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岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 1 -
はじめに 平成 24年度の微生物サーベイは、資料問題 2 問、
Photo Survey10 問を出題しました。資料問題は、CLSI
の方法に準じて薬剤感受性試験を実施すると正しい
判定になる MRSA 株を用い、感受性結果の回収をしま
した。Photo Survey 問題は、問題数が例年の倍の
10問となりましたので、一般細菌、嫌気性菌、真菌、
寄生虫と広範囲にわたって出題しました。中でも、
24年度の夏期微生物研究班研修会にて、腸管感染症
を取り上げましたので、その中から感染症法 3類・
全数届出の菌種を含めた 3問を出題しました。その
他の問題も鏡検と患者情報からポイントを絞って推
測できる菌種を中心に問題作成を行ないました。
実施項目
同定 感受性 菌種推定
試料問題
(資料 41)
◎ ◎
試料問題
(資料 42)
◎
Photo Survey
問題 1~9
◎
Photo Survey
問題 10
評価外
問題
◎ :評価対象問題
参加施設数
試料問題 23 施設
Photo Survey 22 施設
試料の取り扱い
1.カルチャースワブにて送付いたしました。
2.試料到着後はできるだけ速やかに適切な培地に塗
り広げてください。
3.以下の患者データを参考に同定と設問に答えてく
ださい。
*生菌ですので、感染には十分注意して下さい。
資料問題
試 料 41
女性が庭でケガをし、数日後に受傷部は化膿した。
感染部位に強い痛みを感じたことから受診した。
①培養により、同定された微生物の菌種をコード
より選択してください。
②薬剤は ABPC、CEZ、VCM 3剤の薬剤感受性
試験を行い、S. I、Rで判定・回答してください。
同定検査評価
評 価 菌 名 件 数 比 率
A MRSA 20 91%
D St.aureus
Clostoridium
1
1 9%
①感受性試験結果
ABPC
MIC 測定装置 MIC 値 判 定 回答数
RAISUS 4 R 5
マイクロスキャン 8 R 4
バイテック2 4 R 1
IS60 2
8
R
R
1
1
用手法 ≦8
4
≧16
R
R
R
1
1
1
MIC:μg/ml
ディスク拡散法 直 径 判 定 回答数
センシ ディスク 15
13
R
R
2
1
KB ディスク 15
11
R
R
1
1
SN ディスク 14 R 1
阻止円直径:mm
CEZ
MIC 測定装置 MIC 値 判 定 回答数
RAISUS ≦8
≧8
R
R
4
1
マイクロスキャン ≦8
>8
R
R
2
1
微生物検査 浅野 裕子
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 2 -
≦2 R 1
バイテック2 ≦4 R 3
IS60 ≦4
=2
R
R
1
1
用手法 ≦4
≦1
R
R
1
1
MIC:μg/ml
ディスク拡散法 直 径 判 定 回答数
センシ ディスク
23
22
R
R
1
1
KB ディスク 25 S 1
阻止円直径:mm
VCM
MIC 測定装置 MIC 値 判 定 回答数
RAISUS =1
≦1
S
S
2
3
マイクロスキャン ≦1
≦2
=1
S
S
S
1
1
1
バイテック2 ≦0.5 S 3
IS60 ≦1 S 2
用手法 ≦4
=1
S
S
1
1
MIC:μg/ml
ディスク拡散法 直 径 判 定 回答数
センシ ディスク 17
18
S
S
2
1
KB ディスク 12 S 1
阻止円直径:mm
②薬剤感受性検査
評 価 判 定 施設数 比 率
A ABPC R 23 100%
A
D
CEZ R
CEZ S
20
1
95%
A VCM S 21 100%
ブドウ球菌は、以下の方法で同定を進めます。
① マンニット食塩培地発育
②コアグラーゼ試験(ウサギプラズマ凝集)
③MRSA選択培地発育・卵黄反応確認
④薬剤感受性試験(微量液体希釈法)における MPIPC
と CFX の MIC 値
*MPIPC およびCFX のどちらか一方でも「R」と
判定された場合は MRSA と報告する
この資料問題の株は、培養時間が短い場合 MPIPC
の MIC値が低値となり、MSSAと判定される菌株です。
CLSI の基準に従って 24 時間で培養・判定した場合
は MPIPC の MIC 値は 4~8 µg/ml の「R」となり、
