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4 環境配慮設計規格、ガイドライン等の動向 及び適合性評価手法に関する分析・検討

第4 章 環境配慮設計規格、ガイドライン等の動向 …...4.1 国内外における規格化等の動向の整理 本節では文献調査等に基づき、環境配慮設計の規格化等に関する国内外の検討動向につき、関

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Page 1: 第4 章 環境配慮設計規格、ガイドライン等の動向 …...4.1 国内外における規格化等の動向の整理 本節では文献調査等に基づき、環境配慮設計の規格化等に関する国内外の検討動向につき、関

第 4 章

環境配慮設計規格、ガイドライン等の動向 及び適合性評価手法に関する分析・検討

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4.環境配慮設計規格、ガイドライン等の動向及び適合性評価手法に関する分析・検討 環境に配慮した B to C 製品を開発製造さらに市場へ投入していくにあたり、当該製品の構

成部品にかかるサプライチェーン間での(すなわち B to B 間での)環境関連情報受け渡しは、

当該製品の環境品質担保をより高い位置へと導く、たいへん重要な要素となっている。 本章においては「環境配慮設計」をキーワードに、その国内外における規格化や業界ガイ

ドラインの動向を 初に整理する。続いてサプライチェーン間での製品環境情報提供や管理

状況につき、アンケート結果分析等を通じて明らかにした上で、製品環境配慮設計に対し包

括的に対応可能な適合性評価スキームのあり方について議論を行う。 4.1 国内外における規格化等の動向の整理

本節では文献調査等に基づき、環境配慮設計の規格化等に関する国内外の検討動向につき、関

連情報を整理した。

(1)国内における取組み1:資源有効利用促進法対応の製品アセスメント

家電業界においては、製品開発段階での環境配慮設計の重要性を認識し、他業界に先駆

けて 1990 年代初頭から自主的に製品アセスメントマニュアルを作成運用(「家電製品 製

品アセスメントマニュアル 第1版」((財)家電製品協会発行、1991 年 10 月))し、家

電メーカーの取り組みを支援してきている。 家電メーカーの製品アセスメント実施率は 100%であり、その実施事例は、各社の環境報

告書を始め家電製品協会などのホームページでも公開されており、年々その数は増えつつ

ある。 2000 年における「循環型社会形成推進基本法」の制定、また 2001 年には、「資源有効利

用促進法」も施行(1991 年制定の「再生資源利用促進法」の改正法)となり、家電製品にお

いても、政令で指定された6品目(エアコン、洗濯機、冷蔵庫・冷凍庫、テレビ、電子レン

ジ、衣類乾燥機)については省令により、3Rを促進するために設計上の配慮を行う「判断

の基準」が定められるなど内容が強化された。また、同年に「家電リサイクル法」が施行

となり、製造事業者等に対して下記4品目(エアコン、洗濯機、冷蔵庫・冷凍庫、テレビ)

のリサイクルが義務付けられた。これらの法律により製品アセスメントの役割が益々重要

になってきたため、家電製品協会では、2001 年に、客観的な評価を行うための定量評価の

考え方を取り入れた「家電製品 製品アセスメントマニュアル(第3版)」を発行して、製

品アセスメントの推進強化を図っている。更に、開発・生産のグローバル化を考慮して、

第3版のダイジェスト版「家電製品 製品アセスメントマニュアル概要版(英語版・日本語

版)」を発行している。 一方、家電リサイクル法に基づいて 2001 年 4 月から家電リサイクルプラントで4品目の

リサイクル処理が行われるようになり、その処理実態に即したリサイクルしやすい製品づ

くり(リサイクル処理ノウハウの製品設計へのフィードバック)が家電メーカー共通の重

要課題となってきた。そのため、家電リサイクルプラントにアンケートや訪問調査を行い

ながら、手解体・分別容易化のための家電業界独自の“材質表示”や“リサイクルマーク”

を策定し、推奨表示サイズ・表示位置も定めた「家電製品 製品アセスメントマニュアル

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第3版追補版」を 2004 年に発行した。 また、地球温暖化防止に向けエネルギー消費効率の優れた機器の開発を目的とする、ト

ップランナー方式を採用した「改正省エネ法」が 1999 年 4 月より施行されたが、家電製品

においても省エネ設計の義務が課せられ、第3版にはこの点も付け加えられている。エア

コンや冷蔵庫などは、既に第一次の省エネ目標値を達成し、省エネ設計の実績は着実に出

ている。 さらに、同アセスメントマニュアルの内容が一新された 新版(第 4 版)が、2006 年 5

月に発行されている。

①製品アセスメントの実施例の公開

家電製品協会では、1997 年より、会員会社の製品アセスメントの実施例をまとめた「家

電機器の製品アセスメント事例集-環境適合製品をめざして-」などの冊子を発行してき

た( 新版は 2007 年 2 月発行)。2002 年秋からは「環境配慮型製品を目指して 家電業界

の製品アセスメントの取り組み」のホームページ(http://www.aeha.or.jp/assessment/)

を開設、さらに 2003 年 1 月には、同ホームページに各社の製品アセスメントの取り組み内

容につき、写真や図等を用いて分かりやすく実施事例として紹介してきている。 なお、2003 年 1 月に発行した「家電製品 製品アセスメントマニュアル概要版(英語版・

日本語版)」は、家電製品協会ホームページに掲載し、日本の家電業界の製品アセスメント

の取り組み内容を国内外に発信している。 製品アセスメントの実施例*1につき、図 4.1 から 4.3 に示す。

【出典】 *1 (財)家電製品協会 ウェッブサイト

http://www.aeha.or.jp/assessment/example.html

90

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1 減量化 ○

2 再資源・再生部品の使用 ◎

3 長期使用の促進 ○

4 収集・運搬の容易化 ○

5 再生資源化の可能性の向上 ○

6 分離・分別処理の容易化 ○

7 破砕・選別処理の容易化 ○

8 包 装 ○

9 安全性・環境保全性 ◎

10 使用段階における省エネ等 ◎

11 情報の開示 ○

12 LCA ◎

13 製造段階における環境負荷低減 ○

14 流通段階における環境負荷低減 ○

1.省エネの飛躍的な向上

ノンフロン高効率冷却システムの開発、NEDO*との共同開発による 新高性能真空断熱材(新 U-VACUA:熱伝導率 0.0020W/mK)の採用 により、断熱効率を飛躍的に高め、使用時の消費電力を昨年度より さらに 17%削減した。LCA を実施しライフサイクルでの効果を確認 した。 *NEDO:新エネルギー・産業技術総合開発機構

2.環境負荷物質の削減及び再生材の使用促進 2004 年 3 月末日本国内製品の 100%化を達成したノンフロン化技術 をはじめ、制御基板への無鉛はんだの採用、家電リサイクルから 還流する再生 PP 材の 15 部品への拡大使用

1.2004 年省エネ基準達成率298%を達成

年間の消費電力量を当社前年度比約 17%削減(180→150kWh/年)、 2004 年省エネ基準達成率 298%を達成。 (1)ノンフロン高効率冷却システム(新フラット冷却器と新通風路、

インバータ制御・コンプレッサーの改善)の開発。 (2)新高性能真空断熱材(バインダレス新 U-VACUA)の開発で断熱

効率を向上させた。折り曲げ可能化による被覆率向上(冷凍室 被覆率 26%→56%)で新真空スッポリ構造の開発。

(3) LCA の実施により、温室効果ガス排出量で、2000 年度当社従来 機種より 54%削減。

2.環境負荷物質の削減

(1)2004 年 3 月末に 冷媒をノンフロン化(イソブタン R600a 採用) することにより、地球温暖化係数を約 400 分の 1 に低減。当該機種 のみでなく、国内生産品の小型~大型まで全ての機種でノンフロン 化を達成。

(2)2002 年 3 月末に制御基板へ無鉛はんだを採用することにより、 基板の無鉛はんだ化を実現。当該機種のみでなく国内生産品の小型 ~大型まで全ての機種の制御基板の無鉛はんだ化を達成。

3.プラスチック材料の再利用

野菜ケースのリサイクルから還流する廃 PP 材の 95%を独自のエコ マテリアルシステムにて、異物除去・洗浄・脱臭システムにより 原料へ還元し、冷蔵庫の 15 部品(従来 1 部品)に採用。

図 4.1 冷蔵庫の製品アセスメント実施例

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1 減量化 ◎

2 再資源・再生部品の使用 ○

3 長期使用の促進 ○

4 収集・運搬の容易化 ◎

5 再生資源化の可能性の向上 ○

6 分離・分別処理の容易化 ○

7 破砕・選別処理の容易化 ○

8 包 装 ○

9 安全性・環境保全性 ◎

10 使用段階における省エネ等 ◎

11 情報の開示 ○

12 LCA ○

13 製造段階における環境負荷低減 ○

14 流通段階における環境負荷低減 ◎

従来の洗濯乾燥機では洗濯・乾燥容量が共に小さく、負荷の単位質量 当りのランニングコストも高かった。そこで、DD インバータモータや センターブロー乾燥での洗濯・乾燥効率アップをした上で、洗濯 8kg ・乾燥 4.5kg を目指し、エネルギーや水の使用量削減に取り組んだ。 また、振動低減のために2軸方式ドラムと偏芯過重を補正する G-fall 制御を採用し、振動抑制のための重量物を削減し製品の質量低減を 図った。

1.製品質量低減

2軸方式ドラム採用と、G-fall 制御※で片寄った衣類のバランスを 補正することで低振動を実現したため、 振動抑制のための重量物を 削減でき製品質量を 1996 年モデル比 18%削減した(83kg→68kg)。 ※G-fall 制御:脱水時に衣類が上に来たときに一瞬ドラムの回転

を止め、ドラム両側面に配置したバランスボックス内の塩化 カルシウム溶液を下へ移動させ、その重さを利用してドラム 全周の重量を均等にすることにより振動を低減させる制御方法。

2.年間使用水量の削減

年間使用水量を 1996 年モデル比 40.4%削減した。(洗濯から乾燥 まで、単位質量比)更に風呂水浄化ポンプ採用で、 終すすぎ以外 に風呂水を使用した場合には、平成 8 年モデル比 71.2%削減した。 (洗濯から乾燥まで、単位質量比)

3.年間消費電力量の削減

・DD インバータモータ※とセンターブロー乾燥による高効率乾燥の 採用で洗濯・乾燥効率をアップさせ、年間消費電力量を 1996 年 モデル比 27.5%削減した。(洗濯から乾燥まで、単位質量比)

・待機時消費電力ゼロ。 ※DD(ダイレクトドライブ)インバータモータ:減速機構等を

もたず脱水槽とモータの回転子を直結させる運転方式の DC ブラシレスインバータモータ。

図 4.2 洗濯機の製品アセスメント実施例

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1 減量化 ◎

2 再資源・再生部品の使用 ○

3 長期使用の促進 ◎

4 収集・運搬の容易化 ◎

5 再生資源化の可能性の向上 ◎

6 分離・分別処理の容易化 ◎

7 破砕・選別処理の容易化 ○

8 包 装 ◎

9 安全性・環境保全性 ◎

10 使用段階における省エネ等 ◎

11 情報の開示 ○

12 LCA ◎

13 製造段階における環境負荷低減 ○

14 流通段階における環境負荷低減 ◎

近年のエアコンは省エネ性能の追求で機器が大型化しているが、

省エネ性を確保しつつ室内機のコンパクト化に取り組み、従来比

約 40%の減容化等を実現した。

インテリアデザインの重視もあるが、環境面でも資源の減量化、 収集・運搬の容易化が大きく向上した。その他の環境要求項目も 高いレベルで実現している。

1.室内機のコンパクト化を実現

省エネ性を確保しながら、従来比約 40%の減容化を実現した。 冷媒使用量も 20%削減し、素材・包装材の減量化、収集・運搬 の容易化が大きく向上した。

2.待機時消費電力の低減

待機時消費電力を1W に抑え、使用しないときの省エネにも配慮 した。

3.無鉛はんだの採用

室内機、室外機およびリモコンのプリント基板に無鉛はんだを 採用した。

4.樹脂のリサイクル容易化

PP・PS などのリサイクルしやすい樹脂への統合を進め、表示 可能なスペースがある部品については材質表示を徹底し、分離・ 分別処理を容易にしている。

5.包装材の統合

室内機の包装材は「発泡スチロール+ダンボール」であったものを 全てダンボールに統合し、回収処理の容易化を図った。

6.長期使用への配慮

手入れの簡単なフラットパネルの採用、抗菌剤含浸シートのドレン パンへの取り付け、および運転終了時の乾燥運転機能の追加による カビ発生の抑制など、長期使用への配慮を行った。

図 4.3 エアコンの製品アセスメント実施例

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②製品環境規制の動向と環境配慮設計の国際標準化

我が国では、製品の3Rの推進を図る資源有効利用促進法、省エネルギー推進を図る省

エネ法(トップランナー基準)、更には家電リサイクル法等の下で、環境配慮設計の着実な

取り組みが進展しているが、近年、欧州を中心に、北米やアジアなどの各地域でも、電気・

電子機器を対象としたリサイクルや環境配慮設計の法制化が進みつつある(表 4.1 参照)。

表 4.1 近年の電気・電子機器に関する各地域の主要法規制等の動き

地域 法 規 制 等

日本 ・資源有効利用促進法

・省エネ法(トップランナー基準)

・家電リサイクル法 等

欧州 ・廃電気・電子機器指令(WEEE:Waste Electrical and Electronic Equipment)

・特定有害物質使用制限指令

(RoHS:Restriction of the use of the certain Hazardous Substances)

・エネルギー使用製品のエコデザイン要求を設定するための枠組指令(EuP 指令)

(Directive for a framework for the setting of ecodesign requirements for

Energy-using Products )

・新化学品規制(REACH 規則)

(Registration, Evaluation, Authorization and Restrictions of Chemicals)

米国 ・ カリフォルニア州電子廃棄物(ディスプレイ)リサイクル法

(メイン州、メリーランド州などもリサイクル法制定)

