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第4章 安全には慎重に慎重を重ねて

第4章 安全には慎重に慎重を重ねて - 文部科学省 …第4章 安全には慎重に慎重を重ねて 26 あ!このマーク なんか見たことある!これは

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第4章

安全には慎重に慎重を重ねて

26

あ!

このマーク

なんか見たことある!

これは

放射能標識といって

世界共通のマーク

なんだ

一般の病院などで見られる

三角形のPLマークとは

違うものだね

今日は施設が稼動してないから

放射線の心配もないし

内部に入ることができるんだおお

ラッキー!

ここから先は

放射線に注意しなさい

…ってことなんですね

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よいしょ

…っと

重そうだなぁ…

どうしてこんな

分厚い扉なんだろ

もう

忘れたの?

放射線は

モノを通り抜ける

性質があるって

教えてもらったでしょ

そっか

放射線を外に

漏らさないためか

そうだね

放射線は目に見えない上に

透過力を持っているから

注意深く扱う必要があるんだ

この扉も分厚いだけじゃなく

放射線が透過しにくい

素材を使ったり

扉が開いている時は

放射線を発生させない仕組みが

備えられていたりするんだ

他にも放射線を常時測定する

装置や、施設で使った水や

空気から放射性物質を取り除く

特別な設備もある

設備の管理や放射性物質の

取り扱いに関しては

法令で定められていて

定期的に国の検査を

受けなければいけないんだ

慎重の上にも

慎重を重ねなさい

ってことなのよね

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さて

ここがうちの

研究所のエース…

HIMACハ イ マ ッ ク

だ!

すげーっ!要塞みてぇ!

ハイマック…って

どういう意味

なんですか?

正確には

『重粒子線ガン治療装置』

英語にした時の頭文字から

通称 HIMACハ イ マ ッ ク

呼ばれてるんだ

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ここでは何を

研究してるの? ガンの放射線治療…って

聞いたことないかな?

あ、ええと

ドラマとかでなら

普通の放射線治療では

エックス線やガンマ線を

使ってることが多いんだけど

この装置は炭素イオンの重粒子線を使って

ガンの治療をするんだ

重粒子線はエネルギーの高さに応じて

身体の中の一定の深さのところへ

集中的に当てることができる…だから

ガン細胞にだけ放射線を当てて

周りの正常な細胞をできる限り傷つけず

治療することが可能なんだ

副作用が少ないって

メリットがあるのね

従来のエックス線やガンマ線よりもガン細胞をやっつける力が大きいから今までの治療では難しかった深いところにあるガン細胞や放射線に強いガン細胞にも有効なんだよ

この重粒子線を使った治療装置は

HIMACハ イ マ ッ ク

を含めてまだ

日本には数台しかないけど

これからの普及が

期待されているね

30

――どう?見学した感想は

放射線のこと今まで知らなかったり誤解してた所もあったんですけど色んな分野で身近に利用されてるんだなって驚きました!

うわ

先に全部言うなよ!

先生もそうね

知らなかったことが

たくさんあって…

来てよかったわ

放射線は安全に使えば

僕たちの暮らしに役立つ

ことが沢山ある

だから僕たちは

厳重な設備を使い

細心の注意を払って

放射線を取り扱ってるんだ

よし!ただ使い方を間違えてしまうと大きな事故を起こしかねない諸刃の剣だ

それはなにより

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決めた!俺も山本さんみたいに

スゲェ放射線の

研究者になる!

それは

嬉しいなぁ~

やってみなきゃ

わかんないだろ!

理科の成績

私よりずっと悪い

タクヤじゃねぇ

でも

決して無理だとは

言えないわ

え!?

ほ…

ほんと?

ええ

だって

ここにいる山本君も

昔は理科が大の苦手でね

いっつも私が宿題教えて

あげたんだから♪

ちょっ

それ

バラさないでって

約束だったのに!!

そうだった

かしらね~?

…放射線

みたい…

耳から

すり抜けちゃって

忘れてたわ~

確かにタクヤ君もうちょっとがんばって欲しいけどね

いやいや

いやいや

無理だって

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ところで山本さん、原子力発電所でも、今回見学したHIMACと同じような放射線管理が

されているんですか?

そうだね、どちらの施設でも、そこで働く人たちや施設周辺に住んでいる人たちへの放

射線による影響を考える上で、基本的な考え方は同じなんだよ。

放射線を利用することで、人や社会に利益をもたらすものでなければならないこと。放

射線による被ばくは、可能な限り低く保つようにすること。さらに、あらかじめ定めら

れた値を超えないようにすること。

この3つがその考え方なんだ。

なんかよくわかんないな。具体的にはどういうことなんですか?

伊藤先生と山本さんのなぜなに学習ノート③

まず、一定量以上の放射性物質や放射線を発生させる装置を利用するには安全に取り扱

う仕方を国の許可(や届出)によってチェックされるんだ。国は、いつ、どこで、どん

な風に放射線が利用されようとしているのかを把握し、必要に応じてその現場まで立ち

入って検査することができる。放射線に被ばくするけれど、何の利益も得られないなん

てことがないよう監視されているんだよ。

また、放射線を利用する人は、あらかじめ教育訓練を受けなければならないんだ。放射

線の特徴や、身体に与える影響などの知識を得て、どのように取り扱えば被ばくを可能

な限り低くできるか考えて行動しなければならないんだ。

その他にも、私たちの五感では感じることのできない放射線だから、日常的に施設内外

での放射線を測定・記録したり、放射性物質等を利用した時の被ばく線量測定や定期的

な健康診断を受けるなどして、定められた値を超えないように努めているんだよ。

へぇ~、そうなんだ。放射線管理って大変なお仕事だね。

大変な仕事だけれど放射線のおかげで便利な社会になっていると考えるのか、大変だか

ら放射線をあきらめて違う方法で便利な社会を実現しようとするのかは、君たちもいっ

しょに学び、考えていかなければならないんだよ。

ちょっぴり不安だけど、ワクワクしますね!

これからも研究がんばって下さいね。今日はどうもありがとうございました。