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工業炉の省エネ技術について (リジェネバーナの開発秘話) 平成26年7月30日 一般財団法人省エネルギーセンター 診断技術部長 秋山 俊一

工業炉の省エネ技術について...目次 • 従来の省エネ技術 • 開発経緯 • 蓄熱式排熱回収技術(リジェネバーナ) • 従来技術の課題と開発目標

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工業炉の省エネ技術について(リジェネバーナの開発秘話)

平成26年7月30日

一般財団法人省エネルギーセンター

診断技術部長

秋山 俊一

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目 次

• 従来の省エネ技術

• 開発経緯

• 蓄熱式排熱回収技術(リジェネバーナ)

• 従来技術の課題と開発目標

• 低Nox燃焼技術(バーナ開発STEP1、STEP2)

• 高温空気燃焼技術

(原理、火炎状況、各種燃料での燃焼特性、火炎長さ)

• 高性能工業炉概要

• リジェネバーナ最近の動向(コンパクトリジェネ、節電対応)

• まとめ

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従来の省エネ技術

炉長延長

予熱帯延長→炉出口排ガス温度低減

空気予熱器設置(レキュペレータ)

項 目 内 容 課 題

排熱回収(空気予熱器) 燃焼用空気予熱による排熱回収

熱交換器の耐熱性ネックで、予熱空気温度の上限有

炉長延長(連続炉) 被加熱材の予熱による排ガス温度低減

建設コスト増(加熱炉、建屋、土木)

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1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

基本技術

1985バーナ開発

1993

1993 1999

1998 2000

1998 2011

2012

NEDO 「高性能工業炉の開発」プロジェクト

NEDO 「高性能工業炉導入フィールドテスト」

NEDOエネルギー使用合理化事業者支援事業

SIIエネルギー使用合理化事業者支援事業

リジェネバーナ開発の経緯

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バーナA、Bで交互切替燃焼

切替弁

排ガスセラミック蓄熱体

炉温1350℃

燃料燃料

バーナBバーナA

鋼 材

蓄熱式排熱回収技術(リジェネバーナ)

燃焼用空気

1000℃1300℃

20℃300℃

◎1980年代にイギリスで開発された技術

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バーナA、Bで交互切替燃焼

切替弁

排ガスセラミック蓄熱体

炉温1350℃

燃料燃料

予熱空気温度上昇

排ガスNOx増大

鋼 材

バーナBバーナA

燃焼用空気

1000℃ 1300℃

20℃ 300℃

蓄熱式排熱回収技術(リジェネバーナ)

◎1980年代にイギリスで開発された技術

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●高温の空気●燃料2段燃焼●燃料接触遮断●空気流速高速化

炉内ガス巻込

酸素濃度低下

燃焼反応領域拡大

バーナからの距離 [m]10 2 43

1900

1700

1800

従来法NOx>1800ppm

ヒートスポット

ガス温度

[K]本発明法NOx=40ppm

超低NOx燃焼技術(高温空気燃焼技術)

セラミックハニカム

燃料

F1

燃焼空気

1620K

火炎温度のフラット化により超低Noxを実現

F2

●燃料自己着火温度以上の高温空気

●燃料自己着火温度以上の高温空気

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火炎の比較(2)

n.horiuchi
テキスト ボックス
出典:NEDO HP
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図 各種燃料・燃焼方式における予熱空気温度と11%O2換算NOx濃度との関係

燃料

空気

燃料・燃焼方式別の予熱空気温度とNOx濃度

0

20

40

60

80

100

120

140

160

800 850 900 950 1000 1050 1100 1150 1200 1250予熱空気温度(℃)

11%

O2換算NOx濃

度(ppm)

A重油(分散燃焼)

都市ガス(分散燃焼)COG(分散燃焼)

A重油(集中燃焼)従来型一方向燃焼

(炉内O2=2.2~2.8%、炉温(TIC)=1270~1320℃(高温空気燃焼)、1214℃(従来型一方向燃焼))

200 250 300

各種燃料での燃焼特性把握

1)蓄熱式分散燃焼バーナ

2)蓄熱式集中燃焼バーナ

3)従来型一方向燃焼バーナ

各種燃料(都市ガス、COG;コークス炉ガス、A重油)において、高温空気

燃焼を行った場合、開発した分散燃焼方式であれば、予熱空気温度が低い、従来燃焼バーナのNOxと同程度であることが確認できた。

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(高温空気燃焼技術)

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燃焼量と火炎長さの関係

高温空気燃焼は、低酸素場での希釈・緩慢燃焼を特徴としており、燃焼が完結するに要する空間より炉幅が狭い場合には、排気バーナを通して未燃分が排出されるという問題に繋がりやすい。このような場合には、当然目標とする炉温分布、伝熱量を実現できず、加熱炉の高性能化は達成できなくなる。

