47
11 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成 24 4 月に公表された被害想定 1) では、地震の揺れだけではなく地震に起因する火災によって甚大な被害が発生 する可能性が改めて示された。 今後、地震火災への対策を一層推進していくためには、起こり得る災害像を 詳細に把握することが必要であるが、従来の被害想定のみでは、次の 2 つの点 において消防機関として火災被害の軽減対策を検討するためには十分とは言え ない。 特定の震源を想定していること 震源から遠い地域では被害が少なく、その地域で大きな地震が発生した 時の被害像が描かれない。実際にはどこで地震が発生するかは特定できな いため、「管轄区域で大きな被害が発生する地震が発生したらどうなるか」 を地域ごとに想定する必要がある。 最終的に想定される被害量を算定していること 被害想定は特定の地震による最終的な被害量を算定しているが、地震後 に発生する火災被害は時間経過とともに拡大する上、最終的な被害量は対 応によって大きく異なるため、消防活動や延焼拡大状況を考慮し、時間の 経過を踏まえた上で被害の全体像を把握する必要がある。 本章では上記の 2 点を考慮し、東京都の地震時における地域別出火危険度測 2) (以下「出火危険度」という。)と同様に工学的基盤に一定の地震動を入力 した後に想定される出火件数を想定し、従来からある延焼シミュレーションを ベースとした消防隊運用プログラムを一部改良し、消防運用を踏まえた地震火 災による被害量を時間経過ごとに把握した。

第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

  • Upload
    others

  • View
    4

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

11

第2章 地震火災による延焼被害量の算定

東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成 24 年 4 月に公表された被害想定1)では、地震の揺れだけではなく地震に起因する火災によって甚大な被害が発生

する可能性が改めて示された。

今後、地震火災への対策を一層推進していくためには、起こり得る災害像を

詳細に把握することが必要であるが、従来の被害想定のみでは、次の 2 つの点

において消防機関として火災被害の軽減対策を検討するためには十分とは言え

ない。

① 特定の震源を想定していること

震源から遠い地域では被害が少なく、その地域で大きな地震が発生した

時の被害像が描かれない。実際にはどこで地震が発生するかは特定できな

いため、「管轄区域で大きな被害が発生する地震が発生したらどうなるか」

を地域ごとに想定する必要がある。

② 最終的に想定される被害量を算定していること

被害想定は特定の地震による最終的な被害量を算定しているが、地震後

に発生する火災被害は時間経過とともに拡大する上、最終的な被害量は対

応によって大きく異なるため、消防活動や延焼拡大状況を考慮し、時間の

経過を踏まえた上で被害の全体像を把握する必要がある。

本章では上記の 2 点を考慮し、東京都の地震時における地域別出火危険度測

定 2)(以下「出火危険度」という。)と同様に工学的基盤に一定の地震動を入力

した後に想定される出火件数を想定し、従来からある延焼シミュレーションを

ベースとした消防隊運用プログラムを一部改良し、消防運用を踏まえた地震火

災による被害量を時間経過ごとに把握した。

Page 2: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

12

第1節 地震火災による延焼被害量の算定手法

従来の延焼シミュレーションでは考慮していなかった消防隊等による消火

効果を含めた延焼被害量を、東京消防庁の延焼シミュレーションと被害想定

を踏まえた震災時の同時多発火災等への対応力に関する調査研究 3)(平成 25

年 3 月)で検討した消防隊運用プログラムに一部改良を加えたものを活用し、

算定した(図 2-1-1)。

図 2-1-1 消防隊運用プログラムの全体像

1 災害発生

⑴ 火災

住民等が屋内における初期消火に失敗したものを火災として扱う(図

2-1-2)。

図 2-1-2 火災の考え方

災害発生

②覚知

③出場

④水利部署

⑧延焼防止

⑤筒先配備

⑥放水

活動終了転戦

①出火点設定

出場先決定

⑦充水活動

防御活動

未包囲火災なし未包囲火災あり

⑤筒先配備⑥放水

⑧延焼防止

⑦充水活動

Y Y

①出火点設定

③出場

②覚知

④水利部署

道路閉塞(車両通行不可)

道路閉塞(車両通行不可)

⑦充水活動

覚 知消防機関が火災の発生を認知すること

水利部署消防車両等が防火水槽等に到着し、放水準備を整えること

充水活動

防火水槽等の水量が不足した際に、別の防火水槽から可搬ポンプ等により消火用水を充填すること延焼防止

消防部隊等の消火活動により火勢拡大の危険がなくなった状態転 戦

消防活動終了後、他の火災現場に向かうこと

出火初期消火成功

非火災

出火初期消火失敗

火災

Page 3: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

13

⑵ 出火時間の設定

地震後に複数の火災が兵庫県南部地震時と同様の出火パターン(時間

間隔)で発生するものとした。兵庫県南部地震に関する兵庫県及び大阪

府の 23 の消防本部からの資料を基に 1 月 17 日から 26 日までの 10 日間

に発生した全火災をリスト化したものから 24 時間以内に発生した 203 件

を集計し、分析を行った。集計結果によると、発災から 24 時間以内に発

生した全 203 件の火災のうち、73.9%の 150 件が発災 3 時間以内に発生し

ていた。そこで、出火時間は 3 時間後までと仮定し出火関数を設定した。

発災の 5 時 46 分から 8 時 46 分までの出火件数を時間経過の累積で表

し、時間経過における累積出火件数比率を表した(図 2-1-3)。この累積

出火件数比率から「1-累積出火件数比率」を求め(図 2-1-4)、指数近似

式を算定し、再度「1-(1-累積出火件数比率)」を計算することにより、

発災から 3 時間以内に全ての火災が発生する出火関数(式[2-1-1])を作

成し、後述の本節2⑶で選択する火点に順に出火時間を与えた(図 2-1-5)。

𝑦 = 1 − 0.674𝑒−0.02𝑥 ······························ [2-1-1]

y : 累積出火件数比率

x : 地震発生からの経過時間(分)

図 2-1-3 累積出火比率

図 2-1-4 「1-累積出火件数比率」の近似式

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100110120130140150160170180

1ー累積出火比率

時間経過(分)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180

累積出火件数比率

時間経過(分)

近似式

y = 0.674e-0.02x

R² = 0.9301

Page 4: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

14

図 2-1-5 累積出火曲線

設定する出火点数から出火点数の逆数を計算し、1 火点あたりの累積出

火比率を求めた。出火点の 1 点目の出火時間は発災時(経過時間 0 分後)

とし、2 点目以降は 1 火点あたりの累積出火件数比率を加算し、当該値を

式[2-2-1]の y へ代入して、出火時刻を逆算し、出火時間を設定した。

また、出火時間が 3 時間を超える場合は、すべて 3 時間を出火時間と

して設定した。

なお、発災から 15 分経過すると、累積出火件数比率は 0.5 に達する(想

定火災件数の 50%が発生)。

⑶ 延焼拡大

延焼面積等の延焼火災の拡大の状況は、延焼シミュレーションにより

求めた(図 2-1-6)。

図 2-1-6 延焼シミュレーションによる延焼拡大の状況

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100110120130140150160170180

累積出火件数比率

経過時間(分)

y=1-0.674e-0.02x

Page 5: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

15

2 出火点設定

⑴ 出火点数

発生する可能性のある出火件数を大きく超える出火点数まで試行する

こととし、消防署ごとに設定する出火点数は、消防署別の平均出火件数

(出火危険度(第 8 回) 2)において出火危険度を決定する際に計算された

最も出火が多い冬 18 時の消防署ごとの出火件数)(以下「予想出火件数」

という。)の 1.5 倍を上限とした。

⑵ 出火の候補点

出火の候補点は消防署管轄内(以下「管内」という。)の 250m メッシュ

に振り分け、各メッシュの出火候補点は、東京都の地震時における地域

別延焼危険度測定(第 8 回) 4)(以下「延焼危険度」という。)で設定した

9 火点のうち、6 時間後の延焼面積が最も大きかった火点を選択した(図

2-1-7)。

図 2-1-7 出火の候補点

⑶ 出火メッシュの選択

管内の全メッシュからランダムに選択したメッシュに対し、「メッシュ

内に 1 件以上火災が起きる確率 Pi(式[2-1-2])」とその都度発生させる乱

数(0~1)とを比較して、「Pi>乱数」の場合にそのメッシュを選択する

ことにより出火の判定を行う。この作業を各消防署の予想出火件数に達

するまで繰り返し、管内の出火メッシュを決定した。

𝑃𝑖 = 1 − 1 −𝑓𝑖

𝑛𝑖 𝑛𝑖

································ [2-1-2]

i : メッシュ番号

f : メッシュの予想出火件数

n: メッシュ内の建物数

署管轄内の出火点

消防署管轄

署管轄外の出火点

各メッシュで延焼面積最大となる出火点

Page 6: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

16

3 覚知

⑴ 通報手段

通信網の途絶や輻輳を考慮し、発災直後の 119 番通報は繋がらないもの

とし、覚知は出火建物周辺の住民・歩行者等による消防署所への駆付通報

のみとした。

ただし、山間部を含む多摩地区の 5 つの消防署(八王子、青梅、町田、

秋川、奥多摩消防署)については、消防団の可搬消防ポンプ積載車に搭載

されている無線を活用することにより通報が可能であることを想定し、分

団格納庫に駆付通報することにより覚知できることとした。

⑵ 火災認知

出火建物周辺の住民等が屋外から火災を認知するまでには、出火から 5

分間を要することとした 5)。

⑶ 駆けつけ

火災を認知した住民は直近の署所に 80.0m/分(4.8km/時)で移動するこ

ととし 6)、駆付時に移動する距離は、道路屈曲率を考慮して、出火点か

ら直近署所までの直線距離の 1.4 倍とした。

4 出場等

⑴ 消防隊

ア 職員の参集

被害が最大となる可能性を考慮するため、交替制職員(3 部制のうち

1 部員)のみが勤務している休日や夜間時に地震が発生したと想定した。

このことから、発災直後は交替制職員のみで対応することとし、その

他の職員は参集後に対応することとした。

職員の参集は、東京消防庁の消防署勤務職員の東北地方太平洋沖地

震時の参集状況から、30 分ごとの時間別平均参集率を算定した(図

2-1-8)。その算定結果と各消防署の参集予定人数から 30 分ごとの消防

署別時間別参集人員を算定した(式[2-1-3])。

発災直後は、平常時に運用している消防ポンプ車(以下「消防ポンプ

車」という。)のみ出場可能とし、参集後は、5 人が参集した時点で非

常時に運用できる消防ポンプ車(以下「非常用ポンプ車」という。)1

台(1 隊)を編成することとして、時間別出場可能台数を算定した(式

[2-1-4])。

なお、非常用ポンプ車は、車検等の整備時の代替車両や震災時等の

増強用として配置されている。

Page 7: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

17

𝑁𝑗 ,𝑡 = 𝑁𝑆,𝑗 × 𝑅𝑆,𝑡 ·································· [2-1-3]

