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日本
傳
染
病
學
會
雑
誌
第
十
六巻
第
十
二號
昭和
十
七年
九月
二十
日
原
著
及綜
説
輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
(第
十
五
回
日
本
傳
染
病
學
會
特
別
講
演)
東京帝國大學教授、傳染病研究所所員
醫學博士
長
谷
川
秀
治
緒
論
此
の論文は余が多年化學療法
の研究
に從事
して居
る内特に
或
る種の化學療法剤
の作用機轉
に關す
る部分
の
みを
纒めて、
一部は
綜説的に述
べ、之
に
教室員
東
風、矢部、宮村、佐竹、佐
々木、河野、藤井、小泉等
の諸君及び
余
の研究
主宰
に係
る財團法人化學療法研究
所
の
篠
塚氏
の業蹟
竝に共六同
研究等
を附加
して、昭
和十
六年
四月、日本傳染病學會總會
に於
ける特
別講演
及び傳染病
研究
所集談會、
血清學免疫學會談話會等に於て述べた
内容
の夫
々を總括
して此處に記載
する次
第であ
る。
抑
々化學療法
とは病原性ある下
等寄
生動植物が
高等動物
の髄
内に於て蓋起せ
る疾患
に於て、夫
々の病原體に特異的に作用
して、そ
の
病原
性を減弱又は絶滅
ぜ
しむ
ろ、
ある種
の
化學藥品を
使用
して、そ
の
疾患を
治療す
る
方法
を
云ふの
で、
化學療
法は血清療法
に對應す
る意義を有す
るも
のであ
る。
化學療法に於て用ひら
る
ゝ物質は
一般的に本質
の明
かな
るも
ので
化學的
に合
成
されたも
のか、又は植物より得ら
るるも
のであ
るに反し、血清療法
に於て用ひら
る
ゝ物質は現代
の化學に於け
る意味に於ては、純粋な物質に非す
して
常
に生物
學的方法
により
てのみ得ら
る
ゝも
のであ
る。病原微生物は原蟲類、
細菌類
、(之
を球菌類
と桿菌類
に分
つ)、リケッチア類及び濾渦性病原體
との四種
に分
つこ
と
が出
來、今
日まで
の化學療
法に於
て成功
したものは、
近年
まで主
として
原蟲類
に限られた
るか
の感
があ
つたも
のである。
即
ち
一九
一〇年
Ehrlich
泰
の
Salv-
arsanを初め
として、睡眠病に對する
Germanin,Kala-azarに對す
る
Antimon
製剤
で
あ
る
Fuadin
及
Neostibosan
等があ
る。
一九
一五年
Rogersに依
つて
Antimon
製剤が
Kala-azar
の病原體である
Leishmania donovaniiに對
して治
長谷川=輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
八六七
Shuji H
assegawa
2
長谷川=輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
八六八
效作
月があることが
發見されて以來、漸次改良
せられて、
一時は九八%は死亡
す
ると言はれた同病
も今
日は實
に
九八%
の治癒
率を示すに到
つた。殆んど必ず
死
ぬ病氣が必す
助か
るといふ境
城にまで科學
の
力で治療が進歩
した澤で凡らく
化學療法研究
の最高峯
の数果であ
ろう。偉效
を奏
す
ると言はれた
Diphtherie血
清
の發見
に依
つても、
六六〇%
の死亡率が二四%に減
じたに過ぎなか
つた。
後述
の
Sulfapyridin
の發見
に依
りて、
二四%
の肺炎
の死亡率は三%に低下
した
の
と比較
して、化學療法
の偉效
を奏す
る事は驚
くばかりであ
つて、
如何に
化學
療法
の研究が醫學
の研究
部門
に於
て大切な
る
役割
を勤
めるかゴ
判
る
次第
で
あ
る。又癩
に對す
る
大風子油も
化學療
法
と見るべきで
あり、
イラリヤに
對
す
る
Chinin及
その誘導體竝
に
Atebrin,Plasmochin
アメーバ
赤痢
に對す
る
Emetin
等、久
しい問、大部分
の化學療法剤は殆んど原蟲類に限られた様
にも
感ぜられ
て居たが、突然、一九三五年、猫逸
の
Domagk
が
Mietzsth
及び
Klarer等
の化
學者
との
共同研究
に
於
て4Sulfonamid-2,4-diaminoazobenzol即
ち
Prontosni
が溶
血性連鎖状球菌
の感染
に對
して
化學療法剤
として卓效
あることを發表して
以來、
一時全く行詰
りにな
つて居た様
に思はれてゐた化學療
法
の
研究は俄然活
氣を帯び
るに到り、今
日全
世界
に於て微に入り細に渉
る
業蹟が現
はれ
るに至
つ
た。
余は主題
の如く輓
近化學療法剤
としては、
主
として此の
Prontosil及
び
Sulf-
onamid剤
を中
心とし
て専らそ
の作
用機轉
に關す
る
研究を述べらる
心算
である。
この物質程精密
にその
作
用機轉
が
研究
された
化學療
法剤
はない
様
に考
へられ
る。
尚余は近藤博士竝
に多
くの共同
研究
者と共
に多年
の間、防巳科植物中
に
含有
せ
ら
ろ
ゝ
Biscoclaurin型
の蠣
基類が、
モルモットの實
験
的結核に
對して化學療法
的治效
作用あることを屡
ゝ報告
した。そ
の作用機轉に關
しては學會に於ては
同
時
に述
べた
のであ
るが
都合
で記載
は
「結核
の化學療法に關す
る研究
長谷川秀
治編」
に譲
るこ
ととした。
順序
として、Sulfonamid剤
の發見
の経路
等に就
て述
べて見
やう。
一九
三三年猫逸
の
Dusseeldorf
の皮膚科
學會
の
月例會
の
席上
に
於て、
Dr.
Foersterが
「重篤なる腹
膜炎
を合
併症
とせる敗
血症
の
Streptozon
による
治癒
と題
して次
の様な事實
を報告した。
即、生後十
ケ月
の小児が
三ケ月前
から
腹膜炎
に罹り、病勢は日
にく
増悪
し、
敗血症
の症状を件
つて來た。
血液培養
葡萄状球菌
++
一般症状は日
に増し悪化し、總て
の治療は無数
に帰
し、患児
は死
に頻
して來た。
そこで
Streptozon
の錠剤
を半錠宛
日に二同投與
した
ところが、そ
こに驚歎すべ
き症状
の轉同が現はれた。郎ち四日
の後には解熱して體温
は平熱
に下り
體重は
増加し始め、
Hamoglobin
は二
二%から四二%に上昇し、一般
状態
は良好
となっ
た。そ
こで藥剤を
一寸
一時中止
して
三週間又與
へた、とい
ふ
演説
であ
つた。
丁度
そ
の時、座長を
していた
Dr.Schreus
が追加
をして次
の様
に述
べた。即
ちStrep
tozon
といふ藥剤
は最
近自分
もI.G.色素
工業
曾社から
手に入れた。今
のお
話
で
は既
に頻死
の状態
に隔
つた小見
に試みた所が患者には直ち
に
数
果が現はれた
とい
ふ話であ
るがStreptozon
は寧
ろ連鎖状球菌に
對して
使用さ
る
ゝこ
とをお
薦
めす
る次第であ
る」と述
べた。この簡單な
る報告が、やがて後に現はれるPron
tosilとして現代
の醫學界
に於て最大
の發見
の前騙報告をなしたも
のであ
る。而
も興味
のあ
るこ
とはその效
能書
には連鎖状球菌
に射する
特效藥
とい
ふことにな
つて
ゐるのに
最初
の
報告が萄萄状球菌
に
對
して数
いたと
報告
されたこ
とであ
る。次で
一九
三四年
Grutzは
(Zentralblatt.f.Haut u.Geschechtskrankheit.,
49,300,1934,及
び
Med.Klin.30:52,1934)Erythema
にProntosil
を應用して
好結果を得
たことを報告
し、同年VeilはProntosil
を用
ひてRheumatismus
3
を治療して良效
果を得
たと
報告して
ゐる。そ
の
後
丹毒
及び連
鎖状球菌
に
よ
る
Empyemaに對して良
結果を及ぼ
すといふ
報告等が出てい
る
中に、
一九
三五年
二月十
五日發行
の
Deutsuch.Med.Wochenschrift
に
I.O.Elberfeld
研究所化
學療法部主任
Gerhard Domagkの有名なる
論
文〃細菌性疾患
の
化學療法
に關
す
る知見補遺"
と題す
るも
のが記載され、
その
全貌
が明
にされて近代醫學
に於
ける
一新
紀元とな
つた澤
であ
る。
こ
の論
文に於
ては
Domagkは次
の様
に述
べてい
る。即ち
Prontosil
は比較的毒
性
の尠い赤色
の藥剤
であつて、
二十日鼠に経口的
に少
量に與
へる
ときは溶
血性
連鎖状球菌(以下溶連菌
と略記す)の感染
を防禦す
るも
ので、又家兎
に
於ても慢
性
の溶連薗感
染を治癒
せしむるも
のであ
ると言
つた。
この藥剤は
肺炎墾
球菌又
は他
の菌
の感
染
には何等
の作用なく、只家兎
に於け
る葡萄状球菌感染
に對
して、
精
ゝ良好な
る影響を及ぼすも
のであ
ると述
べた。
こ
の二十目鼠に於ける
實験は
特
に興味
の深
いもので
あつて、
一九三二年
のクリス
マスの寒
い時
に行
はれたも
のであるが、
一匹の弊
死動
物をも出
さずし
て
一〇〇%助か
るとい
ふ
美事な成績
であ
つた。之は吾
々も屡
ゝ追試
して見たが實
に
立派な成績を得
るも
のであ
る。
尚
Domagk
はそ
の作用機轉
の説明に於て次
の様
に
述
べた。郎ち〃Prontosil
は
組織内
に於
て病原體
に對
して、直接作用す
るも
のであ
ろか、又は
間接
に作用す
るものであるかは當時
未だ決定す
るには到らない。只興味深
いことは
Prontos
il`
は試験
管内
に於ては連
鎖状球菌
に對
しても、葡萄状球菌
に
對しても、何等
の作
用をなさない。生體内に於てのみ
作用す
る眞
の意味
の化學療法剤であ
る
〃と述
べた。此
の時
の
Domagkの考
へでは、試験管内では全
く作用
はないが、
生體内
で作用
を
現はす不可思議
なるも
の
と考
へたので
あるが、後述
する
様
に、確
に
Prontosil
は試験管内
とか或
は
Slide cell cultur
e法
にて全
血液内
にては殆
んぜ
作
用を現はさな
いで體内
に於て
現す
のである。色
々研究
の結
果
Prontosil
は體
内に於
て分
解されて
Sulfonamidとなり此
の
物質
が作
用本態で
あることは後で
説明があ
る、
尚、同
じ難論
に直ぐ引績いて
Prontosil
の溶
連菌感
染に於ける
三編
の臨
牀報
告.
が
なされて
ゐる。Kiee及Romerは種
なの化膿性疾患
に於て非常に有数
であ
る
が、
亜急性の細
菌性
心臓内膜炎及
び、
チ
フスには
無数であ
つたと報
じて
ゐる。
そして何等
の副作
用も認
められない
とい
ふ。Schreus
及び
Anselmの論文
も夫
々色
をの化膿性疾患
に極めて有数なり
とい
つて
ゐる。
是等
の臨牀報告を始
めとして、今
日無数
の
臨牀報告がなされてゐ
るといふ喜
ば
しい現
状であ
る。
一方
Prontosil
が
世の中
に出る迄
の
経緯
を追及して見
ると、
既
にSulfonamid
は染料が繊維體
と直接
に化學的
に
結合
するもので
あるかとの
疑問に端
を發して、
一九〇八年
Gelmo,P.(J.prakt.Chem.77:369,1908)
によ
りて
Acetsulfanil chlorid
に
Ammoniaを
作
用させて、合成
され
次
で
翌年、
Horlein,Dressel
及
Kothe(I.G.Farbenindustrie
)等によりてsulfonamid
を持
つた
アゾ色素
及
Sulfonamid
置換體
が作
られた。
その頃
の彼等の目的
は前述
の如く
織
物を染色す
るにあ
つた
ので逡
に、
Azo-sulf-
onamid化
合物
は
Sulfonamid
を持たざ
る化合物に比較
して洗濯等
に對
して非常
に色
の持
ちが良
いとい
ふことを發見
して
ゐた。事實是等
のも
の
、性質
は毛質
の
蛋白
細胞
と色素
との箸接な
る結合をな
さしむ
るに役立
つも
のである。
人類社會に偉大なる貢獄をなす
物質も今吉
三十年前には染物屋の藏の中に藏
び込まれてゐた澤であ
る。
次で
一九
一七年
Jacobs及
Heidelberger(J.Amer.Chem.Soc.39:2418.1917)
は
Celmo
の
方法
に
從
つて、p-Aminobenzol-sulfonamid azo-hydrocuprein
を合
成
して・之
が試験管内
浜
て強力な
る
殺菌力があると報告
したのみで、後
の研
究
が綾
かす
にそ
のま
ゝに消
えて
しま
つた。
長谷川=輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
八六九
4
長谷川=輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
入七〇
そ
の
後
一九二〇年
に
は
Prontosil
の
盤
基形
な
る
心。2-4.
