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研修日程(実績) 2月15日(火) 対馬→群馬県みなかみ町への移動 赤谷センター職員による赤谷プロジェクトの概要説明 赤谷プロジェクト地域協議会副会長(林氏)との懇談 16日(水) 群馬県赤谷地方で展開される「赤谷プロジェクト」事業の現地視察、 関係者からの意見聴取及び意見交換 次研修地である神奈川県へ移動 17日(木) 神奈川県自然環境保全センター(県機関)職員による丹沢地方の自 然再生計画に基づく試験場の現場視察 神奈川県自然環境保全センターへ移動し、センターの説明、施設内 の紹介 18日(金) 対馬への帰島 2月15日(火) 対馬→群馬県みなかみ町への移動 およそ8時間の行程 赤谷センター職員による赤谷プロジェクトの概要説明 赤谷センター現場事務所 (通称:いきもの村) しばらく前まで、農具倉庫として 使用されていたものを改造して使 用している ● 赤谷プロジェクト(正式には三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画という。) (概要) 群馬県みなかみ町(旧新治村)北部に広がる約1万ヘクタールの国有林(赤谷の森) における「生物多様性の復元」と「これを活用した持続的な地域づくり」をテーマに、 行政と民間が協働で森林生態系管理をしていこうとするプロジェクト。平成17年から 行われている。 (プロジェクトが始まった背景) 旧新治村時代(バブル絶頂期)に大規模なダム建設計画とリゾート構想(大規模スキ ー場開発を主としたリゾート計画)により村を活性化させようと政策が展開されたが、 自然保護団体(新治村の自然を守る会、自然保護協会)の猛烈な抗議を受け、さらにマ スコミが事件として取り上げ始めたことにより、それまで進んでいた計画が頓挫し、ち ょうどそのころにバブルが弾け、結果的に中止になった。 抗議するなか、新治村の自然がどんなものか自然保護協会による調査がはいったとこ ろ、日本では珍しいイヌワシ、クマタカの生息地であることや日本各地にみられる森林 鈴木赤谷センター所長による説明ふるさと村の屋根裏部屋にはムササビが子育てをしていたそうです。

研修日程(実績) 2月15日(火) 対馬→群馬県みなかみ町への移 … · 次研修地である神奈川県へ移動 17日(木) 神奈川県自然環境保全センター(県機関)職員による丹沢地方の自

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研修日程(実績)

2月15日(火) 対馬→群馬県みなかみ町への移動

赤谷センター職員による赤谷プロジェクトの概要説明

赤谷プロジェクト地域協議会副会長(林氏)との懇談

16日(水) 群馬県赤谷地方で展開される「赤谷プロジェクト」事業の現地視察、

関係者からの意見聴取及び意見交換

次研修地である神奈川県へ移動

17日(木) 神奈川県自然環境保全センター(県機関)職員による丹沢地方の自

然再生計画に基づく試験場の現場視察

神奈川県自然環境保全センターへ移動し、センターの説明、施設内

の紹介

18日(金) 対馬への帰島

2月15日(火) 対馬→群馬県みなかみ町への移動 およそ8時間の行程

赤谷センター職員による赤谷プロジェクトの概要説明

← 赤谷センター現場事務所

(通称:いきもの村)

しばらく前まで、農具倉庫として

使用されていたものを改造して使

用している

● 赤谷プロジェクト(正式には三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画という。)

(概要)

群馬県みなかみ町(旧新治村)北部に広がる約1万ヘクタールの国有林(赤谷の森)

における「生物多様性の復元」と「これを活用した持続的な地域づくり」をテーマに、

行政と民間が協働で森林生態系管理をしていこうとするプロジェクト。平成17年から

行われている。

(プロジェクトが始まった背景)

旧新治村時代(バブル絶頂期)に大規模なダム建設計画とリゾート構想(大規模スキ

ー場開発を主としたリゾート計画)により村を活性化させようと政策が展開されたが、

自然保護団体(新治村の自然を守る会、自然保護協会)の猛烈な抗議を受け、さらにマ

スコミが事件として取り上げ始めたことにより、それまで進んでいた計画が頓挫し、ち

ょうどそのころにバブルが弾け、結果的に中止になった。

抗議するなか、新治村の自然がどんなものか自然保護協会による調査がはいったとこ

ろ、日本では珍しいイヌワシ、クマタカの生息地であることや日本各地にみられる森林

鈴木赤谷センター所長による説明↑ふるさと村の屋根裏部屋にはムササビが子育てをしていたそうです。

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がいくつも分布していることが判明した。そこから新治の自然を守らなければいけない

