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第11回 水産資源の経済学I:水産資源管理の経済理論
12月19日 有賀健高
今回の内容
• 水産資源に関する以下の二つの経済モデルを理解する。
① 誰でも自由に漁業ができるオープンアクセスな漁場における経済モデル
② 私的所有権が設定されており、漁業権を持った業者だけが漁業を行う漁場における経済モデル
• 講義で扱う項目
• 水産資源の特徴
• 水産資源の成長関数
• 漁業者の生産関数
• オープンアクセスな漁場における経済モデル
• 私的所有権がある漁場における経済モデル
生物資源経済学 有賀健高© 2
水産資源の特徴
生物資源経済学 有賀健高© 3
水産資源の特徴1:資源量が回復
水産庁『水産白書』平成22年度
生物資源経済学 有賀健高© 4
水産資源の特徴2:共有財(common pool resources)
競争合性(excludable)
排除性(rivalrous)
ある ない
ない
私的財(private goods)食料品、自動車
共有財(準公共財)(common pool resources)漁場、共有地
クラブ財(準公共財)(club goods)高速道路、ゴルフ場
(純粋)公共財(public goods)灯台、知識、無料テレビ
ある
水産資源
生物資源経済学 有賀健高© 5
水産資源の特徴3:不確実性
水産資源の変化
• 生態系の変化で生息数が変化する。
漁場の変化
• 生息する魚種の変化で取れる魚種が変わる。
農業や林業以上に、不確実性が大きい。
生物資源経済学 有賀健高© 6
水産資源の成長関数
生物資源経済学 有賀健高© 7
水産資源の成長関数
• ある漁場の水産資源賦存量*と水産資源の成長率の関係を表す関数である。
*ある漁場に存在している水産資源の量
• X(t)をt期における水産資源賦存量とすると、水産資源の成長関数𝐹𝐹 𝑋𝑋 𝑡𝑡 は以下のように表せる:
X 𝑡𝑡 =𝑑𝑑𝑋𝑋(𝑡𝑡)𝑑𝑑𝑡𝑡
= 𝐹𝐹 𝑋𝑋 𝑡𝑡
生物資源経済学 有賀健高© 8
水産資源の成長関数(続き)
• 一般に水産資源の成長関数は以下のように表せる:
𝐹𝐹 𝑋𝑋 = 𝑟𝑟𝑋𝑋(1− ⁄𝑋𝑋 𝑘𝑘)
• 𝑟𝑟:資源の本質的な最大成長率(intrinsic
population growth rate)
• 𝑘𝑘:最大資源収容力(carrying capacity)(一定の
環境下で生存可能な生態数の上限)• 𝑟𝑟と𝑘𝑘は水産資源のバイオマス(生態数)に関するデータから計測
される。
生物資源経済学 有賀健高© 9
漁業者の生産関数
生物資源経済学 有賀健高© 10
水産資源の成長関数の導出
• 一般にある生物の個体数は以下のロジスティック関数で表される。
X(t) = 𝑘𝑘1+𝑐𝑐𝑒𝑒−𝑟𝑟𝑟𝑟
• これをtで微分すると
𝑑𝑑𝑋𝑋𝑑𝑑𝑡𝑡
=0− 𝑘𝑘 � (−𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟−𝑟𝑟𝑟𝑟)
1 + 𝑟𝑟𝑟𝑟−𝑟𝑟𝑟𝑟 2 =𝑟𝑟 � 𝑟𝑟𝑟𝑟−𝑟𝑟𝑟𝑟 � 𝑘𝑘1 + 𝑟𝑟𝑟𝑟−𝑟𝑟𝑟𝑟 2
• これに、𝑟𝑟𝑟𝑟−𝑟𝑟𝑟𝑟 = 𝑘𝑘−𝑋𝑋𝑋𝑋
を代入して
𝑟𝑟 � 𝑘𝑘 − 𝑋𝑋𝑋𝑋 � 𝑘𝑘
1 + 𝑘𝑘 − 𝑋𝑋𝑋𝑋
2 =𝑟𝑟(𝑘𝑘 − 𝑋𝑋) � 𝑘𝑘𝑋𝑋
𝑘𝑘𝑋𝑋
2
= 𝑟𝑟 𝑘𝑘 − 𝑋𝑋 �𝑋𝑋𝑘𝑘= 𝑟𝑟𝑋𝑋 1−
𝑋𝑋𝑘𝑘
• したがって、𝑑𝑑𝑋𝑋𝑑𝑑𝑟𝑟= 𝐹𝐹 𝑋𝑋 = 𝑟𝑟𝑋𝑋 1− 𝑋𝑋
𝑘𝑘
X 𝑡𝑡
X(t)0
t
k
X(t)= 𝑘𝑘1+𝑐𝑐𝑒𝑒−𝑟𝑟𝑟𝑟
𝐹𝐹 𝑋𝑋 = 𝑟𝑟𝑋𝑋(1 − ⁄𝑋𝑋 𝑘𝑘)
生物資源経済学 有賀健高© 11
水産資源の成長関数の特徴
0 kX
F(X)
𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑋𝑋1 𝑋𝑋2 𝑋𝑋3
𝐹𝐹(𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀)
𝐹𝐹(𝑋𝑋1) = 𝐹𝐹(𝑋𝑋2)
𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀: Maximum sustainable yield(最大持続可能生産量)
