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住民主体での生活交通運営と生活満足度の関係性に関する研究 社会システム計画学研究室2017年度卒業研究 恒藤佑輔 研究の背景 研究の目的 岡山県倉敷市:庄新町地区 生活満足度評価指標の概要 分析結果 結論 分析対象地域と使用データ SWLS 尺度 The Satisfaction With Life Scale 設問項目 ・ほとんどの面で,私の人生は私の理想に近い ・私の人生は,とてもすばらしい状態だ ・私は自分の人生に満足している ・私はこれまで,自分の人生に求める大切なものを得てきた ・もう一度人生をやり直せるとしても,ほとんど何も変えないだろう SWLS 集計結果 運営活動への参加意向に関する要因分析 運転が困難に 不採算路線の 減便・廃止 少子高齢化の進展する社会 住民の移動手段 確保が課題 移動に関して地域コミュニティによる 助け合いの気持ちが生まれつつある 公共交通がないなら自分たちで走らせよう! 経費節減 地域の需要に合った細かい運行調整 地域のコミュニティ活力向上 「地域住民が主体となって生活交通を維持する」 という選択肢が広まりつつある 一方で、住民側は、 「運営」や「運行経費負担」を受け持つ その上で、運営を継続することは住民にとってプラスの面で寄与 しているか、は明らかになっていない 住民主体での生活交通運営を 持続可能なものにする ために重要 地域住民主体で生活交通を維持することについて 住民意識の分析を行う 地域住民の生活満足度向上に寄与するか を明らか にする 調査名 調査対象者 配布・回収方法 調査時期 配布数 回収部数 回収率 主な調査項目 「乗合タクシー」 に関するアンケート調査 375部 ●個人属性 ●「なかよし号」の利用状況 ●「なかよし号」に対する評価 ●個人の移動環境および生活に関する満足度 ●地域とのかかわり方 ●幸福感評価 倉敷市庄新町地区住民 ポスティングによる全戸配布・郵送回収 2016年12月 780部 48.0% 1970~1980年代にかけて開発が進んだ 住宅団地 各質問に対し「全くあてはまらない:1点」~「非常によく当てはまる:7点」で評価 高得点であれば幸福度が高い 各質問7点満点×5問で、得点範囲は5~35点 庄新町地区―JR中庄駅 1日7往復 1時間前までの予約が必要 運賃:片道400円 「なかよし号」 (H17年2月運行開始) 平成 17 1 に庄新町からJR中庄駅まで運行されていた中鉄バスが廃止となったため、 地元運営委員会が乗合タクシー「なかよし号」の運営 を開始した Ed Diener, Robert A. Emmons, Randy J. Larsen and Sharon Griffin as noted in the 1985 article in the Journal of Personality Assessment. 主観的な幸福感として 生活満足度をとらえる際に適 している 「住民主体での生活交通運営」と 住民の意識」の関係 なかよし号への考え 「なかよし号」への誇り 運行経費負担意識 将来的な地域での必要性 .71 .41 サンプル数 152 GFI: .839 AGFI: .801 誤差変数は除く 1% 有意 5% 有意 地域コミュニティ 充実 地域内での生活に満足 地域愛着 利用意向 今自分に必要 利用頻度 信頼 地域の住民を信頼 地域の行政を信頼 歴史文化への関心 .80 .78 .43 移動充実 買物のしやすさ 通院のしやすさ 移動のしやすさ .90 .91 .73 .75 .87 .62 ネットワーク .75 .45 隣人や地域住民とあいさつをする 地域内での友人・親類の存在 個人充実 .64 .90 健康満足度 経済満足度 .99 幸福感 SWLS得点 運営活動への参加意向 地域ボランティア活動への参加 地域の清掃への参加 活動充実 .77 .75 余暇活動のしやすさ 交流のしやすさ .40 .59 .74 .73 .48 .34 .41 .53 .52 .60 .22 .35 .47 .68 .43 .43 .44 .41 個人属性 世帯 年齢 .39 .53 規範 「ソーシャルキャピタル」 「地域コミュニティ充実」 「住民主体の生活交通運営」 「幸福感」 住民主体で生活交通を運営 することについて 直接幸福感とは結びつかない SC と関連することで、地域での生活を充実させ、 生活満足度の向上に寄与する ことを明らかにした 地域で運営している生活交通への 必要性を感じる、もしく 地域生活への満足度が高いほど、運行経費負担意識 は高まる 若年になるほど運営活動への参加意向が下がっている 運行経費負担意識向上に関する要因分析 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 そう思う(n=203) どちらでもない(n=80) そう思わない(n=24) そう思う(n=291) どちらでもない(n=13) そう思わない(n=3) 当てはまる(n=183) どちらでもない(n=108) 当てはまらない(n=16) 好きである(n=233) どちらでもない(n=52) 好きでない(n=22) 当てはまる(n=190) どちらでもない(n=88) 当てはまらない(n=29) 自動車(送迎)(n=28) 自動車以外(n=28) 自動車(運転)(n=251) そう思う(n=207) どちらでもない(n=63) そう思わない(n=37) 最も 多い 交通手段 将来的に地域 住民にとって 必要 自分たちの地 域交通と いう 誇りがある 家族の送迎 の負担を 減ら せる 地域住民を 信頼し て いる 地域内の生活に 満足し て いる 高い 低い お住いの地域 が好きですか 0.67 0.45 0.92 1.40 0.41 0.56 1.76 地域で運行経費を負担してよいという意識 「なかよし号」に対して 地域交通のとしての誇り 住民にとっての必要性 を抱いているかが大きい 地域への態度 自分や家族にとっての移 動に対する状況 も重要である そう思う -0.2756 n=307 相関比0.2973 的中率65.47% そう思わない 1.6682 軸の重心 -0.8-0.6-0.4-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 SC高め(n=157) SC中程度(n=102) SC低め(n=30) 男(n=100) 女(n=189) 70代以上(n=108) 60代(n=123) 50代以下(n=58) 知っている(n=96) 知らなかった(n=193) 満足(n=160) どちらでもない(n=84) 不満(n=45) 年齢 性別 SC 総合的な 生活の しやすさ 地域が運行経費の 赤字額1割を 負担し ていること 参加する 参加しな い 1.20 1.03 0.85 0.57 0.84 地域の住民を信頼している 0.0206 * 地域内での生活に満足している 0.0238 * 地域のボランティアに参加している 0.0000 ** 地域愛着 0.0000 ** 定住意向 0.0000 ** SWLS得点 0.0057 ** 総合的な生活のしやすさ 0.0089 ** なかよし号のサービスに対する満足度 0.0164 * 年齢 0.0024 ** 独立性の検定 **:P値<0.01 *:P値<0.05 P判定 ソーシャルキャピタル に関係する項目や、 地域愛着定住意向 との関連性が強い 若年になるほど 参加意向が低い 自分の生活のしやすさに満足しているほど 参加意向が高い 参加意向有り・運営関係者 -0.6265 n=307 相関比0.1212 的中率66.44% 0.1928 参加意向なし 軸の重心 既存研究の成果を生かし導入が進んでいる 「住民主体の生活交通」

