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-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用 1.データ収集調査の企画・実施概要 1)チェックリストの開発 前章までの考え方に基づき、本開発研究は8要素 40 要件のチェックリスト (前章4及び巻末資料1を参照)を開発するに至った。このチェックリスト は第一次チェックリストを基にしつつ、①能力要件の見直し・再編成により、 プロダクティブエイジングを可能にする要件を構造化すること②仕事能力開 発のためのプラットフォームとして活用できること③表現・文言等を答えや すいものに改めること、等を意図して、第一次チェックリストに大幅な変更 を施したものである。 2)データ収集調査 この 40 要件のチェックリストは上述のように、第一次チェックリストに変 更を施したものであった。従って、活用にあたっては、なお 1)文言、表 現等の答えやすさの妥当性 2)ポートフォリオの抽出 3)8因子による 構造の妥当性 4)企業、アドバイザー等の活用の可能性 等を実証・検討 する必要があった。 そこで、上記チェックリストに基づき調査票「仕事生活チェックリスト」 を作成し、本研究が対象とする企業の正規従業員に対しアンケート調査を実 施した。ついては、以下にまずアンケート調査概要を紹介し、次項目以降で 詳細な検討事項を紹介する。 3)調査概要 ① 調査対象 全国の事業所に雇用される正規従業員のうち、45 歳以上のホワイトカラ ー職種従事者(性別、役職不問)48,500 名を対象とした。 また、対象の選定にあたっては企業の協力を得ることとし、企業・労務 担当責任者あて調査票を送付し、対象者の選定、調査票配布を依頼した。 なお、調査票送付企業は、当機構が把握する全国の事業所(133,232 社)

第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

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-91-

第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

1.データ収集調査の企画・実施概要

1)チェックリストの開発

前章までの考え方に基づき、本開発研究は8要素 40 要件のチェックリスト

(前章4及び巻末資料1を参照)を開発するに至った。このチェックリスト

は第一次チェックリストを基にしつつ、①能力要件の見直し・再編成により、

プロダクティブエイジングを可能にする要件を構造化すること②仕事能力開

発のためのプラットフォームとして活用できること③表現・文言等を答えや

すいものに改めること、等を意図して、第一次チェックリストに大幅な変更

を施したものである。

2)データ収集調査

この 40 要件のチェックリストは上述のように、第一次チェックリストに変

更を施したものであった。従って、活用にあたっては、なお 1)文言、表

現等の答えやすさの妥当性 2)ポートフォリオの抽出 3)8因子による

構造の妥当性 4)企業、アドバイザー等の活用の可能性 等を実証・検討

する必要があった。

そこで、上記チェックリストに基づき調査票「仕事生活チェックリスト」

を作成し、本研究が対象とする企業の正規従業員に対しアンケート調査を実

施した。ついては、以下にまずアンケート調査概要を紹介し、次項目以降で

詳細な検討事項を紹介する。

3)調査概要

① 調査対象

全国の事業所に雇用される正規従業員のうち、45 歳以上のホワイトカラ

ー職種従事者(性別、役職不問)48,500 名を対象とした。

また、対象の選定にあたっては企業の協力を得ることとし、企業・労務

担当責任者あて調査票を送付し、対象者の選定、調査票配布を依頼した。

なお、調査票送付企業は、当機構が把握する全国の事業所(133,232 社)

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から、日本標準産業分類による 14 大分類{鉱業、建設業、製造業、電気・

ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、卸売・小売業、金融・保険

業、不動産業、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業、複合サ

ービス業、サービス業(他に分類されないもの)。但し、医療業、学校教育

を除く。}に属し、従業員数が 50 人以上の民営企業のうちから産業、企業

規模、地域ブロック{北海道・東北、関東甲信越、中部、近畿、中国・四

国、九州・沖縄}別に抽出した 2,000 社とした。

② 調査時期

平成 17 年2月~3月

③ 調査方法

郵送法による。

④ 回収状況

2,000 社の人事労務担当責任者あてに 48,500 名分を郵送し、3,077 名の

有効回答を得た。(回収率 6.34%)

2.調査結果の概要

ここではまず、今回実施した仕事生活チェックリストの集計結果について、

どのような結果が得られたのかということと、そこから考えられる内容につい

て見てみたい。

(1) 回答者の属性

① 性 別

図 3-1 のとおり、今回の調査では、男性:女性がおおむね4:1であっ

た。

これは、わが国の労働力人口における就業者の男女比である 1.4:1(※

表 3-1 参照)という比率と比較すると、多少違和感のある結果だと言える

かもしれない。

しかし、これは、今回の研究グループにおける「労働者」が、あくまで

も「正規雇用された会社員」を対象としていることを考えると、おおむね

想定した属性が反映されているのではないかと思われる。

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図 3-1 回答者の男女比

表 3-1 我が国の労働力人口における就業者の男女比

上記のとおり、今回のデータを想定した属性を反映していることは好ま

しいものの、今後の調査研究のあり方としては、検討を重ねる必要がある

と見るべきであるかもしれない。性別はともかく、プロダクティブ・エイ

ジングにおいて多様化するワーク・スタイルをどうイメージするべきかに

ついて今後は視野に入れる必要がある、ということが、このデータからは

遠まわしながらも、読み取れるように感じられる。

② 年 齢

回答者の年齢構成は、表 3-2 のようになっている。

総務省労働力調査 就業状態別人口の抜粋(平成 18 年2月調査分の速報より)

(単位:万人)

男女計 男 女

労働力人口 6549 3855 2694

就業者 6272 3675 2596

完全失業者 277 179 98

80.8%

19.2%

男性 女性 グラフ内のデータは、無回答

を除いた割合を表している。

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表 3-2 回答者の年齢分布

45 歳未満 45 歳以上

50 歳未満

50 歳以上

55 歳未満

55 歳以上

60 歳未満 60 歳以上

3.7% 31.0% 28.3% 28.5% 7.0%

(上記は「無回答」も含む割合のため、合計は 100 とはならない)

プロダクティブ・エイジングのための準備を視野に入れ始める 50 歳代を

中心に、45 歳以上から 60 歳未満が中心である。

③ 勤務先の業種

回答者の勤務先の業種内訳は、図 3-2 のグラフの実線のとおりである。

図 3-2 業種分布

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

1.鉱

2.建

設業

3.製

造業

4.電

気・ガ

ス・熱

供給

・水道

業5.情

報通

信業

6.運

輸業

7.卸

売・ 小

売業

8.金

融・保

険業

9.不

動産

業10.