Diamino-zzobenzol.-4
sulfonamidをI.G.か
ら英國
の
Patent No. 149428,
を
請願
して
獲得
してゐ
る
が、
一九三五年
まではそ
の公告
に於ても詳細な
る事が書
かれて居なか
つた。
如斯
I.G.は古
くから、
この方面
の研究を績けて
ゐたが、尚
醫學界
に
出現す
る
には到らな
かつた。次で
一九
三〇年頃までは
I.G.では專
ら無機
の化合物、即
ち
金、
ア
ンチ
モン、錫等
の化學療
法的償
値に就て實験
を進めて來た。
一九
三〇年に
Mietzschが
Atebrin
の合成
に成功
してから、
Prontosil
の合成
の出來る前
に
Klarerと
Mietzsch
は
Sulfonamid
基
をも
つた
>N0色素を見出
して心
之が連鎮状球菌に有数
であることが判明
して居た。
Prontosil
の合成された月日は精
細には不明
であるが、兎
に角
一九三二年心十二
月ご十
五日に猫逸
の特許局は
Mietschと
Klarerに
對して、
Prontosil
のみな
らす
Sulfonamido
基を有する
Azo色素
の数
種に對して之を
受付、
この特詐
は
一九三四年十
二月十
二日公告
となり、
一九
三五年
一月二日に決定
し
二月十
五日
發表
してゐる。
次
で
一九三五年七月
四日
に
Domagk(Domagk Augewaudte Chemie 48:657,
1935)は、Konigsberg
αni
に於て、Prontosil
の實験的又は臨牀的研究
を發表
すると
同時に心Prontosil solubile(Dinatriumsalz der 4'Sulfonamido-phenyl azo-1 oxy
7-acetylamino-naphthalin-3.6.disulfonsaure)
を發表し、Prontosil
と同じ
作用が
あると述
べた。
猫逸
に於て、こ
の研究が發表され
るや、
國際的色
彩を濃
厚におびた
科學
の研究
戦が直ちに展開された。
この時、逸早く
濁逸
の文獄
に非常な
る
注目をしてゐた
のが佛國
の
Constantin
Levaditi
教授であ
つた。
一九三五年
四月初め
に
Levaditi
は
I.G.の
Bendaに宛て
ゝ、Prontosil
を實験
に
供
したいから貰
ひ度い
と正式
に申込
んだ。その結
果I.G.Horleniと
Pasteur
研究
所のFoureau及化學
工業
のRhone-Pouleue
商會
の
代表者達
との間
に會
議が開
かれたが、途
に物分れ
とな
つて、Prontosil
の佛
國移入は失敗に帰した。
一九三五年五月
六日に
Levaditi
及V
aisman(Compt.rend.Acad.d.Sc.,200,
1694,1935
)は
Academie des Sciences
の會合
に於
て
Uoma
gk
の報告
に
あ
る
Prontosilと同じ物質
炬
Girard
により
て合成す
ることが出來
て、そ
の溶連菌
に
對する作
用も確
むることが出
來、之
を"
Rubiazol"
と命名した
ことを報告した。
此所で面自
いことは既
に
一九
三四年
六月
二十
一日附にて、I.G.會
社に對し佛國
の
Patenet No.766.081
を與
へてるに拘
はらす濁逸國より
Prontosil
を入手出來
な
いことに刺戟
されて勇敢
にも、之を
合
成した事
であ
る。
この特許侵
害は後
日
醫藥
に對
しては
Patentを許
さす
といふ佛國
の特許法
に
照して合法的
と認
めら
れた。
一九
三五年
の末
には佛
のTrefoual,J.,Trefouel,J.,Trefouel,Mrue, J.,Nitti
及
Bovetの四
氏
は研究
を
一歩進
めて
Prontosil
の化學構造式
と
連
鎖歌球菌感
染治数力
との關
係
を吟味
し、重要な
る事項を發見
した
のであ
る。即ち氏等は
Prontosil
の
Benzol
核
に、Sulfanamid
基を有しない
Azo化合膿は数果を
有
しな
いこと及び
Sulf-
onamid基を残存
せしめて、おくならば他
の基は之
を置換
するも效
果に殆
ど變化
を來さないこ
とを認め、か
ゝる事實よりして
Prontosil
は動物
の體内に
於
て破
壌
せられて
p-Amino-benzolsufamid(Sulfonamid)
に
變牝
して
有数
に作用す
るも
のであらう
との推定を抱き、Fourneauにより作
られた
Sulfonamid
を用びて二
十日鼠及び家兎
の實
験的連鎖状球菌感染
に就て、そ
の治療效果
だ
確めた所が果
して
Prontosil
と全く同様な
る数果を有す
るこ
とを
立證し
Azo結合
は
不必
要
な
ることを明
にした
のである。
同時
に又之は
比較的單純
なる有機化合物が
實験的連鎖歌球菌感染
に於
る化學療
法剤
として有效
なり
とい
ふことを示
した極めて重要な
る事實
であ
つた。
5
此
のTREFOUEL
一門
の研究
成績
は佛國
の
Goissedet,Despois
及
Gailliot
英國
の
Coebrook及
Kemy
及び
Buttle,Gray
及
Stephdenson
等
により
て
確認
され
た。
而して二種
の
Prontosil
が暗紅色
の「Azo」色素であ
るに反
して、Sulfonamid
は
白
色であわ、且
つ毒性が
Prontosil
r
の約四分
の
一乃至五分
の
一しかな
く
而も其
の效力は
Prontosil
に寧ろ優
るも
のがある
と言
はれてゐる。
而し
て
Sulfonamid
は前述
の様
に既
に、
三十年前
に合成
され
公知
の物質
として
何國
の特許にも抵觸す
るこ
とな
く、自由
に使
用出
來るといふ事
は、實
に
入類
の
幸
福
のために喜ば
しい現象であ
つて、Trefouel
一派
の學勲
は
Domagk一派
の功
績
に匹敵
するも
のと云はなければならない。
醫藥竝に工業化學
品剛に關す
る
世界
の國
際特
許戦は實
に近來
の科
學封鎖
の具
に供
され、科學振興立遅
れの國
に於ては惨めな状態
であ
るとき、Sulfonamid
の出現
は特
に喜
ばしい現象
である。
但し
Sulfonamid
が
Prontosil
療法
の主
役なりや、否や
といふ
問題
に關
しては
尚幾多
の意見が對立
して居
るが、大體
の形勢は
Prontosil
療法
の效
果は大部分
Sulfonamid
に負
ふ可きも
のなり
と信ぜられ
てい
る様であ
る。何れ詳細は後述す
る。
以上の様
な径路をも
つて科學研究
の
結果、世
の中に出現した
Prontosil
及
Sulf-
onamidに關して、
全世界を挙げ
て之
が研究
に浸頭
し、今日二〇〇以上
の類似
物
質が合成
されて、化學構造
と生理的作用
の關係が實
に微細
に
論
議されてゐ
る。
Protosil
及
Suflonamid
は主
として溶
連菌に對して数
果があ
るも
のであ
つて、
他
の球菌類
に對しては、充分な
る效
果は期待
出來なか
つたのであ
るがそ
の
後
全
世界
に於て、主
として
Sulfonamid
基を中
心として各種
の
化合
物が合
成せられ
今日販費
品丈けでも約
八○有
盤種
に及
び色
々の訣
點を補び效果も
原物質
より逡
に強力な
るものが出現
してい
る。そ
の結果淋菌
に封す
おも
の、葡
萄状球般
對
す
るも
の等も非常なる進歩
を途げた。特
記す
べき
は
肺炎墾
球菌に射する物
質で
あ
る。即
英國
のWhitby(Lancet,1,1210,1938)
は
一九三八
年
に到り、初め
Evins
の合成
した
込。p-Aminobenzol-sulfonamid-pyridin
を
二十日鼠
の
肺炎墜
球菌感
染
に應
用して初めて、顯
著な
る成績
を
挙げ
たこ
とを
報告
して
Prontosil
研究
に於
て濁、佛
に立遅
れた英國
としては非常
な喜
を
感
じたも
のらしく、英國開關以來
の大發見
として國外
の輸出を禁
止し
議會で
は化學療法研究
の爲めに新に豫算を
取
る等
の騒を演
じたさうであ
る。戦争前
の欧羅
巴諸國
では
既
に科學
の研究に於
ても、激烈な
る競
雫をして、
自國より優
秀な
る
業蹟
を出さう
といふ競事心
に燃
えていたこ
とが、今にして良
く諒
解出
來る様な
氣がす
る。
英國
では初めこ
の
Sulfapyridin
を
M.and B.693として報告
し、今
は
Dugeman
とい
ふ
名稱
の
も
と
に
販費
している。
臨状報告
もFleming(Lancet,2,74,
及
564・1938)等
によると、
肺炎患
者
の
死亡率
は從來
の
三分
の
一に激減
してゐ
る・
新潟醫大
の柴田教授は特に昭和十五年四月日本内科學會
に於
て
肺炎
の臨膝な
る
宿題報告をされ次で色
々の雑誌
に
むSulfapyridiin
と肺炎
との關係
(日本内科學會
雑誌
二八巻
七號)或は
Sulfonamid
系の物
質に就て實
に詳細
なる報告をされて
ゐ
る。
(臨林
の日本昭和十
六年
一月)、其
の報告
によ
ると、二二・八%
の死亡率は實
に五。五三%に減
じてゐる。肺炎
の家兎血清を併用す
るこ
とにより
て、二%
に
へ
るとい
ふ、外國
の文獄もあ
る位であ
る。
余は
Prontosil
を緯
る
國際競事
は猫逸
の
Domagkの本盤打、佛
の
Trefouel一派
の三聾打、英
のWhitbyの
一樫打位
にそ
の學励
を評
定すべきである
と考
へる。
傳研
に於
る余
の研究室
に於ても、
既
に津田、鈴
木、爾茂
(藥學雑誌、
五九巻、三
號)によりて報告されし如く、嚢
に津田氏
は東
大藥學科、落合教授
の指導
のも
とに
Sulfapyridin,Sulfathizaol
等
の合成
に成功
し、之等
の
生理實
験を余
の
研究室
に
長谷川=輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
八七
一
6
長谷川=輓近化學療法剤の作用機轉に關する研究
八七二
於て執行中Whitby,の
Sulfapyridin
の發表
となり、歩を先んじられたるものに
して
Sulfanylamid
のThiazol誘導體、Lutidin,Pikolin
等
の誘導
體類
の研究に
關
して
は米國
の發表
に先立
つこと
一ケ月で
あ
つた。尚藥
業時報、(昭和
一五年
一
一月
七日)がp-Amino-benzol-sulfonsaures-3-5-dihalogenanilid
が
マラリヤの特效
藥
として猫逸のI.G.から特許出願
の公告が(特許
公報、昭和
一五年
九月
二〇日)
