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津波漂流物による構造物への 衝突確率に関する研究 Study on Collision Probability of Tsunami Debris to the Structure 中央大学大学院理工学研究科 都市環境学専攻 海岸 ・港湾 研究室 修士 2 16N3100008D 7 遠藤雅人

津波漂流物による構造物への 衝突確率に関する研究D 200 19 1400 wave ker Reflection wall [Unit : cm] WG2 WG1 13 10 D 200 1400 Reflection wall [Unit : cm] P1 ker

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津波漂流物による構造物への衝突確率に関する研究

Study on Collision Probability of Tsunami Debris to the Structure

中央大学大学院理工学研究科

都市環境学専攻

海岸・港湾研究室 修士2年

16N3100008D 7号 遠藤雅人

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目次

1.研究背景

2.目的・内容

3.平面実験について3-1.実験概要

3-2.実験の様子

3-3.実験結果

3-4.考察

2

4.断面実験について4-1.実験概要4-2.漂流の様子4-3.突入速度と衝突確率4-4.衝突速度の検討4-5.衝突の定量的評価

5.結論・今後の予定

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1.研究背景

• 過去の津波来襲時には,多数の津波漂流物が発生している.

• 2011年東北地方太平洋沖地震に伴う,巨大津波の影響で,船舶や自動車が漂流・衝突が多数報告されている.

• 2次災害の拡大を防ぐために,建物への衝突リスクを検討することは重要である.

【建物に衝突した自動車】 【船舶が衝突した建物】【原木が衝突した建物】

港湾空港技術研究所資料No.1231(2011年)より転載

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1.研究背景

確率論的リスク評価手法 (津波PRA : Probabilistic Risk Assessment )

日本原子力学会(2012)

・津波への対策

津波漂流物の影響を評価した確率論的リスク評価手法は,十分に確立していない

津波の規模と発生確率

個々の施設への外力・応答評価

施設への耐力評価

年損傷確率で評価

第16回原子力委員会資料第1-1号

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漂流物の衝突を考慮していない

漂流物の衝突リスクを定量的に評価する必要がある.

衝突リスクを検討する上で,衝突力と衝突確率が重要なパラメータである.

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1.研究背景~既往研究

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衝突力の推定式

・FEMAの衝突力推定式

𝐹 = 1.3𝑢𝑚𝑎𝑥 𝑘𝑚𝑑(1 + 𝑐)

𝑢𝑚𝑎𝑥:流速の最大値, 𝑘:剛性,𝑚𝑑:漂流物の質量, 𝑐:付加質量係数

・有川らの衝突力推定式

𝐹 = 𝛾𝑝𝜒2/5

5

4 𝑚

3/5

𝜐6/5, 𝜒 =4 𝑎

3𝜋

1

𝑘1 + 𝑘2

𝑘 = (1 − 𝜈2)/𝜋𝐸, 𝑚 = 𝑚1𝑚2/(𝑚1 +𝑚2)

𝑎:衝突面半径の1/2, 𝐸:ヤング率 , ν :ポアソン比, 𝑚 :漂流物の質量,𝜐:衝突速度,𝛾𝑝:塑性によるエネルギー減衰

・松冨の衝突力推定式

𝐹𝑚/𝛾𝐷2𝐿 = 1.6𝐶𝑀𝐴 𝑉𝐴𝑂/(𝑔𝐷)

0.5 1.2・(𝜎𝑓/𝛾𝐿)0.4

𝐷:木材の直径, 𝐿:木材の長さ,𝜎𝑓:降伏応力, γ:単位体積重量,𝐶𝑀𝐴:見かけの質量係数,𝑉𝐴𝑂:漂流物衝突直前速度

流木衝突力の実用的な評価式と変化特性(松冨1999)

遡上津波によるコンテナ漂流力に関する大規模実験(有川ら2007)

Guidelines for Design of Structures for Vertical Evacuation from Tsunamis Second Edition FEMA P-646 / April 2012

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1.研究背景~既往研究

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衝突力の推定式

衝突力の推定において,反射波の影響を考慮した衝突速度が重要なパラメータである.

