14
第3章 自治体の情報化 自治体の「IT 利活用」のポイント ◆ アンケート調査より IT 投資の目的と効果は、「業務のスピードアップ、効率化」が最も多く、効果も出ていた。 CIO に求められる能力としては、「情報セキュリティと情報保全に関する知識」であるが、 実現度はやや低かった。 CIO(相当役)は、主に庁内より、「総務・人事・財務関連部門」または、「経営企画関連部 門」から選任されている。 ◆ ヒアリング調査より 自治体の CIO IT に関する専門的な知識や技術を持っているわけではないが、CIO のリー ダーシップによって実施計画が庁内に浸透し、庁内全体で情報共有が図られている。 住民サービスの向上への取り組みとしては、コールセンター、電子申請、施設予約システム などがあり、それぞれの自治体ごとに特徴的であった。 IT 教育については、一般職員への IT 研修は主に庁内で、IT 部門職員への教育は外部で行わ れていた。庁内研修では庁内の集合研修用 PC の数に限りがあるため、受講希望者は多いが 全員が受講できるわけではなく、e-ラーニング等でカバーされていた。 1.電子自治体の施策の変遷 1.1 行政情報化の経緯 行政の情報化は、昭和 30 年代にまず大都市圏ではじまった。昭和 40 年代に入ると、多くの地 方公共団体において電子計算機の活用が積極的に行われるようになり、事務処理の迅速化、効率 化に大きく貢献することとなった。また、税務事務における事務処理システムの開発や、市町村 における住民記録システムの実施、財団法人地方自治情報センターの発足等、現在の地方行政の 実務で用いられている各種の情報処理システムや仕組みの基本が構築された。 昭和 50 年代には、我が国の経済構造変化とともに国・地方を通じて財政悪化が深刻化したこ とを背景に、情報化が全国の地方公共団体で推進された。特に、事務処理の合理化、効率的な事 務処理機器、特に電子計算機の導入利用が積極的に推し進められた。また、内部事務の効率化に とどまらず、住民に対する行政サービスの向上に直接利用されるようになった。 昭和 60 年代になり、庁内 LAN 等の情報通信ネットワークの整備が進むとともに、衛星通信、 CATVIC カード等の新しいメディアを活用した地域情報化施策が進展した。 1.2 電子自治体の推進 2003 7 月に策定された「e-Japan 戦略Ⅱ」では、医療、行政サービス等の7分野で IT の利活 用に向けた先導的な取り組みを推進した。電子政府、電子自治体はいずれの戦略においても、重 1

第3章 自治体の情報化 - KIIS · ク、公的個人認証などの全国的な電子自治体構築計画の策定などの庁内推進体制が強化されてき た。また、多くの地方公共団体で電子申請、電子入札などの行政サービスのオンライン化が実現

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第第33章章 自自治治体体のの情情報報化化

→ 自治体の「IT利活用」のポイント

◆ アンケート調査より

IT投資の目的と効果は、「業務のスピードアップ、効率化」が最も多く、効果も出ていた。 CIO に求められる能力としては、「情報セキュリティと情報保全に関する知識」であるが、実現度はやや低かった。

CIO(相当役)は、主に庁内より、「総務・人事・財務関連部門」または、「経営企画関連部門」から選任されている。

◆ ヒアリング調査より

自治体のCIOは ITに関する専門的な知識や技術を持っているわけではないが、CIOのリーダーシップによって実施計画が庁内に浸透し、庁内全体で情報共有が図られている。

住民サービスの向上への取り組みとしては、コールセンター、電子申請、施設予約システムなどがあり、それぞれの自治体ごとに特徴的であった。

IT教育については、一般職員への IT研修は主に庁内で、IT部門職員への教育は外部で行われていた。庁内研修では庁内の集合研修用 PCの数に限りがあるため、受講希望者は多いが