出た事
を報
じた。
之
に就
ては傳研
の石井博士が學術的
に有效な
ることを公表し
た(實験醫學、
二五巻九號昭和
一
六年)。
尚、Sulfonamid
系物質
の事
に關して
Long and Bliss
(1939,Clinical use of
Sulfanylamide and Sulfapyridine and allied compound)
,Findlay(Recentad-
vances in Chemotherapy,1939)
Domagk(Chemotherapie bakterieller Infek
tionen
,1940)等が纒
つた知識
を與
へて
くれ
る様
に思
へる。余は主
として最前者を
参照した。
尚、我國に於ても
Sulfonamid
剤を取扱びたる文獄實
に多
くあり
前述
の白木教
授等
(實験醫報
二三巻
二七〇號)の文献を始め
として、
土屋
文雄博土竝
にそ
の共
同
研究等
(泌尿器科領城に於
る
Sulfonamid
剤
の研究、日本泌尿
器科學會雑誌
二
九巻五號その他多数)
は最も
この方向
の
精細な
る権
威ある原著をも發表
して居
る。
崔茂
(實
験醫學
二三巻)大里教授
(臨牀
の日本)橋本博士(臨牀
の日本)淺野教
授(治療
及處方
一九四〇、
二、
一
、一一四〇號)武田教授(塁
濾藥學
雑誌
一九四〇
三・五
二號、
細菌性疾患
の化學療法)秋葉博土
(衛生試験所藁報
五五號)等、牧挙
に逞
無い程
の業蹟が發表
せられてい
る。
尚作用機轄に關
すろも
のとして
我國
にはあ
まり多くを見ないが松村氏
(日本微
生物學病理學雑誌三四巻
四號
三五巻
い器汐
び第
一三
一四回瑠ぞ餐、生物尋會
演説要旨)そ
の他がある。
以上・總括的なろことを蓮べたが次に作用機轄に關する事を述べて見度いと思
ふ。
今日まで数多くの化學療法剤が出現しているが
何れも、何故に效くかといふ事
即ちその作用機轉に就て殆んさ判明してゐないものが多かつた。
面白い着想としては
Chinin
がマラリャに效くのは
Plasmodium
の發育環中の
或る時期に赤血球中に入り込む時、丁度
Chimin
がある濃度に血液中に存在し
て赤血球に吸着されて入り込めない様にするので血球中に入れなか
つたも
の
は、死ぬから效くのであらう等といふ仕事も、見たことがあろ。が一つの見方
かも知れないが本態とも決定した澤でない。Prontosil
及び
Sulfonamid
系の物
質に就て最近非常に精細なる研究がなされた結果、その作用機轉が、稍ゝ明に
なって來た傾行にあるので、今日までの文獄を紹介し乍ら余の教室に於ける此
の方面の研究も併せ記して次に述べる事とした。
一、最初に先づ
Sulfanylanmid
は果して
Prontosil
の作用本態
なりや、
否やの問題から定めてか
ゝらなければならない。
作用機轉を
論するに
當り先づ個々の物質
が
色々の種類の細菌
に作用する場合に
於て之を
聰括して
論する事が
間違
つているかも知らない。例
へば後述する様に
Prontosil rubrum Prontosil solubile
の作用機轄さへ同様に論する
事には余は疑問を感する。即ち余等の教室に於ける實験の如くProntosil
solubile
には、
ハブ蛇毒を二十日鼠の生幽胆内に於て、不活一性化すろ韓性暫
を持つてゐるが、Prontosil rubrum
にはその性質はないミ云ふ事實が
ある心(實験醫學、二三巻
一二號)。
況んや化學的には
Prontosil Sulfonamid
は、その構造上関係の
尠
い物質であるので、之等
の異る物質の作用機轉を同様に論じやうミす
るこミは無理である。
作用機轉に關する研究
7
尚ほ詳細に観察すれば
Sulfonamidその誘導體さへ、色々の原著竝
に綜読が報する様に、夫々の作用機序も
全く異るものであろかも
知れ
ない。そこで此處ではP
rontosil
竝に
Sulfonamid
竝にSulfap
yridin
を中心にして色々の文獻を綜合して考察するに止めたいさ思ふ。
Kellne
rの犬及び家兎に就て行つた實験によればProntosil
を皮下叉
は静脈内に注射する場合にはProntosil
の
一部は其儘尿中に排泄され、
叉
一部は生體内で遼元されて
4-Sulfa
mid-2-4-diaminohy
drazobe
nzol
五なつて排泄される五いふ。
然るに
Prontosilを経口的に人叉は動物に投與する場合には
一部は31、
のま
尿中に排泄されるが,一部は非経口的投與の場合よのも張度に遽
元
され
てp
-Aminobenzol-sulfonamid (
Sulfonarona
mid)及
び
Triaminob-
enzolごなつて尿中に排泄される五報告してゐる。
Fullerも
Sulfoan
amidの特別なる分析法を以で、純粋のSulfona
m
i
d
Proa
osilに
て處
置
した
あ
る婦
入
の尿
よめ
得
る
こ
ご
に成
功
し
た。
從
つて
結
論
五し
て
Proa
osilの治
数
作
用は
そ
れ
が
経
口的
叉
は
接
種
した
場
合
に
生體
内
に於
て、
還
元
され
て
生す
る
Sulfonamidに
よ
るも
のであ
る
五強張
し
た、
事
實
Prontosilを
建
元
す
る
こ
さ
によ
り
て
次
の
如き
事
實
が
あ
る。
更
に.Fuller
は
Prontpsil solubile
を一で十
日鼠
に
注
射
せ
る
場
合
に尿
中
に
Proontosil sulubileご
Sulfonamidさが
速
に
排泄
せら
る
事
を謹
明
し、
尚
ほ
Sulfonamid
を投
與
せ
る
入
叉
は
動物
の
尿
中
に
はSulfonamid
の遊
離
型
五結
合
型
さを謹
明
す
る事
を得
た。
Trefouel一派
は別法
にて
Prrtosilの分解
な談明
せんどした。即
若しPronto
ssil
が
三重結合
の處
で分離す
るビすれ
ば、Triaminno
benzolさSulfona
midざに分れ
る繹であ
る。叉
Prontos
ilは動物
に、Allergie
性為賦與す
るこだた認めた
ので、
モルモットを
Prontosilにて感作
しておいた
所
がそ
のモルモットは
Prontosik
さ
Triaminobenzolざの
爾者に感作された
こざ
を知
つた。叉逆
に
Triaminobenzolにて、
モル
モ
ットた感作
した
ところが
Prontos
ilにも同時
に感作され
たこだが判
つた。
この種
の實験
は明
に、
二個
の分離
せろ物質
の謹擦
にはな
らないが
交叉反應
ざして意味づ
けるも
ので
ある。
以上
の
事實
によつて
嘗
て
Trefouel一派
が、
Proaosilは生體.内に於て破壊せられてA
zo結
合は浩失しSulfouamidして、作用す
るも
ので
あらう
だ構
した推測は巣然裏書せられた
ビ見て
良いであらう。
試験管中
に
於ても
Pronto
silや
Neoproaosil
はそ
の分
子
の第三環
に於
て分解す
る芝きは、治
数作
用に影響
はないが、Sulfonamid
基
を有す
る
環
に於て少しでも、變化な加
へるな
らば直
ちに
作
用は無くな
るぜ云ふご
定も明
にな
つた。
然し乍ら此
の胞説には
Prontosilの發見者であ
る
Domagkた始め猫逸學派
は結束
して反封して
ゐ
た。例
へば
Drmagkは
Prontosilさ
Sulfona
m
i
d
ぜの問には試験管内
の萄
の發育阻止作用
に於て
何等
の差が認められな
くて、何れ
も数
果はな
い
長谷川=親近化學療法鋼の作用機轉に關する研究
八七三
8
長谷川=輓近化學療法劑の作用機轉に關する研究
八七四
と云ひ、
Colebrook等
の實験即
ち
連
鎖状球
菌が、人
の箇液中にて、
一八〇〇
〇
倍
の
Sulfon
amid稀
釋液中にて殺
されるとい
ふ事實
は
間違
ひで
ある
と、色
々の
實
験を示して
反駁してゐ
るが、之
等
の事實
が又更に
反駁を受けて
何れ
から見
ても、Sulfonamid
が
Prontosilの有数成分
ではない
といふ
説
は
不利な様
であ
る。
第
剛
Prontosilは試験管内
に於て殺菌力はないが、Sulfonamidには殺菌力
及發
育阻止力
のあ
ることは多
くの實験に於て
明確
な事實
であ
つて後
記の吾人
の實験
でも示す如く今更喋
々を要しない問題
の横
である。
但し
Sulfo
namid
がProntosil
の作
用
の全部
と速
断す
ることは出來ない。
大部分
の役割
を勉
める
と考
へて間違ひない様であ
る。
Sulfonamid及び
Sulfapyridin
の試
驗
管
内
作
用
に就
て
Sulfonamid
及
びS
ulfapyridinが
如何
に作
用す
る
か
ご云
ふ
こ
ごを
Long
及
び
Bliss氏
著
を主
こ
して
參
照
し
て論
す
る
な
らば
次
の様
に
考
へら
れ
る。
即
ち
そ
の作
用
を大
別
し
て次
の三
者
を
考
ふ
る事
が出
來
る。
一、
は直
接
作
用
で
あ
つて、藥
剤が
體
内
に於
て單
な
る消毒
剤
ご
し
て作
用
す
るも
の
であ
るか
。
二、
は間
接
作
用
であ
つて
生體
の
自然
防
禦
力
を刺
戟
して
之
を
増
強
せ
しむ
る
のか。
三
、
に
は
こ
の両者
の協
力
に
依
るも
の
であ
るか
ご云
ふ事
に歸
す
る。
今迄
述
べた様
に
Sulfonamidは
溶連
菌
の發
育
を培
養
基
中
に
於
て阻
止
す
るこ
ご
は事
實
であ
つて
、Levaditi, Vaisman,及
び
Girard
等
も
之
を認
め
て
ゐ
る。
Colebrook, Buttle
及
びO'M
eara (
Lancet, 11, 1323, 1936)等
は
全
血
液中に於て、Sulfon
amidが殺菌作用を呈するこごが生體内に於ける数
果の本態であるこなしたが、Domrgk,
Burger等は此の作用を認めな
いご云つてゐる。
何故にかくも人々によつて實驗が異るかごいふこごを
吾人は考
へなけ
ればならない。
その原因こしては次の様な種々複雑な事情を考慮しなければならない、
(a)
接種菌は小量を使用するこごが大切である。
例
へば
Colebrook, Buttle, O'
Mearaの實驗によるご、
一%の
Sulf-
onamid溶液は溶連菌のく岩竓原液の發育を阻止し得ないが、1/100
竓に
なるごよく之を阻止するこごを得た。三十-五十個
の菌になるご、一萬
倍でも有数であるこいふ。
最近Fleming (J. of Pathology
and Bacteriology. p.70, Vol. L.
No.1. Jan.