飲食

店、

宿泊

業11.

医療

、福

祉12.

教育

・学

習支

援業

13.

サー

ビス

今回の回答者

労働力調査分類

今回の調査結果である実線と、破線の労働力調査の分類(総務庁統計局

平成 18 年2月結果)を比較した場合、製造業が多く、卸売・小売業や飲食

店、宿泊業および医療、福祉といった人的サービスの度合いが強い業種か

らの回答が少ないことがわかる。そのため集計データを読み解く際も、こ

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うした違いを認識して取り組むことが必要であろう。

④ 勤務先の従業員数

図 3-3 のとおり、100 人~999 人の企業が最もおおく、全体の半分近く

となっている。

図 3-3 従業員数分布

3.4%

6.5%

49.8%

36.6%

1.6%

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0%

10000人以上

1000~9999人

100~999人

30~99人

29人以下

わが国において、中小企業(※注参照)が全企業の中で 99.2%(総務庁

調べ)を占めている現状からすると、今回のチェックリストのデータは、

やや大企業の社員よりにデータに偏っていることを前提としてとらえるべ

きであろう。

※注)中小企業庁による「中小企業」の定義

(数字は順に従業員規模・資本金規模)

製造業・その他の業種:300 人以下または3億円以下

卸売業:100 人以下または1億円以下

小売業:50 人以下または 5,000 万円以下

サービス業:100 人以下または 5,000 万円以下

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⑤ 回答者の職位

回答者の職位の分布は図 3-4 のとおりである。

職位の呼称は、企業規模や各企業の状況によって異なるため総括的に論

じることは難しいが、②で述べた回答者の年齢分布(グラフ下に再掲)と

照らし合わせると、年齢のわりに一般社員が多くなっていると思われる。

図 3-4 職位分布

19.4% 21.5%

33.1%

17.4%

6.3%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

表 3-2 回答者の年齢分布(再掲)

45 歳未満 45 歳以上

50 歳未満

50 歳以上

55 歳未満

55 歳以上

60 歳未満 60 歳以上

3.7% 31.0% 28.3% 28.5% 7.0%

⑥ 所属部門と勤続年数

回答者の所属部門は、事務・管理部門が 47.6%、営業・販売部門が 21.9%、

技術・研究部門が 13.5%、現業・生産部門 14.3%となっており、事務・管理

部門からの回答が半分近くを占めている。

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また、勤続年数は、10 年以上 40 年未満が8割近くを占めており、10 年

以上 20 年未満が 15.9%、20 年以上 30 年未満が 33.9%、30 年以上 40 年未満

が 28.7%未満となっている。先に述べた回答者の年齢分布と較べると、中

途転職者が相当数含まれていることが見て取れる。

(2) 仕事のタイプに関する単純集計結果

図 3-5 は、「A・どちらかといえばA」の回答者数を左軸に、「B・どちら

かといえばB」の回答者数を右軸に表したものである。(グラフ内の数字は、

それぞれ、「AまたはB」との回答数と「どちらかと言えばAまたはB」の回

答数を数値化したものを表しており、「AまたはB」の回答には、「どちらか

と言えばAまたはB」の回答に比べ、2倍のポイントを付与している。)

図 3-5 仕事のタイプに関する単純集計

-2809

-2496

-2027

-3045

1159

1561

2106

1010

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

仕事の内容

仕事の特質

仕事の成果

仕事の進め方

これからわかるように、「仕事の成果」については、それぞれの回答がほぼ

B・どちらかと言えば B

前例があったり

やり方はほぼ

決まっている

決まったやり方がなく、

その都度考える必要があ

組織の成果責任を

問われている

メンバーの専門性を

引き出す必要がある

開発・創造的な内容

が主である 維持・改善が

主である

個人の成果責任を

問われている

自分の専門性で

仕事している

A・どちらかと言えば A

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同数となっているが、それ以外の項目については、Aの回答数が多くなって