・連邦エネルギー政策法(2005 年成立)

・水銀規制(バーモント州等)

中国 ・再生資源回収利用管理条例

・電子情報製品汚染防止管理弁法(中国版 RoHS)

・廃旧家電回収管理弁法(中国版 WEEE) ※法制化プロセスが進展中

韓国

・有害化学物質管理法

・資源節約・再利用促進法

これらの規制は、必ずしも我が国の法規制と整合が取れている訳ではなく、このため、

我が国の家電業界にとっては、各国、各地域毎に個別の対応を強いられることになる。 こうした法規制のグローバリゼーションの流れから、環境配慮設計に関わる国際的な標

準化の必要性を認識し、電気・電子機器に関する国際規格を審議する IEC(国際電気標準

会議)では、2005 年 5 月に環境配慮設計ガイドライン(IEC ガイド 114)を発行している。

同時に、2004 年 10 月に発足した新しい技術委員会 TC111(環境)で環境配慮設計規格(IEC 62430:Environmentally Conscious Design for Electrical and Electronic Products and Systems)の

策定を決定し、現在 TC111 下の作業グループ(WG2)でその作業が進められている。 ここで IEC ガイド 114 および IEC62430 は、両方とも日本提案に基づくものであり、家電

製品協会の前記の製品アセスメントマニュアルは、このいずれにも紹介され評価を得てい

る。

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③製品アセスメントの内容

本節では家電製品協会の「家電製品 製品アセスメントマニュアル(第4版)」(平成 18年 5 月発行)にもとづき、家電製品の製品アセスメント内容・手順について示す。

(a)製品アセスメントの目的 製品アセスメントは、製品の設計段階において、資源投入-製造-流通-使用-収集・

運搬-リサイクル-適正処理 の家電製品のライフサイクル全般を考慮し、「天然資源

の使用量削減」、「再資源利用の可能性向上」、「エネルギー消費の削減」、「特定の化学物

質の使用制限」、「廃棄物の発生抑制」等に向けた工夫・配慮を組み込むことにより、家

電製品に係る環境負荷の低減に資することを目的に実施するものである。

図 4.4 家電製品のライフサイクル

なお、製品アセスメントの実施にあたっては、「循環型社会形成推進基本法」で規定し

ている表 4.2 に示す処理の優先順位、資源有効利用促進法の判断基準、廃棄物処理法の

適正処理困難性評価等、法令で規定された要件を踏まえ、また、家電リサイクル法に基

づいて家電リサイクルプラントから得られる知見を活かして、継続的な実効性向上を図

っている。

表 4.2 循環型社会形成推進基本法が規定する、処理の優先順位

【処理の優先順位】

① 発生抑制(リデュース)

② 再使用(リユース)

③ 再生利用(マテリアルリサイクル 等)

④ 熱回収(サーマルリサイクル)

⑤ 適正処分

適正処理

使用

流通

製造

資源投入

収集・運搬

リサイクル

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(b)製品アセスメントガイドラインの概要 製品アセスメントガイドラインの階層構造と評価項目の構成の概要について示す。

1)ガイドラインの階層構造

ガイドラインの階層構造は、以下のような形で整理されている。 評価項目(大項目-小項目)- 評価基準 - 評価方法

各階層の記述内容・目的は 表の通りである。

表 4.3 製品アセスメントガイドラインの階層構造と各階層の記述内容

階 層 各階層の記述内容

評価項目 ・もれなく製品アセスメントを実施するための項目リストを提示する。

・製品アセスメント実施の目的・方向性を示す。

評価基準 ・項目ごとに評価を行う際の視点・考え方を示す。

・Yes/No で回答可能な疑問文の形で記載する。

評価方法 ・具体的な評価の方法(評価指標、比較対象等)を示す。

・評価方法は以下の2つに大別される。

a)基準となる製品(従来同等製品・機種等)と比較する

b)一定の条件を満たしているか(法令等を満たしているか、実施可能性

について検討したか 等)をチェックする

・複数方法を併記する場合がある。(複数の選択肢を提示する。)

判断の目安 等 ・評価に当たっての留意事項、他の評価項目や法令との関連等を記載する。

・評価項目の重要度は、製品ごと、製造事業者ごとに異なるものと考えら

れるため、評価項目間の相対評価(重み付け)は、必要に応じて、製造

事業者各社が自ら定めるものとする。

2)評価項目の構成 製品アセスメントガイドライン(チェックリスト)の評価項目とその目的を表 4.4 に、

循環型社会の諸概念や耐久消費財のライフサイクルと対照させて、ガイドラインの評価

項目を図示したものを図 4.5 に示す。

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表 4.4 製品アセスメントガイドラインの評価項目とその目的

No. 評価項目 目的

1 減量化・減容化 ・限りある資源の使用量の削減

・廃棄物の発生の抑制

2 再生資源・再生部品の使用 ・資源の循環利用の促進

3 再資源化等の可能性の向上 ・使用済み製品の処理の際に再利用しやすい材料を使うこ

とでリサイクルやリユースを促進

4 長期使用の促進 ・製品の長期間使用による資源の有効利用、廃棄物の発生

量の削減

5 収集・運搬の容易化 ・使用済み製品の収集・運搬の効率化

6 手解体・分別処理の容易化 ・使用済み製品のリユースやリサイクルの容易化

7 破砕・選別処理の容易化 ・強固な部品や油漏れ、磁石などによる破砕機へのダメー

ジや工程への悪影響の防止

・破砕後の混合物の選別

8 包装 ・包装材の省資源、リサイクル等の促進

・包装材の減量化、減容化等による流通段階での環境負荷

低減

9 安全性 ・爆発の危険性や火傷、怪我など、安全性の確保とリスク

の削減

10 環境保全性 ・法令、業界の自主基準等で決められた製品含有化学物質

の使用禁止、削減、管理

11 使用段階における省エネ・省資源

・消費電力量等の削減や温室効果ガスの発生抑制

・消耗材の使用量削減

12 情報の提供 ・必要情報をふさわしい表示方法で提供し、使用・修理・

処理を適切に実施

13 製造段階における環境負荷低減 ・製造段階での有害物質や廃棄物、消費電力量等の環境

負荷を低減

14 LCA

(ライフサイクルアセスメント)

・製品のライフサイクルでの環境負荷を定量的に事前評価

し、設計段階で改善を図り、環境負荷を低減

97

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44.

4.99

8

図 4.5 循環型社会システムの概念図と本ガイドラインの評価項目との対応関係

資源投入

破砕・選別

終処分

再生資源

処理残渣

サーマル

リサイクル

ケミカル

リサイクル

リサイクル

製品製造

流通・販売

素材製造

修理・サービス

(リデュース)

使 用 (消費者)

収集

運搬

手解体・分

別分別された

部品・部材

製品

リユース

マテリアル

リサイクル

部品

リユース

一般的なルート

一部で実施されているルート

製造

部品製造

企画・設計者には、下図の全体を踏まえた企画・設計が望まれる。そのため各段階からの情報のフィードバックが必要。

7.破砕・選別処理

の容易化

6.手

解体

・分

別処

理の

容易化

5.収集・運搬の容易化

3.再資源化等の可能性

の向上

4.長期使用の促進

11

.使用段階における

省エネ・省資源等

13.製

造段階における

環境負荷低減

8.包装

(全般に関わる項目)

1

.減量化・減容化

9

.安全性

10

.環境保全性

12

.情報の提供

14

.LCA

2.再生資源・再生

部品の使用

98

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(c)評価方法 「製品アセスメントガイドライン(チェックリスト)」では、個別評価項目については、

できるだけ数値化しやすい評価方法を示し、基準となる製品(従来同等製品・機種等)

と比較しやすいよう配慮している。 評価方法には、これら評価項目ごとに行う「個別評価」と、全ての項目の評価結果を

統合して行う「総合評価」がある。製品ごとにどの評価項目を採用するか、評価項目ご

との点数化や評価項目間の重みづけのあり方等については各社の任意である。

1)個別評価 個別評価とは、採用した評価項目ごとに評価することをいう。 評価項目としては、「1.減量化・減容化」から「14.LCA」まで 14 の大項目と、それ

ぞれの下位に位置する合計 47 の小項目がある。 個別評価を行う場合、特定項目のみに着目すると、新製品が従来製品に劣る場合も考

えられる。マイナスをどのくらいまで許すかは、あらかじめ開発規定等に定めておく必

要がある。 個別の評価項目ごとの比較は、通常は簡単であるが、他の項目とのトレードオフが起

こることがあり、その際にはやや高度な判断が必要となる。

2)総合評価 総合評価とは、何らかの方法で個別評価の結果を総合し、製品全体としての環境配慮

性を評価することをいう。 まず、個別評価点を単純集計して総合点を算出、従来設計との点数比較を行ってみる。

個別評価には重きを置かずに、総合点において改善であればよしとする。次に、個別評

価にも検討を加え、例えば評価項目ごとの点数の出入りをレーダーチャート等として作

図し、そして著しいマイナス項目については改善処置を行う(図 4.6 参照)。

図 4.6 総合評価・個別評価の実施例

0

0.5

1

1.5

1. 減量化・減容化

4. 長期使用の促進

6. 手解体・分別処理

  の容易化

10. 環境保全性

11. 使用段階における

   省エネ・省資源等

12. 情報の提供

個別評価 (レーダーチャート)

改善ポイント従来機種 新機種

総合点比較

99

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総合評価結果は、総合点比較から個別得点の併用までの応用ができる。熟練した設計

者は十分これらの評価を行い、改善につなげることができる。 総合評価の重要な意義は、評価項目の間にトレードオフがあった場合、どの項目を生

かして新製品の特徴を出すかにある。 また、総合評価を新製品の企画段階に活用することも考えられる。すなわち、設計前

に、総合点をいくつ改善するかの目標を設定し、設計の励みとするのである。

④製品アセスメントガイドラインの解説

「製品アセスメントガイドライン(チェックリスト)」を活用する際の留意点やその背景

等について解説する。

(a)減量化・減容化

評価項目

1-1.製品の減量化・減容化

1-2.主な原材料・部品の減量化・減容化

1-3.希少原材料の減量化

限りある資源の有効活用、廃棄時に発生する廃棄物等の削減の観点から減量化・減容

化の評価を行う。 製品・部品の減量化(軽量化)・減容化(小形化)によって原材料の使用量を削減する

ことは、製造・流通段階におけるコスト及び環境負荷低減の面でもメリットがある。ま

た、減容化(小形化)は、据付面積の有効活用、搬送時の積載効率向上などに効果的で

ある。 なお、評価項目に記載の「主な原材料」「希少原材料」とは、具体的には以下のような

材料を想定している。 ⅰ) 主な原材料……例えば、鉄、銅、アルミニウム、プラスチック(PP、PS、ABS)、

ガラス 等 ⅱ) 希少原材料……例えば、インジウム、ニッケル、コバルト、希土類元素 等

(b)再生資源・再生部品の使用

評価項目

2-1.再生資源の使用

2-2.再生資源使用の表示

2-3.再生部品の使用

リサイクル、リユース推進の観点から再生資源及び再生部品の使用が望まれるが、こ

れらは製品の耐久性、安全性等、品質面で悪影響を及ぼす可能性があることを十分考慮

しなければならない。 また、省エネ法に代表されるように、一方で製品の性能向上も望まれている。従って、

再生資源・再生部品の使用については、環境配慮のほか、安全性、耐久性、機能性、経

済性をも含めた総合的な判断が必要である。 さらに、近年、含有化学物質に対する意識の高まりがあり、再生資源・再生部品の使

用に関しては、規制されている化学物質の含有有無を調査するなど、十分考慮して使用

しなければならない。

100

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1)再生資源の使用について 再生資源を新製品の原材料等に使用することは、使用済み家電製品からの再生資源の

循環を促進する。さらに、他の業界からの再生資源を使用することも、再生資源全体の

需要を拡大し、業際的な循環の形成に寄与する。 従って、自社製品、家電業界からの再生資源にこだわることなく、原材料としての使

用の可能性をさぐることが望ましい。 近、家電リサイクルプラントから回収し再生した資源の活用事例が多く出てきてお

り、更なる用途拡大が期待される。 <資源再利用指標の活用について> 再資源化の可能性の向上という観点で、家電リサイクル法の対象製品については、同

法に基づくリサイクルの仕組みにより、機器由来の素材等が回収・リサイクルされ、資

源循環、環境負荷低減を目的に、再生資源の利用が進展している。とりわけ、金属類に

比較して回収・再資源化が容易でない廃プラスチック類に関しても、実際、履歴の明確

なプラスチックが、家電機器製造事業者などのコントロール下で、大量・安定的に回収

され、ポストコンシューマ再生プラスチックとして再利用される仕組みが整いつつある。 こうした状況を踏まえ、産構審環境部会廃棄物・リサイクル小委員会製品3Rシステ

ム高度化 WG「中間取りまとめ(2005 年 4 月 25 日)」において、「更なる環境配慮設計の

推進に向けて、家電機器製造事業者などの再生資源活用の努力を適正に評価するため、

製品の新たな評価軸として、再生金属類や再生プラスチック類等の資源再利用指標等を

定義する。同時に、消費者等にも分かり易く伝えることによって、資源循環を考慮した

環境配慮機器が市場において認知され、普及することを促す。」ことが確認された。 産構審での結論も踏まえ、現在、電気・電子機器の資源再利用指標等の算定及び表示

の方法についての JIS 規格化が進められている。

【JIS C 9911 予定】電気・電子機器の資源再利用指標等の算定及び表示の方法

1 適用範囲

この規格は、電気・電子機器(以下、“機器”という。)の設計・製造段階における資源の有効利

用の取組みの成果を評価するため、機器及び部品の設計・製造段階において、資源が再利用される

割合を設計段階で示す指標の算定及び表示方法について規定する。

なお、この規格において機器とは、特定家庭用機器再商品化法(平成 10 年法律第 97 号)(以下、“家

電リサイクル法”という。)に基づき指定された機械器具のうち、次のものをいう。

a) ユニット形エアコンディショナ

b) 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫

c) 電気洗濯機

テレビジョン受信機は、含まれない。(※フラットパネルディプレイテレビが、今後、家電

リサイクル法の対象になった場合は、これを適用範囲とするよう JIS 改定する予定。)

