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4 2 パリ国際農業見本市(SIA)概要 21 パリ国際農業見本市(SIA2011 年の概要 ■開催日:2011 2 19 日(土)~2 27 日(日)(9 日間) ■開催時間:9001900 (金曜日のみ 2300 まで営業) ■会場:ポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場(Porte de VersaillesPlace de la Porte de Versailles 75015 Paris FRANCE ■主催:CENECA (農業コンクール部分のみ CENECA、フランス食品・農業・漁業省が主催) ■運営:COMEXPOSIUM ■入場者数:678,732 人(前年比+4%) ■出展者数:1,142 社(団体を含む) ■出展動物数:4,667 頭(農業コンクールへの出展動物を含む) ■見本市構成 1)生きた動物(優良動物)の展示(農業コンクールへの出展動物を含む) 農業コンクールへの出展動物を含む牛、ばん馬、ポニー、ロバ、ヤギ、羊、兎、 家禽、豚、犬、その他のペット動物の全 360 種類の動物が展示される。農業コンク ール(Concours Général agricole CGA)の動物部門の最終選考が SIA の会場で実施さ れるため、トップレベルの家畜を一同に見学することができる(2011 年には 1,855 頭の動物、1450 人の家畜飼育業者が農業コンクール最終選考に参加)。 2)フランス国内と外国の食品物産展 フランスの全てのエリア(本土、海外県)、及び海外から 34 カ国が参加し、物産 の試食や販売を実施する。 【海外出展国(2011 年)】 アルジェリア、ドイツ、アルメニア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、ブ ルガリア、カメルーン、カナダ、中国、コロンビア、コートジボワール、スペ イン、ロシア、ギリシャ、ハンガリー、インド、アイルランド、イタリア、ル クセンブルグ、マダガスカル、マリ、モロッコ、ネパール、ペルー、ポルトガ ル、シリア、韓国、セネガル、スエーデン、スイス、タイ、チュニジア、ヴェ トナムなどが参加。 3)園芸と植物部門 「自然の中の美と流行」「自然の中の家、設備、装飾」など、農村の自然と共に楽 しく生活するための展示と、庭の新しい楽しみ方や菜園づくりのアイデアを紹介す る展示と催しを開催する。

第2 章 パリ国際農業見本市(SIA)概要...営費用が補填されることはない。SIA の運営収支は2 年前まで赤字が続いていたが、ブ ース代の値上げ等で収入を増やし、赤字解消に努めた。

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第 2 章 パリ国際農業見本市(SIA)概要

2-1 パリ国際農業見本市(SIA)2011 年の概要

■開催日:2011年 2 月 19日(土)~2月 27日(日)(9日間)

■開催時間:9:00~19:00 (金曜日のみ 23:00まで営業)

■会場:ポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場(Porte de Versailles)

Place de la Porte de Versailles 75015 Paris FRANCE

■主催:CENECA

(農業コンクール部分のみ CENECA、フランス食品・農業・漁業省が主催)

■運営:COMEXPOSIUM

■入場者数:678,732 人(前年比+4%)

■出展者数:1,142社(団体を含む)

■出展動物数:4,667 頭(農業コンクールへの出展動物を含む)

■見本市構成

1)生きた動物(優良動物)の展示(農業コンクールへの出展動物を含む)

