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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1 *大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻 (現:大阪ガス()) E-mail : [email protected] **国立研究開発法人建築研究所環境研究グループ 主任研究員 ***大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻教授 世帯の需要特性を考慮した住宅用コジェネレーション システムの導入効果分析 Analysis of the Effect of Introducing Residential Cogeneration Systems Based on the Demand Characteristics of Households 青木拓也 * ・羽原宏美 ** ・下田吉之 *** Takuya Aoki Hiromi Habara Yoshiyuki Shimoda (原稿受付日 2015 6 9 日,受理日 2015 12 11 ) 1.研究背景・目的 近年,マイクロガスエンジン,燃料電池などの住宅用コ ジェネレーションシステムが台頭し始めた.これらの設備 は発電時に発生する排熱を給湯に利用することで,エネル ギーを効率的に使用することが出来る.また近年機器価格 が低下してきたこともあり,コジェネレーションシステム の普及による省エネルギーの推進が期待されている.政府 の方針としても住宅用コジェネレーションシステムはエネ ルギー供給システムの中心に位置づけられる可能性が高く, エネルギー基本計画 1) においては 2010 年現在 1 万台の普及 に対して, 2030 年には 530 万台の普及という高い目標が提 案されている.しかしコジェネレーションシステムの実質 的な排熱利用率や発電効率は世帯の熱電需要特性に依存す るため,導入世帯の需要特性によってはエネルギー利用効 率が低下する場合がある.この点に関しては,これまでに 実測やシミュレーションによって検証が行われており,世 帯の需要特性と省エネルギー効果の関係性について分析さ れている. 新エネルギー財団 2) や濱田ら 3) は,PEFC(固体高分子形 燃料電池)が設置された実住宅を対象に実測調査を行って いる.調査結果より,機器導入による省エネルギー効果と 世帯の電力需要・熱需要および機器の負荷率との関係が明 らかにされた.また黒木ら 4) は,シミュレーションによっ て標準住宅における 4 人世帯の需要を 1 分間隔で推計し, 地域別の需要に対するコジェネレーションシステムの機械 的特性を比較している.しかし世帯の需要量や負荷率など の機械的な特性値は,スマートメーターや HEMS がまだ広 く普及していない現在では詳細な計測によって明らかにな るものである.従って,これらの指標は機器導入を検討す る段階においてその是非を判断するために用いることは現 時点では難しい. これに対し,熊埜御堂ら 5) や浅森ら 6) はシミュレーショ ンを用いて世帯構成が異なる世帯の電力需要・熱需要を推 計し,各世帯に対するコジェネレーションシステムの導入 効果を評価することで世帯の特性と導入効果の関係を分析 している.また武田 7) らは,アンケート結果から得られる 世帯構成や風呂回数などの行動特性を用いてエネルギー需 要の回帰式を作成し,その結果を用いてコジェネレーショ ンシステムの導入効果を評価している.これらの研究では 世帯人数や世帯構成といった計測が不要な世帯特性によっ てコジェネレーションシステムの導入効果を評価している が,対象としている世帯が十分に多様であるとは言えず, 世帯特性が機器の導入効果に与える影響を定量的に評価で きていない. そこで本研究では,詳細な計測が不要な世帯特性情報を 用いて多様な世帯に対する各種コジェネレーションシステ ムの導入効果を評価,比較することにより,世帯の特性に 合わせた適切なシステム導入を可能にすることを目的とす る.具体的には,シミュレーションにより 200 世帯分の異 なるエネルギー需要パターンを生成した上で, PEFCSOFC (固体酸化物形燃料電池),MGE(ガスエンジン)を各世 帯に導入した場合の年間一次エネルギー削減効果を推定す る.さらに推定結果を統計的手法により分析することで, 一次エネルギー削減効果を決定する世帯特性を特定する. This paper provided the evaluation on energy saving effectiveness of residential cogeneration systems like micro gas engine and fuel cells based on household energy demand. In addition, indicators to determine the optimum energy saving system were analyzed by our residential energy end-use model. The energy demand and energy saving effect of micro gas engine and fuel cells in 200 households were estimated. The impact of household profile and demand characteristics on the energy saving was evaluated using the multiple regression analysis. The energy saving effect was characterized by the existence of household member in the house during the daytime of weekday. Energy saving effect was most influenced by the frequency of bathing in households. These household characteristics would be effective to determine the best system in households. 30 回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンスの 内容をもとに作成されたもの 9

Analysis of the Effect of Introducing Residential … of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1 た.世帯員の内訳としては学生が約 15 / /] 2?%? -

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1

*大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻

(現:大阪ガス(株))

E-mail : [email protected]

**国立研究開発法人建築研究所環境研究グループ 主任研究員

***大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻教授

世帯の需要特性を考慮した住宅用コジェネレーション

システムの導入効果分析 Analysis of the Effect of Introducing Residential Cogeneration Systems Based on the

