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川勝 望
筑波大学・数理物質系(物理)・助教
理数学生応援プロジェクト専任
研究者入門 (研究開発職を目指す人のために)
科目番号:FA00037
第2回(4/24)
1.物理系の研究紹介・研究体験談
2.学術論文とは、先行研究の探し方
・研究者入門:どなたでも履修可能(文系理系問わず)
単位が欲しい人は履修申請を忘れずに!
・講義ノート・レポートは以下のWWWサイトに掲載
ツイッターでも情報発信!
・ノートを1冊用意(推奨)
調べた事、疑問に思った事などメモする。
図表や写真を貼っておく(一緒に綴じる)。
・プレゼンテーション
履修生+出席率8割以上の聴講生のみ。
・参考図書
理科系の作文技術 木下是雄(中央新書)
事務連絡
自己紹介
川勝 望(かわかつ のぞむ)プロフィール
専門分野:宇宙物理学
超巨大ブラックホールの形成や電波銀河
経歴
1995年 4月 筑波大学第一学群自然学類入学 (推薦入学)
1999年4月 筑波大学物理学研究科 博士課程入学(5年一貫)
2004年3月 筑波大学物理学研究科 博士課程卒業
博士(理学)を取得
2004年4月- 2006年3月 イタリア国際高等研究所(SISSA)研究員
2006年4月- 2008年4月 国立天文台研究員
2008年4月-2009年12月 学振特別研究員(国立天文台)
2009年12月 現在に至る 筑波大学 数理物質系 助教(任期付)
“研究員時代”
ファンシー(テニス) Newton祭実行委員
宇宙に関わる様々な分野
数学
一般相対論、初期宇宙論、
超弦理論、etc
生物学・地球・化学
生命の起源、光合成、隕石、有機化合物、惑星大気、etc
工学
宇宙開発、観測衛星、ロケット、
次世代望遠鏡、etc
物理学
惑星、星、ブラックホール、
銀河、銀河団、宇宙論、etc
情報科学
次世代コンピューター、
可視化, データ通信、etc
宇宙論には哲学や宗教学も関わる。
宇宙
物理系(宇宙)の研究紹介 ~超巨大ブラックホール形成についての話題~
ブラックホールとは?
準備:脱出速度とは?
脱出速度:天体の重力を振り切って外に飛び出すために必要な最低速度
脱出速度秒速11 km
宇宙へ!
地球
半径:6400km
脱出速度が光の速度 (秒速30万km)を超える
半径:0.9㎝
ブラックホール!
一方通行
光 光
光
ブラックホールのイメージ (ニュートン力学)
ブラックホールの半径 =シュバルツシルト半径
ブラックホールの半径は質量に比例!
例)
・地球質量:0.9 cm
・太陽質量:3 km
・太陽質量の400万倍の質量:120 万km
太陽と地球間の距離(1億5000km)の10分の1
銀河系の直径(10万光年)の1000億分の1
半径
©国立科学博物館
ブラックホールのイメージ (一般相対性理論)
ブラックホール天体
©NAOJ 数値シミュレーション(大須賀氏)
ガス円盤 吸い込まれるガス
ブラックホール
ジェット
©4D2U
超巨大ブラックホールの発見
銀河 クェーサーのイメージ
0.6光年 Nakai +1993; Miyoshi +1995
NGC4258
©NASA ©NASA
天の川銀河の巨大ブラックホールを周回する星の軌道
超巨大ブラックホールの謎
クェ
ーサ
ー
宇宙誕生後約8億年
©NASA
©国立科学博物館
ブラックホール
暗黒物質
M51
銀河バルジ)
円盤
©NASA
銀河バルジ質量(太陽質量)
ブラックホール
質量(太
陽質量
) 銀河バルジ
©NASA
超巨大ブラックホール
ブラックホールの研究史 (理論と観測の関係)
理論 観測
古 18世紀:ブラックホールの存在を予言(ミッチェル、ラプラス)
1915年:一般相対性理論の発表 (アインシュタイン)
1930~40年:チビブラックホールの 存在を予想(重い星の最期)
1950年代:クェーサーの発見
1970年代: 超巨大ブラックホールの存在を予言
1962年:チビブラックホールの 存在を観測(Cygnus X1) 1963年:世紀の大発見! クェーサーの正体(シュミット)
1990年代:超巨大ブラックホールの存在を示唆
新 1995年:超巨大ブラックホールと銀河の共存共栄の証拠を発見
理論が先行した珍しい例の一つ
超巨大ブラックホール形成 ~私の研究~
地球
月
重力
遠心力
ガス
銀河
ブラックホール
角運動量を取り除く必要がある
©国立天文台 数値シミュレーション(斎藤氏)
時間進化
銀河衝突
アンテナ銀河
©NASA
ブラックホール 銀河円盤
銀河バルジ
40-400光年
5万光年
銀河核ガス円盤
ブラックホールまでの道は遠い
Wada & Norman 2002, ApJ Kawakatu & Wada 2008,209,ApJ
銀河核ガス円盤からブラックホールへ
研究者生活体験談
• 子供の頃から宇宙に漠然と興味があった (祖父の影響)。
なぜ宇宙に興味を持ち始めたのか?