いる。

(3) 単純集計結果

設問1から設問 40 までの調査結果の単純集計については、以下の表 3-3

のとおりである。「価値創造力」「効率追求力」「コラボレーション力」「業績

貢献力」「アンチエイジング力」「生涯現役力」「加齢変化対応力」「専門能力

形成力」の8つの要素に分類されている。

表 3-3 単純集計結果表

629 1,121 790 290 230 17 環境変化の

予測

1-Q1 経営環境の変化が自分

の仕事や役割にどのような変

化を及ぼすかを具体的に説明

できる 20.4% 36.4% 25.7% 9.4% 7.5% 0.6%

3.53 1.141

476 1,084 917 339 244 17

適応方策企画

1-Q2 経営環境の変化に適応

するために自分の果たすべき

役割や解決すべき課題につい

て、その方策を立案することが

できる

15.5% 35.2% 29.8% 11.0% 7.9% 0.6% 3.40 1.118

172 661 1538 358 318 30

価値創造力

1-Q3 経営環境の変化によっ

て生じた新たな課題を解決す

る(能)力がある、と周囲から評

価されている 5.6% 21.5% 50.0% 11.6% 10.3% 1.0%

3.00 0.989

392 1,056 931 368 313 17 情報ネット

ワーク

1-Q4 取引先や顧客、仕入先、

社内の関係各部署などとの信

頼できる情報ネットワークを

持っている 12.7% 34.3% 30.3% 12.0% 10.2% 0.6%

3.28 1.145

298 967 841 574 381 16

社外情報

収集分析

1-Q5 専門紙誌やインターネ

ットも含め、広い範囲、新しい

視点から諸情報を収集・分析し

ている 9.7% 31.4% 27.3% 18.7% 12.4% 0.5%

3.07 1.177

Page 9: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-99-

1105 1,378 409 105 58 22 計画的な仕事

1-Q6 納期・期限に遅れないよ

うに、優先順位やゆとりを考え

て計画的に仕事をしている 35.9% 44.8% 13.3% 3.4% 1.9% 0.7% 4.10 0.891

755 1,479 636 134 58 15 日々の

改善活動

1-Q7 仕事の質的向上、コスト

削減、作業時間の短縮等の改善

活動を日々の仕事の中で行っ

ている 24.5% 48.1% 20.7% 4.4% 1.9% 0.5%

3.89 0.888

141 634 1,661 376 235 30

改善スキル

1-Q8 問題解決や改善の仕方

(QC や小集団活動など)に長

けていると、周囲から評価され

ている 4.6% 20.6% 54.0% 12.2% 7.6% 1.0%

3.02 0.908

732 1,548 609 129 47 12 ミス・トラブル

対策

1-Q9 仕事のミスやトラブル

には迅速に対処するだけでな

く、原因を究明し再発防止対策

も行っている 23.8% 50.3% 19.8% 4.2% 1.5% 0.4%

3.91 0.858

294 899 1,252 473 147 12

5S の徹底

1-Q10 5S(整理・整頓・清潔・

清掃・躾)の取組みは、誰にも

負けない自信がある 9.6% 29.2% 40.7% 15.4% 4.8% 0.4% 3.23 0.984

521 1,479 850 179 42 6 受け入れ

やすい説明

1-Q11 自分の意見を言うとき

は、相手が受け入れやすい話し

方、説明の仕方を選んでいる 16.9% 48.1% 27.6% 5.8% 1.4% 0.2% 3.74 0.856

178 890 1,596 278 100 35 わかりやすい

説明

1-Q12 説明の仕方や意見の述

べ方が、「わかりやすい、理解

しやすい」と周囲から言われて

いる 5.8% 28.9% 51.9% 9.0% 3.2% 1.1%

3.25 0.828

447 1,437 919 175 61 38 指示・報告・

連絡・相談

1-Q13 迅速で的確な「指示だ

し・指示受け、報告・連絡・相

談」を実践している 14.5% 46.7% 29.9% 5.7% 2.0% 1.2% 3.67 0.867

212 869 1,331 329 290 46 調整・交渉成果

1-Q14 社内外の調整や交渉を

任されることが多く、ねらった

成果をあげてきている 6.9% 28.2% 43.3% 10.7% 9.4% 1.5% 3.13 1.021

201 521 977 570 768 40

チームワーク

成果

1-Q15 ここ数年の間で初対面

の人、立場の異なる人とチーム

を組んで成果をあげた実績が

ある 6.5% 16.9% 31.8% 18.5% 25.0% 1.3%

2.61 1.218

Page 10: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-100-

197 652 1,212 475 492 49

価値創造成果

1-Q16 ここ数年の間で、業績

への大幅な貢献や企業価値を

高める改革活動などで、複数の

実績をあげている 6.4% 21.2% 39.4% 15.4% 16.0% 1.6%

2.86 1.124

223 1,027 1,348 292 148 39 業績貢献能力

の加齢向上

1-Q17 歳を重ねるごとに、会

社や担当部署の業績に貢献す

る能力が向上している 7.2% 33.4% 43.8% 9.5% 4.8% 1.3% 3.29 0.915

224 892 1,474 275 172 40 経験相応の

格差

1-Q18 業績貢献度では同じ職

場の同僚・若手に比べて相応の

高い評価を得ている 7.3% 29.0% 47.9% 8.9% 5.6% 1.3% 3.24 0.922