全員が受講できるわけではなく、e-ラーニング等でカバーされていた。

1.電子自治体の施策の変遷

1.1 行政情報化の経緯

行政の情報化は、昭和 30年代にまず大都市圏ではじまった。昭和 40年代に入ると、多くの地

方公共団体において電子計算機の活用が積極的に行われるようになり、事務処理の迅速化、効率

化に大きく貢献することとなった。また、税務事務における事務処理システムの開発や、市町村

における住民記録システムの実施、財団法人地方自治情報センターの発足等、現在の地方行政の

実務で用いられている各種の情報処理システムや仕組みの基本が構築された。

昭和 50年代には、我が国の経済構造変化とともに国・地方を通じて財政悪化が深刻化したこ

とを背景に、情報化が全国の地方公共団体で推進された。特に、事務処理の合理化、効率的な事

務処理機器、特に電子計算機の導入利用が積極的に推し進められた。また、内部事務の効率化に

とどまらず、住民に対する行政サービスの向上に直接利用されるようになった。

昭和 60年代になり、庁内 LAN等の情報通信ネットワークの整備が進むとともに、衛星通信、

CATV、ICカード等の新しいメディアを活用した地域情報化施策が進展した。

1.2 電子自治体の推進

2003年 7月に策定された「e-Japan戦略Ⅱ」では、医療、行政サービス等の7分野で ITの利活

用に向けた先導的な取り組みを推進した。電子政府、電子自治体はいずれの戦略においても、重

1

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点分野の一つとして位置づけられた。

これらの戦略を受け、総務省においても、2001年 10月に「電子政府・電子自治体推進プログ

ラム」を、2003年 8月には「電子自治体推進指針」を策定し、電子自治体の基盤整備、行政サー

ビスの向上、行政の効率化、情報セキュリティの確保に向けた各種の施策を講じてきた結果、各

団体における IT基盤であるホームページや庁内 LAN、また、LGWANや住民基本台帳ネットワー

ク、公的個人認証などの全国的な電子自治体構築計画の策定などの庁内推進体制が強化されてき

た。また、多くの地方公共団体で電子申請、電子入札などの行政サービスのオンライン化が実現

し、共同アウトソーシングによる業務・システムの効率化に向けた取り組みも展開されている。

1.3 現在の取り組み

平成 18年、政府は新たな IT国家戦略として「IT新改革戦略」を定め、これまでの IT政策の成

果や課題を踏まえ、ITの利活用で世界を先導するとともに、少子高齢化や環境問題、安全・安心

の確保など、我が国が直面するさまざまな社会的課題に対し、ITによる構造改革を推進していく

ことを示した。また、2007年7月には、「重点計画-2007」を発表した。この計画では、IT新改革

戦略の政策を推進するための施策が盛り込まれており、より具体的な推進手順が示されている。

総務省では、2007年 3月に「新電子自治体推進指針」を策定し、「2010年度までに利便・効率・

活力を実感できる電子自治体を実現」すべく、電子自治体の推進に取り組んでいる。

我が国のIT 戦略と電子自治体推進指針の展開

出典:新電子自治体推進指針(総務省、平成 19年3月)

2

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2.自治体の IT利活用

2.1 IT利活用ステージ分析(アンケート結果より)

自治体版 IT利活用ステージは、主に自治体経営という視点から当財団で独自に作成したもので

ある。第 2章の企業版の評価項目と同じく「組織形態」、「人材、評価制度」等を用いているが、

企業における「顧客」を自治体版では「住民」と読み替えている。

(1) IT利活用ステージ

■IT利活用ステージ分析結果

・ 関西の自治体 自治体数(割合%)

2005年 2006年 2007年

ステージ3以上(組織全体最適化) 17 (13.1) 13 (11.6) 16 (14.4)

ステージ2 (部門内最適化) 71 (54.6) 72 (64.3) 55 (49.5)

ステージ1 (IT初期段階) 42 (32.3) 27 (24.1) 40 (36.0)

合計 130 (100.0) 112 (100.0) 111 (100.0)

自治体の 2007年度 IT利活用ステージでは、2006年度よりステージ3以上の自治体が微増した

が、その一方でステージ1の自治体が約 10%ポイント増加した、という結果となった。これは市

町村合併が進んだことによる影響だと考えられる。

図表3-2-1-1.IT利活用ステージチャート図(調査年度別平均値)

2005

2006

2007

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%経営手法・経営スタイル

組織形態

人材

情報共有

取引関係変化への対応・BPR

IT部門の体制

システム利用スキル

IT投資効果分析

3

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図表3-2-1-2.ステージ別チャート(ステージ別平均値、右は平成 18年度)