Demand Characteristics of Households

青 木 拓 也 *・ 羽 原 宏 美 **・ 下 田 吉 之 ***

Takuya Aoki Hiromi Habara Yoshiyuki Shimoda

(原稿受付日 2015年 6月 9日,受理日 2015年 12月 11日)

1.研究背景・目的

近年,マイクロガスエンジン,燃料電池などの住宅用コ

ジェネレーションシステムが台頭し始めた.これらの設備

は発電時に発生する排熱を給湯に利用することで,エネル

ギーを効率的に使用することが出来る.また近年機器価格

が低下してきたこともあり,コジェネレーションシステム

の普及による省エネルギーの推進が期待されている.政府

の方針としても住宅用コジェネレーションシステムはエネ

ルギー供給システムの中心に位置づけられる可能性が高く,

エネルギー基本計画 1)においては 2010年現在 1万台の普及

に対して,2030年には 530万台の普及という高い目標が提

案されている.しかしコジェネレーションシステムの実質

的な排熱利用率や発電効率は世帯の熱電需要特性に依存す

るため,導入世帯の需要特性によってはエネルギー利用効

率が低下する場合がある.この点に関しては,これまでに

実測やシミュレーションによって検証が行われており,世

帯の需要特性と省エネルギー効果の関係性について分析さ

れている.

新エネルギー財団 2)や濱田ら 3)は,PEFC(固体高分子形

燃料電池)が設置された実住宅を対象に実測調査を行って

いる.調査結果より,機器導入による省エネルギー効果と

世帯の電力需要・熱需要および機器の負荷率との関係が明

らかにされた.また黒木ら 4)は,シミュレーションによっ

て標準住宅における 4 人世帯の需要を 1 分間隔で推計し,

地域別の需要に対するコジェネレーションシステムの機械

的特性を比較している.しかし世帯の需要量や負荷率など

の機械的な特性値は,スマートメーターや HEMSがまだ広

く普及していない現在では詳細な計測によって明らかにな

るものである.従って,これらの指標は機器導入を検討す

る段階においてその是非を判断するために用いることは現

時点では難しい.

これに対し,熊埜御堂ら 5)や浅森ら 6)はシミュレーショ

ンを用いて世帯構成が異なる世帯の電力需要・熱需要を推

計し,各世帯に対するコジェネレーションシステムの導入

効果を評価することで世帯の特性と導入効果の関係を分析

している.また武田 7)らは,アンケート結果から得られる

世帯構成や風呂回数などの行動特性を用いてエネルギー需

要の回帰式を作成し,その結果を用いてコジェネレーショ

ンシステムの導入効果を評価している.これらの研究では

世帯人数や世帯構成といった計測が不要な世帯特性によっ

てコジェネレーションシステムの導入効果を評価している

が,対象としている世帯が十分に多様であるとは言えず,

世帯特性が機器の導入効果に与える影響を定量的に評価で

きていない.

そこで本研究では,詳細な計測が不要な世帯特性情報を

用いて多様な世帯に対する各種コジェネレーションシステ

ムの導入効果を評価,比較することにより,世帯の特性に

合わせた適切なシステム導入を可能にすることを目的とす

る.具体的には,シミュレーションにより 200 世帯分の異

なるエネルギー需要パターンを生成した上で,PEFC,SOFC

(固体酸化物形燃料電池),MGE(ガスエンジン)を各世

帯に導入した場合の年間一次エネルギー削減効果を推定す

る.さらに推定結果を統計的手法により分析することで,

一次エネルギー削減効果を決定する世帯特性を特定する.

This paper provided the evaluation on energy saving effectiveness of residential cogeneration systems like micro gas engine

and fuel cells based on household energy demand. In addition, indicators to determine the optimum energy saving system

were analyzed by our residential energy end-use model. The energy demand and energy saving effect of micro gas engine and

fuel cells in 200 households were estimated. The impact of household profile and demand characteristics on the energy

saving was evaluated using the multiple regression analysis. The energy saving effect was characterized by the existence of

household member in the house during the daytime of weekday. Energy saving effect was most influenced by the frequency

of bathing in households. These household characteristics would be effective to determine the best system in households.

第 30回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンスの

内容をもとに作成されたもの

9

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1

ここで世帯特性とは,世帯構成,風呂習慣,在室状況等で

あり,これらの要素は導入の検討段階において既知の情報

である.従って,世帯特性と一次エネルギー削減効果を関

係付けることができればシステム導入の適正化に役立つと

考える.

