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1 横浜・簡易BCP作成ツール 事業継続計画書 第1版 その作成方法と記載例 2014 1 会社名:○○○株式会社

事業継続計画書 - IDEC5 Ⅱ.簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の特徴 簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」は、事業継続計画書を作成するのに必要なポイントを、な

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横浜・簡易BCP作成ツール

事業継続計画書

第 1 版

その作成方法と記載例

2014 年 1 月

会社名:○○○株式会社

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Ⅰ.事業継続計画の考え方

1 事業継続計画とは

事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)とは、企業が存続していくために災害や事故などで

被害を受けても重要な製品・サービスの提供をなるべく中断させない、または中断しても可能な限り早

急に再開するように事前に取り決めておく計画をいいます。

事業継続計画のポイントとして、以下の3点が挙げられます。

「重要な製品・サービスの提供」とあるように、提供する製品・サービスの中から顧客や社会への影響

を考慮してあらかじめ優先度をつけて対応するようにします。通常時とは異なり、限られた経営資源を

利用しての活動になるので、限定的な事業の継続になります。

「中断させない、早急に再開」とあるように、被害を受けても重要な製品・サービスの提供は継続また

は早期復旧をするようにします。その際、時間とともに深刻化する顧客や社会への影響を考慮しながら、

目標復旧時間を設定します。

「事前に取り決めておく計画」とあるように、事前に重要な製品・サービスを目標復旧時間以内に再

開できるように、対策を実施し、計画を立案します。災害や事故などが起こった場合の対応方法を定

めて社員に教育して周知したり、本社が利用できないときの代わりとなる拠点を定めたりして、必要な

経営資源を準備しておきます。

2 事業継続計画の期待される効果

事業継続計画を策定することで得られる効果として期待されることは何でしょうか?

事業継続計画の考え方を表したのが図表1です。事業継続計画を策定していない場合(A)の復旧

までの操業度の推移を表したのが「現状の予想復旧曲線」、事業継続計画を策定し実践している場合

(B)の復旧までの操業度の推移を表したのが「BCP実践後の復旧曲線」です。

図表1 事業継続計画(BCP)の考え方

【内閣府防災担当(2009)「事業継続ガイドライン 第二版」より】

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(A)では災害発生後のしばらくの間、操業度がゼロないしは低い水準で推移し、復旧まで時間がか

かっているのに対し、(B)では災害発生後も目標とする操業度を超えた操業度を維持するとともに、目

標とする復旧時間までに高い操業度を回復しています。このように、事業継続計画を立て、それに従

った備えを進めていくことで、目標復旧時間内での復旧や目標操業度の維持ができるようになります。

図表2のように、事業継続計画を策定し、地震などの緊急事態への備えを進めることで、重要な事

業の継続や早期復旧が可能になります。その結果、経営の安定化や顧客などの関係者からの信頼性

の向上といった効果が期待されるのです。

図表2 事業継続計画の策定により期待される効果

3 事業継続計画と防災計画(防災マニュアル)との違い

災害や事故に対応するための計画としては、事業継続計画のほかに、防災計画や防災マニュアル

があります。防災計画や防災マニュアルは、地震や洪水など想定する災害を特定して、主に緊急事態

発生後の初動対応をする組織、方法などを定めています(図表3)。

図表3 防災計画や防災マニュアルで定める範囲

地震地震新型インフルエンザ新型インフルエンザ

津波・洪水・ゲリラ豪雨津波・洪水・ゲリラ豪雨

火災火災サイバーテロサイバーテロ

緊急事態発生

BCP作成

事業の継続、早期復旧が可能

★経営の安定化

★顧客など関係者からの信頼性向上

時間緊急事態(大規模地震)