自治体ステージ3

自治体ステージ2

自治体ステージ1

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%経営手法・経営スタイル

組織形態

人材

情報共有

取引関係変化への対応・BPR

IT部門の体制

システム利用スキル

IT投資効果分析

自治体ステージ3

自治体ステージ2

自治体ステージ1

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%経営手法・経営スタイル

組織形態

人材

情報共有

取引関係変化への対応・BPR

IT部門の体制

システム利用スキル

IT投資効果分析

図表 3-2-1-1は、2005年度から 2007年度までの 3年間の IT利活用ステージ分析で用いた得点

配分を、項目別平均点でそれぞれ表したものである。自治体は合併の影響もあり、調査年度によ

って異なる結果となっている。特に「IT部門の体制」と「変化への対応・BPR」の達成度は、年

度を追うに従って下降する結果となった。

図表 3-2-1-2でステージ別の平均点分布を見ると、ステージ2とステージ3で開きが大きい項

目は、「組織形態」と「変化への対応・BPR」であることが分かる。

図表3-2-1-3.人口規模と IT利活用ステージ

人口規模とIT利活用ステージの関係

66.7%

27.3%

39.3%

15.8%

18.2%

33.3%

72.7%

50.0%

57.9%

18.2%

10.7%

26.3%

63.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1万人未満(N=18)

5万人未満(N=33)

10万人未満(N=28)

30万人未満(N=19)

30万人以上(N=11)

人口規模

ステージ1 ステージ2 ステージ3

人口規模別の IT利活用ステージは、概ね、人口規模が大きい自治体ほど高い、という結果であ

った。

4

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(2)自治体経営と IT

図表3-2-1-4.経営課題

Q1-1M001:貴団体における経営課題についてお伺いします。次の項目に示した経営課題解決へのITの活用・貢献度合いはどの程度ですか (N=113)

16.8%

9.7%

3.5%

10.6%

8.8%

14.2%

18.6%

6.2%

3.5%

5.3%

11.5%

5.3%

0.9%

1.8%

13.3%

30.1%

23.9%

50.4%

52.2%

36.3%

31.9%

27.4%

29.2%

15.9%

19.5%

20.4%

26.5%

29.2%

13.3%

27.4%

28.3%

19.5%

18.6%

19.5%

17.7%

28.3%

38.9%

31.9%

35.4%

41.6%

35.4%

39.8%

21.2%

16.8%

24.8%

15.0%

19.5%

11.5%

12.4%

23.0%

18.6%

29.2%

29.2%

23.9%

23.0%

24.8%

34.5%

15.0%

19.5%

3.5%

0.9%

18.6%

19.5%

14.2%

9.7%

15.0%

4.4%

8.8%

14.2%

4.4%

0.9%

0.9%

0.9%

2.7%

0.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

首長もしくは上層部が総合計画の進捗度を把握できる

危機管理対応の迅速化

職員スキルに応じた庁内人事(適材配置)

情報システム導入による職員数削減

ITによる行政サービスの提供(実現度については他の自治体と比べて)

首長の考えや政策が職員に浸透している

住民からの意見要望を首長が常に把握できる

全庁的な調達の最適化(価格・品質ともに最適な調達先を常に選択)

広域行政への対応

施設に応じた資源(人・モノ・金)の選択と集中

決裁プロセスの迅速化

業務の見直し(BPR)

住民とのパートナーシップ(PPP)

特徴ある住民サービスの提供

実現している 一部実現 検討レベル 未達である IT以外で実現している 無回答

図表3-2-1-5.IT投資を成功に導くために実施した施策

Q1-2M001:IT投資を成功に導く為に実施した施策についてお伺いします。 (N=113)