農業コンクールへの出展動物を含む牛、ばん馬、ポニー、ロバ、ヤギ、羊、兎、

家禽、豚、犬、その他のペット動物の全 360 種類の動物が展示される。農業コンク

ール(Concours Général agricole:CGA)の動物部門の最終選考が SIAの会場で実施さ

れるため、トップレベルの家畜を一同に見学することができる(2011 年には 1,855

頭の動物、1450 人の家畜飼育業者が農業コンクール最終選考に参加)。

2)フランス国内と外国の食品物産展

フランスの全てのエリア(本土、海外県)、及び海外から 34 カ国が参加し、物産

の試食や販売を実施する。

【海外出展国(2011年)】

アルジェリア、ドイツ、アルメニア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、ブ

ルガリア、カメルーン、カナダ、中国、コロンビア、コートジボワール、スペ

イン、ロシア、ギリシャ、ハンガリー、インド、アイルランド、イタリア、ル

クセンブルグ、マダガスカル、マリ、モロッコ、ネパール、ペルー、ポルトガ

ル、シリア、韓国、セネガル、スエーデン、スイス、タイ、チュニジア、ヴェ

トナムなどが参加。

3)園芸と植物部門

「自然の中の美と流行」「自然の中の家、設備、装飾」など、農村の自然と共に楽

しく生活するための展示と、庭の新しい楽しみ方や菜園づくりのアイデアを紹介す

る展示と催しを開催する。

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4)農業に関するサービスや職業などの展示

フランス食品・農業・漁業省、農協団体、生産者組合などの農業分野(林業を含

む)の関係者が、農業に関する新しい研究・開発、雇用、研修、サービスなどを紹

介する。

■会場概要

ポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場のパビリオン 1、2、3、4、7.1、7.2を使用する。

パビリオン 1:畜産と畜産関連の展示(牛、羊、ヤギ、豚、鳥など)

パビリオン 2:園芸・植物に関する展示

パビリオン 3:農業に関するサービスや職業などの展示

世界の物産

パビリオン 4:畜産と畜産関連の展示(馬、ロバ、ポニー、ネコ、犬など)

パビリオン 7.1、7.2:フランス全土(本土、海外県)の物産

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【ポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場概観】

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■来場者(678,732名)

【来場者の属性】

・来場者全体のうち 109,137 名(約 16%)が農業、流通業などの関係者(プロと呼ばれ

る人)で、7,514 名(約 1%)が海外からの来場者である。

・一般来場者は、男性 59%、女性 41%の割合で、平均年齢は 44 歳である。一般来場者

の 43%が家族で来場しており、その内 52%が子ども連れである。

【来場者の目的】

・一般来場者の来場目的は「動物を見る」と回答した人が 82%、「農産物を見る」と回答

した人が 60%、「娯楽」と回答した人が 47%と、動物の見学と農産物の試食や購入が

大きな目的となっている。子ども連れの来場者のうち 34%は子どもに農業を知っても

らうために来場している。

・プロの来場者の主な来場目的は、「同業者に会うこと」、「コンクールへの出場」となっ

ている。

【来場者の傾向】

・一般来場者のうち 40%が初めての来場となっており、SIA の認知経路はメディア・広

告・クチコミがきっかけとなっている。

・一般来場者の出費の平均は 79€/人となっており、56%が開催期間中 1日のみの訪問で

ある。

・一般来場者のうち 83%がパビリオン 1(畜産関連)を訪問し、79%がパビリオン 7(フ

ランス本土・海外県の物産)を訪問している。

・一般来場者の 97%が SIA に満足しており、75%が再来の意向を示している。一般来場

者のうち「各ブースでの受け入れがよかった」と回答した人が 95%、「ブースのクオ

リティに満足した」と回答した人が 97%、「SIAの雰囲気がよかった」と回答した人が

95%となっている。また、SIA 会場への交通アクセスに 83%が満足している。

■出展者(1,142社)

【出展の目的】

・各業界団体・大手企業は PR(試食を含む)を目的とした出展が多い。一方でフランス

全土(本土、海外県)の物産、世界の物産のパビリオンに出展する企業は、PR(試食

を含む)だけでなく商品・軽食の販売も行っている。

【出展者の傾向】

・出展者の 75%が SIA への出展に満足している(前年比+1%)。その内、「来場者の数に

満足している」と回答した出展者は 85%、「来場者の反応に満足している」と回答した

出展者が 81%となっている。

・出展者の参加年数は、平均 12年である。

・出展者の 38%(地方の小規模事業者が中心)が SIA 期間中に年間売り上げの 1~3ヶ月

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分に相当する売り上げを上げていると回答している。その中でもブルターニュ地方(穀

