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生態系の構造 生態系を構成する生物群集は生産者消費者分解者らなる 光合成化学合成により、無機物から有機物 を作り出す生物 生産者 1 生態系(教p250~) 第5章 生態系とその保全 1 生態系の成り立ち :生産者がつくった有機物を消費する生物 消費者 一次消費者 植食性の動物 二次消費者 植食性の動物を捕食する肉食性動物 三次消費者 肉食性の二次消費者を捕食する型の肉食性動物 :生物の遺体排出物などを無機物に分解する 生物 分解者 生態系の比較 1

第5章 生態系とその保全 1 生態系(教p250~) 1nakaji.oops.jp/seitaikei(matome).pdf2)、二次消費者による被食量(C 2)、死滅量(D 2)のそ れぞれを除いたものが一次消費者の成長量(G

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生態系の構造

生態系を構成する生物群集は生産者・消費者・分解者からなる

:光合成や化学合成により、無機物から有機物を作り出す生物

・生産者

1 生態系(教p250~) 第5章 生態系とその保全

1 生態系の成り立ち

:生産者がつくった有機物を消費する生物 ・消費者

一次消費者 :植食性の動物

二次消費者 :植食性の動物を捕食する肉食性の動物

三次消費者 :肉食性の二次消費者を捕食する大型の肉食性動物

:生物の遺体・排出物などを無機物に分解する生物

・分解者

※生態系の比較

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食物連鎖

自然界における食う-食われるの関係

○海洋生態系の食物連鎖

珪藻類

自然界に生息する生物の種類は極めて多いため、食物連鎖のつながりは複雑な網目状になる。これを食物網という

鞭毛藻類 原索動物

カニ幼生

オキアミ

クラゲ ニシン ウバザメ

ヒゲクジラ

カツオ イカ サバ

※食物網

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○森林生態系の食物連鎖 (図表118-2A)

小形鳥類

昆虫

ササラダニ

ガ ハダニ

リス・ヤマネ カモシカ

ウサギ ネズミ

ネズミ

菌類・細菌

ゴミムシ

線虫・原生動物 トビムシ

モグラ トガリネズミ

イタチ ヘビ カエル

クモ・ムカデ

寄生バチ

クモ・ダニ

大形鳥類

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○湖沼生態系の食物連鎖 (図表118-2B)

カモ コサギ

オイカワ

ミジンコ 幼魚

ソウギョ カゲロウの幼虫

貝類 イトミミズ

※生物の遺骸から始まる食物連鎖を腐食連鎖という(⇔生食連鎖)

ヤゴ

ナマズ ライギョ

ハス

フナ ドジョウ

ワカサギ メダカ ウグイ

ウナギ

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(教p253参考) ○ペインの実験

→生物群集は食物連鎖によってそのバランスを保っている

様々な生物種が存在する海辺の岩場から、上位の捕食者であるヒトデを除去し続ける実験を行った

(結果)種数の少ない単純な生態系になった

※ここで取り除いたヒトデのように、生態系内で食物網の上位にあって他の生物の生活に大きな影響を与える生物種をキーストーン種という

(キーストーン種が捕食者の場合はキーストーン捕食者という)

※ペインの実験

栄養段階

栄養分の摂り方によって生物を段階的に分けたもの

(例)生産者、一次消費者、分解者など 5

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一般的に高次の消費者になるほど個体数・生体量・生産力は少なくなる。これらを栄養段階ごとに帯状に表し、積み重ねたものを生態ピラミッドという

(図表119-3) 生態ピラミッド

一次消費者

○個体数ピラミッド

二次消費者

三次消費者

生産者

各栄養段階の生物量を個体数で表したもの

単位:個体数/m2

3

3.5×105

7.1×105

5.8×106

○生物量ピラミッド ある時点での生物の総重量を表したもの 単位:

g/m2

1.5

37

809

11

一般に捕食者は被食者よりも大きい

消化されず排出されたり、呼吸で消費されるため、栄養段階が上がると生体量は少なくなる

※生態ピラミッド

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※安定した生態系では、生態ピラミッドはほぼ一定に維持される