2 引用規格(略)

101

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3 用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は、次による。

3.1 算定単位

資源再利用指標等を算出する対象の範囲。

例 1 機器単位又は銘板付与ごと:エアコンディショナ、エアコンディショナ室内機

エアコンディショナ室外機、リモコンなど

例 2 部品又はユニットごと:冷蔵庫野菜トレイ、冷蔵庫コンプレッサ、熱交換器など

3.2 算定単位質量

算定単位の金属質量、プラスチック質量、その他の質量(ガラスなど)などの全質量。

金属質量 5g 以上を含む部品、プラスチック質量 25g 以上を含む部品及びその他の質量 25g 以

上を含む部品を対象に、その部品の質量を合計した値を算定単位質量とする。ただし、資源再

利用質量(算定単位における再生材料及び再生部品の合計質量。この再生材料は、ポストコン

シューマ材料及びプレコンシューマ材料を含む。)に、5g 未満の金属質量、25g 未満のプラス

チック質量及び 25g 未満のその他の材料の質量を算入した場合には、その質量を算定単位質量

に加える。

3.3 算定単位金属質量

算定単位で使用された金属の質量の合計。金属質量 5g 以上を含む部品を対象に、その部品の金属

質量を合計した値を算定単位金属質量とする。ただし、ポストコンシューマ金属資源再利用質量に、

5g 未満の金属質量を算入した場合は、その質量を算定単位金属質量に加える。

3.4 算定単位プラスチック質量

算定単位で使用された熱可塑性プラスチックの質量の合計。熱可塑性プラスチック質量 25g 以上

を含む部品を対象に、その部品の熱可塑性プラスチック質量を合計した値を算定単位プラスチック

質量とする。ただし、ポストコンシューマプラスチック資源再利用質量に、25g 未満の熱可塑性プラ

スチック質量を算入した場合は、その質量を算定単位プラスチック質量に加える。

3.5 自らが資源循環利用をコントロール

機器製造業者が“自らが資源循環利用をコントロール”のことを示し、次のすべての事項を満た

す行為。

a)機器製造業者は、利用しようとするポストコンシューマ材料・再生部品が元々利用されていた

製品、又はプレコンシューマ材料が利用されようとした製品について、

1) その製品の要件を基に、その製品の材料・部品の要求特性(強度、耐久性、材料等級、材料組

成など)を理解する。

2) その製品に利用された又は利用されようとした材料の組成劣化状況・部品の特性劣化状況及び

品質低下度合いを把握する。

なお、ここでいう製品とは、市場に出荷される前の製品もあるが、ほとんどが使用済み

製品であって、適用範囲に定めた機器に限定するものではない。

b) 機器製造業者は、ポストコンシューマ材料・再生部品又はプレコンシューマ材料を、これから

利用しようとする機器の設計において、材料・部品を繰返しマテリアルリサイクル又は再使用

(リユース)することを考慮して、自ら主体的に仕様を要求・決定し、購買仕様書・購買規格

などを基に、図面にマテリアルリサイクルする材料又は再使用する部品を特定した品番を記載

し、その品番の部品・材料の使用を指示する。

自らが資源循環利用をコントロールと上記の a)の 1)、2)及び b)の 3 件との時系列的関係について

は、附属書Aを参照。

3.6~3.11(略)

3.12 資源再利用質量

算定単位における再生材料及び再生部品の合計質量。この再生材料は、ポストコンシューマ材料

及びプレコンシューマ材料を含む。

3.13 ポストコンシューマ金属資源再利用質量

算定単位における、再生材料中のポストコンシューマ金属材料及び再生部品中の金属材料の合計

質量。

3.14 ポストコンシューマプラスチック資源再利用質量

算定単位における、熱可塑性プラスチック材料のうち、再生材料中のポストコンシューマプラス

チック材料及び再生部品中のプラスチック材料の合計質量。

3.15~3.17(略)

102

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4 再生材料及び再生部品の分類

再生材料及び再生部品の分類を表 1に示し,その経路を図 1 に示す。図 1 に示す経路で取り

出されるもののうち,再生材料としては,ポストコンシューマ材料が,経路③及び④であり,

プレコンシューマ材料が,経路②及び⑤である。

図 1-再生材料及び再生部品の経路

自社工場内

使用済み電気 ・ 電子機器 (家電)

電気・電子以外の使用済み機器

工程内リサイクル

消費者

端材・不良品

家電リサイクル法対象機器(同系統群) 家電リサイクル法

対象機器以外の電気・電子機器

(同系統群)

他社ルートから

端材・不良品

コピー機パーソナルコンピュータ

など

家電以外の使用済みの電気 ・電子機器

(同系統群)

ポストコンシューマ材料

プレコンシューマ材料

自らが資源循環利用をコントロールしている以外の状態

自らが資源循環利用をコントロールしている状態

プレコンシューマ材料

リサイクルプラント(同系統群)

原料製造業者

プレコンシューマ材料

家電リサイクル法対象機器

家電リサイクル法対象機器以外の電気・電子機器 電気・電子以外の機器(別系統群)

ポストコン

シューマ

材料

リサイクルプラント(別系統群)

自社工場内

使用済み電気 ・ 電子機器 (家電)

電気・電子以外の使用済み機器

工程内リサイクル

消費者

端材・不良品

家電リサイクル法対象機器(同系統群) 家電リサイクル法

対象機器以外の電気・電子機器

(同系統群)

他社ルートから

端材・不良品

コピー機パーソナルコンピュータ

など

家電以外の使用済みの電気 ・電子機器

(同系統群)

ポストコンシューマ材料

プレコンシューマ材料

自らが資源循環利用をコントロールしている以外の状態

自らが資源循環利用をコントロールしている状態

プレコンシューマ材料

リサイクルプラント(同系統群)

原料製造業者

プレコンシューマ材料

家電リサイクル法対象機器

家電リサイクル法対象機器以外の電気・電子機器 電気・電子以外の機器(別系統群)

ポストコン

シューマ

材料

リサイクルプラント(別系統群)

表 1-再生材料及び再生部品に該当するもの

経路 分類内容 “自らが資源循環利用をコントロール”の状態

② 自社工場由来のプレコンシューマ材料で,原料製造業者へ引き渡して成分調整し,再生利用した材料

原料製造業者の協力は得るが,自らが資源循環利用をコントロールしている(に該当する)状態。ただし,成分調整などを行うことなく再原料化(プラスチックについてはリペレットなど)する場合は,同一工程内の再生利用(表 2 の①)と同等とみなし、除外する。

③ 家電リサイクル法対象機器を含む電気・電子機器(同系統群)由来であって,同系統群のリサイクルプラントを経て,再生利用したポストコンシューマ材料,及び再生部品

自らが資源循環利用をコントロールしている(に該当する)状態。ただし,ポストコンシューマ材料については,原料製造業者の協力は得る。

④ 電気・電子機器以外の他の製品群(別系統群)由来であって,別系統群のリサイクルプラントを経て,再生利用したポストコンシューマ材料

原料製造業者の協力は得るが,自らが資源循環利用をコントロールしている(に該当する)状態。

⑤ プレコンシューマ材料を他社又は他工場から調達し,再生利用した材料

原料製造業者の協力は得るが,自らが資源循環利用をコントロールしている(に該当する)状態。

表2-再生材料に該当しないその他のマテリアルリサイクル材料

経路 分類内容 “自らが資源循環利用をコントロール”の状態

① 自社内での工程リサイクル材料 プレコンシューマ材料に該当しないので,自らが資源循環利用をコントロールに該当しない。

⑥ プレコンシューマ材料を他社又は他工場から調達し再生利用した材料,又は,同系統群,若しくは別系統群の使用済み製品から再利用したポストコンシューマ材料

自らが資源循環利用をコントロールに該当しない状態

103

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5.算出方法

5.1 資源再利用指標

資源再利用指標の算出方法は式(1)による。なお、資源再利用指標は JIS Z 8401 に基づき、有効

数字 2けたの数値に丸める。

100×=p

rr m

mR ……………(1)

ここに、 Rr: 資源再利用指標(%)

mr: 資源再利用質量(kg)

mp: 算定単位質量(kg)

5.2 ポストコンシューマ金属資源再利用指標

ポストコンシューマ金属資源再利用指標の算出方法は式(2)による。なお、ポストコンシューマ金

属資源再利用指標は JIS Z 8401 に基づき、有効数字 2けたの数値に丸める。

100×=pm

rmrm m

mR …………(2)

ここに、 Rrm: ポストコンシューマ金属資源再利用指標(%)

mrm: ポストコンシューマ金属資源再利用質量(kg)

mpm: 算定単位金属質量(kg)

5.3 ポストコンシューマプラスチック資源再利用指標

ポストコンシューマプラスチック資源再利用指標の算出方法は式(3)による。なお、ポストコンシ

ューマプラスチック資源再利用指標は JIS Z 8401 に基づき、有効数字 2けたの数値に丸める。

100×=pp

rprp m

mR …………(3)

ここに、 Rrp: ポストコンシューマプラスチック資源再利用率(%)

mrp: ポストコンシューマプラスチック資源再利用質量(kg)

mpp: 算定単位プラスチック質量(kg)

6 表示方法

以下の項目のうちいずれか、又はすべてを算定単位とともにカタログ、ウエブサイト及び/又は

機器本体に表示する。

a) 資源再利用指標及び資源再利用質量

b) ポストコンシューマ金属資源再利用指標及びポストコンシューマ金属資源再利用質量

c) ポストコンシューマプラスチック資源再利用指標及びポストコンシューマプラスチック

資源再利用質量

表示は算定単位が属する機器が特定できなければならない。製造時に所定量の再生材料が確保で

きないことが予測されるなどの理由で一律に数値が表せない場合は、それぞれの再利用指標及び再

利用質量の数値の 小値と 大値の範囲を“~”でつないで、範囲表示することができる。

例1 算定単位が機器全体の場合

算定単位:機器全体

ポストコンシューマプラスチック資源再利用指標:xx %

ポストコンシューマプラスチック資源再利用質量:xx ㎏

例2 算定単位が機器全体でなく銘板付与ごと、部品又はユニットの場合

算定単位:エアコン室内機

資源再利用指標:xx %

資源再利用質量:xx ㎏

算定単位:野菜室トレイ

ポストコンシューマプラスチック資源再利用指標:xx%

ポストコンシューマプラスチック資源再利用質量:xxkg

104

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例3 例2と同様で、記号表示する場合

算定単位:エアコン室内機

Rr:xx %

mr:xx kg

算定単位:野菜室トレイ

Rrp:xx %

mrp:xx kg

例4 範囲表示した場合

算定単位:機器全体

ポストコンシューマプラスチック資源再利用指標:xx ~ xx %

ポストコンシューマプラスチック資源再利用質量:xx ~ xx kg

附属書 A

(参考)

自らが資源循環利用をコントロール

序文

この附属書は,自らが資源循環利用をコントロールについて説明するものであって,規定の一部では

ない。

A.1 自らが資源循環利用をコントロール

自らが資源循環利用をコントロールしている状態とは,機器製造業者(特に設計者)が,第一世代(図

A.1 の製品 A1))の製品の要求特性と,その製品の材料・部品の初期特性と現在の特性との劣化状況を把

握し,これらの情報を基に,材料・部品が今後も繰返し利用できることを考慮して,現在の機器の設計

条件を決定する状態である。

これまで使用されてきた製品(製品 A1))の材料・部品の特性変化(矢印 X)が,その材料・部品を再

利用しようとしている現在設計中の機器(機器 B)に与える影響を把握することは,将来において,次

の世代で再利用するとき(機器 C)の技術的課題を予測する(矢印 Z)のに役立ち,将来解決しなけれ

ばならない技術への足掛かりとなるという意味で重要である。

このように,設計者が, 初にその製品に必要とされた(プレコンシューマ材料の場合には,“必要と

されている”)要件を理解し,その要件を元に決定された材料・部品の要求特性と,その製品が使用さ

れたことによる材料の組成劣化状況・部品の特性劣化状況及び品質低下の度合いとを把握した上で,専

門技術の視点で,繰返しマテリアルリサイクル又は再使用(リユース)することを考慮して,現在の機

器の設計条件を決定することは,資源循環のための技術向上を促進する上で極めて重要である。

自らが資源循環利用をコントロールとは,図 A.1 の a)の 1),2)及び b)の条件を満たしている状態を

いう。

注 1) ここでいう製品は,市場に出荷される前の製品もあるが,ほとんどが使用済み製品であって,

適用範囲に定めた機器に限定するものではない。

105

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10年前に設計(第一世代)

現在回収

現在設計

将来

機器A材料・部品

機器A材料・部品

機器B材料・部品

機器C材料・部品

予測

理解

10年前に設計(第一世代)

現在回収

現在設計

将来

製品A材料・部品

製品A材料・部品

機器B材料・部品

Y

X

機器C材料・部品

Z技術的課題を予測

特性変化を把握

現時点

材料・部品の特性変化

材料・部品の特性変化

再生材料・部品再利用

10年前に設計(第一世代)

現在回収

現在設計

将来

機器A材料・部品

機器A材料・部品

機器B材料・部品

機器C材料・部品

予測

理解

10年前に設計(第一世代)

現在回収

現在設計

将来

製品A材料・部品

製品A材料・部品

機器B材料・部品

Y

X

機器C材料・部品

Z技術的課題を予測

特性変化を把握

現時点

技術的課題を予測

特性変化を把握

現時点

材料・部品の特性変化

材料・部品の特性変化

材料・部品の特性変化

材料・部品の特性変化

再生材料・部品再利用

再生材料・部品再利用

附属書B~C(略)