MRSA と判定されます。今回は、1施設で MSSA と判定
されていました。該当施設は培養時間に注意が必要
です。
さらに、mecA の低レベル発現や PBP の変異など
MRSA の判定を見落とさないために CLSI では、
M100-S20にて MPIPCおよびCFX試験に関するコメン
トが明確になりました。:CFX および MPIPC の両剤を
S.aureus もしくは、S.lugdunensis に対して試験し、
いずれかの結果が耐性の場合、その菌は MPIPC 耐性
として報告する。と記載されています。上記に CLSI
の判定基準を記載しましたので参考にしてください。
また、MIC 値の結果報告に際して、濃度以上の表記
は、「>」を使います。「≧」は使いません。記載ミ
スには、注意が必要です。
試 料 41
45 人が参加した昼食会で出されたケータリング
食により食中毒が発生した。食事をした 30%のヒト
が、食後 3 時間で吐き気をもよおし、嘔吐した。保
健所は、チキンライスから、この菌を分離し、原因
菌であると発表した。培養を行ない、食材の菌検索
し、原因と思われる菌種をコードより選択してくだ
さい。
同定検査評価
評 価 菌 名 件 数 比 率
A Bacillus cereus 23 100%
ポイント:「チキンライス」と「食後 3時間で吐き
気」から Bacillus cereus が疑われます。菌は太い
GPR で連鎖を成します。分枝はなく偏性好気性~通
MRSA の CLSI の判定基準 MPIPC : R ≧4 S ≦2
CFX : R ≧8 S ≦4
MPIPC : ≦10mm CFX : ≦21mm
・CLSI の MRSA 測定基準
接種菌量 McF No.0.5 を 10 倍希釈
培養温度 35℃
MPIPC の培養時間 24 時間
試料 41 の MRSA 株 ABPC の期待値 2 ~ 8 µg/ml
VCM の期待値 0.5 ~ 2 µg/ml MPIPC の期待値 4 ~ 8 µg/ml CFX の期待値 8 ~16 µg/ml
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 3 -
性嫌気性です。カタラーゼ陽性、Metronidazole 耐
性で有芽胞の Closutoridium と区別がつきます。
Photo Survey
症例 1~9の患者背景、検査データを、Photo を添
えて出題します。推定される菌名を菌名マスターか
ら選んでください。
Photo Survey 設問 1
患者背景:70代男性。3 か月前から、右耳のべたつ
きを感じ、自分の声が聴きにくくなったことから耳
鼻科を受診された。右鼓膜に黄色膿瘍の付着があり、
発赤と軽度浮腫があった。
【細菌検査】提出された耳漏の培養から真菌が発育
した。サブロー寒天培地に巨大集落を形成させたと
ころ、 写真 1-1 のごとく発育した。
写真
1-1
巨大集落 サブロー寒天培地 35℃48 時間
写真1-2
1. 同定検査評価
ポイント:サブロー寒天培地 35℃、2 日目、黒
色の巨大集落が発育しました。
Aspergillus 属は、下記の図1に示すように、顕微
鏡による各微細構造の形状、大きさが種の同定のた
めの指標になっています。問題は、以下の鑑別点か
ら Aspergillus niger と推察されます。
図1.病原性を示す Aspergillus の模式図
病原真菌学(南山堂)より引用
Aspergillus nigerの形態的特徴は、頂嚢が大型で球形
あるいは、亜球形 45~75μmと大きいことから顕微鏡・×
100 で観察可能である。フィアライドとメツラは 2段で頂
嚢全体を覆っている。分生子は球形刺状突起を有し、直径
3.5~4.5μm。本菌種は、ブドウ、コーヒー豆などに危害
引き起こすことが問題になっている
Aspergillus flavus は、頂嚢はフラスコ型で直径 25
~45μm、コロニーは、最初黄色、のちに黄緑から青緑コ
ロニーです。頂嚢の 1/2 から1/3 にメツラ、フィアライ
ドを形成する。1)
ムコールの巨大集落 サブロー寒天培地
30℃、5日間養 7日間培養
接合菌 Mucor は寒天培地上、速やかに綿菓子用コ
ロニーを作るので、これだけでも他の糸状菌と鑑別
できる。その他に形態学的特徴は、幅の広い(6~15
評価 菌 名 件数 比 率
A
B
Aspergillus niger
Aspergillus sp.
