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生物除草剤の現状 と 展望 429 生物除 現状と展望 日 本た ば こ 産業株式会社, 植物保護開発セ ンター 1940 年代以来 化学合成農薬が開発さ れ, 食糧増 産に 役立つてきた。 現在では農薬な く して, 食糧の確保は難 しい。 しかし, 誤ったあるいは過剰の農薬施用のため 様々な問題も生じてきた。 環境問題が取り ざたされてい 今日, 農業の安全性に対する疑問が社会的問題と して 挙げ ら れ る よ う に な っ た 。 rOu r Stolen FutureJ (Theo Co R B URN et al., 1996) . 和訳 : 奪われし未来 (淘泳社) が され 「農薬を含む化学物質で内分泌か く 乱作用を有 する ものがあるJ と問題視されている こ の よ う な背景 で, 化学合成農薬一辺倒か ら新たな防徐手段を模索し, 生物農薬も その一手段と して使用され始めた。 また農薬 に対する不安から有機栽培作物の需要も増加している。 近年, 化学合成農薬に対する抵抗性が雑草に も 出現し てきた。 日本においても, スルフォニルウレア系除草剤 やフエノキシ系除草剤に対して抵抗性を示す雑草が報告 され ている。 また, 新規骨格を持っ た化学合成除草剤の 開発 スピードは年ごとに低下し, 将来化学合成除草剤 は雑草防除が不十分 と な る 可能性 が懸念される。 これら の問題に対処するため, 除草剤分野でも微生物除草剤の 研究開発が1950 年代よ り 開始さ れた。 使用場面は農耕 地に限らず芝地, 牧草地, 森林に及んでいる。 海外では麻薬の社会問題か ら, ケ シ ・ コ カ 撲滅 の た め 微生物除草剤の研究開発 を行っている機関もある。 I 微生物除草剤 と は 微生物除草剤は, 微生物の う ち雑草を宿主 と した病 菌を, 生きた ま ま処理し雑草の密度を低減する方法であ る。 要防除地域の一部に病原菌を接種し, 定着後自然の ま ま二次感染を引 き起こ し数年がか り で防除する古典的 方法 (Classical method /Traditional method / Inoculative method) と, 化学農薬同様, 要防除時期に 大量の病原菌を投下して一時期に雑草を防除する微生物 除草剤 (Microbial herbicide or Bioherbicide). とに分 けられる。 多 く の植物病原菌は, 一般的に宿主特異性 と い う 特徴 Biological Control of Weeds-Now and Future. By Masatoshi GOHBARA ( キ ー ワ ー ド : 生物防除, 微生物, 除草剤, 環境保全) を有している。 こ の こ と は高い選択性を保証す る と と も に, 防除可能な雑草が限定さ れ, 防除スペク ト ラムが狭 いという欠点をも有する。 また, 宿主である雑草が多い と き は病原菌は繁殖で き る が, 宿主が減少する と病原菌 も徐々に減少するので, 一時期大量に投与さ れた病原菌 も短期間のうちに, 自然との調和を取り戻すのが一般的 である。 E 微生物除草剤の歴史 古典的方法の歴史は古 く . 1950 年 ま では ヨ ー ロ ッ パ 諸国 において, 天敵同様の考え方で 「自然界に既に雑草 に感染している病原菌を, 知何にして感染を拡大させた ら効果的かけ と い う 研究がな さ れ. 1970 年代 よ り サ ピ病菌を中心と して飛散性の高い菌株が実用化されてき た。 古 典 的 方 法 に は. Entyloma. Paccinia. Phrag- midium. Uromyces 等 の属の微生物が定着性, 拡散性 な どの点で有望で, 一部実用 化 さ れ て い る 。 1973 年, オーストラリアにおいて. Rush skeltonweed (C hon- dllea juncea) を防除するためにヨーロッパより, ピ病菌 Paccinia chondllinea が導入 さ れ, すぐに定着 し, 空気伝播によ り拡散し目的の雑草を数年で低密度に まで 防除した。 こ の菌は1976 年にア メ リ カ にも導入さ れた。 1974 年に は森林や牧草地の雑草プラ ッ ク ペ リ ー (Rubus spp.) を防除するために ヨーロツパよりチリに Phr midium violaceum と よ ばれ る 菌が導入 さ れ既 に 定着 し, 現在でも北部へと拡散しているといわれてい る 。 1976 年 に はハ ワ イ で Hamakua pamakani (Ager - atina ripa) とよばれるキク科雑草を防除するため に, ジ ャ マ イ カ よ りEn loma composium を導入 し, 数年で目的雑草を防除した。 古典的方法において は, 菌の定着性, 宿主範囲 (作物には害を及ぼさない 囲であること). 菌の拡散性の速さが重要なポイ ン ト で あろう。 一方, 微生物除草剤の研究は比較的新 し し 1960 年 ア メ リ カ の オ ク ラ ホ マ 州 で放牧地のカキ の木を防除する の に Acremonium d ri が用 い ら れ効果 を 挙 げた 。 1963年には中国において初め ての本格的な微生物除草 剤が開発された。 ダイズに寄生するネナシカズラ の一種 (Cus . ωta sp.) を防除す る の に, 炭痘病菌Colletotrichum gloeo orioides が用 い ら れた 。 本菌 は発酵法 に よ り 大量 1