総合的な あ しやすさseiji/img/2016tsunefujiB4.pdf総合的な生活のしやすさ 0.0089 ** なかよし号のサービスに対する満足度 0.0164 * 年齢 0.0024 **

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住民主体での生活交通運営と生活満足度の関係性に関する研究

社会システム計画学研究室2017年度卒業研究 恒藤佑輔

研究の背景

研究の目的

岡山県倉敷市:庄新町地区

生活満足度評価指標の概要

分析結果

結論

分析対象地域と使用データ

SWLS尺度※(The Satisfaction With Life Scale )

設問項目

・ほとんどの面で,私の人生は私の理想に近い・私の人生は,とてもすばらしい状態だ・私は自分の人生に満足している

・私はこれまで,自分の人生に求める大切なものを得てきた・もう一度人生をやり直せるとしても,ほとんど何も変えないだろう

SWLS集計結果

運営活動への参加意向に関する要因分析

運転が困難に 不採算路線の減便・廃止

少子高齢化の進展する社会

住民の移動手段確保が課題

移動に関して地域コミュニティによる助け合いの気持ちが生まれつつある

公共交通がないなら自分たちで走らせよう!

経費節減地域の需要に合った細かい運行調整地域のコミュニティ活力向上

「地域住民が主体となって生活交通を維持する」という選択肢が広まりつつある

一方で、住民側は、「運営」や「運行経費負担」を受け持つ

その上で、運営を継続することは住民にとってプラスの面で寄与しているか、は明らかになっていない

住民主体での生活交通運営を持続可能なものにするために重要

地域住民主体で生活交通を維持することについて

住民意識の分析を行う地域住民の生活満足度向上に寄与するかを明らか

にする

調査名

調査対象者

配布・回収方法

調査時期

配布数

回収部数

回収率

主な調査項目

「乗合タクシー」に関するアンケート調査

375部

●個人属性●「なかよし号」の利用状況●「なかよし号」に対する評価●個人の移動環境および生活に関する満足度●地域とのかかわり方●幸福感評価

倉敷市庄新町地区住民

ポスティングによる全戸配布・郵送回収

2016年12月

780部

48.0%

1970~1980年代にかけて開発が進んだ住宅団地

各質問に対し「全くあてはまらない:1点」~「非常によく当てはまる:7点」で評価高得点であれば幸福度が高い各質問7点満点×5問で、得点範囲は5~35点

庄新町地区―JR中庄駅 1日7往復 1時間前までの予約が必要 運賃:片道400円

「なかよし号」(H17年2月運行開始)

平成17年1月に庄新町からJR中庄駅まで運行されていた中鉄バスが廃止となったため、地元運営委員会が乗合タクシー「なかよし号」の運営を開始した

※Ed Diener, Robert A. Emmons, Randy J. Larsen and Sharon Griffin as

noted in the 1985 article in the Journal of Personality Assessment.

