8
働き方の変化 若者の雇用環境については、我が国の経済の低迷を受け、前述のとおり若者の失業率が上昇するな ど厳しい状況が続いている。本節では、若者の雇用環境の変化について詳細に分析するため、高学歴 化の進行と卒業後の進路の動向、雇用形態の変化、収入の変化について分析するとともに、若者の働 く意識の変化、女性の就業状況の変化、国土交通に関連する産業における若者の就業状況の変化につ いて分析を行う。 (1)雇用環境の変化 (高学歴化の進行) 少子化に伴い18歳以上人口が減少する 中、高等学校進学率及び大学進学率は上昇 を続けている。高等学校進学率は1974年 に初めて90%を超え、近年は100%に近 い水準で推移している。大学進学率は 1960年代から1970年代半ばにかけて及 び1990年以降に上昇しており、2012年 には50.8%と、過半数の者が大学に進学 することになった(図表34)。 こうした若者人口の減少と高学歴化は、 新規学卒者の就職の動向にも影響を与えて いる。新規学卒就職者数の推移を見ると、 ピークの 1966 年には 160 万人を超えてい たが、2011年には約63万人にまで減少 している。学歴別に就職者数の推移をみる と、1950年代は、中学校卒業者が新規学 卒就職者の中心であったが、1960年代に は高校卒業者中心に逆転し、その後、中学校卒の就職者は急速に減少した。1990年代には、大学進 学率の上昇を受けて高校卒就職者が大きく減少し、1998年には大学卒就職者が高校卒就職者を上 回った(図表35)。大学卒就職者は、2010年時点では就職者の過半数を占める54.3%となった。近 年では、大学院卒の就職者も増加しており、新規学卒就職者の高学歴化が進行している(図表36)。 このように、かつては中学校卒や高校卒で働き始めていた人々が大学に進学するようになった結果、 大学卒業者の進路の多様化が進んだと考えられる。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 1950 1952 1954 1956 1958 1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 (年) 42.5 7.9 50.8 90.8 96.5 高等学校(通信課程を除く) 大学(過年度高卒者等を含む) (注) 1 高等学校等への進学率:中学校卒業者及び中等教育学校前期課 程修了者のうち、高等学校、中等教育学校後期課程及び特別支援 学校高等部の本科・別科並びに高等専門学校に進学した者(就職 進学した者を含み、過年度中卒者等は含まない。)の占める比率。 2 大学(学部)への進学率(過年度高卒者等を含む):大学学部入 学者数(過年度高卒者等を含む。)を3年前の中学校卒業者及び中 等教育学校前期課程修了者数で除した比率。 資料)文部科学省「学校基本調査」より国土交通省作成 図表 34 高等学校進学率及び大学進学率の推移 若者の暮らしにおける変化 2 第1節 15 国土交通白書 働き方の変化 2

第2章 若者の暮らしにおける変化 第 - mlit.go.jp...大学院修士課程卒 大学卒 短期大学卒 高等専門学校卒 高校卒 中学校卒 4.5 51.3 0.7 14.9 26.7

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第1節 働き方の変化若者の雇用環境については、我が国の経済の低迷を受け、前述のとおり若者の失業率が上昇するなど厳しい状況が続いている。本節では、若者の雇用環境の変化について詳細に分析するため、高学歴化の進行と卒業後の進路の動向、雇用形態の変化、収入の変化について分析するとともに、若者の働く意識の変化、女性の就業状況の変化、国土交通に関連する産業における若者の就業状況の変化について分析を行う。

(1)雇用環境の変化(高学歴化の進行)少子化に伴い18歳以上人口が減少する中、高等学校進学率及び大学進学率は上昇を続けている。高等学校進学率は1974年に初めて90%を超え、近年は100%に近い水準で推移している。大学進学率は1960年代から1970年代半ばにかけて及び1990年以降に上昇しており、2012年には50.8%と、過半数の者が大学に進学することになった(図表34)。こうした若者人口の減少と高学歴化は、新規学卒者の就職の動向にも影響を与えている。新規学卒就職者数の推移を見ると、ピークの1966年には160万人を超えていたが、2011年には約63万人にまで減少している。学歴別に就職者数の推移をみると、1950年代は、中学校卒業者が新規学卒就職者の中心であったが、1960年代には高校卒業者中心に逆転し、その後、中学校卒の就職者は急速に減少した。1990年代には、大学進学率の上昇を受けて高校卒就職者が大きく減少し、1998年には大学卒就職者が高校卒就職者を上回った(図表35)。大学卒就職者は、2010年時点では就職者の過半数を占める54.3%となった。近年では、大学院卒の就職者も増加しており、新規学卒就職者の高学歴化が進行している(図表36)。このように、かつては中学校卒や高校卒で働き始めていた人々が大学に進学するようになった結果、大学卒業者の進路の多様化が進んだと考えられる。

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42.5

7.9

50.8

90.896.5

高等学校(通信課程を除く)大学(過年度高卒者等を含む)

(注) 1 高等学校等への進学率:中学校卒業者及び中等教育学校前期課程修了者のうち、高等学校、中等教育学校後期課程及び特別支援学校高等部の本科・別科並びに高等専門学校に進学した者(就職進学した者を含み、過年度中卒者等は含まない。)の占める比率。

2 大学(学部)への進学率(過年度高卒者等を含む):大学学部入学者数(過年度高卒者等を含む。)を3年前の中学校卒業者及び中等教育学校前期課程修了者数で除した比率。

