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Copyright(C) 2003-2006 SUZUKI Kimiaki. All rights reserved. 1
知的財産の価値評価
東京理科大学専門職大学院
総合科学技術経営研究科
知的財産戦略専攻 助教授
鈴 木 公 明
2006.06.19
知的財産とは(2)
知的財産(IP)
知的資産
特許権、著作権、商標権、育成者権...
発明、著作物、使用商標、植物新品種、商号、営業秘密...
電話加入権水利権...
知的財産権(IPR)
「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの、商標、商号その他事業活動において用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。(知的財産基本法2条1項)「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。(同法同条2項)
知的創造/情報フィルタ
法令保護根拠フィルタ
無形資産
法令権利規定フィルタ
R&D成果、
デザイン、ブランド、顧客名簿、経営管理システム...
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知的財産法体系における位置づけ
出所:特許庁HP
特許制度の概要
経済的に価値ある発明をした者に対し、公開と引き換えにその独占的実施を担保し、研究開発投資の回収と超過利潤追求の手段を与えることで研究開発へのインセンティブを高める一方で、一定期間後にはその発明の実施を万人に開放することで、経済社会全体の発展を意図する制度
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特許権者の権能
研究開発活動の成果として発明をした者は、特許庁に出願し、審査を経て一定の要件を満たすものと認められれば特許権を取得することができる。
特許権を取得した者(特許権者)は、特許発明の独占排他的な実施権を有する(特許法68条)から、他者による特許発明の実施を排除することができ、自らその特許発明を実施するか否か、また実施開始のタイミングおよび事業規模等については、市場環境等に基づいて自由に意思決定できる。
特許に関する実施権
さらに、特許権者は、専用実施権を設定することができ(同法77条)、また他人に通常実施権を許諾することができる(同法78条)。
他人に専用実施権を設定した場合には、ライセンス料等を受け取ることができるが、特許権者といえども実施が許されなくなる。一方、他人に通常実施権を許諾した場合には特許権者も実施可能であり、ライセンシーから実施料(ロイヤリティ)等を受け取ることができる上に、さらなる通常実施権の許諾も可能である。
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外国出願等
我が国の特許庁に特許出願をした者(特許出願人)は、出願後1年以内であれば、その自己の出願に基づく優先権を主張し、他人よりも有利な条件で我が国または諸外国に対し新たな特許出願を行うことができる(同法41条、パリ条約4条D(1)、PCT8条)。
価値評価方法の分類
スミスとパールの分類
・コスト法
・マーケット法
・インカム法
ピットケスリーの分類(評価方法) (考慮事項)
・コスト法 コスト
・マーケット法 市場の状態
・計画キャッシュフロー法 収入
・単純DCF法 時間
・リスク考慮DCF法 不確実性
・DCFベース決定木分析法 柔軟性
・オプション理論ベース法 変動するリスク
①バイノミアルモデル(離散時間)②ブラック・ショールズモデル(連続時間)
出所:Robert Pitkethly, 鈴木公明訳「特許の価値評価」知財管理 Vol.53, No.2, 229-252 (2003)より作成
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コスト法(1)
ヒストリカルコスト法
手法:開発、取得、維持のために費やした過去の費用を積算(原価が将来の経済的便益を反映すると仮定)
データ:研究開発費、研究の人件費、間接経費
適用:未利用特許。M&Aにおける事業買収
長所:単純明快
単所:将来の経済的便益を直接考慮していない
コスト法(2)
再構築費用法
手法:再構築するための費用を直接算定(原価が将来の経済的便益を反映すると仮定)
データ:推定研究開発費、推定人件費、または推定購入価格
適用:未利用特許。M&Aにおける事業買収
長所:単純明快
単所:将来の経済的便益を直接考慮していない
