6
8 FDI・2016・11 石田 武久  石田 武久  がオンになりミュージックが鳴るというよ うに日常動作がスイッチになる電池レス無 線スイッチと、人同士が触れると情報デー タを伝えることができる人体通信応用デバ イスである(写2)。またハンズフリーのウ ェアラブル機器の撮影にも使える 3D アク チュエータは、画ブレ補正と自動追尾機能 を有する 3 軸補正スタビライザーで、歩き 回ったり走りながらの撮影にも使える。 デバイス関係では IoT やウェアラブル機 器向けの超小型ピン型とフレキシブルなリ チウム電池、電気的絶縁性がありノイズに 強く機器内の高速伝送を実現する光アクテ ィブコネクター、また操作性とデザイン性 を向上した車載搭載用ノブ一体型タッチパ ネル端末、さらに電磁ノイズを抑制し高熱 拡散可能なシートなどを展示していた。 ・富士通は IoT、AI で変わる暮らしと社会、 スポーツの楽しみ方に関する様々な提案を していた。エントランス付近には、画像認 識や音声認識技術が搭載され人と AI を繋ぐ コンシェルジェロボット“RoboPin”が置 かれ、来場者との対応をしていた。同社の 知見や技術を体系化した“Human Centric AI Zinrai”は、五感を駆使して気持ちを理 解する「感性メディア技術」、機械処理でき る知識を創り出す「知識技術」、スパコンを 活用し課題を解決する「数理技術」、そして これらの技術を支える「学習技術」から成 っている。 スポーツ× ICT コーナーでは、ゴルフの スイングや野球のピッチングフォームを非 接触のセンシング技術で数値化し、理想の フォームとの違いを見せていた。またセン サー付きシューズから得た情報をグラフィ ックとサウンドの共鳴で表現する「次世代 センサーシューズ」、高精度、高セキュリテ の最先端技術を活用する多種多彩な技術を 公開していた。注目は高度な人工知能 AI 技 術群“NEC the Wise”で、複雑化、高度 化する社会問題に膨大なビッグデータを AI により分析、評価、予測し、意思決定を支 援する(写1)。 「未知のサイバー攻撃に対する対策」は従 来技術では検知できなかったサイバー攻撃 を、人手に頼らず AI で異常を自動検出し、 従来の 1/10 以下の時間で被害範囲を特定 できる。また警備員が装備したウェアラブ ルカメラが捉えた現場の高画質映像をリア ルタイムに警備本部と共有し、正確に状況 を把握し顔認識技術で迅速に人物を特定し、 事件や事故の未然防止と早期解決を支援す る「警備支援ソリューション」、さらに複数 のカメラ映像から出現パターンや頻度から 不審者を特定できる「犯罪予防・迅速な捜 査を実現する映像分析技術」、スムースな 入場を可能にするトップクラスの顔認識エ ンジンを用いた「ウォークスルー認証技術」 や「耳穴形状の音で識別する生体認証技術」 など多彩だった。  ・パナソニックは IoT を活用した商業環境 や住空間において、仕事や生活を変えてい く様々な技術を展示していた。注目したの は、ソファーに座ると照明機器やエアコン CEATEC 2016 CEATEC 2016 写 1. AI を活用した“NEC the Wise” 写 2. 人体通信応用デバイス 1)Cyber Physical System:今後の社会インフラとして 重要なキーワード。実世界の多様なデータを IoT センサ ー、ネットワークで収集し、サイバー空間でデータ処理 技術等を駆使して分析 / 知識化を行い、創出した情報 / 価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図って いく。 2)Internet of Things:CPU などの情報・通信機器だけ でなく、様々な物に通信機能を持たせ、インターネット に接続し相互通信することにより、自動認識や自動制 御、遠隔計測などを行うこと。 はじめに 今 年 17 回 目 と な る "CEATEC 2016" は、従来の「IT とエレクトロニクス展」か ら「つながる社会、共創する未来を掲げた CPS 1) /IoT 2) 総合展」へと一新され、10 月 4 日から 7 日まで幕張メッセで開催さ れた。新しい基本方針にあわせ、展示エリ アの構成も変わり、近未来の社会や技術を 体験できるように、産業領域、分野ごとに、 これまでにない多種多彩な展示が行われて いた。以前に比べウィークディのみになり 会期が短くなったが、出展企業、団体数は 昨年より 22%増の 648 社を数え、登録 来場者数は 145,480 人と昨年を約 1 万 2,000 人上回り盛況だった。 社会エリア 広いエリアで、公共インフラや交通シス テム、災害対策、エネルギーや環境など安 心・安全・快適な社会を構築するための様々 な提案がなされていた。 ・NEC は、グループ各社が取り組んでいる 社会ソリューションと IoT や人工知能など

CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

8

FDI・2016・11

石田 武久 石田 武久 

がオンになりミュージックが鳴るというように日常動作がスイッチになる電池レス無線スイッチと、人同士が触れると情報データを伝えることができる人体通信応用デバイスである(写 2)。またハンズフリーのウェアラブル機器の撮影にも使える 3D アクチュエータは、画ブレ補正と自動追尾機能を有する 3 軸補正スタビライザーで、歩き回ったり走りながらの撮影にも使える。 デバイス関係では IoT やウェアラブル機器向けの超小型ピン型とフレキシブルなリチウム電池、電気的絶縁性がありノイズに強く機器内の高速伝送を実現する光アクティブコネクター、また操作性とデザイン性を向上した車載搭載用ノブ一体型タッチパネル端末、さらに電磁ノイズを抑制し高熱拡散可能なシートなどを展示していた。 ・富士通は IoT、AI で変わる暮らしと社会、スポーツの楽しみ方に関する様々な提案をしていた。エントランス付近には、画像認識や音声認識技術が搭載され人と AI を繋ぐコンシェルジェロボット“RoboPin”が置かれ、来場者との対応をしていた。同社の知見や技術を体系化した“Human Centric AI Zinrai”は、五感を駆使して気持ちを理解する「感性メディア技術」、機械処理できる知識を創り出す「知識技術」、スパコンを活用し課題を解決する「数理技術」、そしてこれらの技術を支える「学習技術」から成っている。 スポーツ× ICT コーナーでは、ゴルフのスイングや野球のピッチングフォームを非接触のセンシング技術で数値化し、理想のフォームとの違いを見せていた。またセンサー付きシューズから得た情報をグラフィックとサウンドの共鳴で表現する「次世代センサーシューズ」、高精度、高セキュリテ

の最先端技術を活用する多種多彩な技術を公開していた。注目は高度な人工知能 AI 技術群“NEC the Wise”で、複雑化、高度化する社会問題に膨大なビッグデータを AIにより分析、評価、予測し、意思決定を支援する(写 1)。 「未知のサイバー攻撃に対する対策」は従来技術では検知できなかったサイバー攻撃を、人手に頼らず AI で異常を自動検出し、従来の 1/10 以下の時間で被害範囲を特定できる。また警備員が装備したウェアラブルカメラが捉えた現場の高画質映像をリアルタイムに警備本部と共有し、正確に状況を把握し顔認識技術で迅速に人物を特定し、事件や事故の未然防止と早期解決を支援する「警備支援ソリューション」、さらに複数のカメラ映像から出現パターンや頻度から不審者を特定できる「犯罪予防・迅速な捜査を実現する映像分析技術」、スムースな入場を可能にするトップクラスの顔認識エンジンを用いた「ウォークスルー認証技術」や「耳穴形状の音で識別する生体認証技術」など多彩だった。 