という風潮ができ、さらに林野庁の指向が、これまでの木材生産向上のための森林伐採

から世論のニーズに沿う形で森林管理へ向かったこと、1万ヘクタールの国有林を有す

ることがあって、モデル地区として森林管理の実証実験を行っていこうとする方針にな

り、住民からの協力を得て、ニーズにあった企画運営をしていくため、官民協働による

事業としてこのプロジェクトが設けられた。

プロジェクトは3つの官民組織からなり、計画・運営方針は企画運営会議で決定され

る。また、計画・運営方針に基づく活動や研究は、モニタリング会議という6つのワー

キンググループで行い、企画運営会議等で助言や報告が行われる。

赤谷プロジェクト:前身は新治村の自然を守る会。民間の事業者(主に温泉業観光業者)

地域協議会 による団体。赤谷プロジェクトを観光業や地域づくりに活かすことを

目指す。

(財)日本自然保護:前身は尾瀬保存期成同盟(尾瀬の自然を守ろうと決起した生物学者や

協会 登山家による組織)、2年前に日本自然保護協会に改名。赤谷プロジェ

クトで様々な助言・活動を行う。

関 東 森 林 管 理 局:林野庁の支局。赤谷森林環境保全ふれあいセンター(以下、赤谷セン

ター)は実働機関。職員は臨時職員をいれて5名。

(現在の取組み)

赤谷の森を6つに区分し、それぞれ

のモデル地区として研究や試験が行わ

れている。

描画によるチラシ →

(センター職員に絵の上手な方がいるそうです。)

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宿泊地 川古温泉浜屋旅館(湯治客が多い)

館主 林泉氏は、赤谷プロジェクト地域協議会

代表理事

夕食時に赤谷プロジェクト、観光業等について

林氏及び自然保護協会出島氏と懇談

2月16日(水) 赤谷プロジェクト 小出俣エリア現地視察

積雪のある山(白)の向

こうは新潟県湯沢市。尾

根に県境がある。

案内者は、日本自然保護

協会の出島氏。

積雪があるため、いきもの村で、長靴と

ズック(念のため)を準備し、目的地へ。

案の定、積雪があり、ズックを使うこと

に。

( 熊肉鍋 ↑)

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小出俣エリアでは、人工林を天

然林に戻す試験をおこなってい

る。基本的に伐採したところは、

そのまま放置し、自然発植があ

るかどうかをみている。これま

での試験で自然発植があること

が確認できた。

また、漸伐や列状間伐(2列3

残、3列4残など)による違い

も検証の試験を実施している。

伐採したところにすぐ植生がみられる

のは、エゴノキ、ダラノキなど

伐採による動物の生態調査は、詳しく

は行っていない。ノネズミ等の小動物

が増加したかどうかは、増加している

とは思うが、はっきりとはわからない。

昼食後、法師温泉長寿庵へ移動 築100年

ここの館主も赤谷プロジェクト地域協議会の理事をされている。(外出中)

ご子息である岡村氏に、赤谷プロジェクトサポーターの取り組みを聞いた。

赤谷プロジェクトには、サポーターと呼ばれるボランティアの活動グループがあり、群

馬県以外の各県から集まってくるという。

毎月第1週の週末を「赤谷の日」として、自然につい

ての学習や、ゴミ拾いなどを行っている。子供を対象に

学習会も行っているという。

このほか、「ムタコの日」とよばれる、ムタコ沢(法師

温泉の奥地にある)の水源を守ろうという日を設け、清

掃活動を行っているという。

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その後、昼食をとった、町営温泉へふたたび戻り、観光協会の会員である林氏に話を聞

いた。

林氏は、この町営温泉施設のほか

湯島オートキャンプ場を町から指定

管理を受ける会社の代表取締役。

林氏は、元新治村職員で、早期退

職前は観光企画課長だったとのこと。

リゾート構想の一任者で、県との折

衝や業者との交渉などを一手に引き

受けていたもよう。

現在は、みなかみ村の観光振興の

ために尽力しているとのこと。

林氏によると、みなかみ町は新潟県魚沼市・南魚沼市・湯沢町・十日町市・津南町や長

野県栄村との間に「雪国観光圏」という観光圏を作り、各観光協会や各自治体が雪国を観

光に利用した事業展開を図っているとのこと。また、日本海側と太平洋側の気候が交わり

植生豊かで、深層水がわき出る谷川岳周辺をエリアにエコツーリズム事業を計画しており、

現在、環境省に認定の申請をしており、近々、認定が下りるもよう。

(ツシマヤマネコというブランドがあり、うらやましい。対馬にしかないブランドを活か

さないのはもったいないので、是非、これを最大限に活用した事業を展開してもらいた

い。とのお言葉をいただきました。)