○生産力ピラミッド 一定面積内で一定時間に生産される有機物の量(生産力)を表したもの

単位:mg/m2・日

1.26

9.7

174.7

2016

(生態ピラミッドの逆転例) ※寄生関係にある個体数ピラミッド

毛虫

寄生バチ

ダニ

サクラ

宿主よりも寄生者のほうが小形なので数を増やすことがある

※寄生蜂の生態 アオムシコマユバチ

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※海洋における生体量ピラミッド

植物プランクトン

動物プランクトン 海洋の植物プランクトンは1世代

が短く、短期間に成長しては被食・死滅を繰り返すため、一時的に生体量が逆転することがある

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○物質の生産と消費 (図表121-2,教p255参考)

地球に入射する太陽の光エネルギーのうち、反射・透過分を除き地表に達するものを吸収光という

吸収光の一部は熱となり失われるが、残りを用いて生産者が生産した有機物の総量を総生産量という

吸収光-熱=生産者の総生産量

(光合成に使われた光エネルギー)

ある時点においてどの程度その生物が存在しているかを現存量(S)というので、光合成が行われた時点での生産者の総量は

生産者の総量=現存量(S1)+総生産量となる

※「1」は生産者の場合、順に一次消費者は「2」、二次消費者は「3」とする

つまり、光エネルギーを有機物の化学エネルギーへ変換

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総生産量-呼吸量(R1)=純生産量

生産者の純生産量の一部は、一次消費者に食われる被食量(C)や落葉・落枝などの枯死・死滅量(D)となり失われるため、残りが成長量(G)となる

生産者の純生産量=成長量(G1)+被食量(C1)+枯死量(D1)

一次消費者においては、生産者の被食量(=一次消費者の摂食量)から消化・吸収できなかった量(不消化排出量;U)を除いたものが同化量となる

一次消費者の同化量

生産者と同様に考え、一次消費者の同化量から呼吸量(R2)、二次消費者による被食量(C2)、死滅量(D2)のそれぞれを除いたものが一次消費者の成長量(G2)となる

二次消費者も同様に考え、以上を図にまとめる

=生産者の被食量(C1)-不消化排出量(U2)

生物は呼吸により物質を消費するので、総生産量から呼吸量(R)を差し引いたものを純生産量という

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光合成で同化されたエネルギー

入射エネルギー

吸収されたエネルギー

反射透過 熱

総生産量

被食量C1

呼吸量

枯死量

成長量

現存量 S1 G1 D1 R1

純生産量

S2 G2 D2 C2 R2 U2

不消化排出量

捕食量

同化量

捕食量

同化量

S3 G3 D3 R3 U3

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※物質的には、それぞれの枯死・死亡量は分解者が無機物に変え、非生物的環境に戻されるが、のちに再び生物群集に取り込まれる →このように、生態系において物質は循環する

2 生態系内の物質循環とエネルギーの流れ(教p256~)

物質の循環

物質の循環の中でも、生体物質の主要な成分元素である炭素と窒素の循環は重要である

自然の生態系では、物質の循環やエネルギーの流れを中心にまとまり、変動しながら全体としては平衡を保っている

※呼吸量や枯死量などのエネルギーは最終的に生態系外に放出される

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(図表120-1A) ○炭素の循環

大気中の二酸化炭素

海水中の二酸化炭素

人間の活動

人間の活動 生産者

植食性動物

肉食性動物

遺骸・排出物

菌類・細菌類

石油・ガス 石炭

植物プランクトン

動物プランクトン

魚類など

サンゴ・有孔虫類

遺骸・排出物

細菌類

呼吸 呼吸 呼吸

呼吸 呼吸 呼吸

光合成

光合成

吸収

放出

呼吸(分解)