・パナソニックは IoT を活用した商業環境や住空間において、仕事や生活を変えていく様々な技術を展示していた。注目したのは、ソファーに座ると照明機器やエアコン

CEATEC 2016CEATEC 2016CEATEC 2016

写 1. AI を活用した“NEC the Wise”

写 2. 人体通信応用デバイス

1) Cyber Physical System:今後の社会インフラとして重要なキーワード。実世界の多様なデータを IoT センサー、ネットワークで収集し、サイバー空間でデータ処理技術等を駆使して分析 / 知識化を行い、創出した情報 /価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていく。

2) Internet of Things:CPU などの情報・通信機器だけでなく、様々な物に通信機能を持たせ、インターネットに接続し相互通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

はじめに

 今年 17 回目となる "CEATEC 2016"は、従来の「IT とエレクトロニクス展」から「つながる社会、共創する未来を掲げたCPS1)/IoT2) 総合展」へと一新され、10月 4 日から 7 日まで幕張メッセで開催された。新しい基本方針にあわせ、展示エリアの構成も変わり、近未来の社会や技術を体験できるように、産業領域、分野ごとに、これまでにない多種多彩な展示が行われていた。以前に比べウィークディのみになり会期が短くなったが、出展企業、団体数は昨年より 22%増の 648 社を数え、登録来場者数は 145,480 人と昨年を約 1 万2,000 人上回り盛況だった。

社会エリア

 広いエリアで、公共インフラや交通システム、災害対策、エネルギーや環境など安心・安全・快適な社会を構築するための様々な提案がなされていた。・NECは、グループ各社が取り組んでいる社会ソリューションと IoT や人工知能など

9

FDI・2016・11

ィの手のひら静脈決済技術、視線センサーで気に入った商品を推奨する技術をデモしていた。 都市・交通× ICT コーナーでは、快適安心な街を実現する技術として、AI を利用した「混雑緩和ソリューション」、「渋滞予測」、

「列車遅延予測」などを公開していた。先端テクノロジーコーナーでは、AI を活用した

「自然文対話技術」や聴覚障害者や外国人をサポートするリアルタイムに音声認識と多言語の自動翻訳をするコミュニケーション技術「Live Talk」を公開していた(写 3)。発話と同時に音声認識した結果が各端末の設定に応じ英、中、韓、独など 12 言語に自動的に翻訳、表示される。海外からの来日者が急増する状況下、大いに威力を発揮しそうだ。 眼鏡に取付けた超小型レーザープロジェクターから網膜に映像を直接投影するHMD「網膜走査型レーザーアイウェア」は、視力やピントに影響されにくく視覚障害者

(ロービジョン 3))を支援する機器として実用性が高く、経済産業大臣賞を受賞した(写4)。変わった展示物として、髪の毛で音を感じるデバイス「Ontenna」は、ヘアピンのように髪の毛に装着し振動と光により音の特徴をユーザーに伝える全く新しいインターフェースである。

・三菱電機は次世代コミュニケーションのための IoT 技術を紹介していた。近未来のスマートな街においてマンションや町全体でサービスを提供し快適な暮らしをサポート

する Town EMS4)“DIAPLANET”を提案していた(写 5)。エネルギー管理や家電品のコントロール、地域アメニティの様々な機能をクラウドで提供するシステムである。 Factory Automation 技術と IT を活用した次世代工場コンセプト“e-Factory”は、生産現場で使われる様々な FA 製品や加工機器からネットワークを介してエッジコンピューティングにより生産現場のデータをリアルタイムに収集、加工し、IT システムで分析、評価、解析した結果を現場にフィードバックすることで開発、生産、保守の全般を通し支援していくという考えである。 IoT 時代の様々なシステムを支える基盤技術として、安価なハード構成で広範囲の膨大なセンサーデータを高速に蓄積、検索、集計する「高性能センサーデータベース」を開発した。道路や鉄道などのインフラ、プラントの稼働状況監視、ビルや住宅のエネルギー管理などのセンサーデータの活用法を提供する。話した言葉を指でなぞり表示できる音声認識表示技術「しゃべり描きUI」は、絵描きや多言語翻訳などの機能と組み合わせ、聴覚障害者や外国人とのスムースなコミュニケーションに有効である。

・シーテックへの出展をしばらく見合わせていた日立製作所が4年振りに帰ってきた。以前は薄型テレビなどを主に出展していたが、今回は昨今の潮流を反映し、IoT やロボット技術などを展示した。 店舗や銀行などで案内サービスをするヒューマノイドロボット“EMIEW3”と音声・画像・言語処理などを行う知能処理システムと複数のロボットを監視・制御、運用する IT 基盤を連携する高度なサービスシステム(写 6)を展示し、さらに安心・安全な社会を実現するためのドローンを活用した災害調査のための地上・空中複合型ロボットシステム、またショッピングモールや工場などでの車両入退場管理システム、機器保守・設備管理サービス“Doctor Cloud”などを出展していた。

・NTTグループは、IoT × NETWORK ×AI を掲げ、ICT 時代に対応する多種多彩な提案、ソリューションを出展した。複数の企業と連携し立ち上げた IoT 市場を活性化するプラットフォーム“Linking”は様々なサービスと IoT デバイスを連携し、サービスの開発を簡易化する機能やインターフェースを提供し、民生用 IoT 市場拡大に貢献する。 自治体や事業者向け生活支援サービスとして「HEMS5)活用による見守りサービス、ホームセキュリティ」の提供、交通ビッグデータを活用した渋滞のない円滑な交通の実現、都心の駐車場不足を解消するパーキングシステム、農業分野向け「田んぼの見回り代行」、異音検知により設備機器の保全点検をサポートする IoT ソリューション、ヘルスケア向けに安心してより便利に患者と薬局をつなぐ「電子おくすり手帳」、コミュニケーションロボットとクラウド基盤を連携し医療介護や受付窓口サービス、観光案内サービスを支援する「クラウドロボティックス」(写7)など多彩な出展をしていた。・世界市場で事業展開しておりスマートフォンやタブレットで高いシェアを持つ中国の ICT 企業華為(HUAWEI)は、最近シー

写 4.  経済産業大臣賞の網膜走査型レーザーアイウェイ

写 3.  音声認識と多言語自動翻訳表示

写 5. Town EMS“DIAPLANET”