1940)は
Slide cell cultur
eにて,やはり同様に實驗して、
菌數の除り多いごきは菌の發育が旺盛であつて、その結果出現しない
が、丁度適量の菌數を
用ひたるごきには發育阻止作用を呈するこご)を
實驗して居
る。尚後述するが物質
の量が餘のに
少量過ぎる時は却つて
菌の發育を對照群に比して助長するこごを、Sulfapyridin
ご肺炎雙球
菌この關係に於て、余の研究室の佐々木氏及小泉氏等は
認めて
居る。
Slide
cell culture
注にても同様の事實がある。
松村氏
(前蓮)も鶏胎見心臓組織の發育に對してSulfonamid劑
の色
々の
種類のものゝ影響を見て、或るものは發育を抑制するが作用時間にょり
或濃度に於ては却
つて發育を促進する事實を實驗に依つて示して居る。
(め)
培養菌は幾分古いものを用ゆるこごが、必要である。
9
第 一 表(Pnは 肺 炎健球菌 た示す)
Sulfonamidの 作用 ビ接種菌老齢度 ビの關係(PnIII型培地 ブイヨン作用24時 間 の肉眼的所見
第 こ 表Slldecell culture法(家 兎漁 液)に よ るSulfapyridin
の肺 炎讐 求菌1型 の 弧 弱 菌 に よ う比較 實験
Finkelstone-Saylise (Lancet 11:792, 1937)
等はSulfonamid
は封数
的登育を纒過した連鎮状球菌程数果があつて
血中の幼若なる
連鎖歌球
菌には嚢育的の刺戟を及ぼすだけであるぐ〕云つてゐる。
Long Bliss
等も幼若菌よりも老朽菌に封して多くの数果を及ぼすこミ
を認めている。
余等の教室に於て追試せるところに依るざ、表に禾す様に老稀薦に封~
ては、幼若菌に封するよりも獲育阻止が張い。(第
一表)
(c)
彊毒菌を使用するこざが必要である。
Nitti, Bovet
によると
弱毒の溶連菌で
起した、一一十日鼠
の感染
には
℃目o馨畠牌は数かないといふ。
之は多くのSulfonamid
類でも
同様で
あつて、弱毒なるが爲めに
大景
の菌を
接種しなければならないからで
ある霊云ふ。吾々の教室に於て河野氏等
ε共に之を
GQ}誌①c①認2洋舞①
法によのて此の事實を
確めたところが表示する様に
張毒菌に封する作
用が、弱毒菌に封するものよりも殺菌蚊に嚢育阻止共に、その作用が彊
い事實を認めた。
此の時、四十六萬倍稀繹の言ころで
作用が強く出現した
現象に關して
は、後で述べるこ虐にした。
(第二表)
(d)
培養基を撰澤することが必要である。
Long, Bliss
等によるぐ)、
五〇%馬血液ブ
イヨン中にては、
普通ブイ
ヨンよりも
◎Q巳臨○⇔鎚凱創
の数果は少いぐ)云ふ。部、此の現象は榮養素
の多
い培養基申では菌が早く盛育して大量
の菌ミなめ、藥朔
の敷果が隠
されるためなOぐ)云ふ。叉、
一萬倍のSulfonamid
はブイヨン中にて、
大腸菌に封して何等
の作用もしないが、尿中では同濃度で爽育を阻止す
長谷川=韓近化儂療法鋼の作用機轄に認する研究
八七五
10
長谷川駐軌近化學療法鋼の作用機轄に關する研究
入七六
るぐ)云ふ。
吾が教室に於ても小泉氏等はSulfonamidと
溶連菌霊の間に於て、血
清ブイヨン霊ブイヨン申に於て表示する如く同様
の事實を見た。
第 五 圖.基 礎培地 の種類 ぜSulfonamidの 作用
(溶血性連 鎮状球菌48時 間作用)
(e)
實瞼に當り
菌稀繹液の影響を
考慮
すろこミ。
例
へば○・八五%生理的食鞭水は、あろ
細
菌殊
に連鎖歌球菌及肺炎菌等
に
封
して有
羅であろ。
食盤水は五萬倍では溶連菌を、あまり殺さ
ないが、五十萬の稀繹では
一時間で之を殺
すミいはれてゐる。Sulfonamid菖び錺
(Med.Pec 146:247 1
9。。"Vによるぐ)、食
盛水菌液は培養菌液より特にSulfonamid
に封
して敏感であるといふ。
(f)
培養濃度が影響を及ぼすこ言。
White及Parker (J. of Bact.36 481,
1938)にようSulfonamidは39℃-40℃
の培養で五、○○○倍稀繹
にて溶連菌を殺
してゐる。36℃-39℃では登育を阻止して
ゐろ。
(9)
培養基の性質によつて菌の
登育琳態が獲殺3ろこさにも考慮し
なければならない。
既に余
の研究室に於て矢部氏が報告した様に(第十四同聯合微生物墨會
報告及び實瞼讐學。二四巻七號)ブ
イヨン培養基を,用ひて、◎◎巳隔9鱒目建
叉はSulfonamidを以て、淋菌溶連菌等を用ひて實験した塵が、或る
揚合には殺菌性叉は登育阻止性を現はし、或る時は全くその性質を現さ
ないといふ現象があつたので、初めは技術上の錯誤かざ思つて、再三實
瞼を繰り返す申に第六、七表に示す様に
面白い事實が刺つた次第であ
る。
即ち極めて新鮮なる肉を以て製した
極めて
新鮮なブイヨン培養基を用
ひて、培養する霊きは、稽
支その作用あるも
一週日乃至二週日之を放置
するこミに依りて、強力なる作用か出現した。然るに更に約
一週日ブイ
ヨンを俣存する霊きは又その作用を失ひ更
に叉時日を纏過する霊きは
再び作用が出現した。斯様
にして約
一〇週間繰り
返したが時々此の現
象を見た。何故に如此現象が出現するかは今の虚判らない。
作用の強
力なる霊きは、百萬倍を突破するこ鷺がある。
今日迄の文献を見るにSulfonamid
を以つてしてもある實験者は謬駁
管内に於て作用なし噛、)するもの、或はありとするもの等あることは既に
前述の如くであるが培養基に
如此性質のあることを知識の中に入れて
實験を進むることによりて色々の斜誤が除かる、ことであらう。
此の
實瞼は叉教室員佐
々太氏に依りて追試されて大罷如此傾向を認めた。
以上の種々の條件を考按しつゝ次の實験を
考察するε興味深
いもので
ある。
帥多くの墨者によつて、溶連菌は少量接種
の際に
一・○○○倍稀繹の
Sulfonamid
で襲育が阻止されるく)云ふ。叉
一〇〇t四〇〇彪%の高濃
度に於て殺菌的であるといふ人もある。ピ8堕
国霧
等の考では、全血
11
第 六 表 プイヨンの保存経過 に ともなふSulfapyridinの 淋菌に封
す る影響 の攣化(37℃ 卿 卵器 内保存)(矢 部)
第 七 表 ブイヨン保存経 過に と もなふSuonamidの 溶 血
性蓮鎮状球菌 に及ぼす影響 の攣化(矢 部)
液申にて菌
の殺滅が行はるれば、それ
は
Sulfonamidの殺菌作用に依るより
も寧ろ、喰菌作用の爲であらう
と思は
るともいふ。
Colebrook,Buttle
及O'
M
eara
に
依
れば、八〇%の白血球を除去した血液
中にては
Sulfonamidは殺菌作用を呈
するが全血液中に於けるよりも、その
作用が弱いので喰菌作用の結果である
と
推
定
し
て
ゐ
る。
又H
oare(Lancet.
同,655,1938)の、實
験
で
は
、Sulhonam
id
の濃度が低い時は白血球の作用が重要
とな
り、
Sulfonamidの濃
度
が
濃
い時
は
Sulfonamidが
重要
とな
つ
て、白
血
球
の重要性は減ぜられると云
つ
て
ゐ
る。
又
一方
Colebrookは
一八
・○
○
○
倍
Sulronamidは人血清及人全血液
中で同様
に
殺菌性を有
するとなし、
Lyon(Aun. Surg. 108, 813, 1938)に
よれば、Sulfonamidの数果は喰菌細
胞の存在に依るものであつて、血清の
殺
菌
作
用
は
Sulhonamid
を
追
加
す
る
ことによりて別に増強はされないとい
長谷川=朝近化學療法剰の作用,機韓に關する研究
八七七
12
長谷川=朝近牝學療法刺の作用機韓に關する研究
八七八
ふ實瞼をしてゐる。
Lockwood(Jmmunol.
35:155, 1938)によれば、
健康入血清及白血球を除いた
血液に
Sulfonamidを添加すると川、雨者
とも嚢育阻止的であるが、若し培養基よりP
epton
を除去すると、殺
菌作用を呈してくると川いふ。是はP
eptonを加
へることにより
培地の
條件が非常に良くなり、若い溶連菌
の如きは、登育が封撒的となり殺菌
作用が應されてしまふのであるといふ。
翻ち培地の條件
が良
な
る程
Sulfonamidの作用は弱くなるのであると云つてゐる。
Colebrook等
によると人間拉に猿の血液に
Sulfonamidを添加すると、殺菌性を帯び
るが二十日鼠、家兎、
モルモット及下等動物の血液中ではSulfonamid
の数果は比較的少いといふ實験をして、之は
Sulfonamidに作用がな
いといふよりも寧ろ、溶連菌がか
る動物
の血液申にてよく發育する
ことを示すものであつて、此の現象は培養基
の榮養償値ミ試験管内の
Sulfonamidの数果
との驕係上重要
であると言つた。
Long又はNitti等の實験では
Sulfonamidは牛肉ブイヨンの様な良好
なる培養基中に於て大部分の溶連菌、肺炎讐球菌、淋菌、ウ
ェルチ菌,
Brucella melitensis等に封して
二萬倍の稀繹液にて盛育附止作用を呈
するといふ。叉尿の様な不良培地に於ては,幾分高濃度の
Sulfonamid
は、葡萄歌球菌又は多くのグラム陰
性菌の農育を阻止し、又生罷内と試
瞼管内との
Sulfonamnidの数果の間
には極めて、密接な關係があつて、'
培養中に
Sulfonamidに依つて登育が阻止される様な菌は、大部分、
實験的にも数果を示し臨熟的にも
治療的数果を現はすといふ。
此の事
實
は土屋博士も色々の實験を以て
讃明してゐる。
鄭ち菌株
の性質によ
つて
Sulfonamid
の作用も異る
川云ふ。
吾々の教室に於る實験に於ても試瞼管内に於て、菌株により第八表の如
く異る事を知つた。
印ち、以上の文献によつても明なる如く、試験管内に於ても、ある時は
殺菌的であり、又ある時は登育陽止的である。又生體内に於ける治療的
藁
に就いでも既に確實なる三
計
りして試験管内と生體内に於て相
當の相關々係
のあることは事實であるから、その作用は直接作用をなす
ものであることを考
へても差支
へない課である。
吹に興味ある事は
Sulpyridinの肺炎墾球菌に封する殺菌拉に、襲育
阻止作用の出現前に養育期が先行する事である。此の事は既に
Rand,
olph, Alvin,
Coburn(J.Of exp. med. VOl.72.No.1.1940)及び
McIntosh, Whitb
y(Lancet, 193
9,1, 431
)等によりて、既に唱導
ゆれ
た塵であつて、吾々の追試
(小泉等)に依つても
明に
出現することを認
めた。
鄭ち、表示
(第九表)する如く始め約五時間の間は正常速度の號育を認
めるものであつて、封照の試験管内の漏濁が
最大に達するに反して、
Sulfapyridinの加はつた部分は、各々その濃度によつて發育阻止期よ
の殺菌期に入る。此の理由に關してはM
cIntosh等によれば接種され
たる原菌はもはや藥渕の作用を
受けすして
原菌より、分裂したる幼若に
して毒力の強い菌がその作用を初めて受けること
なる爲めに斯様な
發育期が先行するものであらうと推論してゐる。
又
Chandler及
Janeway(Proc.
Soc.exp. Biol. and Med.,40,
179,1939)は論をなして菌體内に於て就に將來の發育に封して鋏く可
からざる物質が具備されて居る爲めに藥剃の作用を、初め
五-六時間
13
第 八 表 溶血性通 鎮胱球菌 の菌椋 に因るSulfonamid
の数 果差 異(作 用48時 間 培地pH7.2ブ イ ヨン)
第 九 表Sulfapyridinの 肺炎讐 球薗I型 に封す る時間的作用歌態
(培 地PH7.4ブ イ ヨン)
第 十 表Sulfapyridinの 作 用 に及 ぼす 培 地 の影 響
(PnI型 ブイ ヨン培地作用時間24時 間に於 け る發育阻止鋤びに殺菌作用 た示す)
横列 中下方(一)は 殺薗
長谷川=韓近化學療法済の作用機轄に關する研究
八七九
44
第十 一表 肺炎讐球菌 に封 す るSulfapyridinの 低濃度 に於け る特 異
的發育阻止作用(肉 眼的所見PnI型) 長谷川=輪近化學療法剤の作用機轄に關する研究
八八○
の間は受けないのであると
云
つて
ゐ
る。
次に
Sulfapyridin
の作用歌態が基礎
培地
の水素イオ
ン濃度の相違に依り著
し
い發育歌態
の攣化を示す
例
で
あ
つ
て、(第十表)肺炎饗球菌I型を用ひて、
ブ
イヨン培地にて二十四時間培養の所
見を表示すれば次の様である。
(小泉等)
部ちpH6.4又はpH
9.0等にては好
適
pH
の影魁よりも母に蚕噛匪止双
は殺菌作用は張く現はれるのを見た。
此
の時二耗中の菌藪を二・○○○個と
して實験した。
次に
Sulfayridin
の肺炎墾球菌に封
す
る低濃度に於ける發育阻止域に現は
れる
一種
の奇異現象に就て述べやう。
(小泉共著)
詳細なる實験は、何れ別に公表の豫定
であるが、次表に示す様に培地のPH
を肺炎饗球菌に好適ならざる歌態即ち
pH
八・八-九・○といふ様な所謂
Poor
medium又
は
hungermedium
い
ふ歌態に於て、二〇・○○○個
の菌を入れて検索もたところが、四五萬
倍の稀繹度を中心にその前後を見ると此の濃度に於て
特
に強
い糞育阻
止作用を呈すお珍らしい現象を見た。
即ち表示する様に(第
二二表)肺炎墜球菌I型に封する
Sulfapyridinの
作用を培地の
PH794とし二〇〇個の菌を用ひて、種々なる連綾的の濃
度に就て検索して見
ると藪萬倍の高濃度に於ては、もとより殺菌作用は
出現するが、一八-
一九萬倍の濃度に於て發育阻止作用は比較的弱くな
り、次でそれよりも薄
い濃度に於ては發育組止作用はより強く現はれ、
而して四六萬倍の庭に比較的強く又發育阻止現象が現はれ、又この作用
は消失し、突然五八萬倍稀繹の部分に於て強力なる
殺菌圏が現はれた
る事實を見た。此の實験は實
に十歎同に渉り
繰り
返し執行したが大體
五八萬倍の附近に於て最も
顯著に出現するものであることを確めた。
但し時に出現しないこともあつた。
もと川より
接種菌量を大量にすれば
之等の現象は謹明されなくなると
共に高濃度に於ける殺菌拉に糞育阻
止作用も認め難くなる。
余は此の現象に封して谷現象
(Talpbanomen)
と命名する事を提案するものである。此の現象の獲現する
理由に關し
ては、今のところ何等
の詮明を輿
へる程の實験をやつてゐない。從
つ
て制らない。
只試験管内の現象
と生髄内の夫とは
同日に論すべきものでは無
いかも
知れないが、如斯現象が若し生罷丙
に於て行はれると假定するなれば化
學療法剤といふもの
臨沐的の使用法が仲々六ヶ敷
いと言ふか、興味あ
るものと川思ふ。
部藥渕の使用量といふものが、非常に多くとも又少くとも有数でなくて
15
第 十 ご 表 肺 炎 讐 球 薗I型 に封 す るSulfapyridinの 作 用 朕 態
(特に種 々な る蓮績 的濃度 の作用 状態)
長谷川=親近化學療法鶏の作用機韓に關する研究
八八
一
16
第十三 表 ・馬血清 な添 加せ る生理的食璽水 培地に於け るSulfapyridi.