19.5%

8.0%

15.0%

2.7%

2.7%

4.4%

21.2%

4.4%

14.2%

5.3%

6.2%

4.4%

39.8%

20.4%

33.6%

25.7%

37.2%

30.1%

8.0%

8.8%

58.4%

26.5%

16.8%

15.0%

17.7%

20.4%

18.6%

52.2%

22.1%

29.2%

28.3%

22.1%

35.4%

28.3%

12.4%

31.9%

33.6%

37.2%

28.3%

35.4%

11.5%

15.9%

18.6%

31.0%

17.7%

42.5%

48.7%

53.1%

7.1%

34.5%

31.0%

35.4%

33.6%

38.1%

25.7%

10.6%

6.2%

6.2%

1.8%

2.7%

5.3%

5.3%

0.9%

2.7%

4.4%

7.1%

13.3%

1.8%

3.5%

0.9%

0.9%

0.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

IT投資目的の明確化

あるべき業務プロセスの明確化(ガイドライン等)

IT実行における庁内の役割分担の明確化

IT実行に対する充分な予算

的確な金額見積もり施策(積算ガイドラインの策定)

IT投資の効果測定指標の明確化

庁内で連携が図れる情報システム

トップダウンによるIT戦略の徹底(一般行政職員まで)

ビジョン(電子自治体イメージ)の明確化

業務改革(BPR)の実施

柔軟な組織の組換え

IT投資における PDCAサイクルの実践(PDCA:計画・実行・評価・改善)

CIOの確保

全職員に対する ITや業務知識の教育の実施

実現している 一部実現 検討レベル 実現していない わからない 無回答

自治体における経営課題解決への IT活用では、「住民からの意見要望を首長が常に把握できる」

(18.6%)、「首長もしくは上層部が総合計画の進捗度を把握できる」(16.8%)という、ITを活用

した情報把握が行われていることが分かる。一方で、「住民とのパートナーシップ」「人員整理・

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雇用調整」といった項目は、IT以外で実現されているとの回答であった。

また、IT投資を成功に導くために実施した施策としては、「CIOの確保」(39.8%)、「全職員に

対する ITや業務知識の教育の実施」(20.4%)、「IT投資目的の明確化」(18.9%)という結果であ

った。

図表3-2-1-6.IT投資の目的と効果

Q1-3-1:IT投資の目的と効果

92.9%

82.3%

62.8%

49.6%

89.9%

64.6%

41.4%

43.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

業務のスピードアップ、効率化

住民サービスの質的向上

住民満足度の向上、利用者の増加

職員の意識向上や職場の活性化

目的(N=113)

効果(N=99)

IT投資の目的と効果に関する回答では、「業務のスピードアップ、効率化」が最も多く、効果

も出ていた。一方で、次に目的とする回答が多かった「住民サービスの質的向上」(82.3%)につ

いては、効果があったとの回答は 64.6%にとどまった。

6

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(3)組織の業績評価と人材評価

図表3-2-1-7.ITを活用した組織の業績評価及び人材評価の現状

Q2-1M001:ITを活用した組織の業績評価及び人材評価の現状についてお伺いします (N=111)

9.0%

2.7%

9.9%

15.3%

31.5%

32.4%

32.4%

33.3%

17.1%

16.2%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

組織の業績評価

人材評価

実施している 一部実現している 検討レベル 全く取り組んでいない わからない 無回答

ITを活用した組織の業績評価と人材評価では、実施しているという回答が、業績評価は 8.8%、

人材評価は 2.7%にとどまった。まだまだ進んでいないという現状である。

(4)革新的な IT導入

図表3-2-1-8.自治体経営上の改革と IT戦略の関係性

Q3-1:経営上の改革とIT戦略の関係性 (N=113)

43.4% 31.9% 11.5% 12.4% 0.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

全体

どちらかといえば経営戦略とIT戦略は関わっている どちらかといえば経営戦略とIT戦略は独立して実施されている

経営戦略とIT戦略は全く独立して実施されている 経営戦略とIT戦略は強く関わっている

無回答

7

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図表3-2-1-9.IT戦略の実行状況

Q3-2M001:IT戦略の実行状況について (N=113)