最大流速値を漂流物速度と扱ってしまう場合,衝突力を過大評価してしまい,過度に保守的評価をしてしまう可能性がある.

池田ら(2014)は,津波中では反射波の影響

により,漂流物が構造物に衝突しにくい,衝突速度が流速に比べて小さくなることを明らかにした.

甲斐田ら(2016)は,反射波の影響による衝

突速度について,比重により衝突速度のばらつきが異なり,衝突速度と反射波の厚さに負の相関があることを明らかにした.

数値波動水槽とDEMの連成モデルを用いたコンテナ漂流挙動に関する検討(池田ら2014)

陸上遡上津波中の漂流物挙動に関する研究(甲斐田ら2016)

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1.研究背景~既往研究

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陸上遡上津波中の漂流物挙動に関する研究(甲斐田ら2016)

衝突確率の推定

漂流物挙動解析による津波漂流物衝突に関する確率論的評価手法(木原ら2013)

木原ら(2013)は,船舶を対象に,漂流のばらつ

きを抗力項・慣性力項に与え,単純化した例で衝突力およびモーメントの確率評価を可能とした.

実験的研究 数値計算的研究

甲斐田ら(2016)は,一定条件下での比重別に

よる衝突確率を算出し,反射波の影響による漂流物の挙動を示した.

𝐹𝑥 = 𝐶𝑀𝜌𝑉𝜕𝑢

𝜕𝑡+ 𝐶𝐷

𝜌𝑢2

2𝐴𝑥モリソン式

反射波の影響を考慮した陸上構造物に配置する漂流現象を扱う上で,ばらつきを定量的に評価している例がないため.

反射壁との位置関係による衝突確率を明らかにすることが重要である.

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2.研究の目的・内容

• 反射波の影響を考慮した衝突確率・衝突速度の検討

① 反射壁からの距離

② 漂流物の配置角度

③ 漂流物の比重

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漂流物の移動速度,衝突のばらつき,衝突の定量的評価を行うことを目的とする.

・平面実験を行い,漂流物と被衝突体との位置関係による衝突確率を検討

・断面実験による詳細な検討

研究目的

研究内容

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3-1.平面実験の概要

平面図

断面図

漂流物配置位置

wav

e m

aker

Apron

wallwave

[Unit : cm]

slope 2323.5 13.5

WG1WG2

200 130

wave maker

1050

500

200

130

80

200

100

[Unit : cm]

10 10 10 20 [cm]

D=30cm

No.1 ・・・・ ・・・・ No.5

漂流物模型 : 一辺3cmの立方体(プラスチック製) (密度 : 0.8 [g/cm3] )

D = 20cm, 30cm, 40cm, 50cm, 60cm, 70cm

孤立波,波高H = 2.5cm

各case 5回ずつ実施9

背面構造物の配置状況により,漂流挙動に影響を及ぼす.

広範囲に漂流物を配置し,反射壁との距離だけではなく,平面的な位置関係での衝突確率を明らかにすることが可能となる.

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3-2.平面実験~水位と流れの様子

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wav

e m

aker

Apron

wallwave

[Unit : cm]

slope 2323.5 13.5

WG1WG2

200 130

WG2の水位データ caseD=30cm

case20cm test03 case60cm test04

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3-3.平面実験結果

衝突確率[%]x座標

-10 0 10 20 40

反射壁までの距離

20cm 0 0 60 20 030cm 0 0 80 0 040cm 0 0 40 0 050cm 0 0 20 0 060cm 0 0 20 0 070cm 0 0 0 0 0

-20

0

20

40

60

80

100

-10 0 10 20 30 40

衝突確率

[%]

x座標[cm]

70cm

60cm

50cm

40cm

30cm

20cm

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3-4.平面実験の考察

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・甲斐田ら(2016)が示したものと同様の結

果が得られ,構造物の角付近では横に沿う流れにより,衝突をさける.