2.シミュレーションの概要

2.1 エネルギー需要推計モデル

世帯のエネルギー需要の推計は,著者らで開発した家庭

用エネルギー最終需要モデル 8)により行った.本モデルは

世帯の家族構成,保有機器,床面積,断熱性能,立地場所

などの差異を考慮して各種住宅に対応するエネルギー消費

量を 5 分タイムステップで推計することが可能であり,多

様な世帯に対するコジェネレーションシステム導入効果を

分析することが可能である.本モデルではまず,想定した

居住者ごとの 365 日分の行動を乱数によって確率的に決定

する.居住者の属性としては勤め人男,勤め人女,家庭婦

人,小学生,中学生,高校生,70歳以上男,70歳以上女の

8属性を考慮している.行動としては表 1に示す 27種を想

定している.行動は NHK国民生活時間調査 9)に基づいた居

住者の属性別,平日・休日別の行動確率分布をもとに決定

する.毎日必ず実施する行動(仕事・学業,通勤・通学,

睡眠,風呂,食事)の行動継続時間と行動時間帯を確率的

に決定した後,上記の行動以外の行動についても同様に確

率の高い行動から順に行動の実施時間を決定する.次に決

定された行動に基づいて家庭内のエネルギー消費機器や暖

冷房,湯の使用を決定し,機器の仕様に応じてエネルギー

消費を算出する.想定するエネルギー消費機器は表 2に示

す 26機器である.エアコンについては住宅の熱負荷計算の

結果に基づいて消費電力を決定する.熱負荷計算は,住宅

の仕様や居住者の行動を考慮して 1世帯ごとに実施する.

以上の方法により,本モデルでは多様な世帯の 1年間 365

日毎の異なる時刻別需要を再現することが可能である.

表 1 モデルで考慮する行動一覧

外出 洗濯睡眠 アイロンがけ食事 家庭雑事洗顔 会話・交際入浴 趣味・娯楽・教養

シャワー 無行動(個室)着替え テレビ(居間)

無行動(居間) テレビ(個室)仕事(家庭内) ラジオ・音楽(居間)

学業 ラジオ・音楽(個室)炊事・調理 新聞・雑誌・漫画・本(居間)炊事・片付け 新聞・雑誌・漫画・本(個室)掃除(居間) ビデオ掃除(個室)

行動一覧

表 2 モデルで考慮するエネルギー消費機器

換気扇 衛星放送チューナーテレビ FAX洗濯機 電話

衣類乾燥機 温水洗浄便座ドライヤー 電気こたつスタンド 電気カーペット掃除機 冷蔵庫

アイロン 電気炊飯器VTR 電気食器洗い乾燥機ラジオ 電気ジャーポット

オーディオ機器 電子レンジパソコン 電気トースター

パソコン周辺機器 冷暖房機器 エアコン

家電機器

家電機器

厨房機器

2.2 対象世帯の設定

シミュレーションの対象世帯は,1人世帯から 6人世帯

までの 20種類の世帯類型を想定した.想定した世帯類型を

表 3 に示す.住宅は図 1 のような約 90m2(3LDK)の戸建住

宅とした.気象条件は 2010年大阪市 10)のものを用いた.

表 3 想定した世帯の家族構成

人数 構成 人数 構成

単独男 夫婦と子(中学生・小学生)※

単独女 女親と子(中学生・小学生)※

単独高齢男 4人 夫婦と子(中学生・小学生)※

単独高齢女 夫婦と子(高校生・中学生・小学生)※

夫婦※ 夫婦子1人(中学生)と両親

高齢夫婦 6人 夫婦と子2人(中学生・小学生)と両親※

女親と子(小学生)※

1人

2人

3人

※女性の就業の有無を考慮

5人

図 1 想定した世帯の住宅間取り

給湯需要は湯はり,入浴(湯はりを伴う風呂行為),朝シ

ャワー,昼夜シャワー(湯はりを伴わない風呂行為),炊事,

洗顔の行為が行われる際に発生するものとし,表 4に示す

ように行為ごとの湯の使用量を設定した.使用湯量は中原

ら 11)の算出結果,給湯温度は SCHEDULE12)の設定値に基づ

き設定した.風呂行為(入浴もしくはシャワー)頻度は NHK

国民生活時間調査 9)および著者らが行ったアンケート調査

に基づいて決定した.アンケート調査は 2011年に大阪府茨

木市,豊中市の計 13の町丁目に立地する全世帯,約 6千世

帯を対象に実施した.調査は選択式とし,設問用紙をポス

ティング配布した.有効回答数は 816件,1839人であった.

世帯人数の内訳としては 2 人世帯が約 35%,1,3,4 人世

帯がそれぞれ約 20%を占め,残りが 5人以上の世帯であっ

10

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1

た.世帯員の内訳としては学生が約 15%,70歳以上の男女

が約 20%を占め,その他が成人男女であった.給湯行為の

スケジュールの決定方法として,具体的にはまず NHK 調

査をもとに毎日の世帯員別の風呂行為の有無,継続時間を

確率的に決定した.次に世帯人員別の入浴頻度,シャワー

頻度に関するアンケート結果から各世帯の該当日の風呂行

為が入浴であるかシャワーであるかを確率的に決定した.

この時風呂行為の決定は世帯単位で行い,対象世帯の世帯

員全員に適用されるものとした.最後に,決定された各世

帯員の風呂行為頻度がアンケート調査より得られた風呂行

為頻度を下回る場合はその差分を朝シャワーとして扱った.

