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1 昭和大学薬学雑誌 第4巻 第1号 総 説 薬・異物や生体内化合物の代謝を制御するmicroRNA 中島 美紀 金沢大学医薬保健研究域薬学系 薬物代謝化学研究室 要  旨 microRNA (miRNA) はタンパク質をコードしない 22 塩基程度の小さな RNA であり,標的とする mRNA の主に 3’ 非翻訳領域に結合して翻訳を抑制あるいは mRNA 分解を促進することにより,遺 伝子発現を負に制御する。ヒトでは 2,000 種以上の miRNA が同定され,全遺伝子産物の 60%以上が miRNAによって発現制御されると推定されている.miRNAは様々な生命現象や病態の発症・進行 に関わっていることから,新しい治療標的またはバイオマーカーとして注目を集めている.著者らは, 主要な薬物代謝酵素であるシトクロム P450 のヒトにおけるいくつかの分子種が miRNA によって発 現制御されていることを明らかにしてきた.また,核内受容体や転写因子が miRNA によって制御さ れることが,その下流遺伝子の発現にも影響を与えている.シトクロム P450 は薬物のみならず環境 汚染物質の解毒や代謝的活性化,内因性化合物の生合成も触媒することから,miRNA による発現制 御が薬の効果や副作用に認められる個人差の要因となり,また発癌感受性およびホルモンバランス を左右していると考えられる.異物やストレス,病態などによる miRNA の発現変動とその影響の解 析および miRNA を絡めた遺伝子多型解析は,薬物代謝能の個人差の理解につながり,創薬や薬の適 正使用に有用な情報を与えるであろう. キーワード :転写後調節,薬物代謝酵素,薬物動態,個人差,感受性 1.はじめに ゲノム DNA の全塩基配列の解読により生物遺 伝情報が明らかになると,それを利用して個々 の遺伝子の働きを解析する研究活動が展開され た.次いで,ポストゲノム時代の象徴ともいえる トランスクリプトーム解析が進められ,膨大な 数のノンコーディング(タンパク質をコードしな い)RNAが転写されていることが明らかになっ た.ヒトゲノムの98%はノンコーディング領域で, タンパク質をコードしている領域はわずか 2%に 過ぎない 1) .そして,特別な生理活性をもたない と考えられていたノンコーディング RNA に遺伝 子発現制御などの重要な機能が備わっていること が明らかになってきた.このような機能性RNA の1つにmicroRNA (miRNA)がある.miRNA は標的とするmRNAに結合して翻訳を抑制した りmRNAの分解を促進したりすることで,発 現を負に制御する.ヒト全mRNAの60%以上が miRNAによって発現調節されていると推定され ており 2) ,さまざまな生物学的プロセスや疾患の 発症・進行など,多岐にわたる生命現象に関与す ることが示されている. 主要な薬物代謝酵素であるシトクロム P450 は, 薬や環境汚染物質などの解毒や代謝的活性化,な らびに生体内化合物の生合成を触媒する.そのほ とんどは核内受容体による転写制御を受け,また 遺伝子多型が存在することが,発現量や酵素活性 の個人差の要因と考えられてきた.しかし,代 謝能の個人差を完全には説明できていなかった. 近年,シトクロムP450や核内受容体の発現調節

総 説...近年,シトクロムP450や核内受容体の発現調節 昭和大学薬学雑誌 第4巻 第1号 ―2― sapiens)とマウス(Mus musculus)でオルソログで