物等の栽培で、フランスで最も重要な農業地域。)、アキテーヌ地方(ボルドーを含む。

ワイン産業中心で経済的に豊かな地域。)は売り上げが高い。

・29%の出展者が地元で販売している価格よりも高額で販売している。SIA 出展に関する

費用が高額なため、農業従事者が単独で出展が難しい場合、グループを作ってブース

を借りている例もある。

・会場設営に関しては 81%が満足している。

■運営収支

・SIA は、運営事業者である COMEXPOSIUM の独立採算で運営されており、赤字でも運

営費用が補填されることはない。SIAの運営収支は 2年前まで赤字が続いていたが、ブ

ース代の値上げ等で収入を増やし、赤字解消に努めた。

・SIA の売り上げは 1800万€で、1㎡あたり約 200€/m²となっている。売り上げ構成は、

入場料が 22%、農業コンクールで賞をもらった商品販売手数料が 10%、ブース出展料、

パートナー企業からの協賛金、広告掲載料が 68%となっている。一方、支出は 1300万

€で、そのうち会場のレンタル経費が 400万€となっている。売上総利益は 35%で、SIA

開催による営業利益は 370万€である。

・CGA の開催には、国から CENECA に 64万€が補助され、その全額が CGAの運営を委

託しているCOMEXPOSIUMに支払われる。COMEXPOSIUMは64万€の補助金のうち、

25 万€を CGA参加者への補助にあて、残りを CGAの運営費用としている。

■SIA 開催に向けた年間スケジュール(大枠)

6~7月頃 出展の受付開始

10 月頃 出展者には展示に関する仕様書の送付

11 月頃 全体のブース割り振りの決定

1月頃 CENECA とフランス食品・農業・漁業大臣がプレス会見

■SIA 開催による効果

【販売促進・6次産業化について】

・出展者は SIA を一般消費者とのコミュニケーションの場として活用している。大手企

業は、自社の商品の販売促進ではなく、企業のイメージ、企業と農業の関係性を PRす

ることが出展の主な目的となっている。例えば、「マクドナルド」はフランス国内でジ

ャンクフードのイメージを払拭し、質の高い商品を提供しているイメージや多くの牛

肉を購入する顧客であることを伝えるブースを出展している。

・フランス全土(本土、海外県)の物産のパビリオンに出展する企業は、各ブースでイ

ベント・実演・試食を通じて、特産品の特徴や製造過程を説明するとともに、商品の

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販売を行い自社商品の知名度向上、販売促進を図っている。

・SIA で展示される全食品のうち、フランス国内の加工食品が半分を占めており、SIA

は、フランスの各地域で作られた加工食品の販売促進の機会となっていると。

【食育・サイエンスコミュニケーションについて】

・SIA は農業に関する情報を発信する場として、フランスの農業国としてのイメージア

ップに貢献している。生きた動物の展示や個別企業・団体の農業や食に関する展示に

よって、食育・サンエンスコミュニケーションにつながる教育効果の高い見本市とな

っている。例えば牛乳が搾乳から飲めるまでの過程、卵から鶏になるまでの過程を展

示しているブースなど、農業に少しでも興味を持つように工夫されている。また、フ

ランス食品・農業・漁業省のブースでは、子供を対象に食品の生産過程や品質の良い

農産物の紹介等が行われている。

【BtoB に対する考え方】

・SIA は一般消費者をターゲットとしており、公式的にビジネスマッチング(BtoB)は

行っていないが、個別のブースで事業者・政治家訪問用のために商談・会談スペース

を確保している例もある。運営者からはバイヤーの招待を行っていないため、実態は

把握されていない。

・バイヤーをターゲットとしたビジネスマッチングは、隔年で開催される SIAL(Salon

International de l'Alimentation:主催 COMEXPOSIUM)がその役割を果たしており、「SIA」

と「SIAL」によって BtoC と BtoB の棲み分けがなされている。

【その他】

・SIA のオープニングには大統領が出席し、その他大臣など多くの政治家が来場するた

め、農業従事者、農業関係団体が政治家と農業に関するコミュニケーションをとる機

会、また、政治家にとっても自らの政策をアピールする機会となっている。

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2-2 パリ国際農業見本市(SIA)の変遷

■SIA の歴史(小史)

