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2.5 臨床に関する概括評価 20 1 目次 2.5 臨床に関する概括評価.................................................................................................. 2 2.5.1 製品開発の根拠 .......................................................................................................... 4 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 .................................................................................. 38 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ...................................................................................... 40 2.5.4 有効性の概括評価 .................................................................................................... 50 2.5.5 安全性の概括評価 .................................................................................................... 74 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論........................................................................ 91 2.5.7 参考文献................................................................................................................... 98

目次欧米で行われた大規模調査の一つであるHening らにより2004 年に欧米各国23,052 名の外来患者 を対象として実施された調査では,1 週間に1

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  • 2.5 臨床に関する概括評価

    20 . 1

    目次

    2.5 臨床に関する概括評価 .................................................................................................. 2

    2.5.1 製品開発の根拠 .......................................................................................................... 4

    2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 .................................................................................. 38

    2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ...................................................................................... 40

    2.5.4 有効性の概括評価 .................................................................................................... 50

    2.5.5 安全性の概括評価 .................................................................................................... 74

    2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 ........................................................................ 91

    2.5.7 参考文献 ................................................................................................................... 98

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    2

    2.5 臨床に関する概括評価

    本項で使用した略号及び用語の定義一覧を表 2.5-1 に示す。

    表 2.5-1 略号及び用語の定義一覧

    略号及び用語 定義 ALT Alanine aminotransferase:アラニンアミノトランスフェラーゼ AST Aspartate aminotransferase:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAUC Area under the concentration-time curve:濃度-時間曲線下面積 AUCinf AUC from the time of dosing up to infinity with extrapolation of the

    terminal phase:時間 0 から無限時間まで外挿した AUC AUClast AUC from the time of dosing to the last measurable concentration:時間 0

    から濃度定量可能最終時点までの AUC AUCss AUC at steady state:定常状態における AUC AUCss, τ AUCss during the time interval between consecutive dosing:定常状態にお

    ける投与間隔 τ時間毎の AUC BMI Body Mass Index:体型指数 Ccr Creatinine clearance:クレアチニンクリアランス CGI Clinical Global Impression:概括有効性評価 CI Confidence Interval:信頼区間 CL Clearance:クリアランス CL/F Apparent body clearance after extravascular dosing:経口クリアランス CLR Renal clearance:腎クリアランス CLss/F CL/F at steady state:定常状態における CL/F Cmax Maximum concentration:最高濃度 CPK Creatine kinase:クレアチンキナーゼ Css, max Cmax at steady state:定常状態における Cmax CYP Cytochrome P450:チトクローム P450 DB Double-blind:二重盲検 DPH Diphenhydramine:ジフェンヒドラミン

    DSM-IV Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition:精神疾患の診断・統計マニュアル 第 4 版

    DSM-IV-TR Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision:精神疾患の診断・統計マニュアル 第 4 版(本文改訂)ECG Electrocardiogram:心電図 F Bioavailability:バイオアベイラビリィティ FDA Food and Drug Administration:食品医薬品局 GABA γ-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸 GMR Geometric Mean Ratio:幾何平均比 HbA1C Hemoglobin A1C:ヘモグロビン A1C hCE Human carboxylesterase:ヒトカルボキシルエステラーゼ ICGI Investigator-rated Clinical Global Impression:医師の概括有効性評価

    ICH International Conference on Harmonization:日・米・欧三極医薬品規制調和国際会議

    IRB Institutional Review Board:施設内治験審査委員会 IRLS International Restless Legs Syndrome Study Group Rating Scale IRLSSG International Restless Legs Syndrome Study Group LAT L-type amino acid transporter:L 型アミノ酸トランスポーター LOCF Last observation carried forward:最終観察値をそれ以降の値に外挿す

    る方法

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    3

    略号及び用語 定義 LS-mean Least Square-mean:最小 2 乗平均 MCT Monocarboxylic acid transporter:モノカルボン酸トランスポーター MedDRA Medical Dictionary for Regulatory Activities:ICH 国際医薬品用語集 MITT Modified Intent-to-Treat MOS Medical Outcomes Study n Number:例数,被験者数 OCT Organic cation transporter:有機カチオントランスポーター PCGI Patient-rated Clinical Global Impression:患者の概括有効性評価 PET Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影(法) PLM Periodic Legs Movement:周期性下肢運動

    PLMSA Periodic legs movements during sleep which cause at least a 3-second arousal but not awakening:睡眠中,awakening とはならない 3 秒以上の arousal を引き起こす周期性下肢運動

    PLMSW Periodic legs movement during sleep that cause at least a 30-second epoch of wake:睡眠中,30 秒以上の覚醒を引き起こす周期性下肢運動 POMS Profile of Mood State:気分プロフィール検査 PSG Polysomnography:睡眠ポリグラフ QD Quaque die:1 日 1 回投与 QOL Quality of life:生活の質

    QT ECG interval from the start of the Q wave to the termination of the T wave, representing the total duration of electrical activity of the ventricles:QT 間隔(時間)

    RLS Restless Legs Syndrome:レストレスレッグス症候群,下肢静止不能症候群,むずむず脚症候群

    RLS-QOL John’s Hopkins RLS Quality of Life instrument:ジョンズ・ホプキンズによるむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)患者の生活の

    質に関する質問票 SB Single-blind:単盲検

    SF-36 Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey:QOL を測定するための健康調査票

    SR Sustained Release:徐放 t1/2 Elimination half-life:消失半減期 Tmax Time to attain Cmax:最高濃度到達時間 V Volume of distribution:分布容積 V/F Apparent volume of distribution:見かけの分布容積 VAS Visual Analog Scale:アナログスケール(視覚的アナログ尺度) XP13512 治験薬 ASP8825 と同一であり,XenoPort 社での治験薬コード名

    γ-GTP γ-glutamyl transpeptidase:γ-グルタミルトランスペプチダーゼ,γ-glutamyl transferase(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)と同一

    申請製剤 本承認申請で申請する ASP8825 錠 300 mg

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    4

    2.5.1 製品開発の根拠

    2.5.1.1 申請医薬品の薬理学的分類

    ASP8825 は米国 XenoPort 社が創製したガバペンチンのプロドラッグである。ガバペンチンは小

    腸上部に局在するトランスポーターを介した能動輸送により吸収されるが,投与量増加に伴うト

    ランスポーターの飽和に起因してバイオアベイラビリティが低下することが知られている。これ

    に対して,ASP8825 はガバペンチンと異なる腸管に広く分布する高容量輸送系を介して吸収され

    るように設計されており,実際,腸管全体で吸収され直ちにガバペンチンに変換されること及び

    用量依存的に曝露量が増えることが確認された。こうした薬物動態プロフィールの改善により,

    安定した臨床効果が期待される。本剤の活性本体であるガバペンチンは,抗てんかん薬あるいは

    神経因性疼痛の治療薬として,世界 90 以上の国と地域で承認されている 1)。ガバペンチンは興奮

    性神経の前シナプスに存在する電位依存性カルシウムチャネルの α2δサブユニットに結合してカ

    ルシウムイオンの流入を部分的に抑制し,神経伝達物質の遊離を抑制することにより,興奮性神

    経のシナプス伝達を減弱することが主要な作用機序であると考えられている 1)。このほか,ガバ

    ペンチンは脳内 GABA 量の増加 2),及び GABA トランスポーターの活性化 3)により GABA 神経機

    能を亢進させると考えられている 1)。

    2.5.1.2 目標適応症の臨床的/病態生理学的側面

    2.5.1.2.1 レストレスレッグス症候群の臨床的/病態生理学的側面について

    今回申請した ASP8825 の適応症(効能・効果)は「レストレスレッグス症候群」である。

    レストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome:以下 RLS と略)は,1685 年に Thomas Willis

    によりその存在が知られ,その後 1945 年,1960 年に Karl Axel Ekbom により「restless legs syndrome」

    として報告された疾患である 4)。本疾患は中枢神経系の障害に起因すると考えられ,四肢(主に

    脚部)に生じる不快な感覚により下肢を動かしたくなる衝動に駆られる症状を呈する。また,上

    記の主症状に付随して睡眠中の周期的な四肢の動きや不随意運動,火照りや痛み等,患者ごとに

    訴えの異なる様々な異常感覚もみられる。こうした脚を動かしたくなる症状や不快な異常感覚は

    夜間に増悪し,入眠や睡眠を妨げることから慢性の倦怠感や不眠症状を訴える患者が多く,1990

    年にアメリカ睡眠障害連合会が中心となって作成された睡眠障害国際分類の中では睡眠異常の一

    つに分類されている。本邦においても,2002 年に策定された「睡眠障害の対応と治療ガイドライ

    ン」では睡眠障害として扱われている。

    RLS の有病率についてみると,欧米では国際的な大規模調査により人口の約 5~10%が RLS に

    罹患していると報告されている 5-7)。一方,本邦においては大規模な疫学調査の報告はないが,近

    年行われた 3,000~4,000 名の小規模な調査から,国内 RLS 有病率は 1~5%と推定されている 8,9)。

    欧米で行われた大規模調査の一つである Hening らにより 2004 年に欧米各国 23,052 名の外来患者

    を対象として実施された調査では,1 週間に 1 回以上 RLS の症状を示す患者の割合は,外来患者

    全体の 9.6%であったことが報告されている。さらに,1 週間に 2 回以上 RLS の症状を示す患者グ

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    5

    ループのうち,88.4%は何らかの睡眠障害を訴えており,また 43.4%の患者がこの疾患で最も問題

    となる症状は睡眠障害で,次に脚の不快感(27.0%),次いで痛み(21.4%)であると回答している6)。このように欧米の調査では RLS による痛みを訴える患者の割合は高く,Allen による欧米の