主観的な幸福感として生活満足度をとらえる際に適している

「住民主体での生活交通運営」と「住民の意識」の関係

なかよし号への考え

「なかよし号」への誇り

運行経費負担意識

将来的な地域での必要性

.71

.41

サンプル数 152 GFI: .839 AGFI: .801 誤差変数は除く

1% 有意

5% 有意

地域コミュニティ充実

地域内での生活に満足地域愛着

利用意向

今自分に必要

利用頻度

信頼

地域の住民を信頼

地域の行政を信頼

歴史文化への関心

.80

.78

.43

移動充実

買物のしやすさ

通院のしやすさ

移動のしやすさ

.90

.91

.73

.75

.87.62

ネットワーク

.75

.45隣人や地域住民とあいさつをする

地域内での友人・親類の存在

個人充実.64

.90

健康満足度

経済満足度

.99

幸福感

SWLS得点

運営活動への参加意向

地域ボランティア活動への参加

地域の清掃への参加 活動充実 .77

.75

余暇活動のしやすさ

交流のしやすさ

.40

.59

.74 .73

.48

.34

.41

.53

.52.60

.22

.35

.47

.68

.43

.43

.44

.41

個人属性世帯

年齢

.39

.53

規範

「ソーシャルキャピタル」「地域コミュニティ充実」

「住民主体の生活交通運営」「幸福感」

住民主体で生活交通を運営することについて

直接幸福感とは結びつかない

SCと関連することで、地域での生活を充実させ、生活満足度の向上に寄与することを明らかにした

地域で運営している生活交通への必要性を感じる、もしくは地域生活への満足度が高いほど、運行経費負担意識は高まる

若年になるほど運営活動への参加意向が下がっている

運行経費負担意識向上に関する要因分析

-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

そう思う(n=203)

どちらでもない(n=80)

そう思わない(n=24)

そう思う(n=291)

どちらでもない(n=13)

そう思わない(n=3)

当てはまる(n=183)

どちらでもない(n=108)

当てはまらない(n=16)

好きである(n=233)

どちらでもない(n=52)

好きでない(n=22)

当てはまる(n=190)

どちらでもない(n=88)

当てはまらない(n=29)

自動車(送迎)(n=28)

自動車以外(n=28)

自動車(運転)(n=251)

そう思う(n=207)

どちらでもない(n=63)

そう思わない(n=37)

あい

うえ

おか

最も 多い交通手段

将来的に地域住民にと って必要

自分たちの地域交通と いう誇りがある

家族の送迎の負担を減らせる

地域住民を信頼し ている

地域内の生活に満足し ている

高い 低い

お住いの地域が好き ですか

0.67

0.45

0.92

1.40

0.41

0.56

1.76

地域で運行経費を負担してよいという意識

「なかよし号」に対して地域交通のとしての誇り住民にとっての必要性を抱いているかが大きい

地域への態度

自分や家族にとっての移動に対する状況

も重要である

そう思う

-0.2756

n=307 相関比0.2973  的中率65.47%

そう思わない

1.6682軸の重心

-0.8-0.6-0.4-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8

SC高め(n=157)

SC中程度(n=102)

SC低め(n=30)

男(n=100)

女(n=189)

70代以上(n=108)

60代(n=123)

50代以下(n=58)

知っている(n=96)

知らなかった(n=193)

満足(n=160)

どちらでもない(n=84)

不満(n=45)

あい

うえ

年齢

性別

SC

総合的な生活のしやすさ

地域が運行経費の赤字額1割を 負担して いること

参加する 参加しな い

1.20

1.03

0.85

0.57

0.84

地域の住民を信頼している 0.0206 *

地域内での生活に満足している 0.0238 *

地域のボランティアに参加している 0.0000 **

地域愛着 0.0000 **

定住意向 0.0000 **

SWLS得点 0.0057 **

総合的な生活のしやすさ 0.0089 **

なかよし号のサービスに対する満足度 0.0164 *

年齢 0.0024 **

独立性の検定 **:P値<0.01  *:P値<0.05

その他

P値 判定

地域とのかかわ

りに関する設問

ソーシャルキャピタルに関係する項目や、地域愛着、定住意向との関連性が強い

若年になるほど参加意向が低い

自分の生活のしやすさに満足しているほど参加意向が高い

参加意向有り・運営関係者

-0.6265

n=307 相関比0.1212  的中率66.44%

0.1928

参加意向なし軸の重心

既存研究の成果を生かし導入が進んでいる「住民主体の生活交通」