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第一回全国受講生発表会 要旨集 平成 22 年 8 月 16 日(月)~8 月 18 日(水) 場所:東京大学 情報学環 福武ホール 主催:科学技術振興機構

第一回全国受講生発表会 要旨集 - JST · ・ ウロコのCa 含量・・・ウロコを硝酸に溶かして,Ca の量によって色が変わるクロロフォ スフォナゾ溶液と反応させました。色の違いを吸光度計で測定し,Ca

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第一回全国受講生発表会

要旨集

平成 22 年 8 月 16 日(月)~8 月 18 日(水)

場所:東京大学 情報学環 福武ホール

主催:科学技術振興機構

・・・目次・・・ 頁

●未来の科学者養成講座 第一回全国受講生発表会プログラム・・・・・・・・・・ 3

●発表要旨

○1日目

発表テーマ一覧(1日目)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

発表1 二本柳 礼美

環境によって魚の再生速度がどう変化するのか?・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

発表2 日置 友智,四ノ宮 誠也,渡邊 葵

ナノ粒子を作る・見る・実感する-SiGe と ZnO- ・・・・・・・・・・・・・・・ 10

発表3 ジポーリン 周樞

虫こぶの研究~大きな力を導く小さな共生関係~ ・・・・・・・・・・・・・・・ 12

発表4 相澤 紗絵

水滴の飛散についての研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

発表5 Jinki Hadano

Viscosity of Enteral Nutrient and Effect of Enzymes for Stomach Emptying ・・・・・・・16

羽田野 仁喜

経管栄養剤の粘度調整と胃排出に及ぼす酵素の影響・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

発表6 池田 智代子,星野 萌絵

森林は地球温暖化の抑制源となれるか

~冷温帯広葉樹林における炭素プール調査からの考察~・・・・・・・・・・・・18

発表7 葛貫 森信

PLLA/PVAcポリマーブレンドの薄膜AFM観察・・・・・・・・・・・・ ・20

○2日目

発表テーマ一覧(2日目)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

発表8 安井 拓未

塗布と熱分解を用いたチタン金属板上への白金微粒子の高分散担持・・・・・・・・ 26

発表9 高木 里菜,竹原 朋子

組織培養法によるイチョウ(Ginkgo biloba L.)精子誘導の研究・・・・・・・・・ 28

発表10 北出 智巳

宇宙線の寿命測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

発表11 Shinya KOBAYASHI, Kei TAGUCHI

A ROAD TO QUANTUM MECHANICS・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

小林 真也,田口 慧

量子力学への道 A ROAD TO QUANTUM MECHANICS・・・・・・・・・ 34

発表12 青木 美佑,羽藤 真鈴

「生体分子って何?」- 生体分子を視てみよう!パソコンで触ってみよう!- ・・・・・・36

1

●発表要旨

○2日目

発表13 柿添 翔太郎 その眼は何を見つめるのか‐昆虫に見えて,私たちに見えないもの‐・・・・・・・38

発表14 松岡 亮

自作天体望遠鏡を用いた天体観測の試み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

発表15 渡辺 晶子,小樋山 青蓮,早坂 榛名

がんは遺伝子の病気である・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42

発表16 青木 至人

「過去と未来をつなぐ骨 ~野生動物の頭骨比較~」・・・・・・・・・・・・・・ 44

発表17 芦田 美稀

食物の食べ合わせと消化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

発表18 大野 ひかり

rDNA 塩基配列によるキノコの種決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48

発表19 伊東 雅史,多胡 洸佑

潮汐力と太陽系天体のその影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50

発表20 富澤 良亮

ELCAS 化学分野の総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

発表21 鈴木 智博,藤田 悠平

管内の音速・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54

発表22 大澤 奈都美,長井 綾菜,宮内 春菜

光で見る生体分子~自作分光器の作製と植物色素による光の吸収の観察~・・・・・56

発表23 佐藤 孝洋

ユークリッド空間におけるm-距離集合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

発表24 和田 一真

カシオペア座の3星の分光観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60

発表25 Toko Kikuchi

The Effect of Xanthine Oxidase Inhibitor on Ultraviolet-Induced Oxidative Stress・・・・・・・ 62

菊池 憧子

紫外線惹起酸化ストレスにおける xanthine oxidase 阻害剤の効果・・・・・・・ ・63

発表26 矢野 更紗

土壌動物相の植生による違い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・64

発表27 宇山 慧佑

Simple, Cheap and Out of Control: A Robot Walking the Same as Human・・・・・・ 66

●メモ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68

2

未来の科学者養成講座 第一回全国受講生発表会 プログラム

1日目 8月16日(月) Ⅰ部 13:30-17:40 於:東京大学 福武ホール

13:00~ 開場

13:30-14:45 開会式

◇開会挨拶

◇来賓挨拶

◇記念講演

藤嶋昭 東京理科大学学長

「研究は感動することから -光触媒の研究を例にして- 」

◇諸連絡

14:55-17:25 受講生発表

◇発表1~3 (14:55~15:55)

****<休憩10分>*****

◇発表4~7 (16:05~17:25)

17:40~ 諸連絡

宿泊所に移動

*宿泊所にて各自夕食をとってください(夕食18:00~18:45)

1日目 Ⅱ部 19:00-21:00 於:旅館つたや

19:00-21:00 受講生交流会

◇井上義浩先生グループ

◇林秀則先生グループ

◇原田勲先生グループ

21:00~ 自由時間

開催日時: 2010年8月16日(月)~8月18日(水)

開催場所: 東京大学 福武ホール(本郷キャンパス)ほか

〒113-8654 文京区本郷7-3-1

1発表あたり20分

(発表13分 質疑応答7分)

3

2日目 8月17日(火) Ⅰ部 9:00-17:40 於:東京大学 福武ホール

●午前の部● 8:30~ 開場 9:00-12:00 受講生発表

◇発表8~11 (9:00~10:20)

****<休憩10分>*****

◇発表12~15 (10:30~11:50)

12:00~ 昼休み(1時間)

*各自昼食をとってください ●午前の部● 13:00-17:30 受講生発表

◇発表16~18 (13:00~14:00)

****<休憩10分>*****

◇発表19~21 (14:10~15:10)

****<休憩10分>*****

◇発表21~24 (15:20~16:20)

****<休憩10分>*****

◇発表25~27 (16:30~17:30) 17:40~ 諸連絡

受講生は「発表審査シート」記入 宿泊所に移動 *宿泊所にて各自夕食をとってください(夕食18:00~18:45)

2日目 Ⅱ部 19:00-21:00 於:旅館つたや

19:00-21:00 受講生交流会

◇大島まり先生グループ ◇橋詰匠先生グループ ◇渡辺正夫先生グループ 21:00~ 自由時間

3日目 8月18日(水) 10:00-12:00 於:東京大学 福武ホール

9:00~ 開場

10:00-12:00 閉会式 ◇表彰状授与と受賞者コメント

◇参加者感想・コメント(参加者・実施機関)

◇講評 伊藤卓 未来の科学者養成講座推進委員会委員長

◇閉会挨拶

◇アンケート記入・諸連絡

※国際科学オリンピックシンポジウム参加予定者は、13:00までに安田講堂に移動してください

4

1日目

発表テーマ一覧

●1日目●

発表 区分 テーマ 講座大学 氏 名 頁

1 研究 環境によって魚の再生速度がどう変化するのか? 北海道大学 二本柳 礼美 8p

2 研究 ナノ粒子を作る・見る・実感する

-SiGe と ZnO- 東 北 大 学

日 置 友 智

四ノ宮 誠也

渡 邊 葵

10p

3 研究 虫こぶの研究

~大きな力を導く小さな共生関係~ 筑 波 大 学 ジポーリン 周樞 12p

4 研究 水滴の飛散についての研究 千 葉 大 学 相 澤 紗 絵 14p

5 研究 Viscosity of Enteral Nutrient and Effect of Enzymes for Stomach Emptying 慶應義塾大学 Jinki Hadano 16p

6 研究 森林は地球温暖化の抑制源となれるか

~冷温帯広葉樹林における炭素プール調査からの考察~早稲田大学

池田 智代子

星 野 萌 絵 18p

7 研究 PLLA/PVAcポリマーブレンドの薄膜AFM観察 東 京 大 学 葛 貫 森 信 20p

7

発表 1 研究 北海道大学

環境によって魚の再生速度がどう変化するのか?

二本柳 礼美 (北海道函館中部高等学校 2年)

担当教員 都木 靖彰

〈研究の背景〉 魚の再生速度の変化を調べるために私はウロコを使うことにしま

した。ウロコは魚の体を守る器官なので魚同士でケンカをしたり,岩

にぶつかったりすると抜けます。そしてウロコは抜けると再生します。

ウロコが抜けるということは知っていましたが再生することには驚

きました。そこで,私は「環境によってウロコの再生速度がどう変化する

のか」調べることにしました。

〈研究の目的〉 環境の中でも私は「温度」に目をつけました。水温によ

って体のつくりや色の違い,生きている魚も違うので「温

度」がとても再生に関係してくるのではないかと思ったか

らです。そこで「水温はウロコの再生にどのような影響をあたえるだろうか?」ということを目

的としました。

〈研究の方法〉 まず実験に使うためのキンギョを 8 匹ずつ 3 群に分け,水槽の温度を 15℃(津軽海峡の春と秋

の水温),23℃(津軽海峡の夏の水温),30℃(沖縄の真夏の海よりも高い水温)に調節しました。そ

して「キンギョの体重・体長」「ウロコの大きさ(面積)」「ウロコの重さ(乾重量)」「ウロコの硬さ(Ca含量)」を測定し,再生速度の変化を複数の視点から調べることにしました。これは私達人間の成

長も身長や体重のように複数の視点から測った方がより正確に判定できるからです。 ※ここで,Ca を測る理由はウロコが硬ければ Ca 含量は多くウロコが柔らかければ Ca 含量は少

ないからです。 ■「キンギョの体重・体長」

体重と体長を測定した後,15℃,23℃,30℃で 2 週間飼育し,再び体重と体長を測定し,2週間で体重・体長がどれだけ成長したかを調べました。

■「ウロコの再生率(普通のウロコと2週間後に再生したウロコを比べました)」 ・ ウロコの面積・・・ウロコをアルコールにつけて固定し,顕微鏡を使いスケッチしました。

そしてプラニメーターを使い面積を測定しました。 ・ ウロコの乾重量・・・ウロコを 60℃で 1 日乾燥させ,乾重量を測定しました。 ・ ウロコの Ca 含量・・・ウロコを硝酸に溶かして,Ca の量によって色が変わるクロロフォ

スフォナゾ溶液と反応させました。色の違いを吸光度計で測定し,Ca 含量を調べました。 ☆大変だったこと☆ Ca 含量を測定する時がとても大変でした。少ない量をピペットで何度も測

りとるため最初はうまくできませんでした。そのために何度もピペットの練習や使う溶液の量を

変えたりしました。また,ウロコの面積を測定するのが多かったのですが楽しくできました。

普通のウロコ 再生したウロコ

キンギョ

8

発表 1 研究 北海道大学

〈研究の結果〉 「キンギョの体重・体長」は温度の低い 15℃よりも温度の高い 30℃の方が成長することがわ

かりました。「ウロコの大きさ(面積)」「ウロコの重さ(乾重量)」「ウロコの硬さ(Ca 含量)」の結果

なのですが,15℃ではウロコの再生がほとんどおこらず,再生したウロコを採取できませんでし

た。しかし 23℃と 30℃を比べると全て 30℃の方が速く再生することがわかりました。また,温

度により一番影響を受けるものは Ca 含量でした。

〈考察〉 私は実験をする前は 23℃でいちばん成長や再生が速いと考えていました。しかし実験では温度

の高い 30℃のほうが成長や再生が速いという結果がでました。仮説とは違う結果となってしまい

ましたが,なぜこうなったんだろう?と考えられる結果となり勉強になりました。 もしこの続きをするとしたら,キンギョではない他の魚ではどのようにウロコが再生したり,

成長するのか実験をしてみたいです。

<講座担当教員のコメント>

授業終了後,午後 5 時過ぎに研究室に来て,8 時過ぎまで,頑張って実験をおこないました。

その頑張りを高く評価したいと思います。キンギョが成長できる 15℃で再生が極めて遅いことは,

われわれ指導側の予想にも反した結果でした。専門的に見ても実験として成立する精度の計画と

結果ですので,「北海道大学水産科学研究彙報」への掲載を考えております。

体長・体重の成長率(最初の体長・体重:100%)

温度が高いほうが体の成長が速い

最初の体長・体重からどれだけ成長したか

体長

30℃と23℃の再生率の比(30℃の再生率:100%)

硬さの再生は温度による影響を一番受ける

30

と比べた時の23

のウロコの再生率

温度が高いほうがウロコの面積は回復

ウロコの面積の再生率(もとのウロコの面積:100%)

×

もとのウロコの面積と比べてどれだけ再生したか

15℃ではウロコの再生は

ほとんどおこらない

9

発表2 研究 東北大学

ナノ粒子を作る・見る・実感する -SiGe と ZnO-

日置 友智 (宮城県仙台第二高等学校 2年) 四ノ宮 誠也(岩手県立水沢高等学校 2年) 渡邊 葵(福島県立福島高等学校 2年)

担当教員:東北大学大学院理学研究科地学専攻助教 木村 勇気

◇ 研究の背景

ナノ粒子とは数えられる数の原子からなる粒子と定義されており,そのスケールは 1-100 nm

である。このナノ粒子は一般的な固体の結晶(以降,バルク)とは大きく異なった特性を持ち,

その例として,表面積が大きいために反応性が高いこと,融点が低いこと,吸光スペクトルに違

いが出ること,異なる種類の元素からなるナノ粒子と常温の環境下で自発的に固溶体を作ること

などがあげられる。

[SiGe] 異なる原子からなるナノ粒子の室温付近における自発的な固溶体生成は,イオン結合性,

金属結合性の物質では確認されているが,半導体などに使われる共有結合性の物質ではこれまで

確認されていない。

[ZnO] ZnO 粒子は化粧品に使用されているが、尖った形状のため、肌への刺激が問題となってお

り、SiO2 コーティングによる滑らかな形状への加工がなされている。多くのナノ粒子がランダム

に接合成長した形状をしているのに対して,ZnO粒子は非常に整ったテトラポッド型をしている。

なぜそのような成長をするのか、また,その ZnO 粒子に SiO2をコーティングすることで,針状部

の成長は抑えられて正四面体構造に変化するのはなぜか,その機構を明らかにする。

◇ 研究の目的

本研究では SiGe と ZnO のナノ粒子の生成と観察を行った。 [SiGe] 共有結合性の Si と Ge の二種類の原子からなるナノ粒子が,自発的に室温で固溶体を形

成するのか確かめる。 [ZnO] 特異的な成長をする ZnO 粒子の成長した結晶面,成長の様子などから,ZnO 粒子のナノ

領域特有の結晶成長を調べる。

◇ 研究の方法

[SiGe] Ar ガス中でシリコンを加熱蒸発してナノ粒子を

生成した後に装置を真空にしてゲルマニウム薄膜を蒸着

した。 [ZnO] 確実な ZnO 粒子の生成のため酸素に対して Znが過剰にならないように,Zn の蒸気圧を抑えために 800 900℃になるように電流を加えて加熱した。 Zn は融点が低いため,Si のみを加熱して輻射熱で蒸発さ