    16,202 名を対象とした調査でも,下肢に生ずる異常感覚の中で痛みが最も不快と応えた患者の割

    合は 19%であった 7)。

    これらの調査結果から,RLS は患者の QOL に大きな影響を及ぼす疾患であるのに対し,本疾患

    に関する認知度の低さや診断可能な医師の少なさから実際に治療に至っている患者はわずかであ

    ると考えられる。

    なお,RLS の診断基準は,1995 年に国際 RLS 研究グループ(the International Restless Legs

    Syndrome Study Group)により 4 項目の基準が作成されている。2002 年には,RLS 財団(The Restless

    Legs Syndrome Foundation)と国際 RLS 研究グループ等によるワークショップにより診断基準が改

    定され,現在この改定版が広く使用されている 10)。

    国際 RLS 研究グループにより,提唱されている RLS の 4 つの診断基準は下記のとおりで,すべ

    ての基準を満たしたとき RLS と診断される。

    1. 脚を動かしたいという強い欲求が不快な下肢の異常感覚に伴って,あるいは異常感覚が原

    因となって起こる。

    2. その異常感覚が,安静にして,静かに横になったり座ったりしている状態で始まる,ある

    いは増悪する。

    3. その異常感覚は運動によって改善する。

    4. その異常感覚が日中より夕方・夜間に増悪する。

    2.5.1.2.2 レストレスレッグス症候群の発症機序と ASP8825 の作用点について

    RLS 発症の詳細な機序は不明であるが,ドパミン機能障害や鉄代謝異常が関係していると考え

    られている。ドパミン機能障害については,低用量の L-ドーパ及びドパミンアゴニストの投与に

    より RLS の症状が改善し,PET を用いた機能的脳画像研究では,RLS 患者の脳での 18F-ドーパの

    取り込みが,健常者と比較して低下していることが明らかになっている 11)。鉄代謝の異常との関

    係については,RLS 患者では末梢の鉄の貯蔵が減少していることや,中枢では脳脊髄液のフェリ

    チンの減少とトランスフェリンの増加が報告されている 12)。これらのことから,鉄の輸送と貯蔵

    の異常が中枢神経系におけるドパミンの異常につながり,RLS が発症する可能性が示唆されてい

    る 13)。また最近,Clemens らは,視床下部後部ドパミン作動性細胞群(A11)の機能低下が RLS

    の異常感覚発現に関与するという仮説を提唱した 14)。

    本剤の各種受容体,イオンチャネル及びトランスポーターに対する親和性を検討した結果から,

    本剤自体の特異的な親和性が認められなかったこと,及び本剤は体内で速やかに加水分解されガ

    バペンチンを生成することから,本剤の薬効は体内で生成されるガバペンチンに基づき発現する

    と考えられる。ガバペンチンの薬理作用としては,興奮性神経の前シナプスに存在する電位依存

    性カルシウムチャネルの α2δサブユニットに結合して,カルシウムイオンの流入を抑制し,神経

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    6

    伝達物質の遊離を抑制することにより,興奮性神経のシナプス伝達を減弱すること,脳内 GABA

    量の増加及びGABAトランスポーターの活性化によるGABA神経機能の維持あるいは増強が知ら

    れている。これらの薬理作用と,RLS の症状に対する治療効果の発現との関連性は明確になって

    いないが,脊髄後角において感覚神経終末に存在するカルシウムチャネル α2δサブユニットへの

    結合を介して,興奮性の神経伝達をシナプス前性に抑制することにより,視床下部後部ドパミン

    作動性細胞群の機能低下に起因するシグナル伝達の亢進あるいは異常を正常化することにより

    RLS の症状に対する治療効果が発現していると推察される。

    2.5.1.2.3 現行治療と患者 QOL について

    欧米での RLS に対する治療には,パーキンソン病治療薬であるドパミンアゴニストやオピオイ

    ド製剤,ガバペンチンを含む抗てんかん薬等が使用され,これらが本疾患に有効であることが報

    告されている 15-18)。

    2004 年に RLS 財団(米国)より発表された RLS 治療アルゴリズムでは,RLS を間欠性,持続

    性,治療抵抗性に分類し,症状や病態に応じてそれぞれ推奨される薬物療法を紹介している 19)(図

    2.5.1-1)。RLS 治療アルゴリズムではドパミンアゴニストを第一選択薬として位置付けているが,

    症状や病態によっては,ガバペンチンやベンゾジアゼピン製剤,オピオイド製剤等の作用メカニ

    ズムの異なる薬剤を選択することが推奨されている。例えば,症状の発現頻度が低く連日の薬剤

    治療を必要としない間欠性 RLS においては,長期的に薬剤を服用する必要がないため,長期連用

    にあまり適さない薬剤(ドパミン前駆物質,低力価のオピオイド製剤,ベンゾジアゼピン製剤)

    であっても使用が可能とされている。また,症状が週 2 回以上認められ連日の薬物療法が必要と

    なる持続性 RLS では,ドパミンアゴニストが第一選択薬となっているが,症状が軽度の患者や,

    痛みを伴う異常感覚が認められる患者,末梢神経障害や慢性疼痛症候群等の併発例にはガバペン

    チンが推奨されている。持続性 RLS の患者で,ドパミンアゴニストの治療に対し初期反応が不十

    分であったり,増量にもかかわらず反応が不十分,継続投与ができない副作用の発現,コントロー

    ルできない症状増強(オーグメンテーション)のいずれかが認められた場合を治療抵抗性 RLS と

    定義している。治療抵抗性 RLS に対しては,他のドパミンアゴニストへの切り替え,作用メカニ

    ズムが異なる薬剤(ベンゾジアゼピン製剤,ガバペンチン,オピオイド製剤)への切り替え又は

    追加投与といった対応が推奨されている。

    2011 年 10 月現在,海外ではドパミンアゴニストであるロピニロール,プラミペキソール及び

    ロチゴチンが承認されている。

    一方,本邦における RLS の治療は,2002 年の「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」で紹介さ

    れているように,ベンゾジアゼピン製剤のクロナゼパムが第一選択薬とされており,他には,中

    枢ドパミン作動薬,オピオイド製剤について記載されている。当時,日本の睡眠専門医は,有効

    率が高いという理由ではなく,比較的副作用が少ないという理由でクロナゼパムを使用し,ドパ

    ミンアゴニストは副作用の観点から敬遠されていた 20)。しかし,2004 年に RLS 財団(米国)よ

    り RLS 治療アルゴリズムが発表され,海外においてロピニロール,プラミペキソール及びロチゴ

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    7

    チンが RLS の適応を取得したことから,現在では本邦においても非麦角系ドパミンアゴニストが

    RLS に対する第一選択薬となり,クロナゼパムは第二選択薬となっている。

    ドパミンアゴニストの RLS に対する有効性については広く認識されているが,一方で長期服用

    に伴い,治療開始前と比べてより重い症状が発現する症状増強(オーグメンテーション)が夕方

    早くから起こるという問題がある 21)。また,嘔気等の消化器症状が認められることもあり,この

    様な RLS 患者はドパミンアゴニストによる継続治療や薬剤の増量が困難となる。このため,異な

    る作用メカニズムを有する RLS 治療薬の存在意義は高いと考えられる。

    承認申請時点(2009 年 11 月)において,本邦では RLS に対して適応を有する薬剤はなく,医

    療現場では上記薬剤の適応外使用による治療を行わざるを得ない状況であった。また,RLS を診

    察できる医師は,睡眠専門医もしくは睡眠障害を診察している医師に限定されており,本疾患の

    認知度の低さや診察可能な医師の少なさから実際に治療に至っている患者は少ないと考えられる。

    2010 年 1 月にプラミペキソールが適応を取得したが,ドパミンアゴニスト以外の薬剤が開発され

    ているという情報はない。

    以上のとおり,RLS は脚の不快感により睡眠を妨げ,睡眠不足により患者 QOL を著しく低下さ

    せる疾患であるが,その認知度は未だ低い。今後,異なる作用メカニズムを有する RLS 治療薬が

    承認されることで本疾患に対する認知度が更に高まり,RLS で苦しんでいる多くの患者が適切な

    診察,治療を受けることが可能となると考えられる。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    8

    図 2.5.1-1 レストレスレッグス症候群の治療アルゴリズム

    2.5.1.3 レストレスレッグス症候群を適応症とした科学的背景について

    ASP8825 の活性本体であるガバペンチンは,米国 Pfizer 社が創製した薬剤である。国内におい

    ては「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発

    作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」を効能・効果として,2006 年 7 月に製造販売承