𝐾𝑗 ,𝑡 = 𝑁𝑗 ,𝑡 5 ···································· [2-1-4]

Nj,t : 各消防署の時間別参集人数

NS,j : 各消防署の参集予定人数

RS,t : 東京消防庁の消防署勤務職員の東北地方太平洋沖地震時の

時間別平均参集率

Kj,t : 各消防署の時間別出場可能台数

j : 消防署番号

t : 時間(t = 30,60,90,120,150,180,210,240,270,300,330,360 分)

※ [ ]はガウス記号であり、小数点以下を切り捨てた値

図 2-1-8 東京消防庁の消防署勤務職員の東北地方太平洋沖地震時の時間別平均参集率

算定した非常用ポンプ車の消防署別経過時間別出場可能台数を示す

(表 2-1-1)。

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

30分

60分

90分

120分

150分

180分

210分

240分

270分

300分

330分

360分

390分

420分

450分

480分

510分

540分

570分

600分

630分

660分

690分

720分

750分

780分

810分

840分

870分

900分

930分

960分

990分

1020分

1050分

1080分

1110分

1140分

1170分

1200分

1230分

1260分

1290分

1320分

1350分

1380分

1420分

1450分

1480分

1510分

参集率

時間経過

Page 8: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

18

表 2-1-1 消防署別非常用ポンプ車の経過時間別出場可能台数

イ 出場

消防隊は東京消防庁震災警防規程事務処理要綱に基づく管内の震災

出場区(図 2-1-9)の震災第 1 出場区及び第 2 出場区で火災を覚知した

場合には即時出場とした。その他の地区での火災は、発災から 15 分経

過後から出場対象とするが、出場先の選択時に複数の火災を覚知して

いる場合には震災出場区の上位の火災に優先的に出場することとした。

また、出場は火災を覚知してから 1 分後に出場可能とした。

30分 60分 90分 120分 150分 30分 60分 90分 120分 150分

丸の内 1 0 1 上野 2 0 2

麹町 1 0 1 浅草 1 0 1

神田 2 0 1 2 日本堤 1 0 1

京橋 1 0 1 荒川 2 0 2

日本橋 1 0 1 尾久 1 0 1

臨港 1 0 1 千住 2 0 1 2

芝 2 0 2 足立 3 0 3

麻布 1 0 1 西新井 2 0 2

赤坂 1 0 1 本所 2 0 2

高輪 2 0 2 向島 2 0 2

品川 2 0 2 深川 4 0 3 4

大井 2 0 1 2 城東 2 0 2

荏原 2 0 2 本田 2 0 2

大森 2 0 2 金町 2 0 2

田園調布 2 0 1 2 江戸川 2 0 2

蒲田 3 0 2 3 葛西 2 0 2

矢口 2 0 2 小岩 2 0 2

目黒 2 0 2 立川 2 1 2

世田谷 3 0 3 武蔵野 2 0 1 2

玉川 2 0 2 三鷹 2 0 2

成城 2 0 2 府中 3 0 2 3

渋谷 3 0 3 昭島 2 0 1 2

四谷 1 0 1 調布 2 0 2

牛込 2 0 1 2 小金井 2 0 1 2

新宿 2 1 2 小平 2 0 2

中野 2 0 2 東村山 2 0 1 2

野方 2 0 2 国分寺 2 0 1 2

杉並 3 0 3 狛江 2 0 1 2

荻窪 3 0 3 北多摩西部 2 0 1 2

小石川 3 0 1 3 清瀬 2 0 1 2

本郷 2 0 1 2 東久留米 1 0 1

豊島 3 0 2 3 西東京 2 0 2

池袋 2 0 2 八王子 4 1 4

王子 3 0 2 3 青梅 2 0 1 2

赤羽 2 0 2 町田 3 1 3

滝野川 2 0 1 2 日野 2 0 1 2

板橋 2 0 2 福生 2 0 2

志村 3 0 3 多摩 3 0 1 3

練馬 2 0 2 秋川 2 0 1 2

光が丘 2 0 1 2 奥多摩 1 0 0 0 0 1

石神井 2 0 2

経過時間別出場可能台数消防署名

非常用ポンプ車数

経過時間別出場可能台数消防署名

非常用ポンプ車数

Page 9: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

19

図 2-1-9 震災出場区

⑵ 消防団

ア 消防団員の参集

消防団員は常時待機しているわけではないため、出場体制が整うま

での時間を、以下のように算定した。

分団担当区域面積と分団員数から求める分団員密度を用いて、分団

格納庫を中心として団員 5 名を確保できる面積となる円(半径 r)を設

定し、この半径 r を参集のための移動距離と設定した。

また、発災と同時に参集を開始することは難しいことから、地震の

揺れが収まった後に、消防団員は分団格納庫へ参集を開始すると仮定

し、参集開始時間を発災 3 分後とした。

さらに、出動までにかかる時間を考慮し、団員 5 名の参集後、1 分後

から出動できるものとした(式[2-1-3])。

ただし、山間部を含む多摩地区の 5 つの消防署(八王子、青梅、奥

多摩、秋川、町田消防署)については、空地などが管轄区域の大部分

を占めるため、空地には分団員が居住していないものとして、各消防

署の管轄面積から東京都都市計画地理情報システムの土地利用現況よ

り空地(公園・運動場等、鉄道・港湾、田、畑、樹園地、採草放牧地、

水面・河川・水路、原野、森林)を除いた面積を用いて分団員密度を

算出し、出場可能時間を算定した。

𝑇𝑑 =𝑟𝑑

𝑣 + 𝑇1 + 𝑇2 ··············································· [2-1-3]

𝑟𝑑 = 𝐴𝑑

𝜋 𝐴𝑑 = 5𝐷𝑑 𝐷𝑑 =

𝑁𝑑𝑆𝑑

Page 10: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

20

Td : 消防団が出場可能になるまでの時間

rd : 団員 5 名を含む円の半径

v : 団員参集速度(80.0m/min)

Ad : 団員 5 名を含む円の面積

Dd : 分団区域毎の団員密度

Nd : 分団区域毎の団員数

Sd : 分団区域の面積

d : 分団番号

T1 : 出動準備時間(1 分)

T2 : 参集開始時間(3 分)

イ 出場

消防団は一定時間待機後、受持区域内の最寄りの出火点へ出場させ

た。同一の分団格納庫に所属する可搬ポンプ及び積載車は、同一の出

火点へ出場するものとした。

⑶ 出場経路

消防ポンプ車、非常用ポンプ車、可搬ポンプ及び積載車は、最短時間

経路を移動するものとした。ただし、可搬ポンプは東京都の市街地状況

調査(第 8 回) 7)(以下「市街地状況調査」という。)のすべての道路で通

行可能とし、消防ポンプ車及び可搬ポンプ積載車は、震災時の建物倒壊

による道路閉塞を考慮し、通行可能な道路を選定することとした。

道路閉塞については、道路両側に建っている木造系建物の棟数の情報

及び町丁目別木造系建物圧壊率 Prk を用い、「道路リンクごとの建物圧壊

が 1 棟以上発生する確率(道路リンク層破壊発生率)PL,l(l はリンク番

号)」を算定した(式[2-1-4])。

さらに、PL,l を用いて、「消防署別層破壊発生リンク数 NL,j(j は消防署

番号)」を算定し、消防署管轄区域ごとに各道路リンク層破壊発生率 PL,l

の高い順に NL,j(整数値)に達するまで層破壊発生リンクとして選択した

(式[2-1-5])。町丁目別建物木造系圧壊率は、堀江ら 8)による層破壊被害

関数を活用して、地盤分類別の建物圧壊率を算定し(表 2-1-2)、地震に

関する地域危険度測定調査(以下「地域危険度」という。)(第 7 回)9)

で決定した地盤分類(図 2-1-10)により設定した。

消防ポンプ車、非常用ポンプ車及び可搬ポンプ積載車は、消防署別層

破壊発生リンクを除く道路と幅員 8m 以上の道路は通行可能とした。算定

結果について、道路幅員別建物倒壊発生率を表 2-1-3 に、層破壊発生リ

ンクを図 2-1-11 に、消防署別の道路沿道建物倒壊発生率を表 2-1-4 に示

す。

𝑃𝐿,𝑙 = 1 − 1 − 𝑃𝑟𝑘 𝑚 𝑙 ····························· [2-1-4]

分団員5名を含む範囲円(面積Sd,半径rd)

分団区域d(面積Sd,団員数Nd)

Page 11: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

21

PL,l : 道路リンク別層破壊発生率

Prk : 町丁目別建物木造系圧壊率

ml : 町丁目別道路リンク別沿道木造系建物数

k : 町丁目番号

l : 道路リンク番号

𝑁𝐿,𝑗 = 𝑃𝐿,𝑙𝑞𝑗𝑙=1 ··································· [2-2-5]

NL,j : 消防署別層破壊発生リンク数

j : 消防署番号

l : 道路リンク番号

q : 消防署別リンク総数

表 2-1-2 地盤分類別建物圧壊率

図 2-1-10 町丁目別地盤分類

増幅率 地表速度(c/m) 圧壊率(%)

1 山地 1.0 30 0.026

2 丘陵 1.4 42 0.222

3 台地1 1.6 48 0.472

4 台地2 1.7 51 0.652

5 谷底低地1 1.5 45 0.330

6 谷底低地2 1.8 54 0.876

7 谷底低地3 2.0 60 1.467

8 沖積低地1 1.5 45 0.330

9 沖積低地2 2.3 69 2.758

10 沖積低地3 2.6 78 4.567

11 沖積低地4 2.9 87 6.887

12 沖積低地5 2.9 87 6.887

地盤分類

Page 12: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

22

表 2-1-3 道路幅員別木造系建物倒壊発生率

図 2-1-11 層破壊発生リンク

表 2-1-4 消防署別道路沿道木造系建物倒壊発生率(1/2)

道路幅員 道路リンク数建物倒壊が発生すると判定した道路リンク数

木造系建物倒壊発生率(%)

4m未満 253,604 14,424 5.69

4~6m 271,402 9,881 3.64

6~8m 143,907 4,339 3.02

8m以上 84,852 1,608 1.9

合計 753,765 30,252 4.01

凡例

:消防署管轄範囲

:震災時に通行できる可能性が高い道路

:震災時に通行できる可能性が低い道路

:幅員 8m以上で建物倒壊が発生すると判定した道路

消防署名道路リンク

総数建物倒壊が発生すると判定した道路リンク数

建物倒壊が発生すると判定した道路リンク数期待値

木造系建物倒壊発生率(%)

