病理解剖依頼の手引き

久留米大学病院病理部

（第 6 版）

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病理解剖の手引きです。病理解剖に関連した事項と諸注意を記載しています。

病理解剖に際しては、この手引きを参考にして、病理解剖の依頼、手引き、結

果の説明を円滑に行ってください。ご遺族に対しては、お気持ちに十分に配慮

し、誠心誠意対応して下さい。なお、病理解剖の受付には、法律で定められた

書類の提出が必要です。書類に必要な事項を正しく遺漏なく記載して下さい。

この手引きについて、質問や不明な点があれば病院病理部（内線 5494）まで

ご連絡下さい。

内容

1. 病理解剖の意義・・・・・・・・・ (2)

2. 病理解剖の依頼のしかた・・・・・ (2)

3. 病理解剖依頼の実際の説明例・・・ (3)

4. 遺族の定義・・・・・・・・・・・ (3)

5. 病理解剖の手続き・・・・・・・・ (4)

6. 病理解剖に関連する施設配置図・・

病理解剖室・霊安室図面

(5-7)

7. 解剖に関する遺族の承諾書・・・・ (8)

8. 病理解剖依頼書・・・・・・・・・ (9-10)

9. 臨床研修医の病理解剖から・・・・

CPC レポート提出までの手順

(11)

10. ご遺族への説明事項ついて・・・・ (12)

11. 弔慰金送付書・領収書・・・・・・ (13-15)

12. 実際の病理解剖の手順について・ (16)

13. 異状死とその対応・・・・・・・・ (16)

14. その他の注意事項・・・・・・・・・ (17)

15. モデル事業・・・・・・・・・・・ (18-21)

16. キャンサーボードについて・・・・ (22)