アンケート調査より得られた風呂頻度を上回る場合は決定

された風呂行為頻度をそのまま使用した.ここで,入浴・

シャワー頻度は世帯の多様性を考慮するため,アンケート

調査に基づいて 10水準の入浴頻度・シャワー頻度を季節別

に設定した.各水準の設定値は,アンケート結果における

季節別・世帯人員別・世帯員別に世帯ごとの入浴頻度およ

びシャワー頻度をそれぞれ昇順に整理し,その 10分位値と

した.一例として,夫婦子二人世帯の夏期(7-9 月)の入

浴・シャワー頻度,および世帯員のうち勤め人男の冬期

(12-2月)に関するアンケート結果を図 2に示す.

表 4 行為別給湯水量・温度

12-2月 6-9月 その他0.93 0.70 0.8638.0 39.0 38.30.97 1.35 1.1639.0 37.7 38.31.55 3.67 2.6139.0 37.7 38.30.97 0.80 0.8539.0 39.7 39.710 10 1044.0 41.5 42.5

上段:使用湯量[L/min] 下段:給湯温度[℃]

湯はり

洗顔

炊事

入浴

シャワー

0

5

10

15

20

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

入浴・シャワー頻度

[回/週

・世帯]

頻度水準

少 ↔ 多

入浴 シャワー

夏期 4人世帯

0

5

10

15

20

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

入浴・シャワー頻度

[回/週

・人]

頻度水準

少 ↔ 多

入浴 シャワー

冬期 勤め人男

図 2 入浴・シャワー頻度の設定方法

(上:夏期の 4人世帯 下:冬期の勤め人男)

以上の 20 種類の世帯類型と 10 水準の風呂習慣を組み合

わせて,200通りの対象世帯を設定した.

2.3 コジェネレーションシステムモデル

対象機器は,マイクロガスエンジン(以下 MGE),固体

高分子形燃料電池(以下 PEFC),固体酸化物形燃料電池(以

下 SOFC)の 3 種類とした.各機器の機器仕様を表 5 に示

す.PEFC と SOFC の発電効率および排熱回収効率は,定

格値に加えて部分負荷効率も設定した.部分負荷効率は,

エネルギー事業者にヒアリングした負荷率と効率のデータ

をもとに効率曲線として設定した.PEFC の発電効率,排

熱効率および SOFCの発電効率は上に凸の効率曲線,SOFC

の排熱効率は下に凸の効率曲線とした.

最適運転制御以外の基本的な運転制御については,コジ

ェネレーションシステムで実際に行われている運転制御を

模擬した.すなわち,MGE は常時定格で運転を行い 1日に

複数回の起動停止を行うものとした.PEFC は最低出力

250W,負荷率 25%刻みのステップ運転とし,起動停止は 1

日 1 回のみとした.SOFC は電力需要に合わせて負荷率を

変化させ,連続運転するとした.また熱需要が貯湯熱量を

上回った場合は補助熱源が稼動して熱需要をまかなうもの

とし,その熱効率は 95%とした.MGE,PEFCにおいて発

電量が電力負荷を上回った場合は発電電力が電力ヒーター

で熱に変換されるものとし,その変換効率は 90%とした.

最適運転制御の条件としては,MGEとPEFCは熱主運転,

SOFC は電主運転とした.また,対象世帯の 1 年分のエネ

ルギー需要を計算したのちに,上記の基本的な運転制御条

件に基づき一次エネルギー消費量が最小になるようなコジ

ェネレーションシステムの運転時間と出力を決定した.

表 5 コジェネレーションシステムの仕様

MGE PEFC SOFC定格発電出力[W] 1000 750 700発電効率(HHV) 23.7% 35.2% 42.0%排熱効率(HHV) 59.3% 50.6% 39.2%タンク容量[L] 90 200 150貯湯温度[℃] 75 60 70

放熱損失[%/day]補助熱源(ガス) 熱効率(HHV)電気ヒーター 熱効率(HHV) -

95%90%

発電ユニット

16貯湯槽

3. エネルギー需要および機器挙動の再現結果

推計した対象世帯の年間需要分布を図 3に示す.既往研

究 2)5)と比較すると,電力需要・熱需要の多い世帯が少な

いものの,概ね類似した需要分布を示した.

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0

10

20

30

0 10 20 30

熱需要[GJ/年]

電力需要[GJ/年]

1人 2人 3人 4人 5人 6人

図 3 対象世帯の年間熱・電力需要分布

再現結果の一例として,夫婦子二人の 4 人世帯について

エネルギー需要の日変化を図 4に示す.同一世帯でも日に

よって異なる電力需要パターンを示しており,居住者の生

活行動や機器使用行動を確率的に与えることによって日々

異なるエネルギー需要を再現できた.また,同日の SOFC

の稼働状況を図 5に示す.SOFCが電力需要に追従し,700W

を最大として出力を変化させながら運転する様子を再現で

きた.この運転状況に加えて部分負荷効率を考慮すること

で,機器の機械特性を考慮したガス消費量を推定できた.