写 7. クラウドロボティックス

写 6. EMIEW3 と IT 基盤を連携し高度なサービス提供

3) 全盲者を除く視覚障碍者4) Energy Management System5) Home Energy Management System

Page 2: CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

8

FDI・2016・11

石田 武久 石田 武久 

がオンになりミュージックが鳴るというように日常動作がスイッチになる電池レス無線スイッチと、人同士が触れると情報データを伝えることができる人体通信応用デバイスである(写 2)。またハンズフリーのウェアラブル機器の撮影にも使える 3D アクチュエータは、画ブレ補正と自動追尾機能を有する 3 軸補正スタビライザーで、歩き回ったり走りながらの撮影にも使える。 デバイス関係では IoT やウェアラブル機器向けの超小型ピン型とフレキシブルなリチウム電池、電気的絶縁性がありノイズに強く機器内の高速伝送を実現する光アクティブコネクター、また操作性とデザイン性を向上した車載搭載用ノブ一体型タッチパネル端末、さらに電磁ノイズを抑制し高熱拡散可能なシートなどを展示していた。 ・富士通は IoT、AI で変わる暮らしと社会、スポーツの楽しみ方に関する様々な提案をしていた。エントランス付近には、画像認識や音声認識技術が搭載され人と AI を繋ぐコンシェルジェロボット“RoboPin”が置かれ、来場者との対応をしていた。同社の知見や技術を体系化した“Human Centric AI Zinrai”は、五感を駆使して気持ちを理解する「感性メディア技術」、機械処理できる知識を創り出す「知識技術」、スパコンを活用し課題を解決する「数理技術」、そしてこれらの技術を支える「学習技術」から成っている。 スポーツ× ICT コーナーでは、ゴルフのスイングや野球のピッチングフォームを非接触のセンシング技術で数値化し、理想のフォームとの違いを見せていた。またセンサー付きシューズから得た情報をグラフィックとサウンドの共鳴で表現する「次世代センサーシューズ」、高精度、高セキュリテ

の最先端技術を活用する多種多彩な技術を公開していた。注目は高度な人工知能 AI 技術群“NEC the Wise”で、複雑化、高度化する社会問題に膨大なビッグデータを AIにより分析、評価、予測し、意思決定を支援する(写 1)。 「未知のサイバー攻撃に対する対策」は従来技術では検知できなかったサイバー攻撃を、人手に頼らず AI で異常を自動検出し、従来の 1/10 以下の時間で被害範囲を特定できる。また警備員が装備したウェアラブルカメラが捉えた現場の高画質映像をリアルタイムに警備本部と共有し、正確に状況を把握し顔認識技術で迅速に人物を特定し、事件や事故の未然防止と早期解決を支援する「警備支援ソリューション」、さらに複数のカメラ映像から出現パターンや頻度から不審者を特定できる「犯罪予防・迅速な捜査を実現する映像分析技術」、スムースな入場を可能にするトップクラスの顔認識エンジンを用いた「ウォークスルー認証技術」や「耳穴形状の音で識別する生体認証技術」など多彩だった。 

・パナソニックは IoT を活用した商業環境や住空間において、仕事や生活を変えていく様々な技術を展示していた。注目したのは、ソファーに座ると照明機器やエアコン

CEATEC 2016CEATEC 2016CEATEC 2016

写 1. AI を活用した“NEC the Wise”

写 2. 人体通信応用デバイス

1) Cyber Physical System:今後の社会インフラとして重要なキーワード。実世界の多様なデータを IoT センサー、ネットワークで収集し、サイバー空間でデータ処理技術等を駆使して分析 / 知識化を行い、創出した情報 /価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図っていく。

2) Internet of Things:CPU などの情報・通信機器だけでなく、様々な物に通信機能を持たせ、インターネットに接続し相互通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

はじめに

 今年 17 回目となる "CEATEC 2016"は、従来の「IT とエレクトロニクス展」から「つながる社会、共創する未来を掲げたCPS1)/IoT2) 総合展」へと一新され、10月 4 日から 7 日まで幕張メッセで開催された。新しい基本方針にあわせ、展示エリアの構成も変わり、近未来の社会や技術を体験できるように、産業領域、分野ごとに、これまでにない多種多彩な展示が行われていた。以前に比べウィークディのみになり会期が短くなったが、出展企業、団体数は昨年より 22%増の 648 社を数え、登録来場者数は 145,480 人と昨年を約 1 万2,000 人上回り盛況だった。

社会エリア

 広いエリアで、公共インフラや交通システム、災害対策、エネルギーや環境など安心・安全・快適な社会を構築するための様々な提案がなされていた。・NECは、グループ各社が取り組んでいる社会ソリューションと IoT や人工知能など

9

FDI・2016・11

ィの手のひら静脈決済技術、視線センサーで気に入った商品を推奨する技術をデモしていた。 都市・交通× ICT コーナーでは、快適安心な街を実現する技術として、AI を利用した「混雑緩和ソリューション」、「渋滞予測」、

「列車遅延予測」などを公開していた。先端テクノロジーコーナーでは、AI を活用した

「自然文対話技術」や聴覚障害者や外国人をサポートするリアルタイムに音声認識と多言語の自動翻訳をするコミュニケーション技術「Live Talk」を公開していた(写 3)。発話と同時に音声認識した結果が各端末の設定に応じ英、中、韓、独など 12 言語に自動的に翻訳、表示される。海外からの来日者が急増する状況下、大いに威力を発揮しそうだ。 眼鏡に取付けた超小型レーザープロジェクターから網膜に映像を直接投影するHMD「網膜走査型レーザーアイウェア」は、視力やピントに影響されにくく視覚障害者

(ロービジョン 3))を支援する機器として実用性が高く、経済産業大臣賞を受賞した(写4)。変わった展示物として、髪の毛で音を感じるデバイス「Ontenna」は、ヘアピンのように髪の毛に装着し振動と光により音の特徴をユーザーに伝える全く新しいインターフェースである。

・三菱電機は次世代コミュニケーションのための IoT 技術を紹介していた。近未来のスマートな街においてマンションや町全体でサービスを提供し快適な暮らしをサポート

する Town EMS4)“DIAPLANET”を提案していた(写 5)。エネルギー管理や家電品のコントロール、地域アメニティの様々な機能をクラウドで提供するシステムである。 Factory Automation 技術と IT を活用した次世代工場コンセプト“e-Factory”は、生産現場で使われる様々な FA 製品や加工機器からネットワークを介してエッジコンピューティングにより生産現場のデータをリアルタイムに収集、加工し、IT システムで分析、評価、解析した結果を現場にフィードバックすることで開発、生産、保守の全般を通し支援していくという考えである。 IoT 時代の様々なシステムを支える基盤技術として、安価なハード構成で広範囲の膨大なセンサーデータを高速に蓄積、検索、集計する「高性能センサーデータベース」を開発した。道路や鉄道などのインフラ、プラントの稼働状況監視、ビルや住宅のエネルギー管理などのセンサーデータの活用法を提供する。話した言葉を指でなぞり表示できる音声認識表示技術「しゃべり描きUI」は、絵描きや多言語翻訳などの機能と組み合わせ、聴覚障害者や外国人とのスムースなコミュニケーションに有効である。

・シーテックへの出展をしばらく見合わせていた日立製作所が4年振りに帰ってきた。以前は薄型テレビなどを主に出展していたが、今回は昨今の潮流を反映し、IoT やロボット技術などを展示した。 店舗や銀行などで案内サービスをするヒューマノイドロボット“EMIEW3”と音声・画像・言語処理などを行う知能処理システムと複数のロボットを監視・制御、運用する IT 基盤を連携する高度なサービスシステム(写 6)を展示し、さらに安心・安全な社会を実現するためのドローンを活用した災害調査のための地上・空中複合型ロボットシステム、またショッピングモールや工場などでの車両入退場管理システム、機器保守・設備管理サービス“Doctor Cloud”などを出展していた。

