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-1- 日本教育方法学会第 47 回大会(秋田大学)ラウンドテーブル②発表論文 秋田大学のゲーミング・シミュレーション研究と教育実践2-大学における教育方法改革- 秋田大学ゲーミング・シミュレーション研究会 ○井門正美,荒川潤,和泉浩,小高さほみ,篠原ひとみ,成田好美,堀川敏樹,水戸部一孝, 吉村昇,若有保彦,渡部育子 Theory and Practice of Gaming-Simulation at AUSGAS Akita University Society of Gaming and Simulation Masami Ido, Jun Arakawa, Hiroshi Izumi, Sahomi Kodaka, Hitomi Shinohara, Yoshimi Narita, Toshiki Horikawa, Kazutaka Mitobe, Noboru Yoshimura, Yasuhiko Wakahri, Ikuko Watanabe キーワード:ゲーミング・シミュレーション,知識と行為の統一的学習,社会的実践力 1.はじめに 秋田大学ゲーミング・シミュレーション研究会(略称: 秋大 GS 研)は,「対象理解と問題解決の手法であるゲーミ ング・シミュレーションを主軸とした研究と実践を目的」 とし,全学的な研究組織として 2009 年4月に設立された. その母体は,本学教育文化学部の平成 18 年度採択・特色 ある大学教育支援プログラム「ゲーミング・シミュレー ション型授業の構築-社会的実践力を培う体験的学習プ ロジェクト-」(以下,18 特色 GP:平成 18 年度~ 20 度)であった.18 特色 GP は,すでに,平成 15 年度に採 択された特色 GP「フィールドインターンシップ型授業」 (平成 15 年度~ 18 年度)が現場体験を主軸として展開し ていたことから,これと連携して,教室体験を基軸とし たプロジェクトとして位置づけ,車の両輪のような相補 的関係による大学の授業改善を目的として展開した. 「ゲーミング・シミュレーション型授業」を,関心対象 の理解や問題の解決にゲームやシミュレーション,ロール プレイングなどを用いる授業と定義して,講義や座学に片 寄りがちな大学の授業・教育改革に活用し,知識と行為の 統一的な学習を推進し,真に社会で活かせる社会的実践力 のある学生を育成することをねらった.学生同士また教員 も含めて体験的にかつ協同的な学び場において,仲間と共 に学ぶことの意味を認識し,他者存在の意義を感じ取るこ とのできる授業実践を促進し,平成 20 年度を以て終了し た. 秋大 GS 研は,以上の成果を継承し発展させるための全 学的研究組織として設立され,教育文化学部,工学資源 学部,医学部の 3 学部が,それぞれの特色を活かした研 究・教育活動を展開している.18 特色 GP の成果とその 後継組織である秋大 GS 研へ将来的な期待から,2010 6 月には,日本シミュレーション&ゲーミング学会(JASAGからそれらの組織の母体であった教育文化学部に「学会 賞」が授与され,われわれの研究・教育活動に大きな励 みとなった. 2010 年度,秋大 GS 研の事業としては,市販ゲームの 収集と 18 特色 GP からの継続事業であったクリシア・M ・ヤルドレイ =マトヴェイチュクの著書『 Role Play Theory and Plactice』の翻訳本を完成させ,2011 年度には JASAG 春季大会でであったが,各会員は,各々の専門分 野における研究並びに今日行く活動を展開した. 2011 今回の企画セッションでは,こうした成果を発表する. 2.秋田大学におけるGS型授業(GS研究)の理論 特に本理論では,ゲーミング・シミュレーション型授 業について図 2-1 のように体系化している[1]. まず,「A現場」における体験的学習は,学習者が学習 対象となる現場に出かけて,そこにある役割を取得した り,その場を見学 したりする体験的 学習である.例え ば,インターンシ ップにおける職場 体験などが該当す るが,小高(後述 の発表(4))による 保育実習はこれに 該当する. 次に「B 抽出・ 移動」による体験 的学習は,現場から教室にモノを運んできたり,エキス パートを招いたりして学習するものである.ゲストティ ーチャーを招いて行う交流体験学習がこのタイプである. 小高の発表における小学校教員による大学生への出前授 業はこのタイプである. 三番目の「Cモデル化」による体験的学習は,ゲーミ ング,シミュレーション,ロールプレイング等を活用し た擬似体験学習である.井門のネット裁判員模擬裁判(発 表(1))や渡部・荒川・堀川のすごろく学習,水戸部・吉 村によるシミュレータに関する研究(発表( 5)), 篠原 ・ 成田の分娩介助法に関する実践(発表(6))もこのタイプ 図2-1GS型授業における体験の体系化

秋田大学のゲーミング・シミュレーション研究と教育実践2 · 秋田大学ゲーミング・シミュレーション研究会(略称: 秋大gs 研)は,「対象理解と問題解決の手法であるゲーミ

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日本教育方法学会第 47 回大会(秋田大学)ラウンドテーブル②発表論文

秋田大学のゲーミング・シミュレーション研究と教育実践2-大学における教育方法改革-

秋田大学ゲーミング・シミュレーション研究会

○井門正美,荒川潤,和泉浩,小高さほみ,篠原ひとみ,成田好美,堀川敏樹,水戸部一孝,

吉村昇,若有保彦,渡部育子

Theory and Practice of Gaming-Simulation at AUSGASAkita University Society of Gaming and Simulation

Masami Ido, Jun Arakawa, Hiroshi Izumi, Sahomi Kodaka, Hitomi Shinohara, Yoshimi Narita, Toshiki Horikawa, Kazutaka Mitobe,Noboru Yoshimura, Yasuhiko Wakahri, Ikuko Watanabe

キーワード:ゲーミング・シミュレーション,知識と行為の統一的学習,社会的実践力

1.はじめに

秋田大学ゲーミング・シミュレーション研究会(略称:

秋大 GS 研)は,「対象理解と問題解決の手法であるゲーミング・シミュレーションを主軸とした研究と実践を目的」

とし,全学的な研究組織として 2009 年4月に設立された.その母体は,本学教育文化学部の平成 18 年度採択・特色ある大学教育支援プログラム「ゲーミング・シミュレー

ション型授業の構築-社会的実践力を培う体験的学習プ

ロジェクト-」(以下,18 特色 GP:平成 18 年度~ 20 年度)であった.18 特色 GP は,すでに,平成 15 年度に採択された特色 GP「フィールドインターンシップ型授業」(平成 15 年度~ 18 年度)が現場体験を主軸として展開していたことから,これと連携して,教室体験を基軸とし

たプロジェクトとして位置づけ,車の両輪のような相補

的関係による大学の授業改善を目的として展開した.

「ゲーミング・シミュレーション型授業」を,関心対象

の理解や問題の解決にゲームやシミュレーション,ロール

プレイングなどを用いる授業と定義して,講義や座学に片

寄りがちな大学の授業・教育改革に活用し,知識と行為の

統一的な学習を推進し,真に社会で活かせる社会的実践力

のある学生を育成することをねらった.学生同士また教員

も含めて体験的にかつ協同的な学び場において,仲間と共

に学ぶことの意味を認識し,他者存在の意義を感じ取るこ

とのできる授業実践を促進し,平成 20 年度を以て終了した.