・18世紀に始まった農事品評会を受け継いだ優良家畜コンクールが、1844年にポワシー

市で開催され、これを基に、1870 年にパリで農業コンクール(CGA)が公式に開催さ

れた。この 1870年の CGA からパリ国際農業見本市(SIA)の歴史が始まったとされて

いる。1925 年には会場がポルト・ド・ヴェルサイユの展示会場(現在と同じ会場)に

移された。最初は動物コンクールのみだったが、今日では、地方特産品、乳製品、ワ

インなどが CGA の部門として加わっている。

・第1回の SIA は 1964 年に開幕したが、当時は、農業従事者のための CGA を中心に、

農業器具など農業関連の様々な分野の展示を伴う見本市であった。これは、当時のフ

ランスの経済が農業に大きく依存していたことが背景にある。開催当時の SIA は、来

場者の半分以上が農業従事者であった。

・1980 年代になるとフランス国内の農業従事者が減少し(現在は約 40 万人)、SIA は一

般消費者に対して農業を紹介する見本市となった。現在の SIA は、地方・国際レベル

の食文化、グリーン・ツーリズム、環境などを紹介するフランス国内で最大の農業見

本市となっている。

■SIA の運営体制

・SIA の起源である CGAの時代(~1963年まで)は、フランス食品・農業・漁業省が運

営を行っていた。しかし、CGA から SIA へ規模を拡大するためには、フランス食品・

農業・漁業省の運営では困難であったことから CENECA が設立(1963 年)され、現在

に至るまで SIA の主催となっている。

・SIAの開催当初から 1992年までは CENECA が主催・運営を行っていたが、SIA の規模

が拡大するとともに CENECA単独での運営が困難となり、現在は、見本市運営の専門

会社である COMEXPOSIUMに SIA の運営を委託している。

・CGA は、1970 年代にフランス食品・農業・漁業省から CENECA に運営が委託される

ようになった。現在、CGAは CENECA とフランス食品・農業・漁業省の共催となって

いるが、SIA同様に運営は COMEXPOSIUMに委託されている。

・SIA の運営は COMEXPOSIUMが主体であるが、地方パビリオンのブースの割り付け・

出展者募集は、Les Chambres d'Agriculture、CELVIA(組織概要は後述)が協力している。

また、個別ブースの運営には、農業関係大学から学生がアルバイトとして派遣されて

いる。SIA の会場に動物を会場に搬入する際には農業高校の学生などの支援もある。

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■SIA主催者

【CENECA:Centre National des Expositions et Concours Agricoles】

・フランスの農業の普及・PR のため SIA の開催を目的として、フランス国内の各種農業

関係協会、団体を取りまとめる組織として 1963 年に設立された。営利組織ではなく、

フランスの農業を象徴する組織として位置づけられている。CENECA の代表者は構成

員による投票で行われ、現在はビーツを栽培する農業従事者が代表者を務め、その他、

事務員(1名)の 2名体制である。

・現在の主な活動は SIAと Salon du Cheval(馬の展示会)を主催するのみである。SIA で

開催する CGA の運営のため、フランス食品・農業・漁業省から補助金を受けて、

COMEXPOSIUMへ委託を行っている。

■SIA運営事業者

【COMEXPOSIUM】

・見本市の運営を専門としていた COMEXPO PARIS と EXPOSIUMが 2009年に合併し、

2010年に設立された。SIAの運営は、当初 COMEXPO PARIS が権利を取得していたが、

EXPOSIUMとの合併により、COMEXPOSIUMに SIA の運営権利も移行された。SIAの

他に年間約 200件の見本市を運営している。

・SIA 全体の運営事業者として主催者である CENECAと連携を図るだけでなく、CGA を

運営するためフランス食品・農業・漁業省からも出向者を受け入れている。

パリ国際農業見本市(SIA)

園芸・植物

世界(外国)の物産

フランス国内の物産

農業コンクール(CGA)

農業関係のサービス・職

畜産・畜産関連

展示

動物部門

農産品・ワイン部門

若手農業従事者部門

主催:CENECA

主催:CENECA

主催:CENECAフランス食品・農業・漁業省

運営:COMEXPOSIUM

営業担当

運営体制

広報担当

ロジスティック担当

マーケティング担当

経理担当

フランス国内の物産の出展者募集・ブース割付支援など

:Les Chambres d‘Agriculture、CERVIA

動物部門に出展する多くの動物が展示される

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■SIA運営支援団体

【Les Chambres d'Agriculture】

・フランスの各地方にある農業会議所の全国連合(地域圏 21、県 94の 116の団体の構成)