4.導入効果に影響する要素の特定

4.1 分析方法

本研究では各コジェネレーションシステムの導入効果を

決定する要素を世帯特性,需要特性,機器運転特性の 3 つ

に分類して定義した.ここで世帯特性とは,世帯構成や風

呂習慣などである.需要特性とは,世帯の電力需要,熱需

要の期間総量や時刻別需要などである.機器運転特性とは,

実際に機器が稼働した場合の負荷率や実質の稼働効率など,

機器の運転特性である.これらの要素の関連性は図 6のよ

うに整理することができる.すなわち,機器導入による一

次エネルギー削減量を直接的に決定づける要素は機器運転

特性であり,世帯特性は需要特性を介して機器運転特性に

影響するという構造を持つと考えられる.

世帯特性

エネルギー削減量

機器運転特性

需要特性

分析手順より身近な情報で導入効果を評価

コジェネレーションシステム導入効果決定フロー

0

5

10

15

20

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

入浴・シャワー回数

[回/週

]

入浴 シャワー

夏期

0

5

10

15

20

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

入浴 シャワー

冬期

0

20

40

0

2

4

0:00 6:00 12:00 18:00 0:00

熱需要[kW]

電力需要[kW]

電力需要 熱需要

0

20

40

0

1

2

0:00 6:00 12:00 18:00 0:00

補助熱源供給熱量

[kW]、貯湯量[M

J]

発電量、排熱量

SOFCガス消費量[kW]

SOFC発電量 SOFCガス消費量 SOFC排熱量補助熱源供給熱量 貯湯量

世帯構成風呂習慣在宅状況

需要総量時刻別需要負荷頻度

平均負荷率実質発電効率実質排熱効率

瞬間型ガス給湯器を使用する場合に対する一次エネルギー削減量[GJ/年]

図 6 コジェネレーションシステム導入効果決定フロー

0

5

10

15

20

25

30

0

2

4

6

0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00

熱需要[kW]

電力需要[kW]

家電電力 照明電力 厨房電力 暖房電力 熱需要

図 4 代表世帯の代表日のロードカーブ

図 5 代表日の SOFCの稼働状況

0

5

10

15

20

25

30

0

2

4

6

0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00

熱需要、補助熱源

供給熱量[kW]、貯湯熱量[M

J]

電力需要、発電量、排熱量、

SOFCガス消費量[kW]

電力需要 SOFC発電量 SOFCガス消費量 SOFC排熱量熱需要 補助熱源供給熱量 貯湯量

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Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 1

そこで本研究では,以下の 4 つのステップにより各特性

間の関係性を明らかにすることにより,機器導入による年

間一次エネルギー削減量を決定する世帯特性とその根拠と

なる物理的な特性を明らかにする.

ステップ 1)機器運転特性とコジェネレーションシステム

導入効果の関係を分析することで導入効果と

関係の強い機器の物理的特性を明らかにする.

ステップ 2)需要特性が機器運転特性に与える影響を分析

することで,需要特性とコジェネレーションシ

ステム導入効果との関係を物理的に説明する.

ステップ 3)世帯特性が需要特性に与える影響を評価する.

ステップ 4)1)~3)の結果から,コジェネレーションシステ

ム導入効果を決定する世帯特性を特定する.

なお,各機器の導入による一次エネルギー削減量を算出

する際には,従来型の瞬間式ガス給湯器(定格熱効率 78%

(HHV))を使用する場合を基準とした.

上記ステップ 1 から 3 に沿って各特性間の関係を定量的

に評価するため,本研究では 1 世帯ごとの各システム導入

時の年間一次エネルギー削減量,機器運転特性,需要特性

を目的変数とした重回帰分析を用いた.重回帰分析におい

てステップワイズ法(変数増減法)を用いることで影響の

大きい特性要素のみを抽出した.ここでステップワイズ法

とは,重回帰式へ説明変数の投入と除去を繰り返して予測

に適した説明変数を選択する方法である.本研究では,F

値確率が 5%以下であれば投入し,10%以上であれば説明変

数を除去した.

偏回帰係数は,有意確率が 5%以下で有意とした.

また,多数の要素が選択された場合は偏回帰係数の t 値

が大きいものを採用した.t値は目的変数の予測への貢献度

を表し,t値の絶対値が大きいほど貢献度が大きいことを意

味する.ただし多重共線性を排除するため,相関係数が 0.60

以上の要素は一次エネルギー削減量との相関係数が大きい

ものを 1つだけを選択した.

4.2 機器運転特性がコジェネレーションシステム

導入効果に及ぼす影響

コジェネレーションシステムの機器運転特性を説明変数

に,1 世帯ごとの各システム導入時の年間一次エネルギー

削減量を目的変数として重回帰分析を行った.機器運転特

性(説明変数)としては表 6に示す要素を設定した.