資料)文部科学省「学校基本調査」より国土交通省作成

図表34 高等学校進学率及び大学進学率の推移

若者の暮らしにおける変化第2章

第1節

15国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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の就職競争が激化していることが要因となっているとも考えられる(図表38)。

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60(%)

1955 65 75 85 95 2005 11(年)

大学進学率 一時的な仕事に就いた者及び就職も進学もしない者の割合

(注) 1 2003年までは、「一時的な仕事に就いた者及び進学も就職もしない者」に「専修学校・外国の学校等入学者」を含む。2004年以降は、「進学者」に「専修学校・外国の学校等入学者」を含む。

2 「一時的な仕事に就いた者」とは、臨時的な収入を得る仕事に就いた者をいう。資料)文部科学省「学校基本調査」より国土交通省作成

27.1

図表38 大学進学率・一時的な仕事に就いた者及び進学も就職もしない者の割合の推移

(非正規雇用割合の上昇)次に、就職をした者について雇用形態の変化を見てみる。年齢階級別に非正規雇用割合の推移を見ると、非正規雇用者の割合は長期的に上昇しており、特に15〜24歳の層ではバブル崩壊後の1990年代半ばから2000年代半ばにかけて大きな上昇が見られた(図表39)。

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1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)

15~24歳(在学中を除く) 25~34歳 35~44歳55~64歳

45~54歳65歳以上 全年齢平均

(注) 1 割合は、「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の合計に対するものである。2 在学中を除く15~24歳は2000年からの数値。3 「非正規の職員・従業員」について、2008年以前の数値は「パート・アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員・嘱託」及び「その他」の合計、2009年以降は、新たにこの項目を設けて集計した数値を掲載している。なお、2009年及び2010年分の結果については、2011年5月17日に置き換えたため、過去に公表した数値と一部異なる。また、これに伴い、2009年及び2010年の「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の割合についても、再計算した結果に置き換えている。

資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

図表39 年齢階級別非正規雇用割合の推移

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19551957195919611963196519671969197119731975197719791981198319851987198919911993199519971999200120032005200720092011(年)

160.6

63.4

全就業者数中学校卒高校卒高等専門学校卒短期大学卒大学卒大学院修士課程卒

資料)文部科学省「学校基本調査」より国土交通省作成

図表35 学歴別就職者数の推移

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1990 2000 2010(年)

大学院修士課程卒 大学卒短期大学卒 高等専門学校卒高校卒 中学校卒

4.5

51.3

0.7

14.9

26.7

1.9

2.1

34.7

0.814.1

42.3

5.9

0.8

27.9

0.87.6

54.3

8.6

資料)文部科学省「学校基本調査」より国土交通省作成

図表36 学歴別就職者割合の推移

(大学卒業者の就職率の低下)次に、大学卒業者について卒業後の進路を見ると、1990年代始めまでは卒業者のうち就職した者の割合は70%から80%台の水準で推移したが、バブル崩壊後は低下を続け、1991年の81%から2000年の56%まで下落した。2001年以降は回復を見せていたものの、2008年以降はリーマンショックの影響等により再び厳しい状況となっている(図表37)。

01955 65 75 85 95 2005 11(年)

102030405060708090100(%)

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3.5(倍)

(注) 1 2003年までは、「一時的な仕事に就いた者及び進学も就職もしない者」に「専修学校・外国の学校等入学者」を含む。2004年以降は、「進学者」に「専修学校・外国の学校等入学者」を含む。2 「一時的な仕事に就いた者」とは、臨時的な収入を得る仕事に就いた者をいう。

資料)文部科学省「学校基本調査」、リクルートワークス研究所「大学求人倍率調査」より国土交通省作成

新卒者の求人倍率(右軸)

不詳・死亡の者一時的な仕事に就いた者及び進学も就職もしない者臨床研修医進学者就職者

図表37 大学卒業後の進路

一方、大学卒業者のうち一時的な仕事に就いた者及び就職も進学もしない者の割合は、バブル崩壊後の就職率の低迷と表裏一体の動きとして上昇し、2003年には過去最高の27.1%となった。一時的な仕事に就いた者及び就職も進学もしない者の増減は、卒業時の景気や雇用情勢に大きく左右されると考えられ、厳しい雇用情勢(低い求人倍率)となった2000年前後のほか、2000年代末に上昇している。また、1960年代〜1970年代半ば及び1990年代に大学進学率が上昇した時期にも一時的な仕事に就いた者及び就職も進学もしない者の割合が大きく上昇していることから、大学卒業者の中で

働き方の変化第1節

16 国土交通白書

第1節

17国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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1982 1987 1992 1997 200220032004 20052006200720082009 2010 2011 2012

(注) 1 1982年から1997年については、フリーターを、年齢は15 ~ 34歳と限定し、[1] 現在就業している者については勤め先における呼称が「パート」又は「アルバイト」である雇用者で、男性については継続就業年数が1-5年未満の者、女性については未婚で仕事を主にしている者とし、[2]現在無業の者については家事も通学もしておらず「パート・アルバイト」の仕事を希望する者と定義し、集計している。

2 2002年からフリーターを15 ~ 34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者とし、[1] 雇用者のうち勤め先における呼称が「パート」又は「アルバイト」である者、[2] 完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者、[3] 非労働力人口のうち希望する仕事の形態が「パート・アルバイト」で、家事も通学も就業内定もしていない「その他」の者としている。

3 1982年から1997年までの数値と2002年以降の数値とでは、「フリーター」の定義等が異なることから接続しない点に留意する必要がある。

4 2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く数値。資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

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25~34歳15~24歳

(年)

図表42 フリーター数の推移

(注) 1 若年無業者について、年齢を15 ~ 34歳に限定し、非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者として集計。