148 806 1,607 291 183 42 育成・指導力

への評価

1-Q19 若手を一人前にする育

成・指導力について周囲からの

信頼を得ている 4.8% 26.2% 52.2% 9.5% 5.9% 1.4% 3.15 0.881

254 948 1,465 218 150 42

必要人材の

評価

1-Q20 職場の目標達成に必要

不可欠な存在であると周囲か

ら認められている 8.3% 30.8% 47.6% 7.1% 4.9% 1.4% 3.31 0.906

852 1,155 635 302 101 32 生活習慣病

対策

1-Q21 生活習慣病などはきち

んと検診、チェックしており、

仕事にさしさわりはない 27.7% 37.5% 20.6% 9.8% 3.3% 1.0% 3.77 1.064

367 896 1,025 510 244 35 心身機能低下

の予防・対応

1-Q22 加齢による心身の機能

低下を防ぐために具体的な予

防・対応策を実行している 11.9% 29.1% 33.3% 16.6% 7.9% 1.1% 3.21 1.106

362 752 930 628 373 32 定年後の

ライフプラン

1-Q23 定年後の仕事、生計、

生活スタイルなどについて具

体的なイメージをもっている 11.8% 24.4% 30.2% 20.4% 12.1% 1.0% 3.03 1.191

389 954 887 455 355 37 IT 活用

1-Q24 パソコンなどの IT を

駆使して仕事を手際よく処理

している 12.6% 31.0% 28.8% 14.8% 11.5% 1.2% 3.19 1.187

584 1,342 842 203 70 36

異種コミュニ

ケーション

1-Q25 年齢が離れた人や立場

が異なる人とでも、スムーズに

会話や意見交換をすることが

できる 19.0% 43.6% 27.4% 6.6% 2.3% 1.2%

3.71 0.928

Page 11: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-101-

389 978 1,116 345 206 43 定年後も働き

続ける意義

1-Q26 「定年後も働き続ける

こと」について、自分にとって

の必要性や意義をきちんと説

明できる 12.6% 31.8% 36.3% 11.2% 6.7% 1.4%

3.33 1.055

293 827 1,203 412 302 40 定年後貢献

業務の認識

1-Q27 定年後も、会社の業績

に貢献できるような自分なり

の仕事をリストアップするこ

とができる 9.5% 26.9% 39.1% 13.4% 9.8% 1.3%

3.13 1.084

925 877 881 181 172 41 仕事意欲の

維持

1-Q28 「定年まで先も見えて

きたから、仕事に対する積極性

がなくなった」などとまわりの

人から言われることはない 30.1% 28.5% 28.6% 5.9% 5.6% 1.3%

3.73 1.126

339 934 1,225 310 222 47 定年後

めざした

能力向上

1-Q29 定年後も、会社の業績

により貢献できるように、能

力・技術の維持・向上を図って

いる 11.0% 30.4% 39.8% 10.1% 7.2% 1.5%

3.28 1.035

104 438 1,446 615 429 45

加齢低下を

補う職場改善

1-Q30 設備や仕事のやり方を

見直し、高齢者が働きやすくす

るための改善を積極的に提

案・推進している 3.4% 14.2% 47.0% 20.0% 13.9% 1.5%

2.73 0.988

492 971 1,003 331 247 33 有期雇用契約

への変化

1-Q31 定年後、1年毎の有期

雇用契約になっても働くこと

で満足したり、生きがいを感じ

たりすることができると思う 16.0% 31.6% 32.6% 10.8% 8.0% 1.1%

3.37 1.123

548 1,138 892 285 175 39 指揮命令変化

への対応

1-Q32 定年後、これまで部下

であった者の指示を受けて働

くことになっても役割に応じ

た仕事ができると思う 17.8% 37.0% 29.0% 9.3% 5.7% 1.3%

3.53 1.069

887 1,186 676 146 147 35 新賃金への

対応

1-Q33 定年後雇用の賃金はそ

の時点の能力や成果が時価評

価されて決まるものだと理解

している 28.8% 38.5% 22.0% 4.7% 4.8% 1.1%

3.83 1.054

363 828 1,461 227 165 33 定年後の

必要人材

1-Q34 定年後に継続雇用され

ても「会社の目標達成に必要不

可欠な存在」と認められる自信

がある 11.8% 26.9% 47.5% 7.4% 5.4% 1.1%

3.33 0.966

584 1,199 906 196 157 35

定年後の

チームワーク

1-Q35 定年後雇用においても

他の部署からの応援や協力要

請があれば、積極的に応じる自

信がある 19.0% 39.0% 29.4% 6.4% 5.1% 1.1%

3.61 1.030

Page 12: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-102-

430 933 1,136 310 225 43 専門能力

での貢献

1-Q36 (役職)定年後は専門

能力・専門技能で職場に貢献で

きるという自信がある 14.0% 30.3% 36.9% 10.1% 7.3% 1.4% 3.34 1.076

122 461 1,283 678 494 39

キャリア形成

1-Q37 自分の専門能力や技能

を高める計画(キャリア目標)