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マーケット法(1)
比準アプローチ
手法:類似特許(群)の売買額、ロイヤルティ率から価値を推定
データ:個別特許(群)の売買額、ロイヤルティ率
適用:未利用特許の売却、ライセンスアウト
長所:単純明快
短所:比較例の存在・信頼性
マーケット法(2)
残差アプローチ
手法:株式市場データ、M&Aの売買額から価値を推定
データ:株式時価総額、M&Aにおける事業売買額、他の有形資産評価データ、無形資産の内訳
適用:企業(事業)保有全特許の評価。M&A長所:客観性
短所:個別評価困難。有形資産の時価は算定困難な場合あり→簿価で代用
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単純DCF法
手法:将来キャッシュフローを資本の機会コストで割り引いて積算し、現在価値とする
データ:将来キャッシュフローCt、投資予測It、特許の寄与率、資本の機会コストk(←経験則、WACC、CAPM)
適用:自己実施(予定)または既にライセンスアウトしている特許(群)。知財担保融資・証券化
長所:企業財務で一般的
短所:寄与率の客観性、リスク変動を無視
T CtNPV = Σ - I
t = 1 (1+k)t
T ItI = Σ
t = 1 (1+k)t
TF法の概要
出所:産業構造審議会知的財産政策部会第2回経営・情報開示小委員会 配布資料/資料6:戦略的知的財産マネジメントのための知的財産略指標(森委員プレゼン資料)
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リスクを考慮するDCF法
確率的(モンテカルロ)DCFアプローチ
手法:事業の数学的モデルを構築し、多数回のシミュレーションにより価値分布を求める
データ:期待キャッシュフローE(Ct)、投資予測It、特許の寄与率、資本の機会コストk、ステージごとのリスク情報、主要パラメータの確率分布
長所:価値分布が視覚的で、直感的把握が容易。感応度分析が可能
短所:出力が分布→結果の解釈が困難
リスクを考慮するDCF法 つづき
モンテカルロDCF(Crystal Ball (R) 2000)によるシミュレーション結果例
技術協力/資料提供:(株)構造計画研究所シニアコンサルタント・辺見和晃氏
度数分布
0.0
0.0
0.0
0.0
0.028
0
7
14
21
28
-90.1 719.8 1,529.7 2,339.6 3,149.5
試行回数 1,000 表示値 990
予測: 純利益
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オプション理論を用いる手法
TRRUメトリクスBSモデルにおける現在価値Sは、ピュアプレイ企業の事業価値(=株式時価総額-純資産総額)から求められるという仮説の下に、市場データから必要なパラメータを算出。
*)ピュアプレイ企業:単一技術(製品)に特化/資本金・売上・利益が小さい/社歴が浅い/経営者が著名でない
長所:技術・特許単独の価値を算定。キャッシュフロー予測が不要。データが客観的。
留意点:S算定の精度(仮定の検証、株価変動の影響)。同一技術分野のピュアプレイ企業の存在。
オプション理論を用いる手法(つづき)
簿価(簿価(貸借対照表貸借対照表)) 時価時価
純資産総額
純資産総額
資産資産 負債負債
資本資本株式時価総額
株式時価総額
・オンバランス資産・負債の評価差損益
・・オフバランスのオフバランスの技術資産・特許技術資産・特許
・その他人材、顧客関係等のオフバランス無形資産に対する市場の期待・リスク評価
ピュアプレイ企業のオフバランス資産構成
負債負債
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TRRU
式1:C=SN(d1)-Xe-rτN(d1-σ√τ)式2:d1={ln(S/X)+rτ+σ2τ/2}/σ√τ
X:製品開発コスト(技術を製品にするために特許権保有者が費やさねばならない金額)τ:発売までの時間(資金力の十分な会社が、現在の開発状況において特許を発売可能な製品にするまでに費やすであろう時間)r:リスクフリーレート(90日米国国債利率)S:製品が完成した場合の原技術の価値(評価する特許権と同じ技術領域の、3~30社の小規模公開企業(=ピュアプレイカンパニー)に関する、発売開始時の製品ごとの平均事業価値に基づく代表値)σ2:類似技術の変動性の測度(Sの算出に用いた会社の株価リターンの自然対数値を取った平均に関する平均的分散)