発生

完全復旧安全の確保

・避難、誘導

・初期消火

・救護

・緊急参集

・帰宅困難者対応

状況確認

・対策本部の設置

・安否確認

・被害状況の把握

応急処置

・片づけ

・破損個所の修理、手配

・建屋の安全確認

仮復旧

・一部製品の出荷の実施

・一部製品の生産の再開

・全製品の出荷の再開

主に防災計画や防災マニュアルで定める

主に防災計画や防災マニュアルで定める

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防災計画や防災マニュアルと事業継続計画の違いを一言で述べると、前者は主に人命の安全に関

わる対策を,後者は主に事業継続のための対策を定めている点にあります。

図表4では、両者の違いをまとめています。

防災計画や防災マニュアルでは、「人命の安全確保」のため、避難方法や二次災害の防止方法な

どを定めます。本社と工場では人命の安全に関わる危険が異なりますので、「本社防災計画」や「工場

防災マニュアル」のように拠点単位で作成されます。また、目標とする復旧時間は定めません。人命の

安全確保や二次災害の防止を図り、なるべくダメージを小さくすることで、できるだけ早く復旧しようと

考えます。平常時の活動としては、防災訓練の実施、避難経路の安全確認、安否確認訓練などが行

われます。

一方、事業継続計画では、「人命の安全確保」だけでなく、重要な製品やサービスの供給の継続、

早期復旧をするための方法、対策が定められます。このため、事業継続計画の検討対象には重要な

製品やサービスの供給に関わりのある部署、社外の仕入先や業務委託先などを加える必要がありま

す。また、あらかじめ目標とする復旧時間を定め、その時間内に復旧できるような対策を検討し、実施

します。この対策には、例えば、災害により出社できる職員が少ない場合の代替要員の確保方法、情

報システムが利用できなくなった場合に備えたバックアップの実施、そのデータの保管、復旧方法が

考えられます。平常時の活動としては、防災訓練に加えて、データのバックアップの実施、代替要員の

育成などが行われます。

図表4 防災計画と事業継続計画の違い

防災計画 事業継続計画

作成する

目的

人命の安全確保、物的被害

の軽減、二次災害の防止

左に加えて

重要な製品・サービス供給の継続と早期復旧

作成する

単位

立地や耐震性、設置物など

の 条 件 が 異 な る た め 、 本

社、工場、営業所など施設

単位

重要な製品・サービスの提供に関わる一連の流

れに関わる組織。そのため、社内だけでなく社外

の仕入先、委託先なども検討対象に含める。

目標復旧

時間の設定

事前には特に定めない。 あらかじめ目標復旧時間を設定し、それまでに復

旧できるようにする。

対策の例 ・防災マニュアルの作成(避

難、安否確認、参集ルー

ル、対策組織などを定め

る)

・備蓄の準備

・耐震補強

左に加えて

・事業継続マニュアルの作成(代替拠点、データ

のバックアップ、代替手段の実施方法などを定

める)

・他社との相互支援協定

平常時の

活動

・日常の安全点検

・防災訓練の実施

左に加えて

・データのバックアップの実施

・代替手段の実施訓練

・代替要員への教育訓練

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Ⅱ.簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の特徴

簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」は、事業継続計画書を作成するのに必要なポイントを、な