また、再生資源の利用に関しては、リサイクラーがリサイクル作業時において適切な

判断・処理が行えるように、プラスチック再生材使用の表示等の情報提供(JIS C 9912 と

して 2007 年春公示予定)をすることが望ましい。

2)再生部品の使用について 修理で交換した部品、あるいは使用済み家電製品から手解体・分別された部品を再利

用すれば、原料製造及び部品加工時の環境負荷を低減したことになる。 しかし、部品の再利用のためには、その部品の性能が新品と同様であり、残寿命や安

全性が明確であること、簡易な試験でそれが証明できなければならないこと、また、収

集される見込みが立ち、生産計画に乗るものでなければならないこと等、実現のために

は多くの課題が残されている。 また、10 年余りも同一の部品が使用され続けることは極めてまれであり、使用済み製

品から中古部品が回収された時点では、すでに当該部品に対する需要がないケースが多

いものと考えられる。ただし、長期使用が可能な部品やユニットについては再利用され

ることも予測されるので、サービスマニュアルなどに記載しておくことが資源の有効利

用の観点から必要である。 将来的に、家電製品のリース・レンタルが普及した場合には、現在の OA 機器で実施

されているような再生部品の使用もあり得るであろう。リース・レンタル期間中に当該

部品の管理情報が把握され、所有権者の自由裁量において交換や継続使用が決められ、

安全性の確保がなされるからである。

a) 1)製品Aの要件を基に,製品Aの材料・部品

の要求特性(強度,耐久性,材料等級,材料

組成など)を理解する。

a) 2) 製品Aに使用された材料の組成劣化状況・

部品の特性劣化状況及び品質低下度合いを把

握する。

b) 機器Bの設計時に,材料・部品を繰返し(機

器Cを想定)マテリアルリサイクル又は再使

用(リユース)することを考慮して,自ら主

体的に仕様を要求・決定し,購買仕様書・購

買規格などを基に,図面にマテリアルリサイ

クルする材料又は再使用(リユース)する部

品を特定した品番を記載し,指示する。

図 A.1-自らが資源循環利用をコントロールしている状態

106

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(c)再資源化等の可能性の向上

評価項目

3-1.再生資源・再生部品の利用向上

3-2.再資源化可能率の向上

3-3.修理時の再生部品の使用

3-4.再利用可能部品の情報提供

再資源化の可能性を表す指標として「再資源化可能率(リサイクル可能率)」が用いら

れることがあるが、リサイクルプラントでどのような処理を行うかによって実際の再商

品化率(リサイクル率)が異なるなど、あいまいな要素を含み、誤解や過大な期待を生

む可能性がある。 そのため、「再資源化可能率」を使用する場合、特に社外に訴求する場合には、(社)全

国家庭電気製品公正取引協議会(広告委員会/表示委員会)の「家電品における『地球

環境保全』の訴求に関する表示基準」(2000 年 4 月)を踏まえ、その表現に十分な注意

を払う必要がある。 しかし、製品設計者としては、設計の指針として、自らの工夫を評価し設計にフィー

ドバックするために、何らかの指標も必要であろう。 「再資源化可能率」には、大きく分けて、以下の2つの捉え方があり、この両者を明

確に区別して使用する必要がある。

1)リサイクルの上限値としての「再資源化可能率」 製品、部品、包装などの全部または一部が使用済み製品から取り出され、主として原材

料の形で徹底的なリサイクルを追求した理想的な率をいう。 数式で表わせば、下記の仮定の下での設計段階の期待値(Ri)である。

① 金属(M)は、全てリサイクルできる。 ② プラスチックは、材質表示されたものの全量(Pi)がリサイクルできる。 ③ ブラウン管ガラス(G)は、全てリサイクルできる。

Ri = ((M+Pi+G)/S)×100 〔%〕 (ここで、S:製品質量)

この数値の利点は、金属材料・プラスチック材の材質変更、表示部品の拡大、解体上

の工夫を行なった際に、設計者の努力が直接の数値で把握できる点にある。従来品とは

簡便な数値の比較で善し悪しを判定できる。

2)リサイクル段階での歩留まりを考慮した「再資源化可能率」 現実のリサイクルは、技術レベルや経済性を考慮して実施されることから、金属・ガ

ラス・材質表示されたプラスチックの 100%がリサイクルできる訳ではなく、目減りし、

回収資源の純度が落ちるなど、材質ごとに回収効率(δn)がかかる。また、プラスチッ

クの表面にメッキや塗装を施したり、ガラス繊維で強化したものがあったり、材質表示

があっても使用用途がなければ、リサイクルされない場合もある。金属でもメッキや琺

瑯(ほうろう)されたもの、異種金属の接合したものはリサイクルされにくい。 従って、上式は次のように書き換えられる。 Ri = ((M×δ1 + Pi×δ2 + G×δ3)/S)×100 〔%〕

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こちらの指標の方がより現実に近く指標として望ましいが、この指標を活用するため

には、その製品が将来どのようにリサイクルされるのかを設計者自身が予測し、回収効

率(δn)を設定する必要がある。

3)再利用可能部品の情報提供 長期使用が可能な部品やユニットについては、将来、再利用(リユース)される可能

性もあるので、図面やサービスマニュアルなどにその再利用の際の注意事項等の情報を

記載しておくことが望ましい。 (その他の項目については、「家電製品 製品アセスメントマニュアル –第4版– 」を

参照のこと)

今後資源の有効利用を更に進めるためには、材質表示(再生プラスチック使用、難燃剤

の不含有など)や製品の解体性を向上させることが必要である。そのためには、統一され

た材質表示や易解体性表示が有効であるとの指摘が、リサイクラーを中心に多く挙がって

いるが、既にこれらの指標や表示につき順次JIS化(JIS C 9911「資源再利用指標等」および

JIS C 9912「再生プラスチック表示」:両JISともに2007年春公示予定)する動きにある。

(2)国内における取組み2:「環境効率改善度指標;ファクターX」

「環境効率」の考え方は、WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な発展のための世界経済人会議)より提案され、環境保全と経済活動の両立をめ

ざす社会システムや企業経営にとって有効な概念として評価されつつある。これまで電気

機器メーカでは、この「環境効率」の考え方を、様々な電気製品に適用し、性能や使いや

すさの向上と、環境への影響低減を同時に達成した製品を「ファクターX」を用いて、個

別メーカごとの訴求をしてきている。しかし、この「ファクターX」には、各社各様の表

示形式や算出方法があって、算出の基礎となるデータ等についても公開には限度があり、

消費者にとってわかり難いという評価もある。

このため、「ファクターX」をデファクトスタンダード化しようとの動きがあり、2006

年11月、電気機器メーカー5社が、この第一段階として、家庭での電力消費量が大きいエ

アコン、冷蔵庫、ランプ(電球、蛍光灯)、照明器具(ランプ含む)の家電4製品について、

「製品の価値(主要機能の性能)」と「環境への影響(ライフサイクル全体における温室効

果ガスの排出量)」に関し、一定の条件の下で指標算出方式等を統一する「標準化ガイドラ

イン」を制定した。

このガイドラインを利用すると、過去(当面2000年度を想定)に販売された自社の同型

製品に対する対象製品の価値(機能)向上と、環境への影響(温室効果ガスの排出量)の

低減という、製品の環境効率の改善度合いを端的に示すことが可能になるとの5社の見解

である。対象基準となる過去の製品が、各社ごとに異なるため、他社製品との比較はでき

ないが、自社製品間における「買い替え効果の目安」として活用される期待と可能性はあ

る。

今後引き続き、この5社は、パーソナル・コンピュータ、携帯電話などへの適用製品の拡

大や、技術的課題の解決に取り組み、名称や表示形式についても検討を進めるとともに、

108

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「日本環境効率フォーラム(事務局、社団法人産業環境管理協会)」の協力を得て、同業他

社や関連企業に対し、このガイドラインを普及させ、将来的にはグローバルスタンダード

化に向けた活動に移行するとの展望を持っている。

①ファクターXガイドラインの概要

(a)名称・表示方法

ⅰ)標準化する製品の環境効率指標、すなわち「ファクターX(環境効率の向上を示す

指標)」を以下の名称で統一し、別途定めるマークや簡単な数値等を用いて表示する。

・「共通ファクター(仮称)」

ⅱ)必要に応じて、従前より独自に使用している環境効率指標を個別に用いても良い。

但し、独自の環境効率指標であることを明記する。

ⅲ)「共通ファクター(仮称)」が適用されている製品については、「共通ファクター(仮

称)」と独自の環境効率指標を併記してもよい。

(b)「共通ファクター(仮称)」の定義

ⅰ)「共通ファクター(仮称)」は、従来の「ファクターX」と同様、「製品の価値」とそ

の製品による「環境への影響」の比で表される「環境効率」の評価製品と基準年度

における同種の製品との比、であると定義する(表 4.7)。

表 4.7 環境効率および共通ファクターの定義

(環境への影響)

(製品の価値) (環境効率) =

種の製品の環境効率)(基準年度における同

)(評価製品の環境効率 (共通ファクター) =

ⅱ)上式の「環境効率」における分子の「製品の価値」とは、その製品の特徴をわかり

やすく示す主要機能や性能を考慮して適用製品毎に決定する。

ⅲ)「製品の価値」は、その製品の主要な機能の性能(「基本機能」)とその機能が発現さ

れる期間(「標準使用期間」)の積として表わしても良い。ここで、「標準使用期間」

とは、原則としてその製品が一般家庭において通常の使用条件のもとで標準的に稼

動し得る年数や時間、もしくはそれに相当する使用回数等であると定義する。ただ

し、生産終了後に補修用の部品を保有する期間が公的に決められている適用製品に

ついては、その出典を明記した上で「補修用性能部品の保有期間+1 年」等の期間

により代用する場合がある。

ⅳ)上式の「環境効率」における分母は当面「ライフサイクル全体における温室効果ガ

スの排出量」とし、その製品のライフサイクルの各段階における CO2 等の温室効果

ガスの排出量、さらには地球温暖化係数を用いて CO2 換算し足し合わせた量、とし

て算出する。なお、比較評価する製品間では同一のデータベースを用いて算出し、

可能な限り、算出に用いたデータベースや温室効果係数、および各インベントリデ

ータの評価バウンダリを明記する。

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ⅴ)評価の対象となる基準年度の製品には、本ガイドラインの目的に沿った比較対象を

選ぶものとする。

(c)「共通ファクター(仮称)」の適用

ⅰ)共通のインベントリデータをもとに各社が個別の手法で「共通ファクター(仮称)」

を算出し、計算過程や結果の数値のばらつきが標準化するにあたり適切な範囲(目

安として計算過程で±10%、 終結果で±3%程度以内を想定)に収まっていると各社

が合意した場合に適用する。

ⅱ)本ガイドラインは、上記の合意に基づき、一般家庭における消費電力の大きい以下

の4製品より適用を開始する。将来、他の製品に本ガイドラインを適用する際は、

上記項目に即して都度算出方式等を検討する。

・エアコン ・冷蔵庫

・ランプ(電球、蛍光灯) ・照明器具(ランプ含む)

この4製品の「環境効率」は以下の式を用いて算出する。また、評価の対象となる

同種の製品の基準年度を、当面 2000 年度とする。

※各製品の具体的な「機能」および「標準使用期間」に関しては、下記の表 4.9(参考

①)を参照のこと)

表 4.8 適用 4製品にかかる環境効率の定義

の排出量)における温室効果ガス(ライフサイクル全体

(標準使用期間)(基本機能) 製品の環境効率) (

×=4

表 4.9 参考①:適用 4製品の「機能」および「標準使用期間」

○機能

・エアコン: 冷・暖房能力 (kW)

・冷蔵庫: 調整内容積 (L リットル)

・ランプ: 全光束 (lm ルーメン)

・照明器具: 全光束 (lm ルーメン)

○標準使用期間

・エアコン: 10 年 (補修用性能部品の保有期間+1 年)

・冷蔵庫: 10 年 ( 同上 )

・ランプ: 一般家庭において通常の使用条件のもとで標準的に稼動し得る期間 (h 時間)

・照明器具: 10 年 (補修用性能部品の保有期間+1 年)

110

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表 4.10 参考②:「ライフサイクル全体における温室効果ガスの排出量」の算出方法について

(抜粋)

1.ライフサイクルの段階

適用製品のライフサイクルを下記の表に示す段階に分類し、各段階における温室効果ガス

の排出量を算出して総計する。ここで、温室効果ガスの排出量とは、CO2 を始めとする地

球温暖化への影響を有する各種温室効果ガスの排出量を、各社の判断により適切に考慮し

て計上するものである。

2. 素材・部品製造

冷蔵庫等における冷媒等は、全体評価への影響が小さく算出結果のばらつきを無視できる

レベルであると判断されるので、「その他の材料」に含める。

電子部品に関しては、適用 4 製品においては、全体評価への影響が小さく算出結果のばら

つきを無視できるレベルにあると判断されるので、「回路基板・電子部品」で温室効果ガ

スの排出量を算出する。

3. 製品製造

現在の適用 4 製品においては、全体評価への影響が小さく算出結果のばらつきを無視でき

るレベルにあると判断されるので、「製造時のエネルギー消費量」で温室効果ガスの排出

量を算出する。

4. 製品の輸送

「製品の輸送」段階では、使用済み製品の輸送も含めて、飛行機、船舶、車など実際に利

用した輸送手段で温室効果ガスの排出量を算出する。

5.使用

消費電力の測定方法は、適用製品毎に定める。

6.廃棄・リサイクル

リサイクルを実施して素材等に戻せる場合は、その分の材料もしくはエネルギーをリカバ

リーしたものとみなし、再生負荷等も考慮して適切に計上する。

冷蔵庫等における冷媒等は、その回収を前提として温室効果ガスの排出量を算出する。

ライフサイクルの段階 項目 単位(例) ライフサイクルの段階 項目 単位(例)素材・部品製造 鉄(メッキ鋼板) kg 製品製造 製造時のエネルギー消費量 MJ

ステンレス kg 製品の輸送 輸送距離 km銅 kg 使用 消費電力 kWhアルミニウム kg 消耗品 kgその他金属 kg 廃棄・リサイクル 埋め立て MJPP kg 解体 MJPVC kg リカバリー MJPS kgEPS kgABS kgその他熱可塑性樹脂 kgゴム・エラストマー kg熱硬化性樹脂 kgダンボール kg発泡ポリスチレン kg紙 kgガラス kgその他の材料 kg回路基板・電子部品 kg