2 2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く数値。資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

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63(万人)

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25~34歳15~24歳

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)

図表43 若年無業者数の推移

(離職率は高水準で推移)また、一旦就職したものの、離職する者も多い。大学卒の就業者の就職後3年以内の離職率を見ると、バブル崩壊後に上昇し、1995年以降は30%を超える水準が続いた。2004年3月の卒業生の離職率については、ピークとなる36.6%を記録し、以後は低下傾向にあるものの、2009年3月の卒業生については28.8%となるなど依然として高い水準にある(図表44)。高校卒の就業者についても同様に、バブル崩壊以降に離職率が上昇し、2000年3月の卒業生については離職率が50.3%となった。その後は低下傾向にあるが、2009年3月の卒業生で35.7%となっている(図表45)。

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1987 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 992000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11(年) 3月卒

(注) 1 事業所からハローワークに対して、新規学卒者として雇用保険の加入届が提出された新規被保険者資格者の生年月日、資格取得加入日等資格取得理由から各学歴ごとに新規学校卒業者と推定される就職者数を算出し、更にその離職日から離職者数・離職率を算出している。

2 3年目までの離職率は、四捨五入の関係で1年目、2年目、3年目の離職率の合計と一致しないことがある。

資料)厚生労働省資料より国土交通省作成

3年目2年目1年目

11.1

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7.6

6.6

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8.4

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10.6

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10.4

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9.3

32.0

13.9

11.3

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34.7

15.3

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9.4

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9.7

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14.3

図表44 新規大学卒業者の在職期間別離職率の推移

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1987 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11(年) 3月卒

(注) 1 事業所からハローワークに対して、新規学卒者として雇用保険の加入届が提出された新規被保険者資格者の生年月日、資格取得加入日等資格取得理由から各学歴ごとに新規学校卒業者と推定される就職者数を算出し、更にその離職日から離職者数・離職率を算出している。

2 3年目までの離職率は、四捨五入の関係で1年目、2年目、3年目の離職率の合計と一致しないことがある。

資料)厚生労働省資料より国土交通省作成

3年目2年目1年目

19.8

14.6

11.9

46.2

21.8

15.2

11.8

48.7

21.5

14.7

11.0

47.2

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45.1

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19.3

11.6

8.8

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18.7

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21.2

14.8

10.6

46.6

24.0

14.8

9.3

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13.2

9.7

46.8

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14.6

9.6

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25.1

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14.6

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25.0

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21.6

11.8

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40.4

19.5

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37.6

17.2

10.1

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19.5

12.3

31.8

20.8

20.8

図表45 新規高校卒業者の在職期間別離職率の推移

世代別に非正規雇用割合の推移を見ると、男性では、20代前半の非正規雇用割合が継続的に上昇しており、特に1970年生まれ以降の世代で大きく上昇している。また、どの世代でも20代前半から20代後半にかけて一旦非正規雇用割合が低下しており、一度非正規雇用に就職したとしても、その後正規雇用への転換が見られる。1978〜1982年生まれの世代では20代前半から後半にかけての非正規雇用割合の低下が大きかったが、依然、20代後半の非正規雇用割合は他の世代よりも高い水準となっている(図表40)。一方女性については、おおむねどの世代で見ても、20代前半の非正規雇用割合が低く、年齢とともに非正規雇用割合が上昇していく傾向にある。ただし、1978〜1982年生まれの世代については、20代前半の非正規雇用割合が高い水準となり、その後20代後半にかけて非正規雇用割合が低下した。女性の社会進出が進む中で、正規雇用での働き方を希望する者が増えていると考えられるが、世代ごとに見ると、20代前半の非正規雇用割合は男性と同様に1970年代生まれ以降の世代で大きく上昇している(図表41)。フリーターやニートと呼ばれる若年無業者(15〜34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者)の数も増加している。フリーター数はバブル崩壊以降急速に増加し、2003年には217万人に達した。その後5年間は減少が続いたが、2009年にはリーマンショック等を受け再び増加に転じ、2012年は180万人となった(図表42)。ニート数は、2002年以降、60万人を超える水準で推移しており、2010年には一旦減少が見られたものの、2012年には再び増加し63万人となった(図表43)。

0

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45(%)

20代前半 20代後半 30代前半 30代後半 40代前半 40代後半

1983~87年生まれ

1978~82年生まれ1968~72年生まれ

1963~67年生まれ

1958~62年生まれ

1973~77年生まれ

(注) 非正規割合は、「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の合計に占める「非正規の職員・従業員」の割合である。

資料)厚生労働省「平成23年版労働経済の分析」

図表40 世代別に見た非正規雇用割合の推移(男性)

(注) 非正規割合は、「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の合計に占める「非正規の職員・従業員」の割合である。

資料)厚生労働省「平成23年版労働経済の分析」

0

10

20

30

40

50

60

70

20代前半 20代後半 30代前半 30代後半 40代前半 40代後半

1983~87年生まれ

1978~82年生まれ

1973~77年生まれ

1968~72年生まれ 1963~67年生まれ

1958~62年生まれ

(%)

図表41 世代別に見た非正規雇用割合の推移(女性)

働き方の変化第1節

18 国土交通白書

第1節

19国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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 また、雇用形態の変化について見てみても、フリーターから正社員への転職は、フリーター期間が半年以内の場合、男性では約7割、女性では約6割が正社員になっているが、フリーター期間が3年を超える場合、正社員になれた割合は男性で約6割、女性で約4割となっており、フリーター期間が長ければ長いほど正社員になることが難しくなると言える(図表49)。

