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革新的抗がん薬実用化に向けた プロドラッグ型クルクミンの前臨床試験 京都大学大学院薬学研究科 教授 掛谷 秀昭 B33 がん プロドラッグ / NF-κB / KRAS / 膵がん / がん微小環境 KRAS 変異による NF-kappa B (NF-κB) 古典的経路の恒常的活性化は腫瘍の進行に重要な役割を果たしており、この経路 を阻害することにより腫瘍縮小効果が得られることが肺がんや膵がんモデルを用いた基礎研究で明らかにされている。 一方、ショウガ科ウコンの成分であるポリフェノール系化合物クルクミン (Cur) は NF-κB と結合している IκB のリ ン酸化ならびにユビキチンによる分解を抑制することにより NF-κB の活性化を阻害する。すでに基礎研究では、Cur が KRAS/NF-κB 経路が活性化している膵がんや肺がんモデ ルで抗腫瘍作用を発揮することが報告されており、がん治療 への臨床応用が試みられてきた。しかしバイオアベイラビリ ティが低く、さらに腸管からの吸収時に抗腫瘍活性を有する Cur フリー体が代謝を受け、活性が低下するため経口剤では十 分な抗腫瘍効果が得られないという大きな問題を抱えていた。 本研究代表者らは新たに静脈投与可能な安全性の高い水溶 性プロドラッグ型クルクミン (curcumin monoglucuronide, CMG) を開発し、従来の Cur 原末の経口投与と比して 1000 倍以上の Cur フリー体血中濃度を達成することに成功し、す でに xenograft モデルでその抗腫瘍効果も確認している。 KRAS‒NF-κB 恒常的活性化が起こっている膵がんをはじめとする難治性がんに対する有効な治療薬は乏しい。安全 性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン CMG は、KRAS‒NF-κB 活性化阻害剤として、膵がんをはじめとする難治性 がんに対する革新的新規抗がん薬としての臨床開発が期待される。 対象疾患領域 キーワード 研究概要 実用化例 www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~iact/  E-mail:[email protected] CMG は従来の抗がん薬と比較して以下のような優位性を有する。 ①KRAS 依存性の恒常的 NF-κB 活性化を有する、既存の分子標的薬剤の効果が乏しい膵がんを含む難治性がんに対し て効果が期待できる。 ②NF-κB の活性化はがん細胞だけでなく、がんを取り巻くがん微小環境でも起こっており、がん細胞への直接的な抗 腫瘍効果だけでなく、がん微小環境を介した抗腫瘍効果も期待できる。 ③Cur の生体内代謝物として存在しうる化合物であり、安全性の面においても他の化合物と比して優位性が高い。 IB p50 p65 IKKi IKKc IKKd N F - B C u r c u m i n m o n o g l u c r o n i d e ( C M G ) IB p50 p65 p50 p65 p50 p65 ɚ æ Q ( V E G F ) ( B c l - 2 f a m i l y ) ¹ 8 ( M M P s ) e t c . K R A S C u r O OH OH OCH3 H3CO HO O OH OH OCH3 H3CO O O CO2H HO HO OH 禺濟ɚNF-゛0㌱磽尤10砅④ɚ㿉痮瘓 靱゛磽箼穵箐穖禕夂祲䈎祲筿篖CMG癮諭わ仟尤€お CMG0 1000Cur革新的抗がん薬実用化に向けた プロドラッグ型クルクミンの前臨床試験 革新的抗がん薬実用化に向けた プロドラッグ型クルクミンの前臨床試験 革新的抗がん薬実用化に向けた プロドラッグ型クルクミンの前臨床試験 ・PCT/JP2017, 特許情報

B33 革新的抗がん薬実用化に向けた プロドラッグ型クルクミ …iact/bridging/seeds-list/...性プロドラッグ型クルクミン (curcumin monoglucuronide, CMG)

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  • 革新的抗がん薬実用化に向けたプロドラッグ型クルクミンの前臨床試験

    京都大学大学院薬学研究科 教授 掛谷 秀昭

    優 位 性

    B33

    がんプロドラッグ / NF-κB / KRAS / 膵がん / がん微小環境

    医薬品

    医療機器

    再生医療等製品

    体外診断薬

     KRAS 変異による NF-kappa B (NF-κB) 古典的経路の恒常的活性化は腫瘍の進行に重要な役割を果たしており、この経路を阻害することにより腫瘍縮小効果が得られることが肺がんや膵がんモデルを用いた基礎研究で明らかにされている。 一方、ショウガ科ウコンの成分であるポリフェノール系化合物クルクミン (Cur) は NF-κB と結合している IκB のリン酸化ならびにユビキチンによる分解を抑制することにより NF-κB の活性化を阻害する。すでに基礎研究では、Curが KRAS/NF-κB 経路が活性化している膵がんや肺がんモデルで抗腫瘍作用を発揮することが報告されており、がん治療への臨床応用が試みられてきた。しかしバイオアベイラビリティが低く、さらに腸管からの吸収時に抗腫瘍活性を有するCur フリー体が代謝を受け、活性が低下するため経口剤では十分な抗腫瘍効果が得られないという大きな問題を抱えていた。 本研究代表者らは新たに静脈投与可能な安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン (curcumin monoglucuronide, CMG) を開発し、従来の Cur 原末の経口投与と比して 1000倍以上の Cur フリー体血中濃度を達成することに成功し、すでに xenograft モデルでその抗腫瘍効果も確認している。

     KRAS‒NF-κB 恒常的活性化が起こっている膵がんをはじめとする難治性がんに対する有効な治療薬は乏しい。安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン CMG は、KRAS‒NF-κB 活性化阻害剤として、膵がんをはじめとする難治性がんに対する革新的新規抗がん薬としての臨床開発が期待される。

    対象疾患領域

    キーワード 

    研 究 概 要

    実 用 化 例

    www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~iact/  E-mail:[email protected]

    CMGは従来の抗がん薬と比較して以下のような優位性を有する。①KRAS 依存性の恒常的 NF-κB 活性化を有する、既存の分子標的薬剤の効果が乏しい膵がんを含む難治性がんに対し て効果が期待できる。②NF-κB の活性化はがん細胞だけでなく、がんを取り巻くがん微小環境でも起こっており、がん細胞への直接的な抗 腫瘍効果だけでなく、がん微小環境を介した抗腫瘍効果も期待できる。③Cur の生体内代謝物として存在しうる化合物であり、安全性の面においても他の化合物と比して優位性が高い。

    I B

    p50 p65

    IKK

    IKK IKK

    NF- B

    Curcumin monoglucronide (CMG)

    I B

    p50 p65 p50 p65

    p50 p65

    (VEGF) (Bcl-2 family)

    (MMPs) etc.

    KRAS

    Cur

    O OH

    OH

    OCH3H3CO

    HO

    O OH

    OH

    OCH3H3CO

    O

    O

    CO2H

    HO

    HO

    OH

    NF- CMG

    CMG

    1000 Cur

    革新的抗がん薬実用化に向けたプロドラッグ型クルクミンの前臨床試験

    革新的抗がん薬実用化に向けたプロドラッグ型クルクミンの前臨床試験

    革新的抗がん薬実用化に向けたプロドラッグ型クルクミンの前臨床試験

    ・PCT/JP2017/23753

    特 許 情 報