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サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社モレキュラー営業部 アプリケーショングループ
異物分析のテクニック
2
異物分析の一般的な手法と流れ
異物発見
100μm以上
金属光沢がある
異物の形状、状態などを観察(光学・生物顕微鏡、SEM)
YesNo
電子顕微鏡+EDS
10~100μm程度
10μm以下
無機化合物(元素)の情報
顕微FT-IR
顕微レーザーラマン
FT-IR + 1回反射ATR
異物の大きさ
No
Yes
Yes
NoYes
さらに低濃度の場合
熱分解GC/MS
LC/MSGC/MS
破壊分析
有機、無機化合物(元素)の情報
非破壊分析
目視発見される多くの異物はATRで測定可能
5
分析例1 圧電素子周囲のゴム上付着物
異物部分
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
Abs
正常部
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Abs
500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
異物部分
正常部
異物部分
既知成分に登録(シリコーンゴム)
不純物サーチ
透明の付着物により、接触不良
各スペクトルはアドバンストATR補正済み
Referenceとして正常部につい
ても測定を行い、比較すること
により異物成分を特定
6
不純物成分1:エポキシ
正常部を既知成分として不純物成分数を指定して検索
OMNIC Spectaを用いた不純物サーチの結果、付着物はエポキシとパラフィンであることがわかりました。
不純物成分2:パラフィン
検索結果の合成スペクトル
分析例1 圧電素子周囲のゴム上付着物
7
分析例2 お菓子表面に付着したシート状異物
0.04
0.08
0.12
Abs
0.02
0.04
0.06
0.08
Abs
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
異物表面
⇒ナイロン
異物裏面
⇒ポリエチレン
測定条件分解能:8㎝-1
スキャン回数:16回
表面にシート状異物が付着
サンプリングし、水で洗浄しATR測定
1mm
個別包装の外側はナイロン、内側はポリエチレンのヒートシール包装材であることが分かりました。
8
ATRの注意点① -分析深さ-
dp
赤外光
クリスタル
サンプル
滲み込み深さ
n1
n2
θ
ATRはサンプルの表面を分析する手法です。
異物の表面・内部・裏面で組成が異なる場合は注意する必要があります。
2122
1 sin2 nnnd p
滲み込み深さ(dp)の波長依存性
0
1
2
3
4
5
1000200030004000 cm-1
Ge (45)
ZnSe (45)
μm
9
分析例3 飲料中の黒色浮遊物
黒色でやわらかい物質
フィルターろ過によるサンプリングでATR(Geクリスタル)による直接分析を行いました。
測定スペクトルにアドバンストATR補正処理を行い、ライブラリ検索したところPoly vinylidene
fluorideがヒット。 Oリングなどによく用いられるフッ素系ゴムであることがわかりました。
黒色浮遊異物 <アドバンストATR補正>
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Abs
ヒット率:89.45Molecular Formula: Sample Prep: film/ACT/CsICAS Number: 0-00-0Manufacturer: DuPont Viton B
Poly(vinylidene fluoride:hexafluoropropene)
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
Poly vinylidene fluoride
10
カーボンブラック含有 EPDM(ゴム) の ATR スペクトル
EPDM Diamond 45°
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
EPDM Ge 45°
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
Log(
1/R
)
1000 1500 2000 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
Log(
1/R
)
偽の情報
ATRの注意点② -高屈折サンプル-
ATR測定ではサンプルの屈折率が高いとサンプルとクリスタルとの界面で赤
外光が全反射条件を満たさず解析の困難なスペクトルとなることがあります。
13
基材 (樹脂など)
異物サンプル:
フィルム中に埋没した白色異物
測定方法:
フィルムから異物を取り出し、透過法にて測定
使用ツール:
実態顕微鏡 (サンプルを取り出す際の観察)
ニードル・ナイフ等 (サンプルの取り出し)
赤外透過性窓板 (ダイアモンドコンプレッションセル等
サンプルを乗せる)
分析例1 埋没した異物 -透過法-
14
異物A IR
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
Abs