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昭和大学薬学雑誌 第4巻 第1号

総 説

薬・異物や生体内化合物の代謝を制御するmicroRNA

中島 美紀金沢大学医薬保健研究域薬学系 薬物代謝化学研究室

要  旨

microRNA (miRNA) はタンパク質をコードしない22塩基程度の小さなRNAであり,標的とするmRNAの主に3’-非翻訳領域に結合して翻訳を抑制あるいはmRNA分解を促進することにより,遺伝子発現を負に制御する。ヒトでは2,000種以上のmiRNAが同定され,全遺伝子産物の60%以上がmiRNAによって発現制御されると推定されている.miRNAは様々な生命現象や病態の発症・進行に関わっていることから,新しい治療標的またはバイオマーカーとして注目を集めている.著者らは,主要な薬物代謝酵素であるシトクロムP450のヒトにおけるいくつかの分子種がmiRNAによって発現制御されていることを明らかにしてきた.また,核内受容体や転写因子がmiRNAによって制御されることが,その下流遺伝子の発現にも影響を与えている.シトクロムP450は薬物のみならず環境汚染物質の解毒や代謝的活性化,内因性化合物の生合成も触媒することから,miRNAによる発現制御が薬の効果や副作用に認められる個人差の要因となり,また発癌感受性およびホルモンバランスを左右していると考えられる.異物やストレス,病態などによるmiRNAの発現変動とその影響の解析およびmiRNAを絡めた遺伝子多型解析は,薬物代謝能の個人差の理解につながり,創薬や薬の適正使用に有用な情報を与えるであろう.

キーワード :転写後調節,薬物代謝酵素,薬物動態,個人差,感受性

1.はじめにゲノムDNAの全塩基配列の解読により生物遺

伝情報が明らかになると,それを利用して個々の遺伝子の働きを解析する研究活動が展開された.次いで,ポストゲノム時代の象徴ともいえるトランスクリプトーム解析が進められ,膨大な数のノンコーディング(タンパク質をコードしない)RNAが転写されていることが明らかになった.ヒトゲノムの98%はノンコーディング領域で,タンパク質をコードしている領域はわずか2%に過ぎない1).そして,特別な生理活性をもたないと考えられていたノンコーディングRNAに遺伝子発現制御などの重要な機能が備わっていることが明らかになってきた.このような機能性RNAの1つにmicroRNA (miRNA)がある.miRNA

は標的とするmRNAに結合して翻訳を抑制したりmRNAの分解を促進したりすることで,発現を負に制御する.ヒト全mRNAの60%以上がmiRNAによって発現調節されていると推定されており2),さまざまな生物学的プロセスや疾患の発症・進行など,多岐にわたる生命現象に関与することが示されている.

主要な薬物代謝酵素であるシトクロムP450は,薬や環境汚染物質などの解毒や代謝的活性化,ならびに生体内化合物の生合成を触媒する.そのほとんどは核内受容体による転写制御を受け,また遺伝子多型が存在することが,発現量や酵素活性の個人差の要因と考えられてきた.しかし,代謝能の個人差を完全には説明できていなかった.近年,シトクロムP450や核内受容体の発現調節

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昭和大学薬学雑誌 第4巻 第1号

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sapiens)とマウス(Mus musculus)でオルソログであることを意味する.1または2塩基のみ配列が異なるパラログは接尾辞によりhsa-miR-27aとhsa-miR-27bのように区別される.異なる遺伝子座から転写された前駆体から同じ成熟型miRNAが産生されるとき,その前駆体はhsa-mir-125b-1とhas-mir-125b-2のように数字で区別される.RISCに取り込まれる機能的一本鎖RNAはガイド鎖,他方はパッセンジャー鎖と呼ばれる.パッセンジャー鎖はhsa-miR-126*のようにスターマークで表記され,一般的には分解されやすいと考えられている,しかし,近年,機能的に作用しているパッセンジャー鎖も多く明らかになり,スター表記に換えて,ヘアピン構造の中で5’側と3’側のどちらに位置するかを意味するhsa-miR-148a-5pとhsa-miR-148a-3pのように表記するようになってきている.本稿ではヒトmiRNAについてのみ触れるため,miRNAの表記におけるhsaは省略する.