𝑋𝑋 = k
生物資源経済学 有賀健高© 12
魚が海に全くいないので増えない状況における均衡
魚が海に多すぎてこれ以上魚が増えると魚が減ってしまうような状態における均衡
漁業活動があるときの単純な(資源の価格を考慮に入れない)生物経済学モデル
•漁業者の漁獲関数を𝐻𝐻 = ℎとする。
•𝐻𝐻1の時
• 𝐻𝐻1 > 𝐹𝐹(𝑋𝑋)なので、資源が枯渇し、生産活動ができなくなる。
•𝐻𝐻2の時
• 𝐻𝐻2 = 𝐹𝐹(𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀)なので、漁獲が最大となる点で持続的な生産活動が可能である。
𝐻𝐻1 = ℎ1
𝐻𝐻2 = ℎ2
0 kX
F(X), H
𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀
生物資源経済学 有賀健高© 13
𝐹𝐹(𝑋𝑋)
漁業活動があるときの単純な(資源の価格を考慮に入れない)生物経済学モデル(続き)
• 𝐻𝐻3の時
• 𝐻𝐻3 = 𝐹𝐹(𝑋𝑋1)は、不安定均衡であ
る。
• 𝑋𝑋1の左側にある場合、𝐻𝐻 > 𝐹𝐹(𝑋𝑋)のため、資源が次第に減り、漁獲は減少し続ける。
• 𝑋𝑋1の右側にある場合、 𝐻𝐻 < 𝐹𝐹(𝑋𝑋)のため、資源は増加傾向にあり、漁獲すればするほど漁獲量も増える。
• 𝐻𝐻3 = 𝐹𝐹(𝑋𝑋2)は、安定均衡である。
• 𝑋𝑋2の左側にある場合、 𝐻𝐻 < 𝐹𝐹(𝑋𝑋)のため、𝐻𝐻3 = 𝐹𝐹(𝑋𝑋2)まで漁獲が増え続ける。
• 𝑋𝑋2の右側にある場合、 𝐻𝐻 > 𝐹𝐹(𝑋𝑋)のため、𝐻𝐻3 = 𝐹𝐹(𝑋𝑋2)まで漁獲が減り続ける。
生物資源経済学 有賀健高© 14
0 kX
F(X), H
𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑋𝑋1 𝑋𝑋2
𝐻𝐻3 = ℎ3
𝐹𝐹(𝑋𝑋)
漁業者の漁獲関数の設定• 漁獲量を𝐻𝐻とすると、𝐻𝐻 = 𝑄𝑄 𝐸𝐸,𝑋𝑋
• E: Effort (漁獲努力量)。漁獲するために投入される漁船の隻数、操業日数、定置網の大きさ、漁具数といった資本や労働の投入量。
• X: Stock(水産資源量)。水産資源のバイオマス
• a: Catchability(捕獲効率)。魚を捕まえられる確率。
• 以上を使って漁業者の漁獲関数は一般に、𝑄𝑄 𝐸𝐸,𝑋𝑋 = 𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋
と表される。
生物資源経済学 有賀健高© 15
漁獲努力漁(E)と資源量(X)の関係
• 今漁獲量Hが�𝐻𝐻で一定であるとすると、
• Q(E, X) = �𝐻𝐻 = 𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋なのでEとXは以下のようなグラフで表せる。
E
X
�𝐻𝐻 = 𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋
右図で、漁獲するために投入される漁船の隻数、操業日数、定置網の大きさ、漁具数といった資本や労働の投入量であるEが増えると、資源量が減っていくことがわかる。
生物資源経済学 有賀健高© 16
漁獲努力漁(E)と漁獲量(H)の関係
• 右図で、𝐸𝐸1 > 𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 > 𝐸𝐸2であ
る。
• Eが大きくなるにつれて、資源量Xは減っていく。
• 𝐸𝐸2から𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀までは、𝐸𝐸が増え
るにつれて漁獲量が増える:𝐻𝐻𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 = 𝐹𝐹 𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 > 𝐹𝐹 𝑋𝑋2 = 𝐻𝐻2
• 𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀から𝐸𝐸1では、 𝐸𝐸が増える
につれて漁獲量が減っている:
𝐻𝐻1 = 𝐹𝐹 𝑋𝑋1 < 𝐹𝐹 𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 = 𝐻𝐻𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀
0k
X
F(X), H
𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑋𝑋1 𝑋𝑋2
𝐹𝐹(𝑋𝑋𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀)
H2=aE2X
HMSY=aEMSYX
H1=aE1X
𝐹𝐹(𝑋𝑋1)
𝐹𝐹(𝑋𝑋2)
生物資源経済学 有賀健高© 17
漁業者の生産関数の導出
• 漁業活動がある時の資源の変化量は以下の式で表せる:
X 𝑡𝑡 =𝑑𝑑𝑋𝑋(𝑡𝑡)𝑑𝑑𝑡𝑡
= F X t − 𝑄𝑄 𝐸𝐸,𝑋𝑋 𝑡𝑡
• 定常状態*では、X 𝑡𝑡 = 0なので、
F X t = 𝑄𝑄 𝐸𝐸,𝑋𝑋 𝑡𝑡 ・・・①
• ①式に、𝐹𝐹 𝑋𝑋 = 𝑟𝑟𝑋𝑋 1− ⁄𝑋𝑋 𝑘𝑘 、 𝑄𝑄 𝐸𝐸,𝑋𝑋 = 𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋を代入すると、
𝑟𝑟𝑋𝑋 1− ⁄𝑋𝑋 𝑘𝑘 = 𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋・・・②
• これを𝑋𝑋について解くと、𝑋𝑋 = k(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)なので、
𝑄𝑄=𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋=𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1-𝑎𝑎𝐸𝐸𝑟𝑟
)
生物資源経済学 有賀健高© 18
*定常状態とは、時間の変化に対して、水産資源の量が変化しない状態を言う。
漁業者の生産関数
𝑄𝑄(𝐸𝐸)=𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1-𝑎𝑎𝐸𝐸𝑟𝑟 )
0𝑟𝑟𝑎𝑎
E
Q(E)
𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀
𝑄𝑄(𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀)
生物資源経済学 有賀健高© 19
漁業者の総収入と総費用
生物資源経済学 有賀健高© 20
漁業者の総収入(TR: total revenue)曲線
• 収穫された水産資源の価格をPとすると、漁業者の総収入は以下の式で表せる。
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑃𝑃𝑄𝑄 𝐸𝐸
= 𝑃𝑃 � 𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1-𝑎𝑎𝐸𝐸𝑟𝑟
)
• この式を図にすると生産関数を価格の分だけ上にシフトした形状になる。
P𝑄𝑄(𝐸𝐸)=𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)
0𝑟𝑟𝑎𝑎
E
TR
𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀
𝑇𝑇𝑇𝑇(𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀)
生物資源経済学 有賀健高© 21
漁業者の総費用(TC: total cost)曲線
• 𝐸𝐸を漁獲努力量、 𝑟𝑟を漁獲努力量単位当たりにかかる漁業者の費用とする。
• この時、漁業者の総費用TCは以下の式で表せる。
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑟𝑟𝐸𝐸
• この時、総費用曲線は図のようになる。
TC
0E
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑟𝑟𝐸𝐸
生物資源経済学 有賀健高© 22
