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157第3部 クラウド事業者動向
3–2 データセンター事業者 [ グローバルクラウドデータセンターの動向 ]
第1部
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第5部
第6部
第7部
第3部アジア市場に注目が集まり企業による進出や投資が増大フェイスブックやアップルなどがデータセンターへの投資を強化
林 雅之 国際大学GLOCOM 客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)
クラウドサービスの普及や拡大に伴い、ユーザーはデータの置かれている場所をあまり意識しなくなり、海外のデータセンターや国内では郊外型など安価で安全なクラウド型のデータセンターの開設が加速している。
データの用途拡大で データセンターの需要が急伸
コンシューマー市場では、ソーシャルゲームなどのソーシャルアプリケーションの利用が急速に拡大しており、これらのサービスを提供する事業者は、ユーザーの利用頻度に合わせて柔軟にリソースを変えられるクラウドサービスを採用する方向にある。
また、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスの利用者数拡大に伴うストレージサービスなどのクラウドサービスの利用も増え、個人がクラウドサービスを利用するパーソナルクラウドサービスの需要も拡大している。ビッグデータといった大量のデータの分析や処理をするといったニーズも増えており、これらのデータを扱うデータセンターの需要は高まっている。
さらに、海外ではアジアを中心とした新興国の経済成長が著しく、アジア市場の情報のハブとして、シンガポールや香港などを中心に、クラウドに対応した大規模データセンターの建設が増加していくことが予想される。
国内でのクラウド型データセンターの取り組み
クラウドサービスの市場拡大と競争激化に伴い、クラウド事業者などはより競争力のある価格設定と収益向
上のため、安価で柔軟に拡張できる郊外型やクラウドに対応したデータセンターの開設を強化している。
さくらインターネットは2011年11月15日、北海道石狩市にクラウドに最適化した郊外型大規模データセンター
「石狩データセンター」を開設し、同日、業界最安値水準のクラウドサービス「さくらのクラウド」の提供を開始した。郊外の低価格な事業用地があり、自治体の優遇助成制度が利用できる点や、寒冷地特有の冷涼な外気を活用することで空調コストを約4割削減、自然災害が少ない点などを評価し、石狩市にデータセンターを建設している。
東日本大震災後に最も早く郊外型のデータセンターを開設したのはIIJで、2011年4月に島根県松江市に
「松江データセンターパーク」を開設した。外気冷却による低消費電力を実現した空調モジュールとITモジュール「IZmo」から構成され、各種機能モジュールを組み合わせることで、短期間で大幅なコスト削減を実現している。今後はほかの地域にも拡大し、SI事業者やクラウド事業者のサービス基盤としての提供も行うことで、クラウドの集積拠点として発展を目指している。
2012年に入ってからは、4月11日に、日本ユニシスが福井県小浜市に「日本ユニシス小浜データセンター」を開設した。9月には、東日本エリアではIDCフロンティアが福島県白河市に外気空調システムなどを採用した新白河データセンター(仮称、以下「新白河」)が竣工予定となっている。
首都圏においてもクラウドに対応したデータセンターの建設が進んでいる。キヤノンマーケティングジャパンとキヤノンITソリューションズは、西東京に2300ラッ
グローバルクラウドデータセンターの動向
158 第3部 クラウド事業者動向
3–2 データセンター事業者 [ グローバルクラウドデータセンターの動向 ]
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ク相当の新データセンターを建設し、2012年10月よりサービスの開始を予定している。
また、NTTコミュニケーションズは、東京都北区に都内最大規模の総延床面積約2万2千平方メートル(約3000ラック相当)の「東京第6データセンター」を建設中で、2013年度第1四半期のサービス提供開始予定としている。
アジアを中心とした海外における データセンター動向
アウトソーシングやクラウド化の進展を背景に、国内だけでなく、全世界的にデータセンターサービス市場は堅調に伸びている。特に、フェイスブック、アップル、グーグル、アマゾンなどの大手事業者はデータセンターの建設を加速させ、自社サービスの拡大を図っている。
フェイスブックはノースカロライナ州フォレストシティに、世界有数のエネルギー効率を誇るデータセンターを開設した。9億人を超えるソーシャルネットワークの利用者が保存・閲覧する写真、ビデオ、近況などの膨大なデータを処理している。
また、フェイスブックが中心となり、2011年10月27日、データセンターとサーバーデザインを公開して高効率データセンター構築をする「Open Compute Project」を推進するための非営利組織「Open Compute Project Foundation」を発足させている。Open Compute Proj-ectバージョン2のウェブサーバーが大規模に配備されるケースとしては、フォレストシティが初めてとなる。
アップルは、ノースカロライナ州メイデンに東京ドーム1個分もある超巨大データセンターを建設し、さらに拡張を進めている。iCloudやiTunesなどのサービス拡大に伴い、データセンター需要が急激に増えており、アップルは全米各地にデータセンターの建設を急ピッチで進めている。
アジア市場でもデータセンター需要に注目が集まっている。企業によるアジアへの進出と投資の増大に伴ってデータセンターサービス市場も顕著な伸びを示しており、事業者はアジアにおけるデータセンター開設を急いでいる。
グーグルは、香港とシンガポールにデータセンターを建設する計画を2011年に発表しているが、2012年4月
3日には、台湾にアジア最大のデータセンターを建設する計画を発表している。敷地面積は15ヘクタール、投資規模は3億ドルに達する予定で、台湾のデータセンターの面積は、両データセンターの5倍近い大きさとなる。
また、アマゾンはWIREDの記事によると、アジア地域においては、シンガポール、東京に続き、シドニーと香港に新しいデータセンターの建設を計画しているという可能性が明らかになっている。Amazon Web Serviceが提供するAmazon EC2/S3などのクラウドサービスは、世界のパブリッククラウド市場においてトップシェアを確保しており、アジア市場への展開を強化することで、さらなる存在感を示していくことが予想される。
国内事業者もアジア展開に力を入れている。NTTコミュニケーションズは、グローバルに展開するクラウドサービスの主要基盤として、2012年4月にシンガポールおよびマレーシアに大型データセンターを追加開設するなど、アジア地域のディザスタリカバリー拠点や、IT企業や金融機関など多国籍企業が集積するアジアのハブとしての拠点強化を図っている。
同社は、データセンターは全世界に125拠点、サーバールームの総面積は約14.4万平方メートルと世界でも有数のデータセンター事業者でグローバルネットワークと一体化した国内外シームレスなサービスを展開している。
中国での動きも活発である。富士通は2012年4月11日、アウトソーシングビジネス強化の一環として、中国広東省管轄の政府系企業と合弁会社「富士通(広東)科技服務有限公司」を設立し、同合弁会社が「富士通中国華南データセンター」を開設するなど、13億人を超える中国市場を狙ったデータセンターの開設が相次いでいる。
今後の展望クラウドコンピューティングの市場拡大に伴い、フェイ
スブックやアップルなどのサービスを提供する事業者もデータセンターへの投資を強化するなどグローバル規模でデータセンターの建設が加速している。クラウドは規模の経済(スケールメリット)が競争力を大きく左右するため、グローバル規模でのデータセンターへの投資とクラウドサービスの展開が、今後のデータセンタービジネスやクラウドビジネスの勝敗を大きく占うことになるだろう。