2-2. miRNAの標的mRNAの同定miRNAが標的とするmRNAに結合する際,配

列全体にわたる完全相補性は必要なく,miRNAの5’末端2-7塩基の配列(seed配列と呼ばれる)が標的mRNAと相補的であることが重要と言われている(図2).一方,seed配列が相補的であっても必ずしも作用を発揮するとは限らない.従って,miRNAの標的mRNAの予測は容易ではない.1つのmiRNAは数百種類ものmRNAを標的とし,また1つのmRNAが複数のmiRNAによって制御されることもある.さらに,miRNA/標的mRNAの機能的な組み合わせが,ある組織で同定されても,他の組織でも同様に制御されるとは限らない.当該miRNAと標的mRNAの発現量の違いのみならず,そのmiRNAの標的となる別のmRNA群の存在も影響するためである.したがって,ある遺伝子の発現調節にmiRNAが機能的に働いているかどうかは実験による証明が必要である.一般的に用いられる方法が以下の4つである。

にmiRNAが関与していることが明らかになり3),これまで説明できなかった個人差の解明に一石を投じ,その生理学的意義も示されつつある.本稿では,miRNAについて概説した後,miRNAがヒトにおける薬や異物,生体内化合物の代謝のコントロールにどのように関わっているか明らかになった例を紹介する.

2.miRNAとはmiRNAは20 ~ 25塩基の小さな一本鎖RNA

である.1993年に線虫で最初に発見され,2001年にヒトにも存在することが明らかになった.miRNAは初めに数百から数千塩基の転写産物primary miRNA (pri-miRNA)として転写される(図1).その後,核内でヘアピン構造部分がDroshaなどによりプロセッシングを受けて,約70塩基のprecursor miRNA (pre-miRNA)となる.pre-miRNA はExportin-5を介して細胞質に輸送され,Dicerによってプロセッシングを受けて約22塩基の二本鎖miRNA:miRNA*となり,Dicer,Agonoute 2 (Ago2),tar-RNA-binding proteins (TRBP) などで構成されるRNA-in-duced silencing complex (RISC)と複合体を形成する.そして,一本鎖化されたmature miRNAがガイド鎖となり,標的mRNAの主に3’-非翻訳領域 (untranslated region, UTR) に存在する認識配列 (miRNA recognition element, MRE)に結合する.すると,RISCがリボソーム・サブユニット会合の阻害,リボソームの脱落,キャップ構造の脱離,脱アデニル化など,種々のメカニズムを介して翻訳抑制またはmRNA分解を引き起こし,遺伝子サイレンシングを起こす4).

2-1. miRNAの命名法 5)

ヒトではこれまで2,000種類以上のmiRNAが同定されている.miRNAは同定された順に番号付けされる.成熟型はmiR-, 前駆体はmir-で表記される.種を区別するために3または4字のアルファベットからなる接頭辞が付与され,hsa-miR-101やmmu-miR-101のように表記される.このように同じ番号のmiRNAはヒト(Homo

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昭和大学薬学雑誌 第4巻 第1号

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Pre-miRNA

Nucleus

Cytoplasm

Pri-miRNAAAAAA

Exportin 5

Drosha

DGCR8

Dicer

Ago2

Dicer

TRBP

Mature miRNA

RISC

ormRNA degradation

G7mpppG Translational repression

RibosomeG7mpppG AAAAA

TRBP

mRNA

図1 microRNAの生合成と転写後調節ゲノム上のあらゆる領域から pri -miRNA として転写され,核内でプロセッシングを受けて pre-miRNA となる.pre-

miRNA は Exportin- 5 を介して細胞質に輸送され,プロセッシングを受けて二本鎖 miRNA:miRNA* となり RNA- induced silencing complex (RISC)と複合体を形成する.一本鎖化された mature miRNA が標的 mRNA に結合して翻訳を抑制またはmRNA 分解を促進することにより遺伝子発現を負に制御する.

図2 標的mRNAに対するmiRNAの結合と seed 配列の相補性miRNA は標的 mRNA の主に 3’-非翻訳領域 (untranslated region, UTR) に存在する認識配列 (miRNA recognition

element, MRE)に結合する.miRNA の 5’末端 2-7 塩基の配列は seed 配列と呼ばれ , 標的 mRNA と相補的であることが重要といわれている.ORF: オープンリーディングフレーム

m7GpppN AAAAA

5’-ACAGAC-UCUUACGUGGAGAGUGCACUGA-3’

3’-UGUUUCAAGA---CA----UCACGUGACU-5’

..