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1．病理解剖の意義

最近の高度な医療技術、とりわけ画像診断や生検診断の進歩により、臨床診

断の精度は著しく高まりました。しかし、これによって病理解剖の意義が薄れ

たわけではありません。現在でも、なお、病変を直視する病理解剖によって、

生前には分からなかった、あるいは見落とされた疾患や異常が見つかることも

まれではありません。とくに内科領域の疾患では、画像診断を含む臨床検査で

は把握できない病態が少なからず存在します。医療水準を高く維持するために

も、医師が患者の生前に行った臨床診断の検証、および診断に基づいて行った

治療の妥当性に対して、病理学的評価を得ることは重要です。

2．病理解剖の依頼のしかた

1）ご遺族に病理解剖をお願いする時は、解剖の意義と解剖によって何を明らか

にしたいのかを説明して下さい。ただし、ご遺族の心情を十分に斟酌し、思

いやりを持って接することが大切です。

2）肉親の死の宣告を受けたご遺族は深い悲しみの中にあり、大きく動揺されて

います。ご遺族への解剖の依頼は、お別れの時間を20～30分位取った後、

看護師が死後の処置に取り掛る頃に始めるとよいでしょう。

3）依頼する時は、病棟担当医、指導医、病棟医長、看護師長などが一緒にな

ってお話しした方がよいでしょう。外来で長く主治医として診療に当たって

きた主治医が同席することが望ましいこともあります。

4）依頼する時は、必ず、ご遺族のまとめ役（key person）の方を交えて話し

をするように心掛けましょう。話を聞かれた方が解剖に同意しても、説明を

聞いてない他の遺族の方が後で来られて反対し、揉めることがあります。

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3．主治医によるご遺族への病理解剖依頼の説明例

参考に、主治医がご遺族へ病理解剖を口頭で依頼する例を下に示します。

「ご遺族の皆様には、悲しみの極みにいらっしゃる時に大変恐縮ですが、ご遺

体の病理解剖について説明とお願いをさせて頂きたいと存じます。

○○さんのご病気に対して、私たちは最善の治療をして参りましたが、残念

ながらその甲斐もなく、お亡くなりになられました。

～経過の概略を説明する～

私たちは、確信を持って診断し、治療を行って参りましたが、その診断や治

療が本当に正しかったか、また、私たちの気づかない病気や異常はなかったか、

さらにお亡くなりになった原因について、私たちの考えていることは正しかっ

たか、などをもっとはっきりさせたいと願っています。そのためには、病理解

剖が是非必要で、解剖によってこれらの点が明らかになります。さらに、病理

解剖で得られる結果は、今後同じような病気で苦しんでおられる患者さんの診

断や治療を考える上で役立ち、医学医療の進歩にも寄与します。

病理解剖で判明する所見はすべて、貴重な医学データとして記録されます。

ただし、ご遺体の個人情報は守秘されます。

病理解剖は専門の病理医によって厳粛に行われ、ご遺体は細心の注意を払い、

丁重に扱わせて頂きます。終了した時点で結果の概略を説明申し上げます。

是非、病理解剖の大切さをご理解頂き、実施させて下さいますようお願い

申し上げます。」

4．遺族の定義

遺族とは通常、死亡者の親族（配偶者、六親等以内の血族および三親等以内

の姻族）を指しているが、法律上では、各種の法律の立法趣旨に従ってその範

囲を限定しており、一定しない。死体解剖保存法には明確な規定はないが、そ

の解釈として次のような配慮が推奨されている。「刑法の通説的見解に従うべ

きであり、日本の風俗習慣、宗教的感情を考慮に入れ、祭祀財産の継承者がこ

れにあたる場合が多いが、死体解剖ということは日本人の風俗習慣からしてデ

リケートな問題であるので、配偶者の同意さえあればよいというものではない。

関係者の納得の上で行う配慮が必要で、また法的な考慮としても生活実体に立

ち入った認定というものは、ともすれば誤りを生ずることがあるので、主だっ

た関係者の承諾を得ておくという慎重な処置が必要であろうと思われる。」

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5．病理解剖の手続き

1）受付時間・場所（※p.5,6の施設配置図参照）

受付時間 場所 部署 内線

平日 8時30分～17時 東病棟2階 病院病理部 5494

17時～20時

大学本館1階 警備員室 2140 土日・祝祭日

年末年始 8時30分～17時

※1：土日・祝祭日の病理解剖開始時間について

土日・祝祭日の病理解剖担当者は自宅待機のため、“受付手続”から解

剖開始までに1時間程度、要することがありますので、ご了承下さい。

※2：解剖を依頼された医師名及び、連絡先（内線番号又はPHS）を受付時に必

ずお知らせ下さい。

2）受付の手続きと必要な書類

病理解剖の受付は、以下の4つの書類が揃っていることが条件となります。

電子カルテにて病理解剖の依頼を行って下さい。

電話の連絡だけでは、“受付”とは、なりませんのでご注意下さい。