燃焼

噴火

火山活動

石灰岩

※炭素の循環

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○炭素存在量と移動量

・海洋には、大気中のCO2をはるかに上回るCO2が溶け込んでおり、大気中のCO2濃度の増減を緩和している

・化石燃料の大量使用により、大気中のCO2量は年々増加している

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(図表120-1B) ○窒素の循環

大気中の窒素

脱窒素細菌

窒素固定細菌

生産者

NH3,NOx

肉食性動物

シアノバクテリア 遺体・排出物

硝酸菌

菌類・細菌類

マメ科植物の根粒

無機窒素化合物

NO3-

分解

自然放電・燃焼

酸性雨など

工業的窒素固定

脱窒 火山活動

亜硝酸菌

N2

噴火

植食性動物

窒素同化

NO2- NH4

※窒素の循環

窒素固定

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植物は土壌から無機物(NO3-やNH4

+)の形で窒素(N)を取り入れ、アミノ酸などの有機窒素化合物を合成する

○窒素同化 (図表154-1)

このはたらきを窒素同化という

また、動物は植物のそれを取り入れて、体内で新たに作り変える

○窒素固定 (図表155-3) 植物は通常空気中の窒素(大気の約78%)を窒素同化

に利用することができないが、ある種の細菌類とラン藻類はこれを還元してアンモニアに変えることができる

これを窒素固定という

(例) 根粒菌(マメ科植物の根に共生する) アゾトバクター(好気性土壌細菌)

クロストリジウム(嫌気性土壌細菌)

ネンジュモ(ラン藻類) 16

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窒素(N2) アンモニア(2NH3)

ATP ADP

ニトロゲナーゼ 3H2

①亜硝酸菌

2NH3 + 3O2 → 2HNO2 + 2H2O + 化学エネルギー 亜硝酸 ②硝酸菌

2HNO2 + O2 → 2HNO3 + 化学エネルギー 硝酸

①②の作用によりアンモニア→亜硝酸→硝酸と酸化される作用を硝化作用という

○硝化作用

光エネルギーを用いずに、無機物を酸化したときに出る化学エネルギーを利用して炭酸同化を行う細菌が存在する(化学合成細菌)

(図表153-5)

炭酸同化に利用(光合成でいう光エネルギー)

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○脱窒作用

土壌中に存在する脱窒素細菌のはたらきにより、窒素化合物をN2またはN2Oの形で大気中に放散させる作用

→活性汚泥(活きた微生物などを多く含んだ汚泥)法として下水の浄化処理などに用いられている

○工業的窒素固定

H2とN2から工業的にNH3を合成する方法(ハーバー・ボッシュ法) →化学肥料の合成などに用いられる

NO3- →NO2

- →NO →N2O →N2

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・大気中には約80%のN2が存在する

○窒素存在量と移動量

・生物体において、窒素は核酸やタンパク質の構成物質として重要である

※リンの循環

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○エネルギーの流れ

生態系では物質の循環に伴って、エネルギーが移動する ①生産者が合成した有機物には、太陽の光エネルギーが含まれている

②このエネルギーが被食-捕食により、高次の消費者に移っていく

③枯死・死滅した生物に含まれたエネルギーは、分解者の生命活動に使われる

④それぞれの過程でエネルギーは呼吸による熱として、徐々に生態系から失われていく

⑤よって、エネルギーは生態系を一方向に移動し、最終的には全て生態系外に放出される

※エネルギーの流れ

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食物としての移動

枯死体・遺体・排出物としての移動

呼吸

呼吸 呼吸

呼吸 呼吸

(例)北アメリカの湖におけるエネルギーの流れ 1.38

0.62

0.33

20.9

13.3

0.1

(図表121-2A)

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※R/G(成長量に対する呼吸量の割合)は栄養段階が上がるほど大きくなる →捕食活動に多くのエネルギーを消費するため

※エネルギー効率

→一般的に栄養段階が上がるほど大きくなる

同化量(総生産量) 一つ前の栄養段階の同化量(総生産量)

枯死量 死滅量 死滅量

11.8

1.3 少量

被食量

62.2

被食量

13.0

呼吸量 98.3 呼吸量 18.3 呼吸量

7.6

成長量

295.3

467.5

成長量

29.4

成長量

5.5

×100

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○植物と菌根菌(教p260参考) 多くの植物は根に菌類(菌根菌)を共生させることで、リン酸塩や硝酸塩などの栄養分を吸収する

菌根菌 植物

リン酸塩・硝酸塩

光合成の同化産物

(例)マツタケ、トリュフ、ホンシメジなど

(菌糸を伸ばすことで広域から吸収しやすくなる)

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