(収入は減少傾向)我が国の経済状況や若者の雇用環境が変化する中で、若者の収入にも変化が見られる。収入の変化は、いつどれだけのお金を何に費やすかといった消費行動のあり方を変化させるものであることから、若者の暮らしの変化の根本にあるものと言うことができる。

①年収の変化年齢階級ごとに年収の変化を見ると、20代及び30代の年収は他の年齢層よりも低い水準で推移している。また、1990年代後半から現在にかけては、それぞれの年齢階級で年収の減少が見られるが、30〜34歳及び35〜39歳については特に減少傾向が顕著である(図表50)。

②賃金上昇率の変化世代別に実質賃金の推移を見ると、より高齢の世代では年齢の上昇に伴う賃金の上昇が相対的に大きく、カーブが急な右上がりになっているのに対し、若い世代では、年齢の上昇に伴う賃金の上昇が相対的に小さく、カーブの傾きが鈍くなっている(図表51)。このように、年齢の上昇に伴う賃金の上昇が若い世代で縮小している背景には、若い世代における非正規雇用割合の高まりがあると考えられる。正規雇用者と非正規雇用者の賃金を比較すると、非正規雇用者の賃金水準が正規雇用者に比べて低いのと同時に、非正規雇用者については正規雇用者に見られるような年齢の上昇に伴う賃金の上昇が見られないことが分かる。これは、非正規労働者では、労働組合等を通じた賃金交渉力が弱いことのほか、技能形成を進める仕組みが乏しい結果、賃金が上昇しにくい状況にあるためと考えられる(図表52)。

01020304050607080

(%)

6ヵ月以内 7ヵ月から1年 1年から2年 2年から3年 3年超(フリーター期間)

72.572.564.064.0

56.556.5 55.155.142.942.9

54.154.138.338.3

58.358.352.252.2

58.958.961.761.7 60.060.0 62.162.1

57.057.048.948.9

(注) 2011年の調査によるもので、20代の男女が対象。資料)独立行政法人労働政策研究・研修機構「大都市の若者

の就業行動と意識の展開」(第3回若者のワークスタイル調査)より国土交通省作成

男性計

女性

図表49 フリーターから正社員への転職状況

250

350

450

550

650

199091 92 93 94 95 96 97 98 99

200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

(万円)

(年)

年齢階級計 20 ~ 24歳 25 ~ 29歳 30 ~ 34歳35 ~ 39歳 40 ~ 44歳 45 ~ 49歳 50 ~ 54歳55 ~ 59歳 60 ~ 64歳 65歳~

(注) 1 「年収=きまって支給する現金給与額×12+特別給与額」として算出した。きまって支給する現金給与額とは、労働契約等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支給された現金給与額(所定内給与、所定外給与を含む。賞与等の特別給与は含まない。)。特別給与額は、前年1年間の額。

2 調査結果は企業規模10人以上3 実質年収は、消費者物価指数(2010年基準、持家の帰属家賃を除く総合)を用いて算出した。

資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、総務省「消費者物価指数」より国土交通省作成

474.1

297.1

371.5

427.1

483.4

図表50 年齢階級別一般労働者の年収の推移(実質)

若者(15〜34歳)の失業率の内訳を求職理由別に見ると、最も割合が高いのは自発的離職による失業で、その構成比は2011年で約4割を占めている(図表46)。また、転職入職者の「前職をやめた理由」を見ると、10代〜30代の女性では、全年齢と比べ、労働条件の悪さや結婚・出産等を挙げる者が多い。10代〜30代の男性では、全年齢と比べ、会社の将来に不安を感じたり、収入や労働条件に不満を感じたりした者が多い(図表47)。このように若者が就職後短期間のうちに離職してしまう背景としては、学校卒業時の就職環境が厳しい世代ほど、不本意な就職先に就職した者が多いために将来の離職が増えるということが考えられ、実際に、大学卒業者の離職率は新卒時の大学卒求人倍率が低いほど高まる傾向にある。

このように、労働環境の改善を求めて離職をする者は多くいるものの、必ずしも転職を経て収入が改善されたり、雇用形態が改善されたりするとは限らない。転職者について転職前後の収入の増減を見ると、転職後に収入が増加した者の割合は、25〜34歳、35〜44歳のいずれの年齢階級についても20%台後半から30%台後半となっている(図表48)。

0123456789

(%)

1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11(年)

1.41.4

2.52.5

0.80.81.51.5

その他学卒未就職自発的離職非自発的離職

(注) 1 求職理由別若年失業率(男女計、15~34歳)=求職理由別若年失業者/若年労働人口2 2011年の数値は被災3県を除く全国。

資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

図表46 求職理由別若年失業率の推移

資料)厚生労働省「平成23年雇用動向調査」より国土交通省作成

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)

4.4 7.0 13.1 4.0

2.6 7.4 16.1 8.2

3.3 4.1 12.5 9.4

1.7 8.3 10.6 4.5

6.0 6.4 20.5 0.2

3.5 6.2 12.8 5.5

11.7 9.8 9.8 0.7

13.0 10.3 8.8 1.0

10.9 12.2 7.80.9

4.5 12.4 12.0 0.5

1.3 13.6 7.8 0.0

8.0 8.5 7.5 0.6

35~39歳

30~34歳

25~29歳

20~24歳女性

男性

19歳以下

女性合計

35~39歳

30~34歳

25~29歳

20~24歳

19歳以下

男性合計

仕事の内容に興味を持てず職場の人間関係収入が少ない結婚・出産・育児・介護会社都合

能力・個性・資格を生かせず会社の将来が不安労働条件が悪い定年・契約期間の満了その他の理由

図表47 転職入職者が前職をやめた理由

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)0510152025303540

(%)