として 1920年代に設立された。ビジネスサポートや環境問題に対する研究など農業問

題の解決や農業の発展に関わる業務を行っている。

・SIA では、フランスの地方パビリオンの管理を担っている。地方パビリオン全体の責任

者として、地方パビリオンのブースの割り振りを行い、各地方の農業会議所を通じて

出展者を集めている(海外県は COMEXPOSIUMの管理)。

・SIA 出展に関する経費は、各地方のそれぞれでまかなっている。各地域の SIA 出展に対

する支援手法は異なり、県議会の予算で地方ブースを借り上げる場合や、ブース代は

出展者が支払うことを前提に県議会が予算に応じて各出展者に個別に支援する場合な

どがある。

・CGAの運営支援として、地方の農業会議所を通じて、CGAに出展される商品の審査用

サンプルの収集を行っている。

【CELVIA

(Centre Régional de Valorisation et d’Innovation Agricole et Alimentaire)】

・イル・ド・フランス地方(パリとその周辺の地方)の農業と食品に関する企業支援、

農業関係のマーケティング、一般の人に対してイル・ド・フランス地方を紹介するこ

とを大きな目的として、農業会議所や食品産業に関する団体などが出資し、1901 年に

設立した組織である。

・SIA の地方パビリオンの全体管理は Les Chambres d'Agricultureが行っているが、イル・

ド・フランス地方のブース出展に関する業務だけは CELVIA が統括している。CELVIA

が COMEXPOSIUMから 300㎡の出展権利を購入し、イル・ド・フランス地方の出展者

の募集や運営支援などを行っている。出展に関する予算は地方議員の承認で決定する。

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2-3 農業コンクール(CGA)の役割

■農業コンクール(CGA)概要

・CGA は、フランスの国家の豊かさと質を象徴する農業に関する公式的なコンクールと

して 1 世紀以上の歴史を持ち、優秀な家畜、農産物、地場ワインなどを厳選して賞を

授与する。政府の管理のもと、予選・本選が厳密なプロセスを経て実施されるため、

コンクールの公平性と賞の価値は高い評価を受けている。また、CGA には、16歳から

25 歳の優秀な若手農業従事者に賞を授与する若手農業従事者部門もあり、若者が農業

に就業することにも貢献している。

・CGA は CENECA とフランス食品・農業・漁業省の共催により開催されているが、運営

は COMEXPOSIUM に委託している。CGA 開催に関する補助金は、フランス食品・農

業・漁業省から CENECAを経由して COMEXPOSIUMに支払われ、COMEXPOSIUMが

参加者へ補助などの手続きを行っている。

・フランス食品・農業・漁業省は公的立場としてコンクールの公平性を管理する。CGA

に関するコミッショナーとしてフランス食品・農業・漁業省から 1 名のエンジニアを

COMEXPOSIUMに派遣している。

■農業コンクール(CGA)の部門別概要

1)動物部門

フランスの優良な家畜を表彰するもので、CGA に出場する家畜は、選抜団体あるい

は UPRA(家畜種の選抜・プロモーション全国組織)による厳正な審査プログラムを通

過した優良な家畜として扱われる。2011 年には牛、羊、ヤギ、豚、馬、ロバ、犬の 7

分野で 360 種類、2205 頭が CGA に応募されており、フランス全土で 1450 人の畜産農

家が参加している。SIA の中でも CGA の動物部門の最終選考は、最も注目を浴びる部

門であり、畜産農家にとっては、他者の家畜との比較や同業者と技術的な意見を交換

する機会でもある。一方で、CGA の動物部門は優良な家畜を生産する遺伝子研究の観

点からも重要な取り組みとして位置づけられている。

2)農産品・ワイン部門

フランスの農産品とワインの優秀品に賞が授与されるもので、フランス国内だけで

なく外国でも認知度の高いコンクール部門である。地方予選を通過したものが、SIA期

間中に行われる本選で審査を受ける。賞は金・銀・銅があり、技術・味覚に高い鑑識

力をもつボランティアの審査員(プロ、一般消費者)により各賞の対象製品が選出さ

れる。受賞は、味・色・香り、製品の特徴、製造方法、食品の規格などの観点から製

品の優良性を示すもので、生産者の名誉となるだけでなく、製品の信頼性が認められ

たことになる。

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農産品は、農場や工場で生産された下記の分野が対象となる。2011 年には 4021品が