秋大 GS 研は,以上の成果を継承し発展させるための全学的研究組織として設立され,教育文化学部,工学資源

学部,医学部の 3 学部が,それぞれの特色を活かした研究・教育活動を展開している.18 特色 GP の成果とその後継組織である秋大 GS 研へ将来的な期待から,2010 年 6月には,日本シミュレーション&ゲーミング学会(JASAG)からそれらの組織の母体であった教育文化学部に「学会

賞」が授与され,われわれの研究・教育活動に大きな励

みとなった.

2010 年度,秋大 GS 研の事業としては,市販ゲームの

収集と 18 特色 GP からの継続事業であったクリシア・M・ヤルドレイ =マトヴェイチュクの著書『Role PlayTheory and Plactice』の翻訳本を完成させ,2011年度にはJASAG 春季大会でであったが,各会員は,各々の専門分野における研究並びに今日行く活動を展開した. 2011今回の企画セッションでは,こうした成果を発表する.

2.秋田大学におけるGS型授業(GS研究)の理論

特に本理論では,ゲーミング・シミュレーション型授

業について図 2-1 のように体系化している[1].まず,「A現場」における体験的学習は,学習者が学習

対象となる現場に出かけて,そこにある役割を取得した

り,その場を見学

したりする体験的

学習である.例え

ば,インターンシ

ップにおける職場

体験などが該当す

るが,小高(後述

の発表(4))による保育実習はこれに

該当する.

次に「B 抽出・移動」による体験

的学習は,現場から教室にモノを運んできたり,エキス

パートを招いたりして学習するものである.ゲストティ

ーチャーを招いて行う交流体験学習がこのタイプである.

小高の発表における小学校教員による大学生への出前授

業はこのタイプである.

三番目の「Cモデル化」による体験的学習は,ゲーミ

ング,シミュレーション,ロールプレイング等を活用し

た擬似体験学習である.井門のネット裁判員模擬裁判(発

表(1))や渡部・荒川・堀川のすごろく学習,水戸部・吉村によるシミュレータに関する研究(発表(5)),篠原・成田の分娩介助法に関する実践(発表(6))もこのタイプ

図2-1GS型授業における体験の体系化

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に該当する.

四番目の「D媒体」による体験的学習は,メディアを

媒介とした対話的・交流的な体験的学習である.裁判員

裁判の学習では,インターネットを介して行われる法律

相談や模擬裁判(前述の井門事例)などがこれに該当す

る.

最後に,体験的学習は講義や文献による学習と一体的で

あることが重要である.われわれは後者の学習も重視して

おり,今回の和泉・井門・若有の「翻訳書『ロール・プレ

イ』(講述(4))は,講義・文献に関する研究である.われわれは,以上のような体験的学習を設定して,文

献・資料による学習のみならず,体験的な学習を実施し

て,知識と行為の統一的な学習を行い,学習者の社会的

実践力を培うことのできる授業実践や研究を実践した.

【参考文献】

[1]井門正美著『社会科における役割体験学習論の構想』(NSK出版,2002年)*本書は博士論文を著書とした.

3.秋大GS研による6つの研究発表

では,秋大 GS 研のメンバーによる発表を発表順に紹介する.

(1)ゲーミング・シミュレーション型授業による裁判員裁判の学習-井門正美

(2)翻訳書『ロール・プレイ』(マトヴェイチュク著)の紹介-和泉浩,井門正美,若有保彦

(3)すごろく学習の提案-古代から現代まで-渡部育子,井門正美,荒川潤,堀川敏樹

(4)教員養成におけるゲーミング・シミュレーション型授業の展開-小高さほみ

(5)歩行環境シミュレータからユビキタス手習所まで-水戸部一孝,吉村昇

(6)助産技術学による分娩介助法の習得-篠原ひとみ,成田好美

3-1 ゲーミング・シミュレーション型授業による裁判員

裁判の学習-井門正美

3-1-1 問題の所在と役割体験学習論の提唱

筆者が専門とする社会系教科教育では,長いこと知識

伝達型や暗記型の授業が数多く実施され,公民的資質や

真に社会生活で活きる社会的実践力の育成が疎かにされ

てきた.学校教育では,学習指導要領において「生きる

力」が明記され,児童生徒が,変動する社会の中で柔軟

かつ逞しく生き抜く力を身に付けることが必至であるの

に,相変わらずの教え込み型や暗記型の授業が多く,特

に,受験という短期的目標だけに目を奪われた教師はそ

うした授業を無反省に実践している.このような状況で

は,社会系教科の本来の目標である公民的資質や「生き

る力」など,到底育成できるはずもない.

こうした問題状況に鑑み,筆者は「役割体験学習論」

を提案している.役割体験学習論は「学習者がある役割

を担うことによって,対象の理解や問題の解決を図る学

習方法である」と定義される.例えば,タクシーの運転

手が,高齢者シミュレータを装着して,お年寄りの模擬

体験を行う体験は役割体験である.まだ,高齢者ではな

く,身体機能も衰えていない人が,シミュレータを装着

することで「身体機能の衰えた高齢者」という役割を担

って体験することで,その立場にある人の理解を図り,

またそうした方々が抱える問題の解決へと向かう.模擬

的にでも体験したことによって,高齢者の立場に立って

思考し,行動することができるようになる.

役割体験学習とは上記のように,ある役割になって体

験することで,真剣かつ切実に対象を理解し,問題を解

決するようになり,しかも,理解や解決にとって必要な

知識も追究していく.言うならば,知識と行為の統一的

学習が役割定見学習によって可能になる.この学習方法

により,知識伝達型や暗記型の教育が改善され,学習者

がここに獲得した知識にしか関心の無かった教育が,「他

者存在の意義」「他者との共同」を強く意識するようにな

る.このことは,学級や学校,さらには社会の基盤作り

になる.役割体験学習論とは,こうしたねらいをもって

構築された教授学習方法なのである.

冒頭で示した図 2-1「GS型授業における体験の体系化」は,理論的根拠が乏しかった体験的学習を役割体験学習論

によって体系化した「理論化の第 1手続」を示したものであるが,役割体験学習論では「理論化の第 2手続」として図 3-1に示した「役割体験の4類型」がある.この4類型は,学習者と学習の場という 2つの観点,そ

れに現実と仮想

という 2つの次元から作成した

ものである.第

1 類型は「主体現実・場現実

型」,第 2 類型は「主体現実・

場仮想型」,第 3類型は「主体仮

想場現実型」,第 4 類型は,「主体仮想・場仮想型」である.