25~34歳35~44歳

35.9

32.1

(注) 1 2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く数値の割合差2 転職者とは就業者のうち前職のある者で、過去1年間に離職を経験した者

資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

図表48 収入が増えた転職者の割合

働き方の変化第1節

20 国土交通白書

第1節

21国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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(2)働く意識の変化厳しい雇用状況の中で、若者の働く意識はどのように変化しているのだろうか。新入社員に対し、転職に関する考え方を尋ねたアンケートによると、「今の会社に一生勤める」と答えた者の割合は、「きっかけ、チャンスが有れば転職してもよい」と答えた者の割合を上回っており、その差は近年拡大傾向にある(図表54)。また、理想的な仕事について尋ねた調査では、「収入が安定している仕事」を選択する者の割合が他の年齢層と比べて高くなっている一方で、「自分にとって楽しい仕事」を選ぶ者の割合も高くなっており、経済面での安定性を望む一方で、どのような内容の仕事でも良いというわけではなく、「楽しさ」を求めているように、自分の価値観に合った仕事を選択しようとしていることがうかがえる(図表55)。また、新入社員の海外勤務の希望を見ると、海外で「働きたいとは思わない」と回答する者の割合が2001年の29.2%から2010年の49%に上昇する一方で、「どんな国・地域でも働きたい」と回答する者の割合もこの10年で最大となっている。両者の中間的な志向である「国・地域によっては働きたい」と考える者の割合は減少していることから、積極的に海外で働きたいかそうでないかの意思が両極に強く出るようになったと見ることができ、この点においても、自分の価値観を明確に持っており、それに基づいた行動を取ろうとする様子が見てとれる(図表56)。

10

0

20

30

40

50

60

70(%)

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年)資料)(公財)日本生産性本部「2012年度 新入社員春の意識調査」より国土交通省作成

41.946.8

50.6 51.3

49.3

50.5

46.2

50.7

38.839.7

34.4

35.2

27.9

30.3 30.4

26.6

60.1

27.3 23.7 22.2

20.523.1

27.3

30.8

29.8

38.3

39.845.9

47.1

55.257.4

54.4

今の会社に一生勤めるきっかけ、チャンスが有れば、転職してもよい

図表54 転職に対する考え方

54.7

72.8

49.4

70.5

52.2

61.1

44.2

60.1

40

45

50

55

60

65

70

75

80

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

(%)

収入が安定している仕事(20代) 自分にとって楽しい仕事(20代)収入が安定している仕事(全体) 自分にとって楽しい仕事(全体)

あなたにとってどのような仕事が理想的だと思いますか。(複数回答)

資料)内閣府「国民生活に関する世論調査」より国土交通省作成

(年)

図表55 理想的な仕事

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)

2010

2007

2004

2001(年)

資料)学校法人産業能率大学「新入社員のグローバル意識調査」より国土交通省作成

あなたは今後、海外で働きたいと思いますか

17.3 53.4 29.2

24.2 47.1 28.7

18.0 45.8 36.2

27.0 24.0 49.0

肯定的:70.7 否定的

肯定的:71.3 否定的

肯定的:63.8 否定的

肯定的:51.0 否定的

どんな国・地域でも働きたい国・地域によっては働きたい働きたいとは思わない

図表56 新入社員の海外勤務の希望

100

110

120

130

140

150

160

170

180

20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳

1960年代前半生まれ1960年代後半生まれ1970年代前半生まれ1970年代後半生まれ1980年代前半生まれ

(注) 1 1981年、86年、91年、96年、2001年、06年、11年の年齢階級別賃金を用い、生まれた年代によって若年時からの賃金の伸びがそれぞれどの程度であったかを算出したもの。2 生まれた年代ごとに20~24歳の時(基準年)の実質賃金を100とし、その後5年刻みでどのように実質賃金が推移したかを基準年との比較で表した。

3 実質賃金は、消費者物価指数(2010年基準、持ち家の帰属家賃を除く総合)を用いて算出した。

資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、総務省「消費者物価指数」より国土交通省作成

図表51 世代別に見た実質賃金の推移(20〜24歳時の実質賃金=100)

200.4235.9

272.7310.7

349.1385.9 398.9 384.4

297.4281.6

171.7 188.2200.6 200.3 196.6 193.4 191.2 194.0 215.5

198.0

0

100

200

300

400

500

20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69

男女計(千円)

(歳)

資料)厚生労働省「平成24年賃金構造基本統計調査」より国土交通省作成

正規雇用者 非正規雇用者

図表52 雇用形態・年齢階級別賃金

③収入格差の動向このように非正規雇用者の増大を背景とした収入の減少が起こる中で、世代内の収入格差も増大している。世代別に、雇用者の年間収入についてのジニ係数の推移を見ると、女性については大きな変化は見られないものの、男性については、若い世代ほど、各年齢時点においてジニ係数が高まっており、収入の格差が拡大していることが分かる(図表53)。

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

0.4

0.45

0.5

25~29 30~34 35~39 40~44 45~49(歳)

(男性)

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

0.4

0.45

0.5

25~29 30~34 35~39 40~44 45~49

(女性)

(歳)