の肺炎讐球菌(第I型)に 封す る作用長谷川=韓近化學療法刺の作用機韓に關する研究
八八
二
最適量
のあることを思
はしめるのである。
次に教室員の佐々木氏
は、新鮮馬血清を添加
せる生理的食醫水を、
培地として、Sulfapy-
ridin
の肺炎墾球菌第
f型に封する發育限寵
作用を見たる慮、第十
三表に表示する様にト
二時問作用に於て、そ
の發育阻た作用最も顯
著
に見ることを得た。
この實験に於て興味あ
る事實は、七五%に血
清を添加
せ
る場合
に
は、作用時間十二時間
に於て、その四〇〇萬
倍乃至三、二〇〇
萬
倍
の極く稀薄なる濃度の、
虎に於て、封照
に比較
して發育が却て促進さ
れる事實である。此の
現象は十敷同繰り返して、實験したが大多歎
の場
合に於て
同檬な結果
を得た。この事實は教室の河野氏により
S.c.c法にて家兎全血液を以
てする實験に於て再認された.その後教室員小泉氏はブ
イヨンを
基礎
,培地とせし場合第嬢型に於ても類似
の現象を認めた。
以上の實験蛇に文獄を総括して試験管内に於て
Sulfon
amid及
Sul-
fauyrdinが色々の球菌類に封する作規を考察するに、種々複雑なる條
件を考按し乍ら實験を行ふ時は實
に明瞭
に、その殺菌作用又は糞育阻止
作用を見ることが出來
るのである。特
にその發育阻止作用に到つては、
非常に稀程なる濃度に於て、之を明に見るこ
が出來る。又吾
々の實験
が示す様に菌数を紗くして、發育環況を菌
に取つて不良の歌態にして、
検索することによつて、實に稀薄なる濃度例
へば五八萬倍の稀薄
に於て
さ
へ完全なる殺菌現象を見ることが出來るのである。
此等の事實によつて菌に封してSulfonamid系物質が
直接作用をする
といふ事實は疑ふ可からざる現象である。勿論作用機轄に閣しては、他
の要素も考慮すべきではあるが、直接作用
と云ふことを大きな役割と考
へて良いであらう。
而も色
々の濃度
の關係から考
へて、罐内に於ては、藥剤
の到達に依つ
て、菌
の發育が阻土されて、殺菌は、二次的に身體の自然防禦力の果す
塵であらう.
Prontosil及びSulfonamid
の難Slide cell cultu
re(S. c.c.
と略構す)
に於ける實瞼。
色々の化學療法鋼が
S.c.c.
法にて如何なる成績た及ぼすかといふ事は重大なる
意義あるものと筆者は信する。
師、生體内の作用な推論するとき、S.c.c.
は先人も考へた様に試験管内と生體
17
内
との中間
位
の意義
なも
つも
のの樽跡に田心へる。
初め
E.Hesseは
一九
二八-
一九三
一年
(Archir.f.exp Pathol.u. Pharmacol.
Bd. 135.Bd.147.Bd.159)に共同研究
看等
と共
に有機及び無機
の物質
合計
して
約
四千種に就て實
験的結
核に封す
る作用
だ先づ
S.c.c.法
にて検索
し此
の方法
に
て殺菌性。
又は發育阻止性あり
と思はれ
る物質た動物實験
に移
して
結核
の乾學
療法
の研究
為行
つた。而して
動物實験
にて有数
と思はれ
るも
のだ以て人體實験
怨行
つた。
吾が國
に於ても阪大、
今村教室に於ては此の
方法た探用し、結核に
於け
ろ
S.c.c.
は微
に入り細に渉り、研究
してゐる。傳
研の
田宮敏授
は蟹
に
S.c.c.
法
の最初
の溝本
への紹
介者であ
りて、教室
からは多
くの
業蹟た出して
ゐる。最
近清水教授は、
S.c.c.法
に閾
して詳細な
る報告た出
した。(實瞼醫學
二四巻七、
八、
一九
四〇)、
余
の教
室
に於
ても
亦
S.c.c.法
を結
核
菌
及
そ
の他
の細菌
に應
用
し
て鰻
報
告
し
て
ゐ
る。
結
核
に封
す
る余
等
の實
瞼
に依
れ
ば、動
物
の實
験
的
結
核
の形
成
を阻
止
す
る
物質
は
殆
ん
さ
S.c.c.法
に於
て
良
く
結核
菌
の養
育
を限
止
す
る物質
中
にあ
る
こ
とが
刹
明
し
た。
例
へば
S.c.c.法
に於
て
作
用あ
ろ物
質
が
十
種
あ
る
と川
き、
そ
の中
の
二乃
至
二種
に
於
て
動
物
の結
核
結
節
形
成
を
阻
止
す
るも
のが
出
現
す
る。
動物
實
験
に
於て
有
数
であ
つた
も
の
、
幾
種
か
の
中
から
人
類
の
結
核
に有
数
な
るも
のが
出
現
す
る
であ
ら
う
一事
を
考
察
す
る
とき、細
菌
性
疾
患
の化
學
療
法
を
研究
す
る
上
に於
て、S. c. c.法
に
よ
る
有
数
物
質
の
検
索
と
いふ
こ
とが
非
常
に大
切
で
あ
る
と
考
へら
れ
る。
但
し
余
等
は
結
核
の動物
實.
験
に於
て有
数
で
あ
つた
物
質
中
一種
丈
け
の例外
即ち
、26-di-piperidyl,
acetyl-diphenylendioxyd
はS
.c.c.に
て
無
数
で
あ
つたが
、
動
物
實
験
に
於
て有
数
であ
つた
こ
とを』既
に
報
告
した
。
S.c.c.法
に
のみ
依
存
す
るこ
と
は有敷なる作用あるものを逸する恐はあるけれ共、
化墨療法の研究に
從事するものは必すやつて見なければならない大切な
方法であると銘
記すべきであらう。
扱て如此意義を有する
S.c.c.法とSulfonamidと
の關係を見るに、
Colebrook, Buttle,
O'Meara(Lancet, 19
36)等
の共同鋳究によれば次
の様である。
部
Sulfonamidは培地内に於て、
溶連菌
の播種、藪が少
い時には糞育阻
た作用を呈し、反之、物質
の濃度が
二〇〇倍であ
つても、○・一琵
の培
地中に三億
といふ名藪
の溶蓮菌を接種せる場合には僅に
一〇分
の一し
か阻止しないと云ふ。
二〇・○○○倍稀繹液の場合には三〇-五〇個の菌に封して、二-五日
第 十 四 表
十Subucultureに て4ケ の集 落 獲 生せ り
Inf.完 全 溶 血
Su.Sulfanilamid
聞
に渉
り糞
育
を
抑制
す
るも
ので
あ
る
と
い
ふ試
験管
内實
験
を基
と
して
、S
.c
.c.の成
積
を、
述
べ
て
博のる。COlebrook(Lancet.1:21,
1940)に
依
る
と
入
の正常
血液
に
Sulfonamidを試
験
管
内
に
て
添
加
し
て恒
温
振
総
装
置
を
以
て
な
せ
ろ實
験
成
績
で
も
次
の様
に實
に良
く、
登
育
を阻正
し
て
ゐ
る事
實
を
見
る。
Inf.は
完
全
溶
血
を示
し、
發
育
随
止
は現
は
れ
な
いが
、
一三
・○
○
長谷川器朝近化學療法済の作用機韓に關する研究
八八三
18
長谷川=韓近化學療法剣の作用機韓に關する研究
八八四
○-
一八・○○○倍の稀繹では大
體見事
に現れてゐる。
此の實験は溶
連菌
の色々
の菌株に就て藪同繰返
さ
れ
た實験であつて、
Prontosil
sclubileを
Sulfonamid
に攣
へて實験した塵が殺菌性は全く現はれな
かつたといふ。
之は前述
の試験管
内で為作用なきこと
、思ひ
比べて
見て面白いことである。
之によつて、Prontosil solubileの分解は、生膿内で行はれる事が明と
なつた繹である。
Prontosil
及
Prontosilsolibileは之を還元すると直ちに
Sulfmamid
と同様な作用を呈するといふ。猿
を
Prontosilにて
鹿置したその血液
は、甑にS.c.c.にて張力に作用を顯している。
又白血球を除去した血液内では、正常血液に於ける様な張力なる殺菌作
用を見なかつたといふことより、白血球に依つて
Sulfonamid
の殺菌
力が塘強さろ
とも考
へられる。
Sulfonamid
にて虞置した患者、
E夫人の血清に就ての面白い實験が
ある。部ち腿置前に探つた血溝中に
二四四個
の溶連菌を播種したところ
が、二十四時間後には
丁六〇〇萬個に潜殖した。然
るにSulfonamid
を投與すること三同目の後、二時間にして、探集した
血清二〇〇琵中
に同藪の菌数を播種し九ところが、全部殺菌された。第七同投與後五時
間目の血清は
二〇〇耗中七
二〇個
の菌を
播種したところが
同様に殺菌
されたといふ。又健康人に同じ様
な實験を行つたがE
夫人の様には
行
かなかつたといふ。Colebrook等は
Sulfonamidを投與した患者叉は
動物の血液は溶連菌に封して、殺菌性だといつてゐる。
Fleming
(Lancet.July9.1938.74)は肺炎菌と連鎖歌
球菌に封す
るSulfaprridi
n
の作用
に
就て
S.c.c.によつて、色々實験
した結果
Sulrapyridinはこの両菌に封して、之を治療に用ひ得
る程度
の濃度に
於ては決して
殺菌作用は行はれないで糞育を遅延せしむるに過ぎない
となしてゐる。
血液は斯様な濃度に於て
Sulfapyridinの共存時に於て多歎の肺炎菌を
死滅せしめた。この時必す、白血球の存在することが
必要であるとい
ふ。印ち殺菌するものは患者自らであると云ふ。
而して、肺炎菌に封しては、Sulapyridin
の方が
Sulfonamidよの遙
にその作用が張いと言つてゐる。之も
S.c.c.が生罷内作用に近似する
ことを示すものであらう。
此の時発疫血満を添加する場合には物質
の
作用はEに酵墨され
る、こヘム葬費少らして、本物望を以て良子なる成責
を得るためには.患者が被働又は能働性の冤疫を有していることが必要
であるといふ。柴田教授(臨床の日本九卷
一號)も
多くの文獣を引用し
て、肺炎の治療に
Sulfapyridinと免疫血清
との併用療法を推構してゐ
る。要するにFlemingの作用機韓に封する思想は
Sulfapyridinの生
髄内に於ける作用は登育阻止的に菌に作用し、菌の弱味につけ込んで、
白血球によつて喰菌さうものであると云.誕にある。吾々の實験によれ
ば第
二五表に示す様に肺炎讐球菌I型とSulfapyridinの關係を
S.c.c.