図 3-2 は,法教育に関しての事例を入れたが,第 1 類型では,「傍聴人」の役割取得に見られるように,学習者は

現実の裁判所の公判にそのまま参加するだけで,「傍聴人」

の役割体験ができる.これは現実のリアルな体験で,貴重

な実地体験となる.第 2類型は,例えば,法曹三者自らが実施する模擬裁判が該当する.法曹三者は特に裁判員裁判

開始前には様々なケースの模擬裁判を実施していた.こう

した役割体験は,将来の備えとして役立つと共に,事前に

問題点を発見して改善策を講じることが可能になる.第 3類型は,「車いす体験」に見られるように,健常者が身体

障がい者の役割を取得して現実の場で活動する体験学習で

ある.身体障がい者の視点からバリアフリー新法[2]と社会環境を照合して,問題点や改善点を提示することがで

図 3-2役割体験の4類型

場現実 場仮想

①第一類型

・裁判傍聴(傍聴人)

・ついて行ったらこう

なった(カモになる)

・訴訟を起こす

②第二類型

・ネット裁判員模擬裁

判参観者(端から見

る)

・法曹三者の模擬裁判

③第三類型

・車椅子体験から、身

体障害者を取り巻く

法的問題を指摘す

④第四類型

・模擬裁判

・裁判員裁判ゲーム

・裁判に関するデジタ

ルゲーム

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きよう.第 4類型は,主体,場ともに仮想の場合である.学生による模擬裁判などが該当する.裁判員になる可能性

はあってもすぐになれるわけではない.その場合には,模

擬裁判で体験しておくことで,将来の備えともなり,また,

裁判員裁判の理解にも繋がるのである.

3-1-2 裁判員裁判に関する多様な学習

では,「役割体験学習論に基づく法教育実践」,特に,

公民科の教職科目(公民科教育学概論,公民科内容学)

で実施したゲーミング・シミュレーション型授業による

裁判員裁判の学習について紹介したい.

①講義や文献に基づく学習

裁判員裁判に関しては,賛成のみならず反対する立

場もある.われわれは,裁判所や検察庁等から出され

ている広報誌だけではなく,様々な立場で執筆されて

いる文献も読んで学んだ.

②実地・現場体験(タイプA,第 1 類型)

実際に,秋田地方裁判所の刑事裁判を傍聴して,「傍

聴人」という役割になって公判をリアルに体験し,刑

事裁判を理解した.また,秋田地方検察庁も訪問して,

刑事訴訟法について聞いたり,裁判でに提出される証

拠等について学んだ.

③ゲストティーチャー(タイプB,第 1 類型)

法曹三者の方々に大学にゲストティーチャーとして

きてもらい,裁判員裁判についての説明をしてもら

ったり,当制度に関する意見を述べてもらったりし

た.学生たちは,模擬裁判のシナリオ作りをしてい

たので,その作成に関する質問を行うなどした.

④裁判員模擬裁判(タイプC,第 4 類型)

学生は法曹三者の協力を得て作成した「殺人未遂事

件」のシナリオに基づき,法曹三者と共に模擬裁判を

実施した.裁判官や裁判員,被告人や証人等の役割に

なっての学習を通して,裁判員裁判についての理解を

深め,実施上の問題についても考察した[2].3-1-3 まとめ

今日,裁判員裁判が始まり,国民の司法参加が求めら

れており,学校現場における法教育は,必須となってい

るにもかかわらず,冒頭でも指摘したように充実した法

教育が実践がされているとは言いがたいのが現状である.

こうした現状に鑑み,筆者は「役割体験学習論」を提

唱し,「法的実践力」すなわち「ルールや法に関する知

識・技能を活用する力」を育成しうる法教育を実践し

た[3].役割体験学習論による知識と行為の統一的な学習を通して,法的実践力は初めて培われる力である.

役割体験学習論から法教育を展開することにより,冒頭

で筆者が指摘したような,社会系教科教育や法教育の問題

状況を改善することが可能になり,市民の司法参加時代に

相応しい社会的実践力のある市民を育成できると考える.

【参考文献】

[1]「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の通称で,平成 18(2006)年施行

[2]この実践については,下記 URL を参照のこと.http://namahage.is.akita-u.ac.jp/~gpuser/mogi_saiban/

[3]この成果は拙著『役割体験学習論に基づく法教育』(現代人文社 ,2 011 年)にまとめた.

3-2 翻訳書『ロール・プレイ』(マトヴェイチュク著)

の紹介-和泉浩,若有保彦,井門正美

3-2-1 はじめに

筆者らが,マトヴェイチュク著『Role Play Theory andPlactice』(1997)の翻訳を企画したのは,本学の特色ある大学教育支援プログラムプロジェクト「ゲーミング・シミュ

レーション型授業の構築-社会的実践力を培う体験的学習

プロジェクト-」(平成 18-20年度)においてであった.GS型授業とは,「ゲームやシミュレーション,ロールプレイ

ング等の状況再現的・体験的手法を用いて対象の理解や問

題解決を図る学生参加型授業」と定義しているが,特に,

ロールプレイングはゲームやシミュレーションとも併用さ

れており,基軸となる教育方法,問題解決法であることか

ら,本書の翻訳を行い,私たちのプロジェクトの理論を進

展させようと意図した.そして,平成 19 年度からプロジェクト委員の和泉浩氏を中心に翻訳作業を開始した.

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この翻訳作業はことのほか作業時間がかかり,18 特色GP 終了後に,秋大 GS 研が引き継ぎ,本年(2011.3)に完成を見た[1].3-2-2『ロール・プレイ』の内容

著者マトヴェイチュクは,心理学者・心理士であり,社

会心理学や臨床心理学でのロールプレイングの質的な方法

論研究を行い,1997 年に本書を著している.本書の内容構成は以下の通りである.

『ロール・プレイ』の内容構成

①第 1章 イントロダクション

②ロール・プレイのための認識論的コンテクスト

③現在のロール・プレイ実践の状況

④ロール・プレイ実践の現在(特に技術面に焦点化)

⑤従来のロール・プレイの定義

⑥ロール・プレイの再定義と,方法論と技術に関する全

般的な考察

⑦ロール・プレイにおける関与,取り組み,技術

⑧適切な誘導を行うための実践的示唆の概観1

⑨適切な誘導を行うための実践的示唆の概観2

⑩後記-結び

⑪補遺1ロールプレイ実施上のその他の実践的問題

⑫補遺2セラピーの多様なコンテクストにおけるロール

・プレイの利用例

⑬補遺3主要な誘導技術についての経験的考察

⑭訳者あとがき

⑮マトヴェイチュクの「ロールプレイ論」に向けた提案

論文

3-2-3 まとめ

本書において,マトヴェイチュクは社会心理学や臨床心

理学を中心としたロールプレイングについて考察してお

り,これらの分野でのロールプレイングに関する理論と実

践について本格的に論じている点が評価できる.

しかし,彼女はロールプレイングを役割理論から切り離

そうとしている点や,ロールプレイングの場を「現実と近

似の仮想的状況の構築」としている点等には,井門は反対

し,提案論文においてロールプレイングを再構築する「役

割実践法」を提案している.詳細は発表で紹介し,ロール

プレイングに関する議論をしようと思う.