オープンアクセスな漁場における経済モデル
生物資源経済学 有賀健高© 23
オープンアクセス(OA:open access)の水産資源モデルの設定
• オープン・アクセス(open access)漁場とは、誰でも自由に水産資源をとっても良い漁場のことである。
• オープンアクセスの漁場では、言葉通り、全ての漁業者が資源にアクセス(利用)する権利を有している。
• そのため、漁業をすることで少しでも利益が得られるなら、新たな漁業者が参入する。
• 最終的には総収入と総費用が一致する(利潤ゼロの状況)ところまで参入が続く。
• したがって、OAの漁業の長期均衡では以下の条件が成立している:
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑇𝑇𝑇𝑇OAの均衡条件: 総収入(TR)=総費用(TC)
生物資源経済学 有賀健高© 24
オープンアクセスの均衡点における漁獲努力量(𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗ )
• TR = 𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)
• TC = 𝑟𝑟𝐸𝐸
• TR = TCとしてEについて解くと、OAの場合の均衡点における漁獲努力量が求まる:
𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗ = 𝑟𝑟𝑎𝑎1− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
生物資源経済学 有賀健高© 25
𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑟𝑟𝐸𝐸
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1-𝑎𝑎𝐸𝐸𝑟𝑟 )
0 E
TR
オープンアクセスの供給曲線
• 右図のように、価格が大きくなるにつれ、漁獲努力量が大きくなっていることがわかる。
• しかし、価格が一定以上大きくなるとEMSYを越えるため生産量が減少する。
• したがって、オープンアクセスの漁場では、価格が一定以上になると、漁獲努力量が資源の持続可能なレベル以上に大きくなり、資源が減ってしまう。
• その結果、価格が一定以上になると、価格上昇に伴って生産量が減るようになり、供給曲線が左上がりとなる。 𝑄𝑄 𝐸𝐸 =𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸 1-
𝑎𝑎𝐸𝐸𝑟𝑟
(P=1の時)
0 E
Q, TR, TC
TC = cE
TR1(P=0.5の時)
TR2 (P=1.5の時)
TR3 (P=2の時)
E1
Q1
E2
Q3
E3EMSY
QMSY
Q2
生物資源経済学 有賀健高© 26
オープンアクセス漁場の供給曲線のグラフ
406080
100120140160180200
8 9 10 11 12
P
Q
漁船の隻数、操業日数といった資本や労働などの漁獲努力量を増やせば増やすほど生産が増える状況にあり、通常の右上がりの曲線となっている。
𝑄𝑄 = 𝑄𝑄MSY
生産を増やすための漁獲努力量が増大した結果水産資源が枯渇し、価格が上がると生産量が減る状況となるため左下がりの曲線となっている。
r=0.5, a=0.001, c=5, k=100 のケース
生物資源経済学 有賀健高© 27
オープンアクセスの供給曲線の導出
• 𝑄𝑄=𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋=𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)、𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗ = 𝑟𝑟
𝑎𝑎1− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘であったので、生産
関数のEの部分にオープンアクセスでの最適な漁獲努力量𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗ を導