法してその作用を實験したところが入類
の血液に
於て
殺菌作用は
一一
萬焙以下であつて糞育醗止作用は、三五二萬倍内外であつた。又家兎血
液内にて第遜型菌に封しては殺菌作用四萬倍以下であつて、襲育阻止
作用は九〇萬倍内外であろ。
(第
二六表)
又第
一七表は溶連菌と
Sulfonamidとの關係を示し幾分その作用弱き
19
第十 五 表Slidecellculture法(人 血)に よ るSulfapyridin
の肺炎讐球薗第1型 に及ぼす作用
第十 六 表Slideceliculture法(家 兎 血液)に よ るSulfapyridin
の肺炎讐球菌彊型に及ぼす作用
第十 七 表Slide cell culture法(家 兎 血 液)に よ ちSu1{o膿mid
の溶連菌に及ぼす作用
も
の
様
で
あ
る。又
ブ
イ
ヨ
ン血溝
及
全
血
液
を
me島貯ま
昂、)し
てSulfapyridin
と
肺
炎
菌
亙型
と
の
關係
を
比較
し
て
見
る
のに
、
そ
の
登
育
阻
止
作
用
は
次
の様
で
あ
る。
ブ
イ
ヨ
ンの場
合
、(二四
時
間
Sulfapyridinを
作
用
し、
ブ
イ
ヨ
ンに
て後
培
養
)
一一二八、○
○
○位順
血
清
の場
合
(同
上)
四、○
○
○
、○
○
○
倍
(馬
血清
)
全
血
液
内
(S.c.c.
)ハ同
上)
九
〇
〇、○
○
○
倍
(家
兎
)
三
、五
二
○
○
○
○
倍
(人
間
)
郎
ち
ブ
イ
ヨ
ン、
全
血液
、
血清
の順
に
阻
止、力
強
烈
とな
る
こ
と
を
知
る
ので
あ
る。
以
上
の
事
實
によ
り
Sufa-
pyridin
及
び
Sulfonamid
等
は
S.c.c.より
見
るも濃
厚
な
る濃
度
に
於
て
は
殺
菌
性
を
もち
稀
薄
な
る濃
度
に
於
て
は薦
の糞
育
を阻
止す
る事
實
は
愈
し
明
と)な
つた
。
而
し
て
糞育
阻
止濃
度
と殺
菌
濃
度
と
の間
の
間
隔
が
非常
に
大
な
るこ
とは興
味
深
き
こ
であ
つて
、
こ
の
事
實
が
化
學
療
法剤
とし
て
の特
長
とも
考
へら
れ
る。
殺
菌
に
到
ら
す
共登
育を
阻
止
さ
へし
て
ゐ
れ
ば
、
後
は
自
然
防
禦
力
で
菌
を殺
滅
す
るで
あ
ら
う
と
い
ふ
ので
あ
る。
殺
菌
性
の
張
い様
な
も
ので
は
生罷
に
も有
毒
と
な
る
の
で
使
用
出來
な
い澤
で
あ
る。
航
藥
翻
性
物
質
に
就
て
(Inhibitor)
初
め
Lookwood(JImmunol.1938.35.155)は
Sulfonamid
の發育阻
止作
用と殺菌作用
との墾方
に
Pepton
が阻
止作
用
長谷川=軌近化學療法剤の作用機韓に關する研究
八八五
20
長谷川=レ
近化學療法済の作用機
韓に關する研究
八八入六
が
あ
る
こ
と
た
記
し
た。
此
の理
由
は
凡
ら
く
Sulfonamid
は微
生
物
が
蛋
白
分
解
産物
た
利
用
す
る
こ
とた
阻
止
す
るも
ので
あ
つて
Pepton
は
此
の時
同
牝
さ
れ
易
い
窒
素
た
非
常
に
多
量
に
持
つて
い
る
ので
Sulfomm
id
の阻
止力
が
減
弱
す
ろ
ので
あ
る
と推
定
した
。
rock≦ood
及
Lynch(J.A.M
.A.1940.114.935)は
近
來
こ
の
概
念
た
擾
張
し
て
、
Sulfonamid
の作
用
は
膿
汁
の存在
に
於
て減
少
さ
る
る
こ
と奄説
明
し
て
ゐ
る。
帥
ち
そ
の時
は蛋
白
分
解
の終
産
物
が
堆
積
して
、
藥
矧
の登
育
阻
止
作
用
な
妨
げ
る
の
で
あ
ら
う
匠言
つて
ゐ
る。
次
で
Stamも(Lancet.1939 2.10)は溶
血性
連
鎮歌
球
菌
な
N\25の
ア
ン
モ
ニ
ア水
た
以
て
浸
出
す
る
こ
とに
よ
り
て
得
ら
る
る
あ
る物
質
がSulfongmid
及
Sulfapyridin
の
細
菌
發
育
阻
止
作
用
に
封
し
て反
抗
的
に
作
用
す
る事
實
た
登
見
し
た。
次
で
そ
の化
學
的
性
質
た
色
々検
索
し
た
が
そ
の
本
態
は
極
め
る
こ
と
は出
來な
か
つた
。
次
に
Green
(Brit.J.exp.path.1940.21.300)は
Brucella abortus
か
ら抗
ズ
ル
フ
オ
ン
ア
ミ
ド性
物
質
為
得
た。是
は
Stamp
の方
法
とは
異
り
簡軍
に
水
で浸
出
ず
る
こ
と
に
よ
つて
、
大
量
に得
る
こ
とが
出
來
て
之
な
P.factor(Pullulation
又
は
Prolife,
ration
hactor
の意
にて
登
芽
要
素
とで
も
澤
す
べき
か
)と樗
し
Brucena
abortus
の
み
な
らす
他
の菌
に
射
し
ても
強力
な
る
發
育
促
進
的
の効
果
な
有
す
るこ
とが到
つた。
郎
ち
之
は特
異
性
の
も
の
で
は
な
く所
謂A
ntisulfonamid-factorと同
一のも
ので
あ
つ
て
Sulfonamid
が
丁
度
阻
止
す
る
と
ころ
の菌
騰
内
の
酵素
反
應
奄
逆
に刺
戟
す
る
も
の
。で
あ
ら
う
と言
つた。
あ
る
種
細菌
の
Sulfm
amid
に
封
す
る
敏感
度
は、
自
家融
解
作
用
た
な
した
る
細
菌
の
P.factor
を游
離
す
る奉
に
よ
つて條
件
づ
け
られ
る
と
云
ふ。
部
ち
多
く
游離
す
るも
の
には数
か
な
い
謬
で
あ
る。
P.faotor
定
Sulfonamid
と
の間
に
は
あ
る
賊態
に於
て
一定
の
均
衝
駅態
にあ
る時
に
第 十 八 表
は細菌は生殖
出來ない
と云
ふ。郎、
發育阻
止状態
にあ
る課であ
る。然
る
に
P-fact
orの濃度
が
事"張
してい
る
時には細菌
の生活性が現れて
ゐるの
であ
る。
次で
Woods(Brit.J.o
f exp.path.
V.21.1949 No.2
S.74)は
Sulf-
onamidの作
用機
韓に
封す
る、
パラ
アミ
ノ安息香酸
の關係
に就て、
とい
ふ論交
に於て酵母
の寝出液が溶連菌
に勤す
る殺薦作用々無数
にす
る性質
な
肩寸,芝碁ゐ鏑した
是等
の作
用の
本態は
p-Arninobenzoesare
で、ある
事が明
にされた。樹
此
の
外
に
Nov,
Ocain,p-Aminobezamid,P-Hydroxyl
aminobenzoesaur
e等
にも
洞.様
な作
角
のあることが到
つた。余
の研究室
に於
ても
へ泉茂
は之
為泊試
して見
た
結
果表
示す
ろ様な成績鳶得た。
(第
十
入表)
即
ち
ブ
イ
ヨ
ンを
墓
礎
培
地
とし
た
場
合
岡
琵
中
に
於
て
四
・○
○
○倍
に
稀
繹
した
肺
炎讐
球
菌
約
二〇
・
○
○
○
個
に一封す
る
殺
菌
作
用
を無
数
に
す
る
p-Amino-benzoesaure
21
の濃度けI型に於ては實に
一・○○○萬倍、III型に幹
、は吾
萬倍、と
いふ微量であることが刺つた。又、
一二・○○○倍のUlron
の場合に
も同様の關係が成立し
一・○○○倍
のSykfamid
に封して、溶連菌の
場合には・ブイヨン中にて、正に二・○○○萬倍、腕繊維素血液の場合
には
一○○萬倍の稀繹に就てp-Aminobenzoesaur
eは尚その殺菌作用
を無数にすろことが判つた。
尚
Selbie(同上、S.90)は動物實験
に於て二十日鼠
に溶連菌を感染させ
砦
のを、Sulfonamid
にて治療
するとき、パラアミ
安息香酸が之
を阻
止
す
るこ
とを明
に
した
。
部
ち
生艦
内
に於
て
も
試
験
管
内
と
同
様
な
作
用が
あ
る
こ
とを
示
し
牝。
或
る
物質
が
或
る
物
質
によつ
て
特
異
的
に
そ
の
作
用
が阻
止
さ
れ
ろ事
實
は
他
にも
あ
る。
例
へばFilder
(Brit.J.exp.
path.V.21. 19
40.No.2)はHg
の殺
菌
作
用
は-
SH
化
合
物
に
よ
つ
て
中
和
さ
れ
る
と
い
ふ。
例ば
Thigacetate.Cysteine,
Glutatbione等
に
よ
つ
て中
和
さ
れ、
Cystine及
Methionineによ
つて
は
.
さ
れ
な
い
と
いふ。
又
昇
柔
に
て、
チ
フ
ス菌
を
殺菌
し
て
お
いて、
SH2を
通
す
る
と、
又
生
選
す
ろ
ミも
、
云
は
れ
て
ゐ
る。
Fleming(JPat
h.&
Bact.1940 50,69)は又、Sulfonamidのinbibitorが葡萄胱
球薗、B.aertryc
ke,Streptococcus v
iridans及
Strep
tocccus pyog
enes等
の濃
厚な
る浮遊液中
にもあ
る事
た明にした。
Mac Leod(J.of exp
.med.V.72
No.3.Sept.1. 1940)は更
にこの
inhibitor
な色
々の組織の中
に探
して新鮮な
る筋肉、膵臓、脾臓
の
中にあ
ることた見出し
た。之は組織
の自家融解作用
た起
させると、そ
の量
は非常
に
増加す
ることな知
つた。又牛、
家兎及、
モルモットの新鮮
なる肝臓
は之
な
自家融解作用奄起
させ
ると、
inhibitor
ガ現れて
くろとい
ふ。
新鮮な家兎
の肝臓
及腎臓
た酸
で加
水労解す
ると。Sulfonami
d
の
inhibitorが現
れてくろ。
正常
な人尿
はinbibitorが絶無か、又は極く
少量であ
るが
酸で加水分解
すると
出現
してくる。又肋膜液
や、
弓ウ
噂チ
スの關
節腔
液及膿汁
中には、
い
つも
存在
す
うが
血清
中にはない
と云
ふ.