【参考文献】

[1]マトヴェイチュク著,和泉浩監訳・若有保彦訳『ロール・プレイ-理論と実践-』(現代人文社,2011 年)

3-3すごろく学習の提案-古代から現代まで-

渡部育子,井門正美,荒川潤,堀川敏樹

3-3-1 はじめに

すごろくは『日本書紀』の中に,689年(持統天皇の代)に「禁断双六」という記述があるとされ,これは盤双六と

言われるものである.今回,私たちが対象としたのは,今

日,一般的で多くの人に馴染みのある絵双六である.この

絵すごろくの源流は,13世紀頃の「仏法双六」だと言われ,これは天台宗の新米の僧に遊びながら仏法の名目を学

ばせるためのものだったようだ.これがその後,江戸時代

に入り,絵双六として成立するに至って,今日でも多くの

人に親しまれている遊びとなっている.

筆者らは,すでに「デジタルゲームを教室へ-「遊び」

と「学び」のハーモニー-」[1]というテーマでゲーム研究

を行ってきたが,その継続研究として古くから伝わる定番

の遊び(ゲーム)としての絵双六に着目し,この収集並び

に絵双六をテーマとした研究と教育実践を行った.本発表

では,絵双六研究の一端を紹介すると共に,絵双六をテー

マにした筆者の大学での授業(「総合演習」2010 年度)を紹介する.

3-3-2 絵双六の研究

江戸時代から現代までの絵双六について,時代ごとに普

及したものを概観して,筆者は次のようにまとめた.

江戸時代は庶民文化が花開いた時代であり,絵双六はそ

の文化を象徴する内容,すなわち,道中(旅),歌舞伎,

風俗(庶民生活),人生や出世などがテーマとして作られ

ている.明治期では,近代国家が成立して政府による欧化

政策や富国強兵策が進められると,絵双六もそうした事柄

を題材としてもの(文明開化,軍事)が多く作られている.

大正・昭和期(アジア・太平洋戦争前)では大正自由主義

の世相を反映して,新聞雑誌の付録,会社・商店の広告,

社会情勢,空想科学などをテーマとした絵双六が多い.明

治期の錦絵風に比べると,この時期は印刷技術の進展に伴

い色彩豊かな絵双六が普及している.しかし,戦争が始ま

ると題材は軍事色が強くなり,戦争が激化すると紙質が悪

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く,色彩も少なくなっている.

戦後になると,民主主義や市場経済体制,映画やテレビ

の普及などによって,欧米の影響を受けた題材,映画やテ

レビのスターやマンガ・アニメのヒーロー物を始め多種多

様な題材と,絵本やボード,レジャーシート,立体など様

々な形態の絵双六が登場し,絵双六という概念では捉えき

れないすごろくが登場するに至っている.

筆者らの教育研究という立場から絵双六を捉えると,時

代を通して,遊びはもちろんのこと,学びの機能が組み込

まれているものが多いことが確認できた.

3-3-3平城京街歩きゲームまちある

平城京遷都から 1300年にあたる 2010年は,平城京に関連する数多くのイベントが行われた.「すごろく・平城京」

は,平成 18年度の特色ある大学教育支援プログラムとして採択された「ゲーミング・シミュレーション型授業の構

築」(代表:教育文化学部教授・井門正美)の方法論に基づ

いて作成したゲームである.このゲームの特徴は,すごろ

く版でゲームを楽しみながら,8世紀に展開した政治や文化に関する知識を習得できるところにある.歴史上の事項

を素材にゲームを作成する場合,歴史的事実とは異なる仮

想の要素を取り入れることができないという制約がある.

しかし,すごろくという遊びの要素と設問の工夫によって,

小学生から高校生まで,学年を問わず活用することができ

る.また,総合学習や主題学習においても利用することが

可能である.

①ゲームの効用

奈良は 2010年に遷都 1300年の行事で多くの人々の関心を集めたが,平城京の文化的価値は普遍的とも言えるもので

ある.1998年には「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録され,観光客のみならず,修学旅行で訪れる児童・

生徒も多い.一方,修学旅行に奈良が組み込まれなかった

場合は,この世界遺産を体感しないまま,歴史学習を終え

ることになる.また,歴史学習の実際においては,年代や

文化財等の事項は,学習者(児童・生徒)が暗記という方

法を選択して習得する場合もみられるが,このことによっ

て,いわゆる歴史嫌いを引き起こしたり,歴史教育の目的

を達成できなかったりする結果をもたらすこともある.す

ごろくという遊びの要素を取り入れることで,歴史学習に

おけるそのようなマイナス面を排除し,時代の全体像を構

築し,人々の暮らしについて考えさせる効果が得られるも

のと考える.

②すごろく・平城京

本ゲームは平城京をイメージした2人用すごろくであ

る.すごろく盤には現代の奈良市の航空写真を使用し,平

城京を思わせる碁盤の目が付されている.碁盤の目をすご

ろくのマス目に利用し,平城京にゆかりのある史跡の位置

を通過するようにした.羅城門からスタートし,東市,興

福寺,東大寺,朱雀門,唐招提寺,西市,西大寺を通って

平城宮がゴールとなる.このように航空写真を使用し,実

際の史跡の位置をマス目にすることで,すごろくをしなが

ら平城京の街歩きを疑似体験できるようにした.そして,

現代の奈良市の様子と対比させながら平城京全体の広がり

やスケールを視覚的にイメージできるように工夫した.

3-3-4 すごろくをつくる学習

社会科の調べ学習におけるまとめのツールとしてすごろ

くを利用することを提案する.従来,模造紙,壁新聞とい

った媒体にまとめる学習は行われてきているが,それにす

ごろくという選択肢を加えようとするものである.すごろ

くを利用する利点としては,①すごろくづくりは簡単で小

学生でも無理なくつくることが可能である点,②マス目や

コマのデザイン,周囲のテーマに関する絵や写真,クイズ

などのイベントなどのように工夫の幅は広く個性が出やす

い点,③エクセルやパワーポイントの機能を利用してつく

ることができ,コンピュータの操作に慣れるという効果も

期待できる点,④すごろくのマスと地図上の位置を対応さ

せることで,位置関係の把握や地理的な分布,拡がりを視

覚的に表現できる点,⑤自分でゲームをつくるという楽し

さが学習意欲を喚起する点,などが考えられる.

例えば,小4の内容(5)イ「地域の人々が受け継いで

きた文化財や年中行事」で,秋田県の重要無形民俗文化財

について学習したことをすごろくにまとめる場合を想定し

てそのモデルを作製した.この題材を選んだ理由として,

一つは秋田県は国指定重要無形民俗文化財の数が16件と

全国で最も多く,それぞれ様式が独特で長い歴史を持って

おり,学習価値が高いと考えられることである.二つ目は,

平成 26年に秋田県で開催予定の国民文化祭も控えていることもあり,秋田

の伝統文化を見つ

め直す機会を持

ち,それらを受け

継いでいこうとす

る資質を育む必要

があると思ったか

らである.すごろ

くの構成として

は,秋田県の白地

図をベースにし

て,各地に16件

の国指定重要無形

民俗文化財をすご

ろくのマスとし配

置した.これらの

マスに止まったら

クイズに答えると

いうイベントを設

定して,ゲーム性

を向上させるとと

もに,文化財について学習できるようにした.

