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第5回 昆虫生態学II 【本日のメニュー】 平成291113日(月) 13時~1430松浦健二(農学研究科 昆虫生態学研究室) 性の利益とコスト 【考えてみよう】 性と性選択 性が維持される理由

第5回昆虫生態学II (農学研究科昆虫生態学研究室)第5回昆虫生態学II 【本日のメニュー】 平成29年11月13日(月)13時~14時30分 松浦健二(農学研究科昆虫生態学研究室)

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第5回 昆虫生態学II

【本日のメニュー】

平成29年11月13日(月) 13時~14時30分

松浦健二(農学研究科 昆虫生態学研究室)

性の利益とコスト

【考えてみよう】

性と性選択

性が維持される理由

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生物にとって「性」とは何か

有性生殖: 異性個体が減数分裂によって作った配偶子が接合することによって新たな個体が生まれる生殖法。

同型配偶子・異型配偶子

雌雄の定義: 大きくて動かないが栄養に富んだ配偶子(卵)を作る性が雌。小さくて栄養分を持たない配偶子(精

子)を作る性が雄。

異型配偶子生殖は、小さな精子をつくる「雄」による大きな卵をつくる「雌」への寄生

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もとの半分の染色体しかもたない4つの娘細胞が出来る

第1減数分裂前期に染色体の乗り換えが起きる。

もとと同じ数の染色体をもつ2つの娘細胞が出来る

第1減数分裂

第2減数分裂

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(a)減数分裂の有無に基づく分け方

アポミクシス(apomixix):減数分裂を回避して, 体細胞分裂と同様に均等分裂によって二倍体の子を産む。この様式で産まれた子は,遺伝的には親と全く同じクローンとなる。

エンドマイトシス(endomitosis):減数分裂の前に染色体が倍加し, 減数分裂によって二倍体の子を産む。

オートミクシス(automixis):減数分裂の後に, 半数体となった卵核が, 極核と融合するなどして二倍体に核相を回復する。

(b) 核相回復のメカニズムに基づく分け方

末端融合型(terminal fusion):減数分裂後に出来た半数体の卵核が第二極体と融合して二倍体に核相回復。子の遺伝子型のヘテロ接合度は急激に低下する。

中央融合型(central fusion):減数分裂後に出来た半数体の卵核が第一極体と融合して二倍体に核相回復。子の遺伝子型のヘテロ接合度は高く維持される。

生殖核倍加(gamete duplication):半数体の核が倍加して融合する。子の遺伝子型のヘテロ接合度はゼロになる。

単為生殖の仕組みと遺伝様式

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末端融合型オートミクシス

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中央融合型オートミクシス

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生殖核倍加

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性選択 Sexual selection

交尾成功率を増加させるためにはたらく形質への選択

外部環境ではなく、同種の個体間相互作用によってもたらされる選択

性選択の結果進化した形質の多くは、その個体自身の生存率を高める観点では不適応

性間選択と雄間競争

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コクホウジャクのオスの尾の長さとメスの嗜好性

性間選択(雌による選り好み) female choice

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フィッシャーのランナウェイ仮説

それ自身が適応度に何の影響も及ぼさない形質であっても、ほかに選択を受ける別の形質と何らかの相関をもつことにより、その形質の進化が可能な場合がある。

遺伝相関(量的遺伝の場合)

連鎖不平衡(メンデル遺伝する遺伝子の場合)

性的形質と嗜好性の正のフィードバック

雌によるえり好みの進化

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捕食回避の点で不適応な性的形質

捕食圧の高いところでは、オスの体色は鮮明にならない

性選択形質のコスト

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プラティフィッシュや近縁種のPriapellaの

雌は実験的に尾びれを付け加えて長くした同種の雄をより好む。

尾の長い雄を好む雌の感覚的な偏りがまず祖先的な種において進化した。

ソードテイルフィッシュの雄は、その雌の選好性を利用するように進化した。

ソードテイルフィッシュの雌が長い尾に魅了される度合いは低下した(チェイスアウェイモデル)。

Holland and Rice 1998

雌による選り好みの進化と収束点

ランナウェイモデルとチェイスアウェイモデル

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クジャクの羽の模様と交尾成功度

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歌のレパートリーとメスの嗜好性

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ザハビのハンディキャップ説

仮定: ハンディキャップがオス形質の信頼できるシグナルであるためには、シグナルにはコストがかかり、遺伝的に質の劣るオスほどコストが大きくなくてはならない。

優良な遺伝子をもつことを示すための、コストのかかるシグナル

こんなに目立っても捕食者に捕まらないだけの運動能力

こんなに長い尾をもっていても・・・

寄生回避説 Hamilton and Zuk 1982, Science

顔のシンメトリーと魅力(Mealey et al. 1999)

鳥の羽の美しさと病気への抵抗性

「Good gene」を反映する指標か?

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ツマグロガガンボモドキの婚姻贈呈と交尾成功度

メスは交尾中にオスがくれる餌が大きいほど交尾時間を延長する

交尾時間が長いほど受精させられる卵の数が増すので、オスにとって利益となる。

婚姻贈呈 mating gift

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精包による婚姻贈呈

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婚姻贈呈 mating gift

キリギリス科 Requena属の一種

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オス間闘争

同性内選択

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シュモクバエ

オス間闘争

同性内選択

メスによる選好性も関与

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武器形質の二型

メジャー雄とスニーカー雄

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配偶者ガード mate guard

精子競争: 卵の受精をめぐるオス間の競争

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精子置換 sperm replacement

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一夫多妻の程度と性的二型