・NTTグループは、IoT × NETWORK ×AI を掲げ、ICT 時代に対応する多種多彩な提案、ソリューションを出展した。複数の企業と連携し立ち上げた IoT 市場を活性化するプラットフォーム“Linking”は様々なサービスと IoT デバイスを連携し、サービスの開発を簡易化する機能やインターフェースを提供し、民生用 IoT 市場拡大に貢献する。 自治体や事業者向け生活支援サービスとして「HEMS5)活用による見守りサービス、ホームセキュリティ」の提供、交通ビッグデータを活用した渋滞のない円滑な交通の実現、都心の駐車場不足を解消するパーキングシステム、農業分野向け「田んぼの見回り代行」、異音検知により設備機器の保全点検をサポートする IoT ソリューション、ヘルスケア向けに安心してより便利に患者と薬局をつなぐ「電子おくすり手帳」、コミュニケーションロボットとクラウド基盤を連携し医療介護や受付窓口サービス、観光案内サービスを支援する「クラウドロボティックス」(写7)など多彩な出展をしていた。・世界市場で事業展開しておりスマートフォンやタブレットで高いシェアを持つ中国の ICT 企業華為(HUAWEI)は、最近シー

写 4.  経済産業大臣賞の網膜走査型レーザーアイウェイ

写 3.  音声認識と多言語自動翻訳表示

写 5. Town EMS“DIAPLANET”

写 7. クラウドロボティックス

写 6. EMIEW3 と IT 基盤を連携し高度なサービス提供

3) 全盲者を除く視覚障碍者4) Energy Management System5) Home Energy Management System

Page 3: CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

10

FDI・2016・11

テックの常連になっているが、地の利の良い場所に広大なブースを構え、ソーシャルメディア関係の製品を展示公開していた。 フル HD 対応で指紋による生体認証機能付き、ライカのダブルレンズと RGB/ モノクロの 2 種のイメージセンサーを搭載し高速で正確なフォーカス可能なカメラ付き、超薄型軽量のスマフォ“P9 lite”(写 8)や“honor 8”、 さ ら に 第 6 世 代 の intel Core Skylake を搭載した高精細度広色域ディスプレイ、大容量リチウム電池で約 9時間の連続使用可能な上、スリムで軽量のモバイル PC“MateBook”などを展示し来場者に体験させていた。 また、次世代通信環境を視野に NTT ドコモと共同開発を進めている 5G(第 5 世代携帯電話)の実証実験の様子や今後のビジネス展開に向け阪神電車と共同実験している LTE 方式による地域 BWA 構築、活用事例の紹介もしていた。

・同じく中国企業で、PC 事業分野で既にNEC と合弁を組んでおり、近々、富士通と合弁事業を開始すると言われており世界の PC 事業分野の大手となっているレノボ(LENOBO)は、華為の隣に広大でひときわカラフルなブースを構え、コンピューティングパワーで生活や仕事を支援する様々なソリューションやグループとなっているモトローラや NEC の PC 新製品も展示していた。 経産省のおもてなし実証実験の委託を受け、鎌倉や渋谷で実施している観光情報を提供するツーリズムソリューション(写 9)やキーボードと手書きの文字や図形入力に対応する独自のインターフェースの“YOGA Book”、さらにスマートホーム向けとワークスタイルの変革に向けた多彩なソリューションなどを公開していた。

・オムロンは「人と機械の関係性強化」を

て(256QAM × 2 波 お よ び 64QAM 1波)ケーブルで再伝送する方式で、KDDI、JCOM、日本デジタル配信と共同で開発した。現行のケーブルテレビ伝送方式のままで 8K を家庭に配信でき、ケーブルで伝送された信号を復号するのに後述するソシオネクスト製 LSI を搭載した試作した小型受信装置を使っていた。 超高精細度で優れた色再現性の特徴を活かし、8K の放送系以外での応用例として、8K PC によるバーチャル美術館と医療分野の例が公開されていた。後者は 8K 単板式カメラ(アストロデザイン製)と硬性内視鏡(オリンパス製)とそれらを使い行った動物実験の 8K 映像が表示されていた(写12)。その事例の他にもMIC7)が主導し「8K映像技術で医療を変える」との動きが活発に行われている。

・百年以上の歴史と高い商品技術力を持つシャープだが、厳しい経営状況から今や台湾企業の鴻海グループの傘下となっている。今回、IoT で彩る新しい暮らし「AIoT(AI× IoT)スマートホーム」を掲げ、オリジナル性の高い製品群を出展していた。電力使用量の可視化、節電(CO2 削減)のための機器制御、ソーラー発電等の再生可能エ

写 8.  最新機種スマフォ“P9 lite”を体験写 9. ツーリズムソリューションの実演

写 10. 大評判の人と機械ロボットの対決

写 11.  シート型 8K 有機 EL ディスプレイ

写 12.  8K の医療分野への応用

6) MPEG Media Transport(多様な伝送路でのメディア伝送に対応する国際標準の多重化方式

7) Medical Imaging Consortium

謳い、最先端 AI 技術を活用し機械が人の判断を支援し、人がより創造的な活動ができるようにするテクノロジーの例として、昨年よりさらに進化した卓球ロボット「フォルフェウス」を展示した(写 10)。機械ロボットが人の動きや球の動きを見て合せてくれるそうだ。ニュースでも取り上げられ、会場でも一番の人気スポットになっていた。また自動運転の実現を加速するため、独自のセンシングと AI 技術を組み合わせ、ドライバーの行動や状態をとらえ、安全運転に適した状態かどうかを判定する技術も展示していた。

家エリア

 生活シーンでの身の回りのモノをベースに、暮らしや健康をサポートするロボット、エネルギーシステム、健康管理、エンターテインメントなど豊かで快適な暮らしを支援する様々な展示がなされていた。・NHKと主催団体の JEITAは共同ブースで、8 月 1 日から始まっている BS による4K/8K 放送関連の展示をしていた。85 型8KLCD テレビ(シャープ)を用い超高精細映像の魅力を体験させていた。8K 映像表示用のシート型モニターは、4K 解像度で厚さ 1mm の有機 EL パネル(LG 電子)4 枚をアストロデザインのプロセッサーで貼り合わせ全体で 8K 画面にしたものである(写 11)。  また 4K/8K 放送をケーブルで再伝送するデモも行われていた。MMT6)形式の 8K 信号を複数チャンネルに分割し

11

FDI・2016・11

ネルギーや蓄電器の制御等を行うシステムクラウド利用の HEMS、業界トップクラスの高効率(約 20%)のブラックソーラーパネルなどを展示していた。 人に寄り添う暮らしのパートナーとして、停電の時、蓄電池に貯めた電力で数日以上にわたり稼働できるエリア限定冷却可能な冷蔵庫や話しかけると相談に乗ってくれる電子レンジ、インテリジェントな掃除機ロボットなど多彩な製品を展示していた。 今や同社のシンボルのような可愛らしいロボット型携帯電話“RoBoHon”は、通信方式として 3G/LTE/Wi-Fi を採用し、電話やメール、撮影などモバイル通信端末としての機能を持ち、プロジェクターで写真や映像を投影することもできる。また AI により音声で操作もでき、使い手と対話も楽しめる(写 13)。 ブース奥には 8K シアターが開設され、BS8K 試験放送に対応する「衛星デジタル放送受信機」を使い、8KLCD テレビにて超高精細映像を公開していた。同システムは学術的・技術的、将来性や市場性などが高く評価され総務大臣賞を受賞した(写14)。さらに独自の IGZO8)技術を採用した液晶パネルを搭載した 27 型 8K モニターとスマートフォン用から HDR 対応の家庭用テレビまで様々な大きさや形状のIGZO ディスプレイも展示していた。