    認されている。ガバペンチンの薬物動態については,種々報告されているが,経口投与時の吸収

    のバラツキが大きいことがよく知られている 22-25)。また,薬物吸収トランスポーターの飽和によ

    る臨床用量付近での吸収の飽和が認められ,個体によっては投与量を増加しても期待する臨床効

    果が得られないという難点が明らかにされている。

    ASP8825 は,米国 XenoPort 社により,ガバペンチンの薬物動態上の欠点を克服する目的で創製

    されたガバペンチンの透過改善型の新規プロドラッグである。本剤は,消化管内で安定であり,

    かつ,消化管全体に存在する高容量輸送系から能動的に吸収され,生体内で直ちに加水分解を受

    レストレスレッグス症候群

    非薬物療法 血清フェリチンの

    補正など

    ベンゾジアゼピン 低力価オピオイド ドパミン前駆体 ドパミンアゴニスト

    ガバペンチンへ

    切り替え 高力価オピオイド

    へ切り替え 他のドパミンアゴ

    ニストへ切り替え ベンゾジアゼピン オピオイド ガバペンチン を追加投与

    持続性レストレス レッグス症候群

    間欠性レストレス レッグス症候群

    治療抵抗性レストレス

    レッグス症候群

    低力価オピオイド ガバペンチン ドパミンアゴニスト 非薬物療法 血清フェリチンの

    補正など

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    9

    けガバペンチンに変換されるように設計されている。実際に,本剤経口投与時の血中ガバペンチ

    ン濃度は用量依存的であることが確認されている。

    本剤の活性本体であるガバペンチンはRLSを対象とした臨床試験でその治療効果が報告されて

    いる 17,18,26-28)。また,欧米で参照されている RLS 治療アルゴリズムでは,ガバペンチンはドパミ

    ンアゴニストやオピオイド製剤とともにRLSにおける薬剤治療の選択肢の一つとして紹介されて

    おり 19),RLS に対する有効性が確認されている。

    以上のことから,本剤においても RLS に対する有効性が期待できることから,XenoPort 社によ

    る本剤の臨床開発が米国で開始された。

    2.5.1.4 臨床開発計画と申請時期について

    ASP8825 は,米国 XenoPort 社からアステラス製薬株式会社に導入された新規化合物であり,後

    述のとおり,平成 10 年 8 月 11 日付医薬発第 739 号(「外国で実施された医薬品の臨床試験データ

    の取扱いについて」)及び同日付医薬審第 672 号(「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき

    民族的要因について」)に準拠して,XenoPort 社が米国で実施した第 III 相比較試験[XP053]を

    ブリッジング対象試験として,国内でブリッジング試験を実施することで海外臨床試験成績を日

    本人に外挿するブリッジング戦略による臨床開発計画を立案した。

    国内外の開発計画全体の中で,本剤が最初に RLS 患者に投与されたのは,海外第 II 相比較試験

    [XP021]である。本試験は,RLS 患者に対する本剤の有効性及び安全性を検討する目的で,ラ

    ンダム化プラセボ対照二期クロスオーバー多施設共同二重盲検試験にて実施された。本試験の用

    法・用量は,Garcia-Borreguero らが RLS 患者を対象に実施したガバペンチン(Neurontin®)の臨

    床試験 17)の成績等から,目標ガバペンチン血中濃度をおおよそ 6~12 μg/mL と設定し,RLS に特

    徴的な夕方から夜間の症状発症時期に目標血中濃度を維持できるよう,午後 5時に本剤 600 mgを,

    さらに就寝 1時間前に 1200 mgの 1日 1800 mgが投与された。投与期間は,同様にGarcia-Borreguero

    らが実施したガバペンチンの臨床試験の成績を踏まえプラセボに対して有意な変化が観察できる

    期間として 2 週間が設定された。引き続いて海外第 II 相比較試験[XP045]では,RLS 患者を対

    象に本剤 600 及び 1200 mg の 1 日 1 回投与時の有効性,安全性及び用量反応性を検討するためラ

    ンダム化プラセボ対照多施設共同二重盲検試験が実施された。投与期間は,海外第 II 相比較試験

    [XP021]と同様,2 週間とされた。これらの 2 試験の成績から,1 回 1200 mg,1 日 1 回 2 週間

    投与では,有効性の評価項目(IRLS スコアの平均変化量及び ICGI に基づくレスポンダー率)で

    有意に優れる効果が示されたが,1200 mg 以上の高用量(1800 mg)での更なる改善は認められな

    かった。なお,1 日 1800 mg の投与では,1 日 1200 mg の投与に比べて浮動性めまいの発現が増加

    した。

    以上の結果を踏まえ,XenoPort 社は FDA と協議し,海外第 III 相比較試験[XP053]として主

    たる検討用量 1200 mg 群に 600 mg 群を追加し,12 週間投与のランダム化プラセボ対照二重盲検

    群間比較試験を実施することとなった。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    10

    一方,アステラス製薬株式会社では,これらの状況を踏まえ,日本人及び外国人における本剤

    の薬物動態及び民族的要因等を基に,ブリッジング戦略による海外データの利用可能性を検討し,

    平成 年 月 日に 相談(以下,治験相談と略)を行った。この

    治験相談では,

    ことや こと

    が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下,総合機構と略)の意見として示された。

    治験相談の結果をもとに,本邦では海外第 III 相比較試験[XP053]をブリッジング対象試験と

    して,国内第 II/III 相比較試験[CL-0003]*をブリッジング試験として,また,投与期間 52 週の

    長期投与試験[CL-0005]を実施した。その結果,本剤の有効性及び安全性を示唆する成績が得ら

    れ, ことから,平成 年 月 日の 相談を

    経て,医薬品製造販売承認申請した。

    なお,海外においては,GlaxoSmithKline 社が XenoPort 社より本剤を導入し,2009 年 1 月に RLS

    を適応症として米国で申請し,2011 年 4 月に承認を取得している。

    *: 相談当時は国内第 II 相試験としていたが,国内第 II/III 相比較試験として実施し

    た。これ以降,国内第 II 相試験は,国内第 II/III 相比較試験あるいはブリッジング試験として記載する。

    2.5.1.5 臨床試験デザインの設定について

    2.5.1.5.1 レストレスレッグス症候群に対する効果の評価方法

    2.5.1.5.1.1 主要評価項目と副次評価項目

    2003 年に国際 RLS 研究グループから RLS の重症度を評価する評価スケール(IRLSSG Rating

    Scale:以下,IRLS と略)29)が発表された。IRLS は RLS の重症度と頻度を評価する 5 項目,夜間

    の睡眠や日中の疲労,気分を評価する 5 項目の計 10 項目から成っている。各 10 項目の質問に対

    して 5 つの回答(0~4 のスコア)があり,合計スコア 0 から 40 点で評価を行う。重症度は,合

    計スコア 10 以下が軽症(mild),11~20 が中等症(moderate),21~30 が重症(severe),31 以上

    が最重症(very severe)と評価する。この IRLS は実施が容易であること,RLS の優れた評価指標

    として,海外 6 カ国の 20 施設において妥当性が確認されていることから 30),IRLS は RLS を対象

    とした臨床試験における薬剤の評価指標として,確立されたものと考えられる。

    実際,海外で RLS を適応症として承認されているロピニロール及びプラミペキソールの RLS

    に対する有効性の評価項目についてみると,ロピニロールの有効性を検証したランダム化プラセ

    ボ対照二重盲検群間比較試験(評価時期:投与 12 週時)31)では,主要評価項目として IRLS が用

    いられており,副次評価項目では,CGI,MOS sleep scale,RLS-QOL,SF-36 等が用いられている。

    プラミペキソールの 2 つの検証試験(Effect-RLS Trial32)と PIRLS Trial33))では,主要評価項目に

    IRLS と CGI の 2 つを用いている。Effect-RLS Trial の副次評価項目は,試験固有のスケールを使用

    している。すなわち,IRLS がベースラインから 50%減少した場合を IRLS レスポンダーと定義し,

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    11

    投与 6 週時において IRLS レスポンダーの比率をプラセボ群と本剤群で比較している。また,投与

    6 週時の RLS の重症度の改善について VAS を用いた評価や患者による概括評価(the Patient Global

    Impression:PGI)を行っている。PIRLS Trial では,Effect-RLS Trial と同様に IRLS レスポンダー

    の比率,PGI レスポンダーの比率及び VAS による評価を行っており,さらにエップワース眠気尺

    度,RLS-QOL を実施している。

    一方,本邦では,プラミペキソールの臨床試験において主要評価項目として日本語版 IRLS が初

    めて使用された。なお,IRLS の版権を管理しているのは MAPI Research Institute であり,日本語

    版 IRLS の最新版の提供を受けることができる。

    前述のとおり,RLS は下肢に生じる不快な感覚に伴い下肢を動かしたくなる症状を呈するもの

    で,夕方から夜間にかけて症状の発現もしくは症状の増強が認められ,入眠を妨げたり睡眠中の

    中途覚醒を引き起こす。これが原因となり,不眠や日中の眠気や倦怠感が生じることから QOL も

    低下する。これらのことから,RLS の症状や全般的な評価を行うスケールとして,現時点では IRLS

    が最適であり,国内外の RLS を対象とした臨床試験では主要評価項目として用いられている。ま

    た,CGI については疾患に関わらず,医師による薬剤治療におけるベネフィット/リスクの評価に

    広く使用されている。他の評価スケールとしては,RLS が睡眠と深い関係があるため睡眠に関す

    る評価スケールである MOS sleep scale やエップワース眠気尺度などが使用され,また QOL 関連

    の評価スケールとしては,SF-36 や RLS-QOL 等が使用される。

    国内の ASP8825 の開発戦略では,ブリッジングによる海外データの利用を検討していたため,

    ブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験[CL-0003])の治験実施計画書は,ブリッジング対象

    試験(海外第 III 相比較試験[XP053])の治験実施計画書と選択基準,除外基準を含め,試験デ

    ザインは極力同一にして作成する必要があった。

    2.5.1.5.1.2 ブリッジング計画の妥当性

    平成 10 年 8 月 11 日付医薬発第 739 号(「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いに

    ついて」)及び同日付医薬審第 672 号(「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因

    について」)に準拠して,ブリッジング試験の実施により海外臨床データを日本人に外挿すること

    の妥当性について,(1)薬物動態の類似性,(2)本剤の民族的要因による影響の受けやすさ,(3)