るべく簡単に検討できるようにしています。

特に、以下のような目的で利用する方に適しています。

(1)については、事業継続計画の重要なポイントは漏らさず、作業負担を減らすようにしています。

(2)については、例えば、事業継続計画の策定にあたりプロジェクトメンバーを編成するような規模

の企業において、プロジェクトメンバーが事業継続計画の全体像をイメージしやすくなっています。

特に、多岐にわたる製品やサービスを取り扱う企業が本格的な事業継続計画を策定する場合、重

要な事業・業務とそれに必要な経営資源の洗い出し、災害の被害想定の設定など、実施する作業は

細かくまた莫大な量になります。事業継続計画の全体像がなかなか見えにくいため、メンバーのモチ

ベーションが下がってしまう恐れがあります。

初におおまかな事業継続計画を作ることで、本格的な事業継続計画を作成するために必要な各

作業の意味を知ることができます。

簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の特徴として、以下の点が挙げられます。

①については、事業継続計画の検討に必要な事項について、検討しながらその結果を表に書き込

んで定めていくことができます。そのため、検討した結果を改めて文章として書く必要がありません。

②については、大規模地震を想定した被害想定を初めから記載しているので、難しい被害想定の

設定をする必要がありません。「被害想定に時間がかかって、先に進めない」ことが避けられます。

③については、どの企業でも 低限必要と思われるリストが含まれています。リストには、災害発生

前に記載しておくことで災害発生後に役立つリスト(例:連絡先リスト)、災害発生後に情報をまとめるた

めのリスト(例:安否確認リスト)があります。

④については、事業継続のために必要な対策について、完了時期、責任部門を合わせて定めます。

これにより、事業継続計画書の作成中に完了しなかった対策の実施管理をすることができます。

① 文章ではなく、表への書き込み式で作成することができる。

② 難しい被害想定を初めから設定している。

③ 低限必要なリストを準備できる。

④ 時間の要する対策の実施管理ができる。

(1)小規模な企業に合った、簡単な事業継続計画を作成したい。

(2)本格的な事業継続計画を策定する前に、事業継続計画の全体像を理解したい。

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Ⅲ.簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の構成とその記載例

簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の構成は、図表5のようになっています。

また、各章で書くべき内容、具体的な作成手順、記載例については、次ページ以降をご覧くださ

い。

図表5 簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の構成

1.事業継続の基本方針

災害が発生した場合に、どのように対応するかという方針を定

めます。

2.想定する緊急事態とその被害

事業継続計画書で想定する緊急事態と、それにより経営資源

が受ける被害を想定しています。

3.重要な事業とその目標復旧時間

自社の事業(製品・サービス)のうち、復旧を優先的に行うもの

を選定し、その目標とする復旧時間を定めます。

4.想定する緊急事態の発生時に起こりうる事態とその対策

災害が発生した場合の経営資源に起こる事態と、目標復旧時

間を達成するための対策を検討します。

5.緊急時における対応の流れとその体制

事業継続・復旧のためにしなければならないこと、緊急事態発

生時の対応の総責任者と代行者を定めます。

6.教育・訓練

作成した事業継続計画書に関わる定期的な教育や訓練の項

目、その実施時期を定めます。

7.見直し計画

作成した事業継続計画書が完成後も実態に即したものである

ように、定期的な見直しをする時期を定めます。

8.各種リスト

多くの企業で作成が必要と考えられる、災害発生後に参照す

るリスト、情報をまとめるためのリストを載せています。

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1 事業継続の基本方針

大規模地震が発生した場合に、どのように対応するかという方針を定めたものです。

社員や来訪者の安全を確保する観点、事業をどのように継続するかという観点を挙げてい

ます。その他、必要に応じて、地域貢献に関する観点などを取り入れます。

青字は記載例

2 想定する緊急事態とその被害

事業継続計画書で想定する緊急事態と、それにより経営資源が受ける被害を想定しています。本

「簡易BCP」では、拠点(本社、工場、営業所など)の横浜市において震度6弱の大規模地震(津波被

害はなし)の発生を想定しています。作業を簡略化するために、経営資源ごとのおおまかな被害想定

を 初から設定しています。

緊急事態には、地震、洪水、津波といった自然災害、新型インフルエンザなどの感染症の流行、火

災や爆発事故、サイバーテロなども考えられます。今回は、要員(従業員)、建物や設備、情報及び情

報システム、ライフライン(電気・水道・電話)といった、さまざまな経営資源に大きな被害を与える大規

模地震の発生を想定しています。

拠点の立地する場所によっては、地震の発生とともに、津波、液状化現象、火災の恐れがあります。

横浜市のホームページ(http://wwwm.city.yokohama.lg.jp/)にある「わいわい防災マップ」を利用する

と、想定震度・液状化危険度など防災に役立つ各種情報を得ることができます。

1.事業継続の基本方針

当社は,以下のような方針で事業継続を行います。

安全確保の観点

社員や来訪者の安全を 優先として、二次災害の防止などの防災

対策を進めていく。

事業継続の観点

●●製品の製造、出荷を目標復旧時間以内に必ず再開し、事業を

継続することを 優先とする。その他の製品についても、可能な限り

早急に再開するようにする。

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なお、上記の経営資源の被害想定については、前述の「わいわい防災マップ」の想定震度や浸水

