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平成24年4月  第700号 11 1.はじめに APAQG晋州会議が、2012314日~16に韓国(晋州市)で開催された。 APAQG Asia Pacific Aerospace Quality Group)は、IAQG International Aerospace Quality Group)を支え 3 セクターの 1 つであり、日本(JAQGJapanese Aerospace Quality Group)はAPAQG を主導している。 以下に今回の会議について報告する。 2.会議の概要 今回のAPAQG晋州会議には、アジア太平 洋地域の航空宇宙関連20組織から約40名が参 加した。今回の会議は韓国の KAIKorea Aerospace Industries)がホスト会社を務め、 KAIのパートナー企業8社のオブザーバー参加 があった。APAQG入会打診があったシンガ ポールが今回から参加し、評議会にて正式に APAQG入会を認められた。 会議初日は、IAQG法人化など、特定の重 要事項の報告・議論がなされ、同時に宇宙関 係者によるスペースフォーラムが開催され た。2 日目の評議会では、各国のステータス 報告、IAQGの主要な分科会の活動報告、主 APAQG晋州会議について 評議会の様子

APAQG晋州会議について2012/04/03  · 証取得会社147社中約半数がAS9100C へ移行済。(2)IAQG戦略検討ワーキンググループ傘下 の分科会の活動報告

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平成24年4月  第700号

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1.はじめにAPAQG晋州会議が、2012年3月14日~16日に韓国(晋州市)で開催された。APAQG(Asia Pacific Aerospace Quality Group)は、IAQG(International Aerospace Quality Group)を支える3セクターの1つであり、日本(JAQG:Japanese Aerospace Quality Group)はAPAQGを主導している。以下に今回の会議について報告する。

2.会議の概要今回のAPAQG晋州会議には、アジア太平

洋地域の航空宇宙関連20組織から約40名が参加した。今回の会議は韓国のKAI(Korea Aerospace Industries)がホスト会社を務め、KAIのパートナー企業8社のオブザーバー参加があった。APAQG入会打診があったシンガポールが今回から参加し、評議会にて正式にAPAQG入会を認められた。会議初日は、IAQG法人化など、特定の重

要事項の報告・議論がなされ、同時に宇宙関係者によるスペースフォーラムが開催された。2日目の評議会では、各国のステータス報告、IAQGの主要な分科会の活動報告、主

APAQG晋州会議について

評議会の様子

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工業会活動

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要な案件の審議/評決がなされた。最終日に主に品質保証関連の情報交換を目的に工場見学が実施された。会議の目的はIAQG活動のアジア太平洋セ

クターへの普及並びにアジア太平洋セクターの意見集約であり、その目的は達せられた。

参加国:参加組織は以下の通りである。    < >内は参加人数日本: MHI<4>、KHI<3>、FHI<2>、

IHI<3>、MELCO<1>、SJAC<2>中国:AVIC<2>、HEAI<1>韓国: KAI<5>、KAL-ASD<4>、   Samsung Techwin<2>オブザーバー参加: 主にKAIのパートナー

企業、 計8組織シンガポール: Defence Science Organization

(DSO)<1>インドネシア、 台湾:不参加オーストラリア:    不参加(BAA(Boeing Aerostructures

Australia):APAQG退会)

3.会議内容会議初日の重要事項に関する主な審議結果

等は以下の通りである。・セクターリーダー(伊藤直彦(FHI))より

IAQGの法人化に向けてのIAQG内での調整状況及び、関連してIAQG運営規約の変更案について報告された。・APAQGの会計報告に関し、FY2011決算と

FY2012予算が承認された。・APAQGが担当となっている2015年春の

IAQG会議開催国について協議を行った。韓国又は中国開催の方向で継続調整となった。・9102規格改正に関し、IAQG及びJAQG活動状況が報告され、APAQGとしても次回以降の会議でも継続検討していくこととなった。 9102規格:航空宇宙 初回製品検査要求・規格改定時のAPAQG内の投票期間短縮について協議した。試行して問題なければ投票期間短縮することになった。・新規入会APAQGメンバーについては、シンガポールのDSOから会社の状況と入会の目的を説明して貰い、翌日の評議会の審議で入会が承認された。

評議会では、以下の項目の報告・審議等を行った。( )内は報告者(敬称略)

評議会後の集合写真(APAQGメンバー)

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平成24年4月  第700号

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(1)各国のステータス報告日本: JAQG幹事長(佐古 澄男(KHI))より、

JAQG活動概要を報告(組織、戦略検討委員会/JRMC/各ワーキンググループ活動実績等)

中国: AVICをリーダーとして、CAQG(Chinese Aerospace Quality Group)を設立準備中。

    現在、組織体制、規約などを検討中であり、今年4月にキックオフ会議を開催予定である。

    著者注:会員企業は、4社(AVIC、 COMAC、HEAI、Boeing Tianjin)でスタートの模様。

    組織体制や規約はまだ固まっていない模様で、CAQG正式発足にはまだ時間がかかると思われる。

    APAQG活動を活性化するには、中国の活性化が重要であり、今後も動向を注視する必要がある。

韓国: 自国企業の認証は、主にAS9100/9110/ 9120によっており、韓国のAS9100認証取得会社147社中約半数がAS9100Cへ移行済。

(2)IAQG戦略検討ワーキンググループ傘下の分科会の活動報告各分科会の個別報告が行われた。このセッションはIAQG会議に参加していないAPAQGメンバーに最新の IAQGの情報を提供し、IAQG活動の成果を共有するという側面を持っている。今回は、2011年9月に開催されたIAQGボルドー会議の結果を中心に報告された。なお、IAQGボルドー会議内容については、本会報2011年12月号を参照されたい。