重回帰分析の結果を表 7に示す.いずれの機器において

も回帰式の決定係数が大きいことから,機器運転特性とし

て設定した要素により導入効果をよく説明できているとい

える.設定した要素のうち平均負荷率は全ての機器で説明

変数として選択されており,t値が最も大きかった.従って,

導入効果に最も大きな影響を与える要素は平均負荷率であ

ると言える.また,係数の符号正(+)であることから平

均負荷率が高いほど一次エネルギー削減量が大きくなるこ

とが示された.これは各機器とも負荷率が高い場合に部分

負荷効率が高くなるため,また MGE と PEFC では運転時

間が長くなるためであると考えられる.また平均負荷率以

外では,熱主運転を行う MGE と PEFC では実質発電効率

が,電主運転を行う SOFC では実質排熱利用効率が説明変

数として選択された.実質発電効率は部分負荷効率に加え

てヒーターで電熱変換をされた量によって決定される指標

であるため,需要を上回って電熱変換されてしまう余剰電

力の発生量が MGE と PEFC のエネルギー削減量に大きく

影響すると考えられる.また貯湯槽満蓄時に機器が運転し

て排熱が捨てられると,燃料電池が住宅に供給する熱量(給

湯熱需要-補助給湯器供給熱量)は増えないにもかかわら

ず給湯機で消費されるガス量が多くなるため実質排熱利用

効率が低くなる注ⅰ) .したがって電主運転の SOFC では排

熱を有効に貯められるかがエネルギー削減量に影響すると

いえる.

表 6 コジェネレーションシステム運転特性指標と定義

指標 計算式・定義発電量電力需要

給湯熱需要-補助給湯器供給熱量給湯熱需要

電力需要-電熱変換量給湯機ガス消費量

給湯熱需要-補助給湯器供給熱量給湯機ガス消費量

定格発電出力に対する出力割合の平均値(※停止時は負荷率0)

発電寄与率

給湯寄与率

実質発電効率

実質排熱利用効率

平均負荷率

表 7 物理的特性による重回帰分析結果

(目的変数:一次エネルギー削減量[GJ/年])

偏回帰 偏回帰 偏回帰

係数 係数 係数

定数 -4.5 -20 定数 -13.4 -24 定数 -22.4 -83

平均負荷率 35.6 51 平均負荷率 31.7 70 平均負荷率 39 75

決定係数 決定係数 決定係数

39.5 19 47.5 71

0.96 0.97 0.99

実質発電効率

実質排熱利用効率

MGE PEFC SOFC

t値 t値 t値

32.9 20実質発電効率

(負荷率,効率の単位はすべて%)

4.3 需要特性が機器運転特性に及ぼす影響

世帯の需要特性を説明変数に,4.2 節で選択されたコジェ

ネレーションシステムの機器運転特性を目的変数として重

回帰分析を行った.需要特性(説明変数)としては熱需要

と電力負荷発生頻度を用いた.ここで電力負荷発生頻度と

は,負荷(消費電力)を 100W 単位で区分して 1 年の間に

該当の負荷が発生している時間割合がどれだけあるかを求

めた累積頻度であり,負荷が 100W以下の頻度から 1000W

以下の頻度まで 100W刻みの 10通りを説明変数として投入

した.

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重回帰分析の結果を表 8に示す.機器運転特性のうち平

均負荷率を目的変数とした分析では,いずれの機器におい

ても回帰式の決定係数が 0.99 と非常に高かった.MGE は

熱主運転を行うため,平均負荷率は熱需要のみによって説

明された.PEFC では熱需要とともに電力負荷が 300W 以

下の負荷頻度が選択された.PEFC はステップ運転を想定

しており,電力負荷が 300W 以下の場合には最低出力であ

る 250W で稼働する時間が多いこと,また運転を停止する

時間が多いことが理由であると考えられる. SOFCの平均

負荷率の説明変数としても電力負荷 300W 以下の頻度が選

択された. SOFCは電力負荷に追従して負荷率を決定する

ため,電力負荷 300W 以下というほとんど待機電力しか発

生していないと考えられる低電力負荷の時間頻度が,平均

負荷率に影響していると考えられる.次に MGE,PEFCで

選択された機器運転特性である実質発電効率を目的変数と

して回帰分析を行った結果,MGE では電力負荷 1000W 以

下の負荷頻度が,PEFC では電力負荷 300W 以下の負荷頻

度が説明変数として選択された.本検討では MGE の定格

出力を 1000W としており,電力負荷が 1000W 以下である

と発電量の一部がヒーターで消費されてしまい有効に利用

される電力が減少するために実質発電効率が下がると考え

られる.また PEFC は最低出力を 250W と設定しているこ

とから,電力負荷が 300W以下の場合に余剰電力が発生し,

実質発電効率が大きく低下するためであると考えられる.

ここで 1000W,300W という境界値は 2.3 節にて設定した

MGEの最高出力やPEFCの最低出力に依存して選択された

値である.従って機器仕様の設定が異なれば境界値そのも

のは変わりうるが,選択される電力負荷頻度は MGE では

最高出力以下の,PEFC では最低出力以下の電力負荷頻度

となるものと考えられる.一方で SOFC において選択され

た機器運転特性の排熱利用効率を目的変数とした回帰分析

では,熱需要が説明変数として選択された.これは発電に

伴って発生する熱と熱需要とのバランスが良い場合に排熱

利用効率が上がるためである.