予想などをもとに修正して構いません。浸水が想定される場合には、より被害は大きくなると考えられま

す。

また、「電気・水道・電話」の「電気7日程度、水道 7 日程度、電話回線 3 日程度、利用できない」の

箇所については、適宜、短い期間の想定にして構いません。「想定が厳しすぎるために、有効な事業

継続計画を立てられないので、そもそも計画の策定自体をやめてしまう」のであれば、想定の見直しを

します。

2.想定する緊急事態とその被害

当社は、以下のように緊急事態とその被害を想定する。 想定する緊急事態 大規模地震(横浜市内で震度6弱:津波なし)

経営資源 想定する被害

要員

(役員、社員、パ

ート社員など)

業務に携わる要員が不足してしまう

負傷、交通機関の麻痺等により、役員・従業員の 40%が7日間出社

できず、8日目におおむね全員が出社する。

建物

耐震性が高い場合(1982 年以降に建設、または耐震補強済み)

壁や柱などにひび割れ・亀裂が入るが、引き続き利用可能。

耐震性が低い場合(1982 年以前に建設、かつ耐震補強未実施)

壁や柱などに、ひび割れ・亀裂が多く入り、利用不能。

設備 設備が利用できない。

固定していない設備、什器、備品が転倒し、破損する。

情報・システム 固定していないデータサーバーが転倒し、破損する。

図面や取引データなどを喪失してしまう。

資材・協力会社

材料や商品、資材などが調達できない。

資材の調達先や協力会社が近隣にある場合、被災し調達が困難に

なる。

電気・水道・電話

電気・水道・電話回線が利用できない。

電気7日程度、水道 7 日程度、電話回線 3 日程度、利用できない。

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3 重要な事業とその目標復旧時間

限られた経営資源、限られた時間ですべての事業、業務を対応することはできません。自社の事業

(製品・サービス)のうち、優先的に継続、早期復旧を行うものを選定します。

優先度を決めるにあたり、取引先、行政、社会といった社外への影響、自社の売上、資金繰りといっ

た社内の影響で大きなものは何か、検討します。社外への影響については、行政との協定、取引先と

の契約内容、法規制などの有無を、社内の影響については、他社に切り替えられて取引がなくなると

きの影響を考慮します。

目標復旧時間を決めるにあたり、事業が中断すると、時間の経過とともに、社会的な信用の低下や

顧客離れがどのように起きるのかを加味します。影響の深刻度が大きくなるにつれて、小→中→大へ

と変化していきます。目標復旧時間は、影響度が「大」になる前に設定するようにします。

なお、事業(製品・サービス)の分け方ですが、製造業の場合、次のように考えられます。

(例1) 事業や提供する製品・サービスで分類する。

新製品開発、既存製品の製造・販売、修理サービス、校正サービス ・・・

(例2) 取引先で分類する。

A社向け製品の製造販売、B社向け製品の製造販売 ・・・

青字は記載例

3.重要な事業とその目標復旧時間

当社は、以下のように、重要な事業とその目標復旧時間を定めます。

重要な事業とその目標復旧時間 ① 各種製品の修理サービス 5日以内

② 検査治具の製造・販売 10 日以内

③ 各種製品の校正サービス 10 日以内

(試験機製造業の場合)

事業

(製品、サービス)

提供できなくなった場合の

影響(大・中・小) 影響の深刻度(大・中・小)