ORF

miRNA

miRNA

miRNA RecognitionElement (MRE)

Seed sequence

1)予測プログラムを用いたmiRNAの推定TargetScan, MicroCosm, PicTar, miRNA.

orgなど,いくつかの予測プログラムが無料で利用可能である.しかし,それぞれのプログラムで用いるアルゴリズムが異なっており,予測されるmiRNAが異なることも多い.偽陽性の確率も未だ高いことが難点であり,実際に機能的かどうかは実験で確かめなければわからない.また,予測プログラムではmiRNAの発現

量は考慮されていないため,当該遺伝子が発現している組織にそのmiRNAがどの程度発現しているかは別途考慮する必要がある.

2)ルシフェラーゼアッセイルシフェラーゼ遺伝子の下流にMREを組み

込み,miRNAの過剰発現またはアンチセンスオリゴヌクレオチド (AsO)による阻害によってルシフェラーゼ活性に変動が認められるか調べる。また,MREへの変異の導入や欠失,複

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られる.このような背景のもと,miRNAによる発現制御の可能性を検討した結果,CYP1B1の3’-UTRにmiR-27bが結合し,翻訳を抑制することで発現を負に制御していることを明らかにした.これはmiRNAが薬物代謝酵素の発現制御に関わっていることを示した世界初の例である.乳癌組織では非癌部と比べてmiR-27b発現量が低下しており,それが癌組織でCYP1B1タンパク質が高発現する原因であることが考えられた(図3).従って,miR-27bによるCYP1B1の発現制御は乳癌の発症・進行に関わっていると考えられる.

3-2. ビタミンD受容体 7)と CYP24 8)を制御するmiR-125bと乳癌との関係

ビタミンD3は血中カルシウム濃度の恒常性維持や骨代謝に重要な役割を担う一方,細胞増殖抑制作用や分化誘導およびアポトーシス誘導作用を有しており,抗癌薬としての可能性が期待されている.ビタミンD3の作用はビタミンD受容体 (VDR)を介して発揮される一方,活性型ビタミンD3はCYP24により代謝されてその作用を失う.従って,VDRとCYP24はビタミンD3の効果を左右する重要な因子であり,どちらも正常部位に比べて癌部位で高発現している.興味深いことに,両者ともにmiR-125bによって制御されていること,癌部位ではmiR-125bの発現が低下しており,それが両者の高発現の原因となっていることを明らかにした(図4).miR-125bによる両者の発現制御が,ビタミンD3による細胞増殖抑制作用にどのような影響をもたらすかMCF-7細胞の増殖能で検討した.その結果,活性型ビタミンD3処置により細胞増殖能は有意に抑制され,その抑制効果はpre-miR-125bの導入により低下したことから,miR-125bはVDRに対する抑制効果を優先的に示すことが明らかになった.すなわち癌組織ではmiR-125bの発現が低下していることで,VDRを介した抗腫瘍作用が増大している可能性が考えられた.

数連結などによるルシフェラーゼ活性の変動を調べることで,MREの機能性を確認することも有用である.

3) miRNA発現量の変動による当該タンパク質またはmRNA発現量の変化細胞にmiRNAを過剰発現させる,あるい

はAsOによって内因性miRNAを阻害した時,当該タンパク質またはmRNAの発現量が変化するか調べる。しかし,このような実験では,miRNAの作用が直接的なものか,別の標的遺伝子に作用した二次的な結果なのか判断できない.その点,上記のルシフェラーゼアッセイでは,MREへの直接的な影響か調べられる利点がある.

4) 当該タンパク質とmiRNAの発現量との相関関係細胞内のmiRNAの発現量を人為的に変動さ

せることなく,常在的な状態でmiRNAの関与を提唱するには,当該タンパク質発現量とmiRNAの発現量に負の相関関係が認められるか調べることが有用である.正常細胞と癌細胞の比較,複数の細胞株間での比較,複数の個人サンプル間の比較など,さまざまなパターンで適用できる.3.  miRNAによる発現制御を受けるヒトシトク

ロムP450と核内受容体miRNAが発現制御に関与することが明らかに

なったヒトシトクロムP450や核内受容体とその薬理学的および生理学的意義を以下に紹介する.