18
2
91%
C Aspergillus flavus 1 5%
D Mucor sp 1 5%
Aspergillus flavus Aspergillus flavus
Aspergillus niger
ラクトフェノール・コットンブルー染色 ×100
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 4 -
μ)無隔菌糸をつくる・有性胞子として接合胞子を
無性胞子として胞子嚢胞子を作る.
文 献
1)矢口貴志:Aspergillus 属:文化財の虫菌害:59号、2009
2)山口英世:病原真菌と真菌症 南山堂
Photo Survey 設問 2
患者背景:60代男性。1か月前から、抗癌剤治療に
より入院中。 CZOP 投与中であったが、悪寒と吐き
気、38.3℃の発熱があった。
検査値は、WBC 9160 、Hb 8.6g/d 、Pt 45.8 万、CRP
4.92mg/dl。
血液培養は、48時間後に陽性となった。グラム染色
と後日の培養コロニーは以下のごとくであった。
写真2-1
血液培養 35℃、48時間培養陽性、
グラム染色×1000
写真2-2
クロモアガーカンジダ培地、48時間培養
2.同定検査評価
ポイント:CHROMagar Candida 培地は、カンジダ
属の主要菌種を色別に分けられる培地です。
培地中のクロムペプトンをカンジダが分解し発色
する。CHROMagarTMは Dr A. Rambach が登録商標を持
っているもので、クロモアガーの BD製も関東化学製
も同じ色調変化を示し 37℃で 48 時間培養し、色調
で判定します。C,glabrata は、発芽管を形成しない
ので、血液培養の中では、伸びたものは見られない
ことなども鑑別ポイントです。
① Candida albicans
Green with paler edges(エメラルドグリーン)
② Candida glablata Dark pink(濃い八重桜
のような色)
Photo Survey 設問 3
患者背景:60歳代女性。咳と 38.7℃発熱があり、紹
介受診された。
検査値は、WBC 9920 /μl、Hb 7.6g/d 、Pt 29.5 万
/μl、CRP 9.64mg/dl。
右下肺野中心に肺炎像があり、喀痰のグラム染色が
至急で依頼された。喀痰グラム染色は写真のごとく
であった。
写真3-1
喀痰のグラム染色×100
写真3-2
喀痰のグラム染色×1000
3.同定検査評価
評価 菌 名 件数 比 率
A Candida glablata 19 86%
B Candida sp 2 9%
C Candida albicans 1 5%
Candida albicans Candida glablata
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 5 -
ポイント:鏡検時に白血球は、淡紅色に染色されて
いるか?細菌の観察は、染色性、形態、配列、貪食像、
量を判定。炎症細胞浸潤と菌体の貧食像があれば、起
炎性は高いと考えられます。喀痰は、100 倍で鏡検、
Gecklerの分類はグレード5、次に1000倍で観察し、
グラム陽性双球菌、莢膜が抜けて染色されており、
肺炎球菌が推察できます。
Photo Survey 設問 4 患者背景:60代男性。海外出張から帰国後、発熱と
腹痛を発症。血液培養と便培養を実施したところ便
から写真 4-1.4-2 の菌が発育した。生化学的鑑別性
状は、写真 4-3 のごとくであった。
推定される菌名をコード表より選択してください。
写真4-1
DHL 寒天培地 35℃、24時間培養
写真4-2
SS 寒天培地 35℃、24時間培養
写真4-3
生化学的性状検査
4.同定検査評価
ポイント:海外出張から帰国後、発熱と腹痛
・SS寒天培地上、中心部が極わずかに黒色
・TSI 凝固水部分が僅かに黒色
・以下の生化学的性状により推察されます。
この設問に対して Vi抗原を確認してから判定、回答
することを考えると“Salmonella sp”も正解とし
ました。
【TSI】
斜面:乳糖および白糖非分解のため赤色
高層:ブドウ糖分解により黄色を示す。硫化水素