丸の内 244 0 0.6 0.0

麹町 1,091 4 4.2 0.4

神田 2,644 53 53.6 2.0

京橋 2,043 75 75.2 3.7

日本橋 2,237 79 79.9 3.5

臨港 988 69 69.0 7.0

芝 2,659 66 66.9 2.5

麻布 1,803 19 19.6 1.1

赤坂 1,562 11 11.6 0.7

高輪 1,583 31 31.8 2.0

品川 4,014 117 117.0 2.9

大井 3,194 95 95.3 3.0

荏原 5,852 123 124.0 2.1

大森 9,496 578 578.5 6.1

田園調布 8,347 285 285.9 3.4

蒲田 6,532 641 641.0 9.8

矢口 4,490 531 531.6 11.8

目黒 10,945 150 150.1 1.4

世田谷 19,220 297 297.2 1.5

玉川 9,344 121 121.3 1.3

成城 13,208 152 152.1 1.2

渋谷 10,172 131 131.7 1.3

牛込 3,230 49 49.4 1.5

新宿 6,655 79 79.8 1.2

中野 6,586 106 106.5 1.6

野方 9,492 155 155.6 1.6

杉並 16,505 277 277.3 1.7

荻窪 11,796 172 172.4 1.5

Page 13: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

23

表 2-1-4 消防署別道路沿道建物倒壊発生率(2/2)

消防署名道路リンク

総数建物倒壊が発生すると判定した道路リンク数

建物倒壊が発生すると判定した道路リンク数期待値

木造系建物倒壊発生率(%)

小石川 3,894 68 68.3 1.7

本郷 3,681 56 56.9 1.5

豊島 7,540 80 80.2 1.1

池袋 8,373 108 108.5 1.3

王子 5,467 357 357.0 6.5

赤羽 5,894 484 485.0 8.2

滝野川 4,894 142 142.3 2.9

板橋 8,771 144 144.2 1.6

志村 13,636 482 482.7 3.5

練馬 13,076 177 177.2 1.4

光が丘 8,761 124 124.5 1.4

石神井 20,639 308 308.3 1.5

上野 3,631 248 248.9 6.8

浅草 2,302 145 145.7 6.3

日本堤 2,598 448 448.6 17.2

荒川 5,313 728 728.4 13.7

尾久 4,540 605 605.6 13.3

千住 4,688 924 924.9 19.7

足立 19,229 2,822 2,822.5 14.7

西新井 14,251 2,358 2,358.8 16.5

本所 4,360 557 557.8 12.8

向島 5,529 1,099 1,099.5 19.9

深川 5,379 667 667.2 12.4

城東 6,369 1,020 1,020.2 16.0

本田 15,513 2,803 2,803.1 18.1

金町 9,769 1,448 1,448.8 14.8

江戸川 13,708 1,845 1,845.4 13.5

葛西 7,995 1,048 1,048.7 13.1

小岩 13,760 1,326 1,326.6 9.6

立川 17,220 166 166.5 1.0

武蔵野 6,092 89 89.9 1.5

三鷹 12,927 157 157.2 1.2

府中 15,478 169 169.0 1.1

昭島 8,632 80 80.8 0.9

調布 13,212 170 170.5 1.3

小金井 7,417 104 104.1 1.4

小平 11,579 152 153.0 1.3

東村山 11,439 130 130.9 1.1

国分寺 8,186 117 117.1 1.4

狛江 4,793 73 73.3 1.5

北多摩西部 15,402 178 179.0 1.2

清瀬 5,848 66 66.9 1.1

東久留米 9,797 112 113.0 1.1

西東京 12,085 170 170.9 1.4

八王子 55,590 396 396.1 0.7

青梅 19,572 116 116.7 0.6

町田 33,962 252 252.8 0.7

日野 13,356 113 113.3 0.8

福生 13,355 148 148.8 1.1

多摩 9,992 32 33.0 0.3

秋川 17,179 121 121.7 0.7

奥多摩 2,138 0 0.7 0.0

東京消防庁管内合計

744,743 30,198 30,239.8 4.1

Page 14: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

24

⑷ 出場速度

消防ポンプ車、非常用ポンプ車及び可搬ポンプ積載車は東北地方太平

洋沖地震時の東京都内の渋滞を考慮して、区市町村ごとに表 2-1-5 に示

す速度で走行するものとした 4)。

また、可搬ポンプは走行状態が非常に悪い場合を想定し、東京都内一

律で 2.1km/h の速度で走行するものとした 10)。

表 2-1-5 区市町村別の消防ポンプ車等の出場速度(km/h)

区大型車通行

可能道路※1

普通車通行

可能道路※2 区大型車通行

可能道路※1

普通車通行

可能道路※2

千代田区 12.9 10.4 八王子市 22.8 18.5

中央区 13.8 11.1 立川市 15.7 12.7

港区 13.0 10.5 武蔵野市 15.4 12.5

新宿区 13.7 11.1 三鷹市 17.4 14.1

文京区 13.2 10.7 青梅市 37.5 30.3

台東区 13.7 11.1 府中市 14.3 11.6

墨田区 14.0 11.3 昭島市 17.1 13.8

江東区 15.4 12.4 調布市 13.2 10.7

品川区 13.3 10.7 町田市 16.4 13.2

目黒区 13.8 11.2 小金井市 17.1 13.8

大田区 15.5 12.5 小平市 14.4 11.6

世田谷区 14.6 11.8 日野市 19.2 15.5

渋谷区 13.5 10.9 東村山市 13.7 11.1

中野区 16.1 13.0 国分寺市 21.3 17.2

杉並区 15.3 12.4 国立市 15.1 12.2

豊島区 14.0 11.3 福生市 19.4 15.7

北区 15.1 12.2 狛江市 15.9 12.8

荒川区 15.4 12.5 東大和市 16.4 13.3

板橋区 16.5 13.3 清瀬市 20.8 16.9

練馬区 16.7 13.5 東久留米市 18.2 14.7

足立区 16.4 13.2 武蔵村山市 26.7 21.6

葛飾区 18.3 14.8 多摩市 18.6 15.0

江戸川区 17.8 14.4 稲城市 16.9 13.7

羽村市 18.1 14.6

あきる野市 31.3 25.3

西東京市 18.0 14.5

瑞穂町 19.0 15.3

日の出町 37.5 30.3

檜原村 37.5 30.3

奥多摩町 37.5 30.3

※1「大型車通行可能道路」:幅員12m以上の道路

※2「普通車通行可能道路」:幅員12m未満の道路

Page 15: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

25

5 出場先設定

複数の出火を覚知した際には、消防ポンプ車及び非常用ポンプ車は次の

基準で出場先を決定することとした。

⑴ 出火点を覚知した場合

震災出場区の上位の出火点に最寄の消防署所から必要隊数出場する。最

寄署所では必要隊数に不足の場合、次に距離が近い消防署所から出場する。

⑵ 管内に部隊が残っている場合

次に震災出場区の上位の出火点に直近署所から順に出場する。

⑶ 鎮圧した出火点がある場合

当該出火点への出場部隊が残っている震災出場区の最上位の出火点に

転戦する。

⑷ 防御担当面を延焼防止した場合

同一出火点の未包囲面へ転戦する。

6 水利部署

⑴ 活用水利

建物が倒壊した時の水利部署が困難になることを考慮し、前5で設定し

た消防署別層破壊発生リンク上の水利は活用できないものとし、震災時水

利部署できる可能性の低い水利とした。震災時水利部署できる可能性が高

い及び低い水利(図 2-1-12)と、各消防署の震災時水利部署できる可能性が

高い及び低い水利数及び割合(表 2-1-6)を示した。

図 2-1-12 震災時水利部署できる可能性が高い及び低い水利

凡例

:震災時水利部署できる可能性が高い水利 :震災時水利部署できる可能性が低い水利 :震災時に通行できる可能性が低い道路

Page 16: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

26

表 2-1-6 各消防署の震災時水利部署できる可能性が低い水利数及び割合

数 割合(%) 数 割合(%)