出所:米国特許出願公開公報US20020004775 / A1, "Online patent and license exchange"
特許証券化における適用
ピー・エル・エックス社とベンチャーラボ社の価値調査に基づき、鮫島弁護士が価値評価
ピー・エル・エックス社:複数の事業モデル・シナリオに対し、モンテカルロDCFを適用して価値算定。結果の平均を原資産価値とした。*TRRUによる結果は参考
ベンチャーラボ社:特許庁の技術評価指標と独自のノウハウに基づき算定
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価値評価のまとめ
知的財産の価値評価とは
主体・目的・定義に応じて評価手法も変わる(定性/定量、具体的手法)
絶対的な価値は決定できない(事業モデル、評価日時等の前提により変わる)
専門家による合理的な推定値である(市場データ、財務データ、経験則に基づく)
特許権とリアルオプション(研究開発事業への投資機会の価値)
延期オプション:特許権は、意志決定の延期をする権能を与える権能である。
*延期オプションの価値=特許権の価値?廃棄オプション:特許権の積極的関与を見出すことは困難(特許権の価値はベースケースに反映)ラーニングオプション:特許権は、技術的不確実性を減少させるための研究開発投資を独占的に実施する権能である。拡大・縮小オプション:特許権者は、事業規模の変更について自由に意思決定できる。
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特許に固有のオプション
将来の独占利益に対する(コール)オプション
特許の廃棄(プット)オプション
特許の転用(プット)オプション
特許の拡張・縮小オプション
特許のスイッチングオプション
将来の独占利益に対する(コール)オプション
特許出願過程及び特許権取得後の各段階において各種の料金を納付し、特許権の取得・維持に努めることは、基本的に特許権によって将来もたらされる独占利益に対するコールオプションの購入であると見ることが可能。
「出願には、特許出願を未来まで継続することについての、コールオプション価値が含まれていると考えることができる。そして、そのコールオプションの行使価格は、出願の次の段階に進むコストである。このようなコールオプションを価値評価するためには原資産の価値を知る必要がある。その原資産とは、出願を次の段階まで継続させる等のオプションであり、その連鎖の 後のリンクは、特許から得る将来の期待独占利益となる」(ピットケスリー)
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特許の廃棄(プット)オプション
特許権の取得過程はそれ自体、発明の完成に始まり、出願料納付、審査請求料納付、設定登録時の特許料納付、権利満了までの各年分の特許料納付と続く、多段階投資計画。合理的な出願人であれば、特許出願手続における各段階で、料金の納付や所要の代理人費用の支出が、将来成立するはずの特許権によってもたらされる将来利益の期待現在価値と見合っているかどうかの判断を(無意識的にであれ)行っているはず。審査過程で権利化が困難であることが判明した場合、それ以降の料金納付や代理人費用の発生を伴う手続を断念し(特許出願の放棄)、または特許権の取得後に技術の陳腐化が判明した場合等に、翌年以降分の特許料の納付を行わない(特許権の放棄)といった選択が可能。「特許出願は、……出願コストの現在価値と出願を放棄するオプションの価値……の合計として、評価することができるであろう。同様に特許は、……将来の更新料と特許を消滅させるオプションの価値……の合計として、評価することができるであろう」(ピットケスリー)
特許の転用(プット)オプション
医薬の研究開発事業において、たとえば内服による副作用が発見されたためにさらなる開発が断念された医薬候補物質がある場合に、関連する特許権等の権利を買い取り、内服薬でなく経皮吸収の外用薬として実用化の道を探るベンチャービジネスが存在。他の用途の可能性があるために特許権とともに研究開発事業を売却できる可能性があり、研究開発事業を単に廃棄(中止)するよりも高い価値をもつ場合には、特許に固有の「転用オプション」を認識することができる。「その 上の代替的利用の価値……に等しい行使価格を持つプロジェクトに対するアメリカン・プットとして評価される」(トゥリジオリス)
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特許の拡張オプション