・中央部に配置したcaseは,反射波の影響を受け,漂流速度は減速し,衝突するcase

が発生した.

陸上遡上津波中の漂流物挙動に関する研究(甲斐田ら2016)

被衝突物の中央に配置したcaseの方が衝突する確率が高いため,中央部での漂流現象に焦点を当てて,詳細に検討を行う.

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4-1.断面実験の概要

検討内容

20

D

200

19

1400

wave

wav

e m

akerReflection wall

[Unit : cm]

WG1WG2

13

10

D

200 1400

Reflection wall

[Unit : cm]

P1

wav

e m

aker

D

10P2

平面図

断面図

漂流物模型 : 一辺4cmの立方体 (密度 : 1.1 ,0.8 [g/cm3] )

D = 15cm, 22.5cm, 30cm, 37.5cm, 45cm, 60cm, 75cm, 90cm , 105cm, 120cm, 135cm, 150cm(比重1.1のcaseは45cmまで)

孤立波,波高H = 5.5cm

各case10回ずつ実施

実験場の様子

波高WG2 最大流速値の分布

反射波の長さ・突入速度の定義

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4-2.実験の様子(距離が異なる場合)

D=15cm, ρ=1.1, 45do test01 D=22.5cm, ρ=1.1, 45do test02

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4-2.実験の様子(同じ距離の場合)

D=30cm, ρ=1.1, 0do test03 D=30cm, ρ=1.1, 0do test04

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4-2.実験の様子(角度が異なる場合)

D=37.5cm, ρ=0.8, 0do test03 D=37.5cm, ρ=0.8, 45do test04

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4-2.実験の様子(密度が異なる場合)

D=45cm, ρ=0.8, 45do test01 D=45cm, ρ=1.1, 45do test01

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4-3.突入速度・衝突確率

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衝突確率の結果

突入速度の結果

・比重0.8の漂流物の突入速度は,比重1.1のcaseの1.1~1.2倍程度

・D=45cm~105cmでは,初期角度を45°に配置したcaseの方が1.1~1.2倍程度

・比重1.1のcaseはD=37.5cm,比重0.8のcaseはD=105cmで衝突確率が0%になった

・初期角度45°の方が,衝突確率が高い傾向がある

初期角度0°のcaseでは,反射波の影響を面で受けてしまうため,衝突しにくくなっていると考えられる.

反射波との関係について検討する.

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4-3.突入速度・衝突確率

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衝突確率の結果 突入速度の結果

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4-3.突入速度・衝突確率~ばらつきの検討

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比重0.8 比重1.1

縦軸:頻度 横軸:衝突可能時間Tc

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4-4.衝突速度の検討

21

0

10

20

30

40

0 50 100 150

反射壁への衝突速度

[cm

/s]

反射壁から漂流物の初期位置までの距離 [cm]

0.8-0°

0.8-45°

1.1-0°

1.1-45°

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 50 100 150

反射壁への衝突速度

[cm

/s]/

漂流物の反射波へ

の突入速度

[cm

/s]

反射壁から漂流物の初期位置までの距離 [cm]

0.8-0°

0.8-45°

1.1-0°

1.1-45°

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4-5.衝突の定量的評価

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相対衝突時間 = 漂流物到達時間TD(反射壁に遡上波が到達した時間) / 遡上波到達時間TT(反射壁に漂流物が衝突した時間)

相対衝突速度 = 衝突速度 / 漂流物に遡上波が到達したときの先端流速縦軸

横軸

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まとめ

結論

・反射波の影響を考慮した,比重・初期角度・反射壁までの距離による

衝突確率・衝突速度を示した.

・反射波の長さと反射波に突入する速度による衝突のばらつきを示した.

・反射壁に遡上波と漂流物の衝突する時間により,

衝突速度をおおよそ推定することができた.

今後の課題

・漂流物の形状,造波条件による衝突確率の算出を行う.

・数値計算による本実験の衝突確率の算出を行い,

衝突確率の算定手法を提案する.

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