出品され、2000 人の審査員により、1087品が受賞している。

【製品の二大区分】

乳製品:バター、クリーム、牛乳、ヨーグルト、チーズ、カンコワイヨットチーズ、

地方特産品:フォアグラ、オリーブオイル製品、クルミオイル、はちみつ製品、エ

スペレットピーマン、バニラ、オー・ド・ヴィ(蒸留酒)、リキュールワイ

ン、りんご酒、牡蠣、薫製マス、フルーツジュース、シードル、ビール、

ラム・パンチ、アペリティフ、豚ハム類、家禽肉類

ワイン部門で受賞することは、ワイン製造者、卸業者、農協にとって、その地方の

ワイン製品及びワイン製造地域として認知度が高まることにつながる。2011 年の応募

ワインは 10,166 銘柄で、2784人の審査員により、3667銘柄が受賞した。

また、過去 3 年間連続で受賞した製品の生産者に授与される賞として特選賞(Prix

d’Excellence)がある。

なお、農業コンクールで受賞した農産品、ワインなどは CGA 受賞製品の専用オンラ

インショップで購入することができる。

(オンラインショップ HP:http://www.cga-paris.com/produits_recompenses.aspx#haut)

3)若手農業従事者部門

若者が農業に従事することを促進するために設立されたコンクール部門である。

コンクールは 3 種類があり、16~25 歳の若手農業従事者、あるいは将来の農業を担

う農業高校生に対して賞が授与される。

① 若手農業従事者による動物鑑定コンテスト

農業高校生、農業に従事したばかりの若手畜産家に対し、家畜の繁殖の重要性

を理解させること、各農業機関が実施する職業研修への参加を促すことを目的と

して実施される。家畜(牛、羊、ヤギ、馬)の外見(姿勢、歩き方、筋肉など)

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から家畜の品種、呼称・産地などに関する鑑定能力を審査するものである。

② 農業学校の全国最優秀賞

農業畜産関係の学校の価値の向上、学校と業界の関係の強化、家畜に関する職

業のイメージを向上させることを目的としている。学生に、学校を代表して、SIA

会場での家畜の手入れ、コンクールでの動物のプレゼンテーション、学校紹介の

ポスター・ブログなどの部門で競わせる。2011年は 48校から 300 人の学生が参加

している。

③ ヨーロッパ全体のワイン鑑定力コンテスト

ワインの専門家を育成するため、ブドウの種類、ワインの醸造期間、産地、価

格などに関するワインの品質鑑定能力を競うコンテストである。本コンテストは

フランスだけでなく、ヨーロッパ全土から参加者がある(2011年は国外から 17名

が参加)。

■SIA における CGAの役割

・CGA が開催されることにより、フランス全土のトップレベルの動物が SIA の会場に展

示される。SIA 来場者の目的の一つが、生きた動物の見学であることから、SIAで CGA

を開催することが SIAを成功させる一助となっている。

■家畜の衛生管理

・SIA では毎年約 4000 頭の生きた動物が展示される。会場で展示する家畜には、全て獣

医が交付する衛生証明書の提出を義務付けている。衛生証明書は、展示する家畜が病

気にかかっていないこと、予防接種を受けていることを証明するものである。この証

明書の提出を義務づけることで伝染病などの発生を防いでいる。

・SIA の会場では、SIA 開催前・期間中・開催後も含めて獣医が 24 時間体制で待機する

など監視体制が整えられている。その他、衛生管理として、開催期間中は家畜の敷わ

らを毎日交換し、会場で出る糞尿などの汚物は 1 日 2 回(朝と夜)集め、運営者がま

とめて毎日パリ市内の処理場に運んでいる。

・SIA の前後に会場全体が消毒される。特に牛を展示する場所には、事前に絨毯を敷いて

おき、終了後には絨毯を廃棄する対応をとっている。

・搾乳が必要な家畜のための搾乳用スペースも設置している。

・家畜は種類ごとに展示エリアが分かれており、コンクール会場(リング)も、それぞ

れの展示エリア内に専用のものが設けられている。SIA の開場中はコンクール会場への

移動以外は、動物の移動は禁止されている。

・出展する動物は、所有者が責任を持って連れてくることになっており、所有者は SIA

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開催期間中は基本的に動物たちと一緒に会場で寝泊まりをすることが多い。動物の餌