もう一つの事例として,小5の内容(3)ウ「工業生産

に従事している人々の工夫や努力,工業生産を支える貿易

や運輸の働き」で自動車工場の組み立てラインの様子をす

ごろくにまとめたモデルである.子ども達が自動車工場を

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- 6 -

見学した後のまとめ学習を想定して,自動車組み立ては流

れ作業によってライン生産されていること,多くの工程に

分岐しており,下請け会社の裾野も広いこと,などをすご

ろくづくりを通して学ぶことをねらいとする.このモデル

の作成にはエクセルを利用しており,セルをマス目として

利用し,図形オブジェクトを使って説明文を記入した.こ

の方法は小学生には少し難しいかもしれないが,将来職場

で役立つものなので,エクセルを使った資料作成に慣れて

おくことは経験しておく価値はあると思う.すごろくの構

成としては実際の組み立てラインの流れをなるべく崩さな

いように,プレス,溶接,塗装,艤装,検査工程を軸にし

て,エンジン,トランスミッション,アクスルなどのユニ

ットラインを枝分かれさせた.マスの周囲に主要部品の写

真や機能の解説などを掲載し,自動車の仕組みについても

理解を深められるようにしてある.また,下請け部品ライ

ンでは,一次下請けと二次下請けの二段構えにして,自動

車産業の裾野の広さに気付けるようにした.

【参考文献】

[1]渡部育子著『元明天皇・元正天皇-まさに今,都鄙を建つべし-』(ミネルヴァ書房,2010年)

3-4 教員養成におけるゲーミング・シミュレーション

型授業の展開-小高さほみ

3-4-1 はじめに

ゲーミング・シミュレーション(以下 GS)型授業は,秋田大学においては,18特色 GP「ゲーミング・シミュレーション型授業の構築-学生の社会的実践力培う体験的

学習プロジェクト-」に始まり,前述の通り井門によっ

て体系化されている.GS型授業は,「関心対象の理解や問題の解決にゲームやシミュレーション,ロールプレイ

ングを用いる授業」と定義され,「 体験的学習を通じて

学生の社会的実践力を培う」ことを目指し,学内で積極

的に導入されている.ここでは,学校教育課程の教員養

成教員養成における GS型授業の特徴と,教員養成ならではの GS型授業の可能性を検討してみたい.はじめに,GS型授業をどのように導入しれているのか

を,筆者の実践例の紹介を通して提示する.そして,教

員養成教員養成における GS型授業の特徴と課題を述べ

ていく.

3-4-2GS型授業の理論の「体験的学習の設定」と実践

GS型授業の理論では,図1のように「体験的学習の設定」を体系化している.その内容は,① 「A 現場」;役

割取得・見学,② 「B 抽出・移動」;現場からモノを運

ぶ・エキスパートを招く,③ 「C モデル化」;ゲーミン

グ,シミュレーション,ロールプレイング等を活用した

疑似体験 ,④ 「D 媒体」;メディアを媒体とした対話

・交流である.

このように設定された体験学習を,筆者が担当する教

員養成系の学部授業に導入した事例の一部が,表1であ

る.受講者数は 120~ 50人から一ケタまでさまざまであり,教室内での活動にとどまらず,キャンバス内,地域

や幼稚園・小中学校・高校などに出向いての体験である.

これまで実践した内容をまとめると,表 1にあるように前述した体系化の A~ D にあてはまらない活動があることが見えてくる.

そもそも,GS型授業は,これまでの大学の授業のあり方の転換を目指し,ゲーミング・シミュレーションを中

核にした学生参加型の授業を推進するものである.教員

養成系の学生たちは,学生参加型の授業の受講生として

学んだ知識と行為を,教壇でその GS型授業の実践者となり,社会的実践力が教育の場で生かされるのである.そ

れゆえ,表 1の事例にあるようにA~Dに収まりきらない「X:GS型授業の主体的な実践(教材開発と授業実

践)」が加わるのである.以下,GS型授業の主体的な実

践に至る授業の一端を見ていきたい.

GS型授業の理論;体験的学習の設定

図1 GS型授業

① 「A 現場」;役割取得・見学② 「B 抽出・移動」;現場からモノを運ぶ・エキスパートを招く③ 「C モデル化」;ゲーミング,シミュレーション,

ロールプレイング等を活用した疑似体験

④ 「D 媒体」;メディアを媒体とした対話・交流

表 1 ゲーミング・シミュレーション型授業の実践例

エンジン組み立てライン

鋳造(ちゅうぞう)工場

鍛造(たんぞう)工場

エンジン

組立ラインSTART

エンジン

搭載

鋳造とは溶けた金属を型に流し込んで形をつくることだよ。

シリンダーブロックやシリンダーヘッドなどの複雑な形の部品をつくっているんだ。

鍛造とは金属を加熱して叩くことで強度を高めることだよ。

エンジン内部にあるクランクシャフト、コネクティングロッド

などの部品は力がかかるので、鍛造でつくっているんだ。

部品が欠品

してしまった。

一回休み。

アクスル組み立てライン

フロントアクスル

リアアクスル

プロペラシャフト

デファレンシャルギア

エンジン

トランスミッション

図はFR車の場合の模式図。FF車、四輪駆動車の場合は異なる。

プレスは金属の板をボデーの形に合わせて切り抜くことだよ。

溶接は切り抜いた板をつなぎ合わせることだよ。

これらの作業はロボットがやってくれることが多いんだ。

トランスミッション組み立てライン

一次下請け(したうけ)ライン

部品検査ライン

二次下請け(したうけ)ライン

トランス

ミッション結合

艤装(ぎそう)ライン塗装(とそう)工程 車両検査ライン

トランス

ミッション

組立ラインSTART

鋳造ラインSTART

鍛造

ラインSTART

新型加工

機械納入3マス進む

水もれ検査

水もれ発見!

5マス戻る。

傾斜路検査

不良2マス戻る。

部品工場START

艤装は座席シートや

スピードメーター、

オーディオなどの室内装備を

取り付けることだよ。

座席シート組み付け

溶接(ようせつ)工程プレス工程(こうてい)

ステアリング組み立てライン

アクスル

組立ラインSTART

自動車の部品は2万~3万点もあるんだ。

そのうち7割から9割は他から買ってきた部品だよ。

他から買った部品も実はまた別のところから

買ってきた部品でつくっているんだ。

トランスミッションは自転車の

変速機と似ているよ。

エンジンが1回転したら

タイヤが何回転するかを変えられるよ。

完成!スタート!

ボルトがちゃんと閉まっているか、

加速やブレーキの性能は問題ないか、

いろいろな検査がされているよ。

部品検査は部品会社(下請け会社)で行った後、

組立工場でも行っているんだ。

ステアリングは行きたい方向に曲がれるように

するための舵取り装置のことだよ。

車はハンドルを回すと曲がるよね。あれのことだよ。

小さなほこりが混ざっただけで、

でこぼこが目立ってしまうんだ。

もう一度

さいころを振って1~3なら⇒

4~6なら⇓

鋳造部品はエンジンだけでなくトランスミッションでも使われているよ。

<ルール>赤いマスには必ず止まること。

「○○ラインへ」という指示があるので、

そのラインのSTARTの位置に行くこと。

ピストン

コネクティングロッド

クランクシャフト

不良品発見!