特許出願人は、先の出願から1年以内であれば、優先権を主張して我が国または諸外国に対し、ライバル企業に比較して有利な条件で新たな特許出願を行うことが可能。諸外国への出願は、海外マーケットにおける事業活動の独占権を合法的に得るための低コスト、無リスクの選択肢。優先権を主張して新たな出願を行う場合には、先の出願以降の研究開発成果に基づき、より広い「請求の範囲」に基づく特許権を取得することも可能。優先権主張を伴う新たな出願は、特許に固有の拡張オプション。
特許の縮小オプション
特許出願過程において、審査官から「特許請求の範囲に記載されている発明概念が、先行技術との関係において広過ぎるので、特許権を与えることができない」との指摘。出願人の対応:「現状の請求範囲で特許すべき」と主張して再考を迫るハイリスク・ハイリターンの選択肢と、請求範囲を限縮して、狭い権利となっても確実に特許権を取得するローリスク・ローリターンの選択肢。権利取得後にライバル企業が権利無効を主張している場合、訂正の手続により請求の範囲を限縮することが可能。請求範囲の限縮は、権利が広すぎるために権利を取得できず、または権利が無効となるリスクを回避して、確実に特許権を取得、維持できる選択肢であり、特許に固有の「縮小オプション」
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特許のスイッチングオプション
特許権者は、独占排他的な実施権と、他人に実施権を設定/許諾する権利の両方を保有。→特許権の活用法に関し、ア)自社のみで実施、イ)他社に専用実施権を設定、ウ)自社実施に加えて他社に通常実施権を許諾、等の選択肢を自由なタイミングで選ぶことが可能。画期的な発光素子に関する特許権につき、権利期間の初期には独占実施してマーケットシェアとブランド価値の増大を追求し、マーケットが拡大する権利期間の中・後期にはライバル企業に実施権を許諾して代替技術の出現による技術陳腐化を予防するとともに、ロイヤリティ収益を追求した成功事例に見られるように、特許権はその活用法を自由に変更することが可能(日亜の事例)。特許権の活用法に関する柔軟性は、特許に固有のスイッチングオプション
シュワルツ博士の手法(参考)
目的:特許に保護される研究集約事業の価値評価
手法の概要:コストとキャシュフローの不確実性、カタストロフィックイベント、廃棄オプションを前提とした事業価値を、 小二乗モンテカルロ法によるシミュレーションにより求める。
評価結果:
• 事業価値(オプションあり)=1,340万ドル
• 事業価値(オプションなし)=520万ドル
• 廃棄オプションの価値=820万ドル出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
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手法の詳細(1):前提条件
• 投資終了前に予測プロジェクト価値がその期の投資コストよりも小さいと判明すれば、いつでも廃棄
• 投資レートは 大または0
• いったん廃棄したらプロジェクト価値は0。再開はしない
• 現実の投資総額は投資してみないと分からず、投資の終了時点は乱数
• コスト、キャッシュフローの両方に不確実性あり
• 投資終了により、予測キャッシュフローの実現開始
出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
手法の詳細(2):連続時間の離散時間化
<連続時間の方程式>(1) dK =‐I dt +σ( I K )1/2dz
(2) dC = (α‐η) C dt +φC dw =α*C dt +φC dwただし、dz, dwはウィナー過程の増分。ηはリスクプレミアム。α*はリス
ク調整済みドリフト
<差分近似>dK → K ( t +Δt )‐K ( t ), dz → (Δt )1/2ε などと置き換えて、
(1’) K ( t +Δt ) = K ( t )‐IΔt +σ( I K )1/2(Δt )1/2ε1
(2’) C ( t +Δt ) = C ( t ) exp ( (α*‐0.5φ2 )Δt +φ(Δt )1/2ε2 )ただし、ε1 とε2 は相関ρの標準正規変数
出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
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手法の詳細(3):経路のシミュレーション• T を特許満了の時、Δt をステップサイズとすると、NT = T
/Δt はシミュレーションにおける経路ごとの期間の数になる。