は所有者が与えることとなっており、会場内でも餌を販売している。

■会場の衛生管理

・動物の展示と食品を販売するパビリオンは分けられており、家畜を展示するパビリオ

ン内では食品の販売、レストランの出展を全て禁止している。家畜を展示するパビリ

オン内では運営責任者の特別許可を取得した場合のみ、無料の試食(有料提供は不可)

だけは可能としている。

・SIA の出展者はフランスの健康安全法を遵守することになっており、開催期間中は保

健所の監視のもとで厳しい衛生管理が徹底されている。特産品の販売ブースでは、パ

ックされていない商品は基本的に冷蔵庫で保管し、当日に売れ残った商品を翌日販売

することは禁止されている。また、流し台を設けることが必須となっている。SIA では

過去に衛生上の事故は起きたことがない。

・会場内のレストランで火気を使用する場合には、火気使用場所での換気扇の設置など、

フランス国内の火気に関する規則に従う。火気の使用を希望する出展者は、事前に使

用する機械の種類、防火装置、設置場所などを申請し、主催者の許可を得て、運営事

業者の管理の下で使用している。

■動物愛護について

・展示されている動物は、来場者が触れることが可能な距離に展示されてはいるが、動

物の精神的な負担の軽減、事故防止の観点から、動物に触れさせないようにしている。

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2-4 パリ国際農業見本市(SIA)に対する各関係者の認識

本項では、SIAの各関係者に対する聞き取り調査により得られた主な意見等を紹介する。

■パートナー企業

1)パートナーとして SIAに参画した経緯

・パートナー企業となった経緯としては、

① 元々CENECAの構成員として参画(Groupama;保険会社)

② 自らが COMEXPOSIUMに参画依頼(RTL;ラジオ局)

③ SIA でのイベントなどの開催を目的として COMEXPOSIUMからの要請

(INTER FLORA;花ギフト専門企業)