3-1. CYP1B1を制御するmiR-27bと乳癌との関係 6)

CYP1B1は多環芳香族炭化水素や芳香族アミンの代謝的活性化を触媒し,またエストロゲンをDNA損傷性の代謝物に変換することから,発癌に関与している分子種である.CYP1B1は卵巣,子宮,乳腺などの組織においてmRNAレベルでは高く発現しているものの,タンパク質レベルではほとんど検出できないことから,転写後調節の寄与が示唆された.また,正常組織と比べて癌組織でCYP1B1タンパク質の発現が高く認め

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とその発現に重要な役割を果たすプレグナンX受容体 (pregnane X receptor, PXR)の3’-UTRに共通してmiR-148a認識配列が存在することを見出し解析したところ,miR-148aはCYP3A4には直接作用しないが,PXRの発現を抑制的に制御し,CYP3A4の発現量に影響を与えていることを明らかにした(図5).タンパク質はDNA

3-3. プレグナン X受容体を制御するmiR-148aとCYP3A4発現量への影響 9)

CYP3A4は肝臓および小腸に高く発現し,医薬品代謝の約50% に関与する最も重要な薬物代謝酵素である.CYP3A4の発現量や酵素活性には50倍以上の大きな個人差が認められるが,遺伝子多型でも個人差を説明できない.CYP3A4

miR-27b

Cap Poly A

CYP1B1 mRNA

miR-27b

Cap Poly A

CYP1B1 mRNA

CYP1B1 CYP1B1

CYP1B1CYP1B1

CYP1B1

CYP1B1

miR-125b

VDR

poly AVDR mRNA

Normal

n = 14

Cancer

P < 0.0005

Human breast tissues

miR

-125

b le

vel

(arb

itar

y u

nit

)

0

1

2

3

4

5

VDR/RXR

miR

-125

b

miR-125b

CYP24

poly ACYP24 mRNA

図3 miR-27b によるCYP1B1の発現制御と癌との関係正常組織では miR-27b が CYP1B1 の 3’-UTR に結合して発現を負に制御している.一方,癌組織では miR-27b 発現量が

低いために CYP1B1 が高発現すると考えられる.

図4 miR-125bによるVDRと CYP24の発現制御と癌との関係miR-125b は VDR と CYP24 の 3’-UTR に結合して発現を負に制御する.癌組織では miR-125b の発現が低下しており,

それが癌組織における VDR と CYP24 高発現の原因と考えられる.CYP24 は VDR により転写活性化されるため,miR-125bによる VDR 発現変動の二次的影響も受けていると考えられる.

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のP450とは異なり,その誘導機構には核内受容体は関与せず,転写後調節や翻訳後調節によるものと考えられている.肝臓におけるCYP2E1 mRNA発現量とタンパク質発現量との間に正の相関関係が認められないことは,常在的発現における転写後調節の関与を示唆する.miRNAによる転写後調節の関与を検討した結果,ヒトCYP2E1の3’-UTRにmiR-378が結合して発現を負に制御していることが示された.ヒト肝臓中のmiR-378発現量には18倍の個人差が認められ,miR-378発現量とCYP2E1タンパク質発現量および翻訳効率との間に有意な逆相関の関係が認められた(図6)ことから,miR-378はヒト肝臓におけるCYP2E1の常在的発現を制御し,解毒能または毒性発現に個人差をもたらす要因の1つとなっていると考えられる4).

miR-378をコードする遺伝子はコアクチベータ ー で あ るperoxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1β (PGC1β)のイントロン上に存在する.このような場合,共通のプロモーターで転写制御されるため,両者の発現量は平衡関係にあると一般的に考えられている.PGC1βは脂質合成を制御する因子であり,糖尿

から転写されたmRNAに基づいて合成されるため,必ず転写レベルでの調節を受けている.従って,転写調節と転写後調節の寄与を考慮する必要がある.25検体のヒト肝試料において,PXRのmRNA発現量とタンパク質発現量との間に正の相関関係が認められず (r = 0.1),転写後調節が大きく寄与していることが示唆された.一方,CYP3A4ではmRNA発現量とタンパク質発現量との間に有意な正の相関関係が認められた (r = 0.67, P < 0.001 )ことから,転写調節が主要であり,miRNAによる転写後調節の寄与は大きくないことが示された.miR-148aの発現量にも約100倍の大きな個人差が認められ,PXRの発現制御を介してCYP3A4発現量に個人差をもたらす原因になっていると考えられる.