この町営温泉施設は日帰り温泉で、名称を「まんてん星の湯」といい、2階に食堂があ

り、マッサージ室や按摩師による按摩が受けられるようなっていた。(別料金) 客入りも

よく、多くの方が利用していたと思う。食堂は入湯後のリラックススペースのほか、一般

の食堂としても利用され、経営の方も順調という。(日帰り温泉施設に食堂をつけるという

のは、経営のうえで合理的であると思った。利用客の増による収入の増が見込める。)

その後、みなかみ町新治支所で、環境担当職員(環境課環境政策グループ 小池氏)に

話を聞いた。

小池氏によると、赤谷プロジェクトには、

自然保護団体の抑圧によりリゾート計画が

頓挫したこともあり、表向きは否定的な立

場。(町長は計画推進派) 近年、協力し

ていく方針になり、赤谷プロジェクトには

協力的。県自体は、特に赤谷プロジェクト

には関与していないとのこと。

合併して、ようやく機能が固まりつつあ

るが、環境部門に対しては、なかなか定ま

らなかったが、昨年、環境課ができて、環

境問題に取り組んでいる。ただ、分掌的に

環境課でやるべきか疑問がある業務内容もある。最も時間を割かれている仕事は、獣害対応

で、他の業務に時間を割けないこともある。イノシシ、ニホンザル、カモシカによる獣害が

多いらしい。次年度に課の増員がある予定。

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群馬県みなかみ町の概要

(平成22年 4 月 1 日現在)

人口:22,419 人 8,222 世帯

地勢:群馬県最北で新潟県と

の県境に位置し、利根

川の源流域にある。「関

東の水瓶」と称される

ほど水が豊富で、多く

の温泉地を持つ。豪雪

地帯で、町役場の週初めの仕事は、必ず町内の除雪作業か

ら始まるそうである。(今年は例年に比べ降雪が少ないとの

こと。)車のスタッドレスタイヤは必需品。

産 業:主な産業は観光業(温泉やスキー場、その他観光スポットによる)

その他:平成17年10月1日に2町1村(月夜野町・水上町・新治村)が合併して誕生。

その後、次の目的地である神奈川県へ移動

↑ 上毛高原駅広場にある汽車のモニ

ュメント。同じタイプが今でも在来線

では走っているらしいです。

上毛高原駅内。

対馬もこんなアピールが必要だ

と思いました。

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2月17日(水) 神奈川県自然環境保全センター(県機関)職員による丹沢地方の自

然再生計画に基づく試験場の現場視察

県立札掛森の家で、丹沢地方の自然再生計画

についての概要説明を、神奈川県自然環境保全

センター羽太副技幹から聞いた。

羽太氏によると、計画ではブナ林の再生、渓

流生態系の再生、ニホンジカの保護管理、自然

再生拠点施設等の整備などをテーマにしている

とのこと。

羽太氏の案内による現地視察

↑ シカ避けの網

しないとシカに食べられ

成木まで育たないらしい

① ②

①②③のようなシカ避けの

金網でシカの入らないエリア

を作って、植生が復元するか

を検証している場所 →

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丹沢大山自然再生計画における専

門部会長を務める中村氏が営む丹沢

ホーム。昼食をとりながら中村氏を

交えての懇談。

中村氏は丹沢自然保護協会の理事

長も務める。

対馬市の獣害対策予算(駆除費、

WH柵費等)は、神奈川県の獣害対

策予算に匹敵するそうです。

その後、自然環境保全センターへ移動し、施設内の案内

丹沢大山自然再生計画を推

進する施設として平成12年に

建設された。(これまでの県立

自然保護センター、箱根自然公

園管理事務所、丹沢大山自然公

園事務所、森林研究所、県有林

事務所を統合したもの)

職員数 117 人

(ほか嘱託・臨時 48 人)

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↑ 施設内の展示スペースには、写真のようなモニュメントが展示されていた。

(研修を終えて)

自然というものに向き合って、共生する方法を思案・研究しながら、人の経済活動にう

まく結び付けていこうと官民一体となって推進していくという体制づくり。環境条例や森

林づくり条例を制定しようと準備が進められている対馬市にとっては、参考としていくべ

きと感じました。

自然環境を活かしたエコツーリズム事業やツシマヤマネコという対馬にしか無いブラン

ドを最大限活かした事業展開を画策することは、これからの対馬市に切っても切れないも

のなのかもしれません。

今回の研修で得た経験を、今後の業務に反映させたいと思います。