依頼書と承諾書は病院病理部と警備員室に用意しています。

①死亡診断書

死亡診断書は必ず主治医が記入して下さい。

押印を忘れないように注意下さい。

死亡診断書は複写でも代用できます。

②ご遺族の病理解剖に関する承諾書（p.8）

承諾書にはご遺族の署名と捺印が必要です。

ご遺族が印鑑をお持ちでない場合は、拇印をお願いして下さい。

③病理解剖依頼書（p.9-10）

病理解剖依頼書に臨床診断、病歴、入院後の経過、諸検査結果、治療及び

解剖に当たっての疑問点を簡潔に記入して下さい。

主治医と研修医は氏名を記入下さい。（臨床研修医に必須のCPCレポート

のため。また、専門医・認定医を取得する際、依頼書に名前が記入されて

いることが必要のため。）（p.11）

感染症の有無については、記載欄に、必ず記入して下さい。

④電子カルテオーダー控え

電子カルテ病理診断オーダリング画面より必要事項を入力し、オーダー

控えを出力して下さい。

※注意：感染症の病理解剖では、執刀医・技師は感染の危険に曝されます。結

核、梅毒、肝炎ウイルス、AIDS、ATLなどの感染症、もしくは、その疑いがある

場合は、感染予防のため必ず前もってお知らせ下さい。

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大学本館

警備員室 1 階

時間外受付

東病棟 2 階病

院病理部

病院本館東棟 1

階解剖室

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病理解剖に関する遺族の承諾書

1.亡くなられた方のお名前： 様

ご住所： ○

2.死亡年月日 年 月 日

3.死亡の場所

久留米大学病院 病院長殿

上記の遺体が死体解剖保存法（昭和 24 年法律 204 号）の規定に基づい

て病理解剖されることを承諾いたします。

病理解剖は亡くなられた方の死因を確認し、病気の成り立ちを解明するために行いま

す。このため、病理解剖では主要臓器から上記の目的に必要な組織を採取し、顕微鏡検

査標本を作製して病理診断します。

説明を受けられた項目にレ点を付けてください。

摘出臓器は外科摘出臓器と同様に一定期間保存され、礼意を失することなく、荼毘

に付されます。顕微鏡標本は半永久的に保存されます。

病理解剖診断の結果は保存されます。

保存された標本を医学教育や学術研究に使用させていただくことがあります。学会

や紙上発表の際には匿名化して、個人情報は公開されません。また、ゲノム・遺伝子解

析などの研究に使用する時には、別途倫理委員会の審査を受けます。

特記事項

1. 脳解剖の承諾について：諾 否（○を付けて下さい）

2. ご遺族のご希望

病理解剖に関して上記の説明を受け、承諾しました。

年 月 日

氏 名： あ

死亡者との関係： あ

住 所： あ

説明者

所属： 担当医名： （署名）

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臨床研修医の病理解剖から CPCレポート提出までの手順

解剖時、立会いリストに指名を記入する。

Weekly CPC の開催

場所：基礎 1 号館 5 階 病理学教室

開催日：火曜日

開始時間：9：00

病理医がまとめた病理解剖報告書を

病理部から研修医に送付。

CPC レポートは

1 ケ月以内に作成

レポートを病理部（旧東病棟 2 階）に

提出する。

病理解剖依頼書の依頼者欄に研修医の

名前を本人が必ず記入すること。

臨床研修管理センターが Weekly CPC の

開催日を連絡する。

解剖立会いリストは、

臨床研修管理センター

へ提出します。

病理指導医が承認する。

Weekly CPC は病理解剖

の約 2 ヶ月後に開催

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久留米 花子 殿

このたび、久留米 太郎様のご逝去に対し、心からご冥福を

祈り申し上げます。

さて、其の節は病理解剖にご承諾いただきまして、誠にありがとうございま

した。医学が発展した今日といえども原因や病態が不明なため、その治療法や

予防法がいまだ確立されていない疾患も少なくありません。

病理解剖によって疾患の本態、直接の死因や合併症、治療効果などが明らか

にされ、必ずや今後の医学に寄与するものと確信しております。

つきましては、後日本学病院から弔慰金を送付させていただきますので、お

受け取り下さいますようお願いいたします。なおご不明な点がございましたら

お手数ではございますが、封書にございます担当部署までご連絡ください。

今後、ご遺族様のご多幸を祈念いたしております。

平成○年○月○日

久留米大学病院

病院長 ○○ ○○

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久留米 花子 殿

このたび、久留米 太郎様のご逝去に対し、心からお悔やみ申し上げます。

先日お知らせしておりましたとおり、弔慰金を送付させていただきました。