は産生されるが、高層上部または凝固水部分が僅
かに黒色となるのみである。境界線に硫化水素、
ガス非産生
【シモンズ・クエン酸】 培地の色調が変化しない。
(緑色)クエン酸塩を炭素源として利用しない
【LIM】リジン:陽性、(紫色)リジン脱炭酸反応
運動性:培地の混濁が認められる。運動性が弱い
場合や、認められない場合もある。
インドール:陰性。Kovacs 試薬を添加しても色の
変化はない。
確認検査
チフス菌:Vi血清、O 血清を用いてスライド凝
集反応を行なう。Vi血清にのみ凝集するかあるい
はVi血清に凝集し、しかもO因子血清(O9)にも
凝集するときは、被検菌はVi抗原を持つ菌である
と判定する。Vi抗原は易熱性抗原であるから、
121℃、20~30 分加熱後、加熱死菌がVi血清に凝
集しなくなることを確認する。加熱死菌はO9には凝
集する。稀にVi抗原を持たない株があることに注
意する。
届け出 腸チフス患者と診断した場合には、法第12条第1項
の規定による届出を直ちに行わなければなりません。
評価 菌 名 件数 比 率
A Streptococcus pneumoniae
22 100% 評価 菌 名 件数 比 率
A Salmonella Typhi 20 91%
(A) Salmonella sp. 1 5%
D Proteus sp. 1 5%
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 6 -
Photo Survey 設問 5 患者背景:50 代女性。下痢を発症。便培養をしたと
ころ写真 5-1、5-2 のごとくコロニーが発育した。生
化学的鑑別性状検査は、写真 5-3 のごとくであった。
推定される菌名をコード表より選択してください。 写真5-1
DHL 寒天培地 35℃ 24 時間培養
写真5-2
SS 寒天培地 35℃、24時間培養写真6-1
写真5-3
生化学的鑑別性状検査 35℃、24時間培養
5.同定検査評価
ポイント:以下の生化学的性状により推察されます。
【TSI】:
斜面:乳糖および白糖非分解のため赤色
高層:ブドウ糖非分解により赤色を示す。硫化水
素は 産生される素、ガス非産生
【シモンズ・クエン酸】 培地の色調が変化しない。
(緑色)クエン酸塩を炭素源として利用しない
【LIM】リジン:陽性、(紫色)リジン脱炭酸反応
運動性:培地の混濁が認められる。運動性があり
試薬添加後、インドール陽性。運動性は陽性
SS 寒天培地上では、乳糖非分解で中心部が黒色で
Salmonella のコロニーと似ています。本菌は海水、
淡水いずれにも生息しているので、ヘビ、両生類な
どの消化管や魚類から分離されています。ヒトへは
下痢を主症状とする腸管感染症が 8割を占めるとさ
れており、検体は便、胆汁、創傷などから分離され
る。まれに壊死性菌膜炎の報告3)、4)もあります。
Photo Survey 設問 6 患者背景:40 代男性。東南アジア出張から帰国の 1週間後、38℃以上 の高熱が続いた。比較的徐脈
で、脾腫、便秘の症状を呈していた。 血液検査と便検査を実施したところ便から写真6-1、
6-2 の菌が発育した。生化学的鑑別性状試験は、写
真 6-3 のごとくであった。 写真6-1
DHL 寒天培地 35℃ 24 時間培養
写真6-1
SS 寒天培地 35℃、24時間培養
写真6-3
生化学的鑑別性状検査 35℃、24時間培養
評価 菌 名 件数 比 率
18 86% A
Edwardsiella tarda
Edwardsiella sp. 4 18%
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 7 -
6.同定検査評価
ポイント:東南アジア出張から帰国
・SS寒天培地上、透明
・血清型別は、O群血清O2
・以下の生化学的性状により推察されます6)。
【TSI】
斜面:乳糖および白糖非分解のため赤色
高層:黒変なし。ガス産生。
【LIM】リジン: 陰性、黄色。運動性:培地
の混濁が認められる。
インドール:陰性。Kovacs 試薬を添加しても
色の変化はない。
【シモンズ・クエン酸】培地の色調が変化しない。
(緑色)
ヒトにチフス症を起こす菌は、チフス菌(S.