    外因性民族的要因の類似性の観点から検討した。

    この結果,本剤の薬物動態プロフィールは,日本人及び白人で同様であった。

    「(2)本剤の民族的要因による影響の受けやすさ」のうち,内因性民族的要因については表

    2.5.1-1 に要約したとおり,ASP8825 は,民族的要因の影響に注意する必要がある要因,あるいは

    今後の検討を加えるべき点を有するが,RLS における欧米人の臨床データの国内臨床試験データ

    パッケージへの外挿が可能な薬剤特性を有すると考えられた。また,外因性民族的要因について

    は,特に ASP8825 の有効性,安全性の評価に関係が深いと思われる「医療習慣と治療法」,「疾病

    の定義と診断」及び「試験実施方法(エンドポイント)」の類似性を検討した。この結果,外因性

    民族的要因に類似性があると考えられた。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    12

    以上の結果より,本剤の国内における臨床開発においてブリッジング戦略を採用することは可

    能かつ妥当と考え,総合機構との 相談を経て,日本国内の開発計画

    を策定することとなった。

    表 2.5.1-1 ASP8825 の薬剤特性

    薬剤特性 民族的要因

    による影響 CTD 該当項

    薬物動態が線形を示す。

    日本人及び欧米人健常成人において,本剤(600,1200 及び 1800 mg)投与時の Cmax 及び AUC は投与量に依存して増加した。本剤の薬物動態は線形

    性を示す。

    ○ 2.7.2.2.2.1.1.1 2.7.2.3.5 2.7.2.3.7.1

    推奨される用法・用量の

    範囲内で,有効性及び安

    全性のいずれに関して

    も,用量-作用曲線が平坦

    である。

    600,900 及び 1200 mg/日において有効性が認められたが,これらの用量間で用量反応性は認められ

    なかった。また,有害事象の発現率は各群ともほ

    ぼ同程度であった。以上のことから臨床推奨用量

    では,有効性及び安全性において用量-作用曲線は

    平坦であるといえる。

    ○* 2.5.4.5 2.5.5.3.3

    治療量域が広い。

    臨床試験の成績より,本剤は 600~1200 mg/日の用法・用量で有効性が認められている。 至適用量は個々の患者により異なる可能性がある

    が,治療量域は広いといえる。

    ○* 2.5.4.5

    代謝酵素に遺伝子多型が

    知られていない。

    活性本体のガバペンチンは代謝を受けない。 ○ 2.7.2.3.9.3

    生物学的利用率が高く,

    したがって薬物吸収が食

    事の影響を受けにくい。

    生物学的利用率は高い(49.3~74.0%)が,薬物吸収が食事の影響を受けて上昇する。 △

    2.7.1.2.5 2.7.2.2.2.1.1.1 2.7.2.3.8.1

    蛋白結合率は低い。

    本剤は消化管より吸収された後,速やかにガバペ

    ンチンに分解される。ガバペンチンの蛋白結合率

    は 3%未満である。 ○

    2.7.2.3.3 2.7.2.3.2

    高度に代謝され,特に代

    謝経路が単一で薬物間相

    互作用の可能性が大きく

    なることがない。

    本剤の未変化体は in vitro の検討により代表的なCYP 分子種の基質とならず,また CYP 分子種の代謝に対する誘導作用も認められなかった。活性本

    体であるガバペンチンは代謝を受けない。薬物相

    互作用の可能性は非常に低い。

    ○ 2.7.2.2.1.3 2.7.2.2.1.5 2.7.2.3.9.3

    薬物-食事間の相互作用

    の可能性が少ないこと。

    健康成人において,食後(高脂肪食)に本剤 1200 mgを単回投与したときの Cmax 及び AUC は空腹時に比べ約 40%上昇した。

    △* 2.7.2.2.2.3.2 2.7.2.3.8.1

    薬物-疾病間の相互作用

    の可能性が少ないこと。

    (肝臓,腎臓,心血管機

    能)

    肝臓:ガバペンチンは肝代謝をほとんど受けない

    ため,肝機能障害との相互作用の可能性は極めて

    少ないと考えられる。 腎臓:血漿中ガバペンチンの Cmax,AUC 及び t1/2は腎機能の低下に依存して増大あるいは延長し

    た。 心血管機能:心血管系への作用については報告さ

    れていない。

    肝:○

    腎:△

    心:○

    2.7.2.3.7.5 2.7.2.2.2.2.1 2.7.2.2.2.4

    作用が全身的ではない。本剤は吸収後,速やかにガバペンチンに分解され,

    循環血流により全身に移行する。 △ 2.7.2.2.2.1.1.1 2.7.2.3.1

    不適切な使用の可能性が

    低い。

    活性本体であるガバペンチンの依存性については

    報告されていない。 ○ 2.7.4.5.6

    ○:民族的要因の影響を受けにくい。 △:民族的要因の影響に注意が必要。 *: 相談後に得られたデータより記載。

    YPC09006ノート注釈YPC09006 : Marked

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    13

    2.5.1.5.2 相談

    本剤の臨床開発に関して,総合機構と 相談(以下,治験相談と略)

    を平成 年 月 日に実施した。

    本治験相談では, 臨床

    データパッケージ(案)及びブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験)計画(案)の妥当性に

    ついて相談した。

    【相談の主旨】

    本剤の臨床開発は,XenoPort 社によって米国で先行して行われており,本邦での開発を開始す

    るにあたり,ブリッジングによる海外臨床データの外挿の可能性を検討していた。本邦では,RLS

    の適応を有する薬剤が存在しないが,海外と同一の診断基準や疾患の重症度の評価スケールは既

    に国内の臨床試験で使用されており,外国人と日本人における ASP8825 の薬物動態に大きな相違

    が無ければブリッジング試験を行うことは可能と考えた。そこで,ブリッジング試験を行う際の

    試験デザイン,さらには データパッケージ案を提示し,総合機構か

    らの意見を得た上で,国内臨床開発を行うこととした。

    【総合機構の意見】

    臨床データパッケージについては,総合機構より下記 3 点について意見を得た。

    ① について

    , ,

    , 。

    , 。

    ② について

    , ,

    ③ について

    について

    。 ,

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    14

    , , , ,

    , 。

    について

    , ,

    について

    , ,

    国内第 II/III 相比較試験(ブリッジング試験)計画(案)の妥当性についても,総合機構より下

    記 3 点について意見を得た。

    ① について

    < >

    (ⅰ)

    (ⅱ) ,

    ② について

    , , , , ,

    , ,

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    15

    ③ について

    , ,

    , 。

    その他の総合機構の意見として,

    , ,

    が示された。さらに,

    , ,

    が必要とされた。

    以上の相談結果を基に,国内第 II/III 相比較試験[CL-0003],国内長期投与試験[CL-0005]

    及び腎機能障害患者を対象とした国内薬物動態検討試験[CL-0012]を計画し,実施した。

    2.5.1.5.3 国内臨床試験デザインと設定根拠・留意点

    2.5.1.5.3.1 国内臨床試験デザイン

    (1)ブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験[CL-0003])

    1)ブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験[CL-0003])の概要

    ブリッジング試験である国内第 II/III 相比較試験[CL-0003]とブリッジング対象試験である海

    外第 III 相比較試験[XP053]の試験概略を表 2.5.1-2 に示した。

    ブリッジング試験[CL-0003]の投与量は,海外第 II 相比較試験(XP021 及び XP045)の有効

    性,安全性の成績より設定したブリッジング対象試験[XP053]での投与量に,中間用量として

    900 mg/日を加えて,プラセボ,600,900 及び 1200 mg/日の 4 群とした。また,ブリッジング試験

    [CL-0003]では,「治験薬投与開始時から治療期終了時までの IRLS の変化量」を主要評価項目

    として設定し,一般的に用いられる医師の 7 段階判定による「医師による CGI の改善評価」は副

    次評価項目とした。その理由は,ブリッジング試験[CL-0003]は,ブリッジング対象試験[XP053]

    との地域間の比較を意図する試験とした位置付けで,有効性の臨床評価指標として優先されるの

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    16

    は国内外でバリデートされている IRLS であり,CGI は副次的に扱うことが適切と考えられたため

    である。

    なお,ブリッジング対象試験[XP053]では主要評価項目(IRLS)のデータ取得にログパッド

    (Log Pad)を使用しているが,ブリッジング試験[CL-0003]では質問票(用紙)を用いた。本

    邦での用紙によるデータ収集は,データの質に影響することはないと考えた。

    表 2.5.1-2 ブリッジング試験[CL-0003]とブリッジング対象試験[XP053]の試験概要 試験名 ブリッジング試験[CL-0003] ブリッジング対象試験[XP053]

    目的

    レストレスレッグス症候群(RLS)患者を対象に,ASP8825 の 600 mg,900 mg,又は 1200 mgを 1 日 1 回投与したときの有効性,安全性並びに薬物動態について,プラセボを対照とする多