丸の内 151 0 0.0 上野 224 12 5.4

麹町 227 0 0.0 浅草 166 14 8.4

神田 167 2 1.2 日本堤 201 22 10.9

京橋 186 3 1.6 荒川 412 40 9.7

日本橋 157 4 2.5 尾久 246 28 11.4

臨港 219 0 0.0 千住 327 26 8.0

芝 379 8 2.1 足立 877 90 10.3

麻布 176 2 1.1 西新井 595 71 11.9

赤坂 179 0 0.0 本所 354 38 10.7

高輪 276 3 1.1 向島 403 60 14.9

品川 917 12 1.3 深川 1,013 56 5.5

大井 599 22 3.7 城東 855 60 7.0

荏原 519 8 1.5 本田 1,030 157 15.2

大森 798 23 2.9 金町 598 74 12.4

田園調布 469 11 2.3 江戸川 550 58 10.5

蒲田 683 25 3.7 葛西 585 47 8.0

矢口 329 25 7.6 小岩 466 37 7.9

目黒 615 8 1.3 立川 1,078 21 1.9

世田谷 979 11 1.1 武蔵野 428 12 2.8

玉川 698 7 1.0 三鷹 483 11 2.3

成城 766 5 0.7 府中 912 7 0.8

渋谷 790 8 1.0 昭島 433 3 0.7

四谷 152 1 0.7 調布 696 10 1.4

牛込 297 1 0.3 小金井 287 0 0.0

新宿 457 6 1.3 小平 700 8 1.1

中野 351 5 1.4 東村山 535 3 0.6

野方 335 5 1.5 国分寺 372 9 2.4

杉並 656 14 2.1 狛江 202 4 2.0

荻窪 506 10 2.0 北多摩西部 492 9 1.8

小石川 316 8 2.5 清瀬 279 3 1.1

本郷 257 1 0.4 東久留米 193 3 1.6

豊島 370 4 1.1 西東京 450 5 1.1

池袋 285 3 1.1 八王子 1,837 11 0.6

王子 324 11 3.4 青梅 840 7 0.8

赤羽 428 16 3.7 町田 1,406 13 0.9

滝野川 234 4 1.7 日野 596 3 0.5

板橋 643 8 1.2 福生 796 14 1.8

志村 1,151 41 3.6 多摩 779 3 0.4

練馬 561 6 1.1 秋川 616 7 1.1

光が丘 384 3 0.8 奥多摩 124 0 0.0

石神井 737 14 0.0 平均 520 17 3.3

※    震災時水利部署できる可能性が低い水利数とは、4⑶における震災時に通行できる可能性の低い道路リンク  に面する水利数

震災時水利部署できる

可能性が低い水利※所属 水利数

震災時水利部署できる

可能性が低い水利※ 所属 水利数

Page 17: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

27

⑵ 水利への部署可能隊数

東京消防庁震災警防規程の震災消防活動基準に基づき、容量 40m3 以上

80 m3 未満の水利 1 基あたり 1 隊、容量 100 m

3 以上の水利 1 基あたり 2

隊水利部署可能とした。

また、無限水利については、無限水利 1 つあたり 2 隊部署可能とした。

⑶ 水利選定

水利部署位置は、延長ホースの口数で 30 分放水可能な残水量がある水

利のうち、「延焼域の外縁」から最も近い水利を選択した(図 2-1-13)。

また、延焼域内の水利は部署不可とし、部署後は、当該箇所が鎮圧す

るまでは部署を変更しないこととした。

図 2-1-13 水利選定の考え方

⑷ 有効水量

消防力の基準及び消防水利の基準に基づき、部署口数で 30 分間放水可

能な水量とした。30 分間放水可能な水量は、消防ポンプ車及び非常用ポ

ンプ車では最大 3 口(放水量合計 1 m3/分)まで活動できることから 30 m

3、

可搬ポンプ及び積載車は、最大 2 口(放水量合計 0.666 m3/分)での活動

が可能であることから 20 m3 となる。

7 筒先配備

⑴ 消防隊最大放水口数

部署した水利から延焼域外縁までの距離により決定した。

東京消防庁震災警防規程の震災消防活動基準に基づき消防ポンプ車及

び非常用ポンプ車 1 台の活動体制は、車両に 45 本以上ホース積載をする

ことから、次の 4 パターンを想定した。

ア 部署位置から活動位置までホース 15 本以内 ⇒ 3 口活動

イ 部署位置から活動位置までホース 22 本以内 ⇒ 2 口活動

ウ 部署位置から活動位置までホース 45 本以内 ⇒ 1 口活動

エ 部署位置から中継位置までホース 22 本以内 ⇒ 中継 2 口活動

⑵ 消防団最大放水口数

東京消防庁震災警防規程の震災消防活動基準に基づき可搬ポンプ及び

積載車は 15 本以上の積載ホースを想定し、次のとおりとした。

延焼域

ホース延長距離

Page 18: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

28

ア 放水

部署位置から活動位置までホース 7 本以内⇒2 口活動、100m 以内

イ 充水

部署位置から活動位置までホース 15 本以内⇒1 口活動、210m 以内

⑶ 活動可能範囲

活動可能な範囲は、道路の屈曲率を考慮し、次のとおりとした(式

[2-1-6])。

𝐿 = 𝑁𝐻𝑅 ········································ [2-1-6]

L : 到達範囲(直線距離)

N : ホース本数

H : ホースの長さ(20m)

R : 屈曲率(0.7)

ア 3 口活動が可能な範囲 ⇒ 15 本×20m×0.7=210m 以内

イ 2 口活動が可能な範囲 ⇒ 22 本×20m×0.7=308m 以内

ウ 1 口活動が可能な範囲 ⇒ 45 本×20m×0.7=630m 以内

エ 中継が可能な範囲 ⇒ 22 本×20m×0.7=308m 以内

※ 中継した場合、最大で 938m まで活動できる。

(22 本+45 本)×20m×0.7=938m 以内

⑷ ポンプ隊活動内容

部署の位置と水利の残容量により、ポンプ隊の活動内容を決定した(表

2-1-7)。

表 2-1-7 ポンプ隊活動内容

⑸ ホース延長距離

部署した水利から延焼域外縁までの直線距離の 1.4 倍(道路屈曲率を考

慮)とし、必要なホース本数を算定した。

ただし、中継送水のホース延長は、送水隊でダブル送水した場合、22

本、308m 延長でき、放水隊は送水隊部署位置から延焼域外縁までの距離

から 308m 引いた距離を 1 線延長できる。

30m3以上 20m

3以上30m3未満 10m

3以上20m3未満

210m以内 3口放水 2口放水 1口放水

308m以内 2口放水 2口放水 1口放水

630m以内 1口放水 1口放水 1口放水

630m以上938m以内

それ以上

延焼域外縁からの距離水利残容量

中継送水

転戦

Page 19: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

29

⑹ ホース延長時間

ホース延長時間 11)は、次のとおりとした(式[2-1-7])。

𝑇 = 𝑡′ + 𝐾𝑁 ····································· [2-1-7]

T : ホース延長時間(秒)

t’ : ホース延長準備時間(15 秒)

K : 延長形態係数(ホースカー17、手びろめ 34)

N : ホース延長本数

ただし、消防ポンプ車にホースカーを 2 台積載しているものとし、次

のように算出する平均時間を使用した(式[2-1-8])。

𝑇𝑚 = 2 15 + 17𝑁 + 15 + 34𝑁 3 ················ [2-1-8]

Tm : ホース平均延長時間(秒)

8 充水活動

消防隊は行わないものとし、消防団は火点周辺の水利容量が不足した場合

に充水活動を優先するものとした。充水元となる水利は、30 m3 以上の残容

量があり、充水先の水利から 210m 以内で出火点より遠方にあるものとした。

また、充水活動は、可搬ポンプ及び積載車による 1 線延長で実施するこ

とを想定し、ホース延長の直線距離は最大 210m(ホース 15 本で道路屈曲

率を考慮)とした(図 2-1-14)。

充水先は延焼域外縁から 210m 以内にある震災時に利用できる可能性が

高い水利とし、出火点から距離が近い順に選択した。

図 2-1-14 充水活動の考え方

延焼域

210m以内

L1

L2

L3

30t以上

30t以上

30t未満

L1<L2<L3

充水先

充水元

Page 20: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

30

9 放水

東京消防庁震災警防規程の震災消防活動基準に基づき消防隊・消防団の

いずれもホース 1 口あたりの防御担当面を 10m とし、包囲面はそれ以上延

焼拡大しないものとした。

また、延焼阻止に必要な口数は、当該出火点の放水開始時の延焼面積を

円に近似した時の円周の長さから判定した(図 2-1-15)。消防隊は充水中の

水利にも部署可能とした。ただし、放水開始時間は充水完了予定時間から

放水時間を差し引いた時間とし、放水中に残水量がゼロにならないように、

水量が確保できるまで待機することとした。

図 2-1-15 延焼面積の考え方

10 防御活動(図 2-1-16)

⑴ t1 分後

出火から t1 分後に先着隊が到着し、全火面長(延焼区域外周)に対し

担当火面長 l1 だけ延焼阻止活動に着手した場合、担当面はこれ以上延焼

拡大しないものとした。このとき、延焼範囲を円に近似した時の円周と

l1 の比から θ1 を算出した。

⑵ t2 分後

t2 分後の延焼面積は、円に近似した延焼拡大分のうち、先着隊の活動効

果を反映し[360-θ1]/360 だけ(=S1)加算した。

このとき、延焼範囲を円に近似した時の円周と後着隊の担当火面長 l2

との比から θ2 を算出した。

⑶ t3 分後

t3 分後の延焼面積は、円に近似した延焼拡大分のうち、先着隊の活動効

果を反映し[360-θ1-θ2]/360 だけ加算した(=S2)。

全周包囲するまで部隊投入を継続するものとした。

面積S 面積S

円周L

Page 21: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

31

図 2-1-16 消防隊の防御効果

11 鎮圧

防御担当面は、次のいずれかを満たした場合に延焼阻止完了とした。包

囲完了後、以下に示す 2 つの延焼阻止条件のいずれか早い方に達した時点

で判定し、延焼域外周全てが延焼阻止された場合、当該出火点は鎮圧と判

定した。

⑴ 延焼阻止条件1

延焼木造建築物の標準温度曲線 12)より、延焼阻止に必要な放水時間を

30 分間と設定した(図 2-1-17)。

図 2-1-17 木造建築物の標準温度曲線(木材の着火温度:約 260℃)12)

⑵ 延焼阻止条件2

延焼中の建物面積に対し、震災時の包囲消火に必要な単位面積当たり14)の累積放水量を 0.5 m

3/m

2 と設定した(図 2-1-18)。

図 2-1-18 放水量の判定対象となる面積

θ1

θ2

S1

S2

l2

l1

θ1

l1

θ1

θ2

S1

l2

l1

t1分後 t2分後 t3分後

防御担当面焼け落ち範囲

延焼範囲放水量の判定対象となる焼損面積

Page 22: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

32

12 転戦

防御担当面を延焼阻止した時点で管内に延焼中の火点が残っている場合、

転戦し活動を行うこととした。同一出火点に未包囲部分がある場合は、未

包囲部分に転戦し、その他の出火点に転戦する場合は、出場先の選定ルー

ルに準じて転戦先を決定した。

ただし、同一出火点の未包囲部分に転戦する場合、以下の優先順位に従

うこととした(図 2-1-19)。

また、ホースの撤収時間は、延長時間の 2 倍とした 14)。

⑴ 優先順位1

はじめに部署している水利の残容量が放水予定量より多い場合、その

まま使用継続するものとし、ホース撤収はせずに筒先移動(1 分)してか

ら放水開始とした。

⑵ 優先順位2

現在の部署水利の残容量が不足しており、部署位置から未使用ホース

が届く範囲に震災時水利両部署できる可能性が高い水利がある場合、部

署水利から当該水利までホース延長終了後に放水開始とした。

⑶ 優先順位3

部署している水利から直近の震災時水利部署できる可能性が高い水利

へ部署する。

図 2-1-19 同一出火点の未包囲部分に転戦する場合の優先順位

13 活動終了

全ての出火点が鎮圧または焼け落ちた時点でシミュレーションを終了し

た。

また、全ての出火点が延焼拡大を続けている場合でも、6 時間経過した時

点でシミュレーションを終了した。

なお、シミュレーションは、出火点数ごとに 50 ケース実施した。

火水

1. 残水量があるので部署移動時間1分を加算して活動開始

30t以上

30t以上

30t未満

30t未満

水30t以上

②転戦

2. 未使用ホースで延長可能であれば活動済ホースを活用し活動

①撤収

3. 残水量があるので部署移動時間1分を加算して活動開始

ホース不足

③延長

Page 23: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

33

第2節 地震火災による延焼被害量の算定結果

第1節の算定手法によるシミュレーション(以下「評価計算」という。)に

より、東京消防庁管内すべての消防署の延焼被害を算定した。

本節では、サンプル消防署を対象に、詳細な算定結果を示した後に、すべ

ての消防署を対象に、予想出火件数における算定結果を示した。

1 サンプル消防署

算定については、東京消防庁管内すべての消防署を対象に行ったが、膨

大なデータであり、すべての消防署を対象に詳細な結果を示すことができ

ないため、サンプルとして杉並消防署及び足立消防署の結果を示した。

⑴ サンプル消防署の管内概要

杉並消防署及び足立消防署の管内概要を示した(表 2-2-1)。

杉並消防署は特別区内の消防署の中で出火危険度(第 8 回)2)平均ランク

は低いが、延焼危険度(第 8 回)4)平均ランクは非常に高く、延焼危険が高

い市街地を管内に持っている。

一方、足立消防署は特別区の消防署の中で延焼危険度(第 8 回)4)平均ラ

ンクは平均的であるが、出火危険度(第 8 回)4)平均ランクは高く、出火危

険が高い市街地を管内に持っている。

延焼危険が高い市街地及び出火危険が高い市街地を管内に持つ各消防

署について、詳細な結果を示した。

表 2-2-1 両消防署の管内概要

⑵ 杉並消防署

ア 管内図(図 2-2-1)

管轄範囲は、杉並区の東部半分を占め、面積はその 55.8%にあたる

18.99km2 であり、世帯数は 178,667 世帯、人口は 312,156 人である。

道路は、管内の東側に環状 7 号線、西側に環状 8 号線がそれぞれ南

北に伸びており、ほぼ北側に青梅街道、南側に甲州街道とその上部に

首都高速 4 号線がそれぞれ東西に伸びている。交通機関としては、JR

杉並 足立

管内面積(km2) 34.02 24.46

署所数 7 5

ポンプ車数(うち非常用) 17(3) 13(3)