入すればよい。
𝑄𝑄OA𝑀𝑀 =𝑎𝑎𝑘𝑘 � 𝑟𝑟𝑎𝑎1− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘� 1− 𝑎𝑎
𝑟𝑟� 𝑟𝑟𝑎𝑎1− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
=kr 1− 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
� 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
=𝑟𝑟𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎
1− 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑘𝑘𝑎𝑎
オープンアクセスの供給曲線: 𝑄𝑄𝑂𝑂𝑂𝑂𝑀𝑀 =𝑟𝑟𝑟𝑟𝑃𝑃𝑎𝑎
1−𝑟𝑟
𝑃𝑃𝑘𝑘𝑎𝑎
生物資源経済学 有賀健高© 28
私的所有権がある漁場における経済モデル
生物資源経済学 有賀健高© 29
私的所有権(PP: private property)がある漁場のモデルの設定
• 私的所有権のある漁場とは、漁業権のような漁業をするための権利のある漁業者でないと漁業を営めない漁場のことである。
• 水産資源に関して私的所有権が存在し(漁業権が等があるケース)、全ての漁業者に漁場に参入する権利が与えられていないため、このような漁場では、漁業者は通常の企業と同じような利潤最大化問題に直面する:
Max𝑎𝑎
𝜋𝜋 𝐸𝐸 = 𝑇𝑇𝑇𝑇(𝐸𝐸) − 𝑇𝑇𝑇𝑇(𝐸𝐸)
• したがって、PPのある漁業の長期均衡では以下の条件が成立している:
⁄dπ d𝐸𝐸 = 0⟺d𝑇𝑇𝑇𝑇 𝐸𝐸d𝐸𝐸
−d𝑇𝑇𝑇𝑇 𝐸𝐸d𝐸𝐸
= 0 ∴ MR = MC
PPの均衡条件: 限界収入(MR)=限界費用(MC)
生物資源経済学 有賀健高© 30
私的所有権がある場合の均衡点における漁獲努力量(𝐸𝐸𝑃𝑃𝑃𝑃∗ )
• TR = 𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸 1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟
, TC = 𝑟𝑟𝐸𝐸
• MR = 𝑑𝑑𝑑𝑑𝑑𝑑𝑑𝑑𝑎𝑎
= 𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘(1- 2𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟
)
• MC = 𝑑𝑑𝑑𝑑𝐶𝐶𝑑𝑑𝑎𝑎
= 𝑟𝑟
• MR = MCとしてEについて解くと、PPの場合の均衡点における漁獲努力量が求まる:
𝐸𝐸𝑃𝑃𝑃𝑃∗ = 𝑟𝑟2𝑎𝑎
1− 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑟𝑟𝐸𝐸
𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗
TR=𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)
0 E
TRMR=MC
𝑬𝑬𝑷𝑷𝑷𝑷∗
生物資源経済学 有賀健高© 31
オープンアクセスと私的所有権がある場合の均衡の比較
• 𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗ = 𝑟𝑟𝑎𝑎1− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
• 𝐸𝐸𝑃𝑃𝑃𝑃∗ = 𝑟𝑟2𝑎𝑎
1− 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
• 図と上の式から
𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗ > 𝐸𝐸𝑃𝑃𝑃𝑃∗ 。
• OAの方がPPより競争が激しいためより多くの漁獲努力量を要する。
• したがって、資源量に関して、OAの方がPPより少なくなる傾向にある:
𝑋𝑋𝑃𝑃𝑃𝑃 > 𝑋𝑋𝑂𝑂𝑂𝑂
𝑇𝑇𝑇𝑇 = 𝑟𝑟𝐸𝐸