を数年先まで設定して取り組

んでいる 4.0% 15.0% 41.7% 22.0% 16.1% 1.3%

2.68 1.042

281 971 926 528 332 39 基礎的

知識学習

1-Q38 新たな課題に取り組む

ときは、専門書や社外学習等で

基礎的な知識を学習して取り

組んでいる 9.1% 31.6% 30.1% 17.2% 10.8% 1.3%

3.11 1.135

212 858 1,242 491 235 39 知見・経験

の整理

1-Q39 仕事の過程で得たノウ

ハウなどは他の業務にも活か

せるよう整理整頓している 6.9% 27.9% 40.4% 16.0% 7.6% 1.3% 3.11 1.011

203 720 1,106 502 508 38

専門能力の

社内外活用

1-Q40 専門能力・専門技能を

持っているので社内外から相

談や依頼を受けることが多い 6.6% 23.4% 35.9% 16.3% 16.5% 1.2% 2.87 1.150

3.「仕事能力」の実態

ここでは、今回の調査結果にもとづいて、中高齢ホワイトカラーの仕事能力

の全体的な状況について解説を行ってみたい。

そこで、2で示した集計結果について、肯定回答(「YES」もしくは「どちら

かと言えば YES」)と否定回答(「NO」もしくは「どちらかと言えば NO」)のいず

れが多いかについて、視覚的に把握することができるように図式化した。

以下のグラフは、「どちらとも言えない」というあいまいな回答を取り除き、

肯定回答の回答数をプラス集計し、否定回答の回答数をマイナス集計した合計

値を表したものである。そのため、グラフが右に長いほど肯定的な回答が多い

ことを表し、左に長いほど否定的な回答が多いことを表している。また、グラ

フが短くなるほど、肯定・否定の回答数が拮抗していることを表しており、個

人差が大きいことがわかる(肯定・否定のいずれもが少なく、「どちらとも言え

ない」という回答が多い場合も含まれるため、注意が必要である)。なお、肯定

回答・否定回答のいずれも、YES や NO の回答は、どちらかと言えば YES/NO と

いう回答に対して、2倍のウェイトをつけている。

(1) 価値創造力

図 3-6 からわかるように、相対的にグラフが短く、他の要素に較べて意見

Page 13: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-103-

が分かれる設問だということがわかる。特に、「価値創造力」を尋ねている設

問3の「経営環境の変化によって生じた新たな課題を解決する能力がある、

と周囲から評価されている」と、「社外情報収集分析能力」を尋ねる設問5の

「専門紙誌やインターネットも含め、広い範囲、新しい視点から諸情報を収

集・分析している」のグラフが短くなっている。(特に設問3は、肯定・否定

の回答数が拮抗しており、このグラフの大きさではほとんど表示されない)。

図 3-6 価値創造力

これらの設問について、業種や企業規模による大きな違いは見られないが、

職位との関連性は高く、いずれの設問においても、役員クラス・部長クラス

の回答者の方が、他のクラスの回答者に較べて肯定的な回答の割合が高くな

っている(表 3-4 参照)。

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q5 専門紙誌やインターネットも含め、広い

範囲、新しい視点から諸情報を収集・分析して

いる

1-Q4 取引先や顧客、仕入先、社内の関係

各部署などとの信頼できる情報ネットワーク

を持っている

1-Q3 経営環境の変化によって生じた新たな

課題を解決する(能)力がある、と周囲から評価

されている

1-Q2 経営環境の変化に適応するために

自分の果たすべき役割や解決すべき課題

について、その方策を立案することができる。

1-Q1 経営環境の変化が自分の仕事や役割

にどのような変化を及ぼすかを具体的に説明

できる

Page 14: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-104-

表 3-4 職位別集計(価値創造力)

YES

どちらか

といえば

YES

どちらと

も言えな

どちらか

といえば

NO

NO

1.役員クラス 50.8% 33.2% 10.9% 3.6% 1.0%2.部長クラス 35.3% 40.0% 17.4% 5.0% 1.9%3.課長クラス 21.5% 43.7% 22.5% 7.2% 4.8%4係長・主任・現場監督

者クラス 9.5% 36.3% 33.2% 12.4% 8.2%5.一般社員 8.4% 22.5% 34.2% 16.3% 18.1%

1.役員クラス 41.5% 43.5% 11.9% 1.6% 1.6%2.部長クラス 28.6% 45.8% 17.4% 6.5% 1.5%3.課長クラス 15.3% 39.3% 31.5% 8.5% 4.9%4係長・主任・現場監督

者クラス 7.3% 31.9% 37.3% 15.0% 8.0%5.一般社員 4.7% 20.1% 35.6% 18.1% 20.6%

1.役員クラス 19.7% 41.5% 34.7% 2.6% 1.0%2.部長クラス 11.4% 34.2% 46.0% 5.2% 2.8%3.課長クラス 4.2% 22.3% 53.8% 12.3% 6.4%4係長・主任・現場監督

者クラス 2.7% 15.7% 55.3% 13.9% 11.5%5.一般社員 1.0% 8.9% 47.1% 16.4% 25.2%

1.役員クラス 23.3% 49.2% 22.8% 2.1% 2.6%2.部長クラス 20.6% 43.6% 26.5% 7.1% 1.9%3.課長クラス 13.4% 37.3% 32.2% 10.8% 5.8%4係長・主任・現場監督

者クラス 8.9% 34.6% 32.6% 13.3% 10.1%5.一般社員 5.4% 16.1% 30.5% 20.5% 27.2%

1.役員クラス 21.2% 45.6% 22.3% 7.3% 3.6%2.部長クラス 13.8% 42.8% 27.1% 12.1% 3.9%3.課長クラス 10.6% 33.1% 28.3% 18.4% 9.2%4係長・主任・現場監督