・IAQG改善戦略各分科会の活動報告-規格要求分科会(河本 正博(MHI))

- 製品及びサプライチェーン改善分科会 (小森 秀司(FHI))-要員能力分科会(小薬 正幸(IHI))-パフォーマンス評価分科会 (北森 直樹(KHI))

・IAQG関係強化戦略各分科会の活動報告-国際スペースフォーラム (森下 伸夫(MHI)/尾形 慶照(MELCO))-航空当局(製造)関係強化分科会 (河本 正博(MHI))-防衛当局関係強化分科会 (河本 正博(MHI))-業界団体関係強化分科会 (菅野 義就(SJAC))

・国際航空宇宙認証制度管理チームの活動報告(西尾 珠樹(IHI))

4.韓国の航空産業の概要韓国南部の慶尚南道に航空機工業の企業が

集積しており、韓国の年間全航空機生産量(約20億ドル)の約8割を占めている。APAQGメンバーでもある大手3社の拠点が慶尚南道に集まっている(KAI:泗川市、KAL:金海市、Samsung Techwin:昌原市)。KAIの本拠がある泗川市には、KAIに隣接して航空工業向けの工業団地があり、航空機関連メーカー26社が集積している。 当工業団地には国内サプライヤの約60%が集約されている。慶尚南道(地方公共団体)は企業への優遇

措置として、外国から慶尚南道に進出する企業に対する優遇措置(土地の無料賃貸、補助金、優遇税制等)、慶尚南道に移転或いは操業する企業への無利子貸出等を行っており、航空宇宙産業振興に力を入れている。今回、ホスト会社のKAIとその国内サプライヤのSAMCO(Sacheon Aerospace Manufacturing

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工業会活動

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Corporation)、LACO(Leading Aero Company)の3社を見学する機会があった。SAMCO、LACO共に上記の工業団地内にあり、KAIのみでなく、直接他国から受注を受け、かつ、その拡大を図っている。

(1)KAIKAIは韓国航空機メーカーのトップメー

カーである。泗川市の主力工場を見学した。韓国空軍基地に隣接した工場で、完成機の飛行試験も行っている。新しい建物が多く、広大な敷地を有し、今後もまだ生産能力を拡張する余裕が十分にある事が伺えた。主要製品は、ロッキード社との協同開発したT-50超音速練習機など下記の通りである。T-50については、アジア地区(インドネシア等)への輸出にも力を入れている。KAIの主要な海外顧客は、エアバス社、ボーイング社、KHI、FHI、MHIである。

KAIの概要は以下の通り。

KAI概要 設立:1999年 従業員数:約3,000人 年間総売上:約8億ドル(2011年) 本社、第1工場(泗川市):      本社機能、最終組立、部品製造、

エンジニアリング 第2工場(泗川市):派生/改修機設計製造 ソウルオフィス(ソウル市): 営業、対外関係 R&Dセンター(テジョン市):研究、開発 主要製品  固定翼機:T-50/A-50、KT-1、UAV  回転翼機:KUH、KLH、SB427/429  民間機(構造部分品):        B737垂直/水平尾翼、

A319/320主翼パネル、等

(2)SAMCOSAMCOは、2000年に設立され(現在、従

業員約100人)、サブ組立レベルの製造メーカーで、年間総売上は、約700万ドルである。第1工場が、組立&塗装、第2工場が、部品製造を行っている。最大顧客はKAIであるが、一方でスホーイ社(ロシア)とも直接契約を結んでいる。同社ではスホーイスーパージェット100の客室ドア組立と貨物室ドア組立及び737垂直尾翼/水平尾翼の前縁組立を見学した。工場内は清潔で整理整頓が行き届いており、日本の同種の中小メーカーのレイアウトに類似していた。

(3)LACOLACOは2011年に設立され(現在、従業員

38人)、主に部品の機械加工を行うメーカーである。SAMCO社と同じく最大顧客はKAIであるが、KALのサプライヤでもある。同社では80%がアルミの機械加工、20%がスチール及びチタンの機械加工を実施している。売上は、ボーイング機部品が約30%、エアバス機部品が約25%であるが、まだ直接契約には至っていない。また、同社では不具合の低減に力を入れており、KAIから最優秀サプライヤの評価を得ている。

5.おわりに以上、APAQG晋州会議につき紹介した。IAQGは、世界共通の航空宇宙品質マネジメントシステム規格(9100規格)を初めとする関連規格の制定に加え、“On Time, On-Quality Delivery(OTOQD)”を効率的に達成することを目標に活動を展開している。アジア太平洋地域にIAQG活動を広めかつアジア太平洋地域の意見をIAQGに反映させるためには、APAQG活動を活発化させ、多くのアジア太平洋地域のメンバーが継続的に

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平成24年4月  第700号

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IAQG会議に参加することが重要である。オーストラリアのBAAが今後ボーイング社

の仕事に特化する事となり、IAQG活動はボーイング社が担当していることから、APAQG/IAQGから脱会することになったものの、今回、APAQGには、セクターリーダーとしての日本、中国、韓国、そして新たなメンバーとしてシンガポールが参加した。中国のCAQGの設立、シンガポールの新たな参画、及びインドの参画検討等、アジア地域におけ

る本活動の活発化も見られている。IAQGにAPAQGの意見を反映するために

は、これら各国の積極的なIAQG活動参画が必要であり、これら活動の活発化を歓迎したい。次回のAPAQG会議及びIAQG会議は本年10

月に日本で開催予定である。引き続き、APAQG活動の活発化並びにIAQG名古屋会議の成功に向け努力する所存である。

SAMCOの工場外観

SAMCOの工場内の様子

〔(一社)日本航空宇宙工業会 航空宇宙品質センター 事務局 部長 菅野 義就〕