6.2%

4.4%

3.5%

3.5%

1.8%

1.8%

14.2%

8.8%

2.7%

3.5%

21.2%

21.2%

16.8%

28.3%

35.4%

33.6%

25.7%

15.0%

12.4%

13.3%

40.7%

40.7%

45.1%

40.7%

38.9%

40.7%

38.9%

40.7%

49.6%

46.9%

30.1%

31.9%

32.7%

25.7%

22.1%

22.1%

20.4%

31.9%

32.7%

33.6%

1.8%

1.8%

1.8%

1.8%

1.8%

1.8%

0.9%

3.5%

2.7%

2.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

調達先の絞込み・変更を含む見直し

調達条件の変更

施策立案方法の見直し

調達方法の見直し

行政サービス内容の見直し

行政サービス提供方法の見直し

財務会計制度の見直し

管理会計の仕組みの見直し

人事制度の改革

配置転換の実施

実現している 一部実現 検討レベル 実現していない 無回答

自治体経営上の改革と IT戦略の関連は、「どちらかと言えば関わっている」が 43.4%で最も多

い回答であった。次いで「強く関わっている」が 12.4%であった。

IT戦略の実行状況では、実現しているとの回答が、「財務会計制度の見直し」(14.2%)で最も

進んでいた。次いで「管理会計の仕組みの見直し」(8.8%)であった。一部実現まで含めると、

「財務会計制度の見直し」(39.7%)、「行政サービス内容の見直し」(37.2%)が進んでいる。

2.2 CIOの能力と支援組織

アンケートでは、自治体のCIOについて、CIO(あるいはCIO相当役)が何を求められ、どの

ような組織体制のもとで業務が遂行されているかを知るために、その能力(求められるもの、実

現しているもの)、支援組織体系、キャリアパスの3点から質問している。

図表3-2-2-1.CIOあるいはCIO補佐官(CIO相当役)の人物像

Q4-1-1:貴団体のCIO(あるいはCIO相当役)に特に求められる能力と実現度合い

62.8%

54.0%

31.9%

57.5%

33.6%

38.9%

17.7%

69.0%

41.6%

50.4%

64.8%

57.4%

25.9%

31.5%

22.2%

24.1%

11.1%

44.4%

46.3%

50.0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

組織の仕組みに対する知識と戦略立案能力

組織の管理と人材育成能力

業務手続や企業情報の管理能力、経営能力

情報化戦略立案能力

プロジェクト/プログラム管理能力

投資リスク・変更管理能力

電子商取引やウェブサービスの戦略管理能力

情報セキュリティと情報保全に関する知識

社会環境の把握と予測能力

戦略や企画を実行に移す実践力

求められる能力(N=113)

実現している(N=54)

8

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図表3-2-2-2.CIOあるいはCIO補佐官(CIO相当役)の支援組織

Q4-2:貴団体のCIO(あるいはCIO相当役)の支援組織について (N=113)

37.2%

28.3%

8.8%

7.1%

1.8%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50%

IT部門の部門長や部課長がCIOの情報能力をサポートする「CIOチーム型」

CIOは名目上であり、実質はCIO補佐官相当の人間が機能を果たす「CIO補佐官型」

CIOとIT、財務会計など各分野の少数精鋭の庁内横断的な専門家集団でCIOをサポートする「CIOオフィス型」、CIOは総合的な判断を下す

CIOと施策を実行に移す大人数実行部隊で構成される「IT企画部型」

CIOが全ての権限を持ち、ほとんど独力で業務を処理する「トップダウン型」

CIOに求められる能力としては、「情報セキュリティと情報保全に関する知識」(69.0%)であ

り、次いで「組織の仕組みに対する知識と戦略立案能力」(62.8%)であった。実現している能力

としては「情報セキュリティと情報保全に関する知識」は 44.4%にとどまった。

CIOの支援組織は、「CIOチーム型」(37.2%)が最も多く、これは上場企業と同じ結果であっ

た。「トップダウン型」は 1.8%にとどまった。

図表3-2-2-3.CIOあるいはCIO補佐官(CIO相当役)のキャリアパス

Q4-3:貴団体のCIO(あるいはCIO相当役)のキャリアパスについて (N=113)

14.2%

25.7%

38.9%

5.3%

22.1%

0.0%

2.7%

1.8%

1.8%

0.9%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

情報システム関連部門

経営企画関連部門

総務・人事・財務関連部門

業務部門

その他

政府関係機関

他の自治体

学識者・有識者

民間企業

他団体(財団法人等)