者クラス 6.3% 28.9% 29.0% 22.7% 12.4%5.一般社員 4.5% 16.6% 25.5% 25.0% 27.7%

設問5への回答

設問1への回答

設問2への回答

設問3への回答

設問4への回答

(2) 効率追求力

図 3-7 のとおり、「改善スキル能力」を尋ねている設問8の「問題解決や

改善の仕方(QC や小集団活動など)に長けていると、周囲から評価されてい

る」と、「5S を徹底する能力」について尋ねている設問 10 の「5S(整理・整

頓・清潔・清掃・躾)の取組みは、誰にも負けない自信がある」についての

グラフが短くなっている。

Page 15: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-105-

図 3-7 効率追求力

いずれも(1)同様に職位との関連性を示しているが、先にあげた設問8と設

問 10 は特に関連が強く、「役員クラス」「部長クラス」の肯定評価と、「課長

クラス」以下の否定評価が拮抗していることがわかる。中でも設問 10 の 5S

(整理・整頓・清潔・清掃・躾)への取組みなどは、上位職よりもむしろ一

般職員に求められる能力のように感じられるが、この結果からは、こうした

仕事への基本姿勢に関する能力は、上位職ほど必要と認識しているというこ

とが見て取れる。

(3) コラボレーション力

この要素では、設問 11 のような「自分の意見の言い方」や設問 13 に見ら

れる「報告・連絡・相談」といったような、仕事における基本コミュニケー

ション要素への肯定回答は高い。一方で、ベーシックコミュニケーションの

域を超える、設問 12 の「わかりやすい意見の述べ方」や設問 14 の「社内外

の調整や交渉」についての回答は、肯定評価・否定評価が分かれるところで

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q10 5S(整理 整頓 清潔 清掃 躾)の取組

1-Q9 仕事のミスやトラブルには迅速に対処す るだけでなく、原因を究明し再発防止対策も行っ

1-Q8 問題解決や改善の仕方(QC や小集団活動

など)に長けていると、周囲から評価されている

1-Q7 仕事の質的向上、コスト削減、作業時間 の短縮等の改善活動を日々の仕事の中で行っ ている

1-Q6 納期・期限に遅れないように、優先順位 やゆとりを考えて計画的に仕事をしている

ている

みは、誰にも負けない自信がある

Page 16: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-106-

ある。

図 3-8 コラボレーション力

また、「チームワークでの成果」を尋ねる設問 15 に関しては、否定評価の

方が多い結果となっている。これは、設問文が単なるチームワークを尋ねる

ものではなく、「初対面の人や立場の異なる人」とのチームに限定しており、

なおかつ「成果をあげた実績」の有無を尋ねているためであると思われる。

そのため、設問 15 の回答を職位別に見たときに、一般社員における「NO」が

42.1%と、否定回答数がきわだって多くなっているが、これは、チームへの参

画機会や成果に寄与する度合いが低い階層の社員においては、肯定評価が出

しにくいからであろう。

(4) 業績貢献力について

図 3-9 からわかるように、他の要素と比較してもグラフが短く、肯定・否

定の回答が分かれることがわかる。これは、マイナスとなっている設問 16

を除き、いずれも標準偏差が他の要素に較べて低く、回答が「どちらともい

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q15 ここ数年の間で初対面の人、立場の異なる人とチームを組んで成果をあげた実績がある

1-Q14 社内外の調整や交渉を任されるこ とが多く、ねらった成果をあげてきている

1-Q13 迅速で的確な「指示だし・指示受け、 報告・連絡・相談」を実践している

1-Q12 説明の仕方や意見の述べ方が、 「わかりやすい、理解しやすい」と周囲から 言われている

1-Q11 自分の意見を言うときは、相手が 受け入れやすい話し方、説明の仕方を選 んでいる

Page 17: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-107-

定の回答が分かれることがわかる。これは、マイナスとなっている設問 16

を除き、いずれも標準偏差が他の要素に較べて低く、回答が「どちらともい

えない」という中心値に集まっていることが大きな要因だといえよう。特に、

設問 18~20 は、いずれも「どちらともいえない」との回答が 45%以上となっ

ているが、これは設問文が他者からの評価を尋ねる形式になっていることに

も原因があると思われる。

なお、価値創造成果について尋ねている設問 16 は、前述した設問 15 と同

様に、一般社員には答えにくい設問文となっており、“業績への「大幅な貢献」

や「企業価値を高める」改革活動で「複数の」実績をあげているかどうか”

といった表現が影響したためか、NO という回答が 35.1%と高くなっている。

図 3-9 業績貢献力

(5) アンチエイジング力について

この要素では、さまざまな能力要件が同じグループとして構成されている。

図 3-10 からわかるように、それぞれに特徴的な結果となった。

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q20 職場の目標達成に必要不可欠な

存在であると周囲から認められている

1-Q19 若手を一人前にする育成・指導力

について周囲からの信頼を得ている

1-Q18 業績貢献度では同じ職場の同僚・

若手に比べて相応の高い評価を得ている

1-Q17 歳を重ねるごとに、会社や担当部署

の業績に貢献する能力が向上している

1-Q16 ここ数年の間で、業績への大幅

な貢献や企業価値を高める改革活動な

どで、複数の実績を上げている

Page 18: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-108-

図 3-10 アンチエンジング力

まず健康の維持管理に関する設問 21 と設問 22 からは、「検診・チェック」

はおおむね行っており、健康を維持する必要性は認識できているものの、「具

体的な予防・対応策の実行」といった、日々の継続的努力が必要とされるよ

うな取組みは、後手に回っていることが感じられる。

一方で、定年後のライフプランについては、年齢に応じて回答傾向が分か

れている。60 歳以上の回答者のうち「YES」と答えているのは全体の 25.7%

であり、「どちらかといえば YES」も合せた肯定回答は、全体の6割近くにの

ぼっている。一方で、45 歳未満の回答者においては、「どちらかといえば~」

を合せた肯定回答においても、25.2%にしかすぎない。

また、一般的に、加齢とともに対応が難しくなると思われていた IT の活用

や年齢の異なる相手とのコミュニケーションついては、図 3-11 のグラフの

とおり、年齢差による際立った差異は感じられず、むしろ個人差の問題であ

るということがわかる。

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q25 年齢が離れた人や立場が異なる人と でも、スムーズに会話や意見交換をすることが できる

1-Q24 パソコンなどのITを駆使して仕事を手 際よく処理している

1-Q23 定年後の仕事、生計、生活スタイルな どについて具体的なイメージをもっている

1-Q22 加齢による心身の機能低下を防ぐため に具体的な予防・対応策を実行している

1-Q21 生活習慣病などはきちんと検診、チェッ クしており、仕事にさしさわりはない

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-109-

図 3-11 年齢階層別集計(コミュニケーション力)