せた。 [観察方法:共通] 生成したナノ粒子の観察は走査型電子顕微鏡(以降 SEM)と透過型電子顕微鏡

(以降 TEM)で行い,SEM 像,TEM 像から生成した粒子の外形を観察した。また,ナノ粒子の結

晶構造を調べる方法として,物質に電子線をあて干渉パターンを観察することでその物質の結晶

構造を確かめる電子回折法と,高分解能の TEM 像を用いた。

10

発表2 研究 東北大学

◇ 研究の結果

[SiGe] シリコンを蒸発させる際、アルゴンガ

スを入れ(1.33×103パスカルにし)、ゲルマニ

ウムを蒸発させる際はガスを抜いた。この条件

のもとで行った実験では、シリコンとゲルマニ

ウムの固容体を生成することはできず、測定の

結果、それぞれの酸化物ができていることがわ

かった。

[ZnO] ZnO 粒子の結晶がテトラポッド形であ

ることが確認出来た。このとき、結晶の針状部

の成長方向が既定観念と異なっていた。また

SiO2を ZnO にコーティングする事で結晶の突起 が失われた。

◇ 考察

[SiGe] 今回の実験では Si と Ge による自発的な固溶体生成を確認することはできなかった。解

析結果として,電子回折法により GeO2が,高分解能 TEM 像から WO3の生成が確認された。反応

環境に酸素が入らないことから,これらの物質は実験後に空気中の酸素と生成したナノ粒子が反

応して生成したものと考えられる。また,WO3は Si 粉末をのせていたボートの W がナノ粒子と

なって酸化されたものであるため,目的反応物質以外の物質がナノ粒子とならないよう,ボート

に加える適切な電流を調べる必要があると考えられる。

[ZnO] ZnO の結晶は真ん中が厚くなっていたので真ん中から伸びていくのではないかと推察し

た。ZnOを SiO2でコーティングすると結晶の突起が失われたのは成長が止まったためだと考えた。

その理由については、今後の課題である。

◇ 主要参考文献

[1] C. Kaito, K. Kamitsuji, S. Tanaka, O. Kido, M. Kurumada, T. Sato, Y. Kimura, H. Suzuki, Y. Saito (2004) Direct observation of alteration of mixed film of Ge and SiO, Thin Solid Films [ 2 ] N. HASHIMOTO, T. HASHIMOTO, H. NASU and K. KAMIYA (2005) Improved Cycle Performance of Optical Sensor Based on Localized Surface Plasmon Resonance of Silver Particles Due to Silica Overcoating 三重県科学技術振興センター工業研究部研究報告. <講座担当教員のコメント>

ナノ粒子に特徴的に現れる現象に興味を持ち、これまで明らかになっていないテーマに取り組

んだ。限られた時間で問題の解決には至らなかったが、考察の後に次の実験方針まで提案してお

り、今後が楽しみである。

図:ZnO 粒子(左)と SiO2 コーティングを施

した ZnO 粒子

11

発表3 研究 筑波大学

虫こぶの研究 大きな力を導く小さな共生関係

ジポーリン 周樞(横浜インターナショナルスクール 9年) 担当教員 山岡 裕一

◇研究の背景

三浦半島の先端(神奈川県三浦市)にある小網代の森に、小学二年生の頃から行き、様々な生物

や赤い沼の観察をしてきた。この森は、面積約 70 ha の小さな森で、その真ん中には「鈴の川

(浦の川ともいう)」という全長 1.2km の川が流れ、谷を作っている。源流から河口まで流れを

さえぎる人工物がなく海まで流れている。この森の植物

に、エゴノネコアシフシをはじめ、たくさんの虫こぶが

できているのを見つけた。先生から虫こぶは様々な植物

と虫が共生をしたものだと聞いた。虫こぶとは、昆虫が

植物に卵を産みつけ、幼虫が植物内で育つために、植物

の組織を変形させた物。そんな不思議な現象に興味を持

ち始めた。

◇研究の目的

1. 小網代の森にどういう種類の虫こぶが、どの流域(上流、中流、下流)に、どれくらいいるかを

探り、“小網代の森、虫こぶ分布地図”を作る。

2. その中から、イノコズチ(ヒユ科で、低地の日陰に生息する多年草)の節に紡錘形 準球形のこ

ぶを作る、イノコズチクキマルズイフシ(形成者がイノコズチウロコタマバエ)を選び、こぶの発

達と虫の成長の関係、植物と虫の相互関係を探る。

◇研究の方法

1. 小網代の森で、2009 年 7 月 4 日に調査を行った。三つの地域(上流、中流と下流域)の中で、

虫こぶとホストの数を調べた。観察ルートの両側2m 以内の個体のみを記録した。できかけの半

端なゴールが発生するという問題点があったので、形成者の孵化が成功したこぶの個体のみ数え

た。また、各地域の平均気温も記録した。

2. ①野外での継続観察:森で決まったイノ

コズチを一本、定期観察を行った。 ②こ

ぶの解剖観察:虫こぶ内での季節的な変化

を見るため、定期的な解剖観察を行った。

③菌類の分離観察:こぶ内で見つかった菌

がどのような種で、どのような役目が有る

のか、こぶのあらゆる組織と幼虫から、ど

のような菌が出るか培養し、分離した菌の種類を調べてみた。

12

発表3 研究 筑波大学

◇研究の結果 1. 合計9種の虫こぶが見つかった。シロダモハコブフシは森全体的で多く見られ、上流域ほど

多かった。ニッケイハミャクイボフシも上流、中流域で多かった。下流域で多かったのはイノコ

ズチクキマルズイフシであった。上流域は日陰、中流域は湿地帯で、下流域は日向で海付近。気

温は下流に行くにつれて上昇する傾向にあった。 2. ①野外での継続観察と、②こぶの解剖観察結果より、時間とともにこぶは徐々に組織が増えて

大きくなった。9月に直径 0.5cm の 11 個の虫こぶのうち、11 月までに直径 1cm まで成長したの

は5個のみで、中には黄色い幼虫がいた。冬の間のこぶは枯れても固いままで、腐らなかった。

幼虫は黄色から薄い黄色になった。そして、幼虫が作った空洞には菌が生えていた。幼虫も菌で

被われていて、幼虫の体内には白い固まりが多数見えた。幼虫と組織が接触し、虫の皮が破れな

いととれないくらい接着していた。植物が無いと幼虫は死んでしまった。逆に虫が死んでも植物

は枯れなかった。 4月下旬頃に蛹になった。残念ながら、羽化は確認できていない。 ③菌類の

分離観察:合計7種のカビが分離できた。こぶの表面組織からは Phoma 属菌と Acremonium 属菌、

空洞組織からは Plectosphaerella 属菌と Arthrinium 属菌、こぶ内組織からは Alternaria 属菌と

Fusarium 属菌、幼虫からは Penicillium 属菌が分離できた。 ◇考察 1.ニッケイハミャクイボフシとシロダモハコブフシは他の種と比べ、一つの葉にたくさんの卵

を密集して産み、ホストは大きな木になる物である。だから全体的に、ホスト一個体あたりの虫

こぶ数で比べても、多いと思われる。イノコズチクキマルズイフシが下流域でホスト数と比べて

も多いのは、高温を好むからであり、他の二種は、気温が低く、潮風があたらない上流域を好む

のではないかと推測した。つまり、高温を好む虫こぶと好まないのもいるのではないか。気温の

はかり方にもっと工夫が必要かもしれない。 2.観察結果から虫は植物(虫こぶ)内のカビに支えられていると思われる。幼虫は体内の菌を

こぶ内で繁殖させ、それを餌にしているのではないか。幼虫はそのカビで冬越しをするためにこ

ぶの細胞を腐らないようにしているのではないか。幼虫から繁殖したカビはペニシリウムの作用

で、細胞を腐らせる菌を処分し、最初にできた傷もカビが消毒をしているのかもしれない。 しかし、様々な種類の菌が分離されたものの、どの菌がどのような役割をしているかは分からなか

った。 今後は、こぶの形成要因などを探るため、 形成者の親の段階から厳密にこぶ形成の流れを調

べる必要がある。分離した菌をホストに接種してみるなどして、菌とこぶの関係や菌と虫の関係

を明らかにする様々な実験をすることが必要である。 ◇主要参考文献 -書名: 虫こぶハンドブック 著者: 薄葉重 刊行: 2003 年 6 月 20 日 出版: 文一総合出版, 東京 <講座担当教員のコメント>

森に色々な虫こぶがいたということだけでなく、それぞれの虫こぶが森の中にどのようなパタ

ーンで分布し、その要因が何か探ろうとした点がすばらしい。イノコズチクキマルズイフシの生

活環に関してはすでに報告があるが、虫の孔道内に菌類が生息していて、それを利用している可

能性があるという報告はまだ無い。タマバエ類と菌類の共生関係については研究が始まったばか

りで、国内では現在名古屋大学の大学院生が研究テーマとしており、2010 年5月に開催された

日本菌学会の大会で近縁のタマバエ類と菌類との関係について発表があったばかりである。今回

の発見は新規性が高く、また今後の発展が期待される。

13

発表4 研究 千葉大学

水滴の飛散についての研究

相澤 紗絵(千葉県立柏の葉高等学校 情報理数科 3年)

(現 東京理科大学 理学部第二部 物理学科 1年)

担当教員:千葉大学 教育学部 板倉嘉哉先生 林英子先生

1 研究の背景

かねてから雨の日の軒先や台所のシンクで水がはねているのをみて、水が衝突する床面表面が

どのような条件の時に水がはねるのかを疑問に思っていた。

2 目的

水滴を材料の異なる床面に落下させた時の飛散の様子を調べ、何が水滴の飛散に関係している

のかを解明し、将来、水のはねにくい材料を開発す

るきっかけとする。

3 実験装置および方法

滴下方法、滴下量、滴下する高さの条件を変えて

予備実験を行い、その結果から図1のような実験装

置を製作した。実験では、高さ 50cm から蛇口1滴

分(0.135ml)の水滴を静かに滴下させる。滴下面に

水滴が接触する瞬間を高速度カメラ(CASIO 社製

EX-F1)で動画撮影し、それを解析した。

滴下面には、アルミニウム板、鉄板、タイル(凹

凸あり)、緩衝材(ポリウレタン)、ガラス、テフロ

ンシートの6種類の材料を使用した。また、上記の

材料に撥水剤(NTT AT 社製 HIREC 1450)を塗布し

た実験も行った。

また、滴下面の撥水性の指標である接触角の測定はθ/2法という方法を用いた。

4 結果および考察

(1)各材料における接触角の測定結果

滴下面に何も加工をせず、接触角を測定した。その結果を表1に示す。一般に接触角が 90°以

上だと撥水性が高く、未満だと親水性が高いとされてい

る。

この接触角測定より、撥水性の材料は緩衝材とテフロン

シートで、親水性の材料はアルミニウム板、鉄板、タイ

ル、清浄なガラスであることがわかる。

(2)材料の違いによる飛散の変化

動画を再生したところ、すべての動画で2滴目の水滴

が確認された。肉眼では1滴しか滴下されていないよう

に見えたが、動画を撮影したところ、水滴が蛇口から離

れる瞬間に水滴が2 3つに分離したようであった。 2

滴目の水滴は1滴目と比較してとても小さいものであっ

た。まず滴下面の撥水性の度合いと水滴の飛散との関係

をみるため、1滴目に着目して実験を行った。

高速度カメラで撮影した動画を画像処理ソフト(ディ

テクト社製 Dipp-Macro)を使用し、飛散の様子を軌跡で追ったところ、3つのパターンに分類で

きることがわかった。

① 水滴が滴下面に接触し、一部が飛散し残りは水滴が滴下面に接触した中心部に残るもの(飛

散タイプ) ② 水滴は滴下面に吸い付くように広がり、飛散はほとんどないもの(非飛散タイプ)

③ 飛散タイプと非飛散タイプの中間の動きをするもの(混合タイプ)

14

発表4 研究 千葉大学

飛散タイプと非飛散タイプの水滴の飛散の軌跡を図2、図3に示す。

飛散タイプに属するものは、撥水性が高く、接触角が

120°以上のものであった。非飛散タイプに属するものは、

親水性が高く、接触角が 80°以下のものであった。混合タ

イプに属するものは飛散タイプと非飛散タイプの中間であ

る接触角 80°~120°のものであった。

このことから、滴下面表面の撥水性が飛散に影響を与えて

いると考えられる。またタイルは、接触角では非飛散タイプ

だが実際には混合タイプであった。

タイルでこのような現象が起こる原因は表面に凹凸が有る

ことが考えられる。したがって、滴下面表面の凹凸が飛散に

影響を与えていると考えるのが妥当であろう。

(3)表面の凹凸の有無による飛散の比較

接触角をほぼ同じにし、表面の凹凸に焦点をあてて実験をするため、撥水スプレーを用いて実

験を行った。上記の材料のうち、テフロンシートを除く5種に撥水スプレーを吹き付けたところ、

すべての材料について 145° 150°程度となり、どれも同

程度の撥水性を示した。

実験を行ったところどの材料も飛散の仕方が強くなり、

飛散タイプの特徴を示した。タイルでは図4のように、滴

下された水滴が滴下面に接触した瞬間にすべてが飛散し、

中心には残らなかった。このことからタイルの凹凸が水滴

の飛散に影響を与え、他の材料とは異なった飛散の様子になったと考える。

(4)2滴目の水滴についての考察

動画撮影によって確認された2滴目の水滴は1滴目が滴下面に残留していた場合に新たな飛散

を生む。落下する位置に水があるかどうかに強く依存し、滴下面の撥水性の高さには依存しない

ことがわかった。撥水剤を塗布したタイルに限り、1滴目が滴下面に接触した瞬間にすべて飛散

してしまうため、2滴目も1滴目と同じような飛散を示した。

5 結論と今後の課題

今回の研究で、滴下面の撥水性と表面の凹凸が飛散にかかわっていることがわかった。また、

水滴の飛散は連続して落下してくる2滴目以降の水滴による影響があることもわかった。

より水のはねにくい材料という観点について考えると、乾いた表面については親水性の高い材

料がよいということがいえる。しかしながら連続して落下する水滴の場合には、水滴同士による

飛散が新たに生まれる。次にポイントとなるのは、連続して落下してくる水滴による飛散と、撥

水剤を塗布したタイルにおける1滴目の飛散のどちらが強く飛散しているかという点である。撥

水剤を塗布したタイルでは1滴目が滴下面に接触した瞬間にすべて飛散してしまうため、2滴目

も同じように乾いた表面に衝突することになるからだ。

また、今回はタイルの凹凸の粗さについては触れることができなかった。表面に凹凸があるか

ないかで大きく飛散の具合がかわったという結果が出せたため、表面の凹凸の粗さによる影響も

大きく関わってくると考える。

今後は、連続して落下する水滴による飛散と、表面の凹凸の粗さの違いによる飛散について解

明していきたい。

<講座担当教員のコメント>

自ら着想及び立案し、ここまでの解析を推進した発想力、持続力、論理性いずれをとっても素

晴らしいものがある。千葉県高等学校課題研究発表会において 122 題の研究発表の中で最優秀賞

を受賞したことも一つの到達点として喜ばしい限りである。

15

発表5 研究 慶應義塾大学

Viscosity of Enteral Nutrient and Effect of Enzymes for Stomach Emptying

Jinki Hadano Gifu prefectural Kamo high school

Background Facing an aging society, the cases where people have trouble having oral intakes has

increased. Though PEG is used as a way to intake nutrition, patients’ lying position and the decline of the function of the digestive tract cause the reflux of nutrients (picture). This may result in esophageal reflux and Reflux aspiration pneumonia and has been a problem of not only in the field of medicine but also of welfare. Aim The aim of this study is to discover the way to control the viscosity (for prevention of the reflux by increasing it), and, by thinking the opposite, to choose an external digestive enzymes which increases the efficiency of digestion. Methods We used nutrients of Elental (component aliment, AJINOMOTO) and RACOL (half-digested nutrient, Otsuka Pharmaceutical Co.). To increase the viscosity, we used sticky food disintegrated, centrifuged at 3000rpm, and pectin, that is a polysaccharide. The enzymes (Calf, Kid goat, Kid lamb stomach enzyme extracts, New Zealand) were inserted in mice’s stomach (6weeks, male) and evaluated by measuring the weight of stomachs and their contents after a while. Results To increase the viscosity of enteral nutrient, naturally extracted substances were not valuable enough to do so. By using pectin, large amount of it was needed to have an increase of viscosity. The experiment of using enzymes however, showed an ability of increased efficiency in stomach emptying with 2 out of 3 enzymes we evaluated. Discussion This study suggests that external digestive enzymes could be useful for esophageal reflux events. I am looking forward to a further study to consider a toxicity of enzymes, for instance, by having a long-term administration. References Karie J, Suzuki Y, Akatsu H, Kuzuya M, Iguchi A: Prevention of late complications by half-solid enteral nutrients in percutaneous endoscopic gastrostomy tube feeding. Gerontology 50(6), 417-9, 2004.