・最近、ドローンは火山や自然災害地での

監視、重要施設の防災監視用、宅配便用さらに放送番組の取材や中継用ツールなど、様々な分野で利用が進んでいる。世界市場で大きなシェアを持つ DJI(中国)は、場内に防護用の巨大なケージを設置し、その中でドローンの飛行実演をし、その周囲に大中小、様々なスペックの機種を並べていた(写 15)。最近メディアでもしばしば取り上げられ話題になっているだけにブースは大賑わいだった。

CPS/IoT を支えるテクノロジーソフトウェアエリア

 昨今の情報化時代の最大のトピックスであり、今回のシーテックの基本テーマを受けたエリアで、産業の活性化や社会問題の解決を支える様々なテクノロジーやソフトウェアが出展されていた。・NHK エ ン ジ ニ ア リ ン グ シ ス テ ム は、NHK の研究成果の特許や技術を社会還元すると共に様々な実用化に向けた自主開発もしている。今回ちょっと変わった興味ある展示をしていた。タブレット端末のカメラを通し、別の大きなテレビ画面をのぞくと、テレビの中のキャラクターが画面の外に出てくる(写 16)。テレビとタブレットはネット接続不要で既存の機器がそのまま使える。高精度の同期技術とテレビ位置推定技術を用いて、テレビ映像に拡張現実感 AR9)

技術を適用し画面を合成する。デジタルサイネージや博物館の体験型展示など様々な応用が期待される。

・2 年前、富士通とパナソニックの LSI 事業を統合し結成されたソシオネクストは、8K 超高精細映像向けソリューションをメインに展示していた。 世界初の 8K HEVC エンコーダ / デコーダ LSI を組み込んだボード、装置を使い、8K カメラ(アストロデザイン)でセットを撮影し、リアルタイムにエンコードし伝送、受信した映像をデコードし表示していた。エンコーダボードには 4K/60p 映像をHEVC/H.265 により、リアルタイムにエンコードする LSI を 4 個搭載し連携動作させ、各 LSI により 8K 映像を 4 分割して処理した後、同期を取り出力する。デコーダは、HEVC 符号化に対応した 8K 映像を 1チップでデコードできる LSI“SCH801A”を搭載している。これら HEVC エンコーダ/ デコーダを用いた映像配信ソリューションは、テクノロジー・ソフトウェアイノベーション部門のグランプリを受賞した(写17)。 また既に始まっている 8K 試験放送を、上述のデコーダを組み込んだコンパクトな受信器で復調し 8K テレビに表示していた。

・構造物や建築設計のためのソフトウェアや技術を提供しているフォーラムエイトは、最近は VR 技術を活用した交通・自動車分野にも幅広く展開しており、今回も興味を引く出展をしていた。

写 13. IT 機能を持つロボット型端末 RoBoHon

写 14.  総務大臣賞受賞の 8K 受信システム

写 15. 大人気のドローン実演会場

写 16.  画面から映像が飛び出すテレビ

写 17. 8K 映像配信ソリューション.

8)In(インジュゥム)、Ga(ガリゥム)、Zn (亜鉛)から成る酸化物半導体で、従来のアモルファスシリコンを利用したパネルに比べ、薄膜トランジスタの小形・細線化が可能で、より高精細化、光透過量の向上、省エネ化可能 9)Augmented Reality

写 18. ドライブシミュレーションの体験

Page 4: CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

10

FDI・2016・11

テックの常連になっているが、地の利の良い場所に広大なブースを構え、ソーシャルメディア関係の製品を展示公開していた。 フル HD 対応で指紋による生体認証機能付き、ライカのダブルレンズと RGB/ モノクロの 2 種のイメージセンサーを搭載し高速で正確なフォーカス可能なカメラ付き、超薄型軽量のスマフォ“P9 lite”(写 8)や“honor 8”、 さ ら に 第 6 世 代 の intel Core Skylake を搭載した高精細度広色域ディスプレイ、大容量リチウム電池で約 9時間の連続使用可能な上、スリムで軽量のモバイル PC“MateBook”などを展示し来場者に体験させていた。 また、次世代通信環境を視野に NTT ドコモと共同開発を進めている 5G(第 5 世代携帯電話)の実証実験の様子や今後のビジネス展開に向け阪神電車と共同実験している LTE 方式による地域 BWA 構築、活用事例の紹介もしていた。

・同じく中国企業で、PC 事業分野で既にNEC と合弁を組んでおり、近々、富士通と合弁事業を開始すると言われており世界の PC 事業分野の大手となっているレノボ(LENOBO)は、華為の隣に広大でひときわカラフルなブースを構え、コンピューティングパワーで生活や仕事を支援する様々なソリューションやグループとなっているモトローラや NEC の PC 新製品も展示していた。 経産省のおもてなし実証実験の委託を受け、鎌倉や渋谷で実施している観光情報を提供するツーリズムソリューション(写 9)やキーボードと手書きの文字や図形入力に対応する独自のインターフェースの“YOGA Book”、さらにスマートホーム向けとワークスタイルの変革に向けた多彩なソリューションなどを公開していた。

・オムロンは「人と機械の関係性強化」を

て(256QAM × 2 波 お よ び 64QAM 1波)ケーブルで再伝送する方式で、KDDI、JCOM、日本デジタル配信と共同で開発した。現行のケーブルテレビ伝送方式のままで 8K を家庭に配信でき、ケーブルで伝送された信号を復号するのに後述するソシオネクスト製 LSI を搭載した試作した小型受信装置を使っていた。 超高精細度で優れた色再現性の特徴を活かし、8K の放送系以外での応用例として、8K PC によるバーチャル美術館と医療分野の例が公開されていた。後者は 8K 単板式カメラ(アストロデザイン製)と硬性内視鏡(オリンパス製)とそれらを使い行った動物実験の 8K 映像が表示されていた(写12)。その事例の他にもMIC7)が主導し「8K映像技術で医療を変える」との動きが活発に行われている。

・百年以上の歴史と高い商品技術力を持つシャープだが、厳しい経営状況から今や台湾企業の鴻海グループの傘下となっている。今回、IoT で彩る新しい暮らし「AIoT(AI× IoT)スマートホーム」を掲げ、オリジナル性の高い製品群を出展していた。電力使用量の可視化、節電(CO2 削減)のための機器制御、ソーラー発電等の再生可能エ