111

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(3)国内における取組み3:エコリーフ環境ラベルプログラム

1997 年の京都議定書の採択を受けて我が国が発表した地球温暖化対策大綱に「新たな環

境ラベルプログラム開発の必要性」が盛込まれ、「新たな環境ラベル協議会」を中心とした

検討が行われた。その後2年間の施行期間を経て、2002 年度に(社)産業環境管理協会

(JEMAI)を運営母体として「エコリーフ環境ラベル」プログラムが開始された。エコリ

ーフ環境ラベルは下記の 3 つのシートから成るスキームであり、タイプⅢのラベルに属す

る。

③環境からの資源採取や環境への排出を生データで表示する「製品データ」シート

②生データを分析したLCA結果を示す「製品環境情報開示」シート

①上記③および②の情報のポイントのみを製品概要と共に示す「製品環境情報」シート

【出典】産業環境管理協会ウェブサイト http://www.jemai.or.jp/ecoleaf/brief/

図 4.7 エコリーフ環境ラベルの構成

エコリーフ環境ラベルの対象、要求事項等は以下の通りである。

①対象

エコリーフは、制定された製品分類別基準(PSC : Product Specification Criteria)に沿っ

て、必要な情報を開示するスキームとなっている。エコリーフの申請・公開手順を図 4.8に示す。PSC が制定されていない場合は、制定の提案を行う。2007 年 3 月 6 日現在、複

写機やノートパソコン、事務用机など 53 種類(表 4.11 参照)の PSC が作成されており、

423 のエコリーフ環境ラベルが公開されている。

112

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図 4.8 エコリーフの申請・公開手順

113

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表 4.11 エコリーフ公開済み製品の分類別一覧

最新版 製品分類名 最新版 製品分類名

発行日 (PSC番号) 発行日 (PSC番号)

2004/9/29 乾式間接静電式複写機 (AA) 2004/7/1 紙製飲料容器 (BD)

2004/9/29 発泡ポリスチレン系バラ状緩衝材 (AB) 2004/7/1 フリーアクセスフロア (BE)

2004/9/29 レンズ付きフィルム (AC) 2004/6/7 卸電力 (BF)

2004/9/29 EPおよびIJプリンタ (AD) 2004/6/7 低圧モータコントロールセンタ (BG)

2004/9/29 カメラ (銀塩フィルム用) (AE) 2004/9/29 ネットワークカメラ (BH)

2004/9/29 デジタル印刷機 (AF) 2004/9/29パーソナルコンピュータ及びパソコン専用ディスプレイ (BJ)

2004/9/29 データプロジェクタ (AG) 2005/1/20 面ファスナー (BK)

2004/9/29 ファクシミリ (AH) 2006/1/23 EP及びIJプリンタ(カラー含む) (BM)

2004/9/29 熱転写方式カードプリンタ (AJ) 2005/5/26 ラージフォーマットプリンタ (BN)

2004/9/29 水道用メータボックス (AK) 2005/8/4 緩衝材 (BP)

2004/9/29 通信コード (AL) 2005/5/26 タイルカーペット (BQ)

2004/9/29 温水洗浄暖房便座 (AM) 2005/8/4 電子投票システム (BR)

2004/9/29 構造用骨材 (AN) 2005/10/19 PBXシステム (BS)

2004/9/29 デジタルカメラ (AP) 2005/10/19 水道用メーターユニット (BT)

2004/9/29 陶磁器製品 (AQ) 2005/11/2 インターネットデータセンターシステム (BU)

2004/9/29 事務用机 (AR) 2005/10/19 発泡ポリスチレンシート (BV)

2004/9/29 ノート型パーソナルコンピュータ (AS) 2006/1/23 金属閉鎖形スイッチギヤ(高圧盤) (BW)

2003/5/28 系統電力 (AT) 2006/1/23 小型DCブラシ付モーター (BX)

2004/9/29 排水ます蓋 (AU) 2005/10/19 POSターミナル (BY)

2004/9/29 フォトプリントスキャナ (AV) 2006/3/8 産業用チェーン (BZ)

2004/9/29 ファクシミリ用外付け節電装置 (AW) 2006/6/9 フラットベット/シートフェッドスキャナ (CA)

2004/9/29 インターホン (AX) 2006/6/9 小型フォトプリンタ (CB)

2004/9/29 固定電話機 (AY) 2006/10/18 便器 (CC)

2004/9/29 電子黒板 (AZ) 2006/10/18 水栓金具 (CD)

2004/9/29 インスタント写真方式プリンタ (BA) 2006/11/21 食材配送システム (CE)

2004/9/29 光ディスクドライブ (BB) 2006/12/19 飲料およびたばこ自動販売機 (CF)

2005/5/26 飲料および食品用金属缶 (BC) (2007 年 3 月 6 日現在)

②要求事項

PSCでは以下の事項が定められている。従って、エコリーフ環境ラベルが付される製

品は、以下を満たすことが求められる。 1.製品および製品に含まれる部品等の対象範囲 2.データ収集に関する要件および範囲 3.適用するアロケーション、カットオフ等の LCA 計算上の諸条件 4.適用する原単位、特性化係数の特定 5.公開項目の特定および表示方法の設定

③適合性評価の方法 エコリーフの適合性評価には、外部検証員による(a)外部検証方式と、(b)内部検証員によ

る内部検証方式がある。 (a)外部検証方式 作成されたラベルは検証員が検証し、その結果をレビューパネルで報告した検証結果

が承認された後、登録公開が可能になる。

114

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(b)内部検証方式 ラベルの作成に必要な下記7システムを審査員が審査し、レビューパネルで報告した

審査結果が承認された事業体(システム認定取得済みの事業体)は、自社内での検証

(内部検証)のみで登録公開が可能になる。

1.製品データ集積システム 2.製造サイトデータ蓄積システム 3.物流、使用、廃棄・リサイクルデータ集積システム 4.データ加工処理システム 5.データ検証システム 6.エコリーフ発行システム 7.データ補正システム

④情報公開の状況

エコリーフラベルは、LCA分析の対象範囲・具体的方法や結果の表現方法などのルー

ルにつき、PSC に従って作られている事について審査・認証を受けた上で公開される。た

だし、エコリーフ環境ラベルの公開情報は膨大であり、製品本体やカタログ等への表示に

は不便な場合が多い。そのため、実際の公開方法としては主にプログラムへの参加を示す

「エコリーフ環境ラベルロゴマーク」のみを対象製品の「登録番号」と共に表示し、詳細

情報についてはエコリーフプログラムウェブサイトで公開している。

(4)国外における取組み1:IEC(TC111/WG2 - IEC 62430)

電気・電子製品に関係する技術的事項に関しては、2004 年 10 月の IEC(国際電気標準会

議)ソウル大会において、新たに専門委員会(TC111)を設立し、製品等に対する規格とし

て具体的な検討を行うことが合意された。EU 内規格は、WTOにおけるTBT協定によっ

て、すでに存在する国際標準規格があれば、これを基礎として用いることになっており、

欧州環境関連規制(EuP 、RoHS、WEEE など)については、IEC の TC111 により定められ

る規格の影響を受けることになる。従って、IEC での検討の場において我が国が主導して

環境配慮技術に関する国際規格の策定に関与していくことは、競争力の観点からも極めて

大きな意味を持つ。我が国は、各国への働きかけを行った結果、TC111 における議論を積

極的にリードできる「議長」ポストを獲得した。 TC111 の下には、含有化学物質情報にかかる開示手順(WG1)、環境配慮設計(WG2)、およ

び有害化学物質の含有試験方法(WG3)が設置されているが、つと WG2 については我が国か

らの新規提案(NWIP)が承認され、コンビナーのポストを確保した。WG1 と WG3 で検討

された国際規格は CENELEC の欧州規格に影響を及ぼし、更には RoHS 指令の含有物質開

示手順や含有物質試験方法へと影響を及ぼすことが予想される。また、WG2 で検討された

国際規格は、同様に CENELEC の国際規格に影響を及ぼし、EuP 指令に影響を及ぼすこと

が予想される。 WG2 における検討はすでに佳境に入っており、2006 年 8 月にCD(正式規格原案)が回付

115

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された。FDIS( 終国際規格案)の承認は 2007 年末と見込まれている。規格番号は IEC 62430、タイトルは”International Standard on Environmentally Conscious Design for Electronic Products and Systems” となることが決定している。

以下、現状の案に基づく IEC 62430 の主な内容について示す。

①対象 IEC 62430 は、すべての電気・電子製品に対する一般的な要求事項に言及するものであり

(製品横断的な水平規格)、製品固有の内容への言及は避ける。 ※各製品の固有規格については、例として 4.1 (6)項を参照。

②要求事項 製品分野に共通する要求事項として、環境配慮設計の一般原則や環境配慮設計のプロセ

ス、有用なツールの分類などを定めるものとなっている。 IEC 62430 CD の目次につき、以下の表 4.12 に示す。

表 4.12 IEC 62430 CD の目次

(5)国外における取組み2:ECMA-341 Ecma International(旧称 ECMA (European Computer Manufacturer Association:欧州電子

計算機工業会)は、1961 年にヨーロッパのコンピューターメーカーを中心に結成された団体

であり、現在では世界各地に会員企業を持っている。ISO/IEC JTC1 とカテゴリ A リエゾン

を結んでいるために,Ecma International で策定した仕様は迅速化手順(Fast Track Procedures)

1. Scope2. Normative References3. Terms and Definitions4. Fundamental Considerations of Environmentally Conscious Design (ECD)

4.1 Life Cycle Thinking 4.2 Regulatory and stakeholders’ requirements4.3 Integration into Management System

5. Environmentally Conscious Design Process (ECD Process)5.1 Outline of ECD Process5.2 Analysis of Regulatory and Stakeholders’ Requirements5.3 Identification and Evaluation of Environmental Aspects

and corresponding impacts5.4 Design and Development5.5 Review and Continual Improvement5.6 Stakeholder Communication

6. Categories of Tools

Annex A (informative) Corresponding to Section 4 - Fundamental Considerations of Environmentally Conscious Design

Annex B (informative) Corresponding to Section 5- Environmentally Conscious Design Process (ECD Process)

Annex C (informative) Corresponding to Section 6- Categories of Tools

116

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を用いて国際規格になることもある. Ecma International は、2004 年 12 月に、環境配慮設計にかかる業界規格“ Environmental

design considerations for electronic products”(ECMA-341)を発行した。 ECMA-341 は、家庭用及び商用の情報通信技術及び家庭用電化製品の環境影響を低減し

うる設計の実施規範を明示し、商業的に実行可能な環境配慮設計に関する要求事項及び推

奨事項を規定している。 ECMA-341 の発行後、Ecma International は ECMA-341 を国際規格とするための働きかけ

を ISO や IEC に対して積極的に行っている。

以下、ECMA-341 の対象や要求事項を示す。 ①対象 定格電圧が 1000 V r.m.s.未満の、家庭用および商用として意図された情報通信技術(ICT)および家庭用電化製品(CE)。

②要求事項 以下の点について要求事項と推奨事項を規定 ・ 全般的配慮 ・ 材料効率 ・ エネルギー効率 ・ 消耗品および電池 ・ エミッション ・ 製品寿命の延長 ・ エンドオブライフ ・ 特別な注意を要する物質および調剤 ・ 製品包装

(6)国外における取組み3:IEC / TC108(Specific standard - IEC 62075)

IEC/TC111 で制定されている電気・電子機器全体の環境技術課題及び製品横断的な水平

標準(horizontal standard)に沿って、製品分野ごとの環境配慮設計の国際標準化の動きも並

行に進められている。 IEC/TC108(Safety of electronic equipment within the field of audio/video, information

technology and communication technology:AV・IT 機器分野の電子機器における安全性)で

は PT 62075(Project Team)が設立され、オーディオ/ビデオ機器、情報通信機器に関する環

境配慮設計規格が検討されている。 Ecma International 発行の ECMA-341 規格をベースとした WD(作業文書)が、ドイツの Dr.