設問24

0.0%5.0%

10.0%15.0%20.0%25.0%30.0%35.0%40.0%

YES

どちらか

とい

えば

YES

どちらとも言

えな

どちらか

とい

えば

NO

NO

45歳未満

45歳以上50歳未満

50歳以上55歳未満

55歳以上60歳未満

60歳以上

設問25

0.0%5.0%

10.0%15.0%20.0%25.0%30.0%35.0%40.0%45.0%50.0%

YES

どちらか

とい

えば

YES

どちらとも言

えな

どちらか

とい

えば

NO

NO

45歳未満

45歳以上50歳未満

50歳以上55歳未満

55歳以上60歳未満

60歳以上

(6) 生涯現役力

生涯現役力について尋ねている設問 26 から設問 30 は、いずれも定年前後

の仕事生活を想定した設問文となっている(図 3-12)。そのため、定年が身

近になるほど想定しやすい内容となっており、表 3-5 からもわかるように、

おおむね、年齢が上がるほど肯定回答が多くなっている。いずれも 55 歳以上

60 歳未満と 60 歳以上との差異が最も大きいことから、定年後の仕事やワー

ク・スタイルについては、定年直前にならなければ、なかなか実感が沸いて

Page 20: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-110-

こないといった現状が見て取れる。

図 3-12 生涯現役力

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q30 設備や仕事のやり方を見直し、

高齢者が働きやすくするための改善を

積極的に提案・推進している

1-Q29 定年後も、会社の業績により貢献できるよ

うに、能力・技術の維持・向上を図っている

1-Q28 「定年まで先も見えてきたから、仕事に対

する積極性がなくなった」などとまわりの人から言

われることはない

1-Q27 定年後も、会社の業績に貢献できるような

自分なりの仕事をリストアップすることができる

1-Q26 「定年後も働き続けること」について、自分

にとっての必要性や意義をきちんと説明できる

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-111-

表 3-5 年齢階層別集計(生涯現役力)

YES

どちらか

といえば

YES

どちらと

も言えな

どちらか

といえば

NO

NO

45歳未満 6.1% 20.0% 42.6% 19.1% 11.3%45歳以上50歳未満 8.2% 28.5% 39.2% 14.0% 9.5%50歳以上55歳未満 11.5% 32.2% 37.4% 12.2% 6.4%55歳以上60歳未満 16.1% 35.6% 35.0% 8.1% 4.7%60歳以上 29.0% 40.7% 23.8% 4.2% 1.9%

45歳未満 4.3% 20.9% 34.8% 15.7% 23.5%45歳以上50歳未満 4.8% 20.8% 45.1% 16.4% 12.3%50歳以上55歳未満 8.5% 25.0% 40.4% 15.1% 11.0%55歳以上60歳未満 12.9% 33.2% 36.1% 11.1% 6.2%60歳以上 25.7% 42.1% 25.7% 3.3% 3.3%

45歳未満 27.8% 13.0% 40.0% 4.3% 11.3%45歳以上50歳未満 30.3% 25.5% 31.8% 7.2% 5.0%50歳以上55歳未満 30.6% 32.2% 26.1% 5.4% 5.3%55歳以上60歳未満 29.8% 31.0% 27.8% 5.5% 5.5%60歳以上 34.6% 29.0% 23.4% 4.2% 7.9%

45歳未満 4.3% 17.4% 42.6% 13.9% 20.9%45歳以上50歳未満 7.2% 28.3% 43.8% 11.3% 8.9%50歳以上55歳未満 11.1% 28.7% 42.9% 10.0% 6.9%55歳以上60歳未満 13.2% 35.0% 35.9% 10.3% 4.8%60歳以上 24.3% 37.9% 29.9% 1.9% 4.2%

45歳未満 0.0% 2.6% 48.7% 22.6% 25.2%45歳以上50歳未満 2.5% 12.0% 47.7% 21.7% 15.6%50歳以上55歳未満 2.6% 13.4% 45.8% 21.8% 16.1%55歳以上60歳未満 3.9% 16.6% 48.7% 18.8% 11.2%60歳以上 10.7% 25.7% 47.2% 10.3% 5.1%

設問30

設問28

設問29

設問26

設問27

ただし、「仕事意欲の維持」について尋ねている設問 28 は、年齢との相関

関係はさほど強くはない。それよりもむしろ、年齢にかかわらず、肯定評価

が否定評価をかなり上回っていることが特徴的である。これは、設問文が本

人の主観を尋ねるものではなく、「まわりの人から言われるかどうか」という

他者からの評価(特に、「言われる」という行動に結びついているかどうかま

でが問われている)ことが影響しているものと思われる。

また、「加齢低下を補う職場改善」について尋ねている設問 30 では、年齢

との相関関係が充分認識できるレベルにはなく、また各年代とも否定評価の

方が多く、「どちらとも言えない」という回答も際立って多くなっており、他

の要素とは異なる傾向を示している。

設問 30 に対する回答を職位別に見た場合、役員クラスの回答者に特に肯定

回答が多いことから考えると、設問 30 が職場改善の提案の有無について尋ね

Page 22: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-112-

る内容であることから、そうした立場になければ肯定評価を答えにくいため

かもしれない。

(7) 加齢変化対応力

設問 31 から設問 35 は、いずれも加齢変化(特に働く環境への変化)への

対応力を尋ねたものである(図3-13)。先に述べた生涯現役力に関する設問

にくらべると、「定年後」のワーク・スタイルに焦点があたっている。

図 3-13 加齢変化対応力

これらの設問は、定年後という新たな環境でのワーク・スタイルを尋ねる

ものであるため、年齢が低いほどより一層イメージがしにくく、明確な回答

がしにくいことが予想される。実際、表 3-6 の年齢との相関関係を表したデ

ータからもわかるように、定年後の仕事について明確なイメージができる 60

歳以上とそれ以外とでは、肯定回答に大きな差が生じている(そうした意味

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q34 定年後に継続雇用されても「会社 の目標達成に必要不可欠な存在」と認め られる自信がある