消防団組織 9分団(計37部) 12分団(計44部)

消防団可搬ポンプ数 37 44

消防団積載車数(車両のみ) 5 4

出火危険度(第8回)2)平均ランク(1~6) 2.2(特別区58署中47番目) 3.64(特別区58署中12番目)

延焼危険度(第8回)4)平均ランク(0~9) 5.19(特別区58署中3番目) 3.39(特別区58署中30番目)

予想出火件数 17.58 62.93

最大出火件数(予想出火件数の1.5倍) 26 94

Page 24: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

34

中央線、京王線、京王井の頭線が走っており、青梅街道の地下には、

東京メトロ丸ノ内線が走っている。街区構成は、JR 阿佐ヶ谷駅・高円

寺駅及び地下鉄駅周辺、京王線駅周辺の部分的な商業地域を除いては、

大部分が住宅地域である。

署所は、管内の中央やや北西側に本署があり、北側に阿佐ヶ谷出張

所、南側に永福出張所、東側に堀ノ内出張所・高円寺出張所、西側に

高井戸出張所、本署と堀ノ内出張所の中間に馬橋出張所がそれぞれ配

置している。

東側は中野区南部を管轄する中野消防署、西側は杉並区西部を管轄

する荻窪消防署、世田谷区北東部を管轄する世田谷消防署、北側は中

野区北部を管轄する野方消防署とする位置にある。

図 2-2-1 杉並消防署管内図

イ 出火・延焼危険度(図 2-2-2)

出火危険度(第 8 回)2)、延焼危険度(第 8 回)4)ともに管内の北部が高

い。延焼危険度については、管内の南部も比較的高く、杉並消防署管

内全体では延焼危険が高くなっている。

図 2-2-2 杉並消防署管内の出火危険度(第 8 回)2)(左図)と延焼危険度(第 8 回)4) (右図)

Page 25: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

35

ウ 道路ネットワーク選択結果

管内の建物倒壊発生率は 1.7%(表 2-1-4)と、他の消防署と比較し

て大きくないことから、閉塞する道路も多くはない(図 2-2-3)。

図 2-2-3 杉並消防署管内の道路ネットワーク選択結果

エ 震災時水利部署できる可能性が高い及び低い水利

管内の道路閉塞が少ないため、震災時水利部署できる可能性の高い

水利も比較的多い(図 2-2-4)。

図 2-2-4 杉並消防署管内の震災時水利部署できる可能性が高い及び低い水利

オ 延焼被害算定結果

(ア) 出火点別延焼面積

6 時間後の出火点数別の延焼面積を示す(図 2-2-5)。

予想出火件数において、消防力を考慮しない場合は、約 100ha 延

焼するが、消防力を考慮すると約 20ha まで減少させることができる。

消防力を考慮する場合としない場合の差が、消防力の効果と言え

ることから、予想出火件数の出火があった場合、消防力によって 80

万 ha の延焼を阻止することができることになる。

凡例

:消防署管轄範囲

:震災時に通行できる可能性が高い道路

:震災時に通行できる可能性が低い道路

:幅員8m以上で建物倒壊が発生すると

判定した道路

凡例

:震災時水利部署できる可能性が高い水利 :震災時水利部署できる可能性が低い水利

Page 26: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

36

図 2-2-5 杉並消防署管内での出火点別延焼面積(6 時間後)

(イ) 予想出火件数での時間経過ごとの延焼面積

予想出火件数における時間経過ごとの延焼面積を示す(図 2-2-6)。

出火件数が 18 件で、消防力を考慮しない場合、延焼面積は時間経過

とともに指数関数的に増加した。

一方、消防力を考慮した場合、延焼面積は時間経過とともに増加

するが、360 分後には約 20ha で抑えられていた。

図 2-2-6 杉並消防署管内の予想出火件数での時間経過ごとの延焼面積

(ウ) 出火点ごとのすべて鎮圧できる比率

出火点ごとのすべて鎮圧できる比率を示す(図 2-2-7)。

出火点ごとのすべて鎮圧できる比率とは、50 回の評価計算結果の

うち、出火点すべてを鎮圧できる回数の比率を表したものである。

出火点が 9 火点までは、すべての評価計算結果においてすべての

0

20

40

60

80

100

120

140

160

0 5 10 15 20 25

延焼面積(h

a)

出火点数

放任

消防力考慮

予想出火件数:18 件

0

20

40

60

80

100

120

0 60 120 180 240 300 360

延焼面積(h

a

経過時間(分)

放任

消防力考慮

Page 27: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

37

出火点を鎮圧できるが、出火点数が増加するごとに鎮圧できる比率

は減少していく。出火点が 19 火点のときに、すべての出火点を鎮圧

できなくなる。

予想出火件数(18 火点)では、すべての出火点を鎮圧できる比率

は 0.1 よりも低く、現有消防力で 18 火点すべてを鎮圧するのは困難

であると言える。

図 2-2-7 杉並消防署管内での出火点ごとのすべて鎮圧できる比率

(エ) 出火点ごとの鎮圧率

出火点ごとの鎮圧率を示す(図 2-2-8)。

鎮圧率とは、前(ウ)とは異なり、出火点のうち、鎮圧できる出火点

の比率を取り、50 回の評価計算結果の平均を出したものである。

前(ウ)ですべての出火点を鎮圧できなかった 19 火点においても、

約 70%の出火点は鎮圧できる。

図 2-2-8 杉並消防署管内での出火点ごとの鎮圧率

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1011121314151617181920212223242526

出火点すべてを鎮圧できる

比率

出火点数

予想出火件数:18 件

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26

鎮圧できる比率

出火点数

予想出火件数:18 件

Page 28: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

38

(オ) 時間経過ごとの出火点すべてを鎮圧できる比率

3 火点ごとに 18 火点までについて、時間経過ごとにそれぞれの出

火点を鎮圧できる比率を示す(図 2-2-9)。6 火点においては、約 240

分後にはすべての出火点を鎮圧できている。

また、9 火点の 360 分後では、鎮圧できる比率は 1.0 に到達してい

ないことから、すべての出火点を鎮圧するのは難しい。

杉並消防署の予想出火件数である 18 火点においては、300 分後で

は鎮圧できる比率は 0 で、すべての出火点を鎮圧できる可能性は低

いことが言える。

図 2-2-9 杉並消防署管内での時間経過ごとの鎮圧できる比率

⑶ 足立消防署

ア 管内図(図 2-2-10)

管轄範囲は、足立区の北東部に位置し、面積は 23 区内 58 消防署中

で最も広く、足立区の 46.0%にあたる 24.46km2 であり、世帯数は約 17

万世帯、人口は約 35 万 3 千人である。

主要道路としては、国道 4 号線(日光街道)及び旧日光街道が南北

に走り、管内中央を環状 7 号線が東西に走っている。

公共の交通機関は、JR 常磐線、東京メトロ千代田線が東西に、東武

伊勢崎線及びつくばエクスプレスが南北に走っている。

地形は、各級の河川が縦横に流れており、軟弱地盤地帯に位置する

低地でかつ平坦な地域であり、梅田、足立及び中川地区は旧町並が残

り、木造建築物が密集している。

署所は、管内の南西側に本署があり、北西側に淵江出張所、北東側

に神明出張所、南東側に大谷田出張所、本署と大谷田出張所の中間か

ら南側に綾瀬出張所がそれぞれ配置している。

東側は中川を境に金町消防署、西側は東武伊勢崎線及び旧梅田堀を

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 60 120 180 240 300 360

出火点すべてを鎮圧できる

比率

時間経過(分)

1

3

6

9

12

15

18

Page 29: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

39

境に西新井消防署、南側は常磐線を挟んで本田消防署、さらに荒川を

境に千住消防署の区域と接し、北側は桁川、綾瀬川及び毛長川を埼玉

県との都県境とする位置にある。

図 2-2-10 足立消防署管内図

イ 出火・延焼危険度(図 2-2-11)

出火危険度(第 8 回)2)、延焼危険度(第 8 回)4)ともに管内の西南部が

高い。延焼危険度については、南西部以外の地域は比較的低いが、出

火危険度については、全体的に高く、足立消防署管内全体では出火危

険が高くなっている。

図 2-2-11 足立消防署管内の出火危険度(第 8 回)2)(左図)と延焼危険度(第 8 回)4) (右図)

ウ 道路ネットワーク選択結果

管内の建物倒壊発生率は 14.7%(表 2-1-4)と他の消防署管内と比較

して大きく、閉塞する道路も非常に多くなっている(図 2-2-12)。特に

南西部において、道路閉塞が多くなっている。

Page 30: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

40

図 2-2-12 足立消防署管内の道路ネットワーク選択結果

エ 震災時水利部署できる可能性が高い及び低い水利

管内の道路閉塞が多いため、震災時水利部署できる可能性の高い水

利が少ない(図 2-2-13)。

図 2-2-13 足立消防署管内の震災時水利部署できる可能性が高い及び低い水利

オ 延焼被害算出結果

(ア) 出火点別延焼面積

6 時間後の出火点別の延焼面積を示す(図 2-2-14)。

予想出火件数において、消防力を考慮しない場合は、約 130ha 延

焼するが、消防力を考慮するとそれを約 80ha まで減少させることが

できる。

消防力を考慮する場合としない場合の差が、消防力の効果と言え

ることから、予想出火件数の出火があった場合、消防力によって 50

万 ha の延焼を阻止することができると言える。

凡例

:消防署管轄範囲

:震災時に通行できる可能性が高い道路

:震災時に通行できる可能性が低い道路

:幅員8m以上で建物倒壊が発生すると

判定した道路

凡例

:震災時水利部署できる可能性が高い水利 :震災時水利部署できる可能性が低い水利

Page 31: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

41

図 2-2-14 足立消防署管内での出火点別延焼面積(6 時間後)

(イ) 予想出火件数での時間経過ごとの延焼面積

予想出火件数における時間経過ごとの延焼面積を示す(図 2-2-15)。

出火件数が 63 件で、消防力を考慮しない場合、延焼面積は時間経過

とともに増加していく。

また、消防力を考慮した場合についても、延焼面積は時間経過と

ともに増加し、360 分後には約 80ha まで増加している。

図 2-2-15 足立消防署管内の予想出火件数での時間経過ごとの延焼面積

(ウ) 出火点ごとのすべて鎮圧できる比率

出火点ごとのすべて鎮圧できる比率を示す(図 2-2-16)。

出火点ごとのすべて鎮圧できる比率とは、50 回の評価計算結果の

うち、各出火点において出火点すべてを鎮圧できる回数の比率を表

したものである。

出火点が 6 火点までは、すべてのシミュレーションにおいてすべて

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

0 30 60 90

延焼面積(h

a)