ある種
の
細菌
はそ
の膿
四に
inhibito
r隠、も
つ
てゐて、培讐
には無いあ
亀あろが逆に培地中にあつて菌體内には少いもの
又興味あることは、肺炎讐球菌第玉型菌に於て抗
Su;fap
yridin
性が登蓬してく
ると、Sulfonamidのinhibito理が瓦非常に壇してくるといふ。
吾々の教室に於て
(小泉氏)直竹筍
エキスを添加せる培地に於て
Sulf-
onamidと
Sulfapyridinの作用が
阻止さるる事實を認めた。(長谷川
昭和十六年日本傳染病學會総會講演及び、小泉、傳研集談企日、發表)、
師ち
Sulfapyridin
の肺炎讐球菌第I型に封して、封照に於ては、少く
とも、
一六・○○○倍まで殺菌作用を呈し、三二・○○○倍、六四。○○
○倍にては張い發育阻止作用を現しそれ以上、二五萬倍までは弱
い比較
的登育阻止作用を呈するが、前記筍
エキスを
添崩して培養した場合
には殺菌作用は、四・○○○倍
までとなつて
二六・○○○倍ま
では、登育
阻止作用に攣り、それ以上は殆んど發育阻止作用も見られなくなつた。
肺炎菌第III型を用ひた場合にも同様の現象を現はし、Sulfonamidと溶
連菌
の場合には、更に、強力にこの現象を認めることを得た。
又
一方眞竹の竹韮の水
エキスを以て、實験した
慮が試験管内に於て肺
炎墜球菌に封して強力に
s亀
a農
§
の作用を助長することを認め
た
。
長谷川=朝近化學療法剤の作用機韓に關する研究
八八七
22
長谷川=軌近化學療法蜘の作用機韓に關すろ研究
八八八
第 十 九 表Sulfapyridlnの 作 用 に 及 ぼ す 眞 竹 筍 エ キス の影 響
(PnI型,基 礎 培 地 ブ イ ヨ ン作 用48時 間)
同 上(PnIII型,,)
Sulfonamidの 作 用 に及 ぼ す 筍(眞 竹)エ キ ス の 影響(溶 連 茜,基 礎 培 地 ブ イ ヨ ン)
第 二 十 表Sulfapyridinの 作 用 に及 ぼす 眞 竹 の 竹董 エキ ス の 影響
(PnI型 基礎 培地 ブイヨン,30時 間作用後 の肉眼的所 見)
同上,血 液寒天斜面上に後培養せし所見
Sulfapyridin
の
み
に
ては
肉
眼的
に
約
六
萬
倍
ま
で、
發
育
阻
止
力
が
あ
つ弛
も
のが
、竹
董
ヱキ
ス乱を、
旦里添
加
す
るこ
とに
よ
り、
一〇
〇萬
倍
ま
で發
育
阻
止
作
用
が
助
長
さ
れ
た。
殺菌
作
用
の方
では
Sulfapyridin
のみ
に
て
は
二六
・○
○
○
倍
以
下
で
あ
るが
竹
藁
エキ
ス
を
添
加
し
た
も
の
で
は
約
二
五萬
倍
ま
で
助
長
さ
れ
た。竹
莚
二
スを
用
ひ
た、
蓉連
憲
の易
合には此の現象は起醜ないことは
面白
い
事實である。
筍
エキスの場合には果
して
inhibitorが
存在するのであるか、といふこと及び竹董
エキスの場合に作用を促進する有数成分
に關しては更に研究を綾けてゐる。若し此
の作用促進性因子即ち賦活物質
の本態が
判明すれば、化學療法剤の作用増強ともな
り興味あること〉なるであらう。
上述の様にinhibitor
翻ち阻害物質の發
見は之等藥剤
の作用機轄を検索する
上に
於て試験管内及び
生髄内共に極めて
大切
な重大な意
義を有するに
至つた。帥ち、
Sulronamid
の作用は細菌の登育
を阻
止
する事實は前述の試験管内及び
S.c.c.法
23
等に依る文献蛇に實験等によ
つて愈
為明であつて、凡らく菌禮内の酵素
作用を妨害するものであると考
へられ、inhibitOrは細菌體が之を作つ
て、その妨害作用を又附害して、藥剤の作用を妨害せんとする如何にも
面白い自然界の現象である。從つて古くから言はれてゐる様に細菌罷は
ある藥剤に封して
瀞曾(抗性)になるといふ事實の
一の謹明なも之に依
つて想像することが出來る篠であ
る。又ある藥剤に依つて
festに威つ
た時土屋博士等
の所縄攣換療法が
数勘奏するといふことも
意味づけら
れるかもしれない。
依つて今後は此の
inhibitorの性質をより
究明し
inhibitorのinhibitorを見出すか又は更に進んで藥剤の作用を増彊す
る所謂賦活物質を研究する必要が
ある課である。又、Randolph,
AlVin
Coburn(J.ofexp.med.Vol.72.No.1July 1.1940)等は
Snlfap-
yridin
.
ニコチン酸及び
Coenzym(助酵素)等が
葡萄簸球薦の増殖
に封する關係を研究して、Sulfapyridin
によつて、細菌
の新陳代謝を
攣化させるときは、その作用が
出現しない三
)から考
へて、S課
馨y雫
錠in
の作用は細菌の新陳代謝を攣
化せしめて糞育を阻止するものであ
ると云つてゐる。
この時、
ニコチ
ン酸は、その作用は無いといふ。以上の論明によつて、
Prgtosil及びその他の類似化合罷
の作用機韓は生罷内に於て菌の壷育
を阻止するものであらうと云ふ事實ば
動かすべからざるものとなつた
様に思
へる。
尚筆者は前記の様に、培養基の保
存の時間的相異によつて、殺菌性に激
しい差異の生する三
あ
原因として
Sulfonamidが血液中のある因子
と結合して、急激なる衝撃を與ふる物質を形成するのでは無いかとの想
定
のも
と
に目
下
研
究
を
績
行
して
ゐ
るが
、
偶
々S
chonholzer(Khn.W
.
S.19Jahrgang.Nr.31.2.Aug.1940.S.790)
は
Kataphorese
の試
験
に
よ
つてProntosil
Solubil
は血窓痢蛋
白罷
と、
非
常
に
よ
く
結
合
す
る
こ
と
を明
に
し喪。
此の時結
合しう
るものは
GlObulinではなくて、Albuminであることな
實験
し
てゐ
る。
此
の結
合膿が
果し砂k如
何なる意味
たも
つかは
今後
の研究問題であ
る。
樹
Sulfonamid
劉が菌に封す
る直接作用であ
るとなす説
に
形態
に及ぼす變化
の
問題があ
る。郭ちLevaditi
及
Vaisman(Compt.rend.Soc.de cbiol.119:946,
1935)は
Sulfonamid翻は溶連菌や肺炎墾球菌
の葵膜形成為阻害
する
となす假説
た樹立
し喰菌作用
た受け
るためには英膜
の
清失が必要であ
るとの前
提
のも
とに
行
はれた實験
であ
つて、絵り支持
されては
ゐな
い。
そ
の他、菌
形が膨
隆したり連
鐡が形成
されたりす
るといふ實験があ
る。
尚
細茜
の新陳
代謝
に封する
Sulmamidの影響
た報
じた多
くの仕事が
ある。
例
へば
Barron
及Jacobs(Proc.Soc.exp.Biol.N.Y.37.10)は
Sulfonamid
は溶連菌に於て、Glucos
e
の酸
化抑制た見、又friedlander
茂菌
による
Glucose
及乳酸盤
の酸化抑制た認めた。
その後
Chu
及Hastrigsは○・六六%
Sulfo
namid
は白鼠
の横隔
膜、
肝臓、及
人血等
の組織
が酸素
た取る事
た絶
えす減少
せしめることた認
め、又同
じく、鷺、
溶連菌、淋菌、
蔀炎讐
球薗
I、皿及脳膜炎菌等
の
酸素呼吸
た減少
せしめるこ
と
た認
めた。
こ
の實
験は
Sulfonarnid
は細菌が物質た利用す
ろこ
とた妨げ
る様
に作
用す
うか、
又は本刺
は物質た變化せしめて細菌
に利
用せられない様
にす
る
可能性た示
して
ゐ
る
のであ
る。
又、Levaditi等
の説では
Sufonamid
剤は凡て膿内にて更に變
化して化學的
有
長谷川=朝近化學療法剤の作用機韓に關する研究
八八九
24
長谷川=軌近化學療法鮒の作用機韓に關する研究
人九〇
数因子Xな
る有機蛋白膿
と蜜接に結含して
細菌が、自由
に利用
して、新陳代謝
に資す
る
生膿
の榮養素
た同化
する力
な遮断
し、
以て細菌
の發育抑制或は葵膜形
成能力
の阻止現象等
為おこし、次
で生、膿防禦力
の
増大、就中、喰菌作用
の増大
た惹起し、喰菌
に鍬して抵抗力
た喪失
した細菌は
Leucocidinによつて白血球た
破壌し得す
して
死滅
の
一途た辿
るのであ
るこ
と為稻
へて
ゐる。
Sulfonamid
の細
菌
の毒
素産
生
に
及
ぼす
影
響
、
Prontosil及
Sulfonamid
が溶連菌
の毒素
た中和す
るか、又はそ
の産生た妨げ
る
といふ説が多く出て
ゐる。
初
め
Bosse.
は
Prontosilの存在
に於て、
溶連菌が培養
さ
るると
き
に、
溶血
素
(Streptolys
in)が清失するこ
とた始めて報告
して
ゐる。
第 二 十 一 表Prontosil solubileに よ る實 験
飯 匙 毒0.1%0.2cc(0.2mgProntosil1%)
第 二 十 二 表Prontosilsolubileに よ る實 験
第 二 十 三 表 飯 匙 毒0.1%0.2cc(0.2mg)
間
も
な
く、
Levaditi及
Vaisman
は
Prootosil,Neopr
ontosil.
及他
の
三
つ
の
Azosulfonam
id誘導
髄
は
夫
々、
試
験
管
内
に
於
て
、
溶
連
菌
の
Leucocidin
及
び
Han
lysinの作
用々
阻
害
す
る
こ
とた
報
じて
ゐ
る。
爾
氏
は又
、
淋
菌
の菌
灘
内
毒素
は
Azosulfona
mid化
合物
、
及
Sulfonb
en
ol誘導
體
、例
へばDiamlno-diphenylsulfone
特
に
4Nitro
4aminodiphenylsulfoxideに
よ
つて
中
和
さ
れ
る事
た謹
明
し
た。
特
に
こ
の
物
質
が、
封
照
で
は
一〇
〇
%弊
死す
る
二
十
日
鼠が
三〇
-
六〇
%
救
助
さ
れ
るこ
とた
見
た。
脳
脊髄
膜炎
菌
の菌
體
内
毒
素
は
Sulfoxideに
よ
つて
中
和
され
るが
、
こ
の時S
ulf.
olnamid
及
4Nitro4,aminodiphenylsulfone
で
は
中
和作
用
は
崩
い
と
い
ふ。
Aertycke菌
の鰹
内
毒
素
は
、
最
も
よく
Sulfoxide
によ
つて
中
和
され
る
とい
ふ。
只何れも葡萄歌球菌
の
毒素
の
一-二倍
の
鋸小制
死量為
中和す
るに溶
到
ら
な
い、
Carpenter等
(Science,88.530.1938)は
淋菌
の毒素
の
致死量た
Sulfonanid
で
助
け
ることが出來
るとい
ふ。多
くの
研究
者
達は
Sufonanid
は溶連菌
の
可溶性毒素
に欝しては殆
んさ
作用
しないと信じてゐ
る。
吾
々
の
研
究
室
に
於
て
はP
rontosil
solubileは二
十
日鼠
の
生艦
内
に
於
て
之
を
前
庭
置
す
る
こ
と
に
よ
つて、
ハブ
蛇
毒
を
不
活性
化す
る事
實
を
認
め
て既
に報
告
し
た。(實
験
醫
學
二
三卷
一二
號
)
(第
二
十
一、二十
二
二
十
三表
)こ
の事
25
實
は
タ
イ
ワ
ン
コブ
ラ蛇
毒
には無
敷
で
あ
つて、P
rontosil及
び
Sulfona-
mid
等
に
は
そ
の作
用
が
な
か
つた。
又
麺
時
田
申
博
士
は、
タ
イ
ワ
ン
コブ
ラ
、
タ
イ
ワ
ン
ハブ
毒
にて
此
の仕
事
を追
試
して
、
優良
の成
績
を得
た
。
(實
験
醫
學.