16

発表5 研究 慶應義塾大学

経管栄養剤の粘度調整と胃排出に及ぼす酵素の影響

羽田野 仁喜(岐阜県立加茂高等学校)

◇研究の背景(きっかけ) 高齢化に伴って、経口的に栄養を摂取することが困難な症例が増加した。そのような症例への適

用として胃婁等が採用されるが、姿勢や消化管

の衰えの問題から、経管栄養剤が逆流して(右

写真)、逆流性食道炎、更には逆流性誤嚥肺炎に

進展する場合もあり、医療分野だけでなく、福

祉分野としても問題となっている。 ◇研究の目的 本研究では、経管栄養剤の粘度を調整する方法

(本研究の場合には粘度の増加による食道への

逆流防止)の開発と、その逆の発想で早期に胃

での消化を促すための外来性消化酵素の選択について、研究を行った。 ◇研究の方法 経管栄養剤としては成分栄養剤・エレンタール(味の素)および半消化体経腸栄養剤・ラコール

(大塚製薬)を使用した。栄養剤粘度の増加の目的のために“粘り気”を有する食品を破砕粉砕

し、3000rpm で遠心分離したものおよび複合多糖であるペクチンを用いた。また、消化酵素(ニ

ュージーランド調製仔牛、仔山羊、羊の胃酵素精製物)に関して、ラコールと共にマウス(6 週

齢・♂)に胃内投与し、規定時間後の胃および胃内容物重量を測定し、消化促進性を評価した。 ◇研究の結果 経管栄養剤の粘度を増加させるためには、天然物由来抽出物では無理であることが明らかとなっ

た。また、粘度増加物質として有名なペクチンも十分な粘度増加をみるためには、大きな添加量

が必要であることが明らかとなった。一方で、今回評価した 3 種類の動物由来消化酵素のうち 2種類は経管栄養剤の胃から腸への排出を促進することが明らかとなった。 ◇考察 逆流性食道炎に関して消化を促す外来性酵素が有効である可能性が示唆された。今後、長期投与

による毒性等を評価して、更に研究を進めたい。 ◇主要参考文献 Karie J, Suzuki Y, Akatsu H, Kuzuya M, Iguchi A: Prevention of late complications by half-solid enteral nutrients in percutaneous endoscopic gastrostomy tube feeding. Gerontology 50(6), 417-9, 2004. <講座担当教員のコメント> 当初の研究はうまく進展しなかったが、逆の発想から次の展開を、探り結果を出したのは素晴ら

しいと思います。粘り強く、真摯な研究態度は高校生のものと思えぬほどでした。

17

発表6 研究 早稲田大学

森林は地球温暖化の抑制源となれるか

~冷温帯広葉樹林における炭素プール調査からの考察~

池田 智代子(早稲田実業学校高等部 3年) 星野 萌絵(早稲田実業学校高等部 3年)

担当教員 早稲田大学教育学部 小泉博

私達は、タイトルからも分かるように“森林”に焦点をあてて、この森林におけるCO2削減の

役割について研究しています。現在、世界規模の課題として地球温暖化が注目されています。

その原因の4分の3がCO2と言われているのです。

大気中のCO2の増加が原因であるならば、

その解決のため最初に思い浮かぶのは、やはり、大

気へのCO2の排出量の削減だと思います。例えば、

エコカーやエコ家電を利用する等が挙げられます。

しかしそれとは別に、大気中のCO2量を削減でき

ないか、と考えたとき、光合成(図1)

という、植物の特性を生かした方法が考えられます。

“CO2”を考える上では“C(炭素)”がどれ程大気や土壌中、ま

た動植物に含まれていて、どのような循環が自然界でなされているの

かが重要な鍵となります(図2)。この炭素循環の変化を知るためには、

Cプール(炭素が蓄積されている場所)、Cフラックス(Cのプール間を

移動する速度)そして炭素循環に係わる環境要因の3つを調べなけれ

ばなりません。今回は、3つの内、Cプールについてのみを発表しよ

うと思います。このCプールには主に樹木・土壌の2つが挙げられ、

樹木の方の調査を昨年(2009 年)の夏、早稲田大学軽井沢セミナーハウ

スの冷温帯落葉広葉樹林において行いました。

まず一定の区画(コドラート)を設けて調査を始めました(図3)。

一口にコドラートを設ける、と言っても何の印もない林の中で図3

のような正方形の枠を作る作業は、障害も多く大変でした。しかし、

数学的に図形として考え紐を張ることで作り上げました。そしてコ

ドラート内の一本一本の樹木の樹種・胸高直径(DBH)の測定(毎

木調査)を行い、太さから乾燥重量を求め、その重量の 45%が炭素

として、炭素がどの程度その森林の樹木に蓄積されているかを求め

ました。コドラート内には 15種 234 本の樹木が存在し、そのうち

ヤマウルシが 94 本で一番多く、コナラが 63本で二番目に多いこと

がわかりました(図4)。しかし、炭素量で見ると、ヤマウルシが 0.12 トン、コナラが 4.91 トン

で、コナラが非常に多くの炭素を蓄えていることがわかりました(図5)。これは、コナラのDB

Hが他の樹種と比べて太いことが原因と考えられます。このように、これまでの調査では樹木に

蓄えられている炭素の量が明らかになりました。

図1:植物の光合成

図2:炭素循環の様子

図3:コドラートの設置

18

発表6 研究 早稲田大学

しかし、炭素循環を調べるためには、森林の樹木に含まれる炭素の量だけでは不十分なのです。

そこで、今年の 7 月 29 日~31 日に再度コドラート内の毎木調査を行い、一年で森林の蓄える炭

素量はどの程度なのか、また土壌にはどの位の炭素が含まれているのかを測定し、それらについ

ても話をします。最終的にこの森林の炭素循環、そしてCO2削減の役割について考えていこうと

思っています。私達の発表を楽しみにお待ちください♪

<主要参考文献>

大塚俊之・鞠子茂・小泉博 (2004) 陸上生態系における炭素循環-森林生態系の炭素収支の生態

学的な定量化手法に焦点を当てて-. 地球環境 9; 181-190.

<講座担当教員のコメント>

約一年間の活動を通して、炭素循環研究の基礎的な知識・技術の習得を行い、各々の受講生は研

究の一連のプロセス(問題提議・解析・考察)を自身の中で体系化させています。昨年度の日本生

態学会における高校生ポスター発表では内容・技術ともに高い評価を受け、今後は専門分野に通

用する本格的・発展的研究が期待されます。

図5:樹木別の炭素量

図4:コナラとヤマウルシの DBH 分布

19

発表7 研究 東京大学

PLLA/PVAcポリマーブレンドの薄膜AFM観察

葛貫 森信(神奈川県立神奈川総合産業高等学校 3年)

担当教員:福井洋平

◇ 研究の背景

現在、高分子材料に要求される物性には、耐熱性、柔軟性、耐衝撃性など様々なものがある。

それぞれのニーズに対応するため、複数種の高分子を混ぜ合わせて新しい物性を作り出す「ポリ

マーブレンド」の研究が行われている。

◇ 研究の目的

ブレンドされた材料の物性を評価するためには、ポリマーの混合状態を知ることが重要である。

そこで今回の研究では、結晶化による混合状態の変化を追うことを目的として、ブレンド薄膜の

原子間力顕微鏡(AFM)による観察を行った。

◇ 研究の方法

結晶性であるポリL乳酸(PLLA)と非晶性であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を相溶させ、

PLLAの結晶化を行った。結晶化時間を変えたサンプルを数種類用意し、AFMで観察した。

AFMから得られるデータは狭い領域(最大 20μ㎡)の中での相対的なもので、枚数不足から

統計的な精度を求めることも出来なかったため、得られた画像を最大限に解釈する必要があった。

◇ 研究の結果

PLLA結晶に関しては、単体のものと同じ構造の結晶の画像が得られた。

サンプル表面の高低差から、結晶化によるPLLAの移動が確認された。

◇ 考察

結晶構造に変化が見られなかったことから、PVAcとの共結晶(複数種の物質からなる結晶)

はできないことがわかる。また、PLLAが結晶に引き込まれていることから、ブレンド中の結

晶化していない部分における高分子の濃度変化が予測される。

結晶化に伴う相分離やPVAcの移動をはっきりと捕らえた画像は得られなかった。

今回の研究では時間が限られていたためあまり多くのAFM像は撮れなかったが、一枚一枚の

画像の細部を撮り直した画像や、結晶の変化を定点観測で追いかけた画像などが撮れたらより多

くのことが言えたと思う。また、このブレンドでは通常よりも大きなPLLAの結晶が容易に得

られることもわかったので、今後も研究を続けられるとしたら、本研究のテーマからは少し離れ

てしまうが、PLLAの結晶構造についてこのブレンドを使った基礎研究も行いたい。

◇ 主要参考文献

ポリマーアロイ 井上 隆/市原 祥次 著 共立出版

論文 General crystallization behavior of poly(L-lactic acid) B.Kalb/A.J.Pennings 著

<講座担当教員のコメント>

葛貫君は本実験において大学レベルの高分子化学のテーマに取り組み、PLLAの結晶成長につい

て既知の研究結果をもとに考察を深めることができました。

20

・・・・・・・・・・・・・・・・・M E M O・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

21

・・・・・・・・・・・・・・・・・M E M O・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

22

2日目

発表テーマ一覧

●2日目午前●

発表 区分 テーマ 講座大学 氏 名 頁

8 研究 塗布と熱分解を用いた

チタン金属板上への白金微粒子の高分散担持 埼 玉 大 学 安 井 拓 未 26p

9 研究 組織培養法によるイチョウ

(Ginkgo biloba L.)精子誘導の研究 福 井 大 学

高 木 里 菜

竹 原 朋 子28p

10 研究 宇宙線の寿命測定 京 都 大 学 北 出 智 巳 30p

11 学習 A ROAD TO QUANTUM MECHANICS 岡 山 大 学Shinya Kobayashi

Kei Taguchi32p

12 学習 「生体分子って何?」

- 生体分子を視てみよう!パソコンで触ってみよう! -愛 媛 大 学

青 木 美 佑

羽 藤 真 鈴36p

13 研究 その眼は何を見つめるのか

‐昆虫に見えて,私たちに見えないもの‐ 九 州 大 学 柿添 翔太郎 38p

14 研究 自作天体望遠鏡を用いた天体観測の試み 北海道大学 松 岡 亮 40p

15 研究 がんは遺伝子の病気である 東 北 大 学渡 辺 晶 子小樋山 青蓮早 坂 榛 名

42p

●2日目午後●

発表 区分 テーマ 講座大学 氏 名 頁

16 研究 過去と未来をつなぐ骨 ~野生動物の頭骨比較~ 筑 波 大 学 青 木 至 人 44p

17 研究 食物の食べ合わせと消化 千 葉 大 学 芦 田 美 稀 46p

18 研究 rDNA 塩基配列によるキノコの種決定 埼 玉 大 学 大野 ひかり 48p

19 学習 潮汐力と太陽系天体のその影響 早稲田大学伊 東 雅 史

多 胡 洸 佑50p

20 研究 ELCAS 化学分野の総括 京 都 大 学 富 澤 良 亮 52p

21 研究 管内の音速 岡 山 大 学鈴 木 智 博

藤 田 悠 平54p

22 学習 光で見る生体分子

~自作分光器の作製と植物色素による光の吸収の観察~愛 媛 大 学

大澤 奈都美

長 井 綾 菜

宮 内 春 菜

56p

23 研究 ユークリッド空間におけるm-距離集合 九 州 大 学 佐 藤 孝 洋 58p

24 研究 カシオペア座の3星の分光観測 京 都 大 学 和 田 一 真 60p

25 研究 The Effect of Xanthine Oxidase Inhibitor on Ultraviolet-Induced Oxidative Stress 慶應義塾大学 Toko Kikuchi 62p

26 研究 土壌動物相の植生による違い 筑 波 大 学 矢 野 更 紗 64p

27 研究 Simple, Cheap and Out of Control:

A Robot Walking the Same as Human 東 京 大 学 宇 山 慧 佑 66p

25

発表8 研究 埼玉大学

-30

-20

-10

0

10

20

30

-0.5 0 0.5 1 1.5

電流

( m

A )

電位 ( V vs. Ag/AgCl )

Qc

Qa

QORR

酸素発生

水素発生

図1 1 mol/L H2SO4溶液中でのPt/Ti電極のCV曲線

塗布と熱分解を用いたチタン金属板上への白金微粒子の高分散担持

安井 拓未(埼玉県立大宮高等学校 2年)

担当教員:小林 秀彦(埼玉大学大学院理工学研究科)

◇ 研究の背景

白金電極を用いた水の電気分解の実験で、電極の表面からそれぞれ気泡が発生した。これらの

電極による酸化あるいは還元の反応は、電極と溶液の境界面でのみ起こっていることがわかった。

高価な白金電極の使用される部分は表面だけであり、白金 Pt を用いた触媒も同様にその表面だけ

が反応に関与している。

そこで、白金微粒子が調製できれば、その表面積が大きくなり白金の有効利用と使用量の削減

が期待できると考えた。特に、工業のような大規模に白金を使用する電極材料や触媒の分野では

重要な課題である。

◇ 研究の目的

白金微粒子の簡便な調製法として、電極材料への適用を考慮し、塩化白金酸 H2PtCl6の溶液をチ

タン金属板上へ塗布した後に,加熱して熱分解する方法を用いた。この方法でチタン Tiの表面に

白金微粒子を化学的に付着(担持)させた Pt/Ti 電極を作製し、それを電極として硫酸水溶液中

での酸化と還元について電気化学測定により調査し,担持させた白金微粒子の表面積を算出した。

◇ 研究の方法

チタン金属板(10×10mm)を 6 %フッ酸水溶液に浸し、ついで水洗後(1+1)熱濃硫酸水溶液に浸し

て、表面清浄化(エッチング)処理した。白金を塗布する溶液は、H2PtCl6・6H2O をブタノールに溶

かした溶液(Pt重量濃度 50 g/L)を用いた。この溶液をチタン金属板上にマイクロピペットを用

いて 4μL塗布した。この操作に 1~8μLの塗布溶液を用いたところ、塗布量が少ないとチタン金

属板上に均一に拡がらず、塗布量が多いとチタン金属板の裏側に回り込んでしまうため、塗布量

を 4μL とした。

その後、大気雰囲気下の電気炉内において 150、200、250 および 300℃で 10 分間の熱分解操作

を Pt 担持量に応じて n 回繰り返し、最後に 300℃で 10 分間熱分解することで Pt/Ti 電極を作製

した。この熱分解操作では、塗布したチタン金属板が電気炉内で傾くと熱分解生成物である白金

粒子が不均一に担持される(目視で確認できた)ので、耐

火物ブロックを用いてチタン金属板が水平になるように

工夫した。ブタノール溶液中に溶解させたH2PtCl6は 250℃

以上の熱分解で Pt を生成することが知られているので、

熱分解温度の範囲を決める際の参考にした。

作製した Pt/Ti 電極上に担持された白金微粒子の電気

化学的な表面積の測定にはサイクリックボルタンメトリ

ー(CV)法を用いた。1.0 mol/L H2SO4(25℃)溶液中で対

電極にPt網状電極、参照電極にAg/AgCl電極(+0.197 V vs.

