に、ヵ変動詞とサ変動詞という(group III)である。その動詞の種

は規律のない動詞である「ダヒディによる松岡、2002:21、22」。

本論では日本語における授受を表す表現について考えてみようと思う。授受を表す

表現には、動詞の使い方に注意しないわけにはいかない。授受の表現が用いる動詞は

授受動詞と呼ばれる。また、ダヒディ(2002)が述べたように、授受の表現また

はやりもらいの表現に含まれる動詞とは、 相互動詞 verba resiprokal ともいう。日

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本語には授受に関わる動詞がいくつかあるが、その中で、「あげる」「やる」「くれる」

「もらう」「さしあげる」「くださる」「いただく」を授受動詞と呼ぶ。これらを授受

動詞とし、それ以外(「与える」「受ける」など)を授受動詞としないのは、これらが

(「~て」の形)とともに使われる補助動詞としての用法を持ち、受身形を持たない

という点による。

授受表現では場面によって文法的に正しいかどうかにもっとも注意しななければ

ならない。授受動詞の使い方がわかるからといって、よい授受表現の文章が作成でき

るわけではない。それは、授受動詞の使い方を解するとともに、人称代名詞などの存

在をわかる必要がある。授受表現を実現する時には、動詞の使い方、人称代名詞など

を考えねばならないだけでなく、場面によっては、与え手と受け手、話し手と聞き手

に関することを考えるべきである。言語学的に考えるだけでなく社会言語学的に理解

しなければならない。

授受の表現では、学習者が誤用を犯すおそれがある。これは、場合によって、文法

規則ということを理解しないからであろう。授受の表現で学習者の誤用先行研究から

例文をあげる。

1.友達が私の誕生日におもいでをあげたよ。(X)

2.私がメイキさんの卒業祝いにプレゼントをくれた。(X)

3.a:それをだれにくれたの。(X)

b:これを後輩がくれたよ。

4.山本さんはチンさんに中国語を教えてくださいました。(X)

5.昨夜、吉田さんが私に電話をかけた。(?)

6.美容院で、髪を「美容師さんに」短く切られました。(?)

7.この辞書は、先生にもらいました。(?)

「タンキリサン、2000」

1、2、3、7は物のやりもらいに関する表現である。4は恩恵の授受に関する表

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現である。また、6は恩恵的な意味を表す表現を指摘しても迷惑な気持ちを表すこと

になる。1、2、3の文が示した誤用は動詞の使い方である。または、人称代名詞の

位置つけの場合にある誤用とも言える。1は、誤用が発生した場合には、授受動詞の

使い方に指摘されるが、「くれる」を用いなければならない。ただし、1は、その動

詞の使い方を変わらずに、誤用が起こるところは人称代名詞にあるわけである。しか

し、そんな仕方をしていても、誤用が起こるということを避けることができない。2

は、その授受動詞の使い方を変わらず、誤用は人称代名詞のほうにある。「わたし」

を「メイキさんの卒業祝い」に変えるとすると、「わたし」の場合は受け手として、

それから「メイキさんの卒業祝い」の場合は与え手として理解できるだろう。

3b の文章は、a の文章にたいして応答であるが、文法的には正しい。動詞の使い

方にあやまりである。ただし、動詞の使い方を避けると、誤用は助詞の使い方にある

わけである。b の文章は a の文章にたいしての応答として正しくて、a の文章を正確

に動詞とか助詞とかを直さなければ正しい。もし、動詞を直したら、「もらう」また

は「いただく」を場合によって選ぶ。それは唯一の方法のみならず、「くれる」また

は「くださる」をも場合によって選ぶことができるが文章にある助詞を「に」を「が」

に変えなければならない。具体的に3a の文章の誤用は動詞の用い方の誤りである。

4、5は恩恵の授受に関する表現である。さきほどの誤用例のように、4には誤用

は動詞にもある。本当の意味を変わると、ただ「くださる」を「いただく」にしか変

えない補助動詞としての授受動詞である。5は、恩恵のやりもらいのような行為があ

るから、4のように、とにかく補助動詞としての「くれる」または、それと同じよう

な動詞「場面によって」を使用するべきである。補助動詞とは、動詞の連用形に助詞

「~て」がついた形について、その動作者が話し手または話題の人物の為になんらか

の動作をすることを表す。~て+授受動詞になるような形をとる。

8.昨夜、吉田さんが私に電話をかけてくれた。

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インドネシア語の中では、8の解釈は5に比べれば、重要な場合に基本的に同様で

あるが、日本語の中では、文法的には、8のような文のほうが5よりも適している。

聞き手などにとっては、8を誤りの文と見るおそれがある。

6は、受身形の文である。6で現われた文は本当の文脈と異なっている。6の文は

ある出来事をどのようにあらわすかにおいては文法的にまちがってはいないようで

あるが、受け手(主語)には恩恵のような行為を表すとい意図に対して、迷惑な感じ

が表されてしまっている。恩恵を表すためには「~ていただく」の文型を使う必要が

ある。6の文は正しくは次のように述べられるべきである。

9.美容院で、髪を「美容院さんに」短く切ってもらった。

なお、受身形は使えない。前述のように、受身形をつけると迷惑な気持ちを表すの

で、間接受身とを解釈されてしまうわけである。

最後に、7は基本的に、聞き手が話し手の伝えようとする意味を解することができ

るからといって、よい関係を築く文であるわけではない。日本語では、相手や、場面、

こちらとの心理的な距離によって言い方を切り替えることがきわめて大事である。こ

うして、日本語の学習者が相手と話し合うときには、相手の気持ちを傷つけないよう

に注意しなければならない。こういう誤用はささいではあるが、無視しないほうがよ

いと思われる。文脈に応じて「もらう」という授受動詞を「いただく」にかえて、社

会言語学的側面を避けずに、適当なよい文を作るべきである。

10.この辞書は、先生にいただきました。

日本社会では、(目下)が(目上)の人物ために、何かを与える場合は、話し手な

ら謙譲語けんじょうご

を用いる。7の受け手の立場よりも10の受け手の立場ほど謙遜けんそん

と言う気持

ちを示している。山下「2002:21」によれば、最後は、話題に登場する人物に

は謙譲語を使わない人が増えてきている。佐々木と門倉によれば、それを誤りのある

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文とする。

11.この本は先生からいただいた本で大切にしているのだけど、親友の君

だから貸してやるよ。

と言っていたのだが、最近では、

12.この本は先生からもらった本だから大切にしているのだけど、親友の

君だから貸してあげるよ。

という傾向があるということにする。

「山下、2002:21」

ここでは、こうした誤用がおこる原因も含めて授受を表す表現について考える。そ

の誤用を無視していると、どうやったら正しい表現ができるようになるかということ

が、学習者にとって重要な問題になる。おそらく学習者が文を、文法的には使えるか

もしれないが、誰かに話し合う時には、よく使えない。

教えようとする外国語に対して敏感なある教師が常に学習者の犯した誤用を見出

す。そこから、学習者が犯した誤用に対して訂正する。大切なことは、その誤用を訂

正するのに、学習者の心理的側を問わず、言語の習得の実力を見てもらうべきである。

ある言語(日本語)を学ぶ時には、必ず誤用を犯す可能性があるということがある。

しかし学習者が犯した誤用をそのままに軽んじてはいけないが、それによって、最適

な言語ストラテジーが構成できるように関心を深めるのがよい。

日本語教育において授受の表現の学習は一部の大事なポイントであるのだから、よ

く検討するべきだと感じられる。庵「2001:114」は、この授受表現は日本語

には特徴的な部分があり、学習者には習得が難しいところがあると言っている。同様

に、金本「2003」は、授受の表現は日本語の特徴として大変興味深い問題だと思

うと述べている。

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1.1.1 物の授受

この頃では、ものの授受を表す表現例文を、簡単に述べて、のちに第2章で明ら

かにする。正しく表現できるようになるために、次のような例文を考える。

13.(わたしは)この本、君に記念にあげるよ。

14.(わたしは)金本さん(目上)の退職記念に画集をさしあげた。

15.友達が(わたしに)漢字辞典をくれた。

16.お医者が(わたしに)よく利く薬をくださいました。

「玉井、2000:62」

13、14にある「あげる」と「さしあげる」の使い方が主語=1人称の与え手

として、目的語=3人称の受け手としてを示し、一般に、括弧かっこ

にある主語=1人称

の与え手としては、めったに存在しないこともある。かえって、15、16にある

「くれる」と「くださる」の使い方が主語=3人称の与え手として、目的語=1人

称の受け手としてを指摘し、一般に、括弧にある主語=3人称の与え手としては、

めったに存在しないこともあって、だいたいこれは会話する両方の人物にも文脈に

おいて視点ということを解しているからである。ここでいう授受動詞の使い方に注

意しなければならないのは目的語=3人称(ソトの人)を受け手としては使用する

ことはできない。17、18にある授受動詞「もらう」「いただく」の使い方が主

語=1人称の受け手として、目的語=3人称の与え手を示す。「もらう」「いただく」

の使い分けでは、両方は主語にある視点がわかって問題とならない。

以上の結果をまとめておくと、「あげる」「さしあげる」の使い分けでは与え手=

主語、受け手=目的語、視点=与え手(主語として)であって、「くれる」「くださ

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る」の使い分けでは、与え手=主語、受け手=目的語、視点=受け手(目的語)の

ことである。最後に、「もらう」「いただく」の使い分けでは与え手=目的語、受け

手=主語、視点=受け手(主語として)のである。

1.1.2 恩恵

次に、ものの授受に関する場合の授受を表す表現について考えてみるが、授受動

詞とは「~てあげる」「~さしあげる」「~てもらう」「~ていただく」「~てくれる」

「~てくださる」の形での補助動詞ということとして使われ、恩恵の授受を表す表

現とも呼ばれる。補助動詞の用法は日本語の表現上の大きな特徴である。

なお、この場合にも、もののやりもらいの場合と同じような用法制限が存在し、

次の例文が挙げられる。

17.A 先生が(私に)日本語を教えてくださいました。

18.(私が)A 先生に日本語を教えていただきます。

19.A さんが(私に)日本語を教えてくれます。

20.(私が)A さんから日本語を教えてもらいます。

21.A さんが B さん(目上)に日本語を教えてさしあげます。

22.A さんが B さんに日本語を教えてあげます。

「佐々木と門倉、1997:72」

具体的に、恩恵の授受を表すという表現は、もののやりもらいの場合とも同様の

視点限定が存在する。おそらく授受動詞は「~て+授受動詞の形で」補助動詞とし

ての場合には、「与える」と「受け取る」という意味をインドネシア語において、

すなわち、「me~」の接頭辞を、「あげる」「さしあげる」「くれる」「くださる」に、

「di~」の接頭辞を、「もらう」「いただく」「くれる」「くださる」に意味するであ

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ろう。また、授受動詞の中で通常の能動文と受動文の関係がある。庵「2001:

120」が言ったように、「やる」「あげる」は能動文に相当し、「もらう」は受動

文に相当し、「くれる」は能動文の性質と受動文の性質をあわせ持つ。

さらに、「くれる」「くださる」の能動文と受動文の性質をあわせ持つということ

を次のような例文で明らかにする。

23.これを先生がくださいました。

このように「これを先生に与えられた。」という文の意味と同じであるが客観的

意味においては「これを先生がくださいました。」という文脈のなかには間接受動

文を、「これを先生に与えられた。」という文脈のなかには、直接受動文をあわせ

持つということがいえる。また、能動文の性質をあわせ持つという意味ならば、「こ

れを先生がくださいました。」という文脈は、「これを先生がお与えになりました。」

という文脈と同様であるが前者には受動文を、後者に能動文を持つという。

「~てもらう」の形式などは恩恵に関して相補的なのであるがそれはありがた

いという気持ちを表するし、迷惑という気持ちを持つということではない。

1.2 問題範囲

本研究で扱うにおいて使用する動詞は、次の7つ「やる」「あげる」「くれる」「も

らう」「さしあげる」「いただく」「くださる」で授受動詞と呼ばれるものである。

本研究では、学習者が授受表現の「主語が目的語に何かを授受動詞」文型を知って

いるから、助詞の使い分けに関することを取り上げない。問題を焦点として、ものと

恩恵の授受を表す表現の誤用例文を分析する。

1.3 問題概要

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本研究の重要なポイントとは、次の通りである。

ア) 学習がどのような誤用を文法的な、場合による表現を作成するのに、犯すか。

イ) ァ)に基づいて学習者が犯す誤用例文の傾向はどこにあるか。(授受表現に

多くの誤用の起こること)

ウ) 授受表現での言語誤用が発生する兆候があるか。

1.4 問題背景

ア) 学習者には、適当な文を作成する誤用(人称代名詞、動詞の使い分けなどを

こめて)が起こる可能性があるからである。

イ) 受動文の性質をあわせ持つにつれて、受身形の干渉に伴う場合、誤用が起こ

る傾向がある。

ウ) 学習者には、場面による文脈という表現を解しない可能性があるためである。

エ) 授受を表す表現は日本語の表現上の大きな特徴である。大学での日本語文法

教育は重要な課程の一つだと思われる。

1.5 研究目的

ここでいう研究目的とは次の通りに述べられる。

ア) 学習者が犯す動詞の使い分けの誤用例文

イ) 学習者が犯す人称代名詞の使い分けの位置誤用

ウ) 学習者が犯す受身形の干渉に伴う誤用

エ) 学習者が犯す場面によらない文脈の誤り

1.6 研究意義

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ア) 学習者の犯す授受を表す表現に用いられる動詞の使い分けを明らかにする。

イ) 学習者の犯す授受を表す表現に用いられる人称代名詞の使い分けを明らか

にする。

ウ) 学習者の犯す受身形の干渉に伴う誤用例文を明らかにする。

エ) 学習者の犯す場面によらない文脈の誤用例文を明らかにする。

1.7 研究推論

ア) 学習者が文法的に、場面による文脈の用法をよく理解すれば、するほどおそ

らく誤用が起こるような原因現象などをさけることができるかもしれない

と思われる。

イ) 学習者が犯すような誤用例文は第一言語(母国語)からの干渉というだけで

はなく、適当な文に授受を表す表現の用法を理解しにくい学習者もいる。

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第 2 章

2.1 序論

庵「2001:115」が新しい日本語学入門の中で、授受の表現について次のよ

うに述べている。授受動詞を含む表現を授受表現という。その中で、7つの授受動詞

は敬語性の有無によってつぎの2つに分類され、すなわち、敬語形と非敬語形である。

非敬語形にある動詞は、すなわち「やる」「あげる」「くれる」「もらう」という授受

動詞である。そして、敬語形にある動詞は「さしあげる」「くださる」「いただく」と

いう授受動詞である。

ここでいう「やる」と「あげる」は同じ意味のものとしても、両者の違いを無視す

るわけにはいかないと思われる。さきに庵が言った授受表現の定義に対して、おそら

くある日本人の吉田安雄を思い出させるかもしれない。授受の表現に対して、かりに

吉田に関係するものは何であるかは次の説明を尐し見ていただこう。

吉田「1990:202」では、前者の動詞は非敬語に、後者の動詞は敬語形に属

する。再び、敬語形に属する動詞は目上の人に対して謙遜けんそん

であるような気持ちを表す

るのに用いられるが、年齢、社会的地位などの違いがある。

授受の表現を実現することができるようになるためには、ことに授受の表現に相当

な動詞を選ぶ時、言葉使いが大事な要素である。そのために、授受動詞の使い分けに

ついて佐々木と門倉「1997:66」が英語で次のように述べている。These verb

giving and reiceiving will change according to the ‘treatment’ ------------- that is,

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whether one is dealing with a social inferior, equal or superior.