生物除草剤の現状と展望jppa.or.jp/archive/pdf/52_10_01.pdf方法(Classical method / Traditional method / Inoculative method) と,化学農薬同様, 要防除時期に

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  • 生 物 除 草 剤 の 現 状 と 展望 429

    生物除草剤の現状と展望

    日 本た ば こ 産業株式会社, 植物保護開発セ ン タ ー 郷 原 雅 敏

    は じ め に

    1940 年代以来化学合成農薬が開発 さ れ, 食糧増産 に

    役立 つ て き た。 現在で は農薬な く し て, 食糧の確保 は難

    し い。 し か し, 誤っ た あ る い は 過剰 の 農薬施用 の た め

    様々 な問題 も 生じて き た 。 環境問題が取 り ざた さ れて い

    る 今 日 , 農業の安全性 に対す る 疑問が社会的問題 と し て挙げ ら れ る よ う に な っ た 。 rOur Stolen FutureJ (Theo

    CoRBURN et al., 1996) . 和訳 : 奪わ れ し未来 (淘泳社) が

    発刊 さ れ 「農薬 を含む化学物質で内分泌か く 乱作用 を有

    す る も のがあ る J と 問題視 さ れて い る 。 こ の よ う な背景

    で, 化学合成農薬一辺倒か ら 新 た な防徐手段 を模索 し,

    生物農薬 も そ の一手段 と し て使用 さ れ始めた。 ま た 農薬

    に対す る 不安か ら 有機栽培作物の需要 も 増加 し て い る 。

    近年, 化学合成農薬 に対す る 抵抗性が雑草 に も 出現 し

    て き た。 日 本 に お い て も , ス ル フ ォ ニ ル ウ レ ア 系除草剤

    や フエ ノ キ シ系除草剤 に 対 し て 抵抗性 を示す雑草が報告

    さ れて い る 。 ま た, 新規骨格を持 っ た化学合成除草剤の

    開発ス ピ ー ド は年 ご と に低下 し, 将来化学合成除草剤で

    は雑草防除が不十分 と な る 可能性が懸念 さ れ る 。 こ れ ら

    の問題に対処す る た め, 除草剤分野で も 微生物除草剤の

    研究開発が1950 年代 よ り 開始 さ れた。 使用場面 は農耕

    地 に 限 ら ず芝地, 牧草地, 森林 に及んでい る 。

    海外では麻薬の社会問題か ら , ケ シ ・ コ カ 撲滅のた め

    微生物除草剤の研究開発 を行っ て い る 機関 も あ る 。

    I 微生物除草剤 と は

    微生物除草剤 は, 微生物の う ち 雑草 を宿主 と した病原

    菌を, 生 き た ま ま 処理 し雑草の密度 を低減す る 方法であ

    る 。 要防除地域の一部 に病原菌 を 接種 し, 定着後自然の

    ま ま 二次感染 を 引 き 起 こ し数年がか り で防除す る 古典的方 法 (Classical method / T raditional method /

    Inoculative method) と , 化学農薬同様, 要防除時期 に大量の病原菌 を投下 し て 一時期 に 雑草 を防除す る 微生物

    除草剤 (Microbial herbicide or Bioherbicide) . と に分

    け ら れ る 。

    多 く の植物病原菌 は, 一般的 に宿主特異性 と い う 特徴

    Biological Control of Weeds-Now and Future. By

    Masatoshi GOHBARA

    ( キ ー ワ ー ド : 生物防除, 微生物, 除草剤, 環境保全)