RHE)を用いて Pt/Ti 電極のサイクリックボルタモグラム

(CV曲線)を作成した(図 1)。

26

発表8 研究 埼玉大学

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0 20 40 60 80 100

QORR ( mC )

Qa

( m

C )

図2 白金表面積におけるQaとQORRとの関係

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

100 150 200 250 300 350

熱分解温度 ( ℃ )

Pt表

面積

(

cm

2 )

0.5mg

1.0mg

図3 塗布後の熱分解温度と白金表面積の関係

一般的には、担持された白金微粒子の表面積は、次の 2つの方法により算出されている。(1) CV

曲線中の酸化側に現れる Pt 表面からの水素脱離による電流の電気量(Qa)と Pt 電極の定数 210

μC/cm2の関係から求める。(2) CV 曲線中の還元側

に現れる Pt-O の還元電気量(QORR)と Pt 電極の定

数 420μC/cm2 の関係を用いて求める。作製した

Pt/Ti 電極上に担持された白金微粒子の表面積をこ

の 2 つの方法で算出した。

◇ 研究の結果

図 2に 1.0 mol/L H2SO4溶液中で得られた Pt/Ti

電極のCV曲線から算出したQaとQORRの関係を示す。

Qaと QORRに比例関係が見られ、直線の傾きからQORR=2

Qaであることがわかった。この関係は、報告されて

いる Pt の有効表面積の算出根拠である Qa =210μ

C/cm2と QORR=420μC/cm2との関係とも一致した。

次に、作製した Pt/Ti 電極上の白金微粒子を担持

させるために、塗布後に熱分解する温度はどのくら

いが最適かを検討した。塗布溶液の熱分解挙動を熱

重量示差熱分析(TG-DTA)により調べた。その結果、

塗布したブタノール溶液中のH2PtCl6は200℃までに

PtCl2となり 250℃以上で金属の Ptとなることがわ

かった。図 3 には、塗布後の熱分解温度に対する担

持された Pt の表面積を示す。塗布後の熱分解温度は

250℃まで白金の表面積を大きくするのに効果的で

あったが、熱分解温度を 300℃にすると、白金の表

面積は小さくなってしまった。これは、塗布後の熱

分解で生成する白金粒子が微細であるため、お互い

の粒子どうしでの凝集が強く起こるためであると考

えている。

◇ 考 察

塩化白金酸溶液の塗布と熱分解の組合せを用いて、チタン金属上に白金微粒子を担持させた

Pt/Ti 電極が作製でき、担持させた白金微粒子の硫酸水溶液中での CV測定により白金微粒子の表

面積も算出できた。現在は、塗布後の熱分解操作を 2 段階(200℃と 300℃)で実施することを検

討している。また、作製した Pt/Ti 電極表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する予定である。

<講座担当教員のコメント>

・評価できる点: 実験が上手であり、知的好奇心が旺盛である。

・専門領域における達成水準: 電極材料の分野において評価できる成果がでている。

27

発表9 研究 福井大学

組織培養法によるイチョウ(Ginkgo biloba L.)精子誘導の研究

高木 里菜(福井県立藤島高等学校 2年)・竹原 朋子(福井県立藤島高等学校 2年)

担当教員:前田桝夫(福井大学教育地域科学部教授・生命科学複合研究教育センター副センター長)

◇研究の背景(きっかけ)

イチョウが精子で受精することを発見した平瀬作五郎は福井市出身、福井県立藤島高等学校

の大先輩であった。この研究は植物学上の大発見と言われている。藤島高校は先輩の業績に学

ぶと言うことで担当教員の指導を受け、大学の研究室にも来てイチョウの研究をおこない日本

学生科学賞を受賞した。本研究は未来の科学者養成講座のラボ1インテンシブコースの研究課

題として藤島高校生以外の高校生とともに、意見交換、協力のもと取り組まれたものである。

高校生物ではシダ植物は胞子からの精子で受精し、裸子植物は花粉で受粉・受精すると習うが、

裸子植物であるイチョウが、なぜシダ植物と同じように精子により受精するのか、植物の生殖

進化まで視点を広げて研究を進めたものである。 ◇研究の目的

精母細胞から分裂、成熟精子への精子形成過程の時間が極めて短いため成熟精子の観察は大

変困難である。そこで、今期は「①成熟精子を多数観察する方法の確立と成熟精子の生理学的、

形態学的な研究のための単離法の確立について」、「②4月採取し保存花粉から直接的に精子を

誘導する試み」の 2 つの目的を設定し研究を行う。 ◇研究の方法

精子の観察法の確立 自然界でのイチョウの精子は同一固体雌株では一斉に成熟し、極めて短時間しか存在しな

いため、基準樹を設定し、分裂前の精母細胞や未熟精子を取り出して培養し、多数観察でき

る工夫をし研究を行う(8、9月)。 花粉の無菌培養

1.福井大学構内のイチョウ(雄株)から 4 月下旬に花粉を採取し、冷蔵庫にて保存 2.雌株珠心内の花粉の成熟度合いを定期的に観察(4月から8月) 3.0.3M ショ糖液を主成分とする培地にて花粉を無菌培養(9月から12月) 観察は、ハンギングドロップ方を用いて行う。

28

発表9 研究 福井大学

◇研究の結果

1.成熟精子の観察 従来は珠心着床花粉が未発達のために成熟精子が観察されない場合は、サンプルは廃棄

し、次のサンプルの観察を行っていた。ハンギングドロップ法により未発達な花粉は継続

して培養されて発生分化し、成熟精子の観察が可能となる結果を得た。

花粉管中の 2 個の精子 花粉管から遊離した精子 ハンギングドロップ法により多数の精子の観察例を得ることができ、花粉管から遊離し

た精子を観察することができた。遊離した成熟精子の寿命は約15時間であった。 2.花粉の培養

花粉の無菌培養は、4月に珠孔から珠心着床した花粉のような、花粉管を成長し精母細

胞などの発生分化を誘導する結果を得られなかった。 ◇考察

1.今回の結果から、今後精子を単離し生理学的研究や微細な構造について、シダ植物の精

子と比較形態学的な研究の展開が可能となった。 2.無菌培養による花粉発芽とその成長分化は、珠孔内での花粉分化形態と異なるため、精

子誘導にいたらなかった。今後、さらに培養条件を検討し継続して実験を行う。 ◇主要参考文献

平瀬作五郎 いてふノ精虫ニ就テ 植物學雑誌 10,325-328(1896) 西川誠著 『たねの生い立ち』 岩波科学の本 1972 年 堀 輝三 イチョウの精子-その観察法- 遺伝 50,21-26(1996) 堀 輝三 平瀬作五郎のイチョウ精子発見から百年 ミクロスコピア 13、4-10(1996)

<講座担当教員のコメント>

本研究は藤島高校が第49回日本学生科学賞(内閣総理大臣賞)を受賞したものを継続発展

させた研究成果である。今日の最先端の生命科学の手段や機器を使った研究ではないが、その

成果は植物学の新しい知見に大きく貢献ができるものである。

29

発表10 研究 京都大学

宇宙線の寿命測定

北出 智巳(京都市立堀川高等学校 3年)

1.はじめに 超新星爆発や、太陽表面の爆発によって地球に降り注ぐ、高エネルギーの粒子を、一次宇宙線

と呼ぶ。一次宇宙線は、約 90%が陽子、約 8%がα線であるが、空気中の窒素や酸素原子核と核

反応し、ミューオン粒子などとなって地表にやってくる。その量は、1 秒間に 200 回以上、人体

を突き抜けるほどだ。宇宙線の研究によって、原子核や素粒子の性質が次々と明らかにされ、宇

宙物理学や素粒子の研究に大きな発展がもたらされた。宇宙線の寿命は、単に素粒子の性質を説

明するだけでなく、相対性理論をも実感させてくれる。 2.目的 宇宙線の寿命は、弱い相互作用の理論により予測されているので、宇宙線の寿命を測定するこ

とで、この理論を検証する。 3.方法 宇宙線を検出する方法は多くあるが、観測

部分の状態別に有名なものをまとめると下

記のようになることから、シンチレーション

検出器が適していると考え、製作することに

した。 3-1)シンチレーション検出器の仕組み シンチレーション検出器は、荷電粒子が特定の物質(シンチレータ)に入射するとき、その荷

電粒子のエネルギーが吸収されて蛍光を発する現象「シンチレーション」を利用した検出器であ

る。シンチレータにはNaI(Tl)やZnS(Ag)などの無機物と、アントラセンやプラス

チックなどの有機物がある。プラスチックシンチレータは、時間分解能に優れることから、実験

の趣旨に適している。 3-2)プラスチックシンチレータの製作 プラスチックシンチレータは、レジン(モノマーの蛍光体)、触媒、溶媒(ビニルトルエンモノ

マー。触媒を溶かすために使われる)から成り立つ。 はじめに、触媒と溶媒を混ぜ、レジンを加えて放置したが一向に固まらないため、ふたを開け、

温度を高くして放置した。こぼれて広がったものは比較的早く固まったことから、底面積の小さ

い瓶に入れたことで水深が大きくなったことが、原因と思われた。 3-3)回路の考案と組み立て 板状のシンチレータとアルミニウム板を、下記の順で床と並行に置き、各シンチレータに取り

付けたフォトマルから下記のように回線をつなぎ、データをとる。(シンチレーションによる蛍光

は小さいので、フォトマルを用いて電気信号に変換し、増幅する必要がある)

気体型

比例計数管 ○

GM管 すでに製作

電離箱 ○ 電子回路が高精度

固体・液体型

半導体検出器 × Γ線用

シンチレーション検出器 ○ 今回挑戦

イメージングプレート × α、β、γ用

気体型

比例計数管 ○

GM管 すでに製作

電離箱 ○ 電子回路が高精度

固体・液体型

半導体検出器 × Γ線用

シンチレーション検出器 ○ 今回挑戦

イメージングプレート × α、β、γ用

30

発表10 研究 京都大学

《モジュール名と働き》 S1~3・・・シンチレーション1~3 D・・・ディスクリミネーター:アナログの入力を0と1の二値のデジタル信号に変換する。 C・・・コインシデンス:二つ以上の入力に信号がきたときのみに、出力から信号を出す。 OUT・・・アウトバー:on の信号が来たとき、off の信号を出力し、off の信号が来たとき on の

信号を出力する。 Al・・・アルミニウム板:ここでミューオンが崩壊する。 L・・・スタートに信号が入ってからストップに信号が入るまで on を出力し続ける。 CG・・・クロックジェネレーター:パルス信号を発生させる。 S・・・スケーラー:信号がきた数をカウントするのに用いる。 4.結果 イベント数 4989 寿命 (2.06±0.07)×10-6 s 5.考察 文献値によると、ミューオンの寿命は2.19703±0.00004[μs]である。よって実

験値は誤差の範囲で文献値と一致した。 測定値を文献値に近づけるには、標準偏差が と表せうることから、今回の百万倍という測定回数が必要となる。これを宇宙線を対象として観

測すると、非常に時間がかかるので、加速器を用いるべきだろう。宇宙線が手のひらの面積にお

いて、1秒間に1個観測されるのに対し、ミューオンビームでは、1cm2あたり、1秒間に1

0の 12 乗個もの観測が可能であるという。 6.参考文献 ・高エネルギー加速器研究機構

http://www.kek.jp/ja/project/MLF/ ・物質・生命科学実験室

http://jparc.jp/MatLife/ja/instrumentation/ms_source.html ・PHYSICS LETTERS B REVIEW OF PARTICLE PHYSICS(2004) ・飯田博美、「放射線概論」、通商産業研究社、2001 <講座担当教員のコメント>

発表する生徒は、放射性鉱物を個人で収集するなどもしており、この分野への興味関心が高い。

今回の実験は、物理学を専攻する大学 3 年生相当の高度な実験であり、このような実験を最後ま

でまとめることができ、優れている。

S1

S2

Al

S3

OUT

CCG

S

start

stop

S1

S2

Al

S3

OUT

CCG

S

S1

S2

Al

S3

OUT

CCG

S

start

stop

v

31

発表11 学習 岡山大学

A ROAD TO QUANTUM MECHANICS

Shinya KOBAYASHI 1) , Kei TAGUCHI 2), Isao HARADA 3)

1) Sakuragaoka Junior High School

2) High School attached to Hiroshima University

3) Okayama University

◇The background of our study:

When we learned the lecture of Quantum Mechanics in the course of “Kagaku-Sakidori

-Okayama (KSO)”, we were really surprised at a microscopic world where the common sense

in the classical dynamical system did not work at all. Then we were interested in studying

further Quantum Mechanics.

◇The goal of our study:

We have tried to understand quantum mechanical phenomena

based on mathematical formulae in Quantum Mechanics. It is

our goal to understand the meaning of the Schrodinger’s cat

in terms of the language of Quantum Mechanics.

◇How we have learned:

To understand Quantum Mechanics, we utilized books and internet. It is, however, very

hard for us to understand the meaning of various formulae in Quantum Mechanics. In such

a case, a proper advise given by teachers of KSO were very helpful.

◇What we have learned:

Finally, we understood a little bit of the idea of Quantum Mechanics based on mathematical

formulae. Even more, we could understand the Schrodinger’s cat model and hence could catch

a glimpse of Quantum Mechanics, if we could realize roles of a wave function.

◇Conclusion:

We are able to obtain better understanding of Quantum Mechanics by using

mathematical formulae. In future, we want to master the Schrodinger equation.

32

発表11 学習 岡山大学

◇References:

量子力学Ⅰ 原田勲・杉山忠男

納得する量子力学の疑問55 和田純夫

単位が取れる量子力学ノート 橋元純一郎

量子力学がわかる 伊東正人

ねこ耳少女の量子論 竹内薫

よくわかる量子力学 夏梅誠・二真瀬敏史

Comments:(Isao Harada)

It is hard even for a university-student to understand the idea of Quantum Mechanics.

Kobayashi and Taguchi are interested in such quantum phenomena, especially roles of the

wave-function, and have succeeded in understanding it based on the mathematical formulae,

including differential as well as integral calculi even at the lowest level. It is really

important to study interesting phenomena in nature based on the basic part of the science

in order to be a natural scientist in future.

33

発表11 学習 岡山大学

量子力学への道

A ROAD TO QUANTUM MECHANICS

小林 真也(赤磐市立桜ケ丘中学校 1年)、田口 慧(広島大学附属高等学校 1年)

原田勲(岡山大学)

◇学習の背景:

「科学先取り岡山コース」で、量子の世界についての講義を聴き、ミクロの世界では古典力学の

常識が成り立たないことに驚くとともに、大いなる興味を抱くようになった。そして、参考文献

に挙げた本などを通して、量子の世界についてさらに深く知りたいと言う衝動が起きている。

◇学習の目的:

量子の世界は、ストーリーを知っただけでは、本当に学んでい

ると実感できない。そこで、少しでも数式に基づいた量子力学

の理解を目指している。特に、シュレーディンガーの猫に興味

が湧き、自分なりの(自分のレベルでの)解釈にこぎつけるこ

とが目標である。

◇学習の方法:

参考文献に挙げた本などを読みながら、量子力学の考え方に対する理解を深めている。疑問に思

ったことは「科学先取り岡山コース」などで助言を求め、解決に努めている。数式に基づく理解

は、相当する数学のレベルを上げてゆかねばならないので大変である。

◇学習の結果:

自分なりに量子力学についての解釈を行い、日本人の外村博士が実験的検証をしたアハロノフ・

ボーム効果を、一部数式を含めて理解するに至った。また、シュレーディンガーの猫についても、

自分なりに解釈をすることができた。これらから、量子力学における波動関数の重要な役割を垣

間見た。

◇考察

数式を通し、量子力学を学ぶことによって、量子力学の理解がより深まった。今後は、シュレー

ディンガー方程式などを自由自在に使いこなせるようになりたい。

34

発表11 学習 岡山大学

◇主要参考文献

量子力学Ⅰ 原田勲・杉山忠男

納得する量子力学の疑問55 和田純夫

単位が取れる量子力学ノート 橋元純一郎

量子力学がわかる 伊東正人

ねこ耳少女の量子論 竹内薫

図解雑学 よくわかる量子力学 夏梅誠・二真瀬敏史

<講座担当教員のコメント>

量子力学は大学生でもその考えについてゆけない場合が多い。発表者は共に、量子現象、波動関

数の役割に興味を持ち、しかも単に現象の面白さだけでなく数学的基礎から学ぼうと、微分、積

分の領域まで踏み込んでいる。このように、基礎から学ぼうとする取り組み姿勢は、これから研

究者を目指すうえでとても大切なことで、彼らの今後の成長を心から期待している。

35

発表12 学習 愛媛大学

「生体分子って何?」

- 生体分子を視てみよう!パソコンで触ってみよう! -

青木 美佑(愛媛県立松山西中等教育学校 5年)、

羽藤 真鈴(愛媛県立松山西中等教育学校 5年)

担当教員 古賀 理和、林 秀則

◇学習の背景

サイエンスキャンプでオワンクラゲの持つ緑色蛍光タンパク質(GFP)について学習し、興味を持った。そ

してタンパク質とは何か?緑に光るのはなぜか?疑問に思った。

◇学習の目的

アミノ酸とタンパク質を分子模型および分子グラフィックスソフトで作製し、タンパク質の立体構造や部分

構造を学ぶ。

◇学習の方法

①アミノ酸の分子模型作製、②ペプチドの分子模型作製、③DS Visualizer の使い方、④ポリペプチドの

作図、⑤トリペプチド SYG の作図

◇学習の結果・考察

① アミノ酸の分子模型作製

②ペプチドの分子模型作製

ジペプチド:L-アラニン-L-アラニン

アミノ酸の一つ。L-アラニンの分子模型。中央

の炭素にカルボキシル基にとアミノ基およびメ

チル基と水素が一つづつくっついたもの。

ペプチド結合

L-アラニンと L-アラニンのアミノ酸 2 個がペプチド

結合で繋がったジペプチドの分子模型。

さらに結合するアミノ酸の数によって以下のように

呼ばれる。 トリペプチド:

アミノ酸 3 個がペプチド結合で繋がったもの オリゴペプチド:

数個のアミノ酸がペプチド結合で繋がったもの ポリペプチド:

多数のアミノ酸がペプチド結合で繋がったもの

L-アラニン

アミノ基

カルボキシル基

メチル基

36

発表12 学習 愛媛大学

④ポリペプチドの作図

ポリペプチドを分子模型で作るには、パーツが足りなかったのと複雑だったので、分子グラ

フィックスソフト DS Visualizer を使用して作図した。

⑤GFP のトリペプチド SYG の作図

◇感想

生体分子は複雑で仕組みを理解するのが難しかった。オワンクラゲの細胞の中でこんなにも

複雑な化学変化が起こっていることに驚いた。DS Visualizer は英語のソフトで操作が難しかっ

た。もっとこの分野に関して理解を深めたいと思う。

◇主要参考文献

分子レベルで見た体のはたらき

<講座担当教員のコメント>

分子グラフィックスソフトは大学教養課程あるいは専門初歩で使用するものであるが、練習す

れば高校生でも作図ができるようになる。タンパク質という複雑な分子を分子模型やグラフフィ

ックスを用いることによって視覚的に理解する一歩になったと思います。

L-チロシン

L-フェニルアラニン

L-グルタミン

L-セリンL-バリン

グリシン

6 個のアミノ酸がペプチド結合によ

って繋がったポリペプチド。

GFP の中にある L-フェニルアラニン

-L-セリン-L-チロシン-グリシン-L-グ

ルタミン-L-バリンの部分。

分子量が大きく複雑。

GFP は 239 個のアミノ酸でできている。そのうち 65 番目のセリン、66 番目のチロシン、67 番

目のグリシンのペプチド結合が化学変化して特別な構造になっていて、この部分が紫外光や青色

の光を吸収して緑色の蛍光を出すと考えられている。このトリペプチドの部分の構造を分子グラ

フィックスソフト DS Visualizer を使用して作図した。

L-チロシン L-セリン グリシン

L-セリン

L-チロシン

ペプチド結合が

閉環してできた

特殊な構造 ペプチド結合

グリシン

GFP のトリペプチド SYG

37

発表13 研究 九州大学

図 1 偏光板を用いた太陽の測位

(破線矢印の延長線上に太陽がある.)

