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2012 年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第 1 回) 要旨 教育への iPad 利用と活用マニュアルの作成について e1225 木田 貴之 (指導教員: 鵜川 義弘) 1. はじめに 近年,情報教育や授業など教育の情報化の充実が図 られ,ICT の活用が重要になっている.そこで私は,iPad 1) を利用することを考えた.iPad ,操作が直感的であり, 持ち運びがしやすく,機能としてもパソコンと同様なこと が可能である.このことから,先生だけでなく,児童・生徒 にとっても操作しやすい ICT 機器と考える. また,電子書籍教材としての利用もでき,iPad 独自の 機能もあるので,より授業に活用できる可能性がある.こで,本研究では,iPad を教育に活用するための具体的 な方法ついてまとめていき,先生が活用できるようなマニ ュアル作成を行う. 2. これまでの研究経過 これまで,iPad の授業での活用を想定するに当って 以下の項目について研究を行なってきた. 1. iPad の授業利用方法の提案 2. 電子黒板の代用の可能性 3. 附属小学校での講習会 2.1. iPad の授業利用方法の提案 iPad の授業利用方法を以下の点から検討した. 1. 学校のパソコンのソフトと同様なことが可能か 2. ファイルのやり取りが可能か 1については,可能であることがわかった.学校でも使 用する機会が多いソフトとして,Word,Excel, PowerPoint」が挙げられる.そこで,iPad でも同じこと ができるものがないか調査した.結果,iPad のアプリの中 ,Pages,Numbers,Keynote」というものがあり, これらを使用することで,パソコンで行なっていた文章や グラフ,スライドなどの作成が可能であることが判明した. 次に,PDF 等のファイルを開くアプリについて調査したと ころ,ただファイルを読むだけではなく,付箋機能,ハイラ イト機能,書き込み機能など多機能であることがわかった. 他にも,学習アプリや授業に活用できるアプリなどが多 数あった.また,iPad EPUB 形式の電子書籍を読み 込むことが可能である.EPUB 形式では,文章と一緒に 画像,音声,動画を挿入することができるため,今までの教 材とは違った教材を作成することができる. 2 については,注意が必要だが可能であることがわか った.iPad は各種ファイルのやり取りにおいて,USB SD を用いることができない.基本的に iPad でファイルの やり取りをする際は,パソコンと iPad を接続し,iTunes 用いて同期させる方法を取る.この場合,ファイルのやり 取りをするためにパソコンが必要になり,わざわざ iPad パソコンを接続する手間がかかる.そこで,Dropbox を使 用することを考えた.Dropbox ,インターネット上でファ イルのやり取りをするので,パソコンと接続する必要がな .したがって,児童・生徒と教師でフォルダを共有すれ ば児童・生徒への資料配布や児童・生徒が作成したも のを吸い上げるということが簡単にできる.難点として ,Dropbox はクラウドサービスのためインターネットに 接続する必要があることだ.また,インターネットにファイ ルを置くので,情報が漏洩する可能性もあるため取り扱う ファイルには気をつける必要がある. 2.2. 電子黒板の代用の可能性 電子黒板とは,大型テレビ等にパソコンを取り付けて 黒板のように使用する機器である.特徴としては,動画や 音声の再生のほかに,書き込みを入れたりすることが可 能あり,パソコンのソフトを利用することができる.しかし,メリットとして価格が高価でかつ,現在学校では 1 台程度 しかであること,授業での教師の立ち位置が決まってしま うことなどがある.これに対して,iPad であれば,複数台導 入することも可能であり,教師が持ちながら授業をするこ 1 iPad でのファイル共有 参考資料

卒研 中間発表 要旨ugawalab.miyakyo-u.ac.jp/j3/takayuki/date/sotugyou_kenkyu...2012年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第1回)

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2012 年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第 1 回) 要旨

教育への iPad 利用と活用マニュアルの作成について

e1225 木田 貴之

(指導教員: 鵜川 義弘)

1. はじめに

近年,情報教育や授業など教育の情報化の充実が図られ,ICTの活用が重要になっている.そこで私は,iPad1)

を利用することを考えた.iPadは,操作が直感的であり,持ち運びがしやすく,機能としてもパソコンと同様なことが可能である.このことから,先生だけでなく,児童・生徒にとっても操作しやすい ICT機器と考える. また,電子書籍教材としての利用もでき,iPad独自の

機能もあるので,より授業に活用できる可能性がある.そこで,本研究では,iPad を教育に活用するための具体的な方法ついてまとめていき,先生が活用できるようなマニュアル作成を行う.

2. これまでの研究経過

これまで,iPadの授業での活用を想定するに当って以下の項目について研究を行なってきた.

1. iPadの授業利用方法の提案 2. 電子黒板の代用の可能性 3. 附属小学校での講習会

2.1. iPad の授業利用方法の提案

iPadの授業利用方法を以下の点から検討した. 1. 学校のパソコンのソフトと同様なことが可能か 2. ファイルのやり取りが可能か 1については,可能であることがわかった.学校でも使

用する機会が多いソフトとして,「Word」,「Excel」,「PowerPoint」が挙げられる.そこで,iPadでも同じことができるものがないか調査した.結果,iPadのアプリの中に,「Pages」,「Numbers」,「Keynote」というものがあり,これらを使用することで,パソコンで行なっていた文章やグラフ,スライドなどの作成が可能であることが判明した.次に,PDF等のファイルを開くアプリについて調査したところ,ただファイルを読むだけではなく,付箋機能,ハイライト機能,書き込み機能など多機能であることがわかった.他にも,学習アプリや授業に活用できるアプリなどが多数あった.また,iPadは EPUB形式の電子書籍を読み込むことが可能である.EPUB形式では,文章と一緒に画像,音声,動画を挿入することができるため,今までの教材とは違った教材を作成することができる.