    を有 し て い る 。 こ の こ と は 高い選択性 を保証す る と と も

    に, 防除可能 な雑草が限定 さ れ, 防除ス ペ ク ト ラ ム が狭

    い と い う 欠点 を も 有す る 。 ま た, 宿主であ る 雑草が多 い

    と き は病原菌 は繁殖で き る が, 宿主が減少す る と 病原菌

    も 徐々 に減少す る の で, 一時期大量 に投与 さ れた病原菌

    も 短期間の う ち に, 自 然 と の調和 を取 り 戻 す のが一般的

    であ る 。

    E 微生物除草剤の歴史

    古典的方法の歴史 は 古 く . 1950 年 ま で は ヨ ー ロ ッ パ

    諸国 に お い て, 天敵同様の考 え 方で 「 自 然界 に 既 に雑草

    に感染 し て い る 病原菌 を, 知何 に し て 感染 を拡大 さ せ た

    ら 効果的かけ と い う 研究 が な さ れ. 1970 年代 よ り サ

    ピ病菌 を 中心 と し て 飛散性の高い菌株が実用化 さ れて き

    た。 古 典 的 方 法 に は. Entyloma. Paccinia. Phrag

    midium. Uromyces 等 の 属 の 微生物が定着性, 拡散性

    な ど の 点で有望で, 一部実用 化 さ れ て い る 。 1973 年,

    オ ー ス ト ラ リ ア に お い て. Rush skeltonweed (Chon

    drillea juncea) を 防除す る た め に ヨ ー ロ ッ パ よ り , サ

    ピ病菌 Paccinia chondrillinea が導入 さ れ, す ぐ に定着

    し, 空気伝播 に よ り 拡散 し 目 的の雑草 を 数年で低密度 に

    ま で防除 し た 。 こ の菌 は1976 年 に ア メ リ カ に も 導入 さ

    れた。 1974 年 に は森林 や牧草地 の雑草プ ラ ッ ク ペ リ ー

    (Rubus spp.) を 防除す る た め に ヨ ー ロ ツ パ よ り チ リ に

    Phr agmidium violaceum と よ ばれ る 菌が導入 さ れ既 に

    定着 し, 現在 で も 北部 へ と 拡散 し て い る と い わ れ て い

    る 。 1976 年に はハ ワ イ で Hamakua pamakani (Ager

    atina riparia) と よ ばれ る キ ク 科雑 草 を 防除 す る た め

    に, ジ ャ マ イ カ よ り En tyloma composi tarium を 導 入

    し, 数年で 目 的雑草 を 防除 し た 。 古 典 的 方法 に お い て

    は, 菌の定着性, 宿主範囲 (作物 に は 害 を 及ぼ さ な い範囲 であ る こ と ) . 菌 の拡散性の速 さ が重要 な ポ イ ン ト で

    あ ろ う 。

    一方, 微生物除草剤 の研究 は比較的新 し し 1960 年

    ア メ リ カ の オ ク ラ ホ マ 州で放牧地の カ キ の木 を 防除す る

    の に Acremonium d io.ゆ'Yri が用 い ら れ効果 を 挙 げた 。

    1963 年 に は 中 国 に お い て 初 め て の 本格 的 な 微生物除草

    剤が開発 さ れた 。 ダイ ズ に寄生す る ネナ シ カ ズ ラ の一種(Cus .ωta sp.) を防除す る の に, 炭痘病菌Colletotrichum

    gloeo sþorioides が用 い ら れた 。 本菌 は発酵法 に よ り 大量

    一一 1 一一一

  • 430 植 物 防 疫 第52巻 第10号(1998年)

    表-1 農業登録を取得 し た微生物除草剤

    対象雑草和名 対象雑草英名 対象雑草学名 使用微生物名 商品名 開発機関 使用 国 使用年度

    ネナシカズラ Cωωta sp, Collelolricll叫m glo回sþorioid,田f, sp回目IS四白 LuBao 2 China 1963

    ミルクウィードパイン Milkw田d vine Morr四ia odorata Phytoph幼oraμImivora DeVine Abbott Laboratory USA 1981 7メリカツノクサネム N orthan jointvetch A白CI(抑O問問e virgi目nica Collelotrichum gloeo.ゆorioid,お Collego Ecogen Inc, USA 1982 マルパぜニアオイ Roundleafmalva Malva pusilla Col/elo仇ichum gl,即りゅorioid,回f. sp, malvae BioMal Pilom Bios Inc, Canada 1992 スズメノカタピラ Annual bluegrass Poa annt,低 Xanlhomonus cll問P釘tris pv, poae Camperico Japan Tobacco Inc Japan 1997

    キイチゴ Black cherry Pntn術 seroti:即 etc Chondroslereum PUl世ureum Biochon Koppert Biological Netherland etc, 1997