その眼は何を見つめるのか

‐昆虫に見えて,私たちに見えないもの‐

柿添 翔太郎(長崎県立猶興館高等学校 3年)

担当教員 藤 義博(九州大学名誉教授)

1.研究の背景

2009 年度九州大学エクセレント・スチュー

デント・イン・サイエンス育成プログラム生物

学では,半年間かけ 4 つの生物学に関するセミ

ナーを受けた.本研究はその中で発表者柿添が

特に興味を持った,藤義博名誉教授の行った昆

虫の光受容に関するセミナーの内容をまとめ,

調べる形で進めた.

2.研究の目的

現在,昆虫綱に属する生物種(以下昆虫とす

る.)は 80 万種を超え,記載されている生物種

の半数以上を占める.結果として,地球の,特

に地上において「種の多様性としての成功者」

となった昆虫は,その生存戦略にも長い歴史の

試行錯誤が生んだ特異なものが数多くみられ

る.その一つが,ミツバチの 8 の字ダンスであ

る.

カール・フォン・フリッシュ(Karl von

Frisch)がノーベル生理学・医学賞と受賞した

理由で知られるこのミツバチの特異な行動は,

ミツバチの植物との相互的な共存,ミツバチの

僅か 1μLほどの脳が持つ情報処理能力,個体

間のコミュニケーション能力の例として大変

興味深い.

しかしながら,いかにして,そのコミュニケ

ーションが行われていくのかを正確に理解し

ている人は少ない.高等学校の生物Ⅱの教科書

にも僅か 1 ページ弱で参考として紹介されて

いるに過ぎない.

そこで,本研究では,このミツバチの行動様

式の理解とその行動で重要な意味を持つ「偏

光」と昆虫の関係性についての考察,また実際

に大学に通うことにより,研究者を志す者とし

ての,研究の目指すものの理解を目的とした.

3.研究の方法

本研究では,前述の通り,主にセミナーでの

講義を通じて,内容の理解を行った.また,実

際に,九州大学内に設置されているミツバチの

巣の観察も行った.

また,昆虫の眼の構造についても学び,実際

の標本を,走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微

鏡を用いて観察した.

関連して,ミツバチなどが認識できる偏光に

ついて,実際に野外での実験を行い,どのよう

に認識されるのか,偏光板を用いて体験した

(図 1).

4.研究の結果

昆虫の眼に関する藤名誉教授による一連の

セミナーが11月~12月に行われたこともあり,

晩秋ということもあってか気温が低く,あまり

ミツバチは活発ではなかった.しかしながら,

ある程度の時間観察することにより,一瞬では

あるが,8の字ダンスらしきダンスの観察に成

功した.また,実際の観察では確認できなかっ

たものの,フリッシュの発見した,8の字ダン

スの解読については,理解することができた.

38

発表13 研究 九州大学

また,8の字ダンスのみならず,昆虫をはじめ

とする生物の視覚受容とくに偏光認識につい

ての理解を深め,それを踏まえた上での 8の字

ダンスへの理解を深めることができた.

5.考察

今回の研究対象であるミツバチを始め,サバ

クアリなど,偏光を用いた測位システムを行う

昆虫に関しては,その複眼上部に存在する,光

受容細胞上の光受容体(ロドプシン)

の配列が,偏光認識に,極めて重要な役割を果

たすことが分かった(図 2).

また,コガネムシ科の一部では,左円偏光板を

通してみると色彩が極端に暗化するものがい

ることが分かった.

6.最後に

本研究は高校で言う生物の分野の知識のみ

ならず,物理の知識も必要とする内容であった.

本プログラムを通じて,これからの研究では,

いかに多角的に物事を見ることができるかが

重要であると学んだ.学び,研究することに対

して,いかに貪欲に,粘り強くできるかによっ

て,そのまま自分に結果として返ってくるもの

が変わってくるのであろう.

これから大学へと進学し,実際に本格的な研

究へと着手するにあたって,今回学んだ,研究

意欲や探求心,また,その継続力を絶やすこと

なく,これからの研究活動へと生かしていきた

い.大学へ進学することがゴールなのではなく,

そこがスタート地点であることを自覚して,研

究と向き合っていきたいと思う.

主要参考文献

赤嶺真由美, 2009. オオセンチコガネの地理

的色彩変異の総合的研究. コガネムシ研究会

第9回例会講演要旨集, : 5-8.

塩川光一郎ほか,2007.改訂版 高等学校 生

物Ⅱ. 数研出版

水波誠, 2006. 昆虫―驚異の微小脳. 中公新

<講座担当教員のコメント>

複数の昆虫関係の学会に入会しているアマチ

ア昆虫家ですが、生物学全般に高校生以上の知

識と理解力を有しています。古典的動物行動学

や分類学など、基礎的生物学を志向しており、

未来の研究者として期待が大です。

図 2 脊椎動物と昆虫の光受容細胞モデル図

39

発表14 研究 北海道大学

自作天体望遠鏡を用いた天体観測の試み

松岡 亮(旭川西高校 2年) 担当教員:渡部 重十

◇研究の背景(きっかけ)

当初は実際の観測を企画したが、北海道は冬期から春先にかけての気候が安定せず、限られた

研究期間では十分なデータを得られない恐れがあったため、天候に左右されないテーマとして天

体望遠鏡の製作を選んだ。

実験の困難な天文学において、天体望遠鏡は地球に居ながらにして理論の裏付けを得ることの

できる唯一ともいえる実験器具であり、その構造や性質について知ることはこの分野における基

礎事項である。

◇研究の目的

天体望遠鏡の仕組み・光学系の基礎を学び、自作した望遠鏡を用いて観測を行う

◇研究の方法

天体望遠鏡にはレンズのみを用いた屈折式、鏡のみを用いた反射式、両方を組み合わせたカタ

ディオプトリック式があるが、比較的安価に大きな口径を実現できる反射式望遠鏡の自作を試み

た。

○ガラスの研磨(直径 10cn のガラス平面を放物面にする)

天体から発せられる平行光線を鏡で反射し、ある一点で焦点を結ぶためには鏡面を放物面にし

なければならない。まず粗い研磨剤で大きく鏡を凹ませ、段階的に粒径の小さい研磨剤に変えて

形を整える。この工程は合計 20 時間程度を要した。粒径の小さい研磨剤で研磨し始めてから大き

なキズが出来たときにはまた前の段階の研磨に戻らなければならず、忍耐の要る作業であった。

○メッキ作業(真空蒸着)

金属を真空中で蒸発させて鏡面に付着させる。蒸着する金属は可視光全域及びその付近の波長

帯の吸収率が低く反射率の高いアルミニウムとした。真空中でタングステン線に電気を流し発熱

させ、その周りに巻き付けたアルミニウム線を蒸発させる。タングステン線とアルミニウム線の

接点を多くしなければアルミニウムが蒸発する箇所と融け残る箇所が出来てしまうので、それを

避ける為に細いタングステン線とアルミニウム線を太いタングステン線に巻き付けた。また、タ

ングステンの発熱量を上げる為には抵抗値を高くすれば良いのでコイル状にしてなるべくタング

ステン線を長くした。

○鏡面精度チェック

自作の反射鏡をレールに固定し望遠鏡を作成する。対象物を上下左右から観測し鏡のゆがみを

チェックする。(本要旨作成時には未だ行っていない)

40

発表14 研究 北海道大学

◇研究の結果

反射鏡の製作途中で行った大まかなテストではきれいに観測対象を反射し1点に焦点を結んで

いた。しかし鏡の一部は研磨があまく、磨りガラス状になってしまった。鏡の精度チェックの結

果は発表時に追加予定。

◇考察

磨りガラス状になってしまったのは、研磨にあまり時間を割けなかったことが一つの原因だと

考えられるが、限られた時間の中ではかなり良い鏡を作成できたと思われる。

今後の展望としては、作成した鏡を用いて実際に星を観測したい。また、研磨の程度が違う鏡

を数枚用意し、星の見え方がどの程度変化するのかについても調査したい。

研究を行う為には多大な事前準備が必要であり、結果を得る前段階で大きな苦労や時間が掛か

ることを実感した。何か問題が発生するたびに試行錯誤を繰り返すことが重要であることも痛感

した。

◇主要参考文献

岡村定矩 編集、2001、「天文学への招待」、朝倉書店

えびなみつる、2002、「えびなみつるの完全図解 天体望遠鏡を作ろう」、誠文堂新光社

星野次郎、2009、「復刻 反射望遠鏡の作り方-設計・鏡面研磨・マウンチング」、恒星社厚生閣

<講座担当教員のコメント>

自ら積極的に実験を進め,目標を達成することができた.実験結果を理解するために,資料を探

し議論を深めていく姿勢は将来の科学者の片鱗を見せている.

41

発表15 研究 東北大学

がんは遺伝子の病気である

渡辺 晶子(福島県立福島高等学校 2年)

小樋山 青蓮(埼玉県立浦和第一女子高等学校 3年)

早坂 榛名(秀光中等教育学校 6年)

担当教員:堀井 明(東北大学大学院医学系研究科分子病理学分野教授)

◇研究の背景

みなさんは“がん”ときいてどういう病気が思い浮かびますか。もしかしたら、ただ“恐ろし

い病気”という漠然としたイメージではないでしょうか。そしてがんの原因もよくわからないの

に「自分はがんにはならない!」と思っていませんか。 統計資料によれば、国民の約半数の人

が、一生のどこかの時点でがんに罹ります。私たちはその事実を知り、“がん”の発生するメカニ

ズムを学ぶことによって今や国民病となった“がん”についての認識を深めたいと思いこの研究

を始めました。

◇研究の目的

膵がん細胞の遺伝子変異を目で確認し、がんが遺伝子の異常によって引き起こされる病気であ

ることを理解する。白血病・GIST・グリベック(分子標的薬)について学ぶ。

◇研究の方法

1.DNA 抽出、サンプル作り 2.PCR 法で KRAS(がん遺伝子)と p16(がん抑制遺伝子)を標的に

DNA 増複 3.電気泳動で p16 の欠失を見る。KRAS は DNA バンド回収。

4.シークェンスで KRAS の塩基配列を調べる。

◇研究の結果

①右図は KRAS 遺伝子の伝令 RNA の相補

鎖を調べた結果である。正常細胞では

C C A C C A G…

となっているのが MiaPaCa2(膵がん細

胞)では

C C A C A A G…

と図中の下向き矢印で示した塩基の変

化が分かる。

これを伝令 RNA のコドンに置き換え、ア

ミノ酸の変化を調べると、

コドンの相補鎖が ACC なので、

伝令 RNA は GGU→グリシン

コドンの相補鎖が ACA なので、伝令 RNA は UGU→システイン と変わっていた。

42

発表15 研究 東北大学

②また、p16 遺伝子では、多数のがん細胞で完全欠失が見られた(図は示していない)。

◇努力した点

今回の研究において難解な医学用語や各分析機器の仕組みはその都度調べ、なるべく自分たち

の言葉とするよう努めました。PCR などの原理を学び、必要なサンプル量などは自分たちで計算

しました。

◇考察:分子標的薬による将来のがん治療

ヒトの遺伝子にはがん遺伝子・がん抑制遺伝子という遺伝子群があり、正常な細胞では分化・

増殖・細胞死に関わっています。しかしここに[結果]のように異常が発生すると、細胞が自分勝

手に増殖を続けてしまいます。この遺伝子の異常が修正されずに増え続けることで、がんになる

のです。

分子標的薬は、この異常をおこした遺伝子のつくりだした異常な活性をもつタンパクを攻撃す

る、つまり特定の分子のみを攻撃する治療薬です。このタイプの治療薬は異常な部分に選択的に

作用するため、患者に対する身体的負担が著しく軽減されます。また、“○○がん”のAさんやB

さんの遺伝子変異を知ることができない場合、「がんは増殖の速い細胞である」という情報しかあ

りませんので、それを叩く治療しかできませんでしたが、その場合、副作用の克服も課題となり

ます。次第に一人一人異常のある部分が異なることが分かるようになりました。同じ“○○がん”

の患者に対して一様な治療しかできなかった時代は終わり、これからはそれぞれの変異に合わせ

て治療薬を選び治療する、オーダーメイド医療が主流になるでしょう。

◇感想

今回の研究を通して“がん”という病気に対しての考え方が変わりました。現代人はこれから

もがんと闘っていかなければならないことは確かです。だから楽観的に考えることはできません。

しかし、がんに対してはすでに様々な方向から治療の道が拓かれているのですから、そう悲観的

に見る必要もないと思います。まずはがんに対して正しい見識を持つことで、がんという病気と

の上手な付き合い方を考えていくことが大切だと思います。

◇主要参考文献

国立がんセンターホームページ

「ニューステージ生物図表」浜川書店

独立行政法人情報通信研究機構ホームページ

玉川大学ホームページ

Support unit for bio-material analysis (SUBA)資料

<講座担当教員のコメント>

3名の高校生達は、これまでにも、とてもユニークな視点で自然現象を見ていましたが、今回

の実習でも、scientific に極めて優れた視点で様々な現象を見ていました。自らの知識を駆使し

て考えた上での質問も多く、将来、どの方向に進んでも大いに期待できる高校生諸君であったと

思います。私も、高校生諸君を指導することをとても楽しむことができました。

43

発表16 研究 筑波大学

「過去と未来をつなぐ骨 ~野生動物の頭骨比較~」

青木 至人(長野県東御市立北御牧小学校 6年)