1958年~ 62年生まれ1963年~ 67年生まれ

1968年~ 72年生まれ

1973年~ 77年生まれ

1978年~ 82年生まれ

1958年~ 62年生まれ

1963年~ 67年生まれ

1968年~ 72年生まれ

1973年~ 77年生まれ

1978年~ 82年生まれ

(注) 1 役員も含む雇用者総数をもとに推計した。2 調査時点によって年間収入階級が異なるので2007年の年間収入階級(15区分)に線型補完方を用いて統一し時系列比較が可能となるよう処理した。3 ジニ係数の処理に当たっては、年間収入階級の中央値を用い、1,500万円以上の階級は平均2,000万円として処理した。4 ●のポインターは終点であり、2007年における各コーホートの到達年齢階級を示している。

資料)厚生労働省「平成23年版労働経済の分析」

図表53 世代別に見たジニ係数の推移(男女別)

働き方の変化第1節

22 国土交通白書

第1節

23国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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0

5

10

15

20

25

30

35

40(%)

専業主婦 再就職 両立 DINKS 非婚就業

19.7

35.2

30.6

3.3 4.9

1987年1992年1997年2002年2005年2010年

(注) 1 18~34歳未婚者。その他及び不詳の割合は省略。2 専業主婦:結婚し子どもを持ち、結婚あるいは出産の機会に退職し、その後は仕事を持たない。

  再就職 :結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ。

  両立  :結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける。  DINKS :結婚するが子どもは持たず、一生仕事を続ける。  非婚就業:結婚せず、仕事を一生続ける。

資料)社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(独身者調査)」

図表59 女性の理想ライフコース

(%)

専業主婦 再就職 両立 DINKS 非婚就業

1987年1992年1997年2002年2005年2010年

05101520253035404550

9.1

36.1

24.7

2.9

17.7

(注) 1 18~34歳未婚者。その他及び不詳の割合は省略。2 専業主婦:結婚し子どもを持ち、結婚あるいは出産の機会に退職し、その後は仕事を持たない。

  再就職 :結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ。

  両立  :結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける。  DINKS :結婚するが子どもは持たず、一生仕事を続ける。  非婚就業:結婚せず、仕事を一生続ける。

資料)社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(独身者調査)」

図表60 女性の予定ライフコース

(結婚後の就業継続割合は上昇、出産後の就業継続割合は横ばい)これまで女性は、就業していても結婚・出産・育児に伴って退職する者が多く、また、出産後に復職するとしても、育児と両立がしやすいパートタイム労働の形で就業することが多かった。近年、女性の就業率の上昇が見られる中で、ライフステージごとに見た場合、女性の就業状況はどのように変化しているのだろうか。我が国の女性の労働力率を年齢階級別に見た場合、結婚・出産時期に当たる20代後半から30代にかけて労働力率が著しく減少するいわゆる「M字カーブ」を描くことが知られている。このM字カーブの底は依然として落ち込みが見られるものの、年々上昇をしており、この変化は、未婚・晩婚化、結婚・出産年齢の変化、結婚・出産に伴う退職の動向の変化、雇用形態の変化等の様々な要因によって起こっていると考えられる。M字カーブの中で、「15〜19歳」については、大学等への進学率の高まりを受けて、労働力率は低下傾向にある。M字のボトムは、1975年(42.6%)は「25〜29歳」、1985年(50.6%)、1995年(53.7%)は「30〜34歳」であったが、2011年(67.0%)は「35〜39歳」へと移っており、女性の晩婚化・晩産化が影響していると考えられる。25〜29歳及び30〜34歳で労働力率の上昇が見られる背景としては、大学卒などで就業する者が増えてきていること、未婚化の進展により長期的に

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90(%)

15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~(歳)

[77.2]

[67.6][67.0]

[75.7]

53.7

50.6

42.6 43.9

71.3

67.9 68.1

61.5

1975年1985年1995年2011年

(注) 1 「労働力率」とは、15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合。2 2011年の[ ]内の割合は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果。

資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

図表61 女性の年齢階級別労働力率の推移

(3)女性の就業状況の変化(女性の社会進出の進展)今から約30年前の1980年、我が国では、夫婦のうち男性が主な働き手となる片働き世帯が主流であった。その後、共働き世帯数は継続的に増加し、1997年には共働き世帯が片働き世帯数を上回ることとなった。その後も共働き世帯は増加を続けており、片働き世帯数との差は拡大傾向にある(図表57)。

10821114 1096

1038 1054

952 952 933

946 930897 888

903 915 930

955 937

921889 912

916 890 894 870 875 863 854 851825 831 797

600

700

800

900

1000

1100

1200(万世帯)

1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

614645

664708 721 722 720

748 771783

823877

914 929943

908 927

949 956 929 942 951 951 949961

988 9771013 1011 995 1012

(注) 1 「片働き世帯」とは、夫が非農林業雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口及び完全失業者)の世帯。2 「共働き世帯」とは、夫婦ともに非農林業雇用者の世帯。

資料)総務省「労働力調査特別調査」、「労働力調査」より国土交通省作成

共働き世帯片働き世帯

図表57 共働き世帯・片働き世帯の推移

年齢階級別に女性の就業率を見ると、20代後半〜30代前半の上昇が目立つ。1975年には25〜29歳では41.4%、30〜34歳では43.0%だった就業率は、2011年にはそれぞれ72.8%、64.2%まで大きく上昇した(図表58)。このような女性の就業率の上昇の背景のひとつには、女性の労働意欲の高まりがあると考えられる。女性の理想とするライフコースを尋ねると、「両立コース」(結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける)及び「再就職コース」(結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ)を選択する者が2010年時点でそれぞれ30%を超えており、特に両立コースを選択する者については1992年の調査以降一貫して増加傾向にあるなど、家庭と仕事を両立しようとする女性の意欲の高まりが見られる(図表59、60)。