3-4. ヒト CYP2E1 を制御するmiR-378と代謝活性の個人差への影響 10)

ヒトCYP2E1はアセトアミノフェンやハロタンなど,比較的構造の小さい化合物を代謝する.生成した代謝物が毒性を示すことが多く,薬理学的および毒性学的に重要なP450である.CYP2E1はアルコールなどで誘導されるが,他

poly A

GpppG7m

PXR

CYP3A4 PXR/RXR

miR-148a

poly ACYP3A4 mRNA

GpppG7m

CYP3A4

PXR mRNA

0

10

20

30

40

50

6060

50

40

30

20

10

01 2 3 4 5 6 107 8 9 23 24 25

図5 miR-148aによるPXRの発現制御とCYP3A4発現量への影響ヒト個人肝 25 サンプルを用いたウェスタンブロット分析により CYP3A4 タンパク質発現量には 50 倍以上の大きな個人差

が認められる.miR-148a の発現量にも約 100 倍の個人差が認められ, CYP3A4 の転写活性を制御している PXR の発現を miR-148a が負に制御していることが CYP3A4 発現の個人差の原因となっている.

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を抑制するネガティブフィードバック機構が存在するが,そのメカニズムは不明であった.本研究では,胆汁酸によるプロテインキナーゼCの活性化や活性酸素種の産生を介したシグナル伝達経路の活性化がmiR-24およびmiR-34aの発現を増加させ,それがHNF4αの発現低下をもたらしていることを示し,メカニズムの一因にmiRNAが関わっていることを 明らかにした(図8).

3-6. 芳香族炭化水素受容体(AhR)と AhR核移行因子を制御するmiRNAs と異物応答への影響

ダイオキシン受容体として知られる芳香族炭化水素受容体 (aryl hydrocarbon receptor, AhR) は神経系に特異的に発現しているmiR-124によって制御されており,神経芽腫細胞ではmiR-124の発現が欠落しているためにAhR発現が増大し,細胞の分化を亢進することが報告されている12).一方,AhRや 低酸素誘導因子 hypoxia inducible factor-1α (HIF-1α)とヘテロダイマーを形成して異物や低酸素に応答して多くの遺伝子の転写を活性化する AhR 核移行因子 (AhR nuclear translocator, ARNT)は肝臓中でmiR-24

病および肥満によってその発現量は低値を示し,一方インスリン処置によって増大する.対してCYP2E1 はそれらと全く逆の発現変化を示すことが知られており,すなわち,糖尿病および肥満においてCYP2E1発現量は増加し,インスリン処置によって低下する.このようなCYP2E1発現量の変化にもmiR-378が関与している可能性があることも興味深い.

3-5. 肝細胞核因子4αを制御するmiR-24とmiR-34aと胆汁酸合成への影響 11)

肝臓や腎臓,腸管などに発現しており,非常に多くの遺伝子発現を制御することからマスターレギュレーターとよばれる肝細胞核因子4α (hepa-tocyte nuclear factor 4α, HNF4α) がmiRNAで制御されている可能性を検討した.興味深いことに,miR-34aは3’-UTRに結合して翻訳を抑制し,miR-24は翻訳領域に結合してmRNAの分解を介して発現を抑制することを明らかにした

(図7).この発現制御は肝臓中においてHNF4αの下流遺伝子であるCYP7AやCYP8Bなどの胆汁酸合成酵素の発現低下を招くことが示された.胆汁酸はHNF4αの発現を低下させ,胆汁酸合成

18-fold

10-fold7-fold

0

5

10

15

20

25

0 5 10 15 20

miR-378 expression(/U6 snRNA)