    生産 さ れ, Lubao No , l と し て一般の農薬の よ う に液剤

    と し て散布 さ れた 。 し か し こ の菌株の病原性が失われたの で現在 は Lubao No , 2 が用 い ら れて い る 。 1970 年 よ

    り ア メ リ カ に お い て , 精力 的に微生物除草剤の研究が開

    始 さ れ, 1981 年 に は, De Vine が上市 さ れ た。 フ ロ リ

    ダ州 の カ ン キ ツ 類栽培で問題 と な っ て い る つ る 性雑草

    (Mo rrenia odora ta) を 防 除 す る 糸 状 菌 Phy t,ゆhthora

    仰lmivora が微生物除草剤 と し て 開発 さ れ, 商品化 さ れ

    た。 1982 年 に は Col Iego も 上市 さ れた。 ア ー カ ン ソ ー

    州の稲作地域お よ びダイ ズ地域で問題 と な っ て い る マ メ

    科雑草 ク サネム (Aeschynomene vi rginica) の防除 に

    Colletotrichum gloeo ゆorioides f ,sp , aeschynomene を用

    い た 。 Col Iego は微生物除草剤 と し て は初 め て , 乾燥 し

    た分生子 を商品 と し た も の で あ る 。 こ れ ら 2 剤の影響で

    世界中 で微生物除草剤の研究が盛 ん と な っ た。 1993 年

    に は カ ナ ダに お い て も Bio Mal が, コ ム ギや レ ン ト ウ

    の 問題雑草マ ルパゼ ニ ア オ イ ( Malva ρusil la) の 防除

    の た め 開発 さ れ た 。 Bio Mal の 活性本体 は, 糸 状 菌

    Colletotrichum gloeosþorioides f ,sp , malvae であ る 。

    1997 年オ ラ ン ダ に お い て ヨ ー ロ ツ パ の森林で問題 と な

    っ て い る プ ラ ッ ク チ ェ リ ー (Prun 附serotina) を 防除

    す る た め にChondrostereum ρuゆureum が商品名 Bio

    chon と し て 上市 さ れた 。 一方, 日 本 での微生物除草剤の研究 は , 鈴木穂積 ら (1987) に よ り 初め て 報告 さ れた

    が, 世界的 に は 出遅 れ て い た。 し か し, 1997 年 に 日 本た ば こ 産業 (株) で Camperico ( キ ャ ン ペ リ コ ) が ゴ ルフ場で難防除雑草 と さ れて い る ス ズ メ ノ カ タ ピ ラ (Poa

    ann 仰) を 防 除 す る た め, バ ク テ リ ア Xanthomonas

    campest 均pv,ρoae を商品化 し た 。 こ れ ら の成功例 を表

    -1 に示 し た。 ア ジ ア, ア フ リ カ 各 国 も 日 本 と ほ ぼ同時に 開始 し急速 に世界中 で研究が行われ る よ う に な っ た。

    現在世界で 33 か国, 200 菌株ほ ど の 微生物 を 用 い た 雑草防除 (古典的方法お よ び微生物除草剤) が研究 さ れてお り , 近い将来数十の製品が出 回 る こ と であ ろ う 。