庁内から専任

庁外より招聘

CIO(相当役)のキャリアパスとしては、「総務・人事・財務関連部門」(38.9%)が最も多く、

次いで「経営企画関連部門」(25.7%)という結果であり、庁外から選出は7%程度という結果で

あった。

9

Page 10: 第3章 自治体の情報化 - KIIS · ク、公的個人認証などの全国的な電子自治体構築計画の策定などの庁内推進体制が強化されてき た。また、多くの地方公共団体で電子申請、電子入札などの行政サービスのオンライン化が実現

2.3 IT教育

(1)職員の情報システム利用スキルについて

図表3-2-3-1.組織の情報システムに対する職員の理解度における目標

Q6-1-1:貴団体の企業情報システムに対する職員の理解度(システム利用スキルの習得度)について

62.8%

4.4%

11.5%

3.3%

11.5%

36.7%

9.7%

55.6%

0.9%

0.0%

3.5%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

目標(N=113)

実現(N=90)

全職員が、各職責に応じた業務を可視化・数値化し、適正かつ合理的に進めることができる

管理職の職員が業務を可視化・数値化し、適正かつ合理的に進めることができることを目標とする

理解度は教育を受ける職員各自に任せている

業務上必要な、一部の職員だけが業務を可視化・数値化し、適正かつ合理的に進めることができる

その他

無回答

情報システムに対する職員の理解度は、目標としては「全職員が、各職責に応じた業務を可視

化・数値化し、適正かつ合理的に進めることができる」(62.8%)が最も多い回答であったが、そ

の実現度は 4.4%であった。

(2)IT人材について

図表3-2-3-2.IT部門の職員に対する教育・活用について

Q7-1M001:貴団体のIT部門の職員に対する教育・活用について (N=113)