出火点数

放任

消防力考慮

予想出火件数:63 件

0

20

40

60

80

100

120

140

0 60 120 180 240 300 360

延焼面積(h

a

時間経過(分)

放任

消防力考慮

Page 32: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

42

の出火点を鎮圧できるが、出火点が増加するごとに鎮圧できる比率は

減少していく。出火点が 21 火点のときに、すべての出火点を鎮圧で

きなくなる。

このことから、足立消防署の予想出火件数である 63 火点では、震

災時に現有消防力で出火点すべてを鎮圧するのは困難である。

図 2-2-16 足立消防署管内での出火点ごとのすべて鎮圧できる比率

(エ) 出火点ごとの鎮圧率

出火点ごとの鎮圧率を示す(図 2-2-17)。

鎮圧率とは、前(ウ)とは異なり、出火点のうち、鎮圧できる出火点

の比率を取り、50 回の評価計算結果の平均を出したものである。

前(ウ)ですべての出火点を鎮圧できなかった 20 火点においても、

約 70%の出火点は鎮圧できることがわかる。

図 2-2-17 足立消防署管内での出火点ごとの鎮圧率

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1 6 11 16 21 26 31 36 41 46 51 56 61

鎮圧できる比率

出火点数

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26

出火点すべてを鎮圧できる

比率

出火点数

予想出火件数:63 件

予想出火件数:63 件

Page 33: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

43

(オ) 時間経過ごとの出火点すべてを鎮圧できる比率

3 火点ごとに 18 火点までについて、時間経過ごとにそれぞれの出

火点を鎮圧できる比率を示す(図 2-2-18)。6 火点においては、約 310

分後にすべての出火点を鎮圧できることがわかる。

また、9 火点の 360 分後では、鎮圧できる比率は 1.0 に到達してい

ないことから、9 火点すべての出火点を鎮圧できない訳ではないが、

9 火点すべてを 100%鎮圧できるとは言えないことがわかる。

足立消防署の予想出火件数である 63 火点においては、360 分後で

は鎮圧できる比率は 0 で、すべての出火点を完全に鎮圧できる可能

性はないと言える。

図 2-2-18 足立消防署管内の時間経過ごとの鎮圧できる比率

2 東京消防庁管内消防署の延焼被害量の算定結果

前1のサンプル消防署と同様に、東京消防庁管内すべての消防署におい

て評価計算を実施した。サンプル消防署以外の消防署においても、1 火点か

ら予想出火件数の 1.5 倍の出火点数まで評価計算を実施したが、ここでは予

想出火件数のみの結果を示した。

評価計算結果から算定された延焼面積及び鎮圧率を示す(表 2-2-2)。

また、延焼面積から管轄面積当たりの延焼面積率及び 1 火災当たりの平

均延焼面積を算定した(表 2-2-2)。

東京消防庁管内全域の延焼面積は、13,721,378m2(1,372ha)であった。

ただし、予想出火件数が整数値でない場合は、小数点を四捨五入した値

を予想出火件数として用いた。

⑴ 消防署別延焼面積(Ss)

出火件数が予想出火件数と同じ場合の消防署別延焼面積を延焼面積別

に 5 ランク表示した(図 2-2-19)。東京都の東側を管轄する消防署の他に、

世田谷区及び大田区の一部で延焼面積が大きくなっている。

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 60 120 180 240 300 360

出火点すべてを鎮圧できる

比率

時間経過(分)

1

3

6

9

12

15

18

Page 34: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

44

⑵ 消防署別鎮圧率(Ex)

出火件数が予想出火件数と同じ場合の各消防署における平均鎮圧率

(50 回の平均(鎮圧火災件数/出火件数))を表示した(図 2-2-20)。東

京都の東側を管轄する消防署で鎮圧率が低くなった。

また、丸の内消防署をはじめとする 8 箇所の消防署では、鎮圧率が 100%

であった。

⑶ 消防署別管轄面積あたりの延焼面積率(Sd)

出火件数が予想出火件数と同じ場合の各消防署における延焼面積割合

を表示した(図 2-2-21)。日本堤、千住、尾久、荒川、本田及び向島消防

署で大きくなっており、その中でも向島消防署が最も大きく、管内の約 1

割が延焼する結果であった。

ただし、算出に用いた管轄面積は、東京都都市計画地情報システムデ

ータの土地利用現況より空地(公園・運動場等、鉄道・港湾、田、畑、

樹園地、採草放牧地、水面・河川・水路、原野、森林)を除いた面積と

した。

⑷ 消防署別 1 火災における平均延焼面積(Si)

出火件数が予想出火件数と同じ場合の各消防署における 1 火災あたり

の平均延焼面積を表示した(図 2-2-22)。尾久、千住及び向島消防署で大

きくなっており、その中でも向島消防署が最も大きく、1 火災から約

27,000m2 延焼拡大する結果であった。

表 2-2-2 消防署別延焼面積及び鎮圧率等(6 時間後)(1/2)

方面 消防署予想出火

件数延焼面積(m

2) 鎮圧率(%)

管轄面積当たりの延焼面積率(%)

1火災当たりの

延焼面積(m2)

丸の内 3 597 100.0 0.02 199

麹町 6 5,600 100.0 0.13 933

神田 17 29,845 91.6 0.97 1,756

京橋 20 41,008 90.1 1.21 2,050

日本橋 20 27,657 95.5 0.97 1,383

臨港 7 22,495 99.7 0.26 3,214

芝 22 53,743 90.9 0.75 2,443

麻布 9 22,331 98.2 0.58 2,481

赤坂 6 7,508 100.0 0.18 1,251

高輪 7 7,606 100.0 0.15 1,087

品川 18 113,212 79.2 1.42 6,290

大井 9 71,464 83.6 0.80 7,940

荏原 9 209,107 52.4 3.71 23,234

大森 22 404,850 55.4 2.34 18,402

田園調布 14 115,729 71.1 1.00 8,266

蒲田 24 378,607 48.9 1.78 15,775

矢口 21 277,427 59.1 4.42 13,211

目黒 17 126,302 73.3 0.86 7,430

世田谷 22 363,916 52.3 1.66 16,542

玉川 10 86,615 67.4 0.58 8,662

成城 10 70,233 80.6 0.38 7,023

渋谷 20 134,353 79.9 0.89 6,718

四谷 4 7,004 100.0 0.22 1,751

牛込 10 86,112 67.2 1.67 8,611

新宿 15 139,426 64.3 1.43 9,295

中野 10 95,157 82.0 1.45 9,516

第一方面

第二方面

第三方面

第四方面

Page 35: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

45

表 2-2-2 消防署別延焼面積及び鎮圧率等(6 時間後)(2/2)

方面 消防署予想出火

件数延焼面積(m

2) 鎮圧率(%)

管轄面積当たりの延焼面積率(%)

1火災当たりの

延焼面積(m2)

野方 10 107,592 77.2 1.21 10,759

杉並 18 213,508 75.9 1.15 11,862

荻窪 10 89,067 83.6 0.62 8,907

小石川 11 120,567 62.7 1.88 10,961

本郷 9 109,998 59.1 2.25 12,222

豊島 10 106,279 63.6 1.57 10,628

池袋 9 78,758 74.9 1.27 8,751

王子 15 220,241 68.7 3.72 14,683

赤羽 18 218,234 74.6 2.66 12,124

滝野川 8 88,928 74.5 1.79 11,116

板橋 13 133,831 72.9 1.35 10,295

志村 26 137,804 81.1 0.66 5,300

練馬 11 151,491 58.9 1.12 13,772

光が丘 7 75,090 66.3 0.73 10,727

石神井 13 224,144 52.0 1.05 17,242

上野 17 154,626 61.9 0.81 9,096

浅草 10 55,462 65.8 2.47 5,546

日本堤 14 140,606 54.9 5.40 10,043

荒川 23 468,839 50.0 7.89 20,384

尾久 16 369,700 46.8 9.85 23,106

千住 21 519,232 39.1 7.79 24,725

足立 63 864,311 49.1 3.67 13,719

西新井 42 636,401 44.0 3.51 15,152

本所 30 121,510 76.1 1.99 4,050

向島 26 697,458 36.5 10.62 26,825

深川 39 139,379 79.8 0.70 3,574

城東 44 778,848 43.4 4.66 17,701

本田 56 1,089,898 37.0 6.24 19,462

金町 30 358,837 54.6 2.82 11,961

江戸川 41 692,977 38.9 4.91 16,902

葛西 40 267,826 71.3 1.89 6,696

小岩 30 330,062 57.5 2.56 11,002

立川 11 56,936 87.3 0.21 5,176

武蔵野 7 72,495 73.7 0.70 10,356

三鷹 8 67,462 82.8 0.47 8,433

府中 10 63,180 88.4 0.25 6,318

昭島 5 10,728 98.8 0.08 2,146

調布 10 68,223 83.2 0.37 6,822

小金井 5 50,323 76.8 0.49 10,065

小平 11 97,448 71.3 0.55 8,859

東村山 8 50,128 81.8 0.36 6,266

国分寺 5 29,729 92.0 0.31 5,946

狛江 4 21,686 94.5 0.41 5,422

北多摩西部 8 47,211 80.3 0.25 5,901

清瀬 4 14,118 97.5 0.20 3,530

東久留米 6 66,024 58.3 0.64 11,004

西東京 9 91,951 67.3 0.67 10,217

八王子 30 144,054 80.3 0.18 4,802

青梅 5 4,130 100.0 0.02 826

町田 15 37,356 95.7 0.07 2,490

日野 8 27,609 94.8 0.14 3,451

福生 8 27,877 95.0 0.12 3,485

多摩 3 3,342 100.0 0.02 1,114

秋川 4 9,434 97.5 0.03 2,359

奥多摩 1 530 100.0 0.01 530

1,082 12,659,405 63.1 2.12 594,756

185 1,061,973 84.6 0.23 125,515

1,267 13,721,378 66.2 1.29 10,830

第五方面

多摩地区合計

東京消防庁管内合計

第十方面

第六方面

第七方面

第八方面

第九方面

特別区合計

Page 36: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

46

図 2-2-19 予想出火件数における延焼面積

図 2-2-20 予想出火件数における鎮圧率

平均 169,400m2

最小 530m2

最大 1,089,898m2

標準偏差 214,839

平均 74.5% 最小 36.5% 最大 100.0% 標準偏差 18.4

Page 37: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

47

図 2-2-21予想出火件数における延焼面積割合

図 2-2-22 予想出火件数における1火災あたりの平均延焼面積

平均 1.69% 最小 0.01% 最大 10.62% 標準偏差 0.022

平均 8,892m2

最小 199m2

最大 26,825m2

標準偏差 6,139

Page 38: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

48

第3節 地震火災による延焼被害量に関する分析

第2節で各消防署の算定結果を示した。第3節では、延焼被害量と地域特

性の関係を明らかにするために、これらの結果から地震火災による延焼被害

量に関する分析を行った。

1 東京消防庁管内の分析

各消防署の評価計算結果から、予想出火件数は大きいが現有消防力でも

優勢である消防署や予想出火件数は小さいが現有消防力では劣勢である消

防署など、それぞれ消防署によって地域特性に応じた特徴があることがわ

かる。これらの特徴を捉え、各消防署がどのような特徴を持つ消防署であ

るか認識するために、評価計算結果を用いて東京消防庁管内すべての消防

署を対象にグループ分けを行った。

そこで、出火に関する項目、評価計算結果及び市街地状況を変数として

クラスター分析を行い、各消防署のグループ分けを行った。クラスター分

析は、ユークリッド距離で定義し、ウォード法により分析を行った。分析

に用いた変数(基本統計量)を表 2-3-1 に、各クラスターの変数の平均を

表 2-3-2 に示す。

また、その特徴と主な消防署を表 2-3-3 に、分析した結果(樹形図、地

図)を図 2-3-1 及び図 2-3-2 に示す。

表 2-3-1 基本統計量(消防署単位)