担当教員 土岐田 昌和

◇研究の背景 2006年4月、一頭のキツネの骨(脚の骨に小石が食い込んでいた)と出会い、

骨から、動物の特徴、個体ごとの生きていた時の姿を読み取ることができることに感動し、骨の

研究をはじめた。そこで、事故など何らかの理由で死んでいた動物を集め、5年間で、17種の

動物の骨格標本を作製し、研究を続けている。多くの標本を作るうち、動物は共通の骨を持つが、

動物によって形や大きさが違うということに気づき、中でも、餌を捕り、食べ、身を守る、動物

に欠かせない能力の特徴は、眼、歯、顎などに現れるのではないかと考え、まず、頭の骨に注目

して比較してみようと思った。

◇目 的 野生哺乳類の骨格標本を作製し、頭骨(頭蓋骨+下顎骨)の計測に

挑戦し、観察、比較して、表にまとめ、動物ごとの特徴とくらしの関係を考え

る。

◇材 料 長野県東御市周辺で、暮らしていた野生動物の死体。

小学校の通学路等で見つけ、拾ってきた事故または病死体、キツネ、タヌキ、

ハクビシン、ウサギ、リス、テン、アナグマ。猟師さんからいただいたニホンジカ(幼体)。

◇方 法

(1) 分離骨格標本作製・・・死体入手から、主に、次の2つの方法で、骨格標本作りをした。

① 半年から 1 年、土、砂に埋めたり、水につけたりしたものから骨を拾い出して洗い、タン

パク質分解酵素の入った水に 1 ヶ月以上つけ、再び水洗いした後、過酸化水素水につけて漂白

した。全くわからない状態から、埋める期間、水や薬品に漬けるやり方も試行錯誤しながらの

作製だった。異臭を放ち、ウジだらけの中からやっと掘り出して、きれいにした骨が、水につ

けて置いたら、真っ黒な標本になってしまうなど、数々の失敗をしながら、挑戦を続けた。

② その後、皮をはいで、解体し、部位ごとネットに入れて、炭酸水素ナトリウム入りの鍋で

煮た後、骨を拾い出し水洗いし、過酸化水素水につけて漂白する方法ができるようになった。

(2) 頭蓋骨測定・・・「A GUIDE TO THE MEASURMENT OF ANIMAL BONES FROM ARCHAEOLOGICAL SITES」

(ANGELA VON DEN DRIESCH 著 HARVARD UNIVERSITY PEABODY MUSEUM)を元に、ノギスで、1個体、

約 40箇所の測定を行い、一覧表にし、特徴を比較した。テキストの日本語訳がなく、専門用語

が多かったので、苦労したが、全国のさまざまな標本と共通のデータを残せるよう努めた。

(3) 頭骨の比較・・・形態を比較しやすいように、頭

蓋外側、背側、腹側、下顎背側の写真を並べ、形を比

較し、特徴を観察した。(右 図)

◇結 果

(1) 歯の形や下顎には、何をどのように食べて暮らし

ているか特徴が出ていた。

(2) 眼は、獲物を追うものと追われるもの、夜行性か

どうかなどで眼の大きさや位置に特徴があった。

(3) 矢状稜や縫合線など、頭骨の突起やつなぎ目など

からも雌雄、年齢などさまざまな情報が読み取れた。

(4) アナグマは調査した 30 個体に縫合線が見られな

かった。

外側 背側 腹側 下顎背側

キツネ

タヌキ

テン

アナグマ

ハクビシン

ウサギ

リス

ニホンジカ

44

発表16 研究 筑波大学

◇考 察

哺乳類の頭骨に見られる特徴は、餌をより捕りやすく、より食べやすく、よ

り身を守りやすく生き抜いた結果、進化した姿だと思う。結果から、特徴を読

み解き、比較すると、普段は、なかなか姿を見せない動物達の、暮らしている

ときの姿が生き生きと見えてきた。 さらに、23個もの骨のつながりででき

ている頭蓋骨は、つなぎ目である縫合線から、年齢や頭の骨のどの部分がより

発達してきたかを見ることができた。今回、縫合線を確認できなかったアナグ

マは、何らかの理由で成長期のかなり早い段階で縫合線の癒合が始まるなど、

別の特徴があるのではないかと思う。動物の現在の骨の形は、それぞれを進化

の途中と考えることができ、大昔の動物の姿も、化石となった骨から知ること

ができる。骨を研究し、生物が、過去からどんな風に環境に適応しながら進化

してきたかを知ることは、地球環境の変化の中で、生物の暮らしや姿の未来を考える鍵になると

思った。

今後は、さまざまな動物の標本作りを続けながら、動物の全身の計測、データ作りと比較を進

めたい。

また、現在、害獣駆除された動物を、昨年末から5月31日現在までで、

ニホンジカ(66個体)、イノシシ(37個体)、ツキノワグマ(4個体)

分、頭骨を集めて標本作りを進めている。来年以降、今後は、特に、ニホ

ンジカの年齢と頭骨の成長関係、縫合線の特徴などを中心に研究し、駆除

され処分される動物たちの記録を残していきたい。

小学校2年生から始めたぼくの骨の研究では、標本作り以外にも、ぼくが疑問に思ったり、興

味を持ったことを中心に、足跡フンなどの調査、地域の動物マップ作り、解剖、計測、記録、化

石発掘、博物館での調査、動物園での実習などに取り組んだ。さまざまな方面で多くの方々から、

ご指導や励ましをいただくことができたおかげで、現在まで研究を続けることができた。そうし

た出会いは、ぼくの一番の財産になっている。標本作りも、1年以上かかるなど、どの調査、研

究も一つ一つはすぐに結果や結論が出るものではなく、見た目もにおいもたいへんだった。しか

し、試行錯誤しながらも、あきらめないで継続し、探求する気持ちを持ち続けることの大切さを

学ぶことができた。5年間のぼくの骨の研究は、ぼくの周りで、一生懸命生きていた動物たちの

いのちの研究であり、一緒に生きることの研究だと思う。

◇主要参考文献

『骨ほねクラブ』第2版 野尻湖哺乳類グループ

『骨格標本作成法』八谷昇・大泰紀之 (北海道大学図書刊行会)

『骨単』河合良訓・原島広至(NTS)

『A GUIDE TO THE MEASUREMENT OF ANIMAL BONES FROM ARCHAEOLOGICAL SITES』

ANGELA VON DEN DRIESCH 著 (PEABODY MUSEUM BULLETINS/HARVARD UNIVERSITY)

◇お世話になった方々

田辺智隆さん、近藤洋一さん、間島信男さん、加藤禎夫さん、杉田正男さん、高栞祐司さん、安

井謙介さん、遠藤秀紀さん、福江佑子さん、福島淳さん、原島広至さん、岡田和訓さん。

研究を進める上で以上の方々にはたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

<講座担当教員のコメント>

青木至人君の研究は小学生のものとして、一般的水準をはるかに凌駕している。研究対象に対す

る愛情の気持ちに終始せず、実際に自分で行動をおこし、失敗をくり返しながらもくじけること

なく、自分自身の手で成果を上げている点はふつうの小学生にはとうてい真似することのできな

いものと思われる。また、長期間にわたり高いレベルで研究を継続できる点も未来の研究者とな

りうる資質を感じさせる。

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発表17 研究 千葉大学

食物の食べ合わせと消化

芦田 美稀(千葉県立柏の葉高等学校 情報理数科 3年)

(現:東京理科大学 1年)

担当教員:千葉大学 教育学部 野村純先生

1 研究の背景

未来の科学者養成講座のプログラムの「消化酵素の働き -デンプンの酵素分解-」を通して、消

化酵素について興味をもった。そして、食事の際に肉料理や魚料理につけあわせとして様々な野菜・果

物が添えられていることに注目した。この俗にいう食べ合わせは、調査したところ果物や野菜中に含ま

れているタンパク質分解酵素により消化促進作用があるということがわかった。そこで付け合わせとし

て出される野菜や果物中のタンパク質分解酵素がタンパク質の消化にどれだけ関わっているかを知りた

いと考えた。

2 研究の目的

食べ合わせがどれだけタンパク質の消化に関わっているかを調査するため、肉や魚料理に付け合わ

せとして出される果物や野菜に含まれるタンパク分解酵素活性を調べることとした。

3 研究の方法

研究は3段階に分けて行った。

(1)酸とアルカリに対するタンパク質の反応を調べる実験

酸(HCl:塩酸)とアルカリ(NaOH:水酸化ナトリウム)の溶液中に等量の豚肉(非加熱処理)を入れて

静置した。10分間隔で撹拌し、変化を観察した。

(2)食物に含まれるタンパク質分解酵素の働きの強さを調べる実験

タンパク質を含め食品(白米、魚肉ソーセージ、ハム、豚肉赤身、豚肉脂身)の間に野菜・果物(大根、

パイナップル、キウイフルーツ、イチジク、グレープフルーツ、キュウリ、キャベツ)をはさみ、経時

的に形態、色調などの変化を観察した。

(3)タンパク質が実際に分解されているかどうかを確認する実験

タンパク質として卵白および卵白アルブミン精製標品、I型コラーゲンを用い、パイナップル、キウイ

フルーツ、イチジク、バナナの懸濁液のタンパク分解活性をブラッドフォード法により解析した。しか

し、有意な差が得られなかったためSDS-PAGE(アクリルアミドゲルを用いた電気泳動)解析を行った。

4 研究の結果

(1)酸およびアルカリの溶液ともタンパク質部分が溶解したと考えられた。しかし、脂肪部分の溶解

は検出できなかった(図1)。

(2)検討した食品中で特にハムの形状変化が明確であ

った(図2)。変化を誘導する活性は、グレープフルーツ

<キュウリ<キャベツ<大根<パイナップル<キウイ<

イチジクの順になった。

(3)ブラッドフォード法:タンパク質濃度の値として

は下がったが、微々たるものであった。

SDS-PAGE 解析:パイナップルとキウイでアルブミン

およびコラーゲン分子のバンドの消失が認められた(図

3、図4)。

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発表17 研究 千葉大学

5 考察

(1)NaOHaq の反応→溶液の色が赤くなったことについては、タンパク質に含まれるヘム色素が NaOH

により還元されたためだと考えた。HClaq の反応→溶液の色が白く濁ったことについては、タンパク質

に含まれるヘム色素が分解されたためだと考えた。白い濁り

に関しては、ポリペプチド⇒ペプチド⇒アミノ酸の分解の途

中で見られる分解産物だと考えた。脂身に対しての反応が異

なったのは、HClは脂肪が分解され、NaOHはケン化に近い反

応が起こったのではないかと考えた。

(2)糖質、脂質で構成されているものに目立った変化がな

かったことから、実験で用いた食物に含まれる酵素は、タン

パク質に対してはたらきかけると考えられる。さらに、豚肉

脂身がやわらかくなっていたことについては、(酸、アルカリ

による)加水分解が起きていたと考えられる。それぞれの食

物の実験結果の違いについては、タンパク質分解酵素の力の

みでなくpHなどの条件も関与していると考えた。

(3)ブラッドフォード法では、変化が明確ではなかったため、

この方法は分解活性の解析に適していないと考えた。

SDS-PAGE 解析ではパイナップル、キウイで明確な分解反

応が見られ、これらの中に含まれるタンパク分解酵素が消化の

補助となる可能性が示唆された。さらにバナナでコラーゲン特

異的な分解活性を検出した。一方、パイナップルでは反応時間

が0分の設定でも分解反応が見られたので、経時的に分解の様

子を見るためには条件設定に工夫が必要と考えた。

(4) 今後の展望としては、タンパク質分解に関する十分なデ

ータを得たのち、人間の胃の中を想定(温度やpHの条件、蠕動

運動などの再現)したものを用いて、食物(野菜・果物)中に

含まれるタンパク質分解酵素が標準状態(pHの影響なし、温度

10℃~30℃ほど、静置)と違う生体内という状況下で実際にど

れだけ力を発揮してくれるのかどうかを調べ、さらに、胃液に

含まれるタンパク質分解酵素:ペプシンとの相互作用があるのかど

うか、を調べていきたいと考えている。

また、バナナの持つコラーゲン分解活性が新規な酵素によるもの

かについてさらに分離抽出し解析を進めたい。

そして、最終的には、よく世間で言われている食べ合わせ、という

ものが、本当に消化に関わっているのかどうかを調べていきたいと

考えている。

6 主要参考文献

高等学校 化学Ⅰ・化学Ⅱ 第一学習社

http://www1.ttv.ne.jp/~kiwi/actinidin-0.html『アクチニジンと

は』2009/07/02 アクセス

無敵のバイオテクニカルシリーズ タンパク質実験ノート 羊土社

バイオ実験で失敗しない! タンパク質精製と取り扱いのコツ 羊土社

<担当教員のコメント>

高校3年生であり、受験のプレッシャー、また、体調不良により入院するというアクシデントを乗り越

え、ここまで頑張った精神力を高く評価したい。また、バナナの粗抽出物中に認めたコラーゲン分解活

性は、単に食物の消化という点だけでなく美容への応用を含め興味深い結果であった。この点に関して

は今後のさらなる発展に期待が持てる。

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発表18 研究 埼玉大学

rDNA 塩基配列によるキノコの種決定

大野 ひかり(西武学園文理高等学校 1年) 担当教員:大西 純一(埼玉大学)

日頃からキノコが大好きで、見つけると写真を撮影したり採取したりしてきましたが、図鑑等

を調べても、外見だけではキノコの名前をはっきり区別できないことも多く、不満を感じていま

した。未来の科学者養成講座で、「DNA を調べて生物種を決めてみよう」というテーマを見て、

是非キノコの生物種を決めてみたいと思い応募しました。 実験方法は、以下のとおりです。 1. 採取したキノコ 8 種の小片から DNA を抽出した。キットを使って、50 l の DNA 溶液を得た。 2. PCR (polymerase chain reaction) 法により、リボソーム RNA 遺伝子大小サブユニットの間の

領域を増幅した。プライマペア1により、5 種から増幅できた。残りの 3 種については、プライ

マペア 2 を用いて増幅できた。 3. これら 8 種の PCR 産物 DNA を大腸菌内で自己増殖するベクター(DNA の運び手)に組み込

み(ライゲーション)、それぞれ大腸菌に導入した(形質転換)。 4. 処理した大腸菌を、抗生物質アンピシリンを含んだ寒天プレートにまき、一晩インキュベーシ

ョン後、形成されたコロニーを観察した。ここで増殖してきたコロニーは、上記のベクターにア

ンピシリン耐性遺伝子が入っているので、ベクターが導入されたものである。コロニーには、青

い色を示すものと、白色のものがあった。後者が目的の DNA が導入されたもののはずだ。目的

のコロニーを数個ずつ選んで、保存用プレートに植菌して冷蔵庫に保存した。 7 月 16 日現在この段階まで進んでいます。この先は、以下のようにさらに実験を進める予

定です。 5. 保存しておいたプレートのコロニーから菌を取り出し液体培養をする。この大腸菌から、キッ

トを用いて目的 DNA を含むベクターを単離して、DNA シークェンシングキットを用いて反応さ

せ、シークェンサーで塩基配列を決定する。 6. 得られた塩基配列を、インターネット上の公開遺伝子データベースと比較して、知られている

キノコ種の中から塩基配列が同じもの、似ているものを探す。同じものであれば、その試料の種

が分かる。同じものがない場合は、系統樹を作って、どのような系統のものかが推定できると期

待される。 今まではキノコのことを大まかな種しか知ることが出来ず、顔見知りなのに名前も知らない人

みたいで、写真を整理するたびにイライラしていました。まだ実験の途中ですが、実験が進む度

にどんどんキノコ達に近づいて行けている気がして、凄く楽しくてワクワクしています。実験操

作はまだまだ手際が悪いし、用語や理論も理解不足ですが、もっと頑張ってこの手法をきちんと

マスターしたいと思います。 <講座担当教員のコメント>

キノコに対する強い情熱を感じて、実験指導のしがいがある。実験の各操作の意味をよく理解し、

着実に実行してきた。

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発表19 学習 早稲田大学

潮汐力と太陽系天体のその影響

伊東 雅史(神奈川県立小田原高校 3年)、多胡 洸佑(神奈川県立厚木高校 2年) 担当教員 早稲田大学 長谷部信行、鷹野正利

◇研究の背景

昨年、私たちは未来の科学者養成講座で特殊相対性理論、天体、宇宙線、宇宙物理等について様々なことを学びました。宇宙に関連することで、潮汐力が大きな役割を果たしていることがわかりました。そこで、私たちはもう少し潮汐力について掘り下げて学習してみたいと思いました。 ◇研究の目的

潮汐力とは何か?を理解し、潮汐力が月や地球にもたらす現象について調べる。また、宇宙、特に太陽系内で潮汐力がどのように惑星系の運動にかかわっているのか調べて発表する。 ◇研究の方法 主に先生方から、外積、角運動量、円運動、万有引力、ケプラーの法則、角運動量保存則、ロッシュ限界等について学んだ。それらを用いて計算等を行う。近似計算や角運動量について、うまく利用することができず先生の指導のもとで行った。 ◇研究の結果 潮汐力と天体の質量、距離の関係。質量 M の天体Aから距離 r 離れた半径 d の天体Bに働く力を考える。 A (M) B C D r d C 点にある質量 m に働く天体Aからの万有引力 、D 点にある質量 m に働く天体Aか

