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「私たちの研究室では、集合住宅についていろいろな側面から研究しています。古くなった公共住宅の中には、敷地内の木々も成長しそれが美観を作って、一つの公共財になっている住宅もたくさんあります。古くなったからと言って安易に建て替えるのではなく、現在の視点から足りないものを補うことによって、今ある建物を大切に使う時代になっているのです」集合住宅の一つの問題点は、同
世代の入居率が高いため、住宅が古くなるとともに住人も高齢化することだ。しかし、家賃は比較的安いので、『古さゆえの不便』を取り除き、上手にリニューアルすることができれば、都会の若い夫婦などにとっても利用価値の高い物件とな
ろう。「若い世代を公共集合住宅に呼び戻すことができれば、世代間のバランスが取れた住環境も回復でき、街そのものや近隣商店街の再生にもつながる可能性があります」
「現在、所属する建築学専攻が『21世紀COEプログラム』の研究拠点に選出され、その研究の一環として、古くなった中層の集合住宅にエレベータを設置する研究を行っています。特に、1965年頃に建てられた5階までの集合住宅は、よい環境に建設されているものが多く、建て替えるより手を入れて大切に使う方がメリットが大きいと思います」当研究室では、こうした集合住宅
の階段部分を取り除き、バリアフリーとするためのエレベータを設置する『階段一体型エレベータ』を開発した。コンパクトでデザイン的にも優れているため、住宅の資産価値を高める効果もある。この『階段一体型エレベータ』は、千葉県のとある古い社宅に実験的に設置されたのだが、一週間の公開期間に、全国の自治体などから200名を超える見学者が訪れたという。古い集合住宅の再利用問題への全国的関心の高さが伺われる。
日本では、建築が古くなれば壊して、また建て直すということを繰り返してきた。しかし、限りある資源を大切に使わなければならない時代になり、従来の思想とや
り方は限界に来ていると誰もが感じている。首都大学東京の建築学専攻では、こうした観点から、多摩地区の人口構造の変化で不要になった小学校を、地域で活かして使う方法なども研究・提案している。「今後は、集合住宅を画期的に甦らせるような設計をしてみたい。個々の住宅について言えば、内部の設備や内装が、生活スタイルの変化に適合しうるような設計手法を、昔から一貫して考え続けています。今後も研究を深めていきたいですね」建築は社会の動きと連携しな
がら、過去・現在・未来の時間軸の中で考えていくもの。建築を通して社会を見つめ、また、『こんな住まいもよいのでは?』といった革新的な建築も提案していきたいという。
深尾研究室都市環境学部 建築都市コース都市環境科学研究科 建築学専攻
環境
研究テーマ
集合住宅の構法の研究・外周壁構法の研究キーワード
集合住宅、構法、建築構法計画、建築ストックの活用、建築生産学
研究者◎深尾精一教授連絡先◎042-677-2818
URL◎http://www.eng.metro-u.ac.jp/fukaolab/
深尾精一教授Seiichi Fukao工学博士。東京大学博士課程修了。東京都立大学教授を経て、05年より現職。
現在ある建築物を甦らせ大切に使うための研究
研究概要
古い集合住宅に新しい命を与える『階段一体型エレベータ』
最近のトピックス
皆に愛されることによって長持ちする建築を
今後の展望
古い集合住宅の時代にそぐわない部分に手を加え甦らせたい建築を皆から愛されるものにしてゆくことそれは今後の持続可能型社会における建築学の課題である
公共集合住宅の大規模改修設計案
階段一体型エレベータの試作