式(1‘)、(2‘)を用いて、完了までのコストとキャッシュフローのそれぞれについて、NT 期間分の経路を作り、それぞれの経路 i を2つの NT 次ベクトル K ( i ) と C ( i ) によって記述する。完了までのコストがゼロに達した後は、K ( i ) にはゼロが並ぶ。例:
K ( 1 ) = (100, 102, 85, 82, 76, … 3, 0, 0, 0, … ) C ( 1 ) = (5.0, 5.9, 6.8, 6.7, 6.1, … 2.7, 2.7, 2.2, 1.7 … ) …このペアをモンテカルロ法で100,000組生成
出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
カレンダータイム(年)
「完了までのコスト」と「キャッシュフロー」について四半期ごとにシミュレートされた経路
完了までのコスト(百万ドル)
四半期ごとのキャッシュフロー
(百万ドル)
予測キャッシュフロー投資が完了し、キャッシュフローが生じ始める
実現したキャッシュフロー
完了までのコスト
出所:エドワード・S・シュワルツ、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
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手法の詳細(4):条件付事業価値の推定
• それより以前に廃棄されていないことを条件に、特許満了時点NTでの事業価値Wは以下の式で表される(投資が終了しているかどうかに関わらない)
(5) W ( i, NT ) = M・C ( i, NT )
<投資が終了している場合>
全ての時点 j における事業価値Wは、以下の式により再帰的に計算される(6) W ( i, j ) = exp (‐rΔt ) W ( i, j + 1 ) + C ( i, j )Δt
出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
手法の詳細(5):条件付事業価値の推定
<投資が終了していない場合>
まず、割引かれたプロジェクト価値 exp (‐( r+λ)Δt ) W ( i, j+1 ) を、時点 j における状態変数についての
一組の基底関数に回帰させることにより、事業継続の条件付期待価値W *( i, j )を推定する。
この推定値W *( i, j )が期間 j における追加投資額よりも小さければ廃棄オプションを行使(W=0)。大きければ事業価値の期待値Wは、
(7) W( i, j )=W *( i, j )-IΔt
出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
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主な結果とその解釈廃棄オプションつきの事業価値1,340万ドルに対して、廃棄オプション価値は820万ドル(約61%)を占める→不確実性
が大きい場合には廃棄オプションが無視できない
特許の権利期間を20年から18年に短縮しても研究開発プ
ロジェクトの価値が変化しないためには、キャッシュフロー倍率を5から7.6に増大する必要がある→研究開発のインセン
ティブを維持するためには、特許期間満了後の競争政策も重要であり、定量的に予測可能である
出所:エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003)
参考文献
レノ・トゥリジオリス著、川口有一郎ほか訳『リアルオプション』エコノミスト社(2001)ディキスト&ピンディク著、川口有一郎ほか訳『投資決定理論とリアルオプション』エコノミスト社 (2002)エドワード・S・シュワルツ著、鈴木公明訳「リアルオプションとしての特許と研究開発」UCLA Working Paper 2001 (2003) トム・コープランド、ウラジミール・アンティカロフ著、栃本克之訳『決定版リアルオプション:戦略的フレキシビリティと経営意思決定』東洋経済新報社 (2002)Robert Pitkethly著、鈴木公明訳「特許の価値評価:"オプション"に基づく方法と更なる研究の可能性を考慮した特許価値評価法の検討(その2)」知財管理 第53巻第3号 (2003)米国特許出願公開公報US20020004775 / A1, "Online patent and license exchange"産業構造審議会知的財産政策部会第3回流通・流動化小委員会配布資料4:知的財産政策室「知的財産(権)の価値評価手法の確立に向けた考え方(案)」(平成16年1月29日)
鈴木公明個人ウェブ「知的財産関連著述・論文集」http://www.geocities.jp/icmanage/