1968 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 2000 02 04 06 08 10(年)40

45

50

55

60

65

70

75(%)

全年齢 20~24歳 25~29歳30~34歳 35~39歳

(注) 1 1972年以前については、沖縄分は含まれていない。2 2011年については、東日本大震災の影響により、岩手県・宮城県・福島県において調査実施が一時困難となったため、補完的に推計した数値となっている。

資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

72.8

64.2

43.041.4

図表58 年齢階級別女性の就業率の推移

働き方の変化第1節

24 国土交通白書

第1節

25国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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ずれの年齢区分においても就業率は上昇しているが、「正社員」、「パート・アルバイト」、「派遣社員・嘱託・その他」の雇用形態ごとの就業率を見ると、就業率全体の上昇は、「正社員」の増加よりも、「パート・アルバイト」及び「派遣社員・嘱託・その他」の増加によるところが大きい(図表65、66)。

資料)総務省「就業構造基本調査」より国土交通省作成

01020304050607080

(%)

15歳~19歳

20歳~24歳

25歳~29歳

30歳~34歳

35歳~39歳

40歳~44歳

45歳~49歳

50歳~54歳

55歳~59歳

60歳~64歳

65歳以上

3.7

12.6

0.9

22.0

9.0

16.0

12.6

18.6

9.6

23.8

8.0

29.9

7.8

31.8

7.4

29.6

5.7

25.0

4.4

17.2

4.2

0.93.3

36.4 42.831.3 26.7 25.9 26.3 24.9 19.6

8.5 2.1

正社員 パート・アルバイト 派遣社員・嘱託・その他

図表66 雇用形態別・年齢階級別女性の就業者割合(2007年)

資料)総務省「就業構造基本調査」より国土交通省作成

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

15歳~19歳

20歳~24歳

25歳~29歳

30歳~34歳

35歳~39歳

40歳~44歳

45歳~49歳

50歳~54歳

55歳~59歳

60歳~64歳

65歳以上

正社員 パート・アルバイト 派遣社員・嘱託・その他

11.74.3

0.3

1.9

1.9

1.21.3

1.7 1.81.8

1.8

1.7 0.5

8.7

9.1

11.4 18.522.1 19.7

13.98.6

5.1 1.3

57.6

36.323.2 21.8 23.2 23.5 21.8

14.6 6.4 1.7

図表65 雇用形態別・年齢階級別女性の就業者割合(1987年)

(管理職に占める女性の割合は低水準)また、管理職に占める女性の割合を見ても、十分な水準になっているとは言えない。係長、課長、部長等の職位別に見ると、女性の登用率はどの職位についても年々上昇しているが、職位が高くなればなるほど女性が占める割合は低くなっている(図表67)。

(4)国土交通に関連する産業における若者の就業状況の変化(産業別の国内総生産は建設産業で減少)建設業、不動産業、運輸業等、国土交通に関連する産業は、人々の生き生きとした暮らしや我が国経済の発展を支えるとともに、日々の生活における安全・安心の確保や多様性ある地域の創造に重要な役割を果たす産業である。我が国経済における国土交通に関連する産業の位置付けを見てみると、2000年の水準を100とした産業別の国内総生産は、全産業では緩やかに減少傾向にある中、運輸業及び不動産業はおおむね横ばいで推移している。一方、建設業の国内総生産は減少傾向にあり、2011年には71.2となるなど、我が国における建設産業の縮小が見られる(図表68)。

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18(%)

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11(年)資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より国土交通省作成

民間企業の部長相当民間企業の課長相当民間企業の係長相当

1.3

2.0

4.6 5.06.2 6.6

7.36.4

7.3 7.3 7.8 8.1 8.2 8.1 8.39.6 9.4

11.010.4 10.8

12.4 12.713.8

13.7

15.3

2.0 2.3 2.9 2.5 2.6 2.83.1 3.7 3.2 3.4 4.0 3.6

4.5 4.6 5.0 5.1 5.86.5 6.6 7.2

7.0

8.1

1.1 1.2 1.7 1.6 1.4 1.3 1.4 2.2 2.0 2.1 2.2 1.8 2.43.1 2.7 2.8

3.7 4.1 4.1 4.9 4.25.1

図表67 女性管理職の割合

111.7

78.1

122.3

71.2

98.0 100

110.8

95.3 95.3

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 200120022003200420052006200720082009 2010 2011

資料)内閣府「国民経済計算」より国土交通省作成(年)

全産業 建設業運輸業

製造業不動産業

130

120

110

100

90

80

70

60

図表68 産業別国内総生産の推移 (2000年=100)

就業を継続する者が増えてきていること、結婚・出産を経ても就業を続ける者が増えていること等の要因が考えられる(図表61)。中でも、結婚・出産と就業継続の関係について見てみると、結婚に伴う退職と出産に伴う退職は異なる動きを見せていることが分かる。結婚前後に妻がどのような就業状態であったかを見ると、結婚後も就業を継続する者の割合は6割前後で推移しており、結婚退職する者の割合は1985〜1989年の37.3%から2005〜2009年の25.6%まで減少している(図表62)。一方、出産前後に妻がどのような就業状態であったかを見ると、妊娠前に就業していた者の割合が増加していることから、出産退職する者の割合が1985〜1989年の37.4%から2005〜2009年の43.9%に増加するとともに、出産後も就業を継続する者の割合も24.0%から26.8%へと微増している(図表63)。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100(%)

1985~89 1990~94 1995~99 2000~04 2005~09(年)