Typhi)とパラチフスA菌(S. ParatyphiA)があり、
3類感染症に分類される。チフス菌は食物、水など
とともに体内にとり込まれ、回腸下部に付着し、そ
こで感染、増殖するとともにリンパ管を介してリン
パ節に侵入し、ついで胸管を経て血流中に入り、脾
臓、肝臓、骨髄、腎臓など身体各部に伝播する。
―腸チフスの経過と菌の検出―
潜伏期:5~14 日。平均7~8 日。この期間は菌が腸
リンパ節で盛んに増殖しているが、そこか
ら糞便中に排出される。菌数は少ない。
初期(第1週):リンパ節からリンパ管、血流を介
して菌が各臓器に伝播されはじめる。体温
が徐々に上昇し4~5 日で40℃台に達する。
この期間は菌が血中に濃厚に存在する。(血
液培養)極期(第2週):発熱が続く。尿、
便中にはあまり菌は認められない。バラ疹
も著明となる。
緩解期(第3週):脾臓、肝臓、腎臓などの病巣の
菌が尿中に排出されるため尿の培養を行なう。
肝臓に侵入した菌はそこで増殖し、胆汁と
ともに腸管内に排出されるので、第2週の
終わり頃より菌は糞便からも検出されるよ
うになる。(血液、尿、便培養)徐々に回
復期に入る。尿中の菌が減少し、菌の排出
は糞便への経路が主体となる。(便培養)
病期によって検査対象となる検体が違ってきます。
文 献
3)原賢寿ら.E.tarda 敗血症による腓腹部に限局した
筋膜炎・・臨床神経学 2009:51.9
5)西山秀樹ら.壊死性筋膜炎を伴った E.tarda 感染症
の 1例.日本臨床微生物学会誌2007:17.130
6)国立感染症研究所 病原体検査マニュアル
Photo Survey 設問 7
患者背景:80代男性。海釣りが趣味でよく出かけて
いた。釣り針が手に 引っ掛かり負傷したが、そのま
ま放置していたところ、腫脹と疼痛の症状が現れ、
受診となった。細菌検査に出された膿瘍に抗酸菌が
認められた。推定される微生物名をコードより選択
してください。
写真7-1
膿瘍のチールネルゼン染色×1000
写真7-2
ポイント
・海釣り中での受傷部分の膿瘍
・小川培地では、27℃で発育、
35℃で初代発育しない
・光照射後に黄色
7.同定検査評価
M, kansasi も 、M, marinam と同じく光発色性の
菌ではあるが、M, marinamのコロニーはスムース型
M, kansasi ラフ型が多く、対象疾患は、呼吸器系感
染が多く、中でも肺上葉に好発し空洞を伴うことが
多い。
hoto Survey 設問 8
患者背景:山のサマーキャンプに参加した小学生が
帰宅後、1週間近く 胃腸の異常が続いた。症状とし
菌 名 件数 比 率
A Salmonella
Paratyhi A
22 100%
菌 名 件数 比 率
A Mycobacterium
marinam
20 91%
C Mycobacterium
kansasi
2 9%
3%小川培地
27℃ 10 日間培養
光照射前 光照射後
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 8 -
ては、痛みを伴う膨満感と柔便であった。
便を直接、鏡検すると多数の虫体が見られた。推
定される微生物名を コードより選択してください。
(写真提供:岐阜市民病院、一柳先生)
8.同定検査評価
ポイント
・感染経路 : 汚染された湖や河川水中の嚢子を
摂取したことから、感染した と考えられる。
・血液液の混じらない水溶便
・栄養型は左右対称の洋ナシ型で、常時 2 核で、
4 対の鞭毛がある。
文 献
7)国立感染症研究所 感染症情報センター 感染症の話
Photo Survey 設問 9
患者背景:30代男性。1 週間ぐらい前から咽頭痛が
あり、次第に痛みが 増して食事ができなくなったこ
とから、耳鼻咽喉科を受診し、扁桃周囲膿瘍と診断
された症例。口蓋弓が発赤、腫脹、一部黄変して自
壊しそうな状態であったことから、穿刺、多量の膿
汁が吸引された。グラム染色は、写真 9-1 のごとく
針状の GNR が認められた。推定される微生物の菌名
をコードより選択してください。
写真9-1
写真9-2.3
ブルセラ HK-RS 寒天培地
HK 半流動生培地 35℃ 3 日間培養
9.同定検査評価
ポイント
・ 塗抹検査で針状の GNR
・ HK 半流動生培地で嫌気性菌を疑う