3マス戻る。

ステアリング組立ライン

START

もう一度さいころを振る。

1か2・・・エンジン組み立てラインへ

3か4・・・トランスミッション組み立て工場へ

5・・・鍛造(たんぞう)工場へ

6・・・鋳造(ちゅうぞう)ラインへ

エアーインパクト

レンチ故障。2マス戻る。

エンジン運転検査

失敗

2マス戻る

期間従業員

が増員された。

5マス進む。

リコール

(市場不具合)4マス戻る

新型ダイカストマシン導入。

4マス進む。

鉄の価格が

急上昇した。

2マス戻る。

部品工場

ステアリング

組み付け

もう一度さいころを振る。1~3・・・部品工場へ

4~6・・・ステアリング組み立てラインへ

工場火災発生

1回休み。

プレス機械点検整備

1回休み。

アクスル

組み付け

溶接ロボット

故障1回休み。

部署異動!

アクスル

組み立て

ラインへ

エアーインパクトレンチは空気の圧力を使ってボルトを締める工具だよ。一瞬で締められるよ。

ダイカストというのは、溶けた金属(アルミニウムなど)を

高圧で型に注入することで、左の写真のようなとても複雑な形状の部品を大量に製造する技術だよ。

リコールは、製品の欠陥が発覚して、メーカーが自主的に回収して

修理することだよ。回収・修理にはとてもお金がかかるし、

信用も落ちてしまうね。品質第一!

冷却水もれ

1回休み。

リアアクスルの例

アクスルはタイヤとタイヤをつなぐ軸のことだよ。

プロペラシャフトはトランスミッションとアクスルをつないでいるよ。

リコール

(市場不具合)4マス戻る

完成した自動車は船やトラックによって運ばれていくよ。

エンジンは車を動かすための力をつくるところだよ。

ガソリンや軽油(けいゆ)といった石油と空気を混ぜ、

爆発させることによって力を生み出すんだ。

最近はガソリンの消費が少ないハイブリッドカーや

ガソリンを使わない電気自動車や燃料電池車といった

新しい技術が開発されているんだって。

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3-4-3.実践例の紹介

①家庭科教員免許のための保育実習

新学習指導要領「中学校技術・家庭科」家庭分野の「A家族・家庭と子どもの成長」では「幼児との触れ合い体

験」がこれまでの選択から必修となった.そのため,こ

れまで以上に保育実習は家庭科教員養成において重視さ

れることになった.本学では,保育実習(必修)科目を

含めて「子ども生活論Ⅰ」が開講されている.2単位の

科目で,保育の理論を学び,保育実習を体験し, 「幼児

との触れ合い体

験」を含めた授

業デザインがで

きることを目指

している.

毎年,受講生

のアンケート結

果から,幼児と

の触れ合い体験

がない学生が大

半であり,附属

幼稚園の協力を得た保育実習は,学生にとって貴重な体

験となる.GS型授業Aを体験した学生は,教育実習で

先の附属中学校や協力校での「幼児との触れ合い体験の

振り返り」の授業を担当すると,戸惑うことなく「指導

案作成に取り組みやすかった」,「中学生の振り返りを共

有できた」と語った.また,教育実習で「幼児との触れ

合い体験」の研究授業に取り組んだ学生は,卒業研究の

テーマに保育実習を取り上げ,「幼児との触れ合い体験」

のカリキュラム案を作成した.

教育実習や卒論で保育実習に取り組んだ学生は,GS

型授業Aの体験を基礎として,GS型授業の実践者に成

長していった.

②A~Dを取り入れた生活科教育学概論

本学では,生活科教育は,教科教育学(理科,社会

科,家庭科)と幼児教育,教育心理学の担当者が,オム

ニバス形式で展開している.筆者は家庭科教育の専任で

あるが,ガイダンスと「生活科の特性」を担当し,ゲー

ミング・シミュレーションによる授業改善を進めてきた.

その理由は,100人以上の受講生のために一斉授業とならざるをえない状況に置かれているが,生活科であるから

こそ,体験活動を取り入れたいと考えた.なぜなら,子

どもの体験活動

を重視する生活

科は,知識伝達

の学習観からの

転換を迫るもの

である. 生活

科の学習経験の

ある学生たちで

はあるが,低学

年での学習経験

附属幼稚園実習

• 配属された組で実習

• 子どもの生活を理解し,

家庭科教育における

「幼児との触れ合い体

験」の授業案をデザイ

ンできることを目指す

のために記憶は断片的であり,生活科を具体的にイメー

ジすることができないという状況にある.あいまいな記

憶は,「遊びばかり・・・」,「やってみることは重要だが,

体験しただけ・・・・?」と教科のイメージがはいまわ

る経験主義に陥っていらないために,ガイダンスで「キ

ャンパス探検体験」 をして,教室から解放し,小学生の

生活科体験を想起できるようにし,それから生活科教育

学をはじめ様々な関連する理論を学ぶこととした. G

S型授業Aの体験が,理論と実践をつなぐ役目となる.

③ゲーミング教材の開発を取り入れた授業

家庭科を専門としない小学校教員を目指す学生が受講

する「初等科家庭」は,オムニバスで内容学担当者 4名と小高で担当している.授業の目的は,「家庭科の内容学

の各領域における基本的な理論を理解し,新学習指導要

領を踏まえて小学校家庭科の授業を実践する力を身に付

ける.」ことであり,到達目標は,「学校家庭科の新学習

指導要領を理解する.衣・食・住・家族の各学問領域の

基本的な内容を説明できる.興味・関心を持った専門分

野の最新の動向を調べ,担当教員と議論し考察する.専

門分野の知見と地域の生活を結びつけた家庭科の教材を

開発する.」ことである.学生は,いずれかの専門内容を

選び,担当教員との議論を通して,教材を開発すること

が課せられ,ゲーミングを取り入れた教材が提出される.

この授業で出会

った他教科の学生

たちと,2007~2010年度に本学で開催された「子ど

も食農体験教室」

に参加した.子ど

も食農体験教室と

は,地域の子ども

たちが,栽培から収穫,そして加工・調理まで学ぶ教室

で,学生ボランティアの学生たちにとっては,講師の体

験をする絶好の機会となる.理科と家庭科などの学生が

共同で開発した「大豆の栽培から収穫・加工までの教材

である「大豆のヒミツ」は,大豆の栽培と加工をゲーム

などで学び,石薄できな粉作りを実習する.大学 2年生で教材開発に参加し,卒業するまで 3年間学生ボランティアに 参加したTさんは,講師体験で成長し,東北地方

で家庭科教員に現役合格している.