それに基づいて、文の授受動詞の使い分けは、場面による文脈に存在して変化する

わけであることはいうまでもない。日本語では、だれがだれに与えるかなどによって

動詞の使い方などを注意しなければならない。立場の違いよる動詞の使い方について

解するようになるために、次のようなリストを挙げる。

表1:

授受動詞の種類

目下 同等 目上 意味

やる あげる さしあげる Give

もらう もらう いただく Receive

くれる くれる くださる Give

「佐々木と門倉、1997:66」

授受を表す表現には社会言語学的から見た場合限りがあるが、言語学的から見れば、

どうであろうか。本当は、その用法に出会いながら学ぶ学習者を当惑とうわく

させるおそれが

ある。用法に関する文法的な場合には、動詞や、人称などの使い分けを十分に検討す

る必要がある。そのためには、吉田「1990:202」が、授受を表す表現をよく

実現するために、授受動詞というものを詳しく選択しなくてはいけないことに注意し

たいと言っておられた。それは人称ということにこたえて、選ぶ動詞のほうを大切に

する。授受を表す表現にある人称は与え手と受け手からの第一人称、第二人称、第三

人称がある。それにしたがって、堀川「1993:53」が人称代名詞について、次

の通りに述べている。

人称代名詞は、ある話の場合で、話し手が自分と関係において人(話し手

を含めて)を差し表す言葉であって、、、、、人称代名詞には、話し手が話の

中で、話し手自身を差し示すのに用いる第一人称(自称とも言う)と、相

手をさし示すのに第二人称(対称とも言う)と、第三者をさし示すのに用

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いる第三人称(他称とも言う)とがある。

日本語は人称代名詞に敏感である性格を持つ。授受の表現の中でも、その人称に対

して敏感である。念のために、言っておくと多くの日本語表現には、人称代名詞に対

しての敏感さについて、アルフオンソと新美「1977:321」が英語で次に言っ

ている。In Japanese social conventions one normally distinguishes the following

three categories of person.

表2:

人称代名詞の種類

FIRST

PERSON

SECOND

PERSON

OTHER

PERSON

My self Your self Person that are well know

My family Your familiy

My close friend Your close friend Average third persons

My group Your group

「アルフオンソ、新美、1977:321」

以上のように説明した概念によって、授受動詞や人称代名詞の使い分けは、文法的

用法、社会言語学的文脈には関係がないわけではない。ただし、その用法を理解する

だけではなく、適当な文を作成することもできるようになると期待している。

2.1.1 授受動詞の解説

既に説明した通り、本研究に検討される動詞は二種類に分けられる。それは非

敬語形と敬語形がある。その動詞はいくつかの7つ「やる」「あげる」「くれる」

「もらう」「さしあげる」「くださる」「いただく」は授受動詞と呼ばれる。一つ

ずつ次のように明らかにしてみる。

2.1.1.1 「やる」

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「やる」というのは、ブローン「1987:140」が述べたように、Yaru

is normally used in referring to giving something to an animal or an

inanimate object in certain it can be used to mean that someone gives

something to a family member, a very close friend, a relative or child. そ

れは簡単に説明すると、「やる」は、与え手が受け手の場合よりも社会的地位

(年齢など)が優勢ゆうせい

である。一方、年齢などを問わず家族員である人が家族

環境に使えるようになる⦅また、それのみならず、植物あるいは動物に(水ま

たは餌を)与える場合を表すのに用いられるからである。

そして、松浦「1989:2249」が次のように述べている。他人にも

のを与える。同等またはそれ以下の人にものを与える。遠くにいる人に品物

や手紙、歌を送る。その記述に基づいて、「やる」を使った文例は、次の通り

である。

24.孫にこずかいをやる。

25.犬に餌をやる⦅

26.植物に水をやる⦅

「やる」は「~てやる」の形で補助動詞として使われ、恩恵の授受を表す

こともある。その形に対して、松浦「1989:2449」が説明したのは、

(補助動詞)動詞の連用形に接続詞「~て」(または「~で」)の添えた形に

つく。何らかの動作に対して行う意を表す⦅話し手受信が強い気持ちで投げ

やり的に言い放はな

つ意を表す⦅実は「やる」をほかの動詞の活用の接続詞「~

て」に加えるなら、それが他人に恩恵を与えるが同等またはそれ以下の人の

場合だけである。

2.1.1.2 「あげる」

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「あげる」とは、ブローン「1987:140」が述べたように「 ageru

-------- means someone gives something to an equal or to an inferior. 同じ

ように、松浦「1989:31」によれば、 「あげる」は「与える」「やる」

の丁寧な言い方である。それでは、受給の表現のうち、「あげる」と「やる」

を比べると、「あげる」には敬語(謙譲語)の意識が含まれるわけである。そ

れは自分(他人)が同等の他人にものを与える。

27.この本、あなた(同等またはそれ以下)にあげます⦅

「あげる」は補助動詞として使われ英語で auxiliary verb と呼ばれる。松

浦「1989:31」が確認したのは、(補助動詞)同士の連用形に接続「~

て」のついた形につく。相手に対して「恩恵となるような動作をすることを「

動作者の立場から言う⦅これは「~てやる」と異なり、受け手に対する軽い

敬意が一般的である。つまり、自分(他人)が同等の相手(他人など)に自分(他

人)の恩恵である行為を与える⦅場合によって、「~てやる」の形と異なる。

28.田中(同等)は岡田(同等)に何かをあげた。

2.1.1.3 「くれる」

「くれる」とは、松浦「1989:729」が述べたように、他人が話し

手また話題の人物に物を与える。また、ブローン「1987:141」がも

っと説明した通りに、Kureru ------- means an equal or an inferior gives

something to the speaker or his immediate family or group. つまり、相

手または他人が視点としての人物(自分それとも自分の以外のウチにある

者)になるのに用いられる⦅

29.彼が僕に本をくれた。

なお、「くれる」は補助動詞としても使われ「英語で auxiliary verb と呼ば

Page 19: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

19

れる⦅これについて、相手(他人)が自分(自分以外のウチにある者)に相手ある

いは他人の恩恵であるような行為を与える⦅念のために、松浦「1989:

729」がいった、「くれる」、(補助動詞)動詞の連用形に助詞「~て」がつ

いた形に付いて、その動作者が話し手または話題の人物のために何らかの動

作をすることを表す⦅同じような場合にも「柚木子「1998:252」が次

のように述べている。話し手(または話し手の側の人)のために誰かがなにか

の行為をすると言うことを、行為をする人を守護にして述べる表現⦅その人

が自分から進んで行為をしたときに使う⦅

つまり、相手または他人が与える行為というのは自分または自分以外のウ

チにある者(話題の人物p2)にとって恩恵と言うことである⦅

30.ジョンが僕らを食事に呼んでくれた。

2.1.1.4 「もらう」

「もらう」とは、ブローン「1987:141」が述べた通りに、Morau

-------- means ‘receive’. The honorific form of morau is omorai ni naru, but

it is better to avoid this form. The humble form, itadaku, is used when

someone receives something form a superior. また、同じような場合にも、

松浦「1989:2413」が言ったのは、「もらう」、ほかから与えられて

自分のものとする。つまり、相手または他人(同等または目下)からものを受

けるのに「もらう」を用いる⦅

31.岡田は伊藤に本をもらった。

さらに、「もらう」は先述のように補助動詞としても使われ、英語で

auxiliary verb と呼ばれる⦅これについて、動詞の連用形に接続「~て」の

ついた形につく「~てもらう」の形になる。松浦「1989:2413」が

Page 20: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

20

言ったように、「もらう」(補助動詞)動詞の連用形に助詞(「~て」「~で」)

を添えた形につく⦅他人の行為により、または自分から依頼して行われた好

意によって自らが利益を受ける意を表す⦅また、単に依頼して他人に行為を

させる入を表す⦅自分の行為によりまたは他人の依頼によって自分の行った

好意が他人に利益をもたらす意を表す。「~てもらう」のような形の場合に

は「相手または他人が視点としての人物に恩恵であるような行為を与える⦅

32.私は上木に庭の手入れをしてもらう⦅

2.1.1.5 「さしあげる」

「さしあげる」とは、松浦⦆1989:969。が説明したように、「さし

あげる」は、⦆与える。「やる」の謙譲語である⦅献呈けんてい

する。受け手を敬うやま

気持ちをこめて言う語。つまり、話し手または与え手が受け手に対して、敬

意の感じをこめてものを与える⦅同じような考えの場合にも、ブローン⦆19

87:140。が、Sashiageru -------- means someone gives something to

asuperior, it can also be used in place of ageru to make one’s speech more

polite と言っていた。

33.私は先生にお土産を差し上げた⦅

なお、「さしあげる」は補助動詞としても使われ、英語で auxiliary verb

と呼ばれる。「さしあげる」はほかの同士の連用形に接続詞「~て」がつく

形に用いられる⦅したがって、柚木子「1998:253」が「~てさしあ

げる」は、ほかの人のために話して(または話しての側の人)が何かの行為

をすることを表す⦅行為を受けるのが目上か低度の親しくない人の場合に使

うことが多く「「「と言っていた⦅

Page 21: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

21

つまり、こういう形は、自分または他人が尊敬する必要な受け手としての

人物に対する恩恵であるような行為を与えることを表す⦅それのために、「~

てあげる」よりも敬意を表する形である⦅

34.山田さんは先輩に新聞を読んでさしあげました⦅

2.1.1.6 「くださる」

「くださる」とは、ブローン「1987:141」が Kudasaru ----- means

a superior gives something to the speaker or his immediate family or

group it can also be used in place kureru to make one’s speech more

polite と言っていた。また「松浦⦆1989:697。が述べたように、「くだ

さる」は、⦆与える。「くれる」の謙譲語けんじょうご

である。お与えになる。⦆くださる。

の使い分けについて、簡単に説明できれば、視点としての人物(自分または

自分以外のウチにある人)が尊敬する必要がある。相手または他人(ソトに

ある人)にものを与えられる⦅これは、与え手に対して、受け手がわざと謙遜けんそん

することや、程度の差があるような場合に用いられる⦅

35.先生が漢字辞典を私にくださいましたよ⦅

さて、「くださる」は補助動詞としても使われ、英語で auxiliary verb と

呼ばれる。柚木子「1998:249」が、話し手あるいは話し手側の人の

ために、誰かが何かの行為をすると言うことを、行為をする人を主語にして

述べる表現と言っていた⦅行為をする人が話してより目上またはあまり親し

くない関係のときに使う⦅つまり、尊敬する必要があるような相手または他

人が自分または自分以外のウチにある人物に恩恵であるような行為を与え

Page 22: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

22

る⦅

36.山田さんがわざわざ私の家まできてくださることになった⦅

2.1.1.7 「いただく」

⦆いただく。は「もらう」の謙譲語であると述べている。目上の人から品物

をもらうことや恩恵となるような動作を受けていることを、受け手を低めて

いう言い方である。そして、「いただく」は、受け手が与え手に対して、わ

ざと謙遜することや、受け手と与え手の間にある程度の違いがある場合に使

用される。それについて、与え手は受け手ほど程度のある⦅

37.田中は部長に年賀状をいただいたんです⦅

「いただく」は補助動詞としても使われ、英語で auxiliary verb と呼ばれ

る⦅これは、(「~ていただく」の形で動詞の連用形)他人から恩恵となるよ

うな動作を受ける意を表す⦅その動作が動作者の意志に基づく場合である⦅

また、「~ていただく」の形は、「~てもらう」の謙譲語である⦅誰かが話し

手あるいは話し手側の人のためにある行為をすると言う意味を表す⦅普通「

恩恵を受けたと言う気持ちが含まれると言っていた「柚木子、1998:2

43」⦅つまり、自分または他人が目上の相手または他人から(その相手の)

恩恵であるような動作を受ける⦅

38.私はこの絵を先生から誉めていただいたよ⦅

これらの動詞を授受動詞とし、それ以外(⦆与える。「うけとる」など)を授受

動詞としない。それにも、これらが「~て」とともに使われる補助動詞としての

用法を持って、受動文をあわせ持つのにこれらも受身形を持たないという点であ

ることに注意したい⦅念のために、授受動詞の中で(通常の能動文と受動文の関係

Page 23: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

23

ある)⦆やる。⦆あげる。⦆さしあげる。は能動文に相当で、⦆もらう。、⦆いただく。は受

動文に相当で、「くれる」「くださる」は能動文の性質と受動文の性質をあわせ持

つ「庵、2001:120」。

2.1.2 授受表現の人称代名詞の解説

日本語では、人称の具体化が各表現において大事である⦅誰が誰に、何を、話

し合うかによって考える必要があると思われる。こういうやり方を通して、話し

に集まる周りの人たちとよい関係を築くことができる⦅人称つけは、文法的用法、

場面による文脈ということが避けられないだろう⦅この場合にも、授受を表す表

現に属する。

もっとも典型的な場合について考える前に、あらかじめ言語学者からのいくつ

かの概念を通して人称代名詞について検討したほうがよいと思われる。堀川「1

993:53」が、人称代名詞は、ある話しの中で、話し手が自分との関係にお

いて人(話し手自身を含めて)を差し表す言葉であって、それ自身は実質的な概念

を表さない⦅人称代名詞とも呼ばれると言っていた⦅また、松浦「1989:14

54」が述べたのは、文法で、言語主体が話し手書き手か、またはそれ以外の弟

三人称(他称)の三種がある。日本語では、一般的に代名詞の分類にこれを用い、

三種のほかに不定称をたてる。

それに伴って、堀川がもっとはっきり次のようなことを説明している。人称代

名詞には、話し手が話しの中で、話して自身をさし示すのに用いる第一人称(自称

とも言う)と、相手をさし示すのに用いる第二人称(対称とも言う)と、第三者をさ

し示すのに用いる第三人称(他称とも言う)とがある。第三人称には、さらに話し

手に近い関係のものをさし示す近称、相手に近い関係のものをさし示す中称、話

し手にも相手にも近いとはいえない関係のものをさし示す遠称、以上のような位

Page 24: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

24

置付けのできないものを示す不定称とがある⦅人称代名詞は指示性を持つととも

に、人をさし示すことばであるために待愚性を持っている⦅そこに人称代名詞を

敬語の交替形式として取り上げる理由がある⦅

第一人称~弟三人称より理解するために、現在、普通に使用される人称代名詞

を挙げると次のようなものになる。

表3:

第一人称の種類

第一人称

わたくし(どうも、たち)

あたくし(どうも、たち)

てまえどうも

わたし(たち)

あたし(たち)

われわれ

われら

ぼく(たち、ら)

じぶん(たち、ら)

てまえ

こちら

わし(たち、ら)

おれ(たち)

表4:

第二人称の種類

第二人称

あなたさま(がた)

そちらさま

おたくさま

きでん

きけい(たち)

あなた(がた、たち)

きくん(たち、ら)

おまえさん(たち、ら)

あんた(たち、ら)

きみ(たち、ら)

おたく(たち、ら)

Page 25: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

25

しょぐん

そちら

そっち

おまえ(たち、ら)

てまえ(たち、ら)

表5:

第三人称の種類

第三人称

近称 中称 遠称 不定称

こちらさま そちら あちらさま どちらさま

このかた(たち) そのかた(たち) あのかた(たち) どなたさま

こちらさん そちらさん あちらさん どのかた

このひと(たち) そのひと(たち) あのひと(たち) どなた

こちら そちら かれ(ら) どのひと

かのじょ(たち、ら) どちら

だれ

「堀川「1993:35~36」

括弧( )の中にあるものはその人称代名詞が取る複数の接尾語である。アル

フオンソと新美「1977:321」では、日本社会が利用するような人称につ

いて、次の通りにあげている。一般的に、人称代名詞は三つのものに分類され、

すなわち第一人称、第二人称、第三人称がある。なお、第一人称に含まれるよう

なものは自分自身、自分の家族員、自分のグループなどであって、第二人称は(相

手)あなた自身、あなたの家族員、あなたのグループなどである。第三人称に含ま

れるものは相手に近い関係のものそれとも話し手と聞き手の以外にある第三者

である⦅

以上、人称代名詞の定義を取り上げた。それは日本語の授受表現を実現するた

めに、あきらかにさせるものである。本当は、授受動詞の使い分けが人称代名詞

により掛かるということである。そのためには、吉田「1990:202」が、

授受を表す表現に対して、正しく動詞を選択するような要素はさきに登場した人

Page 26: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

26

称代名詞に依存い ぞ ん

する⦅そのつもりは、与え手と受け手との関係にある第一人称、

第二人称、第三人称ということである。

それらに基づいて、簡単に授受を表す表現に用いられる人称代名詞については

次のように述べられる⦅

表6:

授受表現の人称代名詞

立場

人称代名詞

第一人称

わたし、ぼく、じぶん、おれ、わたしたち、ぼくたち、じぶんたち、おれたち、われわれ、など。

自分の側の人たち。

例えば、自分の家族の人たち、など⦅

第二人称

あなた、あんた、きみ、おまえ、あなたがた、あなたたち、きみたち、おまえたち、など。

相手の側の人たち。

相手の家族の人たち相手自身の名称、など⦅ 例えば、ジョンさん、など⦅

第三人称

あのかた、かれ、かのじょ、あのひと、あのひとたち、かれら、かのじょたち、など。

以上のような位置付けのできな

い関係の人⦅他人(第三者)の名称。

例えば、スミスさん、など。

ア) 「わたし」

「わたし」は「わたくし」とともに現在の標準的ひょうじゅんてき

な目的で、男性

にも女性にも使われる⦅(自称)

イ) 「ぼく」

「ぼく」は自分を指して言う語である⦅一般に、下位者に対して、

または同輩の間や学生同士の間で男性が使う⦅(自称)

ウ) 「じぶん」

「じぶん」は自分自身を指して言う語である⦅かつての軍隊用語で

あるが現代では、普通に使われる⦅(自称)

Page 27: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

27

エ) 「おれ」

「おれ」は自分を指して言う語である⦅男が仲間や目下の者と話す

ときに用いられる⦅(自称)

オ) 「あなた・あんた」

「あんた」は「あなた」の崩れた形で敬意は「あなた」より低い⦅

これらは、やや気がねのある場合に同輩または同輩以下の人に対し

て用いる⦅(対称)

カ) 「きみ」

「きみ」は相手を指して言う語である⦅同輩または下位者に対して

使われる。現在、女性が親しい男性に対してをいう⦅(対称)

キ) 「おまえ」

「おまえ」は相手を指して言う語である⦅同輩またはそれ以下の相

手を指していう⦅多くの男性が用いる⦅(対称)

ク) 「あのかた」

「あのかた」は相手意外にある人物をさして言う語である⦅これは

彼「または彼女と言うことをさし示すのに用いられる⦅自分の夫ま

たは恋人を指しても言う語である⦅「あの方」は「あの人」の尊敬

語である⦅(他称)

ケ) 「かれ」

「かれ」は男性をさし示して言う語である⦅話し手と聞き手以外に

あるものを、同輩またはそれ以下に対してさし示すのに用いられる⦅

これも女性の恋人を示していう⦅(他称)

コ) 「かのじょ」

「かのじょ」は女性をさし示して言う語である、話し手と聞き手以

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28

外にあるものを、同輩またはそれ以下に対してさし示すのに用いら

れる⦅これも男性の恋人を示していう⦅(他称)

一方、対称または他称を示していう語の代わりに人の名称をつけてもかまわな

い⦅それは授受を表す表現において文法的用法を理解することに必要である⦅そ

れのためには、誰と、どんな場合、何を話し合うかによって、心理的な距離の言

い方を切り替えることがとても大事であると思われる⦅

2.1.3 授受表現の動詞と人称とその立場

授受表現はやりもらいの表現ともいう。授受動詞を含む表現である⦅すでに述

べたように、庵「2001:115」が、7つの動詞が授受動詞と呼ばれると言

っていた⦅動詞の使い分けは誰が誰に与えるか、それとも受けるかによる。その

ために、良川「1989:199」がこれについて述べている⦅物の受給を表す

のに日本語ではだれがだれにものを与えるかによって、動詞の使い分けがある⦅

また、ものの受給だけではなく、行為の受給、つまり、誰が誰のためその行為を

するかと言うことを表すのにも同じように動詞の使い分けがある⦅

どの受給の表現に依存しても、ある用法で明らかになるはずである⦅先に説明

したように、受給を表すのにだれがだれにものなどを与えるかによって、動詞の

使い方がある⦅それにも、受給を表す表現には動詞が人称と接触するとある言語

学習者が言った⦅人称によって動詞を使用するがよい。しかし、動詞の使い方(文

法的、文脈)によっても人称の用法がある⦅

なお、吉田「1900:203」が、授受動詞は人称とのその立場について次

のように記述している⦅

Page 29: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

29

図1:

「あげる」「さしあげる」の人称とその立場

第一人称 第二人称 第三人称

図2:

「もらう」「いただく」の人称とその立場

第一人称 第二人称 第三人称

図3:

「くれる」「くださる」の人称とその立場

第一人称 第二人称 第三人称

2.1.3.1 授受表現の対立

上記の図で見たように、やはり授受の表現では、人称の登場にしたがって、

動詞の使い方に対する対立が起こる⦅ この場合には、単に、英語の give を

意味する「あげる」「さしあげる」「くれる」「くださる」の間にある動詞だ

Page 30: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

30

けである⦅庵「2002:107」が、授受動詞の対立について次のように

も記述している⦅

図4:

「くれる」「くださる」と「あげる」「さしあげる」の対立

ウチ ソト

「あげる」「さしあげる」の使い分けの方向

「くれる」「くださる」の使い分けの方向

* 「文に主語として」

上のように図示される使い方の方向性を見たら、与え手が主語になって、

話してから聞き手や第三者へ、あるいは聞き手から第三者へ、と言うよう

に、話し手から見てウチからソトへの(もの)や所有権などの移動を表す

ときには「あげる」「さしあげる」を使う⦅逆に、ソトからウチの移動には

「くれる」「くださる」を使う⦅

そのように図示された方向性を持っているから、学習者が授受の表現に

おいては、めったに誤用を犯さないと言うことでもない⦅

39.わたしは田中さんにチョコをくれた。(X)

40.田中さんはわたしにチョコをあげた。(X)

2.1.3.2 授受表現の与え手、受け手、話し手、聞き手の地位とその関係

このセクションでは、文において与え手と受け手と話し手と聞き手の地

Page 31: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

31

位に関する表現(授受表現)を取り上げられる⦅これについて、佐々木と門

倉「1997:66」が、次のような図を挙げている⦅

図5:

授受表現の地位とその関係

与え手 受け手 与え手 受け手

目上

同等

目下

図5に基づいて、かりに簡単な例文を作成するとしたら、およそ次の通り

である。

ア) 「先生」は「私」に{「恩恵」または「もの」}を{「~て」くださる}

イ) 「僕」は「先生」に{「恩恵」または「もの」}を{「~て」いただく}

ウ) 「ゆうじん」が「私」に「恩恵」または「もの」}を{「~て」くれる}

エ) 「僕」は「ゆうじん」に「恩恵」または「もの」}を{「~て」もらう}

オ) 「私」は「先生」に「恩恵」または「もの」}を{「~て」さしあげる}

カ) 「僕」は「ゆうじん」に「恩恵」または「もの」}を{「~て」あげる}

キ) 「おれ」は「子供」に「恩恵」または「もの」}を{「~て」やる}

上の仕組みを見て、話し手の第一人称(p1)として、受け手の第一人称

または第三人称(p1・p3)として、聞き手の第二人称(p2)としてと

Page 32: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

32

いうことについて次のように分析する。

ア) 話し手が{受け手}の(p1)として、{聞き手「目上または同等」}

としての(p2)に話し合って、{与え手「目上」}の(p3)からも

のまたは恩恵を受けている。

イ) 話し手が{受け手(p1)としては、{聞き手「目下またはそれ以下」}

としての(p2)に話し合って、{与え手「目上」}の(p3)からも

のまたは恩恵を受けている⦅

ウ) 話し手が{受け手(p1)}としては、{聞き手「同等またはそれ以上」}

として(p2)に話し合って、{与え手「同等」}の(p3)からもの

または恩恵を受けている⦅

エ) 話し手が{受け手(p1)}としては、{聞き手「同等またはそれ以下」}

として(p2)に話し合って、{与え手「同等」}の(p3)からもの

または恩恵を受けている⦅

オ) 話し手が{与え手(p1)}としては、{聞き手「同等またはそれ以下」}

として(p2)に話し合って、{受け手「目上」}の(p3)にものま

たは恩恵を受けている⦅

カ) 話し手が{与え手(p1)}としては、{聞き手「同等またはそれ以下」}

として(p2)に話し合って、{受け手「同等またはそれ以下」}の(p

3)にものまたは恩恵を受けている⦅

キ) 話し手が{あたえて(p1)}としては、{聞き手「同等またはそれ以

下」}として(p2)に話し合って、{与え手「目下」}の(p3)にも

のまたは恩恵を与えている。

文には、目上、同等または目下の人物と話し合っているかを理解するため

に、「僕」、「おれ」、「わたし」などだという第一人称を用いることに示され

Page 33: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

33

る。ただし、誰とも話し合っていても、むしろ「私」の自分を指し示して言

う語を使ったほうがよい⦅それほど、「私」は「僕」または「おれ」などの語

よりも丁寧である⦅

2.1.3.3 理想的授受表現の条件

既に授受を表す表現を検討したように、筆者が授受表現において動詞と人

称とその関係について次の通りにまとめている⦅

「やる」、「あげる」、「さしあげる」

ア) p1「目上/同等/目下」は、p2「目下/同等/目上」にものまたは恩恵

を表する。

イ) p1「目上/同等/目下」は、p3「目下/同等/目上」にものまたは恩恵

を表する⦅

ウ) p2「目上/同等/目下」は、p3「目下/同等/目上」にものまたは恩恵

を表する⦅

エ) p3「目上/同等/目下」は、p3「目下/同等/目上」にものまたは恩恵

を表する⦅

使用できる文型:

~ が ~ に ~ を やる・あげる・さしあげる

~ が ~ に ~ を ~てやる・~てあげる・~てさしあげる

「もらう」、「いただく」

オ) p1「目上/同等、目下」は、p2「目下、同等/目上」にものまたは

恩恵を表される。

カ) p1「目上/同等、目下」は、p3「目下、同等/目上」にものまたは

恩恵を表される⦅

Page 34: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

34

キ) p2「目上/同等、目下」は、p3「目下、同等/目上」にものまたは

恩恵を表される⦅

ク) p3「目上/同等、目下」は、p3「目下、同等/目上」にものまたは

恩恵を表される⦅

使用できる文型:

~ が ~ に ・ ~ を もらう・いただく

~ が ~ に ・ ~ を ~てもらう・~ていただく

「くれる」、「くださる」

ケ) p2「目下、同等/目上」は、p1「目上/同等、目下」にものまたは

恩恵を表する。

コ) p3「目下、同等/目上」は、p1「目上/同等、目下」にものまたは

恩恵を表する⦅

サ) p3「目下、同等/目上」は、p2「目上/同等、目下」にものまたは

恩恵を表する⦅

使用できる文型:

~ が ~ に ~ を くれる・くださる

~ が ~ に ~ を ~てくれる・~てくださる

つまり、授受を表す表現には、文法的、場面による文脈によって、用法が

あるにすぎない⦅谷道「1997:17」によれば、日本語では、相手や場

面、こちらとの真理的な距離によって言い方を切り替えることがとても大事

であるそうである。授受表現には、これを問わなかったら、効果ある文が作

成できないだろう。

授受表現の中に、家族のことをほかの人に話す時には、日本語では、敬語

Page 35: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

35

は使わない「冨田、1991:189」。

41.あなたは妹さんに何をあげましたか⦅

と言っている文が、

42.私は妹さんに本をやりました⦅

という言い方になる。

受給の表現のうち、「あげる」と「やる」を比べると、「あげる」には敬語

の意識が含まれている。そこで家族の間で(ものの受給)が行われた場合に

は「子が父母にものを与えた場合でも、あるいは弟や妹が兄や姉にものを与

えた場合でも「あげる」ではなく「やる」を使うのが正しい(歴史的な)言

い方である「富田、1991:190」。

2.2 ものと恩恵の授受

これからのセクションにわたって(だれがだれにものまたは恩恵を表するか)によ

って、文法的、場面による文脈の用法で、正しい表現を次のように挙げられる。

2.2.1 やる

ア) p1―>p2

43.「僕が」君の妹にお菓子をやったよ。

44.「私は」あなたの妹にお菓子を買ってやりました。

イ) p1―>p3

45.「私が」あの子供に本をやりました。

46.「私が」あの子供に本を貸してやりました。

ウ) p2―>p3

47.「あなたは」あの子供に何をやりましたか。

Page 36: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

36

48.「あなたは」あの子供に何を貸してやりましたか。

エ) p3―>p3

49.先生が子供たちに何かをやりました。

50.先生が子供たちにひらがなを教えてやった。

2.2.2 あげる

ア) p1―>p2

51.「僕は」君にあげた本、かならず読み終わった。

52.「僕は」君に貸してあげた本、もう読んだ?

イ) p1―>p3

53.「私は」ジョンさんにプレゼントをあげました。

54.「私は」ジョンさんにかわって酒を飲んであげました。

ウ) p2―>p3

55.「君は」ジョンさんに何をあげたの?

56.「君は」ジョンさんに何をしてあげたの?

エ) p3―>p3

57.ジョンさんはチンさんにラメンをあげました。

58.ジョンさんはチンさんのためにラメンを作ってあげました。

2.2.3 もらう

ア) p1<―p2

59.「私は」あなたの妹さんからもらったカセット、聞きますよ。

60.「私は」あなたの妹から貸してもらったカセット、いいです。

イ) p1<―p3

Page 37: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

37

61.「私が」山田さんからラメンをもらいましたよ。

62.「私が」山田さんからラメンを作ってもらいましたよ。

ウ) p2<―p3

63.「君は」山田さんから何をもらったのですか。

64.「君は」山田さんから何を作ってもらったのですか。

エ) p3<―p3

65.ジャネさんがジョンさんからカメラをもらいました。

66.ジャネさんがジョンさんからカメラを貸してもらいました。

2.2.4 くれる

ア) p2―>p1

67.妹さんが「私に」本をくれた。

68.妹さんが「私に」本を貸してくれた。

イ) p3―>p1

69.ジョンさんが「僕に」資料をくれた。

70.ジョンさんが「僕のために」宿題を直してくれた。

ウ) p3―>p2

71.ジョンさんは「君に」何をくれたの?

72.ジョンさんは「君に」何をしてくれたの?

2.2.5 さしあげる

ア) p1―>p2

73.「私が」お兄さんにさしあげた時計はきれいです。

Page 38: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

38

74.「私が」お兄さんに買ってさしあげた時計「もうなくなっちゃいま

した。

イ) p1―>p3

75.「僕は」社長に高いワインをさしあげたよ。

76.「僕は」社長に外国での高いワインを買ってさしあげた。

ウ) p2―>p3

77.「君は」社長に何をさしあげたの?

78.「君は」社長に外国での何物を買ってさしあげた?

エ) p3―>p3

79.あの人は鈴木先生に思い出をさしあげました。

80.あの人は鈴木先生に何かを渡してさしあげた。

2.2.6 いただく

ア) p1<―p2

81.「私が」お兄さんからビデオをいただいたのです。

82.「私が」お兄さんにビデオを見ていただいたのです。

イ) p1<―p3

83.「僕は」先生から数学の本をいただいた。

84.「僕は」先生から数学を教えていただいた。

ウ) p2<―p3

85.あなたのお兄さんが先生から何をいただいたの?

86.あなたのお兄さんが先生からどんな授業を教えていただいたの?