目標復旧

時間 顧客や社会

(生命に関わ

るなど)

自社

(利益、資金

繰りなど)

24 時間

以内

72 時間

以内

1 週間

以内

1 ヶ月

以内

1 ヶ月

A製品の設計・

製造・販売 中 大 低 中 高 3 週間

B製品の

製造・販売 中 中 低 中 高 3 週間

検査冶具の

製造・販売 中 小 低 中 高 10 日

各種製品の

修理サービス 大 中 低 中 高 5 日

各種製品の

校正サービス 大 中 低 中 高 10 日

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建設業の場合、次のような事業(製品・サービス)の分け方が考えられます。

(例) 実施する工事・サービスの種類で分類する。

新設工事、改修工事、修繕工事、協定に基づく安全確認 ・・・

管工事、給排水衛生工事 ・・・

青字は記載例

小売業・卸売業・サービス業の場合、次のような事業(製品・サービス)の分け方が考えられます。

(例) 事業や提供する商品・サービスで分類する。

新車販売、中古車販売、修理、定期点検、保守パーツ販売 ・・・

システム開発、保守サービス、ソフトウエア販売 ・・・

店舗での販売、通信販売 ・・・

青字は記載例

(自動車ディーラーの場合)

事業

(製品、サービス)

提供できなくなった場合の

影響(大・中・小) 影響の深刻度(大・中・小)

目標復旧

時間 顧客や社会

(生命に関わ

るなど)

自社

(利益、資金

繰りなど)

24 時間

以内

72 時間

以内

1 週間

以内

1 ヶ月

以内

1 ヶ月

新車の販売 小 大 低 中 高 3 週間

定期点検 中 中 低 中 高 5 日

修理 大 中 中 高 2 日

保守パーツ販売 大 小 中 高 2 日

(建設業の場合)

事業

(製品、サービス)

提供できなくなった場合の

影響(大・中・小) 影響の深刻度(大・中・小)

目標復旧

時間 顧客や社会

(生命に関

わるなど)

自社

(利益、資金

繰りなど)