    施設共同ランダム化二重盲検群間比較法により

    検討する。 また,同様の試験デザインにより RLS 患者を

    対象に米国で実施されたブリッジング対象試験

    (XP053)結果と比較する。

    主目的: RLS 患者を対象に XP13512 1200 mg を 1 日 1回 12 週間投与し,その有効性をプラセボと比較する。

    副次目的: ・RLS 患者を対象に XP13512 600 mg を 1 日 1回投与し,その有効性を評価する。

    ・治療効果発現時期並びに睡眠,痛み,気分及

    び生活の質の改善を評価する。また,安全性

    及び忍容性を評価する。 治験デザイ

    ン・方法 多施設共同ランダム化二重盲検群間比較法 多施設共同,ランダム化,二重盲検,プラセ

    ボ対照,並行群間比較試験

    投与量

    投与方法

    投与期間

    ASP8825 600 mg,900 mg,1200 mg あるいはプラセボを 1 日 1 回夕食後に経口投与する。仮登録時の選択・除外基準を満たす症例について

    単盲検下でプラセボを 1 週間投与(前観察期)の後,さらに本登録時の選択・除外基準を満た

    す症例については,ランダム化二重盲検下で

    600 mgあるいはプラセボを 3日間投与(漸増期)し,その後,600 mg,900 mg,1200 mg のいずれかの投与量あるいはプラセボを11週と4日間の計 12 週間(治療期:漸増期を含む)投与する。12 週の投与終了後に,600 mg あるいはプラセボを 1 週間投与(漸減期)し,さらに単盲検下でプラセボを 1 週間投与(後観察期)し,経過観察を行った。

    XP13512 600 mg,1200 mg 又はプラセボを,1日 1 回,毎日午後 5 時に食事とともに経口投与した。投与期間は 12 週間とした。なお,最初の3 日間(Day 1~3)は XP13512 1200 mg 群の患者にも XP13512 600 mg を投与した。また,12週間の投与終了後に 7 日間(Day 85~91)の漸減期を設定し,1200 mg 群の患者には XP13512 600 mg を投与した。XP13512 600 mg 群及びプラセボ群の患者には用量を変更せず,XP13512 600 mg 又はプラセボを投与した。

    症例数 安全性解析対象集団:469 例 FAS:468 例 安全性解析対象集団:322 例 MITT 解析対象集団:321 例

    主要評価 項目

    ・IRLS スコア 治療期開始時から治療期終了時までの IRLS スコアの変化量。

    (1)投与終了時の IRLSスコアのベースラインからの変化量(XP13512 1200 mg 対プラセボ) (2)投与終了時の ICGI が“much improved”又は“very much improved”であった患者の比率(%)(XP13512 1200 mg 対プラセボ)

    副次評価 項目

    ・ICGI 投与後(又は中止時)に,治験薬投与開始時

    に対する改善度を 7 段階で評価した。 ・PCGI

    投与後(又は中止時)に,治験薬投与開始時

    に対する改善度を 7 段階で評価した。 ・ピッツバーグ睡眠質問票 ・SF-36v2 ・RLS-QOL ・MOS sleep scale

    (1)投与終了時の IRLSスコアのベースラインからの変化量(XP13512 600 mg 対プラセボ)

    (2)投与終了時の ICGI が“much improved”又は“very much improved”であった患者の比率(XP13512 600 mg 対プラセボ)

    (3)IRLS スコア及び ICGI に基づく Week 1 終了時のレスポンダーの比率

    (4)レスポンス開始までの期間 (5)投与終了時の IRLSスコアのベースラインか

    らの変化量(治療歴別) (6)投与終了時の IRLSスコアのベースラインか

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    17

    試験名 ブリッジング試験[CL-0003] ブリッジング対象試験[XP053]

    副次評価 項目

    らの変化量(ベースライン時 IRLS スコアのカテゴリー別)

    (7)Week 1終了時の IRLSスコアのベースラインからの変化量

    (8)投与終了時の ICGI(治療歴別) (9)Week 1終了時の ICGIスケールでのレスポンダーの比率

    (10)投与終了時の平均 1 日総睡眠時間のベースラインからの変化量

    (11)投与終了時の平均 1 日中途覚醒時間のベースラインからの変化量

    (12)投与終了時の平均 1 日 RLS 疼痛スコアのベースラインからの変化量

    (13)平均 1日RLS疼痛スコアが 30%以上改善したレスポンダー

    (14)平均 1日RLS疼痛スコアが 50%以上改善したレスポンダー

    (15)ベースライン時に平均 1日RLS疼痛スコアが 4 以上であった患者の投与終了時の平均 1日 RLS 疼痛スコアのベースラインからの変化量

    (16)投与終了時の PCGI スケールでのレスポンダーの比率

    (17)Week 1 終了時の PCGI スケールでのレスポンダーの比率

    (18)投与終了時の睡眠アンケートによるレスポンス

    (19)投与終了時の気分評価でのレスポンダーの比率

    (20)投与終了時の POMS Brief Form ドメインスコアのベースラインからの変化量

    (21)投与終了時の MOS sleep scale の 4 つの睡眠ドメインスコアのベースラインからの変化量

    (22)投与終了時の RLS-QOL 概括スコアのベースラインからの変化量

    (23)投与終了時の 24 時間 RLS 記録での 4 時間ごと 7 回の最大 RLS 重症度

    (24)投与終了時の 24 時間 RLS 記録での初回RLS 症状発現時間

    2)ブリッジング成立条件について

    平成 10 年 8 月 11 日付医薬審第 672 号「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要

    因について」及び多地域ブリッジング試験における,ブリッジング試験としての役割を果たすよ

    うに計画された試験に求められる考慮すべき点について記載された平成 18 年 10 月 5 日付事務連

    絡「「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」に関する Q&A に

    ついて(その 2)」を参考にすると,今回のブリッジング試験[CL-0003]とブリッジング対象試

    験[XP053]のブリッジング成立の条件を構成する主な要素としては,「地域間での比較を意図し

    た評価項目」,「地域ごとに独立した試験結果」,「地域間で類似した用量反応関係」が挙げられる。

    「地域間の比較を意図した評価項目」については,それぞれの試験で設定されている IRLS の投

    与前からのスコアの変化量及び CGI の改善[very much improved(とても良くなった)+much

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    18

    improved(良くなった)]の割合(%)の 2 候補のうち,国内外でバリデートされた評価尺度であ

    る前者の IRLS による評価がより望ましいと考えられた。

    「地域ごとに独立した試験結果」については,ブリッジング対象試験[XP053]では,IRLS の

    投与前からのスコアの変化量及び CGI(Investigator)の改善[very much improved(とても良くなっ

    た)+much improved(良くなった)]の割合(%)を有効性のコ・プライマリー・エンドポントと

    してプラセボに対する本剤の優越性を検証し,またブリッジング試験[CL-0003]では,IRLS の

    投与前からのスコアの変化量を有効性のプライマリー・エンドポイントとし,プラセボに対する本

    剤の優越性及び本剤の用量反応性を検証することとした。

    「地域間で類似した用量反応関係」に関しては,IRLS の投与前からのスコア変化量についての

    用量反応関係を図示し,ブリッジング試験[CL-0003]とブリッジング対象試験[XP053]での類

    似性を視覚的に確認した。また,CGI の改善[very much improved(とても良くなった)+much

    improved(良くなった)]の割合(%)も用量反応の類似性の説明を補強する評価の候補として考

    えた。

    表 2.5.1-3 に,ブリッジングの成立条件についてまとめた。これらの条件を満たすとき,ブリッ

    ジング試験[CL-0003]とブリッジング対象試験[XP053]のブリッジングが成立すると考えた。

    表 2.5.1-3 ブリッジングの成立条件

    地域/試験 地域間での比較を意図した評価項目(有効性)の地域成績

    地域間での比較を意図した評価項目

    (有効性)の用量反応の類似性

    米国/XP053 IRLS 及び CGI においてプラセボに対する統計的優越性あり

    IRLS スコア変化における用量反応関係の視覚的な類似性,補足的に CGIの改善の割合

    日本/CL-0003 IRLS においてプラセボに対する統計的優越性あり

    なお,安全性の評価に関して,海外の臨床試験から浮動性めまい,傾眠等の主として中枢性の

    有害事象の発現が認められ,日本人においても同様の有害事象の発現が予想された。ベネフィッ

    ト/リスクの比が日本人と欧米人で大きく変わる可能性は少ないと想定し,薬剤評価の基本となる

    患者背景,曝露量,曝露期間等が本剤の安全性に及ぼす影響は少ないと考えた。

    (2)国内長期投与試験[CL-0005]

    国内長期投与試験[CL-0005]では,本剤 600 mg/日を 3 日間投与し(漸増期),その後 52 週ま

    で 1200 mg を基本用量として 1 日 1 回,夕食後に経口投与する治験実施計画書とした(12 週時点

    で 900 mg への減量あるいは 1500 mg への増量を可能とする)。52 週間の投与の後,再び 600 mg

    を 7 日間投与する漸減期を設定した。対象患者の選択基準/除外基準,併用治療等はブリッジング

    試験[CL-0003]とほぼ同一とした。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    19

    2.5.1.5.3.2 国内臨床試験デザインの設定根拠と留意点

    国内第 II/III 相比較試験[CL-0003]及び国内長期投与試験[CL-0005]は,試験デザインの一部

    を除き共通する点が多いため,主にブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験[CL-0003])の治

    験実施計画書の設定根拠や留意点を以下に示した。なお,治験実施計画書を立案するにあたり検

    討した主な事項は,下記 9 項目であった。

    ① 対象患者について

    ② 選択基準・除外基準について

    ③ 夕食後投与とすることについて

    ④ プラセボ,600,900,1200 mg 投与群を設定することについて

    ⑤ 増減量の基準について

    ⑥ 併用禁止薬について

    ⑦ 主要評価項目及び副次評価項目について

    ⑧ 目標症例数と検出力について

    ⑨ フォローアップ期間(後観察期)の設定について

    (1)ブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験[CL-0003])