HERMANN より提案されたのを受け、2005 年 10 月に第 1 回国際ミーティングで開催され、

現在に至っている。 規格文書は IEC 62075 とされ、Title は”Audio/Video, Information and Communication

Technology Equipment - Environmentally Conscious Design”である。 当初より TC111/WG2 の ECD 規格と連携して進めることを強くインプットし、LCT(Life

117

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Cycle Thinking:ライフサイクル思考)の概念が盛り込まれている。 2006 年 1 月 20 日には CD(Committee Draft:委員会原案)が、2006 年 11 月 10 日に

CDV( Committee Draft for Voting:投票用委員会原案)がそれぞれ発行されており、国際規格

としての発行目標を 2007 年中としている。

表 4.13 IEC 62075 CDV の目次

IEC 62075 規格はオーディオ/ビデオ機器、情報通信機器に関する環境配慮設計規格であ

るが、今後も水平規格である IEC 62430 に基づき、製品分野ごとの環境配慮設計の国際規

格標準化が進められ、対応が必要である。

(7)国外における取組み4:EuP指令

EU において 2005 年 7 月 22 日に公布され同年 8 月 11 日に発効した、エネルギー使用

製品に対する環境配慮設計要求事項設定のための枠組み指令(EuP 枠組み指令:Directive

for a framework for the setting of ecodesign requirements for Energy-using Products)

についての概要につき、以下に述べる。

1. Scope2. Normative references3. Terms, definitions and abbreviations

3.1 Terms and definitions4. Life Cycle Thinking (LCT) aspects 5. Design requirements and recommendations

5.1 General considerations 5.2 Material efficiency5.3 Energy efficiency

5.3.1 General5.3.2 Energy modes and related energy efficiency measures 5.3.3 Operational modes5.3.4 Energy saving modes5.3.5 Off modes5.3.6 No load mode5.3.7 General energy efficiency measures

5.4 Consumables and batteries5.4.1 Consumables5.4.2 Batteries

5.5 Emissions5.5.1 Chemical emissions5.5.2 Noise emissions

5.6 Product lifetime5.7 End of life5.8 Hazardous substances and preparations5.9 Product packagingAnnex A (informative) Design guidance and design for environment checklistAnnex B (informative) Polymers compatibility guideAnnex C (informative) Examples of regulations

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①指令の趣旨

・EU の総合製品政策 IPP(Integrated product Policy)を踏まえた、環境配慮製品の法

令化。

-製品のライフサイクルを通じての環境負荷低減(Life cycle thinking)

-特にエネルギー効率改善を重視(欧州気候変動アクションプログラム)

・法的根拠としてアムステルダム条約 95 条が適用(域内自由流通の確保)

-ニューアプローチの採用(整合規格による適合性評価)

・エネルギー使用製品に対するエコデザイン要求事項の設定のための枠組み指令

-具体的な規制内容は実施措置令を策定する(コミトロジープロセス)

②実施措置策定における対象製品

エネルギー使用製品とは、エネルギー入力を電気や化石燃料および再生可能エネルギ

ー源とする製品で、欧州気候変動プログラム対象製品を優先的に選択している。

【例示された優先製品】

暖房・給湯機器、家電製品、OA 機器、消費者向け電子製品、エアコン、電動器具、

照明器具

(今後も適宜、対象製品が追加されていく見込みである)

【対象製品の判断基準】

-EU 域内市場において、年間販売量・取引量が 20 万台以上

-EU 域内市場において、環境に及ぼす影響が著しい製品

-多大なコストをかけずに、相当程度環境負荷を改善するポテンシャルがある製品

③実施措置

実施措置を作成するにあたっては、EuP のライフサイクルおよび全ての重要な環境側

面、特にエネルギー効率を考慮する。ライフサイクルを通じての環境側面分析につい

ては、重要度に応じた程度に行うこととしている。

設計要求事項は、次に示す「一般的環境設計要求事項」および「特定環境設計要求事

項」の2項目である。

ⅰ)一般的環境設計要求事項設定方法

【環境設計パラメータ】

・重要な環境側面を特定する製品ライフサイクルステージ

-原材料、製造、包装・輸送、設置・保守、使用、エンド・オブ・ライフ

・各ステージに対して評価される環境側面

-材料、エネルギー、水等資源の消費~環境影響・廃棄予測

・環境側面の改善の可能性を評価するためのパラメータ

-製品質量・容積、リサイクル材料使用、エネルギー消費量

部品や製品のリユース・リサイクル対応、エミッションなど

119

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【情報提供に関する要求事項】

・製品の環境特性に関する情報:消費者向け

・分解・リサイクルまたは処分に関する情報:処理施設向け

【製造事業者・輸入事業者に対する要求事項】

・製品のエコロジカルプロファイルを作成する

・ライフサイクルでの測定可能な物理量で表される(インプット/アウトプット)

・製品の環境パフォーマンス改善目標の達成

ⅱ)特定エコデザイン要求事項の基準設定方法

・環境に重大な影響を及ぼす、特定の環境側面について導入

・特定の環境要求事項=資源の消費量削減要求

・技術、環境及び経済的分析代表的モデルで改善目標を特定

-使用時のエネルギー消費量 (例:水や洗剤なども含む)

・ 低ライフサイクルコスト考慮で目標設定

-購入価格とランニングコストの合計

・施行日は製品の再設計期間を考慮に入れて定める

ⅲ)適合性評価

・ニューアプローチ:CE マーキング制度(自己適合宣言による CE マーク貼付)を採用

-内部設計管理又は環境マネジメントシステム(欧州 EMAS 取得は見做し適合)

-適合宣言書・製品のエコロジカルプロファイを作成・公表

-EU エコラベル取得による見做し適合

④今後の予定

【Preparatory Studies】 製品分野ごとに行う、事前検討作業である

【コンサルテーションフォーラム】 ステークホルダーの意見徴集

【Regulatory Committee】 法的実施措置を決定する委員会

【実施措置】 製品分野ごとに決定され、順次施行される

⑤関連情報

ⅰ)欧州委員会「企業総局(DG Enterprise&Industry)」ウエブサイト

http://ec.europa.eu/enterprise/eco_design/index_en.htm

-EuP 枠組み指令

-コンサルテーションフォーラム

ⅱ)欧州委員会「エネルギー・運輸総局(DG Energy&Transport)」ウエブサイト

http://ec.europa.eu/energy/demand/legislation/eco_design_en.htm

-Preparatory Studies

-実施措置

120

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⑥情報開示について

本指令において、製造者が消費者向けに製品の環境特性に関する情報提供することが

要求されている。適合宣言や環境ラベルの見做し適合さらにエコロジカル・プロファ

イルなどの環境情報である。

・製品が EuP 指令に適合している宣言として CE マークが貼付されること(第 5条)

・EC 共同体のエコラベルも要求事項が満たされているなら見做し適合とする。また、

欧州規則に従った他のエコラベルについても、同等の条件を満たすなら見做し適合

と認定する(第 9条)

・実施措置により要求される場合、製品のエコロジカル・プロファイルおよび環境設

計がもたらす利点(第 14 条)

・付属書Ⅰパート2.情報提供に関連する要求事項

・消費者が比較できるよう、製品の重要な環境特性及びパフォーマンスに関する情報

・環境への影響を 小にし、耐用年数、使用、保守、 終寿命時の返却方法に関する

情報

特に製品のエコロジカル・プロファイルについては「ライフサイクルを通じての測定可

能な物理量」を対象にしているが、具体的な内容は今後の検討で決められる。製品の環

境側面をどのように捉えるかという点で注視していく必要がある。

また、国際標準化を考えるなら IEC/TC111 においてガイドライン作成を期待したい。

121

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4.2 環境配慮設計に必要なサプライチェーンデータ管理の方向性検討

製品のライフサイクルを考慮した環境配慮設計、環境情報提供の実施に必要なサプライチ

ェーンにおける製品環境データ管理に関する課題・今後の方向性等について検討した。具体

的には以下の点について検討を実施した。

(1)サプライチェーンにおける製品環境データ管理の現状

①我が国におけるサプライチェーン上の環境データシェアリングの現状 文献調査を基に我が国におけるサプライチェーン上の環境データシェアリングの現状に

ついて整理した結果を以下に示す。

(a)取引先との情報のやり取りについて 経済産業省が平成 17 年度に実施した製造事業者へのアンケート調査(平成 17 年度環

境配慮設計に関する取組状況調査、以下「経済産業省調査」とする)によると、化学物

質の使用や環境関連データについては回答があった JEMA 会員企業全てが情報提供を要

求していた。全製造業では、環境データの提供を要求している企業は 6 割程度にとどま

っており、他の製品製造事業者と比較して、JEMA 会員企業では、取組が進んでいるこ

とがうかがえる。

(JEMA 会員企業) (全製造業)

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.9 取引先への要求事項および要求状況

16

11

11

9

10

18

19

3

2

6

5

7

7

0

0

0

1

2

3

3

2

1

0

2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

1.環境配慮ガイドラインの

遵守(N = 19)

2.貴社に納入する原材料・部品

・製品の減量化(N = 19)

3.貴社に納入する原材料・部品

・製品の長寿命化(N = 19)

4.貴社に納入する原材料・部品・製品

への再生資源の利用(N = 19)

5.貴社に納入する原材料・部品

・製品の易解体化(N = 19)

6.貴社に納入する原材料・部品・製品

への化学物質の使用に関する基準

(貴社で定めたもの)の遵守(N = 19)

7.環境関連データ

の提供(N = 19)

8.その他(N =5)

a 要求している

b 今後要求したい

c 要求する予定はない

83

66

71

68

61

111

126

16

65

82

82

74

83

48

44

6

35

38

33

43

41

29

18

15

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1.環境配慮ガイドラインの

遵守(N = 183)

2.貴社に納入する原材料・部品

・製品の減量化(N = 186)

3.貴社に納入する原材料・部品・製品の長寿命化(N = 186)

4.貴社に納入する原材料・部品・製品への再生資源の利用(N = 185)

5.貴社に納入する原材料・部品

・製品の易解体化(N = 185)

6.貴社に納入する原材料・部品・製品

への化学物質の使用に関する基準(貴社で定めたもの)の遵守(N = 188)

7.環境関連データの提供(N = 188)

8.その他(N = 37)

a 要求している

b 今後要求したい

c 要求する予定はない

122

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前記の回答のうち、環境関連データの具体的回答としては、JEMA 会員企業からは、

特定の化学物質・重金属等を含有していないことの証明(19 件)、化学物質の含有量(15 件)との回答が多かった。

全業種で見た場合は、特定の化学物質・重金属等を含有していないことの証明よりも、

化学物質の含有量との回答が多いが、JEMA 会員企業と全業種との全体的な回答の傾向

は似ている。

(JEMA 会員企業)

(N=19)

12

19

4

1

15

0 5 10 15 20

1.製品中の化学物質・重金属等の含有量

2.製品中の化学物質・重金属等の含有部位

3.特定の化学物質・重金属等を含有していないことの証明

4.再生材料(再生資源)の利用量・率

5.その他

回答数

(全製造業)

(N=136)

87

110

33

10

115

0 20 40 60 80 100 120 140

1.製品中の化学物質・

重金属等の含有量

2.製品中の化学物質・

重金属等の含有部位

3.特定の化学物質・

重金属等を含有して

いないことの証明

4.再生材料(再生資源)

の利用量・率

5.その他

回答数

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.10 取引先へ要求する「環境関連データ」の具体的内容(複数回答)

【その他の環境関連データ

の具体的内容】 ・ MSDS(5件) ・ 廃棄時の処分方法等 ・ 木質材のホルムアルデ

ヒド放散等級 ・ 資源(原材料、電気、

燃料)の使用量調査 ・ 管理システム ・ 法規制禁止物質の全廃

誓約書提出

【その他の環境関連データ

の具体的内容】 ・ 法規制禁止物質の全廃

誓約書提出

123

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(b)販売先、消費者への情報提供について

「経済産業省調査」によると、販売先、消費者に情報を提供している企業は、JEMA会員企業では 95%と非常に高い比率になっている。

全業種における調査結果では、約 3 分の 2 近く(63%)にとどまっていることから、

JEMA 会員企業の取組が進んでいることがうかがえる。

(JEMA 会員企業)

2.情報を提供していない

5%

1.情報を提供している

95%

(参考:全業種)

1.情報を提供している

63%

2.情報を提供していない

37%

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.11 販売先、消費者への情報提供の状況

(N=188)

(N=20)

124

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「経済産業省調査」における情報提供の形態に関する回答結果は以下のとおりである。

JEMA 会員企業については、ウェブサイト上での情報提供、環境報告書での情報提供と

の回答が多かった。全業種と比較して、パンフレット・カタログでの情報提供に関する

回答率が低くなっている。 その他の情報提供の形態としては、ユーザー、販売先や消費者からの要求に対する個

別の情報提供といった回答があった。

(JEMA 会員企業)

10

12

9

14

6

9

3

0 5 10 15 20

1.ラベル等による情報提供

2.パンフレット・カタログでの情報提供

3.環境報告書での情報提供

4.取り扱い説明書での情報提供

5.ウェブサイト上での情報提供

6.販売店頭での情報提供

7.その他

回答数

(参考:全業種)

74

71

43

74

20

52

18

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1.ラベル等による情報提供

2.パンフレット・カタログでの情報提供

3.環境報告書での情報提供

4.取り扱い説明書での情報提供

5.ウェブサイト上での情報提供

6.販売店頭での情報提供

7.その他

回答数

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.12 情報提供の形態(複数回答)

【「その他」の具体的内容】

・ ユーザー、取引先や顧客等か

らの、個別の要望、依頼に対

して情報を提供(10件)

・ 展示会、Web、関係会社等の

報告書による情報公開(4件)

・ 新聞広告(3件)

(N=121)

(N=18)

【「その他」の具体的内容】

・ ユーザー、取引先や顧客

等からの、個別の要望、

依頼に対して情報を提供

(2件)

125

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(c)リサイクラーとの情報共有について 「経済産業省調査」によれば、リサイクラーと情報共有している企業は JEMA 会員企

業であっても、全業種であっても、4 割程度にとどまっており、リサイクラーとの情報

共有がそれほど進展していないことがうかがえる。

(JEMA 会員企業)

1.情報を共有している

42%

2.情報を共有していない

58%

(参考:全業種)

1.情報を共有している

39%

2.情報を共有していない

61%

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.13 リサイクラーとの情報共有状況

(N=19)

(N=185)

126

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リサイクラーと共有する情報の内容別に見ると、JEMA 会員企業からの回答について

は、共有する情報のうち、メーカー側が保有する情報としては、製品の解体・分離方法、

手順が 9 件と も多く、次いで再生プラスチックの使用部位、グレード等が 7 件、製品・

部材中の有害物質含有情報、及び、製品部材中の希少資源含有情報が 6 件であった。 一方、処理業者(リサイクラー)側が持つ情報で共有しているものとしては、処理・

リサイクルされたものの 終的な行き先、用途、及び、処理・リサイクル工程における

課題に関する回答が、ともに 8 件ずつと多く、解体・分離等に要する時間についても 7件と多かった。

(JEMA 会員企業)

6

6

7

8

8

7

0

9

0 2 4 6 8 10

1.製品の解体・分離方法、手順

2.製品・部材中の有害物質含有情報

3.製品・部材中の希少資源含有情報

4.再生プラスチックの使用部位、グレード等

5.処理・リサイクルされたものの最終的な行き先、用途

6.処理・リサイクル工程における課題

7.解体・分離等に要する時間

8.その他

回答数

(参考:全業種)