Tra

nsl

atio

nal

eff

icie

ncy

(CY

P2E

1 p

rote

in/m

RN

A) r = - 0.53

P < 0.01

0

50

100

150

200

250

0 2 4 6 8 10 12

CY

P2E

1 p

rote

in le

vel

(pm

ol/m

g)

r = - 0.55P < 0.05

CYP2E1 mRNA level(/GAPDH mRNA)

CYP2E1

CY

P2E

1 (p

mo

l/mg

)

CY

P2E

1 (

/mR

NA

)

miR-378 (/U6 snRNA)

CYP2E1 mRNA (/GAPDH mRNA)

図6 miR-378によるCYP2E1の発現制御miR-378 は CYP2E1 の 3’-UTR に結合して発現を負に制御する.ヒト個人肝 25 サンプルにおける CYP2E1 タンパク質発

現量と mRNA 発現量との間に正の相関が認められないことから転写後調節の寄与が示され,miR-378 発現量が CYP2E1 翻訳効率と有意な逆相関を示したことから miR-378 による発現制御がヒト肝臓中 CYP2E1 発現を左右していることが示された.ORF: オープンリーディングフレーム

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変化の一因となっていると考えられる.

3-7. ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体αを制御するmiR-21とmiR-27bと脂肪酸代謝への影響 15)

ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体 (peroxi-some proliferator-activated receptor, PPAR) αは主に肝臓に発現し,脂肪酸やフィブラート系高脂血症薬をリガンドとして,脂肪酸代謝や脂質

によって制御されていることを明らかにした13).この制御機構は,多環芳香族炭化水素類によって誘導されるCYP1A1や低酸素状態で誘導される炭酸脱水素酵素IX(膜結合型炭酸脱水素酵素のアイソザイムの1つ)の発現に影響を与えることが示された.ARNTタンパク質発現量は活性酸素種への曝露により低下することが知られている14).活性酸素種によりmiR-24の発現量が増加することも示され11) ,ARNTタンパク質発現量の

**P < 0.001

miR-24: mRNA

miR-34a:

HNF4 AAAAA

HNF4

CYP7A1, CYP8B1 CYP27A1

CYP7A1 CYP8B1 CYP27A10.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

ControlmiR-24miR-34a

Rel

ativ

e m

RN

A le

vel

HNF4 target gene

****

**** **

**

m7GpppN

HNF4

mR

NA

PKC

MEK1/2

ERK1/2

miR-23a miR-27a miR-24-2

U0126 MKK3/6

p38 SB202190

miR-24

CYP7A1

miR-34a

HNF4

図7 miR-24とmiR-34a によるHNF4αの発現制御miR-34a は 3’-UTR に結合して翻訳を抑制し,miR-24 は翻訳領域に結合して mRNA 分解を促進して HNF4 αの発現を

負に制御する.ヒト肝癌由来 HepG2 細胞にこれらの miRNA を過剰発現させると,CYP7A1 や CYP8B1 などの HNF4 αの下流遺伝子の発現量が有意に低下する.

図8 miRNAによるHNF4αの発現制御を介した胆汁酸合成のネガティブフィードバック機構胆汁酸はプロテインキナーゼ C の活性化や活性酸素種の産生を介してシグナル伝達経路を活性化する.このシグナルが miR

-24 および miR-34a の発現を増加させる.それによって HNF4 αの発現が低下し,胆汁酸合成酵素の発現を抑制して胆汁酸産生を抑えるネガティブフィードバック機構が働いている.PKC: プロテインキナーゼ C, ERK: 細胞外シグナル調節キナーゼ,MEK: MAPK/ERK キナーゼ,MKK: MAP キナーゼキナーゼ

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的mRNAへの結合能に影響を及ぼす.一方,pri-miRNAやpre-miRNA上にSNPがある場合,成熟過程に影響を与え,mature miRNAの発現量が変化する場合もある19).ファーマコジェネティクスとmiRNA研究の融合により,これまで解明できなかった薬効・副作用の個人差が解明できる可能性がある.