    ① 対象患者について

    RLS は大きく一次性(特発性)と二次性の 2 種類に分けられる。一次性 RLS とは,RLS に対し

    て併存する原因が確認されていないものであり,二次性 RLS とは,他の疾患や症状,状態,薬物

    療法等,RLS の原因となるものが確認されているものである。二次性 RLS の主な原因と考えられ

    るものとして,鉄欠乏,腎不全,腎透析,妊娠,末梢神経障害,抗うつ薬や抗精神病薬の使用,

    パーキンソン病等が挙げられる。二次性 RLS はこれらの疾患や症状の改善により,RLS の症状が

    改善することが知られている。

    これまでに海外で実施された臨床試験では,一次性 RLS 患者を主な対象としており,二次性

    RLS 患者を対象とした臨床試験は実施されていない。これは,他の要因で症状が変化する可能性

    が大きい二次性RLS患者は薬剤の有効性の評価の対象として適していないと考えられたためと思

    われる。このため,本邦におけるブリッジング試験[CL-0003]でも,その主な対象は一次性 RLS

    になると考えられた。

    なお,RLS 財団(米国)より 2004 年に発表され,世界で広く使われている RLS 治療アルゴリ

    ズムでは,一次性又は二次性の区別は行われていない(図 2.5.1-2,図 2.5.1-3,図 2.5.1-4 及び図

    2.5.1-5)19)。本治療アルゴリズムでは,RLS の治療は非薬物療法と薬物療法の二つに大別される。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    20

    図 2.5.1-2 RLS の非薬物療法と薬物療法(一部改変)

    図 2.5.1-3 持続性 RLS の治療アルゴリズム

    レストレスレッグス症候群の診断

    非薬物療法 薬物療法

    鉄補充を施行

    レストレスレッグス症候

    群の増悪を招くおそれの

    ある薬物の作用を考慮

    禁カフェイン・禁酒・禁煙を

    推奨

    注意をそらす工夫

    重症度に応じた薬物選択

    ドパミン受容体作動薬

    (ドパミンアゴニスト)

    L-

    ドーパ

    オピオイド

    ベンゾジアゼピン

    切り替え

    持続性レストレスレッグス症候群

    非薬物療法 ドパミンアゴニスト

    低力価のオ

    ピオイド

    ガバペンチン

    非薬物療法の

    詳細略

    切り替え

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    21

    図 2.5.1-4 間欠性 RLS の治療アルゴリズム

    図 2.5.1-5 治療抵抗性 RLS の治療アルゴリズム

    持続性 RLS(症状発現が週 2 回以上)では,毎日継続した薬物療法が必要となる。国内外の臨

    床試験では,前観察期(7 日間)に 4 日以上の症状があった患者が組み入れ対象となる。

    一方,間欠性 RLS(症状発現が週 1 回以下)では,まず二次性 RLS を引き起こす疾患・身体基

    盤がある場合は,非薬物療法(基礎疾患の治療,原因薬物の投与中止等)が行われる。その非薬

    物療法によって症状抑止が不十分な場合,薬物療法が必要となる。また,症状が改善されたとし

    ても,疾患の進行に伴って薬物療法が必要になる。なお,疾患の進行に伴って薬物療法が必要に

    なる場合の多くは,持続性 RLS に分類されると思われる。最後に治療抵抗性 RLS とは,ドパミン

    アゴニストによる標準的な治療において効果を示さない持続性 RLS を指しており,このような治

    間欠性レストレスレッグス症候群

    非薬物療法

    鉄補充を施行

    レストレスレッグス症候

    群の増悪を招くおそれの

    ある薬物の作用を考慮

    禁カフェイン・禁酒・禁煙を

    推奨

    注意をそらす工夫

    ベンゾジアゼピン

    L-

    ドーパ

    低力価のオピオイド

    ドパミンアゴニスト

    薬物療法

    治療抵抗性レストレスレッグス症候群

    ガバペンチン

    に切り替え 高力価の オピオイドに 切り替え

    ベンゾジアゼピン オピオイド 又は ガバペンチンを 追加投与

    他のドパミン アゴニストに 切り替え

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    22

    療抵抗性 RLS に対しては,他のドパミンアゴニストへの切り替えや,ガバペンチンへの切り替え

    もしくは追加投与が推奨されている。

    以上のことから,ブリッジング試験[CL-0003]の主な対象は,ブリッジング対象試験[XP053]

    と同様に二次性 RLS の主な要因を除外し,一次性 RLS とした。

    なお,以下に示すように二次性 RLS の患者が臨床試験に組み入れられる可能性はあるが,一部

    組み入れられたとしても評価への影響は少ないと考えられる。二次性 RLS の原疾患には,「頻度

    が高い群」として,鉄欠乏性貧血,慢性腎不全,妊娠等,「時に RLS を認める群」として,全身

    疾患,神経疾患,欠乏症(葉酸欠乏症,ビタミン B 欠乏症)等がある。これらのうち,欠乏症(葉

    酸欠乏症,ビタミン B 欠乏症)については除外しておらず,臨床試験に組み入れられる可能性が

    ある。また,欠乏症の患者については,臨床症状がない場合には特に診断を受けることなく生活

    しているのが現状と思われ,除外基準を設けたとしても臨床試験に組み入れられる可能性は否定

    できない。

    ② 選択基準・除外基準について

    ブリッジング試験[CL-0003]及びブリッジング対象試験[XP053]の選択基準・除外基準の対

    比表を表 2.5.1-4 に示し,ブリッジング対象試験[XP053]からの変更点及び変更理由を表 2.5.1-5

    に示した。選択基準における変更点は年齢,BMI,入院/外来の別等で,除外基準とともに大き

    な変更はなかった。

    なお, 相談の照会事項にあった,ブリッジング試験[CL-0003]

    の選択基準(3)の設定については,「・・・。RLS に対する治療を受けている場合は,その治療

    開始前 1 カ月間に 15 日以上の RLS 症状がある患者」としているが,選択基準(4)~(7)を設

    定することにより,RLS に対する治療によって症状が改善していた患者が組み入れられる可能性

    はない。すなわち,選択基準(3)は単に対象選択のスクリーニングのための規定であり,本試験

    で患者が治験対象として適格と判断されるのは,まず選択基準(6)あるいは(7)に示す薬剤の

    十分な wash out 後に設けられた前観察期(1週間)において選択基準(4),(5)に示す基準を満

    たすことが必要となる。

    -ブリッジング試験(国内第 II/III 相比較試験[CL-0003])実施計画より抜粋-

    選択基準

    (3)前観察期開始時前の 1 カ月間において,RLS の症状が 15 日以上ある患者。RLS に対する治療を受けている場合は,その治療開始前 1 カ月間に 15 日以上の RLS の症状がある患者。

    (4)前観察期(1 週間)で 4 日以上 RLS の症状(夕方,夜)が認められた患者。 (5)前観察期開始時と治療期開始時において,IRLS スコアが 15 以上の患者。 (6)前観察期開始日の少なくとも 1 週間前から,ドパミン作動薬,ガバペンチンを継続服用して

    いない患者。 (7)前観察期開始日の少なくとも 2 週間前から,RLS に対する治療(オピオイド製剤,ベンゾジ

    アゼピン製剤,長時間作用型ドパミン作動薬)を受けていない患者。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    23

    因みに,海外で実施された第 II 相比較試験(XP021 及び XP045)に組み入れられた患者は,す

    べてRLSに対する治療を受けていない患者であった。海外では,RLSに適応を有する薬剤があり,

    これらの薬剤による治療を受けた患者が組み入れられる可能性は十分ある。日本では,RLS に適

    応を有する薬剤はないが,RLS に対する治療を受けた患者が組み入れられる可能性も考えられる

    ことから,ブリッジング対象試験[XP053]と同様の選択基準を設定した。以上の選択基準の設

    定により,前治療薬が評価に与える影響を少なくすることが可能と考えた。

    表 2.5.1-4 ブリッジング試験[CL-0003]及びブリッジング対象試験[XP053]の選択基準・除

    外基準 基準 ブリッジング試験[CL-0003] ブリッジング対象試験[XP053]

    選択基準 (1)同意取得時の年齢が 20 歳以上 80 歳以下

    の外来患者。性別不問。 (2)国際 RLS 研究グループの RLS 診断基準

    により RLS と診断された患者。 (3)前観察期開始時前の 1 カ月間において,

    RLS の症状が 15 日以上ある患者。RLS に対する治療を受けている場合は,その治療開始

    前 1 カ月間に 15 日以上の RLS の症状がある患者。

    (4)前観察期(1 週間)で 4 日以上 RLS の症状(夕方,夜)が認められた患者。

    (5)前観察期開始時と治療期開始時において,IRLS スコアが 15 以上の患者。

    (6)前観察期開始日の少なくとも 1 週間前から,ドパミン作動薬,ガバペンチンを継続服

    用していない患者。 (7)前観察期開始日の少なくとも 2 週間前か

    ら,RLS に対する治療(オピオイド製剤,ベンゾジアゼピン製剤,長時間作用型ドパミン

    作動薬)を受けていない患者。 (8)妊娠の可能性がある女性の場合,治験期間終了まで避妊に同意した患者。

    (9)BMIが 18.5以上 30未満の患者。(BMI = 体重(kg)÷身長(m)2)