1.8%

0.0%

0.9%

8.8%

33.6%

8.0%

1.8%

7.1%

3.5%

5.3%

9.7%

19.5%

35.4%

29.2%

24.8%

22.1%

22.1%

22.1%

21.2%

10.6%

22.1%

20.4%

29.2%

62.8%

73.5%

61.9%

67.3%

62.8%

70.8%

54.9%

33.6%

4.4%

8.0%

0.9%

0.9%

1.8%

7.1%

9.7%

6.2%

0.9%

2.7%

0.9%

0.9%

0.9%

0.9%

0.9%

0.9%

1.8%

1.8%

1.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

庁内IT部門のミッション・職務機能・スキルミックス・責任分解を明確にしている

ITスキル標準などを活用して、庁内IT部門の職員の技術力・スキルを客観的・数量的に把握す

る仕組みを持っている

庁内IT部門の職員のスキルを外部の評価基準(第三者など)を参照して評価している

庁内のIT部門の職員のスキル獲得は、人事評価やキャリアパスとリンクされている

庁内IT部門の職員に対して、経営戦略とIT戦略の関係について、CIO自らが定期的に説明して

いる

IT戦略に沿って、庁内IT部門の職員の採用計画(人数、スキル等を考慮)、採用方針を設定して

いる

庁内IT部門の職員が、一定期間、ITユーザ部門に異動する仕組みがある

庁内IT部門の職員のスキル獲得のための教育プログラムを整備している

庁内IT部門の職員が新技術や不足するスキルを獲得するために、定期的に社外のプログラム

に参加したり、先進企業・団体で研修を受けたりさせている

自信を持って実現していると思う 実現していると思う あまり実現していないと思う 実現していないと思う わからない 無回答

IT部門の職員に対する教育・活用としては、実現しているとの回答が「定期的に社外のプログ

ラムに参加したり、企業・団体で研修を受けたりさせている」が 8.8%で、その他は低調な結果

とであった。

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2.4 関西自治体の業務システム導入率

全国的に見た関西の自治体の情報化の進展具合は、総務省及び財団法人地方自治情報センター

が実施した平成 18年度「業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」より測ることがで

きる。この調査では、調査対象システムは 28あり、それぞれについて各自治体がシステム化され

ているかどうかを答える形式となっている。

図 3-2-4-1より、関西の自治体はほとんどのシステムについて、全国比よりも導入が進んでお

り、情報化について先進的な取り組みを行っている自治体が多いことが分かる。特に関西地域で

導入が進んでいるシステムは、「文書管理」、「施設予約」、「図書館」、「土木積算」等であり、逆に

関西地域での導入が遅れているシステムは、「電子申請」、「電子申告」、「公有財産管理」、「公営住

宅管理」等である。

全体的に、関西地域の ITを活用した住民サービスや業務効率化は進んでいると言える結果であ

った。

図3-2-4-1.関西自治体のシステム導入状況

0

0.25

0.5

0.75

104戸籍

06自動交付機

12庶務事務

14文書管理

15統計

16土木積算

17公有財産管理

18統合型GIS

19公営住宅管理21グループウェア

22電子申請

23電子申告

24施設予約

25図書館

26電子調達

27情報提供

28システム間連携

関西

全国

図3-2-4-2.関西2府5県のシステム導入状況

0

0.25

0.5

0.75

104戸籍

06自動交付機

12庶務事務

14文書管理

15統計

16土木積算

17公有財産管理

18統合型GIS

19公営住宅管理21グループウェア

22電子申請

23電子申告

24施設予約

25図書館

26電子調達

27情報提供

28システム間連携

福井県

滋賀県

京都府

大阪府

兵庫県

奈良県

(出典:平成 18年度「業務システ

ムの導入及び運用に要する経費等

の調査」)

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2.5 自治体の「IT利活用」ヒアリング調査結果

(1) CIO(相当役)と支援組織体制

自治体の CIOは首長もしくは副首長が務めており、CIOをトップに、各部局長で構成す

る会議体によって、施策の策定や進捗状況の把握が行われていた。CIO自身は ITに関する

専門的な知識や技術を持っているわけではないが、総合的な施策を進めるポストにある。

このような合議体制をとることにより、CIOのリーダーシップによって実施計画が庁内に

浸透し、また、庁内全体で情報の共有化が図られている。

その一方で、具体的な施策実行のための IT業務を請け負う情報化推進課等の部局は、必

要なシステムの開発・保守・運用や、情報化施策全体の調整を担当し、CIOをトップとし

た会議の支援を行っている。民間枠として IT経験者を数名採用している自治体も見受けら

れた。

(2)電子決裁等の導入による組織のフラット化

ほとんどのヒアリング対象自治体で、申請・決裁の電子化が行われていた。電子決裁・

文書管理システム導入の効果としては、申請書類作成の手間が減ったことと、決裁が迅速

になったことであった。申請書類が紙媒体であったときは、係長、課長、部長、局長、首

長と順番に回していかなければならなかったが、システム導入後は、パソコンでアクセス

するだけで、決裁することができる。また、進捗を見ることができるので、滞りがあって

もすぐに見つけて決裁を促し、先に上にあげて決裁する「代決」も円滑にできるようにな

っており、スムーズな業務の遂行が実現している。

(3)庁内ポータルサイトの活用による情報共有

庁議での首長の発言などを庁内のポータルサイトにアップし、全職員に伝える一方で、

各部局で進められている総合計画の進捗情報などは、担当部署が同様に庁内ポータルに掲

載し、庁内で情報共有されていた。これにより、首長の考えや政策が職員に浸透し、また、

市長や上層部が進捗情報を常に把握可能となり、同時に庁内通知等はペーパーレス化が図

られている。

また、住民の声とそれに対する各部署の回答内容が、データベース化され、閲覧できる

ようになっており、これを見ながら職員が回答することで、回答レベルを揃える目的でも

活用されていた。

(4)事業評価、人材評価システムの導入状況

京都市では、事業評価システムとして、担当職員が庁内ポータルから入力した事業計画

を、部長が承認と進捗状況の確認ができ、毎年の事務事業評価のデータとしても活用され

て、市民への情報公開システムに連動していた。

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人事評価システムでは、枚方市で、管理職以上級について目標管理システムを導入して