本来であれば直接お伺いし、お渡しすべきものではございますが、諸般の事

情により郵送とさせていただきましたこと、何卒ご了承下さい。つきましては、

大変恐縮ではございますが同封しております確認書に必要事項をご記入のうえ、

返信用封筒にてご返送下さいますようお願い申し上げます。

今後、ご遺族様のご多幸を祈念いたしております。

平成○年○月○日

久留米大学病院管理課

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弔慰金受領確認書

￥10,000

上記の金額正に受領しました。

平成 年 月 日

住所 あ

氏名 印

久留米大学理事長 殿

故 様に対する弔慰金

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12．実際の病理解剖の手順

1）主治医が必要な書類を提出後、看護師はご遺族を病院本館東棟1階の霊安室3

へ案内します。

2）主治医はご遺族よりご遺体を預かり病院本館東病棟1階の病理解剖室へ運び

ます。

3）解剖中、主治医には執刀医が述べる所見の病理解剖記録用紙（プロトコー

ル）への記入と、写真撮影の手伝いをお願いします。

4）解剖終了後、主治医はご遺体をご遺族に返し、説明を行います。

※病理解剖の質を高め、ご遺族により正確な解剖結果を伝えるために、病

理解剖には主治医以外にも診療部長・病棟医長・看護師長などの責任者

及び研修医の立ち会いが望ましいと考えます。

5）解剖後、看護師に病理解剖前室(計測室 p.7, B)にてご遺体の清拭をお手伝

い頂くことがあります。

13．異状死とその対応

1）異状死に該当する死

・内因性疾患による死亡が明らかな場合以外は、すべて異状死です。

・不慮の事故、溺水、火災による死亡、中毒、感電、落雷、自殺、他殺、

外因による傷害の続発症、診療行為に続発した予期しない死亡などの場合

・死亡原因が不明な場合

・来院時、心肺停止として搬送された場合

2）異状死に対する対応

・医師法第21条「異状死体等の届け出義務」では、医師は、死体または妊娠4

ケ月以上の死産児を検案して異状があるときは、24時間以内に所轄警察署に

届け出なければならない、と定められています。

・ 警察への対応は電話での届け出でもよいことになっています。

3）異状死の判断に迷った場合

・医療安全委員会（内線5004）に速やかに届け出て、判断を仰いで下さい。

4）診療行為に関連した死亡例

・死因究明と再発防止策を中立な第三者機関において病理解剖が行われていま

す。モデル事業と呼ばれ、日本医療安全調査機構が行っています。モデル事業

での解剖を依頼するか否かの判断は医療安全委員会で行いますので、事例が発

生した場合は速やかに委員会に報告して下さい。

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14．その他の注意事項

1）解剖時の検体採取について

病理医以外の医師が、解剖時にご遺体から検体（組織）を研究のために採取

する場合があります。この検体採取に関しては、本学倫理委員会の審査を経

て学長の許可が得られています。検体を採取する場合は、採取する医師が、

解剖開始前に、主治医およびご遺族に検体採取について説明を行い、ご許可

を得ることになっています。

5）解剖室内での見学に当たっては、病理解剖打合せ室(p.7, C)からの見学にな

っており、原則解剖室への入室は出来ません。

参考図書・資料

・笹野公伸、森谷卓也、真鍋俊明：病理検査室利用ガイド、文光堂、東京，2004

・日本法医学会：異状死ガイドライン．日法医誌 48：357－358，1994

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キャンサーボードについて

久留米大学病院では、診療・診断の向上およびチーム医療の実践のためキャン

サーボードが行われています。

〈キャンサーボードとは〉

専門(手術, 化学療法, 放射線治療, 画像診断, 病理診断など)が異なる医師等

が集まり, がん患者さんの治療方針などを検討するカンファランスです。

〈久留米大学病院のキャンサーボード〉

臓器別キャンサーボード 専門領域ごとのキャンサーボードで

す。

脳神経、頭頸部、口腔、呼吸器、乳房、

造血器、肝臓、胆道・膵臓、皮膚、上

部消化管、下部消化管、女性生殖器、

泌尿器、骨軟部、小児のキャンサーボ

ードが定期的に開催されています。

緊急キャンサーボード 重複癌や原発不明癌、稀ながん腫など

臓器別キャンサーボードで診断や治

療に難渋する症例があった場合に、開

催されるキャンサーボードです。

拡大キャンサーボード 問題点を多く抱えた悪性腫瘍の剖検

症例を対象として、医師だけに限らず

診療に携わる多職種（看護師、薬剤師、

MSW、栄養士、リハビリなど）が広く

参加して開催されるキャンサーボー

ドです。

尚、キャンサーボードに関しては、こちらへお問い合わせ下さい。

腫瘍センター（内線 5170）

cancer_center@kurume-u.ac.jp