    (10)前観察期開始日における Cockcroft-Gault式により推定されたクレアチニンクリアラ

    ンス値が 60 mL/min 以上の患者。 (11)文書による同意が得られている患者。

    (1)年齢 18 歳以上の患者,性別不問 (2)International Restless Legs Syndrome Study

    Group(IRLSSG)診断基準に基づく RLS 患者

    (3)過去 1 カ月間に 15 日以上 RLS 症状 があった患者,又は現在治療中である場合,

    治療開始前の RLS 症状が同等の頻度であった患者

    (4)ベースライン期間中連続する 7 日間中 4日以上 RLS 症状が記録された患者

    (5)第 1 来院日及び第 2 来院日の IRLS スコアが 15 以上の患者

    (6)ベースライン期 2 週間以上前にドパミンアゴニスト及び/又はガバペンチンを中止

    した患者 (7)ベースライン期 2 週間以上前に RLS の他の治療(オピオイド類,ベンゾジアゼピン類

    等)を中止した患者 (8)妊娠可能な女性の場合,本治験終了まで避妊することに同意する患者

    (9)BMI(体型指数)が 34 kg/m2以下の患者(10)クレアチニンクリアランス推定値が

    60 mL/min 以上の患者 (11)本治験開始前に施設内治験審査委員会が承認した同意書に署名した患者

    (12)本治験に自発的に参加し,手順を遵守できる患者

    除外基準 (1)RLS の評価に影響を及ぼす睡眠時無呼吸

    などの睡眠障害をもつ患者。 (2)ドパミン作動薬の治療により,RLS 症状のオーグメンテーションやリバウンドの既

    往がある患者。 (3)神経疾患や運動障害を合併している患者。(糖尿病性神経障害,パーキンソン病,多発

    性硬化症,ジスキネジア,ジストニアなど)

    (4)コントロール不良の糖尿病を合併している患者(HbA1C>7.5%,過去6カ月の検査歴),鉄欠乏性貧血の患者,あるいは鎮静・催眠剤

    を服用している患者。 (5)医師の判断において,ECG*や臨床検査**で臨床的に問題となる異常がある患者。

    (1)RLS の評価に大きな影響を与える可能性のある睡眠障害(睡眠時無呼吸等)のある患

    者 (2)ドパミンアゴニスト治療で RLS 症状増強あるいはリバウンドの既往歴のある患者

    (3)神経疾患あるいは運動障害(糖尿病性神経障害,パーキンソン病,多発性硬化症,ジ

    スキネジア及びジストニアなど)のある患者

    (4)他の臨床症状(コントロール困難な糖尿病[すなわち,過去 6 カ月において HbA1Cが 7.5%を超える],鉄欠乏性貧血等)のある患者,又は RLS の治療効果に影響を与える可能性のある薬物療法(鎮静催眠薬等)を受

    けている患者

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    24

    基準 ブリッジング試験[CL-0003] ブリッジング対象試験[XP053] *:治療を必要とする所見が認められる場合。**:「医薬品等の副作用の重篤度分類基準について」(平成 4 年 6 月 29 日薬安第 80 号)のグレード 3 を参考にする。

    (6)血清フェリチン 20 ng/mL 未満の患者。 (7)中等度あるいは重度のうつ病(DSM-IV)

    を合併している患者。 (8)アルコール依存症又は薬物中毒の既往のある患者,又は過去 1 年間に濫用又は依存症を経験した患者。

    (9)交代勤務,職業運転手,危険な機械操作に従事する患者。

    (10)妊娠中*,もしくは治験期間中に妊娠を希望している女性又は授乳期の女性。 *:妊娠検査による確認を行う。

    (11)臨床的に重大あるいは不安定な状態にある患者(例えば,悪性腫瘍の既往,重篤な心

    疾患*,肝疾患*,腎疾患*,血液疾患*,免疫不全,精神疾患を有する患者)。 *:「医薬品等の副作用の重篤度分類基準について」(平成 4 年 6 月 29 日薬安第 80 号)のグレード 3 を参考にする。

    (12)ガバペンチンに対し過敏症の既往のある患者。

    (13)前観察期開始日前 12 週間以内に他の治験又は製造販売後臨床試験に参加した患者。

    (14)以前に ASP8825 の治験薬を服用した患者。

    (15)その他,治験責任医師又は治験分担医師が不適当と判断した患者。

    (5)スクリーニング時の心電図あるいは臨床検査値に臨床上重大な異常があると治験責

    任(分担)医師が判断した患者 (6)血清フェリチン濃度が 20 ng/mL 未満の患者

    (7)「DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」にて中等度又は重度のうつ病である患

    者 (8)本治験登録前 12 カ月以内に薬物乱用(アルコールあるいは薬物)あるいは薬物依存症

    の既往歴のある患者 (9)妊娠あるいは授乳中の女性患者 (10)本治験の来院予定,実施手順又は治験薬投与を遵守できないと治験責任(分担)医師

    が判断した患者 (11)本治験の初回来院前 1 カ月以内に他の医薬品あるいは医療機器の治験に参加してい

    た患者 (12)臨床上重大な,あるいは不安定な臨床症状(がん,心血管系疾患,肝臓あるいは腎臓

    疾患,免疫不全,精神疾患の既往歴等)のあ

    る患者 (13)XenoPort 社が依頼する他の XP13512 の臨床試験に登録されていた患者

    表 2.5.1-5 ブリッジング対象試験[XP053]からの変更点と変更理由

    基準 ブリッジング試験[CL-0003] ブリッジング対象試験[XP053]

    選択基準 変更点①

    (1)同意取得時の年齢が 20 歳以上 80 歳以下の外来患者。性別不問。

    変更点①

    (1)年齢 18 歳以上の患者,性別不問。

    変更理由①

    本邦では,成人 20 歳以上とし,本疾患の患者層をほぼ網羅する 80 歳を上限とした。本疾患は概日リズムの影響を受けることから,入院患者と外来患者において生活環境の違いが評価に

    影響を及ぼすことが考えられるため外来患者に限定した。

    変更点②

    (9)BMI が 18.5 以上 30 未満の患者。 変更点②

    (9)BMI(体型指数)が 34kg/m2以下の患者。変更理由②

    海外の選択基準では「BMI が 34 以下の患者」となっているが,外国人と日本人の体格の差もあり,同一基準とすると日本人では肥満 2 度の患者が該当する。

    肥満症と睡眠時無呼吸症候群とは関連が深いため,日本肥満学会肥満症診断基準による肥満 1度までに限定するとともに,体格の違いによる用量のバラツキを制限するために BMI の規定を設定した。

    除外基準 変更点①

    (12)ガバペンチンに対し過敏症の既往歴のある患者。

    変更点①

    記載なし。

    変更理由①

    患者に対する安全性配慮のため設定した。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    25

    基準 ブリッジング試験[CL-0003] ブリッジング対象試験[XP053] 変更点②

    (11)臨床的に重大あるいは不安定な状態にある患者(例えば,悪性腫瘍の既往,重篤

    な心疾患*,肝疾患*,腎疾患*,血液疾患

    *,免疫不全,精神疾患を有する患者)。

    *:「医薬品等の副作用の重篤度分類基準

    について」(平成 4 年 6 月 29 日薬安第 80号)のグレード 3 を参考にする。

    (13)前観察期開始日前 12 週間以内に他の治験または製造販売後臨床試験に参加した

    患者。

    (15)その他,治験責任医師又は治験分担医師が不適当と判断した患者。

    変更点② (10)本治験の来院予定,実施手順又は治験

    薬投与を遵守できないと治験責任(分

    担)医師が判断した患者

    (11)本治験の初回来院前 1 カ月以内に他の医薬品あるいは医療機器の治験に参加

    していた患者

    (12)臨床上重大な,あるいは不安定な臨床症状(がん,心血管系疾患,肝臓あるい

    は腎臓疾患,免疫不全,精神疾患の既往

    歴等)のある患者

    変更理由②

    ブリッジング対象試験[XP053]の除外基準(10),(11),(12)は,ブリッジング試験[CL-0003]の除外基準のそれぞれ(15),(13),(11)に相当し,臨床試験実施上,差はないと考えた。

    ③ 夕食後投与とすることについて

    ブリッジング対象試験[XP053]とブリッジング試験[CL-0003]における投与方法についての

    相違は,日本と海外の食習慣の違いにより,日本において午後 5 時に軽食とともに治験薬を服用

    することは困難と考えられたため,ブリッジング試験[CL-0003]では夕食後の服用とした。いず

    れの投与方法であっても,本疾患の有効性が期待される就寝時間帯には十分高い血中ガバペンチ

    ン濃度が期待できると考えた。

    臨床試験実施後の検討であるが,症状発現時間について,国内の臨床試験成績はないため,海

    外の臨床試験成績について検討した。有病率(24 時間 RLS 記録を用いたベースライン時の 4 時間

    ごとの評価で RLS 症状があった患者の比率)に関するデータを表 2.5.1-6 に示した。

    レストレスレッグス症候群は,夜間安静時(特に睡眠時間帯)に増悪する疾患である。海外臨

    床試験(XP053,XP083)では,日中(午前 8 時から午後 4 時:約 45%)に比べ夜間(午後 8 時か

    ら午前 0 時:87.8%)での RLS 症状の訴えがより多い。

    表 2.5.1-6 24 時間 RLS 記録を用いたベースライン時の 4 時間ごとの評価で RLS 症状があった

    患者の比率(%)(XP053,XP083) 試験番号 XP053 XP083 合計

    n 313 121 434 8 AM to 12 PM 135 (43.3)a 51 (42.1) 186 (43.0)b 12 PM to 4 PM 147 (47.0) 54 (44.6) 201 (46.3) 4 PM to 8 PM 173 (55.3) 68 (56.2) 241 (55.5)