エ) p3<―p3

87.ジョンさんが社長から車をいただきました。

Page 39: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

39

88.ジョンさんが社長に車を貸していただきました。

2.2.7 くださる

ア) p2―>p1

89.お兄さんが「私に」くださった漢字辞典を大切にしているよ。

90.お兄さんが「私に」教えてくださった漢字は忘れにくいです。

イ) p3―>p1

91.先生が「私に」東京の地図をくださいました。

92.先生が「私に」東京の地図を教えてくださいました。

ウ) p3―>p2

93.先生が「あなたに」何をくださいましたか。

94.先生が「あなたに」どんなことを教えてくださいましたか。

これまでのところで、物の授受と、恩恵の授受の場合との差別を図示すると

次のようになる。

図6:

ものの授受の場合

出来事

X Y

与え手 Z(もの) 受け手

・ ・

Page 40: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

40

図7:

恩恵の授受の場合

出来事

X Y

与え手 Z(恩恵) 受け手

・ ・

「庵、2001:122―123」

図6、7からわかるように、物の授受と恩恵の授受には本質的な違いはな

い。但し、恩恵の場合は前接する(「~て」形の)動詞は自動詞でもよいの

で、次のように「zを」が存在しない場合もある。

95.私は田中さんに自宅へ来てもらった。

96.私は花子のために夕飯の買い物に行ってあげた。

97.花子は私のためにロシア語の手紙を訳してくれた。

(恩恵の受け手)は(Yに)ではなく、99、100のように(Yのため

に)の形で表されることも多い。もともと動詞のヲ格・二格・ト格などで評

されている場合、その格で表す。一方、(行為の授受)の場合、行為を表す

動詞が「貸す」、「誇る」(「売る」の意味)などの場合には、「もの」の移動

が行われるので、例えば、

98.KさんはAさんに本を貸してもらいました。

と言う文を

99.KさんはAさんから本を貸してもらいました。

と言い換えることができる。また、「教える」の場合も「もの」の移動は行

われないが、

100.KさんはAさんに日本語を教えてもらいました。

Page 41: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

41

ということは、Aさんの(日本語の知識)がKさんに移転したことになるの

で、

101.KさんはAさんから教えてもらいました。

と言い換えることができる。しかし、このような移動・移転の行われない移

動については「に」を「から」に言い換えることができない「富田、199

2:189」。

2.3 言語誤用の用語についての概念

かりに言語誤用について話すとしたら、コルダー「1993」では、2つのものを

次のように分類される。その中で、誤り error と間違い mistake という用語がある⦅

リチャード「1974:25」が、その error と mistake という用語について、定義

の差を述べている⦅誤り error は言語能力 competence を中心として検討する⦅間違い

mistake は言語運用 performance を中心として考える。さらに、クリスタル「198

5:112」では、これについて、次の通りに英語で述べらている。Error are assumed

to reflect, in a systematic way, the level of competence achieved by a learner, they

are contrasted with mistake which are performance limitations that a learner

would be able to correct.

言語能力 competenceの誤用には、言語組織的な誤用であり、言語運用 performance

の誤用には、その言語組織的な場合がわかった後、起こる誤用である。誤りについて、

パレラ「1993:74」によれば、誤用が起こる場合には、その言語自身を解する

ための絶対的に困難であるからだそうである。おそらく、学習者が同じような誤用を

何回も犯すのであろう⦅

なお、コルダー「1981:10」が間違い mistake について、英語で次の通りに

述べている⦅It will be useful therefore here after to refer to the systematic errors of

Page 42: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

42

performance as a mistake. つまり、先述に基づいて、mistake というものは、言語

運用 performance に誤用が起こるのに影響する。タリガン「1990:75-76」

では、間違い mistake と言ういくつかのポイントについて、次の通りに挙げられてい

る⦅

ア) 誤用が起こる原因は言語運用 performance の点にある。それは、語を

暗記しにくいし、音素を綴りにくいからである。

イ) でたらめな誤用である。一般的言語学の側面にも起こる⦅

ウ) 誤用を解決するほうは学習者自身にある⦅

エ) 誤用が長引くことはない。

誤り error といういくつかのポイントについては、次のようである⦅

ア) 誤用が起こる原因は言語能力 competence の点にある。それは、言語

学の文法的用法に実力がないからである。

イ) 誤用の場合は一再ならず一定する。

ウ) 誤用を解決する方は教師にある⦅

エ) 誤用が長引くことはある⦅「筆者訳」

上記をみて、その誤り error と間違い mistake の差別について、次のような表

を挙げる⦅

表7:

誤り Error、間違い Mistake の意味分類

No.

カテゴリー

誤り

Error

間違い

Mistake

1 成り立ち 言語能力 言語運用

2 形式 組織的 不組織的

3 言語学的用法 未知 既知

4 期間 長期 短期

5 影響 誤用 誤用

6 解決法 教師 学習者

Page 43: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

43

言語能力 competence において誤用が起こる場合には、学習者が学ぶ言語学の文

法的用法などはまだ知らない⦅その誤用が一再ならず起こったり、長引いたりする⦅教

師が誤用の解決力を一番重要な者として訂正しなくてはいけない⦅誤用を解決するた

めには、学習者に練習などをさせたりする必要がある⦅文法的用法などに言語の理解

を上達すればするほど本当に誤用が起こる原因を減らしてくる傾向がないわけでは

ないだろうか⦅

又、言語運用 performance において誤用が起こる場合には、学習者が文法的用法

などを忘れてしまう⦅これは、暗記しにくいからかもしれない。誤用は一般的言語学

の側面に起こって、学習者が誤用の解決努力を中心として訂正しなくてはいけない⦅

誤用を解決するためには学んでいる言語に敏感であるような感じをこめて訂正する⦅

外国語(第二言語)に敏感であるような心をその中に持ってないと、誤用にも避ける

ことができないということではある。

2.4 言語誤用の原因

最初に外国語を習得する時、学習者が誤用を犯すにちがいない。学習者に起こる誤

用について、同じような原因を含むといえる⦅但し、どんなに相違原因を含んでいて

もほとんど同様であるような誤りを指摘する可能性がある。そのために、その誤用自

身を注意してばかりいないで、原因であるようなことを無視しなければならないと思

われる⦅それを通して、教室の中でよい教授計画を作成することができるようになる⦅

二か国語併用の場合には誤用の原因によって、クーニヤディー「1995:26-

29」では、言語誤用について、次の通りに述べられている⦅

ア) インターリングア・トランスファー

これは、自分の母語にある言語学規定を対象言語のその中に干渉す

Page 44: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

44

る。それともこれの場合には「文法規則などの転移が起こる⦅

イ) イントラリングアー・トランスファー

これは、対象言語の規定の中に母語のものを干渉するわけではないが、

文法的規則などの移動がその対象言語自身の間にあるような場合に起

こる⦅これについていくつかの要素を、次の通りに分類する。

1.オーバー・ゲネラリゼション

これは、対象言語の一般化しすぎである。ある言語において特定

の規定は、その言語自身のほかの部分規定に使うと言うことである⦅

したがって、学習者が対象言語に変な文型を作成してしまう。

2.イグノランス・オブ・レストリクション

これは、対象言語の使用限定ということである。学習者が、ある

言語の使用規定をわからないのに、わかったふりをする⦅

3.インコンプリート・アップリケション

これは、対象言語において不完全な規定の応用である⦅学習者が

不完全に文法などを実現する⦅減らしてくる特定の部分があるから

である⦅

4.セマンティックス・エラー

これは、対象言語において意味論の誤りである⦅一般的に、言語

にある同義語の誤用について話す⦅学習者が同義語の場合を区別す

ることはできないからである⦅

5.フアルセ・コンセプト・オブ・ヒーポテーシス

これは、対象言語において概念の仮説を立てるのに間違った⦅教

師の考え方にある方式の誤りである⦅

ウ) コンテクスト・オブ・リーニング

Page 45: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

45

これは、現場によって、対象言語を学ぶ⦅学習者が対象言語を習得

する時には、外面に左右される⦅これに関していくつかの要素が次のよ

うである⦅

1. 学校の影響の場合

2. 社会の影響の場合

以上を述べたようなことについて、タリガン「1990:35」では、イ

ンドネシア語で、次のように説明している⦅

Penyebab kesalahan adalah ketidakcermatan atau kesembronoan,

artinya suatu kesalahan yang bertolak dari pembelajar itu

sendiri yang mengikuti kaidah-kaidah yang diyakini atau yang

diharapkannya benar atau tepat tapi sebenarnya salah atau

keliru…selain itu, penyebab kesalahan bisa terjadi sebagai akibat

dari dampak pengajaran yang salah terhadap penggunaan

bahasanya.

2.5 言語誤用分析

2.5.1 言語誤用分析とその背景

言語誤用分析の述上のところまでは、学習者が犯したような誤りに対して対照

的研究のアップロー力の活用ができる⦅対照研究にとっては、一般的に誤りが起

こるような場合には、母語からの干渉である⦅逆に、言語誤用分析に立って、誤

りの原因の場合は、対象言語自身にある文法的用法などの規則が絶対に簡単では

ないからである⦅したがって、「ダヒディによる石川、PPS-UPI、2001」

では、母語現象以外の誤用について、いくつかの理由を、次の通りに挙げられて

いる⦅

ア) 誤用が起こる場合は、その対象言語自身の困難さが原因である⦅

イ) 人と話し合う時は場面による文脈と言うことを無視してしまう⦅

ウ) 対象言語を習得する時、変な学習ストラテジーを使ってしまう⦅

Page 46: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

46

エ) 対象言語を実現するのに気をつけてない⦅

コルダー「1981:14」によれば、対象言語において学習者が犯す誤り

を調べるためには、その言語誤用分析が行われる必要があるそうである⦅クリス

タル「1985」では、それについて英語で次の通りに述べられている⦅

In language for identifying, classifying and interpreting the

unaccapteble form produced by someone learning a foreign

language, using any of the principles and procedures provided by

linguistics.

それに対して、パテダ「1989:53」がインドネシア語に訳していて、 次

のようである⦅

Analisis kesalahan adalah suatu teknik untuk mengidentifikasi,

mengklarafikasi dan menginterpretasikan secara sistematis

kesalahan-kesalahan yang dibuat pembelajar yang sedang

belajar bahasa asing, dengan menggunakan teori-teori dan

prosedur berdasarkan linguistik.

言語誤用分析を実行する場合には、尐なくとも、言語学習プロセスにおいて学

習者または教師自身を援助することができるようになると期待する。それに関し

て「また、タリガン「1990:64」が言語誤用分析を行う目的については次

のようにいくつかの要素を述べている⦅

ア) Untuk menemukan urutan penyajian butir-butir yang akan

diajarkan di dalam kelas

イ) Untuk menentukan urutan jenjang penekanan, latihan berbagai

bahan yang diajarkan

ウ) Untuk merencanakan latihan dan pengajaran remedial

エ) Untuk memilih butir-butir bagi pengujian kemampuan siswa

なお、パテダ「1985:35」では、その目的についてインドネシア語で次

のように述べられている⦅

Analisis kesalahan dapat membawa guru untuk mengetahui jenis

kesalahan yang dibuat pembelajar yaitu, letak kesalahan, sifat

kesalahan, sumber kesalahan, serta penyebab kesalahan.

Temuan-temuan terhadap kesalahan tersebut dapat menjadi

umpan balik dalam pengevaluasian, perencanaan penyusunan

materi dan strategi.

Page 47: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

47

こうして、誤用の場合に対して教師がかつての教授法を変えずに向上させたり、

教科書の材料を加えたりする必要がある⦅

2.5.2 言語誤用分析とその手段

言語誤用分析とは、手続きである。やはり、特定の段階を超えるべきである⦅

これのことに関しては、「タリガンによるエッリス、1990:68」ではイン

ドネシア語で、次のように述べている⦅

Analisis kesalahan adalah prosedur kerja yang biasa digunakan

oleh para peneliti dan guru bahasa, yang meliputi pengumpulan

sample, pengidentifikasian kesalahan yang ada dalam sample,

penjelasan kesalahan, pengklarafikasaian kesalahan berdasarkan

penyebab, serta pengevaluasian atau penilaian taraf keseriusan

kesalahan itu.

また、同様であるような概念について、「パテダによるクリスタル、1983:

32」が、次のように明らかにしている。

Analisis kesalahan merupakan suatu teknik untuk

mengidentifikasikan, mengklarafikasikan dan

menginterpretasikan secara sistematik kesalahan-kesalahan yang

dibuat oleh pembelajar.

誤用をどうするかと言うことについて、宮崎「1989:47-48」が、全

般的な手段としての3つの段階を次の通りに挙げている⦅

ア) 誤用例を収集する。

イ) 誤用例を整理する。

ウ) この結果を日本語教育にどう活用するか、次の二様に大別する

1.日本語の特色を見出す。

2.効果的日本語教授法のために活かす。

Page 48: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

48

具体的に、誤用分析を行う段階は、次の通りに分類される⦅

ア) 誤用例の収集

イ) 誤用例の同一

ウ) 誤用例の確認

エ) 誤用例の説明

オ) 誤用例の査定

とにかく教授法をあらわす表現に起こる誤用に対して上記のような段階を手

がかりとして取り上げられると思われながらも、筆者が、言語誤用の用語につい

ては、言語を取得するのに学習プロセスの一部分として無視してしまうと良くな

いという一つの哲学を持っている⦅

2.5.3 言語誤用分析とその有益

言語誤用分析の行いなので、学習者または教師が対象言語の特色を解する

ために、十分な知識を受け入れることができるようになることになっている。

「クルニヤディーによるサパ二、1995:20-22」では、別の有益を、

次の通りに分類される⦅すなわち、教育学的な有益と理論的な有益がある⦅

各々重要なポイントが、次のように含まれている⦅

教育的な有益は、

ア) 言語学習プロセスにおいて、学習者または教師にフィードバック

を与える。

イ) レメディー教授を計画するのに助ける⦅

ウ) 学習者のニーズ分析に応じて授業材料を作成するのに助ける⦅

エ) 学習者の言語技能を推測するのに助ける⦅

Page 49: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

49

理論的な有益は、

ア) 言語学習のプロセス(言語習得)について記述(報告)を与える。

イ) 学習者の学習ストラテジーについて記述(報告)を与える⦅

2.6 日本語教育の含蓄

授受を表す表現に関わる誤用例を分析すると、日本語の一部の特徴が見られ

る⦅そして、外国語として日本語を学ぶとき、何が難しいか、また日本語はどん

な言語か、という疑問を目的に明らかにしてくれるのである⦅

なお、言語誤用分析によって、一般的にある語の教授上のポイント、効果的

ドリル、文型の出し方の順序、カリキュラムのくみかたなどを考慮する。誤用例

分析の最終目的が、日本語の特色や効果的な日本語教育教授法などを見つけるの

に役立つ⦅

Page 50: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

50

第 3 章

3.1 研究方法

ここで用いるメソッドは現在の発生している事件を明らかにする变述的研究であ

る⦅スラークマト「1984:140」によれば、变述的研究とは、現在的問題を重

要なものとして解決するのに集中すると言っていた⦅それでデータを構造したり、明

白にしたり、分析すしたりする⦆筆者訳。。また、ワシト「1997:10」が、イン

ドネシア語で次のように述べられている⦅Penelitian ini terbatas pada usaha

mengungkapkan suatu masalah dan keadaan sebagaimana adanya, sehingga

hanya merupakan penyingkapan fakta.