したがって、「高性能工業炉」を設計する際には「炉幅と適正バーナ燃焼量」の関係を定量的に把握することが重要な課題となる。

炉幅

失敗談から学ぶこと

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NOx制御技術

●反応制御による低 NOx

●低過剰空気

●ワイドターンダウン

●安定(安全)

燃料

燃 焼

高温

空気

加熱(温度場)制御技術

●熱発生分布の制御

●高温空気燃焼と強ガス

循環の組合せ

●高温空気燃焼と燃料分散

投入

バーナ

炉温平均化・高温化技術

●平均温度場を炉材許容

温度近くまで高温化

●被加熱物特性に応じた

温度パターン形成

●伝熱の最適化

許容温度

温度パターン

図 5 高性能工業炉の基本コンセプト

高性能工業炉の概要

高性能工業炉は,コンパクトなセラミック蓄熱体を装着した短時間切替燃焼蓄熱式バーナの開発により,容易に得られる1000℃以上の高温の燃焼用空気を用いた,高温空気燃焼の保有する要素技術を用いて、CO2削減(省エネルギー30%),ダウンサイジング(加熱炉長の短縮20%),低NOx(規制値クリア)を同時達成させるものである。

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リジェネバーナ最近の動向①コンパクト(セルフ)リジェネバーナ②節電対応

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コンバクトリジェネバーナの概要

燃料ノズル

バーナタイル 蓄熱体

排ガス

切替弁

燃料用空気

蓄熱

放熱

加熱炉

排ガス

排ガス

高温空気

従来のリジェネバーナは、2対1組が基本であるが、バーナ単体のタイル内に、

蓄熱と放熱の2個(又は複数)の蓄熱体を装着したコンパクト(セルフ)リジェネバーナが、開発され実用化さている。バーナの燃焼容量は、100kW(8.6万kcal/h)程度〜 1000kW(86万kcal/h)程度と小容量から対応出来、小型の工業炉へも適用が広がっている。

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コンバクトリジェネバーナの概要

燃料ノズル

バーナタイル 蓄熱体

排ガス

切替弁

燃料用空気

放熱

蓄熱

加熱炉

排ガス

排ガス

高温空気

従来のリジェネバーナは、2対1組が基本であるが、バーナ単体のタイル内に、

蓄熱と放熱の2個(又は複数)の蓄熱体を装着したコンパクト(セルフ)リジェネバーナが、開発され実用化さている。バーナの燃焼容量は、100kW(8.6万kcal/h)程度〜 1000kW(86万kcal/h)程度と小容量から対応出来、小型の工業炉へも適用が広がっている。

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コンバクトリジェネバーナ事例

特徴概要 燃焼容量 バーナタイル寸法

使用燃料

中外炉工業

・1300℃(max)・蓄熱体(ボール)・60秒切替、弁内臓

145kw~580kw

□400~□550

LNG、LPG

n.horiuchi
テキスト ボックス
出典:中外炉工業 HP 
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コンバクトリジェネバーナ事例

特徴概要 燃焼容量 バーナタイル寸法

使用燃料

日本ファーネス

・1200℃(max)・蓄熱体(ハニカムカセツト)・切替約15秒

93kw~847kw

□420~φ1158

LNG、LPG、H2灯油、A重油

n.horiuchi
テキスト ボックス
出典:日本ファ-ネスカタログ
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特徴概要 燃焼容量 バーナタイル寸法

使用燃料

横井製作所

・1300℃(max)・蓄熱体(ボール)・切替15秒

150kw~1000kw

□350~□810

LNG、LPG

コンバクトリジェネバーナ事例

n.horiuchi
テキスト ボックス
出典:横井製作所 HP
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表 2 加熱効率の比較

蓄熱式ラジアント

チューブバーナ

電気ヒータ

ヒータ効率 *1 85.0% 97.0%

加熱効率 *2 38.5% 44.0%

一次燃料換算加熱効率 *3 38.5% 22.0%

*1;加熱炉内への有効熱量/投入熱量×100%

(加熱炉内への有効熱=投入熱量―排ガスなど損失熱量)

*2;鋼材の得た熱量/投入熱量×100%

*3;燃料を用いた電力の発電効率を 50%と仮定して算出

(蓄熱式バーナの場合は,加熱効率と同じ)

電気加熱式熱処理炉などの電気ヒータを高効率のラジアントチューブ式リジェネバーナに交換することで、省エネと節電(チェンジ)が可能となる。

節電(チエンジ)への対応

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まとめ

• 省エネ補助金などの効果もあり、大企業の工業炉では導入が進んでいる。

• 今後、中小への導入が期待されるが、各メーカも、コンパクトリジェネなど、小型炉向けのリジェネバーナを商品化しつつある。

• 中小企業への本格的な導入には、補助金取得のコンサルや、保守体制の充実も重要と考えられる。

• 大型炉向けは、国内から海外導入への動きも進みつつある。