3-4-4.おわりに

さまざま実践例を見てきたが,例えば,GS型授業は,

生活科の学習方法と重なる.GS型授業で学生参加型の

授業の方法と理論を学ぶことは,生活科の実践者として

の実践力につながるのである.筆者は,GS型授業を 4回取り入れている.①ガイダンスのキャンパス探検,②

生活科の小学校作品を教室に持ち込む,③ 小学校教員に

よる模擬・授業体験,④ 幼稚園遊びのビデオ視聴幼稚園

教員との交流である.オムニバスの 15回の授業全体で,GS型授業をどこに取り入れ,理論とどのように結び付

生活科の学習方法とGS型授業

A 現場 B 抽出・移動 C モデル化 D 媒体

A現場

学校地域

学校探検まち探検田んぼでお米づくりヤギの飼育体験高齢者施設訪問幼稚園・保育園訪問

バケツ稲ウサギの飼育

祖父母から伝承遊びを学ぶ

ごっご遊びお祭りの担い手農業従事者

インターネットで交流

ビデオ視聴

生活科の学び? GS型授業の重なり

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けていくのか,学生が何をどのようにまなんでいるのか

の検討が必要であろう.

また,教員養成系のGS型授業として,学生がその実践

者となる体験活動を検討すること,個々に実践している

GS 型授業の関連を検討すること,この 2 点を踏まえて教員養成系のカリキュラムの体系化の検討が今後の課題と

なるであろう.

3-5 歩行環境シミュレータからユビキタス手習所まで

-水戸部一孝,吉村昇

バーチャルリアリティ(Virtual Reality以後,VRと呼ぶ)技術はコンピュータで再現された物理空間をヒトの視覚,

聴覚,体性感覚を通じて,あたかもそこに実在するかの様

に感じさせる(疑似体験させる)技術を総称する.この技

術はゲームの世界で大きな成功を収めているが,VR技術による疑似体験の可能性はアミューズメントの世界だけに

留まらない.以下では秋田大学で実施された車道横断体験

用シミュレータおよび手指(しゅし)の巧緻動作を再現す

る学習支援システムを例に過去の取り組みを紹介する.

秋田県の交通事故死者数に占める高齢者の割合は全国で最

も高い.なぜ,「高齢者は事故に遭いやすいのか?」を調べ

るために,コンピュータ内に再現された車道を横断体験で

きる「歩行環境シミュレータ」を開発した.これまでに延

べ 140人を超える車道横断を計測・解析し,高齢歩行者交通事故を誘発するリスク要因を一部明らかにしており,そ

の知見を学術論文だけでなく新聞・テレビ等のマスメディ

アを通じ社会に還元してきた.本技術は商品名「わたりジ

ョーズ君」として秋田県の企業である株式会社エーピーア

イにより商品化され,都道府県の警察による高齢者向け交

通安全講習に活用されはじめている.

秋田県は国内で類を見ないほど急速に高齢化の進んだ地方

都市である.一方,秋田県の国指定重要無形民俗文化財の

数は国内で最も多いが,伝承者の高齢化と少子化のため伝

統技能の継承が大きな問題となっている.特に手指の巧緻

動作の継承には師匠の下で弟子として長い年月をかけて学

ぶ必要があるため,技能の保存と継承は大きな課題である.

そこで,我々は歩行環境シミュレータで蓄積したモーショ

ンキャプチャの技術を活かし,高精度な手指用モーション

キャプチャを開発し,本技術で収集された手指巧緻動作の

デジタルコンテンツを活用する学習支援システムである

「ユビキタス手習所」を開発した.光学シースルータイプ

の HMDを装着することで,必要なときに必要な場所で「半透明で幽霊の手のように目の前に浮かび上がる教師の手」

に導かれ,学習者は先生の手の動作を追体験できる.技術

的には,サンプリングレート 60Hzで学習者の頭部(HMD)の位置・姿勢を磁気式モーションキャプチャ装置で計測

し,算出した学習者の左右の眼の位置座標から見えるであ

ろう「3Dオブジェクトとしてモデリングされた教師の手指」を両眼用に 2種類,実時間でレンダリングし,ハーフミラーを介して左右の眼に虚像として呈示することで実現

している.これにより,教師の手と一体化した状態で作業

するとの「これまでにない体験」を可能にした.バーチャ

ルの世界では,現実には不可能なことも可能になる.たと

えば,先生の手をゆっくり動かしてみたり,確認したい動

作まで早送りしたり,動きを止めて普通には見ることので

きない視点から俯瞰することもできる.本手法により模倣

度がどのように向上したかを,「箏の学習プロセス」を通し

て評価した.ここでは,学習中の教師に対する生徒の手の

動きの相互相関係数から演奏の遅れ時間,姿勢および弦を

弾く指先の位置を評価尺度として,8名の学習者を対象に本システムの特徴を評価した.その結果,先生の演奏を撮

影したビデオ映像と比べて,本手法では遅れ時間が 0.19秒から 0.09秒に有意に改善(P<0.01)し,演奏時の手の姿勢も教師の姿勢に有意に近付く(P<0.05)ことを確認した.また,弦を弾く指先の位置を解析した結果,音色に関する弦

を弾く位置(左右方向)の再現精度が格段に向上する(p<0.005)ことを確認した.一方,演奏速度が速い条件では教師の動きに学習者が追従することができず,本システム

を用いても改善効果が現れないとの運用上のポイントも明

らかになった.以上の実験より,本手法は先生の演奏時の

「手の姿勢」および「動き」を効率良く修得させるには有

用で,初学者には十分な用途もあると考える.しかしなが

ら,中級者以上に求められる「理解」,つまり「なぜ,その

ような姿勢を取るのか?」との「形」に込められた意味と

しての「心」を伝えることはできない.最新の工学技術で

「形」を効率良く伝える一方,「心」を伝えるための教育を

充実させるための研究も必要不可欠と考える.

本研究の一部は,秋田県研究開発基盤整備促進事業(平成

16年度),総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(平成 17

図 1 歩行環境シミュレータ

図 2 ユビキタス手習所による練習風景

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年度~平成 19年度,平成 21年度~ 22年度)および文部科学省特別教育研究費(平成 21年度~ 23年度)の支援を得て実施された.

3-6 助産技術学による分娩介助法の習得-篠原ひとみ,

成田好美-

3-6-1はじめに秋田大学医学部保健学科看護学専攻助産コースでは,毎年

4 名の学生を選抜し,助産師の国家資格を取得するための教

育を行っている.保健師助産師看護師学校養成所指定規則

で助産学実習は,「実習中の分べんの取扱いについては,助

産師又は医師の監督の下に学生一人につき 10 回程度行わせ

ること」とあり,それに基づき学生は,助産学実習におい

て 10 例程度の分娩介助を実施しなくてはならない.それに

は実習を開始する前に,分娩介助法を実践可能なレベルに

まで習得していることが不可欠である.本学では 3 年次後期

に「助産技術学」という科目を開講し,その中で分娩介助

法を学ぶ.「助産技術学」は,助産学生対象の必修科目で,

1 単位 30 時間の演習科目である.学習目的は助産実践に必

要な基本的専門技術の習得であり,分娩介助法の他に,内

診,母乳育児支援,新生児の蘇生などが含まれる.分娩介

助法では教材として,「母性総合シミュレーター(KOKEN

LM-064)」活用している.