・ブルセラ HK-RS 寒天培地。直径1mmぐらい
の白いパンくず状コロニーが発育した。
・ 紫外線照射をすると黄色の蛍光色を発した。
(インドール 陽性)
Photo Survey 設問 10
評価対象外問題
患者背景: 70 代男性。腎盂腎炎の診 断にて入院。
前医にて LVFXが投与され、当院、救急外来にて CTRX
が使用され、入院となった。CTRX投与前の血液と尿
菌 名 件数 比 率
21 95% A
Giardia lamblia
Giardia sp. 1 5%
菌 名 件数 比 率
18 82% A
Fusobacterium
nucleatum
Fusobacterium sp. 3 14%
D Flavobacterium sp. 1 5%
写真8-1
グラム染色にて針状 GNR×1000
岐臨技 精度管理事業部 平成 24 年度 総括集 - 9 -
の細菌検査からは、翌日、大腸菌が分離された。
写真10-1
表10-2.薬剤感受性試験結果(MIC:μg/ml)
【 設問 10】以上のデータを見て正しい項目を選択
してください。
a.感染対策として手洗いの遵守、処置時のガウン
使用など接触予防策を行った。
b.耐性遺伝子は、染色体上に存在しているため、
グラム陰性桿菌の間で伝搬する可能性がある。
染色体 プラスミド
ESBL の遺伝子は、多くはその由来がプラスミド媒
介性のペニシリナーゼであったため、接合伝達によ
って腸内細菌科の同一あるいは異なる菌種間で遺伝
子が伝達していくと考えられる。
c.「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に
関する法律」によって、症例の診断が確定した場
合、保険所に届ける必要がある。
必要ある 必要ない
d. 救急外来での CTRX 投与により、翌日には解熱
したため、今後もCTRX1日1回の投与を継続した。
CLSI の M100-S22 の基準 MIC のブレイ
クポイントを採用:CTRX1g/日投与なら
継続してよい
e. CFPM の MIC 値は 2μg/ml であった。判定は「R」
とした。
CLSI の M100-S22 の基準であれば R に
しなくて良い
CFPM は、1g×4日または、2g×3/日
CFPMは 1gを 12時間の標準量ではなく2g 8時間毎
の高用量なら効くとの報告もある8)。
文 献
8)Antimicrob Agents Chemother. 2003;47:3442–7
今回の 2010 年 CLSI ドキュメントでのブレイクポ
イントの変更は、抗菌薬について用法容量の制約も
あり、米国と日本でその基準が異なることや、ESBL
のスクリーニングテストを実施しなかった場合、報
告時に ESBL の記載がなくなる。院内感染対策面で
の問題もあり、今回の変更をすべて導入することは
難しい。基準の変更は重要な問題であり、検査部門
および臨床と話し合い、どこまで導入していくかを
決めていかなければいけないので、この問題は、評
価対処外とした。
ま と め
今年度のPhoto Surveyは、
正解率 92%以上、資料問
題 91%以上で良好な結果
でした。
今年度の夏期の微生物
班研修会は、腸管感染症を
取り上げました。よって腸
管感染症問題 3 問は、95%
から 100%と高い正解率で
した。来年度も研修会の内
容を網羅して、真菌、嫌気
性菌、寄生虫など、さらに
広い範囲から問題を出題
したいと考えています。
より、多くのご施設のご
参加をお願い致します。
ABPC >32 CPZ/SBT ≦1
CEZ >32 FMOX ≦1
CTM >32 MEPM ≦1
CTX >32 IPM ≦1
CAZ 2 LVFX >16
CFPM 2 AZT 4
正解率
設問 41 同定・感受性試験 91 %
設問 42 同定 100 %
Photo
設問 正解率
設問 1 91 %
設問 2 95%
設問 3 100 %
設問 4 95 %
設問 5 100 %
設問 6 100 %
設問 7 91%
設問 8 95 %
設問 9 95 %
CPDX(10μg/ml)、
CAZ(30μg/ml)、
CTX(30μg/ml)
の 単 剤 と
clavulanic acid
(CVA)を添加した
ディスク拡散法に
よる確認試験