さらに、ジョン・ベスト⦆1982:162。では、同様に、インドネシア語で次の

ように述べられている⦅Penelitian deskriptif adalah penelitian yang ingin

menjawab pertanyaan melalui analisis terhadap hubungan antara variabel. 実

は、発生した事件があるか、なぜその事件が起こるかと言う質問を分析したり、明ら

かにしたりするような研究メソッドである⦅ほかのある意見を現したのは、变述的研

究の場合には、無仮説の研究の研究であって、2種類を次のように分けている。最初

に、エクスプローラティブに関する变述的研究である。このような研究性は、ある現

場において事件をはっきり明らかにする目的を有する研究である⦅最後に、デベロメ

ントに関する变述的研究である。このような研究性は、すべての科学範囲が使用して、

Page 51: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

51

ある原型またはプロトタイプを見つけるのに役立つための变述的研究である「アリク

ント208~210」。

本研究使用するような变述的研究種に関しては、次のようにいくつかのポイントを

含むからである⦅

ア) 研究する問題の場合は、現在、よく発生しているからである。

イ) 研究の目的を取り上げることによって、詳しい報告を得るためである。

ウ) データ収集やデータ・カテゴリーやデータ分析などなのに用いられるから

である。

3.2 研究テクニック

本研究のデータを取得するためには、2種のインストルメントによって、応用して

みる。インストルメントについては、次のように明らかにされる。

3.2.1 筆記試験

学習者が研究対象として受験する。筆記テストについては、学習者に2つの部

分があるが、一般的に授受を現す表現に関する文を作成させる。最初は、会話に

あるインドネシア語文を適当な日本語文に訳させる⦅最後は、絵にあるイラスト

や印によって、適当なやりもらいの日本語文を作成させる⦅

3.2.2 アンケート

これは、日本語の授受表現の学習において学習者の意見を調査するためである⦅

質問については、3つのカテゴリー(第一は授受の表現に対する学習者の知識、

第二は授受の表現を実現するときの学習者の意識、第三は授受の表現の学習に対

する学習者の概念に関する質問)に分類される。

Page 52: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

52

3.3 現場の学習者とサンプル

3.3.1 現場の学習者

マナド国立大学日本語教育プログラムの学習者に属する人たちに求める⦅

3.3.2 サンプル

現場学習者の範囲に基づいて、代表的に、研究のサンプルとしては、文法とい

う授業試験に合格をした学習者しか取り上げない⦅4年生の35人がいる⦅

3.4 データ加工とデータ分析

3.4.1 データ加工

本研究対象から習得したデータを決めた上で、加工しつづける⦅それは、分析

の前に、データを理解しやすくなるようにきちんと構成する⦅すなわち、データ・

エディト、データ・サイン(印)、データ・表を、作成するという次のようなデー

タ分析にある3つの段階である⦅

3.4.2 データ分析

データを加工してから、データに対して先述のような段階を超えて質的に分析

する⦅質的な分析について、マイルス・フベルメン「1992:16」では analisis

data kualitatif の中で、インドネシア語で次のように述べられている⦅

Data yang muncul berwujud kata-kata dan bukan rangkaian

angka. Data itu mungkin telah dikumpulkan dalam aneka macam

cara, dan biasanya diperoleh kira-kira sebelum siap digunakan,

dan biasanya disusun dalam teks yang diperluas.

本研究のデータを分析して拡大するためには、タリガン「1990:7」が述

べたような言語誤用例文分析に基づく手順を使用する。それは、その中で、誤用

Page 53: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

53

例の収集、誤用例の同一視、誤用例の確認、誤用例の説明、誤用例の査定という

metodologi analisis kesalahan と呼ばれる⦅

3.5 本研究段階

ここでいう本研究段階とは、現場で報告を得るための手続きである⦅筆者が済まさ

なければならないその手続きとは、次のようである⦅

ア) インドネシア教育大学修士課程や、指導教官から推薦をしていただいてか

ら、筆者が研究対象となる現場(機関)を訪問する⦅

イ) 本研究対象となる機関から研究するのを推薦していただいた上で,代表的

なサンプルをきちんと決定することについて、その機関の先生たちに相談

すれば考えている⦅

ウ) 特に、文法の先生にお願いして、サンプルを決定してみる⦅

エ) データをきちんと手に入れられるように、そのときに、直接的に応用した

インストルメントを確認する⦅

以上の段階を終えてから、データを、加工したり、分析したり、まとめをしたりす

る⦅最後に、最終のレポートとしてこの論文を書きあげることができるように望まれ

る。

Page 54: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

54

第 4 章

4.1 授受表現の誤用例文の説明

現場で応用したデータを獲得して、確認する。ある誤用例文を説明するためには,

表の中にコードをつける。また、データ応用に基づいて、授受表現の誤用例文は、次

のような表を挙げる⦅

Page 55: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

55

Page 56: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

56

上表から見て、見つけた誤用は、その中に、動詞の使い方や人称や場面によらな

い文脈や受身形の干渉に伴うことなどがあって、次の通りによく見られる⦅

1a. ジョンさんはもうあなた*に本をあげました。X

(s1,s3,s4,s5.s6,s7,s9,s10,s11,12,s13,s15,s16,s17,s18,s19,s20,s21,s22,s24,s25,s

26,s27,s28,s29,s30,s31,s32,s33,s34,s35)

b. 私* はジョンさんが本をくださいました。(X)

(s11)

私* はジョンさんに本をくれました。(X)

(s13,s22,s26,s27,s28,s35)

私*はジョンさんに本をあげました。(X)

(s29,s31,s32)

ジョンさんは私* に本をもらいました。(X)(?)

(s24)

2a. あなた*におつりをあげましたか。(A)

(s2,s3,s5,s7,s9,s10,s11,s12,s13,s14,s18,s21,s23,s25,s26,s27,s28,s31,s34,

s35)

私はあなた*におつりをくれましたか。(X)

(s1,s15,s16,s19,s20,s24,s32)

私はあなた*におつりをもらいました。(X)(?)

(s8,s17)

b. 私*はあなたからもらいました。(A)

(s2,s3,s6,s8,s9,s10,s11,s14,s16,s17,s21,s23,s25,s26,s27,s28,s29,s33,s35)

あなたがくれました。(A)

(s4,s5)

私*にもらいました。(X)

Page 57: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

57

(s7,s18)

私* はあなたにくれました。(X)

(s13,s24)

私*はあなたにあげました。(X)

(s15,s19,s20,s30,s31)

あなたにくださる。(X)

(s34)

3a. 私はあなた*(先輩)に本をあげます。(A)

(s1,s3,s4,s5,s6,s7,s8,s10,s11,s14,s15,s16,s17,s18,s21,s23,s24,s29,s30,s31,

s32,s33)

私はあなた*にその本をもらいます。(X)

(s19,s20)

b. 私(先輩)あなた* (後輩)に本をくださる。(X)

(s12)

私はあなたたち*にその花をもらいます。(X)(?)

(s19,s20)

4a. この人形は母にくれますか。(X)

(s3)

この人形は母はあなた* にもらいましたか。(X)

(s8)

あなた*に母に人形をくれますか。(X)

(s24)

この人形は、お母さんにくれますか。(X)

(s17)

b. 先生は私*に本をくれました。(A)

Page 58: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

58

(s2,s3,s4,s5,s6,s10,s11,s13,s21,s22,s23,s25,s26,s27,s28,s29,s35)

先生に人形をくださいます。(X)

(s7)

先生は私*にもらいました。(X)

(s30)

私*先生さんにその人形をくれます。(X)

(s13)

先生に私*は人形をあげました。(X)

(s15,s16,s19,s20,s31)

この人形は先生があげました。(X)

(s18)

先生は私*にこの人形をさしあげました。(X)

(s9)

先生は私*に人形をあげました。(X)

(s24)

先生はこの人形、私*にあげます。(X)

(s17)

人形は先生をあげます。(X)

(s32)

先生が私*に人形をあげます。(X)

(s33)

5a. 近所さんはもうこのラメンをくれました。(A)

(s1,s2,s4,s5,s6,s10,s11,s14,s21,s29,s35)

近所がラメンをあげました。(X)

(s3,s22,s24,s32)

Page 59: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

59

近所に/からこのラメンをあげます。(X)

(s7,s23)

ラメンは、近所があげました。(X)

(s18)

近所にこのラメンをくれました。(X)

(s25)

このラメンは、近所にあげました。(X)

(s17)

b. 私たち*は近所からラメンをくれました。(X)

(s23)

私*は近所にラメンをくれます。(X)

(s22,s29)

近所は私たち*にこのラメンをあげました。(X)

(s11)

私たち*は近所に/からラメンをくれました。(X)

(s7,s22,)

ラメンは私たち*に近所からあげました。(X)

(s18)

私たち*に近所はラメンをあげました。(X)

(s24,s32)

私たち*は近所にあげます。(X)

(s17)

私たち*は近所に/からラメンをくられる。(X)

(s6,s25,s29,s35)

6a. 真由美さんは私*に焼き飯をつくります。(X)

Page 60: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

60

(s7,s15,s18,s19,s20,s23,s24)

真由美さんは私*に焼き飯を作ってあげます⦅ (X)

(s3,s4,s5,s6,s10,s17,s21,s29)

真由美さんは私*に焼き飯をやりました。(X)

(s2)

真由美さんは私*に焼き飯をします。(X)

(s32)

真由美さんは私*に焼き飯を作ってやります⦅ (X)

(s14)

真由美さんは私*に焼き飯をしてもらいます。(X)

(s25)

b. あなた*は真由美さんから焼き飯を作られてあげました。(X)

(s1)

あなた*は真由美さんに焼き飯を作ってくられます⦅ (X)

(s2,s14)

真由美さんはあなた* に焼き飯を作っていただきます⦅ (X)(?)

(s12,s18)

あなた*は真由美さんが焼き飯を作られました⦅ (X)

(s20,s24,s29)

あなた*は真由美さんから焼き飯をしられてくれます。(X)

(s25)

あなた*は真由美さんに焼き飯を作ってくれました⦅ (X)

(s6,s7,s21,s25)

あなた*は真由美さんに焼き飯を作ってもられます。(X)

(s26,s27,s28,s35)

Page 61: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

61

あなた*は真由美さんに焼き飯をします⦅ (X)

(s32)

7a. 隆さん*は先生に本を貸してあげました⦅ (X)(?)

(s22)

先生は隆さん*に本を借りてくださいました⦅ (X)

(s1)

先生は隆さん*に本を貸してくれました/くださいました。(X)

(s25,s6)

先生は隆さん*に本を貸していただきました⦅ (X)(?)

(s2,s14)

b. 教授は私*に本を貸してくれます⦅ (A)

(s11)

教授に本を貸してもらいました⦅ (A)

(s9,s21,s23)

私*も先生から本を貸してくられます⦅ (X)

(s26,s27,s28,s31,s35)

教授が私*も本を貸してもらう⦅ (X)

(s4,s5)

私*はもう先生から本を借りられてくださいました。(X)

(s1)

私*も先生から本を貸してくださいました。(X)

(ss2)

私*も本を貸しました⦅ (X)

(s24)

私*も先生に本を貸してくれました⦅ (X)

Page 62: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

62

(s13,s22,s30)

私*も先生に貸されてくれました⦅ (X)

(s25)

私*も先生に本を貸されていただきます⦅ (X)

(s14)

私*も教授を貸してあげます⦅ (X)

(s8)

8a. 町先生*を手伝ってあげます⦅ (A)

(s9)

私は町先生*に手伝ってあげます⦅ (A)

(s1,s3,s4,s6,s10,s11,s17,s21)

私はお世話をしていただきます⦅ (X)

(s22)

私は町さん*に手伝ってをあげます。(X)

(s12)

私は町さん*に手伝います⦅ (X)

(s7,s8,s26,s27,s32,s35)

私は町先生*が手伝ってさしあげます⦅ (X)

(s14)

b. 恵子さんは町先生*に食べ物を買ってあげます⦅ (A)

(s13)

恵子は町先生*に食べ物を買いました。(X)

(s24,s27,s32)

町先生*は恵子に食べ物を買われてあげます⦅ (X)

(s2)

Page 63: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

63

町先生*は恵子さんに食べ物を買ってあげます⦅ (X)

(s7)

町先生*は恵子さんに買われていただきます⦅ (X)

(s14)

町先生*は恵子さんに食べ物を買ってあげます⦅ (X)(?)

(s17)

町先生* は恵子さんから食べ物を買ってあげます。(X)

(s6)

町さん*に恵子さんは食べ物を買ってくれました⦅ (X)

(s25)

9a. 私は父さん*にシャツを買ってさしあげます⦅ (A)

(s1,s6,s25)

父*は私にシャツを買ってくれます⦅ (X)

(s11)

私は父*に服を買います⦅ (X)(?)

(s7,s24,s27,s32)

私は父* にシャツを買ってもらいます⦅ (X)(?)

(s4)

b. 私はお父さん*に塗ってさしあげます⦅ (A)

(s1,s25)

私は父さん*にぬのをあげます/さしあげます。(X)(?)

(s8)

私は父*にぬいます。(X)(?)

(s7)

私は父*にぬうします。(X)

Page 64: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

64

(s32)

私は父*にぬうをします。(X)

(s24,s27)

10a.私はおじいさん*に新聞を読んでさしあげます⦅ (A)

(s6,s25)

私はおじいさん*に新聞を読みます⦅ (X)(?)

(s7,s8,s13,s19,s24,s32)

私はおじいさん*に新聞を読まれてあげます。(X)

(s16)

b.おばあさんはおじいさん*に新聞を読んでくださいます⦅ (A)

(s25)

祖母は祖父*に新聞を読んでくれる⦅ (A)

(s2,s14)

祖母は祖父*に新聞を読みます。(X)(?)

(s7,s8,s13,s24,s32)

おばあさんはおじいさん*に新聞を読まれてあげます。(X)

(s16)

(*)は、物または恩恵を取り受ける人物として

Page 65: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

65

Page 66: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

66

表9から見て、各学習者が犯した誤用はさまざまである⦅その誤用の中に、動詞

の使い方や人称の位置や場面によらない文脈などがある。誤用をはっきりわかるため

に、次のように見られる。

1.⦆絵。 私は社長*にプレゼントをあげます。(A)

(s11,s18,s23,s24,s34)

社長*は私にプレゼントをくれます。(X)(?)

(s13)

私は社長さん*にプレゼントをもらいます。(X)(?)

(s15,s16,s19,s20)

2.⦆絵。 吉さん*は健一にはコンサートのチケットをあげます。(X)(?)

(s14)

健一さんは吉さん*にコンサートのチケットをもらいます。(X)(?)

(s15,s16,s19,s20)

吉さんは健一 コンサートのチケットをくれました。(X)

(s32)

3.⦆絵。 たけさん*は田中さんに資料をくれます。(X)

(s3)

資料は、たけさん*に田中さんからもらいました。(X)

(s18)

田中さんはたけさん*に資料をもらいました。(X)(?)

(s15,s16,s19,s20)

4.⦆絵。 私*は社長にくるまをもらいます。(A)

(s3,s17,s29)

社長は私*にくるまをくれます。(A)

Page 67: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

67

(s1,s4,s5,s13,s22,s23,s34)

社長は私*にくるまをあげます。(X)

(s6,s15,s16,s18,s19,s20,s24,s34)

社長は私*にくるまをいただきます。(X)(?)

(s7,s8)

社長は私*にくるまをさしあげます。(X)

(s26,s27,s28)

私*は社長にくるまをあげます。(X)(?)

(s31/s30)

5.⦆絵。 つまさんはおっとさん* にかさをもらいます。(X)(?)

(s15,s16)

おっとさん*はつまさんにかさをあげます。(X)(?)

(s26,s27,s28)

つまがおっと*にかさをくれる。(X)

(s34)

6.⦆絵。 木村さん* は佐藤さんにお菓子をあげます。(X)(?)

(s7,s19,s20,s30)

木村*が佐藤にお菓子をくれる。(X)

(s34)

7.⦆絵。 お兄さん*は山田さんに風邪の薬をくれます。(X)(?)

(s11)

山田さんはお兄さん* に風邪の薬をもらいます。(X)(?)

(s34)

8.⦆絵。 客さん*は店員にもののサンプルをもらいました。(A)

(s11)

Page 68: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

68

店員さんは客さん*にもののサンプルをあげます。(A)

(s1,s4,s5,s6,s10,s21,s23,s24,s26,s28,s29,s35)

客さん*は店員にもののサンプルをあげます。(X)(?)

(s32)

9.⦆絵。 紀子さんさんはおじいさん*に帽子をくれます。(X)

(s32)

紀子さんはおじいさん* に帽子をもらいます。(X)(?)