写 8.  最新機種スマフォ“P9 lite”を体験写 9. ツーリズムソリューションの実演

写 10. 大評判の人と機械ロボットの対決

写 11.  シート型 8K 有機 EL ディスプレイ

写 12.  8K の医療分野への応用

6) MPEG Media Transport(多様な伝送路でのメディア伝送に対応する国際標準の多重化方式

7) Medical Imaging Consortium

謳い、最先端 AI 技術を活用し機械が人の判断を支援し、人がより創造的な活動ができるようにするテクノロジーの例として、昨年よりさらに進化した卓球ロボット「フォルフェウス」を展示した(写 10)。機械ロボットが人の動きや球の動きを見て合せてくれるそうだ。ニュースでも取り上げられ、会場でも一番の人気スポットになっていた。また自動運転の実現を加速するため、独自のセンシングと AI 技術を組み合わせ、ドライバーの行動や状態をとらえ、安全運転に適した状態かどうかを判定する技術も展示していた。

家エリア

 生活シーンでの身の回りのモノをベースに、暮らしや健康をサポートするロボット、エネルギーシステム、健康管理、エンターテインメントなど豊かで快適な暮らしを支援する様々な展示がなされていた。・NHKと主催団体の JEITAは共同ブースで、8 月 1 日から始まっている BS による4K/8K 放送関連の展示をしていた。85 型8KLCD テレビ(シャープ)を用い超高精細映像の魅力を体験させていた。8K 映像表示用のシート型モニターは、4K 解像度で厚さ 1mm の有機 EL パネル(LG 電子)4 枚をアストロデザインのプロセッサーで貼り合わせ全体で 8K 画面にしたものである(写 11)。  また 4K/8K 放送をケーブルで再伝送するデモも行われていた。MMT6)形式の 8K 信号を複数チャンネルに分割し

11

FDI・2016・11

ネルギーや蓄電器の制御等を行うシステムクラウド利用の HEMS、業界トップクラスの高効率(約 20%)のブラックソーラーパネルなどを展示していた。 人に寄り添う暮らしのパートナーとして、停電の時、蓄電池に貯めた電力で数日以上にわたり稼働できるエリア限定冷却可能な冷蔵庫や話しかけると相談に乗ってくれる電子レンジ、インテリジェントな掃除機ロボットなど多彩な製品を展示していた。 今や同社のシンボルのような可愛らしいロボット型携帯電話“RoBoHon”は、通信方式として 3G/LTE/Wi-Fi を採用し、電話やメール、撮影などモバイル通信端末としての機能を持ち、プロジェクターで写真や映像を投影することもできる。また AI により音声で操作もでき、使い手と対話も楽しめる(写 13)。 ブース奥には 8K シアターが開設され、BS8K 試験放送に対応する「衛星デジタル放送受信機」を使い、8KLCD テレビにて超高精細映像を公開していた。同システムは学術的・技術的、将来性や市場性などが高く評価され総務大臣賞を受賞した(写14)。さらに独自の IGZO8)技術を採用した液晶パネルを搭載した 27 型 8K モニターとスマートフォン用から HDR 対応の家庭用テレビまで様々な大きさや形状のIGZO ディスプレイも展示していた。

・最近、ドローンは火山や自然災害地での

監視、重要施設の防災監視用、宅配便用さらに放送番組の取材や中継用ツールなど、様々な分野で利用が進んでいる。世界市場で大きなシェアを持つ DJI(中国)は、場内に防護用の巨大なケージを設置し、その中でドローンの飛行実演をし、その周囲に大中小、様々なスペックの機種を並べていた(写 15)。最近メディアでもしばしば取り上げられ話題になっているだけにブースは大賑わいだった。

CPS/IoT を支えるテクノロジーソフトウェアエリア

 昨今の情報化時代の最大のトピックスであり、今回のシーテックの基本テーマを受けたエリアで、産業の活性化や社会問題の解決を支える様々なテクノロジーやソフトウェアが出展されていた。・NHK エ ン ジ ニ ア リ ン グ シ ス テ ム は、NHK の研究成果の特許や技術を社会還元すると共に様々な実用化に向けた自主開発もしている。今回ちょっと変わった興味ある展示をしていた。タブレット端末のカメラを通し、別の大きなテレビ画面をのぞくと、テレビの中のキャラクターが画面の外に出てくる(写 16)。テレビとタブレットはネット接続不要で既存の機器がそのまま使える。高精度の同期技術とテレビ位置推定技術を用いて、テレビ映像に拡張現実感 AR9)

技術を適用し画面を合成する。デジタルサイネージや博物館の体験型展示など様々な応用が期待される。

・2 年前、富士通とパナソニックの LSI 事業を統合し結成されたソシオネクストは、8K 超高精細映像向けソリューションをメインに展示していた。 世界初の 8K HEVC エンコーダ / デコーダ LSI を組み込んだボード、装置を使い、8K カメラ(アストロデザイン)でセットを撮影し、リアルタイムにエンコードし伝送、受信した映像をデコードし表示していた。エンコーダボードには 4K/60p 映像をHEVC/H.265 により、リアルタイムにエンコードする LSI を 4 個搭載し連携動作させ、各 LSI により 8K 映像を 4 分割して処理した後、同期を取り出力する。デコーダは、HEVC 符号化に対応した 8K 映像を 1チップでデコードできる LSI“SCH801A”を搭載している。これら HEVC エンコーダ/ デコーダを用いた映像配信ソリューションは、テクノロジー・ソフトウェアイノベーション部門のグランプリを受賞した(写17)。 また既に始まっている 8K 試験放送を、上述のデコーダを組み込んだコンパクトな受信器で復調し 8K テレビに表示していた。

・構造物や建築設計のためのソフトウェアや技術を提供しているフォーラムエイトは、最近は VR 技術を活用した交通・自動車分野にも幅広く展開しており、今回も興味を引く出展をしていた。

写 13. IT 機能を持つロボット型端末 RoBoHon

写 14.  総務大臣賞受賞の 8K 受信システム

写 15. 大人気のドローン実演会場

写 16.  画面から映像が飛び出すテレビ

写 17. 8K 映像配信ソリューション.

8)In(インジュゥム)、Ga(ガリゥム)、Zn (亜鉛)から成る酸化物半導体で、従来のアモルファスシリコンを利用したパネルに比べ、薄膜トランジスタの小形・細線化が可能で、より高精細化、光透過量の向上、省エネ化可能 9)Augmented Reality

写 18. ドライブシミュレーションの体験

Page 5: CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

12

FDI・2016・11

データ、ICT などの技術が活用されつつあることを実感させてくれた。 JTBは 2020 年の東京オリンピック開催を見据え、仮想空間ディスプレイを用いた次世代の旅行案内板や小型接客ロボットを用いた観光地の魅力を伝える旅行案内など新たな情報発信法などを公開していた。またSECOMは完全自立飛行のドローンを活用したセキュリティ対策を、楽天は店舗の商品と IT を融合させたサービスを、タカラトミーはこれからのロボットと暮らす生活ということで様々なロボットを展示していた。 NII(国立情報学研究所)は、未来の社会システム基盤を支えるソーシャル CPS に共通の IT 基盤技術や実用化に向けた実証実験について紹介していた。変わった展示として、超人スポーツ協会は身体能力を超え、年齢や障害などの身体差によるバリアを超え、超人として誰もが楽しくプレイできるような人とテクノロジーが融合する「人機一体」のスポーツ創造の実演をしていた(写20)。