らの万有引力 。このときの力の差は、 となる。

ここで r ≫ d とすると となり、潮汐力は M, m に比例し r3に反比例する。

◇考察 潮汐力により地球の海水に干満が起こり、海水と地面等との摩擦で角運動量が失われ自転が遅

くなる。失われた地球の角運動量が月に移行して、月が地球から遠ざかることがわかった。今後

は上記の通り、この力が地球や月、その他の天体にどのように影響するかを調べる予定です。 ◇主要参考文献 物理学エッセンシャル(林 浩一著) <講座担当教員のコメント>

昨年度は宇宙に関連する基礎的な物理学を中心として講義・演習・実験を行い、これまでテ

ーマを絞った取り組みは実施していません。今年度に入り潮汐力に関連するテーマを扱うことに

なりました。これまで学習してきた知識、また不足分は補足しながら、伊東君と多胡君には自主

的に取り組んで頂いています。今後が楽しみです。

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発表20 研究 京都大学

ELCAS 化学分野の総括

富澤 良亮(国立京都教育大学附属高等学校 3年)

京都大学において最先端科学の体験型学習講座(通称:ELCAS)における化学分野を H21 年

9 月 H22 年 6 月の間、原則として月二回土曜日に受講した。時間帯は 14 時から 18 時であった

が、質問があるときには時間を延長することもしばしばあった。ELCAS は科学技術振興機構の

「未来の科学者養成講座」の一環として行われているものである。ELCAS の受講により、教授、

准教授、助教、研究員、大学院生、学部学生などの先生、先輩たちからの指導と、京大理学部の

もつ施設や設備を通して、最先端の実験などを直接体験できた。

ELCAS 化学分野では各月 1 テーマずつ、1)気体分子運動論、2)赤外分光法、3)光合成の化

学的考察、4)低電子加速法(LEED)、5)有機物質による超伝導、6)非晶質 SiO2 の作成(ゾル

ーゲル法)と非晶質酸化物の作成(融液冷却法)、7)大腸菌から DNA の抽出、8)ロジウム触媒

による不斉合成、9)Organocatalytic Asymmetric Aldol Reaction、10)MD シミュレーション

の 10 テーマについて学んだ。

この中から、今回以下の4テーマについて発表したい。

・分析化学の中でも有用な赤外分光法を実際のデータや資料をもとに基本的なメカニズム

・ガラスや液晶として我々に親しみ深い非晶質 SiO2 の作成(ゾルーゲル法)と非晶質酸化物

の作成(融液冷却法)を実際のデータや資料をもとに基礎的なメカニズム

・これからの製薬において重要であろう Organocatalytic Asymmetric Aldol Reaction をもら

った資料をもとに反応のメカニズムとその利用

・パソコン産業の発展とともに成長した新しい化学の分野である MD シミュレーションを実

験、理論、シミュレーションの違いを踏まえて、MD シミュレーションの利点

加えて、残りのトピックについても時間の許す限り説明したい。

<講座担当教員のコメント>

もっとも積極的に質問をしてきた生徒です。しかもその質問も理にかなった適切なものばかりで

あり、こちらの返答もすぐに理解して、それ以上のことを自分の力で気づくことができます。

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発表21 研究 岡山大学

L

ピッチの数

管内の音速

鈴木 智博 (岡山県立倉敷古城池高等学校 3年)、

藤田 悠平(岡山県立倉敷天城高等学校 2年)

藤原孝将 藤田八洲彦 味野道信

◇研究の背景

管内では音速が変化する場合があることをインターネットで見た。しかし音の速さは温度、媒

質で決まることしか知らなかった。

なぜ、このように音速が変化するのか興味を持ったので、音速の測定方法を含めて調べてみよ

うと思った。

◇研究の目的

アルミダクト管内で音速が低下することを、今年の物理学会 Jr.セッションで発表した。その

研究では、管壁が平滑なものよりアルミダクト管・蛇腹管のように管壁が凹凸しているもので音

速が低下することは判明した。しかし、音速が低下する条件や理由については解明することはで

きなかった。そこで、音速が何に関係して低下するのかを深く調べようと思った。

私たちは、音速は管のピッチ(凹凸の間隔)に関係していると予想し、ピッチを調整しやすい

アルミダクト管を用いて研究した。

◇研究の方法

<使用機材> オシロスコープ、発振器、

コンデンサマイク、スピーカ、温度計、

アルミダクト管(外径 109.7[mm])、メジャー

<実験方法>

1. 右図のように回路を組み立てる。

2. 発振器から GATE 回路を用いて非常に短い時間だけ発振させる。

3. オシロスコープでスピーカから出てくる信号とマイク

ロフォンで検出する信号の時間差Δt をとる。

4. 管長 L(m)と時間差Δt(s)から音速を求める。

15. 管長さ L(m)を変えることでピッチを変え音

速の変化を求める。

6. 周波数(100[Hz],200[Hz],500[Hz],1000[Hz],

2000[Hz])を変えて 5 回ずつ音速の変化を求める。

◇研究の結果

アルミダクト管内と管なしの状態(Open Space)各々で周波数を変えてそれぞれ 5 回ずつ測定し

た。周波数による差は無かったので、各周波数を平均した結果を以下に示す。比較のため気温と

音速の式(v=331.5+0.6*t)から音速を求めた理論値も記載する。

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発表21 研究 岡山大学

<音速とピッチの関係>

ピッチ(m) 0.002 0.0030 0.0045 0.0059 0.0074 0.0089 0.0104 0.0200

音速(m/s) 304.6 315.4 300.1 305.2 313.7 317.9 318.7 331.3

<参考>

◇考察

この結果から、音速はピッチが小さくなると遅くなることが判明した。

5(mm)以下の時は凹凸の間隔が狭くアルミの皺と同じようになってピッチが大きい時の凹凸と同

様には取り扱うことが出来ないと思われる。周波数による差は今回の実験では見られなかった。

また、今回の実験ではピッチは調べたが、凹凸の形、アルミダクト管の口径、厚み(凹凸の深

さ)、管の形については調べていないのでそれらが管内の音速にどのような影響があるのかは分か

っていない。

今回の実験でピッチと音速が関係していることが分かったが、なぜ影響するのかは分かってい

ない。

◇主要参考文献

電波新聞社 オシロスコープ入門講座 小澤智・佐藤健治・長濱龍 著

J.W.S.Rayleigh(1896)“The Theory of Sound”VolumeⅡpp.66-68

<講座担当教員のコメント>

最初、管内の音速は管径・周波数に依存すると予想して取り組み始めたが、予想しない結果が

出たので実験条件にいろいろ苦労していた。管内の音速については色々な説明がなされているが、

今回の結果に結びつくものが見つかっていない。複数の要因によるものと思われるが、これから

実験条件をより絞り込んでいくことで解決できると期待できる。

Open Space 342.0 m/s

公式から(27.5℃) 348.0 m/s

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発表22 学習 愛媛大学

光で見る生体分子

~自作分光器の作製と植物色素による光の吸収の観察~

大澤 奈都美(済美高等学校 2年),長井 綾菜(済美高等学校 2年),

宮内 春菜(済美高等学校 2年) 担当教員 横田 俊昭,林 秀則

◆ 背景

私たちは,愛媛大学未来の科学者養成講座の学習プログラム 2 ライフサイエンスキャンプで

無細胞タンパク質合成実験を行い,緑色蛍光タンパク質(GFP)を合成し,GFP の緑色の蛍

光を観察した。GFP はなぜ緑色に見えたのか。また,生物にいろいろな色があるのはなぜだ

ろうか?そんな疑問を解決するために,この実験を行った。 ◆ 目的

ホウレンソウの葉から色素を抽出し,自作の分光器で光の吸収を観察する。また,抽出した

色素をペーパークロマトグラフィーで分離し,どのような色素が含まれているか観察する。 ◆ 実験1

目的:ホウレンソウの葉に含まれている色素のスペクトルを観察する。 方法: 〔色素の抽出〕ホウレンソウの葉に抽出溶媒(石油エーテル:メタノール=3:1)60 ml を加えてすりつぶし,色素抽出液と 10%NaCl 120 ml をよく混合した後,石油エーテル 20 mlを加え石油エーテル層を分取する。 〔分光器の作成〕CD を利用した簡易型分光器を作製する。 〔吸収スペクトルの観察〕光源(白熱電灯)と分光器の間に色素の抽出液を置き,抽出液を

置かない時のスペクトルと抽出液を置いた時のスペクトルを比較検討する。

結果:白色電球の連続スペクトルを色素抽出液に通すと,青紫色と赤色の光が吸収され,そ

の部分が暗くなる。スペクトルの色と波長の関係より,450 nm~630 nm の間が残る。

青色と赤色の光を吸収するクロロフィルと青緑の光を吸収するカロチノイドが推測さ

れる。 <抽出液を通さないとき> <白色電球の連続スペクトル>

<抽出液を通したとき> <色素抽出液を通した光のスペクトル>

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発表22 学習 愛媛大学

◆ 実験2 目的:ペーパークロマトグラフィーで植物の色素を分離し,観察する。 方法:展開ろ紙を使って色素抽出液を展開(展開溶媒ヘキサン:アセトン=15:1)させた後,

色素を展開させたろ紙から各色素を含む部分を切り出し,2 ml のアセトンで色素を抽

出する。この色素溶液の吸収スペクトルを分光光度計で 350~700 nm にて測定する。 結果:ペーパークロマトグラフィーから 4 種類の異なった色素のバンドが得られた。各色素

は,上からサンプル 1~サンプル 4 とした。以下の波長で吸収の極大が見られた。 サンプル 1(黄色):450 nm(カロテン類) サンプル 2(黄色):448 nm と 475 nm(キサントフィル類) サンプル 3(青緑):431 nm と 662 nm(クロロフィル a) サンプル 4(黄緑):459 nm と 647 nm(クロロフィル b) 抽出液そのまま:433 nm と 467 nm と 660 nm

各色素のスペクトルの吸収帯がほぼもとの抽出液のスペクトルの吸収帯と一致した。

◆ 考察 植物色素は葉緑体に存在し,光合成色素としてクロロフィルやカロチノイドがある。 光合成色素は光合成を行なう時,光エネルギーを吸収して生物が使える形のエネルギー

に変換する役割をする。 クロロフィルの吸収スペクトルは 2 つの光吸収帯を持ち,各色素はタンパク質といろ

いろに結合して異なる波長の光を吸収して光合成の反応に利用している。 カロチノイドはクロロフィルが吸収できない波長領域の光を吸収する。 クロロフィルは光化学系の反応中心及び光捕集系の光合成色素として中心的な働きを

する。 クロロフィルの生合成は,光,栄養条件,酸素分圧によって影響される。 私たちの目に植物が緑色に見えるのはクロロフィルよって吸収されない緑色の光が反

射されるためである。生物には多種多彩な色素が含まれているので,いろいろな色に見

えるのではないのだろうか。 ◆ 感想

緑色色素が一種類あるだけだと思っていたのに,4種類もあったので驚いた。 簡易分光器が CD で手軽に作れたので,身近なものを用いて実験することも大切だと思

った。 光合成に必要な光エネルギーを吸収するクロロフィルの量を管理することで,植物の発

育,生産,あるいは地球環境汚染の実態・改善をはかることができるのではないか。 <講座担当教員のコメント>

植物に含まれる色素による光の吸収を、身近にある CD ディスクとデジタルカメラを使って直感

的に観察することができました。また植物にはいろいろな色素が含まれ、それらが共同して光合

成の反応を進めていることも理解できました。

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発表23 研究 九州大学

ユークリッド空間におけるm-距離集合

佐藤 孝洋(大分県立大分舞鶴高等学校 2年) 担当教員 坂内 英一(九州大学名誉教授)

◇・研究の背景(きっかけ)

平成21年度の未来の科学者養成講座の数学を応募し、受講生となり、坂内先生より課

題として3つの未解決の問題を提示された。

◇・研究の目的

問題を解き、問題の一般化も考えること。

◇・研究の方法 コンピュータなどを使わずに計算した。そのために実際の値を出すとき計算するのに苦

労した。

◇・研究の結果 問題1 T(n)を ^(n-1)に2-距離集合として埋め込んだ時、それを含む2-距

離集合を決めよ についてはn=9のときにT(n)を含むより大きな2-距離集合が存在

することがわかった。

問題2 T(n-1)を ^(n-1)に2-距離集合として埋め込んだ時、それを含む

2-距離集合を決めよ については、条件のみをだし、計算すれば例外となるnを見つける

ことができるとこまでやり、いくつかの例をだした。

問題3 V={i,j,k}(1<i<j<k<n)を ^(n-1)に3-距離集合とし

て埋め込んだ時、それを含むを決めよ についてはn=9,n=8のときVを含むより大

きな3-距離集合ができることがわかった。

一般化に関しては、ある決った形に関して、例外となるnを出すことができた。

◇・考察

完全に一般化はできそうにないが、もともとの問題は解けたので良かったと思う。 <講座担当教員のコメント>

高次元のユークリッド空間を理解して貰うために未解決問題を課題として出した。問題及び

ヒントは、こちらで準備したが、佐藤君はその一部を自力で解決出来た。より優れた解決はポ

スドクの重住君も独立に得た。これは通常の学術論文となり得るものであり、現在、佐藤君を

含めた3名での共著論文を準備中である。

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発表24 研究 京都大学

カシオペア座の3星の分光観測

和田 一真(私立洛南高等学校 3年)

担当教諭:野上 大作

09年9月19日に、天文分野最初の活動となる天体観測を行いました。

そこで得た観測データを元に、星の発する光を解析することで星の特徴を解明する「分光」の

実習をしました。 分光とは、天文学の基礎中の基礎とも言える技術です。実際に自分たちが測定したデータを

解析することで、星を学ぶにあたっての基本技術を身に付けることができました。 私たちの目には、星の多くは白い光として観測できます。しかし、回折格子という、光を波長ごと

に分ける器機を用いると、実は様々な色の光が合わさって白に見えていることが分かるのです。 回折格子を通して得た画像データを、パソコンに取り込み、横軸を波長、縦軸をその波長の光

の強さとしてグラフを描きました。(次ページ参照) 結果、同じような光にしか見えない星でも、実は星それぞれに際立った特徴があり、それらのデ

ータから、星の形状や温度、ガスの分布などを調べることができます。 遠くにある星は、実際にはその姿をとらえることはできませんが、それらが与える唯一の情報であ

る「光」を研究することが、星について研究し、さらには宇宙の研究へとつながっていくのです。

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発表24 研究 京都大学

カシオペア座 αのスペクトル カシオペア座 δのスペクトル

今回の発表では日常生活でもなじみ深い、カシオペア座をテーマに取り上げました。

この図は http://www.gekkou.or.jp/g-3/kz-cas.html より 普段見上げる星空が、天文学とどう繋がっていったのか、その過程を発表の中で伝えられれば

幸いです。 <講座担当教員のコメント>

9名の高校生で観測も解析もその後の議論もチームワークよく行っていました。内容的には大学

院に入ってから行うようなことで、頑張ってついてきてみんなよく努力したと思います。この一年間

の経験が今後の皆さんの人生によい影響を与えることを願ってやみません。

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発表25 研究 慶應義塾大学

The Effect of Xanthine Oxidase Inhibitor on Ultraviolet-Induced Oxidative Stress

Toko Kikuchi Keio Shonan Fujisawa Sr. High School 3rd Grade

◇ Introduction and Objective It becomes necessary to elucidate the impact of ultraviolet rays on human as ozone depletion and its effect becomes one of the most pressing environmental issues, or human progress the beneficial use of outer space. It is expected to develop the detailed study on the effect of ultraviolet rays not only on skin surface but also on systemic oxidative stress.

The objective of this paper is to study the xanthine oxidoreductase (XOD) system, which play cen-tral roles in free radical production caused by ultraviolet-induced systemic oxidative stress in biological system.

◇ Materials and Methods Animal experiments were conducted on adult male Wistar rats (6 months old) that were bred for a week in order to domesticate. Rats were deprived food 12 h before the experiment starts.