いた。庁内ポータル内にそれぞれに目標を掲げ、目標に対する達成を評価している。仕事

の効率をどう上げるのか、住民サービスをどのように展開するのかといった目標を公表す

ることで、モチベーションを高める効果がある。このシステムを順次一般職員にまで広げ

ていく予定ということであった。

(5)市民サービスの向上に向けた取り組み

住民サービスは、それぞれの自治体ごとに特徴的であった。

まず京都市では 2006年 1月よりコールセンターを導入し、住民とのコミュニケーション

を高めている。2006年度の問い合わせ実績は 38,910件(電話 30,998件、FAX4,076件、メ

ール 3,836件)であり、内容は意見・要望の他、時期によっては苦情が殺到することもあり、

京都市ならではの観光情報の問い合わせも多い。集まった意見・要望・苦情はすべていっ

たん広報課でまとめられ、原本と一緒に市長や各局に回されて、次の基本方針や施策の立

案に活かされている。その他、2007年度に導入したグーグルマップを利用した京都市関連

の施設情報の提供や、携帯向けサイトでの観光情報の提供、市バス・地下鉄などの運行情

報の提供も、市民からの評判が高い。

堺市では従来から、市民への情報提供やサービス提供を充実されるため、ホームページ

の運営に注力している。最近、採用したコンテンツでよく活用されているものに、地図情

報を提供する「e‐地図帳」などがある。その一方で、大阪電子自治体推進協議会による大

阪府域市町村の共同システムとして導入した電子申請受付システムは、利用があまり進ん

でいないのが実情であり、広く周知したいと考えている。

枚方市では会議の議事録やお知らせ、防災情報を載せた GIS情報提供のほかに、スポー

ツ施設・生涯学習センター・防災センターなどの施設の空き情報の確認や予約が行える「施

設予約システム」を導入している。これにより市民は抽選のためにわざわざ施設に出向く

必要がなくなり、自宅にいながら 24時間施設予約が行えるようになった。インターネット

から予約した場合は、クレジットカードで利用料の支払いが行えるなど、サービスが進ん

でいる。また、抽選時の職員の負担が軽減されるというメリットも生まれている。

宝塚市でも、枚方市と同様の施設予約システムが稼動しており、公民館へもインターネ

ット予約をはじめ、サービスの拡大を図る考えである。また、評判がいいサービスにもう

ひとつ、メールによる情報提供がある。メールを受信するには登録が必要で、希望する市

民だけが受け取れる。イベント情報をお知らせするメール、防犯・防災情報を流す「安心

メール」、男女共同参画センターからのメールマガジンなどがあり、中でも特に登録者数が

増えているものに「ごみの日メール」がある。宝塚市ではゴミの細かな分別を市民に協力

してもらっているが、ゴミの種類によって出す日が地域ごとに異なるので、ホームページ

上で掲示すると同時に、希望者には「ごみの日メール」を送信してお知らせしている。新

聞等に取り上げられたこともあって、2007年 9月から始めて数カ月で、すでに登録者数は

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約 1,100名になっている。

(6)IT教育

一般職員への IT研修は、主に庁内で取り組まれている。ただし、PCを触りながらの講習

形式であるため、受講希望者は多いが、受講できるのは年間でも限られた人数である。こ

れを補うために、庁内 LANを利用した e-ラーニングシステムを導入し、同様のコンテンツ

をいつでも学べるようになっている。また、各部局が自前で講師を立てて自主研修を行っ

ている自治体や、庁内各部に情報化推進支援員を置き、幅広くサポートする体制をとって

いる自治体もあった。

IT部門職員への教育は、外部研修を含め数ヶ月間、基本的なプログラム作成やシステム

管理といった研修を受け。その後 2年間を研修期間と位置付けるため、他部署よりも長く

職員が在籍する自治体がある一方で、人事異動により担当者のスキルアップがうまくいっ

ていないという意見も聞かれた。

今後自治体では効率化のためにシステム開発・管理のアウトソーシングが進むと考えら

れる。しかし、そうであっても現場で実際に業務を行うために、IT部門職員の IT知識やス

キルは必要である。それを危惧して ITスペシャリスト養成プログラムの実施を検討してい

る自治体もあった。

(7)関西自治体における情報化推進の特徴

関西には、高い問題意識を持って個性的に IT化を推進している自治体が数多く存在し、

それが強みだと考えられる。しかも、力点の置き方がそれぞれ違うので、連携し、先進自

治体が牽引することで、関西自治体の情報化は、全国の自治体をリードすることも可能と

なるのではないだろうか。

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