ヒット率:80.80Molecular Formula: C99Aldrich Number: 18,301-6CAS Number: 9010-66-6Volume & Page Number: 2-1225C
Zein, purified
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
ヒット率:76.66Molecular Formula: Sample Prep: film/MTL/KRS-5CAS Number: 0-00-0Manufacturer: MACEAK,180,2019(1979)
Poly(N-methyl acrylamide)
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
Abs
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
ライブラリ検索結果
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0.16
0.18
0.20
0.22
0.24
Abso
rban
ce
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Wavenumbers (cm-1)
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
フィルム
異物
ライブラリ検索の結果、埋没していた異物は
ポリアミドであることがわかりました。
異物のみがうまく取り出せない場合は、フィルム部分
についても同様の測定を行い差スペクトル処理により
異物情報を得ることができます。
分析例1 埋没した異物 -透過法-
15
埋没した異物のサンプリングについて
埋没した異物を取り出す際、針のように尖ったツールだと面が荒れて見えにくくなること
があります。 ナイフ状のツールを使用したり剃刀で頭だしをすると見失いにくくなります。
16
異物
金属板
サンプル:
電子部品接点上に付着した異物
測定方法:
異物の付着していない基板部分をバックグラウンドとし、反射測定を行いました。
分析例2 金属板上異物 –透過反射法-
17
0.005
0.010
0.015
0.020
0.025
0.030
0.035
0.040
0.045
0.050
0.055
0.060
0.065
0.070
0.075
0.080
0.085
0.090
0.095
Absorbance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
接点上に斑点状に付着していた異物を顕微反射法で測定。解析の結果、
松脂に近い物質であることがわかりました。
300μm
分析例2 金属板上異物 –透過反射法-
18
透過反射法の注意点
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
0.45
Log(
1/R
)
1000 1500 2000 2500 3000 3500
Wavenumbers (cm-1)
-0.02
-0.01
0.00
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0.09
0.10
0.11
0.12
0.13
Log(
1/R
)
1000 1500 2000 2500 3000 3500
Wavenumbers (cm-1)
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
0.45
0.50
0.55
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
Log(
1/R
)
1000 1500 2000 2500 3000 3500
Wavenumbers (cm-1)
金属板上のサンプルの状態によりスペクトルに影響が出る場合があります。
0.9
1.0
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
Log(
1/R
)
1000 1500 2000 2500 3000 3500
Wavenumbers (cm-1)
19
異物
基材 (樹脂など)
サンプル:
接点上に付着した50μmの異物
測定方法:
そのままの状態で、赤外顕微鏡下にてATR測定
使用ツール:
赤外顕微鏡用スライド式ATRアクセサリ
分析例3 表面に付着した異物 -ATR法-
20
300μm
接点上に付着している 50µm 程度の異物を顕微ATR法(ゲルマニウムクリスタ
ル)で測定。異物はフッ素系樹脂であることが判明しました。
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
0.45
0.50
0.55
0.60
0.65
0.70
0.75
0.80
0.85
0.90
0.95
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
分析例3 表面に付着した異物 -ATR法-
21
表面付着異物のATR測定ヒント
-0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
Log
0.00
0.05
0.10
0.15
Log
0.000
0.005
0.010
0.015
0.020
Log
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
ポリエチレン板上に付着してい