34

13

30

65

48

29

6

53

0 10 20 30 40 50 60 70

1.製品の解体・分離方法、手順

2.製品・部材中の有害物質含有情報

3.製品・部材中の希少資源含有情報

4.再生プラスチックの使用部位、グレード等

5.処理・リサイクルされたもの

の最終的な行き先、用途

6.処理・リサイクル工程における課題

7.解体・分離等に要する時間

8.その他

回答数

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.14 共有する情報の内容(複数回答)

【「その他」の具体的内容】

・ リユース率

・ リサイクル率

・ 業界団体の基準に則った情報

・ 販売数量

・ 二次電池の回収量

・ 業界のリサイクル関連情報・統計

の開示(相互に実施)

(N=9)

(N=80)

メーカー側

が保有する

情報

処理業者側

が保有する

情報

127

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リサイクラーとの情報共有の形態については、JEMA 会員企業からの回答は、定期的

な情報交換のための会合、定期的なリサイクル工場の視察、定期的な資料提供との回答

が、それぞれ 7 件と多かった。情報ネットワークを共有し、情報をやり取りするといっ

た回答は、全業種では少なかったものの、JEMA 会員企業では 6 件と多かった。 他方、JEMA 会員企業からは、リサイクラーからの人材受け入れとの回答はなかった。

(JEMA 会員企業)

7

5

7

0

6

0

5

7

0 2 4 6 8 10

1.定期的に情報交換の為の会合を実施している

2.定期的にリサイクル工場の視察をしている

3.定期的に資料を提供している

4.定期的に資料を提供してもらっている

5.リサイクラーに人材を派遣している

6.リサイクラーから人材を受け入れている

7.情報ネットワークを共有して情報をやりとりしている

8.その他

回答数

(参考:全業種)

50

30

45

0

15

12

9

36

0 10 20 30 40 50 60

1.定期的に情報交換の為の

会合を実施している

2.定期的にリサイクル工場

の視察をしている

3.定期的に資料を提供している

4.定期的に資料を提供して

もらっている

5.リサイクラーに人材を

派遣している

6.リサイクラーから人材を

受け入れている

7.情報ネットワークを共有して

情報をやりとりしている

8.その他

回答数

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.15 情報共有の形態(複数回答)

(N=8)

(N=74)

128

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また、リサイクラーとの情報交換の頻度としては、JEMA 会員企業からの回答では、年

に2、4回実施するケース、毎月回答するケースの回答が多かった。 全業種と比較すると、全業種では年1回との回答の比率が高いのに対し、JEMA 会員

企業では低くなっている。

(JEMA 会員企業)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0.3 0.5 1 2 3 4 5 6 8 10 12 50

年間回数

回答

件数

会合の頻度(N=7)

視察の頻度(N=7)

資料提供の頻度(N=4)

資料受領の頻度(N=6)

(参考:全業種)

0

5

10

15

20

25

0.3 0.5 1 2 3 4 5 6 8 10 12 50

年間回数

回答

件数

会合の頻度(N=35)

視察の頻度(N=47)

資料提供の頻度(N=26)

資料受領の頻度(N=41)

出典:経済産業省「平成 17 年度環境配慮設計に関する取組状況調査」

図 4.16 情報交換の頻度

129

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(d)我が国におけるLCAの導入状況 経済産業省では、エコプロダクツ展示会への出展者に対するアンケートを実施してい

るが、エコプロダクツ 2003 では LCA の普及動向に関する設問をアンケートに盛込み、

LCA 手法の認知度・導入状況に係るアンケートを実施している。アンケートの結果によ

ると、現状、LCAを導入している企業は、26.4%にとどまる。 (社)産業環境管理協会では、LCAデータベースを作成し、各種製品に係るインベ

ントリーデータを提供しているが、アンケート調査によると、その利用は 10%未満に留

まっている。利用している企業では、エコプロダクツの設計・開発やグリーン購入など

に使っているとのことである。

○LCAの導入状況

○LCAデータベースの構築・試験公開に関する認知度

○LCAをどのように活用していきたいか(複数回答)

出典:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構

「環境調和型展示会における LCA 手法の受容性と普及状況調査」

図 4.17 LCAの導入状況等(エコプロダクツ展への出展者に対するアンケート調査結果)

130

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②産業界等における環境データ管理スキームの整備 (a)JGPSSI における取組状況 ⅰ)グリーン調達調査共通化指針の策定

RoHS 指令への対応等を背景に、国内の製品メーカーにおいては、部品等の調達に関し

て基準の策定、製品中の含有物質調査などの取組が進められていたが、その際、取組が

各社バラバラであると調達元の負担が過大になると指摘を受けていた。そのような背景

の下、2001 年1月に電気・電子メーカーの有志企業が集まり、「グリーン調達調査共通

化協議会(JGPSSI)」を設立し、部品・原材料に含有する化学物質調査の共通化に向けた

取組をスタートしている(2006 年 10 月時点で 84 社、4 団体が加盟)。 JGPSSI では、①調査対象物質のリスト及び②調査回答フォーマットの2つについて共

通化することを目的として議論が進められ、国内における共通化の指針として「電気・

電子機器用部材のグリーン調達調査共通化指針」を策定するとともに、2001年よりEICTA(European Information and Communications Technology Industry Association:欧州情報通信

技術製造業者協会)、EIA(Electronic Industries Alliance:米国電子工業会)とグローバル

スタンダードを視野に入れた議論を行っており、その成果として 2005 年に EIA との合

意に基づく Joint Industry Guideline(JIG)が発行されている(2006 年 9 月に改訂)。 同ガイドラインには、企業がグリーン調達調査(含有化学物質調査)を実施する際の

フォーマットとして以下の事項が盛り込まれている。 ・基本情報調査

調査先情報、部品情報を特定する項目 ・化学物質調査

対象物質:24物質群(レベル A、レベル B)及び、対応する例示物質(各社・

製品の種類で追加可能) ・調査回答データフィールド(日付、情報発信者、製品/部品名称、化学物質名称等)

※調査対象物質 -レベルA

国内外の法令で含有物質の販売・製造、製品への使用に関し、禁止、制限又は報

告義務を課されている化学物質。例えば、カドミウム、六価クロム、鉛、水銀、

ポリ臭化ビフェニル類、ポリ臭化ジフェニルエーテル類、ポリ塩化ビフェニル類、

オゾン層破壊物質、放射性物質など。

-レベル B end-of-life の管理の際、マイナスの影響を回避するために情報が必要と思われる物

質や有害廃棄物に関する法規制の要求事項の対象となる物質など、日米欧の三極

(JGPSSI/EIA/EICTA)が調査対象として選定した化学物質。例えば、アンチモン、

ヒ素、ベリリウム、ビスマス、ニッケル、ポリ塩化ビニルなど。

131

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表 4.14 JIG における調査対象化学物質

<レベルA物質>

<レベルB物質>

132

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ⅱ)製品含有化学物質管理ガイドラインの策定 2005 年 9 月、含有化学物質情報の信頼性を確保することを目的として、事業者におけ

る製品含有化学物質管理のための指針となる「製品含有化学物質管理ガイドライン」が

発行されている。同ガイドラインでは、セットメーカーから原材料メーカーまでサプラ

イチェーンに係る企業全てが適用範囲に含まれており、実施項目一覧表に具体的な管理

に関する要求事項を規定している。管理の仕組みは ISO9001 や 14001 などの既存のシス

テムの中に構築もしくは新たなシステムとして構築することとなっており、第一者を基

本とした検証に基づき、合格となった場合に「自己適合宣言」を行うこととしている(第

二者の検証でも可能)。 また、本ガイドラインについても、グリーン調達調査共通化指針と同様に、国際的な

標準化に向けた取組が進められている。

133

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出典:JGPSSI「製品含有化学物質管理ガイドライン」第 1.1 版(2006 年 11 月)

図 4.18 製品含有化学物質管理ガイドラインの活用イメージ

(b)自動車業界における取組状況 自動車メーカーにおいては、欧州 ELV 指令への対応を契機として、部品メーカーから

の調達時に含有物質情報を要請する際の情報共有化に向けた取組が進められている。こ

134

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のためのシステムとして、IMDS(International Material Data System)という統一フォーマ

ットが構築されており、部品メーカーが部品の材料情報を入力することで自動車メーカ

ーが自動車全体の材料情報を詳細に把握することができる仕組みとなっている。IMDSは、欧米の主要自動車メーカー8 社とシステム開発・運用を受け持つ EDS 社が構築した

もので、2000 年より運用を開始し、2006 年 7 月時点で自動車メーカー21 社(うち日本 9社)、自動車部品メーカー46,000 社以上が利用している。

我が国自動車メーカーにおいては、IMDS と独自システムとを併用していたが、IMDSと互換性を持った「JAMA・JAPIA 統一データシート」を日本自動車工業会と日本自動車

部品工業会(部工会)が共同開発し、2006 年 7 月から国内自動車メーカー全社にて運用

を開始している。 なお IMDS では、GADSL(Global Automotive Declarable Substance List)において管理対

象とする物質(87 物質群)がリストアップされている。

表 4.15 IMDS で管理対象とする物質のリスト

物質 物質 1 Acetaldehyde 27 Colophony (Rosin) 2 Acetamide 28 Copper (metallic) 3 Acrylamide 29 Cyclododecane, hexabromo- (HBCD) 4 Acrylonitrile 30 Diamino-diphenylmethane

(4,4'-Diaminodiphenylmethane) 5 Amines, which can form carcinogenic

Nitrosamines 31 Dichloropropanol (1,3-Dichloro-2-propanol)

6 Amines, carcinogenic, which are formed fromAzo-dyes, selected

32 Dimethylformamide (N,N-Dimethylformamide)

7 Ammonium Perchlorate 33 Diorganotin compounds, Selected 8 Aniline and its salts 34 Epichlorohydrin (1-chloro-2,3-epoxypropane) 9 Antimonytrioxide (Diantimonytrioxide) 35 Ethanol, 2,2',2''-nitrilotris- (Triethanolamine) 10 Aromatic amines 36 Ethyl-/ Methyl-Glycols and their Acetates: 11 Arsenic and its compounds 37 Formaldehyde 12 Asbestos 38 Halons: 13 Barium compounds (organic or water soluble) 39 Hexachlorocyclohexane 14 Benzene 40 Hexamines: 15 Beryllium and its compounds 41 Hydrazine 16 Biocidal coatings / biocidal additives 42 Hydrobromofluorocarbons; HBFC's: 17 Butadiene, 1,3 - 43 Hydrochlorofluorocarbons; HCFC's 18 Butylphenol, 2,4,6-tri-tert 44 Hydrofluorocarbons; HFC's: 19 Cadmium and its compounds 45 Lead and its compounds 20 Chlorinated hydrocarbons 46 Mineral fibres (Mineral or Synthetic) except

Continuous Filament Fibres 21 Chlorinated or brominated Dioxins or Furans 47 Mercury and its compounds 22 Chloroaniline 48 Methanol 23 Chloro-fluoro-carbons (CFC) or other Ozone

depleting substances 49 Methylacrylamidomethoxy-acetate

24 Chlorinated Paraffines, Short and Medium length(SCCP, MCCP):

50 Monomethyldibromodiphenylmethane

25 Chromium(VI)-salts 51 Monomethyldichlorodiphenylmethane 26 Cobalt and its compounds

52 Monomethyltetrachlorodiphenylmethane

135

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物質 物質 53 Nickel and its compounds 71 Selenium and its compounds 54 Nitrites 72 Sodium azide 55 Nitrocellulose 73 Styrene ( Vinyl benzene ) 56 N-Nitrosamines 74 Styrene oxide (Epoxy styrene) 57 Nonylphenol ethoxylates : 75 Sulfur Hexafluoride 58 Pentachlorophenol (PCP) and its salts 76 Tetrabromobisphenol A (TBBPA) 59 Perfluoroalkyl compounds, includes:Perfluoroalkyl

sulfonates (e.g. PFOS), fluorotelomers, andtelomer-based polymeric substances

77 Thallium and its compounds

60 Phenol 78 Thioperoxydicarbonic diamide ([(H2N)C(S)]2S2), tetramethyl-

61 Phenylendiamines and its salts 79 Tris(2-chloroethyl)phosphate 62 Phthalates, selected 80 Trichlorophenol and its salts 63 Polybrominated biphenyls (PBB): 81 Trichloropropane ( 1,2,3 - Trichloropropane ) 64 Polybrominated diphenyl ethers (PBDE) 82 Trimethylphosphate 65 Polybrominated Terphenyls ( PBT ) 83 Triorganotin compounds, selected (trialkyl- and

triaryltin compounds) 66 Polychlorinated Biphenyls ( PCB ) 84 Triphenylphosphate 67 Polychlorinated Naphthalenes 85 Tris-(1-aziridinyl) phosphine oxide 68 Polychlorinated Terphenyls ( PCT ) 86 Tris(2,3-dibromopropyl)phosphate [TRIS] 69 Polycyclic aromatic hydrocarbons (PAH; PCAH),

selected 87 Vinyl chloride

70 Radioactive substances (including scrap metalcontaminants)

136

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(2)サプライチェーンにおける製品環境データ管理に関する課題・今後の方向性