二
五卷
一號)
以
上
の事
實
に
よ
つて
、毒
素
に
及
ぼす
Sulfonamid及
び
そ
の
類
似
化
合
物
の作
用
も或
る程
度
の意味
を
も
つであ
らう
と考
へら
れ
る。
Sulfonamid
は
抗
髄
の灌
生
を盤
蓬
す
る
や否
や
此
の物
質
は
試験
管
内
では
兎
角
、微
々た
る作
用
し
か
な
いが
、
一度
身
膿
内
に
入
る
と
き
は實
に劇
的
役
割
を演
する
も
ので
あ
るが
故
に.多
く
の研
究
者
は身
體
自身
が
大
な
る
役
鷺
をな
す
の
であ
ら
う
と
考
へ、
免疫
體
を
産
生
す
る
ので
はあ
るま
いか
とも
考
へる
覧到
つた
。
帥
ち
Levaditi
及
Vaismanの實験
によればご十
鶏鼠に先づ溶漣菌
による腹膜炎
為起
させて置
いて、之
な
Pronosil
にて庭
置して治癒
せしめ、之
に
同様
の溶連
菌た再感
染させて實験
したところが.封照
の
Prontosilにて
庭
理しない二十日
鼠
と同様
に、弊死す
るのた
認
めた。
この
實験
は
又、Niiti及B
ovet(Compt.
rend.Acad.d.Sc.,202:1221.
1936)によ
つてはご十日鼠及家兎
に就き、Seastone
(J.Immuunol.
33.403.1937)によ
つて
は、
モルモットに就
て、追試
せられて確
認
された。Nitti及B
overは更に恢復
した動物
の血清は同
一菌株だ凝集
しない
ことたも認
めた。又
Fischer(Arch.internet.
de pharmacodyn.etde.tberap.
56:131.1938
が
Wmght氏
の毛細管法為用ひて
の全血液中
に於け
る實験成績
は
次
の樵であ
る。
郎ちご頭
の家兎に於てProKilo五〇薩
た夫
々投興
して、投興前と
投輿後
三乃
至四時問後
に於け
る、血液の
オプン
ニン係籔た
調査した
ところが、
何等
の差異
な認め
なか
つたといふ。彼は又
Nitti及
び
Bovetの實験
に於る事賀
から、溶連
菌
の感
染より救
はれた家兎
の血液中に特異凝集素
た見出し得ず
とい
ふ
實験
た確
認
してゐる。
然
るにButtle(ProRop.Soc.
.Med.31:1548.1937)は
こ十日鼠為
肺炎變球薗
に感染せしめて、
之為
4.4、Diamno-diphen
yl sulfoneのB
enzyliden Schff's
聴基
によ
つて
治癒
せしめた
ところが
二十日鼠
は免疫た得て.再感染
に封
して、
もはや感染
しない
ことを認めた。然
し乍
ら同
じ様
な實験
た
溶通菌
為用
ひて行
つ
た
ところが
二十日鼠は免疫
性を得られ
なか
つた
といふ。
又、Whitby(Lancet,
131210.1938)の實験
によれば
三〇匹
の二十臓鼠為用ひて、
之
に肺炎蔚第
I型為感染
せしめて、之潜Sulfapyidinたも
つて、治療した後之
に、致死
量の
一〇
・○○○倍
の茜
量為以
て慮感染
せしめ、何等
の治療た施さなか
つたが、之
た救
ふことが出來た
といふ。禽
こ
の
研究に
先た
つて
Buttl
e
は
二十
日鼠にチフ
ス菌
のムチ
ン浮游
液怨
以て感染
させ、之たS
ulfonamidにて治療
し
たところが血清中
には凝集
素た生じた
といふ。
然
るにF
einst
one達
の嘗験
によれば、ButleやWhitby
の
實験
とは大分
、趣
が異
る様で
ある。印
ち四〇匹の二十
日鼠鳥以て、I
、II型
の肺炎讐球菌た
感
染
せしめ、之
為D
iamino-dip
henyl
sulfone及Sulfapyri
dinか以
て治療し、是等
に極く僅
の蔀ち
一〇乃至
一〇〇倍
の致死量
の同菌株
為以て
再感染な行はしめた
ところが、唯
一匹生存
せるのみ
にて他は全部弊死
した
のである。
此
の爾
者の實験
た比較
して
Feinstone
器
の共同研究
者
Long及Blissは次
の様
に
蓮
べて
ゐる。
郎ちW
hitby
の實験
の場合
には明に二十日鼠は肺炎菌
に封して、免疫奄得た
も
のであ
るが、Feinstone
等
の實
験に於
てはSulfona
midによ
つで
免疫
の成立が妨
害され
たとは思
へない。寧ろ
非常
に早く肺炎茜感染
から恢復した
めに免疫
艦
の構成
さる
絵硲が
なか
つたのであらう
と蓮べてゐる。Feinstone達
の
用ひた
長谷川=朝近化學療法剣の作用機韓に關する研究
八九
一
26
長谷川=朝近化學療法鋼の作用機轄に關する研究
八九二
菌株
は毒力が極めて強く
して、急速
に
組織
の中
に侵襲
すみも
のであ
つて
一i
五
個
の菌数を以て
三六時間
に
してト
死を來表す
ものであ
つれがWhitbyの使
用
し象菌松は、
一匹に五個宛
、接種され癒
る、
六〇匹
の
こ十B鼠
の平均生存時間
が、八〇時間であ
つ敦
ビころから、
推察
して毒力が如
何に弱か
つれ
か
ゾ
剣
るの
であ
る。
而も彼は約
一〇萬個
の)肺炎菌
の大
量を接種しても倫、動物をSulfapyridin
によ
つて救
ふご
ざを得象ことから考
へるビき
は、免疫髄を作り出す
絵硲が充分にあ
つ表
こビが考
へられる次第
であると云つて
ゐる。
帥ち、
この實験
もSulfapyridin
によ
つて、
生じ表免疫
ではなくて菌膿
によ
つて
生じた
る菟疫
であ
るご云ふ事
である。
叉Long等
の實験
によると、
ご十日鼠
に致死量以下
の量
の溶連菌を接種して、
次に同菌橡
を以
つて
再感染
をや
つても、決
して
菟疫
は出來なか
つ象
とい
ふ。溶
連菌
を以て感染
され象
ご十
13鼠を
Sulfonamid
にて
治癒
せしむ
るなれば、そ
の
ご十日鼠
は何等感染を受けれ
こどのない新
しい
ご十日鼠
ビ同様
である芝い
ふこ
とも推察出來
るこ蓬郭、ある。Lockwood一涯によ
つて明
にされれこ芝であ
るが、
人間叉は
モル
モットが溶連菌
によ
つて感染
されぬ場合
に
Sulfonamid
で治癒し
ても
Antistreptolysin
の債
には全
く影響が
ないといふことであ
る。
以
上
の様
にSulfonamidは抗
罷
の産
生
に封
して
、何
等
の髭
響
を
及
ぼ
さ
な
い
ミす
る
福般
的
の観
察
に反
してW
elch等
(J.A.M
.A.111.226.1938
)
は産
生
す
るミ
いふ
一派
であ
る。
帥
ち色
々
の實
験
の結
果
、
彼
は
Sulfon-
amid
は
Brucella
菌感
染
動物
の防
禦
機
構
を
刺戟
す
る
ミ
いふ作
用
をす
る
も
のであ
る
ミ
し、
そ
の結果
特
異
の
Opsoninの産
生
を増
加
し
、
又、腱
内
毒
素
及
び
Aggresin様
の物
質
を
中
和
す
る
こ
鷲に
よ
つて、
喰
菌
作
用
を
惹
起
せ
しむ
るも
ので
あ
る
ミ結
論
し
て
いる。
然
し乍
らFrancis(Lancet.1
496.1938
)は又
之
に反封
の實
験
を示
し
て
い
る。
Brucella
菌
のある菌松は
心臓
エキ
ス、ブ
イ
ヨソ培養
に於て
Sulfonamid
に非常
に敏感
であ
つて、ご萬個
の
Brucella
菌
は○・〇
一%の
Sulfonamid
で殺され
るぜ
いふ事實からしてWelch等
の結論は本末を顛
倒してゐ
る次第であ
つて、第
一に
bacteriostatisch
師
ぢ細菌
の登育
抑制作用によ
つて、菌
膿内
毒素
の形成が阻害せ
られ、次
で上蓮
の様な免疫反磨が起
るも
のビ
考
へ可
きであ
る
ぜ反駁
してゐる。
此
の説
には
Menefee及Poston等も非常
に賛
成して種
々の實験
を行
つ象結
果、
細菌
の登育阻
止作用
域云ふも
のは、生髄
の正常
の
防禦機轄
をして、侵襲
してく
る細菌類
ビ適當
に抗雫せしむ
るも
のであ
る冠説
いてゐる。
以
上
に
よ
つて
考案
す
る
に
、Sulfonamidが
抗
罷
産
生
に直
接
關
與
す
る
や、
否
や
ミ云
ふ
こ
ミは
、
全然
否
定
は
出來
な
いけ
れ
共
、
主
な
る
作
用
は
生禮
内
に於
て細
菌
の嚢
育
が
阻
止
さ
れ
る
こ
εに
よ
つて惹
起
さ
れ
る
も
の
の嫌
で、抗
騰
産
生
は
第
二義
的
のも
の
ミ解
澤
す
る
のが
穏當
で
あ
ら
う。
Sulfonamid
は
生
膣
の喰菌
作
用
を
鼻
め
る
や
否
や
初め
Domagqk
はP
rontosilは生讐内に
於て、
喰菌作用を刺戟
す
るも
の
》襟
な
意見であ
つ流が、後には色
々實験
の結
果喰菌作
用た趨
し
易くす
る爲に直
接細茜
に作
用はす
るが、網駿織
内被纏胞
系続
に作
用する
ビは
確言出來ぬ
ざ云ふ態
度に
攣
つれ。
其
の後、この問題
に關
して
のみ
でも實
に多数
の文献が現れ象が、要するに、Long
Bliss等が、力説
する様
にSulfona
mid
は嚢育阻
正的
に作
用する他
に、癒置
され
糞動物では封照より絵分
の喰菌作用が趨
るのは
事實
であろが、そ
れは輩
に、喰
菌され易からしむ
る何も
のか
穿あ
るので、
凡らく、傷
けられれ
菌が
簡箪
に喰菌
され
るざ考
ふ可きであらう。
結
論
27
以上の諸説を通覧して纏めるなれば、Sulfona
mid及びその類似化合物
の作用機轄
の本態は要するに
生禮内に於て"特殊反慮を惹起するもので
はないであらう。
多くの業績を見渡して、確實
に抗髄産生を促進するεか、喰菌作用を特
に昂めるεか、又網状織内被細胞系統に刺戟的影響を與ふるεか、三云
ふ檬な事に就
いて謹明を與
ふる有
力な實験も無い様である。
唯、細菌類ピ
及ぼす直接作用申、特に殺菌作用εか、襲育抑制作用ε云
ふものは、或は試験管内に於て、又S.c.c.法にて全血液内に於て、微
に入り細に渉O實験された結果、此の事實は首肯出來る課である。
最も穏健なる考
へ方ミしては、從
つて生禮内に於ける殺菌作用よりも、
寧ろ襲育阻止作用であらう。
もミより前述の如く、或る特殊な濃ル度にて、突然殺菌性.を現はすぐ)いふ
事實もあるが、生艦内の比較的稀薄なる濃度の塵では、細菌の糞育は凡
らく例外なく、阻害されて居るこミになるであらう。
此の阻害作用の原因に就ては、又色々の理由もあるこ霊であるが、此の
侵襲力の衰弱した細菌は生艦内に備
へられてゐる、自然防禦機轄
に依つ
て、途に殺菌されるものであつて、例外を除き、菌殺滅の本態は、生罷
自己の、殺滅素であらうぐ)云ふ慮
に、學界の大勢は、赴いて居る様であ
る。但し、初めに述べた様に総ての化墨療法剤
の作用機韓を、一緒に論
するεいふこ言は、大きな疑問がある繹であるが、少くミも、Prrontosil
Sulfonanmid
及
Sulfapyridin
等
は同日に論するこぐ〕が大禮出來た澤で
あるが、他のものも是等
に依つて
類推するこ霊が
出來る程度に解澤す
べきである。毒素
の中和読等はその物質の特殊の性質か、又は二次的の
意義
ミ解して、良
い様に思ふ。
血清蛋白體分劃こ血清高田氏反應
その關係に就て
―
狸紅熱患者血清を材料
そして―
東京市
立本所病院(院長
村
山達
三講師)
東大醫學部坂口内科(主任
坂
口康藏教授)
崔
應
錫
Sai Osyaku
目
次
第
一章
緒
言
第二章
實験資料そ實験方法
第三章
實験成績
撰=血清蛋白鱒分劃ビ血浩高田氏反磨ビの關係に就て
入九
三