Rats were divided into two groups of at least 7 rats: group A, controls (untreated); group B, rats treated with xanthine oxidase (XO) inhibitor, allopurinol. 1 mL of phosphate buffered saline was ad-ministered to rats in group A, and 10 mg/kg of allopurinol was administrated to rats in group B by do-ing intragastric injection.

Ultraviolet C was irradiated to whole body of rats for 30 min, and blood samples were obtained af-ter briefly 10 min rest and after a lapse of 1 h. Subsequently, the antioxidant capacity in the blood (BAP test) and the oxidation index of DNA, the amount of 8-OHdG were assayed.

◇ Results and Discussion The antioxidant capacity is dramatically increased by performing prior administration of allopuri-nol. There is statistically-significant different between group A and B. In contrast, there is no signifi-cant differences in the amount of 8-OHdG caused by free radicals. Although our study has shown that the antioxidant capacity in vivo has been increased by inhibiting XOD system, oxidation stress its self has not been inhibited. A wide variety of oxidative stress path-ways exist in vivo. Therefore, it is thought that inhibition of XO alone cannot reduce oxidative stress caused by free radicals.

◇ Conclusion In summary, the relevant facts reported in this paper are these: XO inhibitor, allopurinol has role in

increasing the antioxidant capacity and does not have any role in reducing the amount of 8-OHdG in vivo. It is concluded we should confirm that whether ultraviolet oxidize guanine base directly or not in further studies.

◇ Reference Jose Vi˜na, Mari-Carmen Gomez-Cabrera, Ana Lloret, Rafael Marquez, Juan B. Mi ˜nana, Federico V. Pallard ´o, and Juan Sastre: Free Radicals in Exhaustive Physical Exercise: Mechanism of Production, and Protection by Antioxidants. Life, 50: 271–277, 2000.

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発表25 研究 慶應義塾大学

紫外線惹起酸化ストレスにおける xanthine oxidase 阻害剤の効果

菊池 憧子(慶應義塾湘南藤沢高等部 3年)

◇研究の背景(きっかけ) フロンガスの放出によるオゾン層の破壊、あるいは人類の宇宙空間利用に従って、ヒトへの紫外

線の影響を明確にする必要が生じている。特に、これまで研究されてきた皮膚表面への影響だけ

でなく、紫外線によって惹起される全身性の酸化ストレスへの影響についてより詳細な研究が期

待されている。 ◇研究の目的 本研究では、紫外線によって惹起される全身性酸化ストレスの酵素的生成を、アルデヒドオキシ

ダーゼ、NADH/NADPH オキシダーゼなどと共に、中心的役割を担っている xanthine oxidaseの役割を解明することを目的とした。 ◇研究の方法 ラット(Wister,6週齢,♂)を 1 週間訓化飼育し、食べ物を影響を排除するために 12 時間前

から絶食を行った(自由飲水)。ラットを体重によって 7 匹ずつ 2 群に分け剃毛し、尾静脈より採

血を行った。その後、コントロール群は1mL の生理食塩水を、一方、薬剤群は xanthine oxidaseの特異的阻害剤である allopurinol を 10mg/kg となるように胃内投与し、紫外線(C 波)を 30 分

照射し、10 分安静の後、採血、更に 1 時間経過後に採血を行った。その後、血液中の抗酸化能(BAP値)および遺伝子グアニン塩基の活性酸素による酸化指標,8-OHdG を測定した。 ◇研究の結果 Xanthine oxidase 阻害剤である allopurinol 事前投与により、コントロール群とは異なり抗酸化

能は維持・増大され、コントロール群との間で統計的有意差が生じた。一方で、活性酸素による

生体の酸化指標 8-OHdG は両者で差は生じなかった。 ◇考察 今回の研究結果から、xanthine oxidase の抑制は生体の抗酸化能を保持する作用があることが分

かったが、酸化ストレス自体の抑制には繋がらなかった。これは多岐に存在する酸化ストレス経

路のひとつだけを抑えても十分な効果を示さないのかもしれない。また、紫外線が活性酸素を通

さず、直接的にグアニン塩基を酸化することがないのかも検証する必要がある。 ◇主要参考文献 Jose Vi˜na, Mari-Carmen Gomez-Cabrera, Ana Lloret, Rafael Marquez, Juan B. Mi ˜nana, Federico V. Pallard ´o, and Juan Sastre: Free Radicals in Exhaustive Physical Exercise: Mechanism of Production, and Protection by Antioxidants. Life, 50: 271–277, 2000. <講座担当教員のコメント>

動物実験の進め方を基礎から学び、動物飼育、動物への薬剤投与、動物からの採血、血液の処理

など時間がかかる手技を確実に身に付け、大学院生に負けないほどになりました。また、本研究

とは別に放射線に関する研究も行い、学会発表を行っています。

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発表26 研究 筑波大学

バッタ上科

ヨコバイ亜目

ササラダニ・トゲダニ・ケダニ・コナダニ亜目トビムシ 目イシムカデ科オカダンゴムシ科

フナムシ科・ワラジ ムシ科ツチカニムシ科

オビヤスデ科ハガヤスデ科

ナガズジムカデ科

サシ ガメ科カッコウムシ科幼虫ハムシ 科幼虫

タマ ヤスデ科コシビロダンゴムシ 科ナガワラジムシ科

トウヨウワラジムシ 科

草原 18目6亜目2上科54科全7,397個体

カシ林 29目5亜目3上科93科全10,982個体

アカマツ林 23目5亜目2上科63科全7,797個体

マザトウムシ科ミズアブ 科幼虫

イッスンムカデ科ツチムカデ科ババヤスデ科

シロハダヤスデ科

イシ ノミ科

土 壌 動 物 相 の 植 生 に よ る 違 い

矢野 更紗(清真学園高等学校 1年)

担当教員 町田 龍一郎、TA 神通 芳江 福井 眞生子

◇研究の背景

一昨年に行ったワラ巻きによる小動物の越冬に関する研究において土壌動物が多くみられた。

この研究を行ったことをきっかけに森林にすむ土壌動物に興味を持った。土壌動物をとりまく

様々な要素の中で植生という環境の違いに着目し、異なる遷移段階に生息する土壌動物について

調査研究を試みた。

◇研究の目的

「異なる遷移段階・季節において土壌動物の種組成や個体数がどのように異なるか」を明らかにす

ることを目的とする。1)各遷移段階のリターに生息する土壌動物を定性・定量的に調査するが、

2)各フィールドの種多様性を理解(定性的理解)するにはリターのみの調査では不十分であり、

それ以外の多様な基質(キノコや松かさ、倒木等)に生息する土壌動物もあわせて調査する。

◇研究の方法

1)調査地点として、遷移の初期段階である ①草原(茨城県水郷県民の森)、アカマツ林・コナ

ラ林・クヌギ林などからなる、遷移が一段階進んだ ②アカマツ・夏緑広葉樹林(茨城県水

郷県民の森)、カシ林・タブ林・スギ林が優先する遷移がさらに進んだ ③常緑樹林(鹿島神

宮)を選んだ。リターの調査では①~③の各遷移段階で最も典型的な状態にあると考えられ

る、草原・アカマツ林・カシ林を代表の3フィールドとして選定した。リター以外の基質調

査では草原、アカマツ林・コナラ林・クヌギ林・カシ林・タブ林・スギ林の全7フィールド

を調査地点とした。

2)リターの調査は25×25cm2、深さ10cmを採集する。サンプル数は3とした。

3)リター以外の基質調査は10m×10mの範囲を設定しその中で「異なる」と思われる基質を

すべて調べた。

4)採集の時期は夏季2009年6月~9月、秋冬2009年10月~2010年1月とした。

また、採集した土壌動物を抽出するためにツルグレンファンネル装置9台を自作した。

◇研究の結果

1)リターの調査 26,176 個体

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発表26 研究 筑波大学

(動物のフン)

オサ ムシ科

(全フィールドキノコ)双翅目 幼虫・トビムシ目

(草原キノコ/カシ朽ち木/クヌギ朽 ち木 )チビテングダニ科

(マツボックリ / スギの実)ウズカダニ科

(コナラキノコ/スギキノコ)

ベッコウマイマイ科

(マツ樹皮の下

/マツ朽ち木)

(カシ朽ち木/タブ朽ち木/スギ朽ち木)

メナシムカデ科

(タブ朽 ち木 )ミゾガシラシロアリ科

(スギ落ちた木の皮の下)

オビジムカデ科

草原 40種 常 緑樹林 /カシ林189種スギ林145種 タブ林96種

アカマツ・夏緑広葉樹林/アカマツ林144種 クヌギ林92種 コナラ林66種

(クヌギ朽ち木)メロアザミウマ科

(カシ朽 ち木)ヤリタカラダニ科

(コナラキノコ)コガネムシ科

ナガミミズ目

ヒメミミズ科ハサミムシ目

ゴ ミムシダマシ科幼虫

2)リター以外の基質の調査 772 個体

◇考 察

1)遷移の進行にともない生息する土壌動物の個体数と種多様性は共に増加する。

2)環境に関わらず、ダニとトビムシは土壌動物全体の個体数の7割~9割を占める。

3)リター以外の基質のみを棲家としている土壌動物や、越冬の手段として棲家を移動する土壌

動物がみられる。

4)草原とアカマツ・夏緑広葉樹林では枯葉(枯草)が堆積する時期になると、植食性(ここで

は一次消費者や分解者)の土壌動物が増加する傾向にある。一方、常緑樹林ではそのような

顕著な傾向はみられない。

5)肉食の土壌動物数は植食性の土壌動物と比較して季節による変化が少ない。

6)1)のように、遷移が進むほど土壌動物の多様性はあがる。遷移の進行によりリター層は厚

くなり撹乱の少ない永続する環境が現れ、ニッチェの細分化が起こりやすくなったのではな

いだろうか。

今後は、土壌において優占することが分かった「ダニ目」という特定の分類群に着目し暖温帯

と冷温帯における種組成と季節変動について調査研究を進めていく。なぜならこれまでの研究に

おける同定作業を通して、顕微鏡の中で宝石のようにきらきらと輝いているダニ目の可愛い姿に

次第に魅かれたからである。この可愛いダニたちの多様性を追究していきたい。

◇主要参考文献 日本産土壌動物:青木淳一 編著 土壌動物のしらべかた:青木淳一 著

<講座担当教員のコメント>

データ、考察は自身の観察のみから得られたもので、非常に評価できる。これらの成果は、器具

の作製に始まり、驚くことに 26,000 余個体を採集、それをすべて同定・観察した途方もない努力

によっている。同定作業は単に労働として理解されるべきものではなく、対象を的確に理解する

という卓越した観察能力でのみ可能なのである。この点で、矢野さんは生物学の本質を既に会得

しつつあり、興味に邁進する姿とともに、「未来の科学者」としての資格十分である。矢野さんは

これらの研究により、「つくば生物研究コンテスト」において2年連続で最高位である金賞を受賞

している。

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発表27 研究 東京大学

Simple, Cheap and Out of Control:

A Robot Walking the Same as Human

宇山 慧佑(開成高校 3年) 担当教員 准教授 鈴木高宏先生 助教 森田晋先生

◇研究の背景(きっかけ)

以前の研究で、ロボットのソフトウェアをモジュール化して、動作を抽象化することで同じ動

作を他のハードウェア上で動かすことを考えた。しかし、その過程でロボットのダイナミクスが

異なっても動作を抽象化できるのか、と疑問を抱きはじめた。 近年、環境(物理的な実世界)と身体(ロボット)とのインタラクションを通した学習によっ

てそれぞれの身体ごとに知能が生まれるのではないかといった「身体性」という考え方が多くな

されるようになった[1],[2]。環境とのインタラクションを中心としたロボットの制御においては、

その機構そのもののダイナミクスの影響が大きい。 ◇研究の目的

本研究では、ヒトのダイナミクスの特徴を再現することによって、柔軟で適応性の高いヒトの

二足歩行の制御方法を構成論的アプローチによって探る。具体的には、実際にヒトの身体特性を

できるだけ再現したロボットを製作・実験することによって、歩

行の上で「本当に制御すべき部分は何であるのか」ということを

考察することを目的とする。

◇研究の方法

”Simple, Cheap and Out of Control”をテーマに設定し、独

自の二足歩行ロボットを実際に製作することとした。従来の軌道

計画を行うモデルベースド制御の二足歩行ロボットと異なり、機

構のダイナミクスを利用する。ダイナミカルシステムアプローチ

では受動歩行機構が有名だが、本研究では、環境、神経系と作用

するヒトの筋骨格系[3]を再現することで、歩行に適するダイナミ

クスの機構をより効果的に設計することが可能だと考えた。

まず、筋に関しては二つの関節にまたがって付着する二関節筋

に注目した。二関節筋は、重力に抗する一関節筋に対して、運動

を制御していると考えられている[4]。そこで、本研究ではソレノ

イドを使用して、二関節筋を再現する。しかし、ソレノイドを駆

動するために、高性能な回路が必要となった。

また、骨格系では内骨格系とするのはもちろんのこと、これまでモデル化の段階で省略される

ことの多かった膝関節の外反、MTP 関節や足底弓蓋の再現を積極的に行うことにした。さらに、

ほぼ人間の平均的なセグメント長の比に等しくなるように設計した。複雑な設計・加工が要求さ

れるので、3 次元 CAD で設計し CNC 工作機械を用いることで、作業プロセスの効率化を図った。

神経系には、歩行のリズムを生成し、引き込み現象を起こす CPG(Central Pattern Generator

)が存在することが知られている[5]。神経系の再現は、分散搭載するマイクロコンピュータ上

でシミュレートする予定だが、現在検討段階なので説明は割愛する。

Fig. 1 Way of the Approach

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発表27 研究 東京大学

◇研究の結果

ソレノイドをドライブする回路は、昇圧回路と放電回路か

ら構成される。5 つ試作し、最新のものは 16V から 1 秒程度

で 47μF450V の電荷を充電、放電を制御できる。骨格系の設

計が、大部分で終了したので、その身体のデータから要求性

能を割り出すとともに、回路の性能を評価中である。

骨格系では、CAD での設計、部品の切削はほぼ終了し、

組み立ての段階に入っている。人間のセグメントの比を 6%誤

差以内の範囲で再現することができた。また、膝関節は、一般的に用い

られる軸受けとはせず、接触によって関節を形成し、疑似靱帯によって

固定することで滑りと転がりの動きを再現したなめらかな動きを可能

にした。

◇考察

独自のロボットをゼロから設計しているために非常に時間がかかっ

てしまっているが、膝関節などは明らかに、身体に似た特性を再現する

ことができており、手応えを感じている。これらは、シミュレーション

で再現することは困難であり[1]、実機を用いた実験によってその効果

がはっきりとしてくるだろう。

まだ、製作・実験しなければならない箇所が多く残されているが、歩

行を可能にしてデータを収集することを目標している。

本研究は、二足歩行ロボットの実用化だけでなく、ヒトの知能をより

具体的に理解するのに役立つ可能性があると考えている。

◇主要参考文献

[1] R.Pfeifer, J.Bongard. 知能の原理 -身体性に基づく構成論的ア

プローチ-. (訳) 細田耕, 石黒章夫. : 共立出版, 2010. [2] 瀬名秀明, ほか. 知能の謎 認知発達ロボティクスの挑戦. : 講談社, 2004. [3] 土屋和雄, 高草木薫, 荻原直道. シリーズ移動知 第2巻 身体

適応-歩行運動の神経機構とシステムモデル-. : オーム社, 2010. [4] 熊本水賴. ヒューマノイド工学 生物進化から学ぶ 2 関節筋ロ

ボット機構. : 東京電機大学出版局, 2006. [5] 多賀厳太郎. 【身体とシステム】脳と身体の動的デザイン 運動・知覚の非線形力学と発達. : 金子書房, 2002. <講座担当教員のコメント>(森田晋先生)

宇山くんはとても自律的です。問題設定能力、行動は言わずとも自分で行いました。その全て

が解決できたわけではありませんが、放置することなく何らかの対応策を自分で考え出しました。

今後は高等知識の習得はもちろん、チームでの活動ももっと経験して欲しいです。

Fig. 2 Photo of the Driving Solenoid Circuit

Fig. 3 CG Image of the Robot’s Skelton.

Fig. 4 Artificial Knee Joint

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理数学習支援部 才能育成担当

TEL 03-5214-7053

未来の科学者養成講座 http://rikai.jst.go.jp/miraisci/