    6 PM to 10 PM 228 (72.8) 91 (75.2) 319 (73.5) 8 PM to 12 AM 274 (87.5) 107 (88.4) 381 (87.8) 12 AM to 4 AM 219 (70.0) 91 (75.2) 310 (71.4) 4 AM to 8 AM 171 (54.6) 69 (57.0) 240 (55.3)

    a:n=312 b:n=433 例数(比率)

    海外第 III 相比較試験[XP052]では,RLS の症状発現抑制時間(12 週終了時前日の午前 8 時か

    ら 24 時間)を調査した。本剤投与後,2~3 時間後からその発現が抑制され,5~7 時間で症状発

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    26

    現抑制がピークに達した。本剤で比較的多く発現する傾眠が Tmax(投与後 6 時間前後)付近で最

    も強くなると仮定した場合,その時間と RLS の症状が抑えられる時間は同じ時間帯となる。夕刻

    に投与した場合,傾眠が最も強くなる時間帯は,入眠時刻あるいは睡眠中となる夜間であり,傾

    眠は起こるが同時に RLS の症状発現及び中途覚醒も抑えられる可能性がある。さらに,患者に確

    実に服薬してもらうためには,規則正しいリズムで服薬してもらうことが適切と考えられること

    から,食事に合わせた投与とすることで「飲み忘れ」を回避できる可能性がある。

    次に,本剤の薬物動態の観点から検討した。海外で実施した第 I 相単回投与試験

    [XP072/CL-0001]では,日本人被験者に本剤 1800 mg を食後投与したとき,Tmax の平均値は 6.33

    時間と,絶食時に比べガバペンチン濃度のピークを約 2 時間遅らせ,Cmax 及び AUCinfをそれぞれ

    11%及び 21%増加させた。これらの成績は,RLS の症状発現抑制が投与後 5~7 時間で最も強く

    なることが観察された海外第 III 相比較試験[XP052]の成績を支持するものである。

    以上より,RLS の特徴である夜間安静時(特に睡眠時間帯)の症状を改善するためには,夕食

    後の投与が妥当と考える。

    なお,海外臨床試験(XP053,XP052 及び XP081)では,いずれも「毎日午後 5 時に軽食とと

    もに経口投与」とされているが,海外の投与方法自体は食後投与に相当することから,本邦のブ

    リッジング試験[CL-0003]で「夕食後に経口投与」としても,用法の違いによる薬物動態への影

    響は少ないと考えられた。

    ④ プラセボ,600,900,1200 mg 投与群を設定することについて

    ブリッジング対象試験である海外第 III 相比較試験[XP053]における投与量は,海外第 II 相比

    較試験(XP021,XP045)の有効性及び安全性の成績より決定されている。XP021 及び XP045 は

    いずれも 2 週間の試験であり,XP021 ではプラセボ及び 1800 mg が,XP045 ではプラセボ,600

    及び 1200 mg が投与されている。これらの 2 試験の成績から,1 回 1200 mg,1 日 1 回 2 週間投与

    において,有効性の評価項目(IRLS スコアの平均変化量及び ICGI に基づくレスポンダー率)で

    有意に優れる効果が示されたが,1200 mg 以上の高用量としてもさらなる改善は期待できないと

    考えられた(表 2.5.1-7)。さらに,1 日 1800 mg 投与は,1 日 1 回 1200 mg 投与に比べて浮動性め

    まいの発現が増加した(表 2.5.1-8)。本剤 1200 mg はガバペンチン(Neurontin®)の 625 mg に相

    当し,同用量のガバペンチンでは,安全性に特に問題はないと考えられている。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    27

    表 2.5.1-7 RLS 患者に対する有効性のまとめ:海外第 II 相比較試験(XP021 及び XP045)でのIRLS スコアの平均変化量及び CGI に基づくレスポンダー率

    試験番号 XP021 XP045

    投与群 プラセボ n=34 1800 mg a

    n=34 プラセボ

    n=33 600 mg (QD)

    n=29 1200 mg (QD)

    n=32 IRLS スコア(2 週後のベースライ

    ンからの変化量) −1.9 ± 6.25 −12.1 ± 6.45 −8.9 ± 7.72 −9.1 ± 5.95 −16.1 ± 7.93

    IRLS スコア(1 週後のベースラインからの変化量) −3.7 ± 5.96 −11.7 ± 7.52 −7.8 ± 6.36 −8.5 ± 6.30

    b −14.2 ± 8.49b

    医師の概括有効性評価(ICGI) (much + very much improved) 14.7% 79.4% 48.5% 58.6% 81.3%

    患者の概括有効性評価(PCGI) (much + very much improved) 14.7% 85.3% 45.5% 44.8% 81.3%

    平均値 ± 標準偏差 a:午後 5 時に 600 mg,就寝 1 時間前に 1200 mg を服用,b:n=28

    表 2.5.1-8 RLS 患者に対する安全性のまとめ:海外第 II 相比較試験(XP021 及び XP045)での

    投与群別有害事象発現率(いずれかの本剤群で有害事象発現率が 5%以上)

    有害事象 プラセボ 600 mg 1200 mg 1800 mg

    XP045 n=33

    XP021 n=36

    XP045 n=29

    XP045 n=33

    XP021 n=36

    浮動性めまい 3.0 5.6 13.8 18.2 27.8 傾眠 15.2 2.8 13.8 36.4 30.6 下痢 0 0 3.4 6.1 0 頭痛 3.0 2.8 10.3 0 5.6 鎮静 0 0 0 9.1 0 平衡障害 0 0 0 6.1 8.3 不眠症 0 0 0 6.1 5.6 悪心 3.0 0 3.4 3.0 5.6 疲労 0 0 3.4 3.0 5.6 口内乾燥 0 0 0 3.0 5.6 感覚鈍麻 0 0 0 0 5.6

    発現率(%)

    以上の成績を基に,XenoPort 社と FDA が協議した結果,FDA は海外第 II 相比較試験(XP021,

    XP045)は 2 週間投与時の成績であり,用量反応関係を結論付けるには投与期間が短いこと(3 カ

    月以上の投与期間が必要),用量範囲が不十分であること(FDA としては,2400 mg まで含めた

    検討が必要との見解),同一治験実施計画内での検討が必要であることを指摘した。このため,

    FDA は第 III 相比較試験で 1200 mg 群を選択することには同意するが,二本目の検証試験である

    海外第 III 相比較試験[XP053]では,600 mg 群を追加すること,また用量反応関係を明確化する

    目的から,海外第 II 相比較試験[XP081]として本剤の 600,1200,1800 及び 2400 mg 群の有効

    性の検討を行うことを指示し,XenoPort 社はこれを受け入れた。

    この結果,ブリッジング対象試験[XP053]ではプラセボ,600 及び 1200 mg 群が設定されたた

    め,ブリッジング試験[CL-0003]では同様の投与群を設定するとともに,海外第 II 相比較試験

    [XP045]の成績では,1200 mg 群で浮動性めまい及び傾眠がやや多く認められたため,安全性の

    観点から 900 mg 群を追加した。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    28

    ⑤ 増減量の基準について

    本剤の活性本体であるガバペンチンは,投与初期に眠気,ふらつき等の症状が現れることがあ

    り,また,服薬を急に中止すると不安,吐き気,痛み,発汗等が起こる可能性があると報告され

    ている。また,てんかん治療において,連用中における投与量の急激な減量ないし投与を中止す

    る場合には,てんかん発作の増悪又はてんかん重積状態が現れることがあるため,投与を中止す

    る場合には,最低 1 週間をかけて徐々に減量するなど慎重に行うことと添付文書に記載されてい

    る。本剤がガバペンチンのプロドラッグであることから,ガバペンチンの用法を参考とし,また

    ブリッジング対象試験である海外第 III 相比較試験[XP053]とデザインを合わせた。すなわち,

    ブリッジング試験[CL-0003]の本剤投与群では漸増期として初期投与量 600 mg の服薬期間 3 日

    間を設定し,治療期中はそれぞれ 600,900,1200 mg を投与し,その後,投与量 600 mg で 7 日間

    の漸減期を設定した。さらに,漸減期用治験薬投与終了後の離脱症状を確認するため 1 週間のプ

    ラセボ投与による後観察期を設定することとした。

    ⑥ について

    総合機構との 相談において,以下の見解を得ている。

    【総合機構の見解】

    , , , , ,

    , ,

    以上の総合機構の見解を受け, では, については,

    , , , ,

    こととした。

    , 。

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    29

    (7) について

    , , , ) 。 , , ,

    ( ) 。

    ⑦ 主要評価項目及び副次評価項目について

    ブリッジング対象試験[XP053]及びブリッジング試験[CL-0003]の主要評価項目と副次評価

    項目の概略を表 2.5.1-9 に示した。

    海外の RLS を対象とした臨床試験では,一般的に IRLS スコアのベースラインからの変化量が

    プライマリーエンドポイントに用いられており,海外ではドパミンアゴニストのロピニロール,

    プラミペキソール及びロチゴチンが承認されている。ASP8825 の米国における RLS を対象にした

    臨床試験でも,IRLS スコアのベースラインからの変化量並びに ICGI がプライマリーエンドポイ

    ントとされている。このため,本邦のブリッジング試験[CL-0003]では,米国のブリッジング対

    象試験[XP053]と同様に,IRLS スコアのベースラインからの変化量を主要評価項目とし,ICGI

    及び PCGI については,臨床的な意義を検討する上で有用な評価項目と考え,副次評価項目とし

    た。また, 相談における総合