などの例がある。③の場合は、ホールを盛り上げるためのイベントを実施し、集客

に貢献する代わりに、ブース代が免除される場合がある。

2)SIA へのパートナー企業・団体として参画した効果

・SIA は、メディアの取材も多く自社の広報戦略として位置づけている。ブースを出展

するより、会場内で自社のノウハウや技術を紹介するイベントを開催した方が、企

業イメージの向上に貢献するため、パートナーとして参画する方が望ましい。

・農業従事者以外にも、一般消費者をはじめ多様な参加者が来場するため、多様な顧客

層の拡大につながる。パートナー企業として参画することにより、自社の認知度の

向上と新しいビジネスチャンスの創出につながる。

3)パートナー企業・団体としての SIAへの評価

・SIAは、最も規模が大きい見本市で、多様な人々が楽しめるものである。農業従事者

は農業に関する情報を入手する場であり、子供・家族は教育の機会となっている。

・パートナー企業として、SIA は自社を PR する絶好の機会として認識しており、SIA

へ出展を継続することは将来に対する投資の一環として位置づけている。

■出展事業者

1)SIA への出展目的

・業界団体として情報の発信、試食の提供などを通じ、業界全体のイメージアップに

向けた PR を行っている。

・一般消費者に対する自社商品のプロモーションを目的として出展している。自社商

品の試食を提供し、商品の購入を促す。

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2)SIA の優位性・課題

<優位性>

・一般消費者向けの見本市としては圧倒的に集客力が強く、メディアで取り上げられ

る機会が多いので、業界のイメージアップ、商品の PR に貢献している。

・パリのバカンスの時期に合わせて開催され、開催期間中に週末が 2 回あるため、一

般消費者も来場しやすい開催日程となっている。

・大統領をはじめとする政治家が多数来場するため、政治家との接点、コミュニケー

ションの機会である。

<課題>

・SIA のブース料金が高額であり、ブース料の他にブースのデザイン、プロモーション

関連素材、スタッフ人件費、宿泊費等を合わせると、1回の出展費用は非常に高額に

なる。最近は 1 回あたりの出展費用が高額になるため収支バランスも考慮に入れて

出展する企業もある。PR の一環として出展している企業でも、他の PR 媒体と費用

対効果を比較し、SIAへの出展を辞めていく企業も少なくない。

・元々SIAは、一般消費者に対して農業を PRするというイメージであったが、最近は

見本市自体が商業的な感じを受ける(ブース出展料が少しずつ上がる、以前は無料

だったものが有料になるなど)。

・ブースの位置が毎年異なるため、その年のブースの位置によって集客が異なる。

・地方の小規模事業者は、距離的、金銭的等の理由から、9日間連続で参加することが

難しい(いくつかの事業者が共同でブースを出展する例もある)。

3)SIA の出展による効果

・メディアへの露出、政治家と接点を持つことができることを考慮すると良い投資と

して認識している。

・バイヤーとのマッチングは SIALの他、海外でも専門の見本市があるので、SIAでは

意識していない。SIAでは一般消費者とのコミュニケーションを通して顧客の分析や

ニーズの把握を行っている。新製品を開発した際は、会場で試食、試飲を通じて、

一般消費者からの反応を得る重要な機会となっている。

■一般消費者

1)SIA への来場目的

・生きた動物の見学、フランスの地方物産の試食・購入が主な来場目的である。

・子供だけではなく、大人も十分に楽しめる見本市で、家族で来場することができる。

2)一般消費者から見る SIA について

・パリに農場ができるイメージで、お祭り的(イベント的)な要素が強い。生きた動

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物が見られることが、他の見本市とは大きく異なる点である。

・農業を網羅的した展示が行われていることが魅力である。

・開催時期が 2 月でパリの子供は休みであることから、来場しやすい時期である。開

催期間 9日間のうち週末が 2回あることで来場しやすい。(一方で、混雑がひどいと

いう意見も多く挙げられた)

・会場が広く、1 日では全てを見学することができないので、再訪したい。

・入場料が高いため、家族で来場すると入場料だけでなく、食事や物産の購入などで

出費が大きい(1 日の消費金額は 70€~150€)。入場料は、家族割引などの措置があ

ると良い。

3)SIA への来場による効果(意識の変化)

・普段の日常生活では見ることができない生きた動物が展示されていること、農業を

網羅的した展示が行われていること、またブースによっては製品の素材の生産(畜

産)から加工までの全てが理解できることから、子供に対する教育効果が高い。

・SIA に参加して日常の行動に直接的な変化が起きることは少ないが、SIA に来場して

食品の成分表示やエコロジーに対する意識は強くなった。

■その他(食品流通業者・飲食店事業者など)

1)SIA への来場目的

・料理の新しいアイデアの発見、素材の新たな供給先を開拓、既存の取引先への挨拶

を目的としている。

・ブースでは生産者と直接話をするが、会場では連絡先などを聞いて、後日、生産地

を訪問する。(フランスではシェフが素材の生産現場を訪れて自身の目で素材・商品

を確認することが多く、その場での商談はほとんどない。)

2)SIA の参加による効果

・SIA は、一般消費者向けなので、地方の小規模な生産者が出展しており、生産者と接

点を持つことができる。パリで入手可能か、生産者から商品の流通状況について確

認することもある。

・農業コンクールでの受賞商品は、商品を選択するための一つの目安となる。

■その他(メディアなど)

1)SIA の優位性

・一般消費者や農業関連関係者だけではなく、大統領をはじめ、フランス食品・農業・

漁業省長官、国会議員等の政治家、大手企業等、各界から多様な人が参加するので、

ニュースの素材が豊富にある。

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・SIAでは関係者の取材対応も良いので、それぞれのメディアが独自の観点で取材を行

うことができる。

2)国の農業政策との関係

・SIA は、フランス農業のシンボル的な存在であり、国(フランス食品・農業・漁業省)

もブースを設置し、SIAの参加者とコミュニケーションをとっている。

・SIA は、フランス農業のすべてを反映しているわけではなく、フランス農業の良い面

を強調しすぎている傾向もある。農業人口の減少、農家収入の減少等、フランス農

業の課題についての問題提起も必要である。