2については,注意が必要だが可能であることがわかった.iPadは各種ファイルのやり取りにおいて,USBやSDを用いることができない.基本的に iPadでファイルのやり取りをする際は,パソコンと iPad を接続し,iTunesを用いて同期させる方法を取る.この場合,ファイルのやり取りをするためにパソコンが必要になり,わざわざ iPadとパソコンを接続する手間がかかる.そこで,Dropbox を使用することを考えた.Dropboxは,インターネット上でファイルのやり取りをするので,パソコンと接続する必要がない.したがって,児童・生徒と教師でフォルダを共有すれば児童・生徒への資料配布や児童・生徒が作成したも

のを吸い上げるということが簡単にできる.難点としては,Dropboxはクラウドサービスのためインターネットに接続する必要があることだ.また,インターネットにファイルを置くので,情報が漏洩する可能性もあるため取り扱うファイルには気をつける必要がある.

2.2. 電子黒板の代用の可能性

電子黒板とは,大型テレビ等にパソコンを取り付けて黒板のように使用する機器である.特徴としては,動画や音声の再生のほかに,書き込みを入れたりすることが可能あり,パソコンのソフトを利用することができる.しかし,デメリットとして価格が高価でかつ,現在学校では 1台程度しかであること,授業での教師の立ち位置が決まってしまうことなどがある.これに対して,iPadであれば,複数台導入することも可能であり,教師が持ちながら授業をするこ

図 1 iPadでのファイル共有 参考資料

2012 年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第 1 回) 要旨

とができる.そこで,iPad で電子黒板の特徴である,「動画,画像の再生」,「書き込み」ができるか行った. まず,iPadの画面をクラス全体に見れるようにする必

要がある.そこで,Air Playのミラーリング機能 2)を活用し

た.ミラーリングとは,周辺機器の Apple TV3)と iPadを同じネットワークに接続することで,iPadの画面をワイヤレスで大型TVに映す機能である.これにより,パソコンの画面大型 TVに映す電子黒板と同じように,iPadの画面を大型 TVに転送することができた.

次に「動画,画像の再生」,「書き込み」についてだが,ミラーリングすることによって iPad上で動画や画像を再生すると大型 TVにも表示させることができた.「書き込み」についてだが,iPadには動画や画像,PDF等に書き込みできるものがなかった.そこで,書き込みができるアプリ「GoodNotes」を使用した.iPadでは,同様なことができるアプリが他にもあり,書き込み以外のものでも無料から有料まで多種多様のアプリを使用することができるため,使い方次第で様々に活用することが可能である. さらに,iPadのカメラアプリを起動し,ミラーリングするこ

とでワイヤレスの書画カメラにすることができた.この利点としては,教師が机間指導をしている中でも,児童・生徒のノートを教室の前にある TVに映すことができることだ.もちろん,撮影することも可能なので,ミラーリングしながら撮影することで児童・生徒の成果物を記録することがで

きる.この応用については,本学の附属の先生方からも好評を得ており,授業ですぐにでも使いたいという声も頂いた.

2.3. 附属小学校での講習会

4月18日に附属小学校にて,附属の先生方に iPadの講習会を行った. 内容としては iPadの基本操作から,Dropboxからファ

イルをダウンロードしアプリで開いてみる,アプリをダウン

ロードして使用してみるなど一連のことを行った.先生方の感想としては,ぜひとも iPad を授業で使用してみたいという声を多く頂いた.特に,ミラーリングでは,体育などですぐに使えるという意見も頂いた.しかし,一方で iPadの操作自体がわからない,アプリが子どもの遊びになるのではといった意見も頂いた.

3. 今後について

そこで今後は,iPad を今までに使用したことがない先生方でも使用できるようなマニュアル作りを目指す.マニュアルは逆引き事典を想定しており,具体的には,実際の現場の先生方から iPadを使用する上での疑問,質問事項を収集し,それらをカテゴリーに分けることで,「疑問,質問次項」,「カテゴリー」の両方から検索できるようにする.この逆引き事典には,文字だけでなく,画像や動画なども盛り込み,わかりやすいものにしたいと考えている.作成するファイル形式については現在検討中だが,iPad内で確認することができる形式を目指す.他にも,時間があれば実際に iPad を使用する前とした後での授業の違いについての調査や,マニュアルについてのフィードバックをいただき改善を行う.

4. 参考文献

1) Apple:「iPad」

http://www.apple.com/j

(2012/05/25アクセス)

2) Apple:「ミラーリング」

http://www.apple.com/jp/appletv/airplay/

(2012/05/25アクセス)

3) Apple:「AppleTV」

http://www.apple.com/jp/appletv/what-is/

(2012/05/25アクセス)

図 3 講習会 参考資料

図 2 ミラーリングについて 参考資料

2012 年度 宮城教育大学技術教育専攻・情報ものづくりコース 卒業研究発表会(第 1 回) 要旨