(s15,s16,s19,s20,s30)

10.⦆絵。太朗さん(目下)はたけさん*(目上)にプリントをあげます。(A)

(s1,s4,s32)

たけさん*は太朗さんにプリントをもらいます。(A)

(s13,s19)

太朗さんはたけさん* にプリントをもらいます。(X)(?)

(s15,s16,s20,s30)

たけさん* は太朗さんにプリントをさしあげます。(X)(?)

(s17,s34)

太朗さんはたけさん*にプリントをくれます。(X)

(s29)

たけさん*は太朗さんにプリントをくれました。(X)

(s24)

たけさん*は太朗さんにプリントをいただきます。(X)(?)

(s25)

11.⦆絵。 岡田さんは社長*にレポートをコピーしてあげます。(A)

(s4,s5,s6,s8)

岡田さんは社長* をレポートをコピーするをあげます。(X)

Page 69: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

69

(s1)

岡田さんは社長さん*にレポートをコピーするをあげってあります。(X)

(s20)

岡田さんは社長さん*にレポートをコピーするくれます。(X)

(s31)

岡田さんは社長*にレポートをコピーしてくれる。(X)

(s34)

12.⦆絵。 田中さんは私*に空港まで見送るをくれます。(X)

(s1)

田中さんが私*に空港まで見送ってあげる。(X)

(s4,s5,s6,s10)

田中さんは私*に空港まで見送るしてあげます。(X)

(s15,s16,s19)

私* は田中さんんに空港まで見送ってくれます。(X)

(s29)

田中さんは私*に空港まで見送くるをあげってあります。(X)

(s20)

私* は田中さんに空港までみおくるくれます。(X)

(s31)

13.⦆絵。 太朗さんは私*に統計を説明してあげます。(X)

(s6,s10,s29)

太朗さんは私*に統計を説明するをもってあります。(X)

(s20)

私* は太朗さんに統計を説明してくれます。(X)

(s7,s13,s30,s31)

Page 70: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

70

太朗さんは私* に統計を説明してもらいます。(X)(?)

(s8,s15,s16,s19)

14.⦆絵。 社長……私たち*は歌を歌うをくださいます。(X)

(s1)

社長さんは私たち*の歌を歌うにいただきます。(X)

(s8)

社長は私たち*に歌を歌ってあげる/さしあげる。(X)

(s4,s5,s6,s10,s15,s21,s35/s3.s16)

社長さんは私たち*を歌を歌うにいただきます。(X)

(s22)

私たち* は社長さんに歌を歌ってくれます。(X)

(s13,s30,s31)

社長は私たち*に歌を歌うをあげてあります。(X)

(s20)

私たち*は社長に歌を歌います。(X)(?)

(s29)

15.⦆絵。 健一は小川*に散歩に誘うをくれます。(X)

(s29)

健一さんは小川さん*に散歩に誘うをあげます。(X)

(s1)

健一は小川*に散歩を誘うしてもらいます。(X)

(s16)

健一は小川* に散歩に誘うをもってあります。(X)

(s20)

小川さん* ,健一から散歩に誘ってくれます。(X)

Page 71: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

71

(s25)

小川さん*は健一さんに散歩に誘うくれます。(X)

(s31)

16.⦆絵。 恵子さん*は近所から庭を掃除してもらいます。(A)

(s13)

近所さんは恵子さん*に庭を掃除するにあげってあります。(X)

(s20)

近所さんは恵子さん*に庭を掃除してくれます。(X)

(s30)

近所さん恵子さん*に庭を掃除するくれます。(X)

(s31)

17.⦆絵。 田中さんは社長*に荷物を持ってももらいます⦅ (X)(?)

(s1)

田中さんは社長*に荷物を持つしてもらいます。(X)

(s16)

田中さんは社長さん* に荷物を持つくれます。(X)

(s31)

田中さんは社長さん*に荷物を持つあげます。(X)

(s8)

社長さん*は田中さんに荷物をもってくられます。(X)

(s25)

田中さんは社長さん*に荷物を持つしてくれます。(X)

(s30)

18.⦆絵。 山田さん*が先生に部屋を探してもらう⦅ (A)

(s5,s6,s13)

Page 72: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

72

山田さん*は先生さんに部屋を探すくれます。(X)

(s31)

山田さん*は先生から部屋を探すをいただく。(X)

(s8)

先生は山田さん*に部屋を探してくださいます⦅ (X)

(s12)

先生は山田さん*に部屋を探すしてもらう。(X)

(s216)

山田さん*は先生に部屋を探してくださいます。(X)

(s25)

先生は山田さん*に部屋を探すをしてくれます。(X)

(s30)

19.⦆絵。 真由美さんはお母さん*に料理をしてさしあげます。(A)

(s30)

お母さん*は真由美さんに料理をするくれます。(X)

(s31)

真由美さんはお母さん* に料理をしてもらいます。(X)(?)

(s10,s15,s16)

お母さん*は真由美さんに料理をしてくれます。(X)

(s25)

20.⦆絵。 学生たち*は町先生に日本語を教えてもらいます⦅ (A)

(s6,s13)

町先生は学生たち*に日本語を教えてさしあげます⦅ (A)

(s12)

町先生は学生たち*に日本語を教えるしてもらいます。(X)

Page 73: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

73

(s16)

町先生は学生たち*に日本語を教えるしてくれます。(X)

(s30)

町先生は学生たち*に日本語を教えてくれる/くださる。(X)

(s8)

(*)は、ものまたは恩恵を取り受ける人物として

4.2 授受を表す表現の誤用例文分析の説明

4.1 にあげたような誤用例文は、取得されたデータであると言うことをめぐって、

さまざまな誤用例文の分析を加工する。また、次々に誤用例文の種を見るためには、

誤用種⦆カテゴリー。を分けて説明してみる⦅そのカテゴリーは次に述べられる。動詞

の使い方、人称の位地つけの誤用、場面によらない文脈の誤用、受身に干渉の誤用だ

ということである。こう言うふうに、誤用例文を説明して訂正しやくなると思われる。

4.2.1 動詞の誤用の場合

誤用例文:

1.ジョンさんはあなた*に本をあげましたね。

上の文の誤りは、動詞の使い方にある。意味的に、ジョンさんということは話

し手と聞き手のソトにいる人の(p3)与え手としては、相手または聞き手・受

け手(p2)に何かを与える。ですから、「あげる」は(p1・p2)に対して

物を表するのに使わない。正しい文は次の通りである。

2.ジョンさんは(あなた*に)本をくれましたね。

誤用例文:

3.私はあなた*にもうおつりをくれましいた。

Page 74: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

74

4.わたしはあなた*におつりをもらいました。

3、4の文の誤用は、動詞の使い方にあるが、4の文は、文法的に違っている

ところがない。それにしても、本当の意味を補うから、そういう文を違っている

ことになっていると思われる。私だということの与え手(p1)が、聞き手・受

け手(p2)に何かを与える。そうしたら、意味をかわらずに、正しい文は次の

通りである。

5.(私は)あなた*におつりをさしあげました。

誤用例文:

6.私*はあなたにくれました。

7.私*はあなたにあげました。

8.あなたにくださる。

6、7、8の文の誤りは、動詞の使い方にある。6、8、それは、日本語の文

法にない文型であろう。逆に、7は文法的に誤っているところがなくても、意味

的に間違うということである。私ということ受け手(p1)は、与え手としての

相手または聞き手(p2)に受け取る。意味をかわらずに、文に正しい動詞の使

い方は次のようである。

9.(私*は)あなたに(お返しを)いただきましたよ。

誤用例文:

10.私はあなた*に花をもらいました。

10では文法的に間違っているところはない。意味的に、動詞の使い方の点か

ら見ると誤であるといえる。私という与え手(p1)は受け手(p2)としての

聞き手に何かを与える。そうすると、動詞の使い分けは次のようである。

11.(私は)あなた*にこの花をさしあげますよ。

Page 75: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

75

誤用例文:

12.私はあなた*に本をくださる。

この文の誤りは動詞の使い方にある。「くださる」という動詞は、第一人称(p

1)が第二人称(p2)に何かを与えるのに用いられない。文法的規則を無視せ

ずに、最適な動詞の使い方は次のようである。

13.(私は)あなた*に本をさしあげますよ。

誤用例文:

14.この人形は母にくれますか。

14に用いられた動詞は、意味的に間違っているということである。受け手(p

2)としての聞き手が与え手(p1)としての聞き手の範囲にある人物またはウ

チの人から何かを取り受ける。それにしたがって、正しい表現は次の通りになる。

15.(あなた*は)母にこの人形をもらうの。

または

16.この人形を母が(あなた*に)くれるの。

誤用例文:

17.先生にくださいます。

18.この人形は、先生があげました。

19.先生は私*に人形をあげました。

また、それぞれの文は、特に、その動詞の使い方をめぐって、日本語の文法用

法を避けた。それぞれの文に伝えたい意味というと、受け手・話し手(p1)と

しての私がソトにある人物の与え手(p3)としての先生から何かを受け取る。

以上の説明に基づいて、17~19の正しい文を次のように作成することができ

る。

Page 76: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

76

20.(私*は)この人形を先生にいただいたのです。

または、

21.先生が(私*に)この人形をくださったのです。

誤用例文:

22.近所はラーメンをあげます。

23.近所からラーメンをあげました。

22の誤りは、18、19のように、授受を現す表現に用いられる動詞の使い

方にある。22、23の文に伝えたい意味というと、与え手(p3)としての 近

所が話し手(p1)と聞き手(p2)または(みんなの家族員)の受け手として

の私たちに与える。この場合には、話し手も、聞き手も、ウチの人である。です

から、正しい文は次のようである。

24.近所は(私たち*に)このラメンをくださったね。

または、

25.(私たち*は)近所にこのラメンをいただいたね。

誤用例文:

26.真由美さんは私*に焼き飯を作ってあげます。

27.真由美さんは私たち*に焼き飯を作ってやります。

26、27の文の誤用は授受補助動詞の使い方にある。ものの授受を現す表現

の用法は恩恵の授受と同じようである。そういうわけで、26、27の文に伝え

る意味は次のようである。というのは、ソトにある人物としての与え手(p3)

がウチにある人物としての受け手・話し手の場合(p1)のために、行為を表す

る。上記の文に対して、「あげる」または「やる」というような授受捕助動詞が

使えない。「くれる」または「くださる」というような授受補助動詞を次の通り

に使ったら正しい。

Page 77: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

77

28.真由美さんは(私*に)焼き飯を作ってくれます。

誤用例文:

29.あなた*は真由美さんに焼き飯を作ってくれますね。

29は28の対応策である。また、29の誤用は、授受補助動詞の使い方にあ

る。29の目的意味について、あなたという受け手・聞き手の場合(p2)が真

由美というソトにある人物(p3)・与え手に行為を表される。 正しい文は、次

のようである。

30.(あなた*は)真由美さんから焼き飯を作ってもらいますね。

誤用例文:

31.先生は隆*に本を貸していただきました。

32.先生は隆さん*に貸してくださいました。

文法的に、こういう文は間違っているということでもないと思われる。しかし、

どんなに正しいといっても、ある表現に伝えたい意味などが大切になる。つまり、

先生という与え手(p3)が隆という受け手に行為を表する。それぞれはソトに

あって話し手とも聞き手とも関係のないという人物である。正しいことは、次の

通りである。

33.先生は隆さんに本を貸してさしあげました。

誤用例文:

34.私*も先生から本を貸してくださいました。

また、34の誤りは授受補助動詞の使い方にある。しかも、意味的に見て、「話

し手の場合(p1)」受け手としての私がソトにある(p3)与え手としての先

生から行為を受け取る。34の正しい表現は、「もらう」または「いただく」と

いうような動詞の使い方で、次のようになる

35.私*も先生から本を貸していただいたよ。

Page 78: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

78

誤用例文:

36.父*は私にシャツを買ってくれます。

36には間違っているというような表現でもないと思われる。文法的に正しい

文であるが、こういう文で、誤解を発生してしまうおそれがある。どうしても、

上記の文は意味的に誤りのないわけではない。話し側にある人物の受け手として

の父(p3)が与え手としての私・話し手の場合(p1)から行為を受け取る。

ここでいう父は話し手側にある第三人称の近称である。それのためには、最適な

表現は次の通りになることにする。

37.父*が私からシャツを買ってもらいます。

または、

38.(私は)父*にシャツを買ってあげます。

誤用例文:

39.社長*は私にプレゼントをくれます。「絵」

36と同じように、間違っているという文でもないと思われる。しかし、意味

的に、そういう文には動詞を選択するのが、間違うということであって聞き手に

誤解が起こる心配がある。この場合には、受け手(p1)としの私ではないが、

その逆である。なお、受け手(p3)としての社長である。それにしたがって、

最適な表現は次の通りになる。

40.社長*は私からプレゼントをもらいます。

または、

41.(私は)社長*にプレゼントをさしあげます。

誤用例文:

42.吉さん*は健一……コンサートのチケットをくれました。⦆絵。

42に登場している与え手(p3)、受け手(p3)は、話し手(p1)、聞き

Page 79: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

79

手(p2)の以外にある人物である。本当の意味から検討すると、受け手として

の「よしさん」が、与え手としての健一さんから何らかを獲る。受け手(p3)

は与え手(p3)に対して、「くれる」が使えない。正しい文は次のようである。

43.よしさん*は健一さんからコンサートのチケットをもらいます。

誤用例文:

44.たけさん*は田中さんに資料をくれます。⦆絵。

44は43と同じような誤用形成である。44に伝える本当の意味だというこ

とから見ると、受け手としての「たけさん」が、与え手としての田中さんから何

らかを獲る。受け手(p3)は与え手(p3)に対して、「くれる」が使えない。

受け手も与え手も、話し手と聞き手のソトにある人物である。最適な文は次の通

りである。

45.たけさん*は田中さんから資料をもらいます。

誤用例文:

46.社長は私*にくるまをさしあげます。⦆絵。

46に用いられた授受動詞は間違っている。文章に伝える意味から見ると、与

え手(p3)としての社長が受け手(p1)としいての私に物を表する。つまり、

「さしあげる」は、英語で give という意味を持っているからといって、第一人

称に対して何らかを表するとできない。最適な動詞は「くださる」である。

47.社長は私*にくるまをくださる。

誤用例文:

48.妻が夫*に傘をくれる。⦆絵。

48に登場している与え手(p3)、受け手(p3)は、話し手(p1)、聞き

手(p2)の以外にある人物である。期待する本当の意味から検討すると、受け

手としての 夫 が、与え手としての 妻 から物を獲る。受け手(p3)は与

Page 80: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

80

え手(p3)に対して、「くれる」が使えない。それのためには、正しい文は次

のようである。

49.夫*が妻に傘をもらいます。

誤用例文:

50.木村*が佐藤にお菓子をくれる。⦆絵。

50は、42、48のような誤用形成と同じである。おそらく、学習者が、「く

れる」という授受動詞は受動文を持ち合わせるのを理解してしまうからである。

期待する意味から検討すると、受け手としての木村さんが、与え手としての佐藤

さんから物を獲る。正しい文は次のようである。

51.木村さん*が佐藤さんにお菓子をもらいます。

誤用例文:

52.お兄さん*は山田さんにかぜの薬をくれます。⦆絵。

50のような誤用形成と同じである。こういう形成を、誤用を避けるために、

注意する必要である。最適な文は次のようである。

53.お兄さん*は山田さんにかぜの薬をもらいます。

誤用例文:

54.のり子ちゃんはおじいさん*に帽子をくださいます。⦆絵。

54に伝える意味的に、与え手(p3)としての紀子ちゃんが受け手(p3)

としてのおじいさんに物を表するということである。与え手も受け手も話し手と

聞き手の以外にある人物である。それのためには、「さしあげる」を次のように

使えば正しい。

55.のりこちゃんはおじいさん*に帽子をさしあげる。

誤用例文:

56.田中さん*は太朗さんにプリントをくれました。⦆絵。

Page 81: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

81

42、48、50、52のような誤用形成と同じである。56の文を期待する

意味から検討すると、受け手としての田中さんが、与え手としての太朗さんから

物を獲る。正しい文は次のようである。

57.田中さん*は太朗さんにプレゼントをもらいました。

誤用例文:

58.岡田さんは社長にレポートをコピーしてくれる。⦆絵。

48に登場している与え手(p3)、受け手(p3)は、話し手(p1)、聞き

手(p2)の以外にある人物である。本当の意味から検討すると、受け手として

の社長が、与え手としての岡田さんに恩恵を表される。受け手(p3)は与え手

(p3)に対して、「くれる」が使えない。それのためには、正しい文は次のよ

うである。

59.岡田さんは社長*にコピーしてさしあげる。

誤用例文:

60.田中さんは私*に空港まで見送ってあげる。⦆絵。

60に使用された授受動詞は文法的に最適でない。頭に説明したように、第三

人称⦆主語。は第一人称(目的語)に対して物」恩恵を表するのは、「あげる」が

使えない。期待する意味は、与え手としての田中さんが受け手としての私のた

めに恩恵を表するからである。最適な表現は次の通りである。

61.田中さんが(私*に)空港まで見送ってくれる。

誤用例文:

62.社長は私たち*に歌を歌ってあげる。⦆絵。

60のような誤用形成と同じである。受け手(目的語)としての私たちは与

え手(主語)としての社長にある動作を表される。ですから、「あげる」が用い

られないが、「くださる」に最適である。

Page 82: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

82

63.社長が私たち*のために歌を歌ってくださる。

誤用例文:

64.小川さん……健一……から散歩に誘ってくれます。⦆絵。

64は恩恵のやりもらいである。文中に起こった誤りは授受動詞の使い方にあ

る。「くれる」を「もらう」という授受補助動詞に変わると文法的に正しくて、

伝える意味から見ると間違うということでもない。受け手としての小川さんが、

与え手としての健一さんから恩恵を獲る。最適な表現は次のようである。

65.小川さん*は健一さんから散歩に誘ってもらいます。

誤用例文:

66.近所さんは恵子さん*には掃除をしてくれます。⦆絵。

66に登場した受け手(p3)としての恵子さんは話し手または聞き手のウチ

にある人物と関係のない。それのためには、文中に「くれる」という授受補助動

詞の使いが間違っている。受け手としての第一人称、または第二人称の以外に「く

れる」が使える。66)に受け手としての恵子さんが第三人称である。正しい文

は次である。

67.近所(あたりの人)は恵子さん*に庭を掃除してさしあげる。

誤用例文:

68.社長さん*は田中さんに荷物をもってくれる。⦆絵。

64のような誤用形成と同じである。文に伝える意味から見ると、与え手とし

ての田中さんであって恩恵の受け手は社長である。それぞれの人称は話し手と聞

き手のソトにある人物である。最適な文は次のようである。

69.社長*は田中さんに荷物を持ってもらいます。

または、

70.田中さんが社長*に荷物を持ってさしあげます。

Page 83: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

83

誤用例文:

71.山田さん*は先生に部屋を探してくださいます。⦆絵。

71に用いられた「くださる」という授受補助動詞は絶対に間違っている。口

頭に説明したように、目的語としての受け手(p3)に対して「くださる」は使

えない。71に伝える意味の与え手としての先生が受け手としての山田さんのた

めにある恩恵をお与えになる。次のような文である。

72.山田さん*は先生に部屋を探していただきます。

誤用例文:

73.お母さん*は真由美さんに料理をしてくれます。⦆絵。

73は、64、68のような誤用形成と同じである。文に伝える意味から見る

と、与え手としての人物は真由美さんであって恩恵の受け手はお母さんである。

それぞれの人称は話し手と聞き手のソトにある人物である。最適な文は次のよう

である。

74.お母さん*は真由美さんから料理を作ってもらいます。

誤用例文:

75.町先生は学生たち*に日本語を教えてくれる。⦆絵。

75には、町先生の恩恵によって、受け手としての学生たちは話し手または聞

き手のグルプであれば、間違っているという文でもない。しかし、話し手または

聞き手は学生たちのソトにある人物であれば、間違っているわけである。75の

場合には、話し手または聞き手は学生たちにある人物ではないからである。

76.町先生が学生たち*に日本語を教えてあげる。

動詞の使い方の誤用は、授受を表す表現において一つの誤形成である。上記の

ような誤用を国立マナド大学日本語科の学習者が犯してしまった。詳細に動詞の

使い方の誤用を理解させるのに簡単に次のような表を挙げられている。

Page 84: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

84

表10:

動詞の誤用の程度

やる・あげる・さし

あげる

もらう・い

ただく

くれる・くださる 合計

程度

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII IIII IIII

IIII I

III IIII IIII IIII

IIII IIII IIII

IIII IIII IIII

IIII IIII IIII

IIII

174

174ポイントという合計は動詞の誤用形成程度である。一般的に、各学習者

が動詞の使い方において多様な誤用を犯してしまった。

4.2.2 人称の位置の誤用の場合

このセクションでは、人称の位置の誤用形成であることを検討する。このよう

な誤用に対して、話し手と聞き手の間に誤解を招くこともあって無視するわけに

はいかないと思われる。

次に、文に表する動詞の使いわけに基づいて、人称代名詞の位置つけの誤用形

成で次の通りに分析して簡単に明らかにする。

誤用例文:

77.私*はジョンさんに本をくれました。

78.ジョンさんは私*に本をもらいました。

79.私*はあなたにくれました。

80.この人形は、母はあなた*にもらいましたか。

81.私*は先生さんにその人形をくれます。

82.真由美さんは私*に焼き飯をしてもらいます。

83.真由美さんはあなた*に焼き飯を作ってもらいます。

Page 85: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

85

84.私*も先生さんに本を貸してくれました。

85.町先生*は恵子さんに食べ物を買ってあげます。

86.私は父*にシャツを買ってもらいます。

87.私は社長さん*にプレゼントをもらいます。

88.よしさん*は健一 にコンサートのチケットをあげます。⦆絵。

89.健一さんはよしさん*にコンサートのチケットをもらいます。⦆絵。

90.田中さんはたけさん*に資料をもらいました。⦆絵。

91.社長は私*にくるまをいただきます。⦆絵。

92.妻さんは夫さん*に傘をもらいます。⦆絵。

93.夫さん*は妻さんに傘をあげます。⦆絵。

94.木村さん*は佐藤さんにお菓子をあげます。⦆絵。

95.山田さんはお兄さん*に風邪の薬をもらいます。⦆絵。

96.店員さんは客さん*に物のサンプルをもらいます。⦆絵。

97.客さん*は店員さんに物のサンプルをあげます。⦆絵。

98.太朗さん(目上)はたけさん*(目下)にプリントをもらいます。⦆絵。

99.たけさん*は太朗さんにプリントをさしあげます。⦆絵。

100.のり子さんはおじいさん*に帽子をもらいます。⦆絵。

101.私*は田中さんに空港まで見送ってくれます。⦆絵。

102.私*は太朗さんに統計を説明してくれます。⦆絵。

103.太朗さんは私*に統計を説明してもらいます。⦆絵。

104.私たち*は社長さんに歌を歌ってくれます。⦆絵。

105.田中さんは社長さん*に荷物を持ってもらいます。⦆絵。

106.社長*は田中さんに荷物を持ってあげます。⦆絵。

Page 86: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

86

107.真由美さんはお母さん*に料理をしてもらいます。「絵」

(*)は、ものまたは恩恵を取り受ける人物として

77~107の文は人称の位置つけの誤用である。人称の位置に間違っている

から、理解できなくて誤解を招くことができてしまう。また、78のようで、正

しい文法であるから変な文章だということでもないと思われる。しかし、そうい

う場合には意味を変えてしまう。伝える意味から見ると、受け手(p1)として

の私が与え手(p3)としてのジョンさんから物を得る。80には、話し手、聞

き手のウチにある与え手(p3)としての人物は母である。聞き手と共に 受け

手(p2)としての人物はあなたである。81に伝える本当の意味から見ると、

受け手(p1)としての人物は私、与え手(p3)は先生である。したがって、

81に用いられた人称を置き変えるべきである。私という人称代名詞は目的語と

なっているというわけである。

82には、文法的に間違っているということでもないと思われるが、意味的に

変わってしまう。これは、人称の位置つけのせいである。本当の意味から見ると、

与え手(p3)としての人物は真由美さんである。恩恵の受け手(p1)として

の私である。逆に、85に伝えようとする意味から検討すると、与え手(p3)

としての恵子さんが受け手(p3)としての町先生のためにある恩恵をお与えに

なる。86の文章は正しくても人称の位置が間違っている。期待する意味を検討

すると私という第一人称は受け手としてではないが与え手としてである。父(第

三人称)は受け手としてである。87に伝える本当の意味は、与え手(p1)と

しての私、受け手(p3)としての社長である。

また、88、89のような誤りにあたって、人称の位置つけということが見ら

Page 87: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

87

れる。ここは、与え手(p3)としての健一さんがよしさん(p3)に何らかを

表するという意味を期待する。88、89のような表現は反対になる意味を示し

てしまうからである。90には、受け手(p3)としてのたけさん、与え手(p

3)としての田中さんであるという意味を期待する。91に伝えようとする意味

について、話し手と共に受け手は私という第一人称である。与え手は社長という

第三人称である。再び、92、93の本当の意味に応じて、夫は受け手(p3)

として、妻は与え手(p3)としてである。94には、受け手(p3)としての

人称は佐藤さんが与え手(p3)としての木村さんに動作をされるということで

ある。95には与え手(p3)としてのお兄さんが受け手(p3)としての山田

さんに動作をされるということですが、反対になる意味を期待する。

96、97は、(それぞれの登場している人称は、話し手と聞き手のソトにあ

る人物である)受け手(p3)は店員さん、与え手(p1)は客さんである。そ

れにしても、文に伝えたい意味はそうではないが、「もらう」という動詞につい

たままで、店員さんは目的語となったり、客さんは主語となったりする。98、

99にあるイラストによって、太朗さんは与え手(p3)として、たけさんは受

け手(p3)としてである。100には、のり子ちゃんは受け手(p3)として、

おじいさんは与え手としてであるが、反対になる意味を、イラストに最適である。

101に用いられた「くれる」という授受動詞に対しては、意味を理解しにくく

なって誤っているが、動詞を問わず、ちゃんと第三人称の田中さんの場合は主語

となる与え手に置き換える。かえって、第一人称の私の場合を目的語となる受け

手に置き換える。102、103に伝えようとする意味は、受け手としての私(p

1)が与え手としての太朗さん(p3)から動作を表される。それのためには、

誤解しなくなるように、その表現に登場しているそれぞれの人称の位置は置き換

えなければならないと思われる。

Page 88: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

88

人称の位置つけの誤用は、文法的に正しいからといって、理解できても誤解を

招くことができる。それは意味的に誤っている。意味的誤用について言えば、人

称の位置つけの誤りは、(受け手、与え手の第三人称の場合)「もらう」「いただ

く」または「あげる」「さしあげる」という授受動詞を現れたからである。また、

人称の位置つけの文法的誤用について言えば、(受け手の第一または第二人称の

場合)「あげる」「さしあげる」または「くれる」「くださる」という授受動詞を

現れたからである。人称の位置つけの誤りにあたって、次のように(表の中)誤

用程度を取り上げる。

表11:

人称の位置の誤用の程度

カテゴリー 文法的 意味的 合計

程度

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII III

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII IIII IIII

IIII IIII

83

4.2.3 場面によらない文脈の誤用の場合

このセクションでは、文法的ではないが、場面によらない文脈という誤りを取

り上げる。こういう誤用性を避けるには、よい言語運用(コミュニケーション・

パフォーマンス)を左右すると思われる。このような誤りを明らかにする理由と

しては、どのような場合に、誰が誰に何らかを表するということを分析してみよ

うと思われる。それによって、学習者が犯した場合によらない文脈誤用について、

次の通りに挙げられる。

誤用例文:

108.あなた*(客さん)におつりをあげましたか。

Page 89: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

89

109.私*はあなた(店員さん)からもらいましたよ。

110.私はあなた*(先輩)にこの本をあげます。

111.先生は私*に本をくれました。

112.近所さんはもうこのラメンをくれました。

113.隆さん*は教授に本を貸してもらいました。

114.私は町先生*に手伝ってあげました。

115.恵子さんは町先生*に食べ物を買ってあげます。

116.私は(私の)父*にシャツを買ってさしあげます。

117.私は(私の)お父さん*に塗ってさしあげます。

118.私は(私の)おじいさん*に新聞を読んでさしあげます。

119.私は社長*にプレゼントをあげます。⦆絵。

120.社長は私*にくるまをくれます。⦆絵。

121.店員さんは客さん*に物のサンプルをあげます。⦆絵。

122.岡田さんは社長*にレポートをコピーしてあげます。⦆絵。

123.山田さん*が先生に部屋を探してもらう。⦆絵。

124.学生たち*は町先生に日本語を教えてもらいます。⦆絵。

インストルメントにある2a,2b第一面の108、109に登場している人

物から見ると、店員さんは与え手として、客さんは受け手としての人称である。

場面によって、与え手と受け手の間に距離があって、話し手に関係なくて謙譲語

を使う必要である。3a第一面の110には、受け手は与え手の上にある者であ

ることから、「さしあげる」という授受動詞を用いると考えられている。111

に登場している人称について、与え手は受け手の上にある人物であることを示す。

受け手(話し手として)は、聞き手(相手)に対して授受を表す表現においての

謙譲語を用いるべきである。

Page 90: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

90

日本語の中では、謙譲語は聞き手またはそれ以外にある人物に対して話し手を

低めるのに使う。112に示される人称について、与え手は受け手としての話し

手と聞き手の以外にある人物である。受け手としての聞き手と話し手は、間接的

に与え手に対して、自分自身を低めようとする。112には、話題の与え手は受

け手としての話し手と聞き手のソトにある人称である。話し手が話題に登場する

人物には謙遜語を使わない。113に伝えようとする意味から見ると、恩恵の受

け手は与え手の上司である人物である。文に登場している人称は、話し手と聞き

手の以外にある人物であっても、話題に謙譲語を使うのに軽んじるわけではない。

114は、与え手が恩恵の受け手より位地が高い。話し手と共に恩恵を現す人物

は話題に謙譲語を使う必要である。

ある文の場合による文脈は、誰が誰に何らかを表するばかりでなく、どのよう

な場合が、聞き手としての誰に話すかということが大事である。115のように、

与え手も受け手も話し手と聞き手のソトにある人物であるが、与え手が受け手、

聞き手、話し手よりも位地が高いから、謙譲語を使わないわけにはいかない。9

b会話の場合の116、117、118に示される人称について、話し手と共に

受け手としての私が受け手(目上)としての(自分自身の家族)お父さんのため

に恩恵を表する。しかし、家族のことを相手に話す時には、敬語を用いるのが必

要でない。自分のグループまたは相手に相手の家族のことを話す時には、尊敬語

を使わねばできない。

既に、ある授受表現において誰が誰に何らかを表するばかりでなく、どのよう

な場合には、聞き手としての誰に話すかということが大事だと述べたようになる。

それは、間接的にも指摘するべきである。インストルメントに第二面1番の11

9のように、与え手としての話し手が受け手(目上)に何らかを現す。第二面4

番の120には、与え手が聞き手としての受け手よりも位地が高い。119、1

Page 91: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

91

20に登場している話し手は聞き手に尊敬語を使用しなければならない。121

については、108、109と同じ場合であるが、登場している人物は話し手と

聞き手のソトにある。それのために、日本語の表現の敏感な人にとって尊敬語を

使うのに避けない。

122に指摘される与え手が受け手の下にある。よいコミュニケーションを築

くために、誰にも、まして上司に対して尊敬語を用いることが必要である。この

場合には、話し手が、主語にあたる人、例えば、聞き手や話題にのぼる人をを高

めるのに努力する。123、124に示される人称について、恩恵の与え手が受

け手よりも位地が高いが、与え手も受け手も話し手と聞き手の以外にある。本文

に対して話し手としては相手に話すときは、尊敬語を使用したほうがよい。

4.2.4 受身形の干渉に伴う誤用の場合

ここでいう誤形成については、受身形への干渉の授受を表わす表現ということ

である。受身形への干渉に伴う誤りの場合は、大部分授受を表す表現において(「~

て」の形)の活用動詞及び授受補助動詞にある。次の通りに見られる。

誤用例文:

125.ラメンをくれられる。

126.私たち*は近所にラメンをくられます。

127.あなた*は真由美さんに焼き飯を作ってくれられました。

128.あなた*は真由美さんから焼き飯を作くられてあげます。

129.あなた*は真由美さんが焼き飯を作られました。

130.あなた*は真由美さんに焼き飯を作ってもられます。

131.あなた*は真由美さんから焼き飯をしられてくれます。

132.私*はもう先生から本を借りられてくださいました。

Page 92: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

92

133.私*も先生に本を貸されてくださいました。

134.町先生*は恵子さんに食べ物を買われてあげます。

135.町先生*は恵子さんに買われていただきます。

125、126、127、128には、誤用形成で授受動詞にある。これは授

受動詞を受身形に活用してしまう。かえって、131、132、133、134、

135に登場している誤用形成については、授受動詞の使い方にあるでなく、恩

恵の授受を表すのに用いる授受動詞についた「~て形」動詞にある。「~て形」

動詞を受身形に活用してしまうからである。129には、文法的に正しい。それ

にしても、恩恵を現すためには「~てもらう」文を使う必要がある。間接受動文

「~てもらう」文は恩恵に関して相補的である。

誤用形成でみたように、授受表す表現は間接受動文に干渉を持っている。その

上、「(恩恵の授受)の~て形」動詞は受身形に活用することはできない。つまり、

授受動詞の中で、受動文の性質をあわせ持つからである。しかし、通常の受身形

の意味と違う。正しい表現は次のようである。

136.近所が(私たちに)ラメンをくださった。(125)

137.(私たちは)近所にラメンをいただいた。(126)

138.(あなたは)真由美さんに焼き飯を作ってもらう。(127~131)

139.(私は)先生から本を貸していただいた。(132,133)

140.町先生は恵子さんに食べ物を買ってもらった。(134,135)

Page 93: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

93

第5章

5.1 結論

ここでは、日本語の授受表現に用いられる動詞、人称代名詞、場面による文脈の考

察の結果について述べる。

このセクションでは、二つのことを述べる。それは、誤用形成のカテゴリーによっ

て見つけた誤用例文を確認する。もう一つは、授受表現の学習において学習者の理解、

意識、意見を挙げる。

5.1.1 研究結果

第4章であげられた誤用例文の数々は次の四つに分類することができる。動詞

の誤用(カテゴリーI)、人称の誤用(カテゴリーII)、場面によらない文脈の

誤用(カテゴリーIII)、受身の干渉に伴う誤用(カテゴリーIV)である。

また、学習者が犯した授受の表現の誤用形成は上のカテゴリーばかりでなく、

助 詞の使い方の誤用形成にもあるが、本研究では扱わない。一般的に、学習者

が犯した誤用形成の状況は、次のような表である。

Page 94: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

94

表12:

授受表現誤用形成状況

K

S

やる・あげ

る・さしあ

げる

もら

う・いた

だく

くれる・

くださる

人称 場合による

文脈

受身の干

その

1 II - III I IIII III - IIII

2 I - I I IIII II I

3 IIII - II - IIII III - -

4 IIII - - III IIII IIII - -

5 IIII - - - IIII IIII I - I

6 IIII - III - IIII IIII I - -

7 II - IIII III IIII I - IIII

I

8 - - I IIII I II - IIII

III

9 IIII - - - IIII I - -

10 IIII - I - IIII III - -

11 II - II - IIII IIII - -

12 I - III II III - I

13 I - II IIII IIII IIII - II

14 II - I I IIII III -

15 IIII I - I IIII

IIII

II - I

16 IIII - I IIII

IIII

III

III I I

17 IIII - I IIII IIII - -

18 IIII - - I IIII - I

19 IIII I I IIII I - - IIII

20 IIII - I IIII

III

- I IIII

III

21 III - I - IIII IIII - -

22 III - III III IIII - -

23 I - I - IIII IIII - IIII

24 IIII I II II II - IIII

IIII

II

25 I - IIII III - IIII III II -

26 II - I I IIII II -

27 II - I I III II IIII

28 II - I I IIII II -

29 III - II I IIII I II I

30 IIII I IIII I IIII II - -

31 IIII - I II I - IIII

IIII

I

32 IIII - II I III - IIII

IIII

I

33 III - - - II - I

34 I - IIII I III II - I

35 II - II - IIII II I

J 106 3 65 83 172 19 -

S=サンプル、 K=カテゴリー、 J=合計

Page 95: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

95

本研究に見つけた結果代表として、以下のように誤用のカテゴリーを分けて挙

げられる。

5.1.1.1 カテゴリー I

動詞の誤用の場合

誤用例:

1.ジョンさんはあなた*に本をあげましたね。

上の文の誤りは、動詞の使い方にある。意味的に、ジョンさんということ

は 話し手と聞き手のソトにいる人の(p3)与え手としては、相手または聞

き手・受け手(p2)に何かを与える。ですから、「あげる」は(p1・p2)

に対して物を表するのに使わない。

2.私はあなたにくださる。

この文の誤りは、動詞の使い方にある。これは「くださる」は使えないが

「さしあげる」を使わなければならない。与え手としての私が受け手として

のあなたになにかを与えるからである。

3. この人形は、先生があげました。

授受動詞の使い方をめぐって、この文に対しては不明である。しかし、

主題になる人称は(p1・p2)の受け手としてならば、「あげる」は使えな

いが「くださる」を用いる。または「いただく」が使えて「が」を「に」に

変えるわけである。

4. 真由美さんは私たち*に焼き飯を作ってやります。

誤用は授受補助動詞の使い方にある。そういうわけで、文に伝える意味か

ら考えると、ソトにある人物としての与え手(p3)がウチにある人物とし

ての受け手・話し手の場合(p1)のために、動作を表する。上記の文に対

Page 96: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

96

して、「あげる」または「やる」というような授受捕助動詞が使えない。「く

れる」または「くださる」というような授受補助動詞を使えば正しい。

5.1.1.2 カテゴリー II

人称の誤用の場合

誤用例:

1.私*はジョンさんに本をくれました。

この文は人称の位置つけの誤用である。人称の位置に間違っているから、

理解できなくて誤解を招くことができてしまう。

2.町先生*は恵子さんに食べ物を買ってあげます。

文章で伝えようとする意味から検討すると、受け手(p3)としての恵子

さんが与え手(p3)としての町先生のためにある恩恵をお与えになる。

3.私は父*にシャツを買ってもらいます。

この文章は正しくても人称の位置が間違っている。期待する意味を検討す

ると私という第一人称は受け手としてではないが与え手としてである。「父」

(第三人称)は受け手としてである。

5.1.1.3 カテゴリー III

場面によらないる文脈の誤り

誤用例:

1.私はあなた*(先輩)にこの本をあげます。

目上に対しては謙譲語を使うとよい。これは、主語となるものを低めるた

めである。主語は、話し手自身であったり、話し手側の人であったりする。

以上の文に対して、受け手は与え手の上にある人であるから、「さしあげる」

Page 97: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

97

を用いると考える必要がある。

2.隆さん*は教授に本を貸してもらいました。

文が伝えようとする意味から検討すると、恩恵の与え手は受け手の上司の

人物である。文に登場している人称は、話し手も聞き手もソトにある人物で

あって、話題に謙譲語を避けるべきではない。

3.私は(私の)おじいさん*に新聞を読んでさしあげます。

ここで、登場している人称について、話し手と共に与え手としての私が、

受け手(目上)としての(自分自身の家族)おじいさんのためにする動作を

表するから、家族のことを相手に話す時には、敬語を用いるのが必要でない。

しかし、相手に相手の家族のことを話す時には、尊敬語を使わければならな

い。

5.1.1.4 カテゴリー IV

受身の干渉に伴う誤用

誤用例:

1.私も先生に本を貸されてくださいました。

この誤用は、授受動詞の使い方ではなく、(「~て形」貸す)動詞の受身形

を用いたことである。

2.あなたは真由美さんに焼き飯を作ってもらわれます。

誤用は授受動詞にある。これは授受動詞を受身形に活用してしまう。

3.あなたは真由美さんに焼き飯を作られました。

この文には、文法的に正しくない。おそらく迷惑というような気持ちを持

っている。そのために、恩恵を現すためには「~てもらう」文を使う必要が

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ある。間接受動文「~てもらう」文は恩恵に関して相補的である。

これまでのところで、授受を表す表現に発生するような誤用関連項目図に

ついて、次のように見られる。

図8:

授受の表現で生じやすい誤用の構図

(て)くれる

(て)くださる

主語・主題 与え手 = (p1/p2/p3)

目的語 受け手 = (p3)

敬語

主語 受け手 = (p1/p2/p3)

主 主題 受け手 = (p2/p3)

目的語 与え手 = (p3)

敬語

受身

(て)あげる

(て)さしあげる

主語 与え手 = (p2/p3)

主題 受け手 = (p1/p2)

目的語 受け手 = (p1/p2)

敬語

受身

5.1.2 授受を表す表現の誤用の発生原因

この頃では誤用発生の原因を取り上げる。授受を表す表現において学習者の理

解、意識、意見に関することを次の表の中に表した。

Page 99: Analisis Kesalahan Bahasa Jepang 授受表現の誤用分析(Harly Tangkilisan)

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表13:

学習者の理解(a)、意識(b)、意見(c)に関するデータ

A

B C

No. 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 6

1 a a a a b b a a a a a a b c b a

2 a a a a c a a a c a b b c c b a

3 a a a c b a b b a a c b b c a a

4 a a a b c a a a a a a a a b b a

5 a a a a a a a a a a a a a a a a

6 a a a a b a a c a a b a a b b a

7 a a a b b a a b a a b c c b c a

8 a a b a b b a a a b b b b b a a

9 a a b a b c a a a a a a a b c a

10 a a a b b a b a a a b b b c b a

11 a a a b b a a a a a c b b a b a

12 a a a a b b a a a a c b b c b a

13 a a a b b b a b b b a a a b b a

14 a a a b c b a b b a b b b b b a

15 a a a b c b a a a a a a a b c b

16 a a a b c a b a a b a a a b a a

17 a b a b a a a b a a a a a a b a

18 a a a b c b a a a a b a a a b a

19 a b a c c b a a a a b a a c a a

20 a b a c b a a b a a b a b b c b

21 a c a b b a a a a a a a a c c a

22 a a a b b a a b a a b b a a b a

23 a c a b b a a a a a a a a c c a

24 a b a a b b a a a a b a b b a a

25 a a a b b b a a a a b b a c b a

26 a b a a a c a b a b a a a b b a

27 a a a b b a a a a a b a a c b a

28 a a a a a a a b a b a a a a a a

29 a a a a a a a a a a a a a a a a

30 a b a c c a b b c a b a b b c a

31 a b a a a a b a a a a a b b a a

32 a a b b b b a a b a b b b a a a

33 a a a b a b a a b a a a a b a a

34 a a a b b b c c c b b a a b c a

35 a a a a a a a a a a a a a a a a

a : 賛成

b : わからない

c : 反対

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表14:

学習者の理解(a)、意識(b)、意見(c)の程度

A

賛成 (a) わからない(b) 反対(c)

1 35 - -

2 26 7 2

3 32 3 -

4 15 17 3

5 8 19 8

B 賛成 (a) わからない(b) 反対(c)

1 21 13 10

2 29 5 1

3 23 10 2

4 28 4 3

5 29 6 -

C 賛成 (a) わからない(b) 反対(c)

1 16 16 3

2 24 10 1

3 21 12 2

4 9 16 10

5 12 15 8

6 34 1 -

なお、この場合にも、授受を表す表現に関して指導のポイントになるようである。

ア) 日本語では、誰か他の人が自分に物をくれたり、何かしてくれるとき

「(私に)~てくれる」を用い、「(私に)~てあげる」は使わない。学

習者は「(私に)~てあげる」と言ってしまうので注意を要する。

イ) 「買ってあげる」は「買って」それを「あげる」という意味ばかりでは

なく、買うという行為をある人のためにしてあげるという意味でも使わ

れる。

ウ) 「~てやる・~てあげる・~てさしあげる」は、しばしば恩着せがまし

く聞こえるので、注意して使うように指導すること。特に、上の人に対

しては、謙譲表現を使う。

エ) 「(私は)~てもらう」と「(私に)~てくれる」は物・恩恵の移動が同じ

である「受け手は(私)である」ために、非常に混乱しやすい。じっく

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り繰り返し説明し、練習させる必要がある。

オ) 「~てもらう・~ていただく」は下・同・上の人に対して使う。

カ) 学習者は(「他者が私に何かをしてもらった」)という言い方をしがちで

あるが日本語では「(私が他者にしてあげた」)という言い方をすること

をわからせること。

キ) 「(私に)~てくれる」と「(私は)~てもらう」は物及び動作・恩恵の

移動が同じである(受け手は私である)ために、非常に混乱しやすい。

繰り返し説明し、学習者に練習させる必要がある。

ク) 「~てくれる・~てくださる」は下・同・上の人に対して使う。家族の

する行為に対しては「くださる」は使えない。

ケ) 「くれる・くださる」文ではもの・動作(恩恵を受け取るのは私・私の

ウチの関係にある者)になるので、その部分が省略されることが多い。

コ) 学習者が「貸す貸される」「作る作られる」のような恩恵的な意味

を表す動詞を使っても迷惑な気持ち(ありがた迷惑)を表すことになる

傾向がある。そのためには「~てやる・~てあげる・~てさしあげる」

は能動文に相当、「~てもらう・~ていただく」は受動文に相当、「~て

くれる・~てくださる」は能動文の性質と受動文の性質をあわせ持つの

をわからせる必要である。

サ) (主語が目的語に~を「~て」授受動詞)文型の場合には、非常に置き

換えやすい。学習者に例を示してわからせること。

つまり、学習者が学んでいる日本語に対して、次のようなことを典型的に犯

してしまう。

ア) ある言語において特定の規定は、その言語自身のほかの部分規定に使う

ということである⦅したがって、学習者が対象言語に変な文型を作成し

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てしまう。

イ) 言語用法のコンセプトを理解するのに間違っている。ですから、解釈す

るために誤用を招く。

ウ) 言語側面などのポイントを考慮することには気がない。でたらめに文を

作成してばかりいる。

エ) 習得している言語用法原則を理解しないことから、干渉してしまう。

オ) 場合による文脈に応じて、尊敬語、謙譲語のような形を理解することが

不十分である。

このことから学習者が誤用を犯す可能性が多くて誤解を招くことができないわけ

ない。

5.2 提案

授受表現の誤用例文分析について考えたことから、誤用を直すためには効果的な文

法の学習をしなければできない。したがって、誤用を解決するのは、学習者の誤用を

訂正する必要である。

ここでは教師または学習者に対して、いくつかの提案を次のようにまとめる。

ア) 学習者が習得する困難な言語用法を確認する。

イ) 簡単に説明して、言語用法の対立に対して次々に簡単な文を作成させる。

ウ) 言語使用に推測するということが避けられる。

エ) 学習者に教える言語用法の差を理解させる。

オ) 具体的に、文法の授業を効果的に高める必要がある。

以上のことで、教室での学習の手本を示すことことができるようになると期待する。

それのために、教師が学習者自身に対して見つけた誤用に基づいて、一番重要な項目

を決めるべきである。ある言語を学ぶ時には、持続性じぞくせい

を持つようになると思われる。