    皿 微生物除草剤の開発

    微生物除草剤 の研究開発が ど の よ う に 行わ れ て い る

    か, ア メ リ カ の Col Iego を例 と し て 各国 の動向 も 交 え て

    チ ェ ッ ク すべ き 項 目 を列挙 し て みた 。

    1 ターゲッ ト の選定

    地域 ご と に 問題 と な る 雑草種は異な り , 様々 な研究が

    行わ れて い る 。 初期 は化学合成農薬で防除で き な い難防

    除雑草 に つ い て研究が行わ れて い た が, 最近 は各地の主

    要雑草の防除 に焦点が移っ て き た。

    2 棺物病原菌のサーベイ

    病気 に かか っ た雑草の擢病部 を 自 然界 よ り 採集。 こ の

    病原菌 を純化 し, 培養法, 接種法 を確立 し, 候補菌株 を

    選別す る 。 ま た使用菌株の分布範囲 を確認す る 。

    3 宿主範囲試験

    微生物除草 剤 の 作物 に対す る 安全性 を 確認 す る た め

    に, 使用場面 に応じた作物て・病原性 を調べ る 。

    4 効果試験

    対象雑草 に対す る 防除効果 を ポ ッ ト 試験で検討 し, 処

    理胞子量, 処理時期, 防除可能 な 葉令, 効果変動要因(温度, 湿度, 夜露) 等 の検討 を行 う 。

    5 圃場試験

    ポ ッ ト 試験の後, 小規模な 圏場試験 を行 う 。 こ こ で圃

    場 レ ベルでの処理時期, 処理量, 処理方法, 水管理, 作

    物の収量等の検討がな さ れ る 。 次 い で, 大規模な園場試

    験が行わ れ る 。

    6 製剤検討

    初期 は分生子の懸濁液 を 用 い た 試験が行わ れ る 。 微生

    物農薬の 開発で最 も 重要 な ポ イ ン ト は こ の製剤研究であ

    る 。 微生物の特徴 を把握 し , 実用 に適 し た, 保存性 に優

    れた製剤 を 開発 し な く て は な ら な い。

    7 安全性試験, 登録

    ア メ リ カ に お い て は, 微生物除草剤の登録は従来の化

    学農薬 と は異な っ た 方法で審査 さ れて い る 。 す な わ ち ,

    審査 は段階的 に行わ れ, ま ず最大投与量の微生物 を動横物に処理 し何 ら 影響がなけれ ば, 急性毒性試験に と ど ま

    り , 何か影響が出れ ば第二段階の詳細 な毒性試験 を行 うと い う も の であ る 。 日 本 に お い て も 欧米 に 類似 し た 指針

    が平成 9 年度 に 「微生物農薬 の 安全性評価 に 関 す る 基準J と し て官報 に記載 さ れた。

    一一一 2 一一一

  • 生 物 除 草 剤 の 現 状 と 展望 431

    8 分生子の大量製造法

    マ ー ケ ッ ト の市場 に見合っ た, かつ企業化可能な安価

    な培養法 を確立す る 必要があ る 。9 商品の フ ォ ロ ー

    Collego が市販 さ れ て か ら 10 年が経過す る が, 研究

    は そ の後 も 続 け ら れ て お り , 菌株の改良 に よ る 殺菌剤耐

    性菌株の作出, 製剤の改良, 化学合成除草剤 と の混合処

    理での除草効果試験等が行わ れた。 ま た, 微生物農薬の

    一般の使用者への普及 も 大切 な ポ イ ン ト であ る 。

    お わ り に

    今後の地球環境お よ び農業の持続性 を考 え る と き , 微

    生物農薬 は一つ の魅力的な手段 と し て 考 え ら れ る が, 新

    し い技術 を 導 入 す る に は種々 解決す べ き 問題 も 多々 ある 。 微生物農薬 は生 き た 微生物 を 用 い る た め, 人畜, 作

    物に寄生 し な い菌でな く て は な ら な い。 ま た, 自 然環境

    中で安定 し た 効果 を示すた め に は, 種々 製剤面での工夫

    も 必要であ る 。 農薬 と し て市場に 流通す る に は保存性 も

    重要であ る 。 微生物農薬の歴史は浅 く , 大学等 に お け る

    基礎研究, 普及体制, 効果試験実施体制等 の体制作 り か

    ら 行わ れ る こ と が期待 さ れ る 。

    引 用 文 献1) Theo COLBURN et aL ( 1996) : Our Strlen Future : Are

    We Threatening Our Fertility, Intell igence and Survival? -A Scientific Detective Story, Dutton Publishing, New York.

    2) 鈴木穂積 ら (1987) 日 本植物病理学会報 53 (3) : 374 �375

    日本植物防疫協会の生物農薬関連図書

    「生物農薬開発の手引き」B 5 判111頁 本体1, 942 円 (税別)送料 310 円

    生物農薬 の実用化促進 に社会的な期待が寄せ ら れ て

    お り , 行政面で も 農薬登録の ガ イ ド ラ イ ン (微生物農薬

    検査基準)の検討が進め ら れて い る 。 当協会で も 「生物農薬検討委員会j を設置 し, 適切な試験研究 を す す め る

    た め の諸問題の検討 を始 め た 。 本書は そ の事業の一環 と

    し て 作成 さ れた も の で, こ れ ま での知見や議論 を 集約

    し, 開発や試験研究の参考 と す る べ く 資料 を 集成 し, 解

    説 を加 え た も の であ る 。

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    「天敵微生物の研究手法」B 5 判 222頁 定価 3, 058円 (税込)送料140 円生物農薬 の 中 で一番研究開発の進ん だ天敵微生物 に

    つ い て, そ の採集か ら 各種実験法 ま で を詳 し く 解説。

    「天敵農薬」チ リ カ プ リ ダニ そ の生態 と 応用一

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    A 5 判130頁 本体 2, 331 円 (税別)送料 310 円

    発 行日本植物防疫協会

    作物病原菌研究技法の基礎く分離・培養・接種〉 大畑 貫一 他編

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    一一一 3 一一