3-6-2教材の概要「母性総合シミュレーター(KOKEN LM-064)」(以下,シ

ミュレーター)は,妊婦の外診から分娩期の内診,分娩介

助の実際,軟産道裂傷の縫合,産褥期の子宮触診,乳房ケ

アまでの演習が,身体部位の模型を入れ替えることにより

可能となる.生体に近い感触の素材を使用しており,比較

的リアルな感覚の演習が可能である.全身モデルであるた

め,仰臥位だけでなく,フリースタイルの分娩介助の演習

も可能である.また,本学では教員が分娩介助法のDVD教材

を作成し,学生が繰り返し視聴できるようにしている.DV

Dは,分娩トレイの準備,産婦の準備,介助者の準備と清潔

野の作成,児の娩出介助,出生直後の新生児のケア,胎盤

の娩出介助,産道の検査,分娩後の産婦のケアで構成され

ている.作成時に工夫した点は,分娩介助だけでなく,分

娩介助に至るまでの細々とした準備(分娩トレイの準備,

産婦の分娩体位の作成,介助者の手洗い,ガウン・滅菌手

袋の装着,外陰部消毒など)についても,実際に臨地で迷

うことがないように手順を考え,できる限り臨地の方法に

近づけた.また,産婦への声かけや説明,コミュニケーシ

ョンの取り方も実際の援助場面を想定して教員が演じてい

る.

3-6-3 演習の進め方

学生は,教員より正常経過の産婦に対する仰臥位の分娩介

助法について,一つ一つの手順とその根拠に関する講義と

シミュレーターを用いたデモンストレーションをうける.

学生は講義時間以外にも,分娩介助法について反復して練

習を行う.単なる技術の習得ではなく,産婦に対する呼吸

法や努責の誘導の声かけ等,シミュレーターを産婦として

扱い,コミュニケーションをとって関係を構築できるよう,

実際の援助場面を想定して練習を行う.胎児モデルを動か

す役割も学生が実施するため,正常経過の胎児の回旋を学

ぶ機会となる.また,仰臥位の出産は分娩介助の基本体位

であるが,助産学では,胎児と産婦にとって安全で安楽な

方法として自由な体位による分娩介助も学んでおく必要が

ある 1).そのため,シミュレーターを用いたフリースタイ

ルの分娩介助についても学んでいる.その後,分娩介助法

に関する筆記試験,仰臥位の分娩介助法技術試験を行い,

技術の習得度を評価している.

3-6-4 学習効果と課題

学習効果として以下の 3 点があげられる.一つは,DVDと

シミュレーターを用いた反復練習から,分娩介助法の基本

的技術の習得ができていることである.分娩介助法は全体

で 50 分を要する長い演習項目である.その中の手技につい

て,一つ一つの意味を理解し,手順を覚えることはかなり

の自己学習と練習量を要する.それを習得した学生は,分

娩介助に向けてある程度の自信をもつことができている.

二つ目は,シミュレーターに本当の産婦をイメージして分

娩介助法を演習することができていることである.分娩介

助法の演習では,腰部から大腿部までの外陰部モデルを活

用している学校が多いと推察する.しかし,本学では全身

モデルのシミュレーターを活用しているため,脚を開脚す

る体位や外陰部へのケアに伴う羞恥心やプライバシーへの

配慮,産婦へのいたわりをもった分娩介助法を学ぶことが

できていると考える.三つ目に,分娩介助法の演習は,3 年

次までに学習している清潔野の理解,滅菌手袋の装着,鑷

子の操作など基本的な看護技術の再学習の機会となってい

る.

今後の課題は,さらに臨場感のある分娩場面を設定し,そ

の中で分娩介助法を身につけていくことである.生活体験

が不足している現代の若者にとって,妊産婦は身近な存在

ではない.まして,母性看護学実習も修了していない 3 年次

では分娩自体が非常にイメージしにくくなっている.それ

を補強するリアリティのある演習が必要だと考えている.

3-6-5 おわりに

学生は実際の助産学実習で,演習で学んだ分娩介助法は絶

対的なものではないことを学ぶ.また,分娩経過の診断力

や触診・聴診・視診など五感をフルに使うスキル,信頼関

係を

構築し産婦に寄り添うスキルは,臨地における生身の体験

からしか身につけられない 2).そういう意味では,シミュ

レーターを使用した演習から学生が習得できるスキルは限

られている.しかし,分娩介助法の演習が,その後の実習

への期待につながり,将来の職業に助産師を選択したこと

を再認識できる演習でありたいと考えている.

【参考文献】

[1]日隈ふみ子:十分な実践力習得のための教育課程とは,

助産雑誌,58(3),211-215,2004.

[2]高槻友子:4 年生大学のカリキュラムを振り返って思う

こと,助産雑誌,58(3),221-223,2004.

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4.結び以上,私たち秋田大学ゲーミング・シミュレーション研

究会の研究成果について,6つの研究発表を通して,その

一端を紹介した.

大学の講義は,まだまだ座学による講義が多い.教師が

知識を一方的に伝えるだけの講義だけでは,学生の社会的

実践力(社会において自己実現を果たしたり,また他者と

共同して社会をよりよく変革したりする実践力)を培うこ

とはできない.講義やゼミは,教師と学生が共に築き上げ

るような学びと研究の場,学び合うことの喜びや他者存在

の必要性が感じ取れるような場でなければならないと考え

る.こうした意味で私たちは,ゲーミング・シミュレーシ

ョンを対象の理解や問題の解決のために大いに活用しつ

つ,同時に学びの場の変革を展開しているのである.

私どもの発表や研究実践活動等について日本教育方法学

会の会員の皆様や大会参加をされた多くの方々から,ご意

見をいただければと思う.

【付記】

本論稿は各発表要旨について各々の発表者が執筆した.

その他は企画代表の井門が執筆し,監修も行った.

発表者の紹介 (五十音順)

○大学教員

和泉 浩(いずみひろし)教育文化学部准教授,社会学

井門正美(いどまさみ)教育文化学部教授,秋大 GS 研会長,教育学,社会システム論

小高さほみ(こだかさほみ)教育文化学部教授,教育学,

教師教育学,家庭科教育学

篠原ひとみ(しのはらひとみ)大学院医学系研究科

大学院担当教授,母性看護学

成田好美(なりたよしみ)大学院医学系研究科助教

水戸部一孝(みとべかずたか)大学院工学資源学研究

科准教授,生体工学

吉村 昇(よしむらのぼる)学長,基礎電気工学

若有保彦(わかありやすひこ)教育文化学部准教授,

英語教育学

渡部育子(わたなべいくこ)教育文化学部教授(学長

補佐),日本古代史

○大学院生

荒川 潤(あらかわじゅん)教育学研究科,社会科教

育学,歴史教育

堀川敏樹(ほりかわとしき)教育学研究科,社会科教

育学,問題解決学習

秋大GS研連絡先

〒 010-8502 秋田市手形学園町 1-1 秋田大学教育文化

学部秋大GS研事務局 井門正美

Tel/Fax: 018-889-2644 e-mail:[email protected]

秋田大学ゲーミング・シミュレーション研究会HP:

http://www.akita-university-gaming-simulation.jp/

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