• 指導教官の授業を受けたり、直接話を聞きに行った。
→ 宇宙で起こっている現象を「物理の言葉」で理解したい!
3年生のときに宇宙物理の研究をしてみようと決心する。
4年生で宇宙理論研究室配属
最初は指導教官からテーマを貰い研究スタート!
• NHK特集&雑誌「Newton」 のきれいな画像に感動し興味を持つ。
指導教官の記事「Newton」を見て、筑波大受験を決意する!
研究者になるには?
◆ 博士号を取る。
研究者になるための免許証のようなもの
◆ 職を探す。
1.大学・研究所の常勤職員 かなり大変
2.任期付きの研究員:武者修行
まずは、こちらの道へ...
Prof. Danese
Prof.Ferrara
Prof. Celotti
SISSA(Trieste, Italy)
研究員として2年間
有給(決して高給でない)+研究費15万程度
大学院時代の研究に興味をもたれ、面接の結果採用。
トリエステってどこ?
ここ!
←研究所での愉快な仲間
異分野、異文化交流
アパート近くのピザ屋→
イタリアの食などを堪能
(週一回のペース?)
・ 海外の共同研究者を作れ、自分の研究を広く知ってもらえた。
(ヨーロッパの国際会議参加、研究所に来るゲストとの議論)
・ 視野の広がり(異なる研究スタイル)→ 新しい研究テーマ
・ 研究の楽しさ・辛さを再認識
日本では経験できない事(良くも悪くも)ばかり
機会があれば、海外へ武者修行に行っては?
イタリアで得たこと
◇ 国立天文台研究員(2年間):有給+研究費50万
◇ 学振特別研究員(2年間):有給+科研費80万
研究に100%没頭できる時期(かなり貴重)
・新しい研究テーマを進める
・観測の研究者と共同研究を進める
・海外への短期滞在や国際研究会参加で
多くの海外の研究者と知り合う
→国内外の共同研究者を増やす
国立天文台
研究者としてやっていく自信がついてきた頃かな。
学術論文&先行研究の探し方
学術論文とは?
(定義)
十分な情報を含んでいて、かつ最初に発表されたもの。同分野の研究者が(1)その結果を調査でき、(2)実験や 観測を再現でき、(3)考察の過程を評価できるもの。
もう少し簡単にいうと、
・独創的な研究結果の最初の発表
・研究者仲間の査読を受けたもの
・科学技術の雑誌に掲載、だれでも参照できるもの
学術論文の種類 ・原著論文(査読あり)
丁寧&厳重な査読がなされる
「新規性」、「有効性」、「信頼性」の3つが必須!