5.おわりに以上のように,薬・異物代謝におけるmiRNA

の役割について情報が蓄積されてきている20, 21).miRNAの発現は様々な疾患において変動し22).薬物,毒物,発癌物質などの曝露や,ストレスに応答してmiRNAの発現が変動することも示されている3).このようなmiRNA発現の変動が,薬物の体内動態にどの程度影響を及ぼしているか解明することが今後の課題である.

謝 辞本研究に携わった金沢大学薬学系薬物代謝化学

研究室の学部生,大学院生ならびに横井毅教授,また共同研究としてご協力くださいました先生方に深謝致します.

文 献1) Mattick, J.S.: Non-coding RNAs: the archi-

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5) Griffi ths-Jones, S., Saini, H.K., van Dongen,

輸送,エネルギーのホメオスタシスに関わる遺伝子の発現を制御している核内受容体である.ヒトPPARαの3’-UTRは8.4 kbと長く,結合する可能性のあるmiRNAが多く予測されるが,複数のプログラムで共通して予測されたmiRNAの中から,miR-21およびmiR-27bがPPARαの翻訳抑制に働いていることを明らかにした15).これらのmiRNAはPPARαの下流遺伝子であるアシルCoA合成酵素の常在的発現量だけでなく,フィブラート系高脂血症薬による発現誘導も抑制し,脂肪酸代謝に影響を与えていることが示された.

軟骨細胞におけるPPARαはmiR-22によって制御されていることが報告されている16)が,著者らにおけるヒト肝癌由来細胞株を用いた実験では,miR-22によるPPARαの発現への影響は認められず,組織や細胞によって発現制御に関わるmiRNAが異なることを示す一例となった.

4.miRNAとファーマコジェネティクスファーマコジェネティクス(薬理遺伝学)は薬物

代謝酵素が中心となって発展してきた分野である.薬物代謝酵素に遺伝子変異が存在すると,酵素活性や発現量が変動することで,薬効や副作用に個人差を生じる.これまで,翻訳領域や5’-上流領域に存在する遺伝子変異についてはかなり研究されてきたが,3’-UTRに存在する遺伝子変異についてはその影響の解析が見過ごされてきた,あるいは未解明である例が多い.miRNAは主に3’-UTRに結合することから,3’-UTRに存在する遺伝子変異,特に一塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP)に注意を払う必要性がある.実際,ジヒドロ葉酸還元酵素 (di-hydroforate reductase, DHFR)17)や硫酸転移酵素 (sulfotransferase, SULT) 1A118)の3’-UTRに存在するSNPが,miRNAの結合能に影響を及ぼし,酵素発現量に個人差をもたらす原因となることが示されている.

SNPは300~1000塩基に1つの割合で全ゲノム中に認められることから,当然,miRNAまたはその前駆体上にも認められる.mature miR-NA,特にseed配列上にSNPが存在する場合も標

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MicroRNAs regulating metabolism of drugs, xenobiotics and endobiotics

Miki Nakajima

Drug Metabolism and Toxicology, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kanazawa University

Abstract

MicroRNAs (miRNAs) are endogenous ~22-nucleotide non-coding RNAs that regulate gene expression through the translational repression or degradation of target mRNAs. The human genome contains over 2,000 miRNAs and over 60% of human mRNAs are predicted to be targets of miRNAs. The miRNAs have roles in fi ne-tuning the expression of their target genes forming intricate networks. Research on miRNA is growing exponentially, and it is now clear that miRNAs can potentially regulate every aspect of cellular and physiological processes. The roles of miRNAs in the metabolism of xenobiotics and endobiotics have recently been revealed. This review describes the current knowledge on the regulation of cytochrome P450s and transcriptional factors by miRNAs, and its physiological and clinical significance, which were disclosed in our studies. Drugs, chemicals, carcinogens, hormones, stress, or diseases readily alter the miRNA expression. The dysregulation of specifi c miRNAs might lead to changes in the drug metabolism potency or pharmacokinetics as well as pathophysiological changes. In the field of pharmacogenomics, the evaluation of miRNA-related polymorphisms would provide useful information for personalized medicine.

Key words : post-transcriptional regulation, drug-metabolizing enzymes, pharmacokinetics, interindividual variability, sensitivity

Received 20 April 2013 ; accepted 14 May 2013

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