凡例

予想出火件数(基準化)

予想出火件数を管内の建物棟数で除したもの

鎮圧数(基準化)

予想出火件数時の消防隊の運用を考慮した評価計算結果から算定された鎮圧数を管内の建物棟数で除したもの

延焼面積(基準化)

予想出火件数時の消防隊の運用を考慮した評価計算結果から算定された延焼面積を管内の建物棟数で除したもの

90分後までの焼け止まり率

消防署別出火点数候補数(消防署内に含まれるメッシュ毎に設定した出火点数)の内、消防隊の運用を考慮しない場

合の90分後までに焼け止まる出火点数の比率

建ぺい率

市街地状況調査(第8回)の消防署別の平均建ぺい率

木造系混成率

市街地状況調査(第8回)の消防署別木造及び防火造の混成率の合計値

n 平 均 不偏分散 標準偏差 最小値 最大値

出火に関する項目 予想出火件数(基準化) 81 0.00071 0.00000 0.00082 0.00008 0.00591

鎮圧数(基準化) 81 0.00054 0.00000 0.00080 0.00008 0.00591

延焼面積(基準化) 81 5.4 34.7 5.9 0.1 26.5

90分後までの焼け止まり率 81 4.8 57.8 7.6 0.0 49.7

建蔽率 81 44.4 316.8 17.8 0.9 76.3

木造系混成率 81 40.3 292.8 17.1 2.8 74.9

評価計算結果

市街地状況

変 数

Page 39: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

49

表 2-3-2 各クラスターの変数の平均

表 2-3-3 各クラスターの特徴と主な消防署

特  徴 主な消防署

クラスター1出火件数が非常に少ないが、鎮圧数も非常に少ない。しかし、建ぺい率が非常に低いため、延焼する危険性が低く、延焼面積も非常に小さい。

八王子、青梅、秋川、奥多摩

クラスター2

出火件数は非常に多いが、鎮圧数も非常に多く、延焼面積も小さい。木造系混成率が低く、燃えにくい市街地である。

丸の内、麹町、芝、臨港、深川、神田、日本橋、京橋 etc.

クラスター3

出火件数が少ないが、鎮圧数も少ない。しかし、建ぺい率が低いため、延焼する危険性が低く、延焼面積も小さい。

立川、東村山、福生、府中、調布、小平、武蔵野、昭島 etc.

クラスター4出火件数は平均的であり、鎮圧数も平均的である。東京消防庁管内の平均的な延焼被害量の消防署である。

品川、渋谷、牛込、新宿、豊島、小石川、本郷、上野 etc.

クラスター5

出火件数はやや少ないが、鎮圧数も少ない。その結果、延焼面積はほぼ平均的であるが、90分後までの焼け止まり率は低く、延焼が広がりやすい。

荏原、田園調布、野方、杉並、荻窪、光が丘、石神井、練馬、玉川、成城、中野、板橋 etc.

クラスター6

出火件数は多く、鎮圧数はやや少ない。そのため、延焼面積が非常に大きい。90分後までの焼け止まり率も低く、延焼が広がりやすい。

荒川、尾久、千住、向島

出火に関する項目

予想出火件数(基準化)

鎮圧数(基準化)

延焼面積(基準化)

90分後までの焼け止まり率

建蔽率木造系混成率

クラスター1 0.00017 0.00015 0.4 31.0 4.7 66.7

クラスター2 0.00199 0.00190 3.1 5.7 65.9 10.1

クラスター3 0.00021 0.00017 1.3 4.5 23.4 53.1

クラスター4 0.00075 0.00049 7.4 3.5 55.4 31.6

クラスター5 0.00044 0.00025 5.9 1.2 45.4 50.2

クラスター6 0.00097 0.00042 23.1 1.8 53.0 42.8

平均値 0.00075 0.00056 6.9 8.0 41.3 42.4

分類シミュレーション結果 市街地状況

Page 40: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

50

図 2-3-1 クラスター分析結果(樹形図)

クラスター1

クラスター2

クラスター3

クラスター4

クラスター5

クラスター6

Page 41: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

51

図 2-3-2 クラスター分析結果(地図)

2 各消防署の分析

前1では評価計算結果や市街地状況等から各消防署の延焼特徴を捉え、

グループ分けを行った。本項では、その結果に至った要素について、全消

防署で相対評価を行い、ランク付けを行った。

本評価により、各消防署は震災時の消防署及び管内の状況についてあら

かじめ把握することができ、震災時の作戦を立てる上で有用な資料となる。

評価項目及び説明は、表 2-3-4 のとおりである。

表 2-3-4 評価項目及び説明

説      明

A90分後までの焼け止まり率

(焼け止まりにくさ)

管内の各メッシュ数から出火させた火災のうち、出火から90分後に焼け止まる火災の比率。ランクは降順に付与した。

Bポンプ車台数(消防不足度)

管内の消防署所及び消防団のポンプ機能を有した車両、可搬ポンプの数を管内の出火件数期待値で除した値。ランクは降順に付与した。(ただし、消防団については、ポンプ機能の違いから台数に2/3を乗じたものを台数とした。)

C道路リンクにおける建物倒壊

発生率(通りにくさ)

管内のすべての道路リンクのうち、建物倒壊が発生して車両通行不能となるリンクの比率。ランクは昇順に付与した。(表2-1-4の倒壊建物発生率を活用)

D水利数

(水利不足度)

管内のすべての水利から消火栓を除いた水利数を管内の出火件数期待値で除した値。ランクは降順に付与した。

E延焼危険量

(燃え広がりやすさ)延焼危険度による町丁目別の延焼危険量(延焼面積)の平均値。ランク付けは昇順とした。

評 価 項 目

Page 42: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

52

ランク付けは、各評価項目が標準正規分布に基づき分布していると仮定し、

表 2-3-4 の各項目の平均及び標準偏差を求め、得点 Z を式[2-3-1]により算定

し、Zi,j の範囲に基づき行った。Zi,j の範囲は、標準正規分布における累積分

布確率が 20%、40%、60%、80%となる値で区切ることによって、各ランク

が 20%となるように設定した(表 2-3-5、図 2-3-3)。

各消防署のランクについては、表 2-3-6 のとおりである。

𝑍𝑖 ,𝑗 = 𝜒𝑖 − 𝜒

𝜎 ··················································· [2-3-1]

Zi,j:得点

xi:消防署の値

x:平均値

σ:標準偏差

i:消防署番号

j:評価項目(A~E)

表 2-3-5 ランク付けと Zi,j の範囲

図 2-3-3 標準正規分布における累積分布確率

0

0.5

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

ランク 1 ランク 5

ランク 2

ランク 3

ランク 4

20% 20% 20% 20% 20%

-0.84σ -0.25σ

-0.84162

0.25σ

-0.84162

0.84σ

ランク Zi,jの範囲

1 -0.84σ 未満

2 -0.84σ~ -0.25σ

3 -0.25σ~ 0.25σ

4 0.25σ~ 0.84σ

5 0.84σ 以上

Page 43: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

53

表 2-3-6 各消防署のランク付け(1/2)