24 時間

以内

72 時間

以内

1 週間

以内

1 ヶ月

以内

1 ヶ月

施工中の工事 小 大 低 中 高 2 週間

応急工事 中 中 低 中 高 3 日

協定に基づく

緊急対応 大 小 中 高 2 日

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4 想定する緊急事態の発生時に起こりうる事態とその対策

「Ⅱ-3 重要な事業とその目標復旧時間」で設定した、重要な事業の目標復旧時間を達成するた

めの対策を検討します。

まず、「Ⅱ-2 想定する緊急事態とその被害」をもとに、想定する緊急事態(南関東地震)が発生し

たときに、どのような事態が起こるのか、自社の経営資源ごとに①の「起こりうる事態」欄に記載します。

次に、その事態が起こった時に備えてどのような対策をとるのかを、②の「その事態への対策、対応

方法」欄に記載します。対策には、経営資源の被害を軽減するためのもの、経営資源が利用できない

場合を想定した代替策(代わりの要員、代わりの施設、代わりの設備、代わりの方法など)を検討し、記

載します。すでに実施済みのもの、すぐには実施できないものも記載していきます。

それぞれの対策・対応方法について、すでに「対応済」なのか、対応時期が「1年以内」、「3年以

内」、「時期未定」とするのかを検討し、「実施時期」欄の該当箇所に○をつけます。「1年以内」に実施

する対策には、書類棚の転倒防止対策や重要なデータのバックアップといった、それほど手間やお金

のかかない、また効果の高い対策を選択するとよいでしょう。

それぞれの対策・対応方法が必ず実行されるようにするために、実施する部門を検討し、「担当部

門」に記載します。そして、関連する文書があればそれを「関連する文書」に記載します。

青字は記載例

4.想定する緊急事態の発生時に起こりうる事態とその対策

当社は、緊急事態の発生時に備えて、以下の対応をとるとともに、段階的に整備しま

す。

起こりうる事態 そのための

対応方法

実施時期 担当

部門

関連する

文書 対応済1年

以内

3年

以内

時期

未定

社員の安否がわから

ない

安否確認システムを利

用する ○ 総務部 ―

帰宅困難者が発生

する

非常食、水の備蓄を確

保する ○ 総務部

備蓄品

リスト

社長や部門長が不

在で連絡がつかない 代行者を定めておく ○ 各部

代行者

リスト

出勤可能な社員が

通常時よりも少ない

多能工化を進めて対応

できるようにする ○ 各部 ―

協定する他社からの応

援要員を利用する ○ 製造部 ―

: :

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5 緊急時における対応の流れとその体制

緊急事態発生時の対応の総責任者(通常は経営者)とその代行者を決めます。また、本社が被災し

た場合の代替拠点を定めます。

初動対応、事業継続・復旧のためにしなければならないことを記載していきます。そして、それぞれ

に担当部門を決めます。

関連文書の欄には、詳細な手順を記載したもの(防災マニュアルや緊急連絡網など)、参考にする

帳票(各種チェックリストなど)を記載します。

青字は記載例

5.緊急時における対応の流れとその体制

当社の被災時における対応の流れとその体制は,以下のとおりとします。

全社対応の総責任者 社長 (代行) 専務取締役

本社被災時の代替拠点 ① ○○工場 ② △△営業所

地震発生当日~(初動対応)

対応の流れ 担当部門など 関連文書

身の安全の確保,地震情報の収集,安全措置

(緊急停止等) 各人で対応する 防災マニュアル

初期消火,火災時の通報 初期消火担当 〃

負傷者の救出救護 救出・救護担当 〃

二次災害対策の実施 店舗(店長) 〃

建物・周辺の安全確認,安全な場所へ避難誘導 避難・誘導担当 〃

従業員,家族の安否確認 総務部 〃

緊急連絡網

被害状況把握,施設・設備の点検 総務部 被害状況チェックリスト

顧客・協力会社の被害状況把握と被害報告 購買部 -

: : :

地震発生から数日以降(復旧活動)

対応の流れ 担当部門など 関連文書

施設・設備・データの復旧 総務部 -

資材会社の被害状況、把握必要資材の調達 購買部 -

従業員の家族への援助活動 総務部 -

: : :

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6 教育・訓練

作成した事業継続計画書に関わる定期的な教育や訓練を実施する時期を決めておきます。定期

的な教育や訓練をすることで、いざという時に事業継続計画書のとおりに対応できるようにします。

事業継続計画書で定めた様々な対策のうち、例えば、従業員の安否確認や自家発電機のように、

普段は実施や利用しないものについて、その方法を教育し、実際にやってみることが大切です。

この教育・訓練は定例の実施のほかに、新入社員入社時などに随時、実施します。

青字は記載例

6.教育訓練計画

当社は、防災対策や事業継続に関する以下の教育や訓練活動を行います。

教育・訓練の名称 その目的 実施時期

事業継続計画の説明 事業継続計画の概要,変更点を周知する 毎年 8 月

避難訓練の実施 避難計画や避難経路図をもとに安全に

避難が実施できるかを確認する 毎年 9 月

安否確認訓練 あらかじめ決めた方法を確認する 毎年 4 月

緊急参集訓練 休日にあらかじめ決められた拠点へ参集す

ることができるかを確認する 毎年 3 月

: : :