・人工知能AIパビリオン 今年の春、グーグル社が開発した人工知能を応用した囲碁ソフト「アルファ碁」が世界チャンピオンを打ち負かし、AI に対する関心が急速に高まってきた。人工知能の開発は大きな技術テーマになっており、世界各国で開発にしのぎを削っている。今回のシーテックでも、人工知能にスポットをあてた特別企画エリアが開設され、様々な展示がなされ人気スポットになっていた。 産業技術総合研究所の人工知能センターは、高度な癌診断などに有効な「医師の診断を支援する画像認識技術」、アクティブなビッグデータによる「サービスインテリジェント技術」、安全安心な社会の実現に寄与する「大規模な群衆流動予測」、さらに今後

写 19.  案内ロボット“NAO”

写 20. 超人スポーツ協会の「人機一体」 写 21. 人工知能研究センターの出展

写 22. 小型化、省力化に有効なオプティカルインターフェース

10) 利用者に力、振動、動きなどを与えることで皮膚感覚フィードバックを得るテクノロジー

 マルチ画面による大画面 6K ディスプレイと、人間と交流するインタフェースキネクトを用いたデジタルサイネージ「フェアリーバタフライ」、3 次元リアルタイムの VR ソフトとゲームを融合させたドライブシミュレータ“UC-win/Road”、さらに HMD を装着し 3D VR 空間への没入感を向上させた高精度な運転シミュレータ

“Oculus Rift”を用い来場者へ体験させていた(写 18)。

特別企画エリア

 今回のシーテックでは、一新された大会コンセプトにあわせ主催者団体主導による特別企画展示コーナーが開設され、これまでほとんど目にすることがなかった企業からの異色の出展があり、来場者の注目を集めていた。・IoTタウン 今回のシーテックのコンセプトを発信する特別エリアで、IoT を活用した市場創出を目指し、様々な企業が多種多彩な出展をしていた。 金融業界から初めての出展と思われる三菱UFJ銀行グループは、店内案内用の人型ロボット“NAO”を展示していた(写19)。現在、成田空港支店で働いているが、タブレット端末からの複数の言語(日本語、英語、中国語)を聞き分け、簡単な銀行サービスに関することや日常会話にも対応できる。将来は AI と連携し高度な質問にも対応できるようになるそうだ。また AI を使った「簡単な資産運用シミュレーション」、「外貨運用サポート」、ビッグデータ利用による

「リアルタイム株価予測」、クラウド型マルチ決済システム“J-Mups”などの提案もしていた。金融、商業部門でも AI やビッグ

の様々な社会の場で有効な「人工知能技術コンソーシアム」の構築と進め方など多様な提案展示をしていた(写 21)。

・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は「未来の IoT 社会」を掲げ、超スマート社会を支える「おもてなし」や「地域包括ケア」、「高度道路交通」や「物づくり」のためのデバイス技術やソフトウェア技術の提案、事例を公開していた。 具体例として「複雑な交通環境での自動運転を可能にするメニューコア対応のリアルタイム OS の開発」、「IoT デバイスのアイディアを形にできる拠点の構築」、「ヒューマンナビを実現するメンテナンスフリービーコンインフラ」などである。それらとは別に、富士通の項で触れた経産大臣賞の

「網膜走査型レーザーアイウェイ」や IT 機器や情報処理能力を一層高め電子デバイスの性能を高めると共に機器間の伝送速度を高め、さらに機器の小型化、省電力化に役立つ回路の光化、オプティカルインターフェース(写 22)も紹介していた。

ベンチャー&ユニバーシティエリア

 シーテックでお馴染みのコーナーになっ

13

FDI・2016・11

ているが、今年は100社近いベンチャー企業や大学の研究室が、ユニークな多彩な展示物を公開し、人気を集めていた。それらの中で注目の展示について紹介してみる。

・慶応大学のハプティクス 10)研究センターは、一層進歩しているリアルハプティクス技術として、単なる位置の制御ではなく、人間が本来持っている位置と力を協調させて行う行為を機械やロボットにおいて実現する技術を展示した。自動車のハンドルを操作する人に路面の状態や力触角を伝達する「IoT ハンドル」(写23)、掴んだものの力触覚情報をリアルタイムにデジタル化し、手以外の身体部位で知覚する「ハプティクス人工手」(審査特別賞)、人間の肩、肘、手首、指について7自由度で機械化し、動作行為のデータを記録、編集し再現する「GP-Arm(汎用ロボットアーム)」などである。また同じ慶応の桂研究室は高速で超瞬発力のあるダイナミックなロボットを目

Ph.D. Takehisa Ishida映像技術ジャーナリスト

指した超瞬発マシンを展示していた。

・海馬は操縦者の頭と腕の動きをトレースし再現できる遠隔ロボットを出展した。独自開発のWebRTC/IoT を利用し、HMDと指向性マイクにより制御し、接客ガイドや観光案内などの商業利用、障害者も操作できるバリアフリーな遠隔ロボットを目指している(写24)。

・光学部品やシステムの企画・開発・設計などの事業を展開しているパリティイノベーションは、今回、非常に数多い微小なミラーで構成される“DCRA”(二面コーナーリフレクタアレイ)を搭載したディスプレイによる空中映像を公開していた。ホログラフィとは全く違う原理に基づいており、見る角度や距離にかかわらず空中の定位置に浮いて見られリアルな物体のような存在感がある。

写 23. IoT ハンドル(慶応大学) 写 24. 遠隔ロボット(海馬)

・京都の学園都市「けいはんなプラザラボ」に拠点を置き、映像や音声と連動して香りを噴射する「アロマシューター」を開発販売しているアロマジョインは、「香りが情報の質を変える」コミュニケーションツールの実演をしていた。気体放射方式で残り香が少なく、6種類の香りを組み合わせ、指向性がある香りを顔の周囲にピンポイントで提示する。デジタルサイネージや4Dシアターなどでの応用が想定されるそうだ。

むすびに変えて

 かって、デジタル移行途上の頃、シーテック会場を賑わしていたのは、家電製品の筆頭の薄型デジタルハイビジョンテレビや3Dだった。日本メーカーだけでなく海外企業も含め、大手電機メーカーは軒並み大型で薄型テレビの生産に励み、シーテック会場の多くのブースで新製品を競っていた。しかし最近の市場の動向、技術潮流の変化を受け、今回のシーテックは一端を紹介したように、出展動向、状況が様変わりしている。本稿ではあまり触れなかったが、IoT時代を支える基盤技術、部品、デバイスの出展はもちろん、それらを活用し、自動運転を視野に入れたモービル機器なども会場を賑わしていた。

Page 6: CEATEC 2016 - UNIWした次世代工場コンセプト“e-Factory”は、 生産現場で使われる様々なFA製品や加工 機器からネットワークを介してエッジコン