る20µm程度の異物を顕微ATR
法(ゲルマニウムクリスタル)で
測定しました。
異物
PE板
異物を押さえつけることにより薄くなりPE板のピークが重なっている
異物-PE板=異物のみのスペクトル
22
表面付着異物のATR測定ヒント
-0.000
0.001
0.002
0.003
0.004
0.005
0.006
0.007
0.008
0.009
0.010
0.011
0.012
0.013
Log(
1/R
)
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
サンプル
ステージ上昇 サンプル接触(測定) 測定後ステージ下降
測定後異物のみがクリスタルに
転写して残る場合には、ステー
ジ下降後、基材の影響のない異
物のみのスペクトルを得ることが
できます。
23
ATR法の注意点
-0.0030
-0.0025
-0.0020
-0.0015
-0.0010
-0.0005
0.0000
0.0005
0.0010
0.0015
0.0020
0.0025
0.0030
0.0035
0.0040
0.0045
0.0050
0.0055
1000 1500 2000 2500 3000 3500
-0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0.16
0.18
0.20
0.22
0.24
0.26
0.28
1000 1500 2000 2500 3000 3500
ATR測定においては、「サンプルとATRクリスタルが接触すること」が測定の必須条件
となります。
-0.0015
-0.0010
-0.0005
0.0000
0.0005
0.0010
0.0015
0.0020
0.0025
0.0030
0.0035
0.0040
0.0045
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
-0.05
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
Abs
orb
ance
1000 1500 2000 2500 3000 3500 Wavenumbers (cm-1)
縦軸同一スケール表示
24
ATR測定におけるアパーチャ設定のヒント
Geの屈折率は4→試料が4倍に拡大
顕微鏡でのATR測定では、ATRクリスタルの屈折率分だけサンプルが拡大される
効果があります。
可視画像では一辺 50μmATRイメージング測定結果では一辺 200μm
25
ATR測定におけるアパーチャ設定のヒント
AP=20x20μm
AP=40x40μm
AP=60x60μm
AP=80x80μm
AP=100x100μm
AP=120x120μm-0.20
-0.18
-0.16
-0.14
-0.12
-0.10
-0.08
-0.06
-0.04
-0.02
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
0.14
0.16
0.18
0.20
0.22
Abs
orba
nce
1000 1500 2000 2500 3000 3500
Wavenumbers (cm-1)
ポリエチレン上の直径約25μmのアクリルスチレン粒子のATR測定スペクトル
(アパーチャサイズ:20~120μm)
26
異物分析の方法と例
顕微ラマンによる微小異物(>1 μm)の分析
27
測定装置
ラマン分光分析装置(顕微鏡タイプ)
28
ラマン分析の特徴 -コンフォーカル機能-
検出器
対物レンズ
サンプル
ステージの上下によりサンプルの焦点を移動させることにより
焦点面のみの散乱光が検出器に導入されます
ステージ
29
ガラス中異物
分析例1 ガラス中埋没異物の非破壊分析
左上は、ガラス中で見つけた約200×300μm異物の可視顕微鏡画像です。
この異物の中心をコンフォーカル機能を用い非破壊でラマン測定したところ、
異物は硫化ニッケル(Nickel sulfide)である事がわかりました。
ガラスの中の異物可視像異物中心部のラマンスペクトル
検出器
コンフォーカルアパーチャ
対物レンズ
30
ガラスの中の異物可視像
異物についてラマンマッピング測定を行ったところ、全体が硫
化ニッケルでしたが、部位によりスペクトルが異なる様子が見
られました。 この違いはアルファ、ベータ、Non-Stoichometric
など結晶構造によるものであることがわかりました。
異物部位によるラマンスペクトルの違い(上段は異物中心部、下段はガラスに近い異物の端部分)
異物中心部を基準にした結晶構造分布
分析例1 ガラス中埋没異物の非破壊分析
31
異物
検出器
対物レンズ
フィルムAフィルムBフィルムC粘着剤
PETフィルム
顕微鏡画像
断面
ラミネートフイルム中に黒く変色した異常部が観察され、ラマンでの非破壊測定を行い
ました。試料の表面から変色部までは約150μmの深さの粘着材層に存在しています。
分析例2 ラミネートフィルムの変色部の非破壊分析
32
ラミネートフイルムの変色部と粘着剤層のラマンスペクトル
異物
正常部
差スペクトル異物部-正常部
500 1000 1500 20002500 3000 3500
Raman shift (cm-1)
変色部のスペクトルには粘着層のスペクトルが重畳しているため、差スペクトル処理をお
こないました。得られたスペクトルから、変色原因はPET層から染み出したオリゴマーであ
ることが判明しました。
分析例2 ラミネートフィルムの変色部の非破壊分析