1-Q33 定年後雇用の賃金はその時点の能力や成果が時価評価されて決まるもの だと理解している

1-Q32 定年後、これまで部下であった者の指示を受けて働くことになっても役割に 応じた仕事ができると思う

1-Q31 定年後、1年毎の有期雇用契約に なっても働くことで満足したり、生きがいを 感じたりすることができると思う

1-Q35 定年後雇用においても他の部署 からの応援や協力要請があれば、積極 的に応じる自信がある

Page 23: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-113-

において、この要素は、加齢変化によって下降する因子であるという予測と

は反した結果となっている)。

中でも興味深いのは、「新賃金への対応」を尋ねた設問 33 への回答傾向で

ある。表 3-6 のとおり、60 歳以上の肯定回答が合計で 82.3%と極めて高い。

よって、定年後の再雇用における賃金体系の変化を体験した 60 歳以上の回答

者ほど、設問文にある「定年後雇用の賃金は、その時点の能力や成果が時価

評価される」という価値観への理解が高いことが見て取れる。そのため、定

年後の継続雇用時に賃金が低下することについて不満があるのではないか、

という予測についても、現状では、おおむね、不満よりも理解・満足が高い

ことが想定される(理解・満足があるから継続的に働いている、という逆の

理解もありうるが)。

なお、設問 34 の「自分が定年後の必要人材となりうるかどうか」という問

いに対しては、下表のとおり、50 歳未満の回答者では半数以上が「どちらと

も言えない」と回答している。これは、「定年後」で、しかも「自分に対する

他者からの評価」という想定しにくい内容を尋ねたことが影響していると思

われる。

Page 24: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-114-

表 3-6 年齢階層別集計(加齢変化対応力)

YES

どちらか

といえば

YES

どちらと

も言えな

どちらか

といえば

NO

NO

45歳未満 14.8% 18.3% 45.2% 11.3% 9.6%45歳以上50歳未満 11.1% 30.1% 37.1% 12.2% 9.2%50歳以上55歳未満 14.4% 32.2% 33.0% 11.5% 8.8%55歳以上60歳未満 18.7% 33.5% 30.6% 9.9% 7.1%60歳以上 36.0% 39.3% 15.4% 5.6% 3.3%

45歳未満 14.8% 23.5% 42.6% 11.3% 6.1%45歳以上50歳未満 14.7% 38.0% 31.7% 9.8% 5.8%50歳以上55歳未満 18.3% 38.0% 28.1% 9.3% 6.1%55歳以上60歳未満 19.0% 38.2% 27.1% 9.6% 5.4%60歳以上 29.4% 36.9% 21.0% 6.5% 6.1%

45歳未満 28.7% 20.9% 36.5% 7.8% 5.2%45歳以上50歳未満 24.3% 41.1% 26.2% 3.6% 4.4%50歳以上55歳未満 30.8% 36.7% 21.7% 5.4% 5.3%55歳以上60歳未満 29.6% 40.9% 19.0% 5.2% 4.9%60歳以上 43.0% 39.3% 9.3% 3.7% 4.7%

45歳未満 3.5% 15.7% 57.4% 10.4% 12.2%45歳以上50歳未満 6.2% 22.7% 56.1% 8.1% 6.8%50歳以上55歳未満 10.6% 27.4% 48.9% 7.9% 5.3%55歳以上60歳未満 15.6% 32.2% 41.0% 6.8% 3.9%

60歳以上 32.7% 32.7% 28.5% 3.3% 2.8%

45歳未満 14.8% 33.0% 37.4% 6.1% 7.8%45歳以上50歳未満 14.7% 42.8% 31.2% 5.9% 5.4%50歳以上55歳未満 18.5% 38.6% 29.9% 8.0% 4.7%55歳以上60歳未満 21.8% 38.3% 28.2% 6.6% 4.8%60歳以上 34.1% 35.5% 22.9% 1.9% 5.6%

設問31

設問35

設問34

設問33

設問32

(8) 専門能力形成力

設問 36 から設問 40 では、専門能力をいかに形成するかについて尋ねてい

る(図 3-14)。わが国においては、働く側に、こうした主体的な能力形成や

キャリア形成という意識が高くないということが想定されており、このデー

タもそうした想定を裏付けるものとなっている。特に、設問 37 の「自分の専

門能力や技能を高める計画(キャリア目標)を数年先まで設定して取り組ん

でいる」に対する回答が年齢にかかわらず押しなべて低いのは、そうした傾

向を良くあらわしていると思われる。

Page 25: 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活 …...-91- 第3章 「仕事能力把握チェックリスト」による把握実態と活用

-115-

図 3-14 専門能力形成力

ただし、年齢別に見た場合は、上記の想定は必ずしも当てはまらないこと

に注意しなければならない。“日本の雇用慣例としてのキャリア形成意識の希

薄さ”という上記の想定が正しければ、そうした旧来型の雇用慣例に慣れ親

しんでいる高齢者ほど、否定的回答が高くなるはずである。しかし、特徴的

な差というほどまではいかないものの、年齢が上がるほど肯定回答が多くな

る傾向を示しており、特に 60 歳以上における肯定回答率は他の年代に較べて

高くなっている。そのため、専門能力の形成に向けた努力という行動は、キ

ャリア形成意識とは異なる要因(例:仕事に対する姿勢)が働いているのか

もしれない。

なお、この設問群については、所属部門における差異が生じている。いず

れの設問でも、おおむね「技術・研究部門」に属する回答者の肯定回答の割

合が高くなっている。「事務・管理」や「営業・販売」といった業務を担当し

ている場合は、自己の知見が暗黙値化しやすく、ポータブル・スキル化を図

ることが容易ではない(もしくは、そうした方策が広く浸透していない)か

-4000 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000

1-Q40 専門能力・専門技能を持って いるので社内外から相談や依頼を受 けることが多い

1-Q39 仕事の過程で得たノウハウなどは 他の業務にも活かせるよう整理整頓してい る

1-Q38 新たな課題に取り組むときは、 専門書や社外学習等で基礎的な知識 を学習して取り組んでいる

1-Q36 (役職)定年後は専門能力・専門技 能で職場に貢献できるという自信がある

1-Q37 自分の専門能力や技能 を高める計画(キャリア目標)を数 年先まで設定して取り組んでいる

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-116-

らであろう。自己の専門能力を形成する力を高めるには、主体的なキャリア

形成意識を醸成するだけではなく、そうした方策を提供する機会を提供する

ことも、必要とされているのかもしれない。

(新谷聡美)