・レター論文、ショートノート(査読あり)
ページ数は短い(p2-5)、査読期間も短い
「速報性」を重要する
・レビュー論文(査読あり)
ある分野に関する複数の原著論文の要約;テーマ探しに良い
・国際会議論文(査読あり、査読なし):初心者向けでない
学術論文が掲載されるまで
①投稿→査読→受理
②投稿→査読→改訂→修正→査読→受理
③投稿→査読→不可→別の雑誌、レフリー変更 or ボツ
学術論文の3要素 ・新規性(originality):最初の発表か?
地道な先行研究の調査が重要、論文を読もう!
・有効性(availability):どう役立つ?
・信頼性(reliablity):実験方法は正しい?
理論的考察は正しい?
学術論文の具体例
イントロ→
アブストラクト(要約)→
タイトル→
学術論文の構成 <学術(原著)論文> <研究計画書>
タイトル(Title) 研究題目
要約(abstract)
序論(Introduction) 研究目的&背景
方法(Method) 研究方法
結果(Results) 研究計画&内容
考察(Discussion)
結論(Conclusion)
謝辞(Acknowledgements)
引用文献(References)
研究計画書の作成は、
原著論文を参考にしよう!
研究計画書とは?
審査員(研究者、財源を持っている人など)を説得し、
予算を与えても良いなという気にさせることが重要。
(チェック項目)
・研究計画の目的が十分意義のあるものか?
・提案されている研究のアプローチが信頼できるか?
・申請者は提案されている研究を実行する能力があるか?
・分野外の人にも分かりやすく書かれているか?
(専門用語の羅列はだめ、図表を効果的に使うと良い。)
・申請されている研究費の額は妥当か?
先行研究の調べ方 ・ 情報探索(ブラウジング)
1) 図書館で関係ありそうな本を読んでみる。
2) ネットサーフィン(Google等の検索エンジンで)
→ 簡単だが、情報が正しいか要確認
・ 科学雑誌、専門書や学術論文を読む。 データベースを使って文献検索をする。
日本語論文:CiNiiなど
外国語論文:Web of Scienceなど
図書館の講習会にも参加してみよう!
今日の実習
•グループ(6名ほど)を作り、
自分の興味・関心を発表する。
•グループ毎に報告会
•受講者調査票の記入
レポート(4/24)
★課題:インターネット、書籍、学術論文等を駆使して、自分のやってみたい研究分野から興味ある話題を1つ
選んで、その話題について調べた内容をまとめること
(必ず出典を記載すること)。
※次週のレポートでも継続して調べてもらうので、
1週間で調べられた範囲で結構です。
★提出期限:5月8日(火)16:30(厳守)
★提出場所:研究交流室(3B205)
【講義】:本多先生
・研究紹介:生物系
・大学教員体験談
・研究計画書の書き方
【実習】:本多先生
今回(第2回)のレポートの内容を
他の受講生に説明し、意見交換する。
来週の予告
(T-ACT登録申請課題)
学類生のための研究交流
研究ってどんなことするの? 他学類の学生の研究について知りたい! 自分の研究のヒントが欲しい! 共同研究者をみつけたい!
そんな要望にお応えします。 この活動では ・ARE経験者を中心に学生が自分の研究分野や興味があることについて話題提供 ・研究室所属学生が案内する研究室見学(予定) ・お茶を飲みながら学生同士で自由に語る交流会 を行い,学類生同士の研究交流の場を提供します。
前回の様子(4月19日) 話題「生き物の分布からわかること」 プレゼンター 生物学類4年次 藏滿司夢
生息場所の違いによる生物の形の違いや、生物の分布からその生物の侵入経路を考えるということについての話題提供がありました。終始和やかな雰囲気で、終えることができました。
参加学生:13名 参加学生の所属: 生物学類 生物資源学類 地球学類 応用理工学類
次回予告(4月26日)
話題「「光合成〜生物から物理まで」 プレゼンター 生命環境科学研究科 M1 伊藤史紘氏 人工光合成や生物における光合成の適応などについて、生物学的視点からだけでなく、物理、化学、工学的な視点からみた光合成について話す予定です 日時:2012年4月26日 18:15~ 場所:研究交流室 申込み不要,途中入退室OK!!
たくさんの学生の参加をお待ちしております。