①我が国におけるサプライチェーンデータ管理の課題・方向性に関する検討状況 (a)産業構造審議会 3R 高度化 WG での検討

平成 17 年 1 月から 8 月にかけて、産業構造審議会製品3Rシステム高度化ワーキング

グループでは、3R の高度化を狙いとしたサプライチェーン間の情報提供に関して検討を

行っている。 終的なとりまとめである「グリーン・プロダクト・チェーンの実現に向

けて」(平成 17 年 8 月)においては、サプライチェーン間の情報提供に関して、以下の

方向性が示されている。

○製品のライフサイクルにおいて環境配慮性を追求するためには、製品製造の更に上流

である素材・部品製造段階までを含むサプライチェーン全体において、環境情報が可

視化されて流通し、その効率性や信頼性についても向上することが求められている。

○一方、これらのサプライチェーンでは企業間取引が主体であり、また、環境への対応

度合いは 終的には製品において具現化されることから、法的枠組みによる措置をサ

プライチェーン全体にわたって講ずることは不要であると思われる。しかしながら、

含有情報等を提供すべき対象物質については無用の混乱を避けるべく必要事項の明

確化を図ると共に、提供方法等の技術的な含有物質開示手順については、知的財産権

保護や国際的な整合性の確保や規格の活用を含め、共通化を促進すべきである。 ○また、環境配慮設計の取り組みを社会全体で促進させていくためには、製品の製造事

業者や輸入業者のみならず、中堅、中小企業を含めたサプライチェーンに関わる事業

者全体に対して、背景情報や取り組むべき事項等の情報提供を行う基盤の整備も必要

である。

(b)製品含有化学物質情報伝達に係る基本的指針

一方、産業構造審議会化学・バイオ部会リスク管理小委員会製品含有化学物質情報伝

達ワーキンググループでも、RoHS 指令や REACH 規則の導入を背景として、製品に含有

された化学物質情報伝達に関する検討を実施している。 その成果として平成 18 年 4 月に取りまとめられた「製品含有化学物質情報伝達に係る

基本的指針」では、含有化学物質情報を知的財産とリスクの両面から整理した上で、以

下の 7 点を課題として挙げている。 − 化学物質管理や海外の化学物質規制に係る基本的な理解の不足に起因する問題 − 部素材・部品製造プロセスへの理解の不足に起因する問題 − 含有化学物質情報の取得目的に対する理解の不足に起因する問題 − 営業秘密の観点からの問題 − 川上・川下企業間の情報共有の不足に起因する問題 − 企業の戦略に基づく問題 − データの信頼性に対する誤解に基づく問題 その上で化学物質情報伝達を行う際及び伝達の仕組みを構築する際に留意すべき事項

(企業における体制の整備)として以下を挙げている。

137

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− 化学物質管理や含有化学物質の情報取得の意義に関する理解促進 − 適切な製品含有化学物質の管理体制の構築 − 営業秘密に係る情報の管理の徹底 − 情報収集目的の明確化とこれに基づいた対象物質の特定(情報を要求する側) − 含有化学物質に係るリスクとこれに係る責任の明確化(情報を提供する側) また、水平方向(情報要求側)でのフォーマットの統一等の相互協力に加え、垂直方

向(サプライチェーン)での協力が情報伝達システム構築並びに情報提供において必要

であるとしている。

出典:「製品含有化学物質情報伝達に係る基本的指針」

図 4.19 企業によるリスト(管理基準適合材料・部品データベース)作成スキームの例

(c)JAMP における取組状況

欧州における RoHS 指令、EuP 指令、REACH 規則の導入を背景として、的確かつ迅速

な対応を講ずることにより、従前にも増して国際的な競争力確保が不可欠となってきた

ことを踏まえ、産業界ではアーティクルマネジメント推進協議会( Japan Article Management Promotion consortium,通称:JAMP)を 2006 年 9 月に設立させている※。

※花王、住友化学工業、TDK、松下電機産業、日立製作所など 17 社が発起人となっており、事務局は(社)

産業環境管理協会に設置。

JAMP では、国際的な潮流やサプライチェーンにおける情報の管理および円滑な開示

を促進し、もって我が国の産業の環境への積極的な対応による「ものづくり」基盤の強

化を通じた国際的な競争力確保とアジア諸国を含めた製品含有化学物質の適切な管理の

実現に寄与することを目的としており、具体的には以下の活動を行うこととしている。 − アーティクル含有化学物質情報管理ガイドラインの作成・検証・普及

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− 情報記述フォーマット(AIS/AISplus)の作成・検証・普及 − 自己宣言に基づくアーティクル含有化学物質情報の基盤整備 − アーティクル含有化学物質情報管理の国内・国際標準化の推進 − その他上記の普及に向けた広報、中小企業支援等

③電機業界における課題と今後の方向性

(1)の検討結果より、電機業界におけるサプライチェーンデータ管理上の特徴として

は以下の点が挙げられる。 ・ RoHS 指令への対応等を背景に、JGPSSI を発足させるなど、電機メーカーでは他業

界に先駆けて、調査対象物質、調査フォーマット、化学物質管理ガイドラインにつ

いて共通化を図っている。 ・ 実態として、電機メーカーにおいては、他業界と比較して取引先(部品等の調達先)

とのデータ共有が進んでおり、特に化学物質の使用に関する基準の遵守、環境関連

データ(物質の含有量や不存在証明等)の提供を多くの企業で求めている。 これらの特徴を踏まえて、電機メーカーとして今後は以下の点について取り組んでいく

必要があると考えられる。

○データ共通化範囲の拡大 JGPSSI では、電機メーカーを中心に関連するサプライチェーン間でのデータ共通化

を図ってきたが、REACH 規則の導入を踏まえ、他業種や海外など更にバウンダリーを

拡大して共通化に取り組んでいく必要がある。既に JAMP などの取組がスタートして

いるところであるが、電機メーカーとしてはサプライチェーンにおけるデータ管理の

トップランナーとして積極的に関与していくと同時に、競争力確保に向けた戦略的な

取組が望まれる。 ○管理対象物質の拡大

RoHS 指令への対応という側面があったことから、管理対象物質をある程度限定した

取組がなされてきているが、REACH 規則の導入を踏まえ、管理対象物質を拡大してい

くことが必要となる。ただし、物質を単に増やすのではなく、管理の必要性を十分に

検討した上で必要なデータのみを求めるなど、データ提出側への負担が過剰とならな

いように配慮する必要がある。 ○サプライチェーン全般における情報管理意識の醸成

家電製品については、構成する部品の点数も多く、またその調達先も海外を含め多

岐に亘っており、サプライチェーンの拡がりも非常に大きいものとなっている。こう

いった中で情報を適切に管理していくためには、サプライチェーンに関わる事業者全

体における情報管理への理解を深めていくことが重要であり、サプライチェーンを通

じた啓発等の取組やひいてはデータ提出側へのインセンティブ提示などの取組が求め

られる。

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4.3 適合性評価(自己適合宣言)のあり方に関する検討 4.1および4.2の検討内容を踏まえ、製品の環境配慮事項への包括的対応、国際的整

合性を確保するための、我が国における適合性評価のスキームのあり方について、規格と運

用方法、表示(マーキング)、コミュニケーション等の観点から検討を加えた。

(1)国内外における適合性評価スキームの現状 我が国と海外における環境配慮設計の実施内容標準化、適合性評価のスキームを比較を、

図 4.20 に示す。我が国では、資源有効利用促進法(指定省資源化製品、指定再利用促進製

品)において環境配慮設計を義務付けているが、 ・ 環境配慮設計ルールの内容は定性的なものに留まる ・ ルールの実施状況を認証(適合性評価)し、開示(表示)するスキームがない

といった点が海外のスキームと異なる点として指摘されているところである。

図 4.20 我が国と海外における環境配慮設計規格・運用スキームの比較

①海外における適合性評価スキーム 海外における適合性評価のスキームとして、表 4.16 に掲げられるものがあるが、このう

ち代表的なスキームについて、表 4.16 に続き若干の解説・整理を行う。

表 4.16 各国の適合性評価(自己適合宣言)の現状

地域・国 実施内容 スキーム 備考 EU CE マーキング European Conformity Directive 93/68/EEC

Product Directive 国際 ECMA341 ECMA TR/70 ・ICT&CE のための環境

配慮設計の考慮事項 ・製品関連の環境属性

APEC 輸出用適合性機関指定制度

GRP ( Good Regulatory Practice)

・規制の妥当性評価 ・技術基準の性能規定化・リスクの評価

国際 MRA(国際相互認証) One-Stop-Testing ・国際間の重複試験を省く ISO/IECガイド58, 43

EU IPP(包括的製品政策) 生産者責任の原則 ・製品ライフサイクル EU Procurement Directive 国連 The Green Office

Initiative ・製造時の汚染 ・エネルギーの消費

・国連開発計画

例えば

IEC62430,

ECMA341 etc.

例えば

ECMA TR70

etc.

製品アセスメント

ガイドライン等に

基づき各企業が実施

日 本 海 外

実施内容の

標準化等

運用(適合性評価)

スキーム

ルールの実施状況の

評価(適合性評価)

スキームがない

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地域・国 実施内容 スキーム 備考 米国 EPP プログラム

(Environmentally Preferable Purchasing)

北米 North America Green Purchasing Initiatives

中国 CCC マーク制度 強制製品認証制度 2003 年 8 月 1 日 電気・電子・自動車

(a)EuP 指令(EU の CE マーキング)

EuP 指令では、製造業者は、上市に先立ち適合性評価を実施することとなっている。

適合性評価の手続きは実施要件により定められるが、製造業者は内部環境管理(付属

書 IV で規定)もしくは管理システム(付属書 V で規定)のどちらかを選択できる。

付属書 IV:内部環境管理 1.適合宣言は一つもしくは複数の製品をカバーし、製造業者によって保管される。 2.以下を含む技術文書を作成 (a)EuP とその用途に関する一般的説明 (b)製造業者が実施した環境評価研究の結果(または)環境評価文献もしくはケーススタディへの言及 (c)製品のエコロジカル・プロフィール (d)製品の環境設計側面に関した製品設計仕様の要素 (e)第 11 条に言及されている該当文書のリスト、及び第 11 条に言及されている文書が適用されていない場

合、またはこれらの文書が該当する施行措置の要件を完全にはカバーしていない場合には、該当する施

行措置の要件を満たすために採択されたソリューションの説明 (f)付属書Ⅰの第3部の要件に従って提供される製品の環境設計面に関する情報の写し (g)エコデザインに関して実施された測定結果

また、製造業者においては、上市に先立ち、EuP に CE マークを貼付し、適合宣言を公

表せねばならない。なお、以下のいずれかを満たす場合には施行措置の関連要件に適

合していると見なされることとなっている。すなわち、ブルーエンジェル等、EU各

国によるエコラベルもEUエコラベルと同等の条件を満たす場合には、適合とみなす

という相互認証の仕組みとなっている。 − 製品がEUエコラベルを取得している場合(ただし対応する実施措置の要求がエ

コラベルでカバーされている場合に限る) − 整合規格(欧州標準化機関が作成する欧州規格)に基づく規定が適用されている

場合 (b)ECMA-341

Ecma International が 2004 年 12 月に発行した環境配慮設計にかかる業界規格

“ Environmental design considerations for electronic products”(ECMA-341)では、適合

性評価のスキーム(ECMA TR/70)が設けられている。 同スキームでは、適合性評価は自己宣言により実施される。環境パフォーマンス宣言

では、資源使用量、汚染物質排出量、それに伴って生じる環境影響を、製造段階と、

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使用段階の2部構成で表示せねばならない。 ・ 第 6 節および第 7 節にある、該当する全ての「しなければならない(shall)」宣言を満たす; ・ 製品(または一定の製品ファミリー)用の設計チェックリストに記入する;

供給者宣言によって適合性を宣言する。

(c)国際エネルギースター

国際エネルギースタープログラムは任意の登録制度であり、参加を希望する製造事業

者または販売事業者は、対象製品を自己または第三者適合性評価機関により基準をク

リアした製品であることを確認し、自己宣言することにより同プログラムに任意に参

加し、製品を登録することができる。 登録を行った製品については、日本政府及び米国政府が相互に承認するスキームとな

っており、米国で販売する製品を日本で登録しても、米国でのロゴの使用が認められ

る。

②我が国における適合性評価スキーム 図4.20で示したとおり、我が国における適合性評価の明示的なスキームはない。ただし、

資源有効利用促進法において定性的に定められた要求事項については、産構審ガイドライ

ンに盛り込まれており、同ガイドラインにおいて要求される水準を満たしているかに関し

て産業構造審議会において評価・公表するスキームとなっている。そのような意味で、産

構審ガイドラインによるフォローアップのスキームが、適合性評価のスキームに近い機能

を有していると考えることができる。

家電製品分野においては(財)家電製品協会が中心となって、資源有効利用促進法の6

製品を担当する(社)日本電機工業会、(社)日本冷凍空調工業会、(社)電子情報技術産

業協会の3団体共同で、製品アセスメントマニュアルの中にアセスメントガイドライン1

4項目(表 4.4 参照)を制定している。各社はこれに基づいて、製品開発の過程で製品ア

セスメントを実施し、その結果をWEBで公開し、自己適合宣言を実施している。現時点

において、この適合性評価のスキームは、海外との相互認証などにおいて効力を持たない

ものの、今後の改善等により発展していく可能性はあると考えられる。 (2)適合性評価の在り方に関する検討

(1)で整理したとおり、我が国においては明示的な適合性評価のスキームがないのが

現状である。国内外の状況を踏まえると、今後の適合性評価の在り方については、以下の

ような方向性が考えられる。 ○自己適合宣言による認証制度 適合性評価については、海外スキームを見ても自己適合宣言が主流となっている。第

三者機関による認証を想定した場合、適合性評価によるコストが膨大となることが想定

されることから、自己適合宣言による認証制度とすることが適当と考えられる。 ○国際的な相互認証

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我が国の電機産業は海外市場への出荷も多いことから、欧州における EuP 指令の導入

を考慮すれば、我が国独自の認証制度ではなく、国際的な整合性のある認証制度が望ま

しいと考えられる。国際整合性の確保に関しては、国際エネルギースター等で用いられ

ている相互認証のスキームを用いるのが一つの方法であると考えられる。 ○継続的改善が図れる仕組み 欧州の CE マークでは適合の可否を評価するのみであり、より水準の高い取組に対する

評価の仕組みは準備されていない。先進的な取組を評価できるよう定量的な評価を行う

ことも一案である。その結果、事業者による継続的な改善が促されることが期待される。

また、DfE は日本が世界的にも先行して取り組んでいる分野であり、競争力確保の観点

からも戦略的なスキームが必要と考えられる。

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