表 8 需要特性による重回帰分析

(目的変数:機器運転特性)

目的変数

偏回帰係数 t値 偏回帰係数 t値 偏回帰係数 t値

定数 -1.2.E-02 -12 7.5.E-02 21 8.6.E-01 316熱需要[GJ/年] 8.3.E-03 151 2.0.E-02 205 - -電力負荷300W以下頻度

- - -7.0.E-02 -14 -7.5.E-01 -137

決定係数

目的変数

偏回帰係数 t値 偏回帰係数 t値 偏回帰係数 t値

定数 9.9.E-02 40 4.2.E-01 111 -4.2.E-03 -0.3熱需要[GJ/年] -9.6.E-04 -6 -1.5.E-03 -15 1.2.E-02 33電力負荷300W以下頻度[-]

- - -2.6.E-01 -49 1.8.E-01 9

電力負荷1000W以下頻度[-]

-4.4.E-01 -22 - - - -

決定係数

平均負荷率(MGE) 平均負荷率(PEFC) 平均負荷率(SOFC)

0.99 0.99 0.99

実質発電効率(MGE) 実質発電効率(PEFC) 排熱利用効率(SOFC)

0.76 0.83 0.58

4.4 世帯特性が需要特性に及ぼす影響

世帯特性を説明変数に,4.3節で選択された需要特性を目

的変数として重回帰分析を行った.需要特性(説明変数)

としては表 9に示す要素を設定した.

重回帰分析の結果を表 10 に示す.需要特性のうち熱需

要を目的変数として回帰分析を行った結果,回帰式の決定

係数は 0.90であった.説明変数としては平均入浴人数が選

択された.熱需要のほとんどは入浴行為によって発生する

ものであるため,熱需要は平均入浴人数で十分に説明され

た.次に電力負荷が 300W以下および 1000W以下の頻度を

目的変数に回帰分析を行った結果をそれぞれ表 11,12に示

す.回帰式の決定係数はそれぞれ 0.83,0.70 となった.説

明変数としては在宅確率と平均入浴人数が選択された.電

力需要の低い時間帯の多くは在宅者がなく待機電力のみが

発生する状況であることから,在宅確率が電力負荷頻度に

大きな影響を与える要素となると考えらえる.ただし目的

変数が電力負荷 1000W 以下の頻度の場合は決定係数が

0.70 とそれほど高くないことから,在宅確率だけでなく居

住者が利用する家電機器の違いなどの影響もあることが考

えられる.しかし,平均入浴人数と在宅確率という 2 つの

世帯特性で需要特性はよく説明されており,これらの要素

が需要特性を決定する重要な要因であるといえる.

表 9 世帯特性指標の定義

指標 定義

平均入浴人数1日に湯はりを伴う風呂行動を行った延べ人数[人/日]

平均朝シャワー人数

1日のうち午前10時以前にシャワーのみの風呂行動を行った延べ人数[人/日]

平均昼夜シャワー人数

1日のうち午前10時以降にシャワーのみの風呂行動を行った延べ人数[人/日]

在宅確率1日のうち居住者が1人でも在宅している時間割合[-]

湯はり確率 1年のうち湯はりを行った日数の割合[-]

表 10 世帯特性による重回帰分析

(目的変数:年間熱需要[GJ/年])

変数 偏回帰係数 t値 R2定数 7.83 29.4

平均入浴人数[人/日]

4.01 43.20.90

表 11 世帯特性による重回帰分析

(目的変数:電力負荷 300W以下の頻度割合[-])

変数 偏回帰係数 t値 R2定数 1.30 41.9

在宅確率[-] -0.86 -23.4平均入浴人数[人/日]

-0.03 -11.20.83

表 12 世帯特性による重回帰分析

(目的変数:電力負荷 1000W以下の頻度割合[-])

変数 偏回帰係数 t値 R2定数 -0.12 -6.9

在宅確率[-] 0.25 12.3平均入浴人数[人/日]

0.02 12.60.70

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4.5 世帯特性と一次エネルギー削減量の関係

前節の重回帰分析の結果から,コジェネレーションシス

テムの導入による年間一次エネルギー削減量を決定する世

帯特性として世帯の在宅確率と平均入浴人数が抽出された.

そこで本節では本モデルによって計算された機器導入によ

る一次エネルギー削減量とこれら 2 つの世帯特性との関係

を改めて整理した.ここで在宅確率は,通勤や通学といっ

たルーティーン的な外出を行わない専業主婦や高齢者の世

帯員(以下,日中在宅人員)の有無に大きく影響を受ける.

日中在宅人員の有無別の在宅確率分布を図 7に示す.日中

在宅人員の有無で在宅確率が異なる 2 つのグループに分け

ることが出来ている.したがって,一次エネルギー削減量

は日中在宅人員の有無別に評価することが可能であると考

えられる.