56.6

37.3 34.5

56.9

31.2

58.3 62.4 61.0

25.625.6

不詳結婚前から無職結婚後就業結婚退職就業継続

(注) 1 対象は初婚同士の夫婦。2 第11回、第13回、第14回調査の結婚後15年未満の夫婦を合わせて集計(客体数10,764)

資料)社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(夫婦調査)」

図表62 結婚年別に見た結婚前後の妻の就業変化

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100(%)

1985~89 1990~94 1995~99 2000~04 2005~09(年)5.7

18.3 24.0 16.3

37.7

34.6

8.1

39.3

32.8

13.0

11.2 14.8

11.9

17.1

9.7

43.9

24.128.5

40.637.4

35.5

24.4 24.2 26.7 26.8

(注) 1 対象は初婚同士の夫婦。2 第12回~第14回調査の第1子が1歳以上15歳未満の夫婦を合わせて集計(客体数9,973)

資料)社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)(夫婦調査)」より国土交通省作成

不詳妊娠前から無職出産退職就業継続(育休なし)就業継続(育休利用)

図表63 第1子出生年別に見た出産前後の妻の就業変化

これについて、結婚前、妊娠前に就業していた者に限定して就業を継続した者の割合を見ると、結婚前に就業していた者のうち就業を継続した者の割合は1985〜1989年の60.3%から2005〜2009年の70.5%に上昇したものの、妊娠前に就業していた者のうち出産後も就業を継続した者の割合は38〜39%台で推移しており、約30年間変化がない(ただし、出産後も就労を継続した者のうち、育児休業制度を利用して就業を続けた者の割合は高まっている)ことから、女性にとって依然として仕事と子育ての両立が難しい環境となっていることが分かる(図表64)。

(非正規雇用による就業の増加)また、M字カーブにおいて労働力率が高まっている25〜29歳及び30〜34歳の年齢層について、就業者の雇用形態の変化を見てみる。1987年と2007年を比較すると、25〜29歳と30〜34歳のい

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

1985~89 1990~94 1995~99 2000~04 2005~09(年)

60.3 62.3

39.0

(9.3) (13.0)

(22.0) (24.2)(17.6)

39.3 38.1 39.8 38.0

65.170.9 70.5

結婚前後 第一子出産前後

(注) 1 結婚前、妊娠時(第一子)に就業していた妻に占める結婚後・出産後に就業を継続していた妻の割合。

2 ( )内は育児休業制度を利用して就業を継続した割合。資料)社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出

産に関する全国調査)(夫婦調査)」より国土交通省作成

図表64 結婚・出産前後の妻の就業継続割合

働き方の変化第1節

26 国土交通白書

第1節

27国土交通白書

働き方の変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

第2章

若者の暮らしにおける変化

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(若者の就業者数は減少)また、産業ごとの状況を、若者の就業者数という観点から見ると、若者の全就業者数が減少傾向にある中、国土交通に関連する産業においても若者の入職者数は減少しており、産業の縮小がここでも見られる。2000年の水準を100とした場合、若者(35歳未満)の産業別の入職者数は、不動産業では増減を繰り返して推移しているものの、建設業及び運輸業では減少傾向にあり、特に建設業ではこの10年で大きく減少している(図表69)。

産業ごとに入職者と離職者のバランスを見てみると、入職者数から離職者数を引いた入職超過数は、不動産業においてはほぼ横ばいで推移しているものの、建設業及び運輸業においては長期的に減少傾向にあり、新規に産業に入ってくる若者の数がネットで見ても減少していることが分かる(図表70)。

この結果、産業ごとの就業者の人口構成にも変化が現れている。就業者に占める40歳未満の割合を産業別に見ると、その割合は全産業で減少傾向にあり、2000年の42.4%から2012年の38.5%まで減少している。建設業及び運輸業についても就業者に占める40歳未満の割合は減少傾向にあるが、全産業に比べて低い水準にあり、割合の減少幅も大きくなっている。不動産業については、他産業に比べて40歳未満の占める割合が低い水準にあったが、更に低下している(図表71)。

158.4

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 200120022003200420052006200720082009 2010 2011(年)

全産業 建設業運輸業

製造業不動産業

123.4 123.4

116.6

91.666.4

55.4

40.7

(注) 1 1991 ~ 2008年は「運輸業」、2009年からは「運輸業、郵便業」に産業分類が改訂されている。

2 1991 ~ 2008年は「不動産業」、2009年からは「不動産業、物品賃貸業」に産業分類が改訂されている。

資料)厚生労働省「雇用動向調査」より国土交通省作成

図表69 35歳未満の産業別入職者の推移 (2000年=100)

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

建設業不動産業運輸業

(千人)

(年)

(注) 1 1991 ~ 2008年は「運輸業」、2009年からは「運輸業、郵便業」に産業分類が改訂されている。

2 1991 ~ 2008年は「不動産業」、2009年からは「不動産業、物品賃貸業」に産業分類が改訂されている。

資料)厚生労働省「雇用動向調査」より国土交通省作成

-50

0

50

100

150

200

図表70 35歳未満の産業別入職超過数の推移

42.4

38.5

38.9

33.6

28.6 23.5

40.2

31.3

2,000

2,200

2,400

2,600

2,800

3,000

20

25

30

35

40

45

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

(万人)(%)

(年)

全産業 製造業 建設業 不動産業

(注) 2011年は岩手県、宮城県及び福島県を除く。資料)総務省「労働力調査」より国土交通省作成

40歳未満就業者(全産業)(右軸)運輸業

図表71 40歳未満の産業別就業者の割合

働き方の変化第1節

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若者の暮らしにおける変化