A_焼け止まりにくさ

B_消防不足度 C_通りにくさ D_水利不足度E_燃え広がり

やすさ丸の内 16.1 1 1.78 3 0.0 2 50.3 3 936 1

麹町 6.8 2 1.00 4 0.4 2 37.8 3 1,295 1

神田 1.9 4 0.63 4 2.0 2 9.8 5 1,579 1

京橋 3.3 3 0.53 4 3.7 3 9.3 5 1,827 1

日本橋 0.0 4 0.58 4 3.5 3 7.9 5 1,386 1

臨港 11.5 1 0.95 4 7.0 4 31.3 4 2,384 1

芝 6.7 2 0.76 4 2.5 2 17.2 4 2,167 1

麻布 0.0 4 1.15 4 1.1 2 19.6 4 2,143 1

赤坂 2.9 3 2.00 3 0.7 2 29.8 4 2,452 1

高輪 3.5 3 2.00 3 2.0 2 39.4 3 4,806 1

品川 4.4 3 1.00 4 2.9 2 50.9 3 10,516 3

大井 9.1 2 1.52 3 3.0 2 66.6 2 25,712 5

荏原 0.0 4 2.00 3 2.1 2 57.7 2 44,336 5

大森 5.5 3 1.11 4 6.1 4 36.3 4 15,887 4

田園調布 1.0 4 1.43 4 3.4 3 33.5 4 11,711 3

蒲田 2.5 4 0.88 4 9.8 5 28.5 4 17,401 4

矢口 4.1 3 0.98 4 11.8 5 15.7 4 13,541 3

目黒 0.0 4 2.10 3 1.4 2 36.2 4 12,898 3

世田谷 0.0 4 2.15 3 1.5 2 44.5 3 26,008 5

玉川 1.2 4 1.70 3 1.3 2 69.8 2 9,144 2

成城 1.3 4 2.13 3 1.2 2 76.6 2 11,012 3

渋谷 3.3 3 1.43 3 1.3 2 39.5 3 9,493 2

四谷 2.0 4 1.75 3 1.3 2 38.0 3 10,148 2

牛込 2.4 4 0.87 4 1.5 2 29.7 4 10,286 3

新宿 1.3 4 1.27 4 1.2 2 30.5 4 12,239 3

中野 0.0 4 1.97 3 1.6 2 35.1 4 28,721 5

野方 0.0 4 2.40 3 1.6 2 33.5 4 34,803 5

杉並 0.3 4 2.31 3 1.7 2 36.4 4 35,812 5

荻窪 0.0 4 2.27 3 1.5 2 50.6 3 24,747 5

小石川 0.0 4 1.21 4 1.7 2 28.7 4 13,271 3

本郷 1.3 4 1.30 4 1.5 2 28.6 4 17,078 4

豊島 0.0 4 1.37 4 1.1 2 37.0 4 14,134 3

池袋 0.0 4 1.67 3 1.3 2 31.7 4 25,304 5

王子 3.1 3 1.31 4 6.5 4 21.6 4 25,355 5

赤羽 5.4 3 1.28 4 8.2 4 23.8 4 17,841 4

滝野川 0.0 4 2.42 3 2.9 2 29.3 4 21,336 5

板橋 0.0 4 1.69 3 1.6 2 49.5 3 16,197 4

志村 5.3 3 1.27 4 3.5 3 44.3 3 9,886 2

練馬 0.0 4 1.76 3 1.4 2 51.0 3 16,273 4

光が丘 6.3 3 1.90 3 1.4 2 54.9 3 13,188 3

石神井 2.0 4 1.64 3 1.5 2 56.7 3 21,601 5

上野 2.5 4 0.94 4 6.8 4 13.2 5 10,334 3

浅草 0.0 4 0.73 4 6.3 4 16.6 4 5,279 2

日本堤 2.2 4 0.69 4 17.2 5 14.4 5 9,889 2

荒川 2.1 4 0.97 4 13.7 5 17.9 4 20,811 5

尾久 1.5 4 0.98 4 13.3 5 15.4 4 35,112 5

千住 3.4 3 0.92 4 19.7 5 15.6 4 25,503 5

足立 1.7 4 0.68 4 14.7 5 13.9 5 9,094 2

西新井 0.3 4 0.78 4 16.5 5 14.2 5 12,061 3

本所 1.0 4 0.62 4 12.8 5 11.8 5 3,533 1

向島 0.0 4 0.79 4 19.9 5 15.5 4 26,491 5

深川 13.7 1 0.70 4 12.4 5 26.0 4 2,557 1

城東 16.9 1 0.50 4 16.0 5 19.4 4 11,561 3

本田 1.3 4 0.82 4 18.1 5 18.4 4 13,986 3

金町 5.5 3 0.84 4 14.8 5 19.9 4 7,764 2

江戸川 2.1 4 0.69 4 13.5 5 13.4 5 9,813 2

葛西 7.7 2 0.45 4 13.1 5 14.6 4 3,848 1

小岩 1.8 4 1.02 4 9.6 5 15.5 4 11,555 3

所属

90分後までの

鎮火率(%)ポンプ車台数

(消防団を含む)道路リンクにおける建物倒壊発生率(%)

水利数 延焼危険量(㎡)

Page 44: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

54

表 2-3-6 各消防署のランク付け(2/2)

各消防署のランクをレーダーチャートにして表示することとした。本項

では、一例として杉並及び足立消防署を示した(図 2-3-4)。破線は各消防

方面内の平均のランクである。ランクが低い方が安全側を示し、多角形が

小さくなればなるほど安全性が高いことを示す。

また、塗りつぶした多角形が平均的な範囲であり、この範囲を超えるも

のは全体の平均よりも危険性が高いことを示す。

杉並消防署は、消防不足度及び通りにくさは他の項目に比べて低く、火

災 1 件に対する消防ポンプ車等は比較的多く、震災時も消防ポンプ車等が

通行できる道路は比較的多いと考えられる。

しかし、燃え広がりやすさ及び焼け止まりにくさが高く、非常に延焼し

やすい市街地である。さらに、水利不足度も高く、他の消防署と比較して

火災 1 件に対する使用できる可能性のある水利数は少ない。

足立消防署は、焼け止まりにくさ、消火不足度、水利不足度及び通りに

くさが非常に高いことから、震災時の消火活動に対してかなり困難な状況

が発生することが予想される。特に、通りにくさ及び水利不足度が最高ラ

A_焼け止まりにくさ

B_消防不足度 C_通りにくさ D_水利不足度E_燃え広がり

やすさ立川 3.6 3 2.36 3 1.0 2 98.0 1 6,593 2

武蔵野 1.2 4 1.95 3 1.5 2 61.1 2 18,295 4

三鷹 1.5 4 2.92 3 1.2 2 60.4 2 19,155 4

府中 5.2 3 4.10 2 1.1 2 91.2 1 9,850 2

昭島 8.9 2 3.00 3 0.9 2 86.6 1 5,181 2

調布 2.5 4 3.87 2 1.3 2 69.6 2 11,676 3

小金井 3.4 3 2.07 3 1.4 2 57.4 2 17,259 4

小平 1.8 4 1.82 3 1.3 2 63.6 2 10,673 3

東村山 2.5 4 2.04 3 1.1 2 66.9 2 6,355 2

国分寺 1.1 4 2.40 3 1.4 2 74.4 2 15,099 4

狛江 1.9 4 3.50 2 1.5 2 50.5 3 21,077 5

北多摩西部 5.8 3 3.50 2 1.2 2 61.5 2 5,705 2

清瀬 7.1 2 3.17 3 1.1 2 69.8 2 6,279 2

東久留米 3.2 3 1.78 3 1.1 2 32.2 4 8,920 2

西東京 1.2 4 1.78 3 1.4 2 50.0 3 16,488 4

八王子 16.4 1 3.86 2 0.7 2 61.2 2 5,514 2

青梅 25.0 1 11.93 1 0.6 2 168.0 1 3,864 1

町田 11.2 1 4.18 2 0.7 2 93.7 1 4,247 1

日野 4.6 3 4.33 2 0.8 2 74.5 2 4,366 1

福生 4.3 3 2.33 3 1.1 2 99.5 1 4,850 2

多摩 14.2 1 10.89 1 0.3 2 259.7 1 1,942 1

秋川 32.8 1 13.08 1 0.7 2 154.0 1 2,850 1

奥多摩 49.7 1 32.67 1 0.0 2 124.0 1 740 1

第一消防方面平均 5.3 2.7 1.14 3.7 2.3 2.4 25.2 4.0 2,098 1.0

第二消防方面平均 3.8 3.3 1.27 3.7 5.6 3.3 41.3 3.3 19,872 3.9

第三消防方面平均 1.1 3.8 1.90 3.0 1.3 2.0 53.3 2.8 13,711 3.0

第四消防方面平均 0.9 4.0 1.83 3.3 1.5 2.0 36.3 3.7 22,394 4.0

第五消防方面平均 1.4 3.7 1.51 3.7 3.3 2.6 28.7 4.0 19,188 4.1

第十消防方面平均 2.7 3.6 1.65 3.2 1.9 2.2 51.3 3.0 15,429 3.6

第六消防方面平均 1.5 3.9 0.81 4.0 14.1 4.8 14.8 4.5 15,811 3.3

第七消防方面平均 7.0 2.7 0.72 4.0 13.9 5.0 18.2 4.1 8,726 2.1

第八消防方面平均 3.4 3.4 2.68 2.7 1.2 2.0 66.2 2.1 11,907 3.0

第九消防方面平均 19.8 1.5 10.41 1.6 0.6 2.0 129.3 1.3 3,547 1.3

延焼危険量(㎡)所属

90分後までの

鎮火率(%)ポンプ車台数

(消防団を含む)道路リンクにおける建物倒壊発生率(%)

水利数

Page 45: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

55

ンクであることから、道路閉塞が多数発生し、使用できる可能性がある水

利も非常に少ない。

一方、燃え広がりやすさは低くなっている。これは、足立消防署管内に

木造系建物は多いが、空地等が多く、延焼拡大しづらい地域があることか

ら、管内の町丁目平均延焼面積が小さくなっている。

なお、本評価は絶対評価ではなく、各消防署間の相対評価であることか

ら、レーダーチャートの解釈には十分注意する必要がある。

図 2-3-4 杉並及び足立消防署のレーダーチャート

3 分析結果の活用

各消防署の分析として、クラスター分析による分類及び各指標のランク

付け(レーダーチャート)を行った。

各消防署は、まず、クラスター分析による分類により、自署がどのよう

なタイプの消防署に分類されているのか把握することができる。次に、各

評価項目のランク付けを示したレーダーチャートにより、震災時の消防署

及び管内の状況について把握することができる。

これらの結果をあらかじめ認知しておくことによって、各消防署では震

災時に何が不足するかを把握することができることから、発災時には脆弱

性を踏まえた対応が可能となる。

また、これらの評価に加えて、出火危険度 2)、延焼危険度 4)、評価計算結

果及び人的危険評価図(第4章第7節)などの震災時に活用できる情報を

掲載した消防署ごとの資料を活用することによって、震災時に有益な情報

を一括して得ることが可能となる。

1

2

3

4

5

A_焼け止まり

にくさ

B_消防

不足度

C_通り

にくさ

D_水利

不足度

E_燃え広がり

やすさ

杉並 第四方面平均

1

2

3

4

5

A_焼け止まり

にくさ

B_消防

不足度

C_通り

にくさ

D_水利

不足度

E_燃え広がり

やすさ

足立 第六方面平均

Page 46: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

56

第4節 本章のまとめ

本章では、消防機関として地震火災対策の推進を図るため、「特定の震源を

想定することのない指標」及び「最終的な被害量のみではなく時間経過も踏

まえた被害量」を考慮した地震火災による延焼被害について検討を行い、延

焼被害については放任の火災ではなく、消防活動も考慮に入れて検討を行っ

た。

これまでの延焼危険度 4)とは別の視点の市街地の延焼性状を捉えることが

できた。

また、部隊運用を評価するための評価計算過程においては、地盤分類ごと

に異なる道路幅員別の倒壊建物による道路閉塞を確率的に把握することがで

きた。

消防力を考慮した延焼被害把握の評価計算では、消防署ごとに出火点数に

応じた消火効果を延焼面積や鎮圧率という形で求め、人的被害算定のための

基礎資料とした。

さらに、延焼被害を決定づける要因の分析を行い、延焼特性ごとに消防署

を 6 分類し、地域特性を明らかにした。

Page 47: 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 · 第2章 地震火災による延焼被害量の算定 東北地方太平洋沖地震の経験を踏まえ、平成24 年4

57

【参考文献】

1) 東京都防災会議(2012)「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」

2) 東京消防庁「東京都の地震時における地域別出火危険度測定(第 8 回)」

3) 東京消防庁(2013)「被害想定を踏まえた震災時の同時多発火災等への対

応力に関する調査研究」

4) 東京消防庁(2012)「東京都の地震時における地域別延焼危険度測定(第 8

回)」

5) 火災予防審議会・東京消防庁(2003)「地震時における消防活動体制のあ

り方」

6) 藤井啓・糸井川栄一(2006)「地震火災時における消防機関の情報収集活

動による戦略的な消防運用に関する研究」地域安全学会論文集 No.8

7) 東京消防庁(2010)「東京都の市街地状況調査報告書(第 8 回)」

8) 堀江啓・沖村孝・鳥居宣之・田中聡・牧紀男・林春男(2003)「木造建物

を対象とした層破壊被害関数の適用性に関する考察」 ,土木学会地震工学論

文集

9) 東京都都市整備局(2013)「地震に関する地域危険度測定調査(第 7 回)」

10) 東京消防庁(2007)「東京都の地震時における地域別延焼危険度測定(第 7

回)」

11) 東京消防庁(1989)「地震時における延焼阻止要因の解明と対策に関する

調査研究」

12) 堀内三郎(1972)「建築防火」

13) 東京消防庁(1996)「巨大水利に関する調査研究報告書」

14) 東京消防庁(1966)「東京都の大震火災被害の検討」