※ 上記の教育訓練は定例の実施時期のほかに、新入社員入社時などに教育を行います。

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7 見直し計画

作成した事業継続計画書について、定期的な見直しを実施する時期を決めておきます。定期的な

見直しをすることで、実態に即した事業継続計画書にします。

事業継続計画書を変更しなければならない事態としていくつか考えられます。例えば、「4.想定す

る緊急事態の発生時に起こりうる事態とその対策」で「1年以内」に対応予定とされていた対策が実施

された場合、「5.緊急時における対応の流れとその体制」の責任者が退職した場合、組織変更があっ

た場合などが挙げられます。このような事態が起こり、実態と事業継続計画書が合致しないということに

ならないように、少なくとも年1回は計画書の見直しをしましょう。

青字は記載例

7.見直し計画

当社は、以下の頻度で「事業継続計画」の内容の見直しを行います。

定期 1 年に 1回( 3月)

不定期 緊急時の各担当者の退職や設備等の導入・廃棄などの変更が発生したときなど

事業継続計画書

事業継続計画書発行時

事業継続計画書

改訂版

見直し後

実態とのかい離の修正

事業継続計画書発行後に、

・ 各種責任者の退職

・ 実施予定だった対策の完了

・ 組織変更

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8 各種リスト

以下の各種リストは、多くの企業で作成が必要と考えられるものになります。すでに別の様式で作成

済みであれば、そちらをご使用ください。また、不要なもの、追加で必要なものがあれば、適宜、追加、

削除をしてください。

青字は記載例

青字は記載例

リスト2 備蓄品リスト

備蓄品名 必要量 更新時期 購入済み 保管場所

: : : □ :

携帯用ラジオ

(電池2回分) ●台 — ■ 総務部

非常食料 ●食 *年*月 ■ 倉庫

飲料水(1人1日2ℓ) ●本 ×年×月 □

: : : □ :

リスト1 連絡先リスト

連絡先名 担当者名 電話番号・FAX番号・メールアドレスなど

●●●(株) ○○課長 ℡ ***-***-**** FAX ***-***-****

******@****.co.jp

▲▲▲(株) △△ ℡ ***-***-**** FAX ***-***-****

******@****.co.jp

◆◆◆(株) ◇◇ ℡ ***-***-**** FAX ***-***-****

******@****.co.jp

: : :

※連絡先には、顧客、資材仕入先、協力会社、設備やシステム会社、金融機関、ライフライン

事業者、公共機関、病院などを記載します。

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青字は記載例

青字は記載例(緊急事態発生後に記入する)

リスト4 安否確認リスト

氏名 所属 役職

安否確認

(確認後に

レ点)

出勤可否

(可能なら

レ点)

備考

●●●● 製造部 部長

★★★★ 購買部 部長

▲▲▲▲ 営業部 部長 □ 家族とともに避難

所へ避難している

■■■■ 総務部 部長

◆◆◆◆ 総務部 課長 □ □

▼▼▼▼ 総務部 □ 公共交通機関再開

まで出社不可能

: : : □ □ :

リスト3 緊急参集リスト

氏名 所属 役職

緊急参集の

必要性(必要

あればレ点)

緊急

参集地 緊急時の

役割

●●●● 製造部 部長 工場 製造部の指揮

★★★★ 購買部 部長 工場 購買部の指揮

▲▲▲▲ 営業部 部長 本社 営業部の指揮

■■■■ 総務部 部長 本社 災害対策本部の

設置・運営

◆◆◆◆ 総務部 課長 本社 災害対策本部の

設置

: : : □ : :

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Ⅳ.最後に

簡易BCP作成ツール「事業継続計画書」の作成作業はいかがだったでしょうか。

事業継続計画は「一度作成してしまえば終わり」というものではありません。事業継続計画に定めた

災害への対策の進行を反映した事業継続計画に書き換えていく必要があります。また、訓練を実施す

ることで、様々な課題を見つけることができます。出てきた課題に対応することで、よりよい事業継続計

画になっていきます。

事業継続計画の検討を進めると、もっと決めておきたいことが多く出てくるかもしれません。「それら

が全部決まってから事業継続計画を社員に配ろう」とするのは、あまり良くありません。 初から完璧な

計画を作ろうとせず、まずは作った事業継続計画に基づいて対策を進め、訓練を実施しましょう。