0

10

20

30

40

50

世帯数[世帯]

在宅確率

日中在宅人員なし 日中在宅人員あり

図 7 日中在宅人員有無別 在宅確率分布

そこで一次エネルギー削減量と平均入浴人数との関係を

日中在宅者がある世帯とない世帯とに区別して改めて回帰

分析を行った.平均入浴人数と年間一次エネルギー削減量

の関係を図 8に示す.

平均入浴人数が 1 人未満の世帯では一次エネルギー削減

量にばらつきがある.しかし平均入浴人数が 1 人以上の世

帯,つまり毎日世帯の誰かが湯はりをするような世帯にお

いては,コジェネレーションシステム導入によるエネルギ

ー削減量が平均入浴人数に比例して増加する傾向が見られ

た.一次エネルギー削減量[GJ/年]を b,平均入浴人数[人/

日]を aとして,平均入浴人数 1人以上の世帯におけるエネ

ルギー削減量について平均入浴人数を用いて線形近似する

と,下記のような結果が得られた.

<日中在宅人員ありの場合>

MGE b = 1.38× a + 2.13 決定係数=0.92

PEFC b = 2.35× a + 5.89 決定係数=0.94

SOFC b = 2.44× a + 7.83 決定係数=0.90

<日中在宅人員なしの場合>

MGE b = 0.98× a + 2.6 決定係数=0.92

PEFC b = 1.98× a + 3.91 決定係数=0.93

SOFC b = 2.02× a + 5.76 決定係数=0.92

各機器とも決定係数が 0.9 以上であり,エネルギー削減

量は平均入浴人数によって十分に説明できているといえる.

係数を見てみると,MGE に比べ PEFC,SOFC の傾きが

大きい.短時間での停止が出来ず需要によって負荷率が変

化する PEFC,SOFCでは平均入浴人数が増えること,つま

り需要が大きくなることによって機器の性能が高い負荷率

で稼働しエネルギー削減効果が大きくなる.また切片を見

ると SOFC が最も大きく,平均入浴人数が少なく熱需要の

小さな世帯では SOFC が最も省エネルギーな機器であると

いえる.

コジェネレーションシステム導入による年間一次エネル

ギー削減量を機器間で比較すると,平均入浴人数が 2 人以

上の世帯では,SOFC のエネルギー削減量が最も大きかっ

た.ただし,平均入浴人数が 2 人以上の世帯においては

SOFCと PEFCのエネルギー削減量に大きな差はなかった.

したがって,導入コストに制約がある場合には SOFC より

も安価な PEFCを選択することが考えられる.

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6一次エネルギー削減量[GJ/年]

平均入浴人数[人/日]

日中在宅人員ありMGE PEFC SOFC

-10

-5

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6一次エネルギー削減量

[GJ/年]

平均入浴人数[人/日]

日中在宅人員なしMGE PEFC SOFC

図 8 平均入浴人数とコジェネレーションシステム

導入効果の関係

5.結論

本研究ではまず,家庭用エネルギー最終需要モデルを用

いて 200 通りの多様な世帯のエネルギー需要を推計した.

またこの需要を統計的に分析することにより,コジェネレ

ーションシステムの機械的特性や世帯特性などの要因と各

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コジェネレーションシステムのエネルギー消費量の関係性

を整理した.その結果,最終的にコジェネレーションシス

テムの導入効果を決定するのは平均入浴人数と在宅人員の

有無であるという結果を得た.これら 2 つの要因を用いて

3 種類のコジェネレーションシステム導入時のエネルギー

削減量を比較したところ,平均入浴人数が 2 人以上の世帯

では SOFC のエネルギー削減量が最も大きくなった.ただ

しその他のコジェネレーションシステムと削減量の差はそ

れほど大きくないため,機器の価格などを考慮して居住者

は導入する機器を判断する必要があると考えられる.

今後の課題としては,より多様な世帯の需要についての

評価を行うことであげられる.今回も 200 世帯という多様

な世帯を対象として評価を行ったが,その居住者は標準的

な行動をとることを想定しており,夜型などの行動の多様

性についても考慮して評価を行う必要がある.

謝辞

本研究で利用したアンケートは経済産業省次世代エネル

ギー・社会システム実証事業費補助金蓄電複合システム等

共通基盤技術国際標準化研究開発事業の一部として行われ

たものである.ここに謝意を表する.

(注)

i)住宅で消費された熱のうち補助給湯器から供給された熱

量以外が燃料電池起因の熱であると仮定しており,分子

の「給湯熱需要-補助給湯器供給熱量」の値は燃料電池

の排熱のうち住宅内で利用された熱量を示す.したがっ

て,満畜時に機器が運転して熱が排出されてもこの値は

変化しない.一方機器が運転すれば給湯機ガス消費量は

増加するため,満畜時に機器が運転されると分母の値は

大きくなる.したがって満畜時の余剰が発生することで

実質排熱利用効率が低くなる.

参考文献

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