12

FDI・2016・11

データ、ICT などの技術が活用されつつあることを実感させてくれた。 JTBは 2020 年の東京オリンピック開催を見据え、仮想空間ディスプレイを用いた次世代の旅行案内板や小型接客ロボットを用いた観光地の魅力を伝える旅行案内など新たな情報発信法などを公開していた。またSECOMは完全自立飛行のドローンを活用したセキュリティ対策を、楽天は店舗の商品と IT を融合させたサービスを、タカラトミーはこれからのロボットと暮らす生活ということで様々なロボットを展示していた。 NII(国立情報学研究所)は、未来の社会システム基盤を支えるソーシャル CPS に共通の IT 基盤技術や実用化に向けた実証実験について紹介していた。変わった展示として、超人スポーツ協会は身体能力を超え、年齢や障害などの身体差によるバリアを超え、超人として誰もが楽しくプレイできるような人とテクノロジーが融合する「人機一体」のスポーツ創造の実演をしていた(写20)。

・人工知能AIパビリオン 今年の春、グーグル社が開発した人工知能を応用した囲碁ソフト「アルファ碁」が世界チャンピオンを打ち負かし、AI に対する関心が急速に高まってきた。人工知能の開発は大きな技術テーマになっており、世界各国で開発にしのぎを削っている。今回のシーテックでも、人工知能にスポットをあてた特別企画エリアが開設され、様々な展示がなされ人気スポットになっていた。 産業技術総合研究所の人工知能センターは、高度な癌診断などに有効な「医師の診断を支援する画像認識技術」、アクティブなビッグデータによる「サービスインテリジェント技術」、安全安心な社会の実現に寄与する「大規模な群衆流動予測」、さらに今後

写 19.  案内ロボット“NAO”

写 20. 超人スポーツ協会の「人機一体」 写 21. 人工知能研究センターの出展

写 22. 小型化、省力化に有効なオプティカルインターフェース

10) 利用者に力、振動、動きなどを与えることで皮膚感覚フィードバックを得るテクノロジー

 マルチ画面による大画面 6K ディスプレイと、人間と交流するインタフェースキネクトを用いたデジタルサイネージ「フェアリーバタフライ」、3 次元リアルタイムの VR ソフトとゲームを融合させたドライブシミュレータ“UC-win/Road”、さらに HMD を装着し 3D VR 空間への没入感を向上させた高精度な運転シミュレータ

“Oculus Rift”を用い来場者へ体験させていた(写 18)。

特別企画エリア

 今回のシーテックでは、一新された大会コンセプトにあわせ主催者団体主導による特別企画展示コーナーが開設され、これまでほとんど目にすることがなかった企業からの異色の出展があり、来場者の注目を集めていた。・IoTタウン 今回のシーテックのコンセプトを発信する特別エリアで、IoT を活用した市場創出を目指し、様々な企業が多種多彩な出展をしていた。 金融業界から初めての出展と思われる三菱UFJ銀行グループは、店内案内用の人型ロボット“NAO”を展示していた(写19)。現在、成田空港支店で働いているが、タブレット端末からの複数の言語(日本語、英語、中国語)を聞き分け、簡単な銀行サービスに関することや日常会話にも対応できる。将来は AI と連携し高度な質問にも対応できるようになるそうだ。また AI を使った「簡単な資産運用シミュレーション」、「外貨運用サポート」、ビッグデータ利用による

「リアルタイム株価予測」、クラウド型マルチ決済システム“J-Mups”などの提案もしていた。金融、商業部門でも AI やビッグ

の様々な社会の場で有効な「人工知能技術コンソーシアム」の構築と進め方など多様な提案展示をしていた(写 21)。

・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は「未来の IoT 社会」を掲げ、超スマート社会を支える「おもてなし」や「地域包括ケア」、「高度道路交通」や「物づくり」のためのデバイス技術やソフトウェア技術の提案、事例を公開していた。 具体例として「複雑な交通環境での自動運転を可能にするメニューコア対応のリアルタイム OS の開発」、「IoT デバイスのアイディアを形にできる拠点の構築」、「ヒューマンナビを実現するメンテナンスフリービーコンインフラ」などである。それらとは別に、富士通の項で触れた経産大臣賞の

「網膜走査型レーザーアイウェイ」や IT 機器や情報処理能力を一層高め電子デバイスの性能を高めると共に機器間の伝送速度を高め、さらに機器の小型化、省電力化に役立つ回路の光化、オプティカルインターフェース(写 22)も紹介していた。

ベンチャー&ユニバーシティエリア

 シーテックでお馴染みのコーナーになっ

13

FDI・2016・11

ているが、今年は100社近いベンチャー企業や大学の研究室が、ユニークな多彩な展示物を公開し、人気を集めていた。それらの中で注目の展示について紹介してみる。

・慶応大学のハプティクス 10)研究センターは、一層進歩しているリアルハプティクス技術として、単なる位置の制御ではなく、人間が本来持っている位置と力を協調させて行う行為を機械やロボットにおいて実現する技術を展示した。自動車のハンドルを操作する人に路面の状態や力触角を伝達する「IoT ハンドル」(写23)、掴んだものの力触覚情報をリアルタイムにデジタル化し、手以外の身体部位で知覚する「ハプティクス人工手」(審査特別賞)、人間の肩、肘、手首、指について7自由度で機械化し、動作行為のデータを記録、編集し再現する「GP-Arm(汎用ロボットアーム)」などである。また同じ慶応の桂研究室は高速で超瞬発力のあるダイナミックなロボットを目

Ph.D. Takehisa Ishida映像技術ジャーナリスト

指した超瞬発マシンを展示していた。

・海馬は操縦者の頭と腕の動きをトレースし再現できる遠隔ロボットを出展した。独自開発のWebRTC/IoT を利用し、HMDと指向性マイクにより制御し、接客ガイドや観光案内などの商業利用、障害者も操作できるバリアフリーな遠隔ロボットを目指している(写24)。

・光学部品やシステムの企画・開発・設計などの事業を展開しているパリティイノベーションは、今回、非常に数多い微小なミラーで構成される“DCRA”(二面コーナーリフレクタアレイ)を搭載したディスプレイによる空中映像を公開していた。ホログラフィとは全く違う原理に基づいており、見る角度や距離にかかわらず空中の定位置に浮いて見られリアルな物体のような存在感がある。

写 23. IoT ハンドル(慶応大学) 写 24. 遠隔ロボット(海馬)

・京都の学園都市「けいはんなプラザラボ」に拠点を置き、映像や音声と連動して香りを噴射する「アロマシューター」を開発販売しているアロマジョインは、「香りが情報の質を変える」コミュニケーションツールの実演をしていた。気体放射方式で残り香が少なく、6種類の香りを組み合わせ、指向性がある香りを顔の周囲にピンポイントで提示する。デジタルサイネージや4Dシアターなどでの応用が想定されるそうだ。

むすびに変えて

 かって、デジタル移行途上の頃、シーテック会場を賑わしていたのは、家電製品の筆頭の薄型デジタルハイビジョンテレビや3Dだった。日本メーカーだけでなく海外企業も含め、大手電機メーカーは軒並み大型で薄型テレビの生産に励み、シーテック会場の多くのブースで新製品を競っていた。しかし最近の市場の動向、技術潮流の変化を受け、今回のシーテックは一端を紹介したように、出展動向、状況が様変わりしている。本稿ではあまり触れなかったが、IoT時代を支える基盤技術、部品、デバイスの出展はもちろん、それらを活用し、自動運転を視野に入れたモービル機器なども会場を賑わしていた。