𝐸𝐸𝑂𝑂𝑂𝑂∗
TR=𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)
0 E
TR($)MR=MC
𝑬𝑬𝑷𝑷𝑷𝑷∗
生物資源経済学 有賀健高© 32
私的所有権がある場合の供給曲線
• 右図のように、価格が大きくなるにつれ、漁獲努力量が大きくなっていることがわかる。
• ここでは、価格がどれだけ大きくなっても𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀を越える生産量にはならないことがわかる。
• したがって、私的所有権の供給曲線は、 𝐸𝐸𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀まで漁獲努力量が増え続けることで生産が増え続け、通常の供給曲線と同様に右上がりとなる。
𝑄𝑄 𝐸𝐸 =𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸 1-𝑎𝑎𝐸𝐸𝑟𝑟
(P=1の時)
0 E
Q, TR($),TC($)
TC = cE
E1
Q1
E2
Q2
QMSY
EMSY
Q3
E3
生物資源経済学 有賀健高© 33
TR1
MR1
(P=0.5の時)
TR2
MR2
(P=1.5の時)
TR3
MR3
(P=2の時)
私的所有権がある場合の供給曲線
406080
100120140160180200
0 2 4 6 8 10 12 14
P
Q
𝑄𝑄 = 𝑄𝑄MSY
価格があがるにつれて、生産量が増え続け、最終的にはQ=QMSYになるまで生産が増え続ける。
r=0.5, a=0.001, c=5, k=100 のケース
生物資源経済学 有賀健高© 34
私的所有権がある場合の供給曲線の導出
• 𝑄𝑄=𝑎𝑎𝐸𝐸𝑋𝑋=𝑎𝑎𝑘𝑘𝐸𝐸(1- 𝑎𝑎𝑎𝑎𝑟𝑟)、𝐸𝐸𝑃𝑃𝑃𝑃∗ = 𝑟𝑟
2𝑎𝑎1− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘であったので、
生産関数のEの部分にオープンアクセスでの最適な漁獲努力量
𝐸𝐸𝑃𝑃𝑃𝑃∗ を導入すればよい。
𝑄𝑄𝑃𝑃𝑃𝑃𝑀𝑀 =𝑎𝑎𝑘𝑘 � 𝑟𝑟2𝑎𝑎
1− 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
� 1− 𝑎𝑎𝑟𝑟� 𝑟𝑟2𝑎𝑎
1− 𝑐𝑐𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘
=𝑘𝑘𝑟𝑟21 − 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘� 121 + 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑎𝑎𝑘𝑘=
𝑘𝑘𝑟𝑟41− 𝑐𝑐
𝑃𝑃𝑘𝑘𝑎𝑎
2
私的所有権がある場合の供給曲線: 𝑄𝑄𝑃𝑃𝑃𝑃𝑀𝑀 =𝑘𝑘𝑟𝑟4
1−𝑟𝑟
𝑃𝑃𝑘𝑘𝑎𝑎
2
生物資源経済学 有賀健高© 35
レポート課題 問題10(2017年1月23日の講義後に提出)
今水産資源の成長関数が𝐹𝐹 𝑋𝑋 = 0.4𝑋𝑋 1− ⁄𝑋𝑋 200 、漁業者の漁獲関数が𝑄𝑄 𝐸𝐸,𝑋𝑋 = 0.001𝐸𝐸𝑋𝑋、漁業者の費用関数が𝑇𝑇 𝐸𝐸 = 10𝐸𝐸で示されている。ただし、 𝑋𝑋は水産資源賦存量、 𝐸𝐸は漁獲努力量であり、水産資源の単位当たりの価格を𝑃𝑃とする。この時以下の問に答えなさい。
(1)漁業権がなく、漁場がオープンアクセスであった場合の供給関数を求めなさい。
ヒント:スライド18の定常状態における①式の関係を使う。
(2)漁場に私的所有権が定められている場合の供給関数を求めなさい。
(3)𝑃𝑃 = 100としたとき、オープンアクセスと私的所有権がある場合の
生産量を比較し、そのような違いが生じた理由について述べなさい。
生物資源経済学 有賀健高© 36
参考文献
• Hartwick, J.M. and Olewiler, N.D.(1998) The Economics of Natural Resource Use: Chapter 4. Addison-Wesley Publishing Co.: New York.
• 『農林水産の経済学』中央経済社 第7章
生物資源経済学 有賀健高© 37