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総合解説総合カタログ
B サポートブック選定のポイント.................................... B0-2選定フローチャート ............................ B0-2直動システムの形式と特長 ................ B0-3定格荷重 ............................................... B0-7 · 直動システムの寿命 .......................... B0-7 · 定格寿命 ........................................... B0-7 · 基本定格荷重 ..................................... B0-7基本動定格荷重 C ............................ B0-7基本静定格荷重 C0 ........................... B0-8静的許容モーメント M0 ................... B0-8静的安全係数 fS ............................... B0-9
寿命計算式 ........................................... B0-10剛性 ....................................................... B0-13 · 直動システムのすきま・予圧の選定..... B0-13すきまと予圧 ................................... B0-13予圧と剛性 ...................................... B0-14
摩擦係数 ............................................... B0-15精度 ....................................................... B0-16潤滑 ....................................................... B0-16安全設計 ............................................... B0-18 · 材質の決定 ........................................ B0-19ステンレス鋼製 ................................ B0-19
· 表面処理 ........................................... B0-20AP-HC ............................................ B0-20AP-C ............................................... B0-20AP-CF ............................................ B0-20
· 防塵 .................................................. B0-23
B0-1
513J
B0-2
選定のポイント 総合解説
選定フローチャート
LMストローク クロスローラーガイド リニアステージ ローラータイプ 他
駆動方法の選定
●速度 ●使用頻度(デューティサイクル) ●要求寿命 ●運動頻度 ●使用環境
●精度等級の選定 (送り精度・振れ精度) ●取付面精度
●すきまの選定 ●予圧の選定 ●固定方法の決定 ●取付部の剛性の決定
●直線運動に必要な推力を求める。
●サイズの選定 ●ブロック・ナット数の選定 ●レール軸数の決定
●潤滑剤の決定(グリース・油・特殊潤滑剤) ●潤滑方法の決定(定期給脂・強制潤滑) ●材質の決定(標準材・ステンレス材・高温材) ●表面処理の決定(防錆・外観) ●防塵設計(ジャバラ、テレスコカバー)
●送りねじ(ボールねじ、台形ねじ) ●シリンダ ●ベルト ●ワイヤ ●チェイン ●ラック&ピニオン ●リニアモータ
●使用条件に適する形式を選定する LMガイド ミニチュアガイド スライドパック ボールスプライン リニアブッシュ
●機械装置の大きさ ●案内部のスペース ●取付姿勢 (水平・立・斜め・壁掛け・吊下げ使用) ●作用荷重の大きさと方向 ●ストローク長さ
5.精 度 4.剛 性 3.寿命の予測
選定完了
7.推力の算出
6.潤滑と安全設計
2.形式の選定
1.使用条件の設定
513J
B0-3
総合解説
直動システムの形式と特長
形 式 LMガイド ボールスプライン リニアブッシュ
外 観
特 長
・ 理想的な4列サーキュラーアーク溝2点接触構造
・ DF構造を採用した優れた誤差吸収能力
・ 取付面の誤差を吸収する精度平均化効果
・ 許容荷重が大きく高剛性 ・ 低い摩擦係数
・ 大きなトルク負荷容量 ・ トルクを伝達する機構やトルクとラジアル荷重が同時に作用する箇所に最適
・ アンギュララッシ“ゼロ” ・ ボール保持タイプ
・ 互換性タイプ ・ 低価格で無限直線運動する直動システム
ストローク 無限ストローク 無限ストローク 無限ストローク
主な用途
・ 平面研削盤 ・ 放電加工機 ・ 高速搬送装置 ・ NC旋盤 ・ 射出成形機 ・ 木工機 ・ 半導体製造装置 ・ 検査装置 ・ 食品機械 ・ 医療機器
・ 組立ロボットのZ軸 ・ オートローダ ・ トランスファマシン ・ 自動搬送装置 ・ 捲線機 ・ 研削盤スピンドル駆動軸 ・ 建設車輌ステアリング ・ 血液検査装置 ・ ATC ・ ゴルフ練習機
・ 各種計測機 ・ デジタル式三次元計測器 ・ 印刷機械 ・ OA機器 ・ 自動販売機 ・ 医療機器 ・ 食品包装機械
紹介ページ B1-1~ B3-1~ B4-1~
選定のポイント直動システムの形式と特長
513J
B0-4
形 式 LMストローク 精密リニアパック クロスローラーガイド
外 観
特 長
・ 回転運動、直線運動および複合運動が可能
・ 極めて小さな摩擦係数での転がり運動が可能
・ ローコスト
・ 極薄軽量タイプ ・ 設計・組立コストの削減
・ 長寿命・高剛性 ・ すきま調節簡易タイプ
ストローク 有限ストローク 無限ストローク 有限ストローク
主な用途
・ プレスダイセット ・ 印刷機械インクロール部 ・ 光学測定器 ・ スピンドル ・ ソレノイドバルブガイド ・ プレスポストガイド ・ ロードセル ・ 各種複写機 ・ 各種検査装置
・ 磁気ディスク装置 ・ 電子機器 ・ 半導体製造装置 ・ 医療機器 ・ 測定機器 ・ プロッタ装置 ・ 複写機
・ 各種測定器 ・ 実装機 ・ プリント基板穴明機 ・ 検査装置 ・ 小型ステージ ・ ハンドリング機構 ・ 自動旋盤 ・ 工具研削盤 ・ 内面研削盤 ・ 小型平面研削盤
紹介ページ B5-1~ B6-1~ B7-1~
513J
B0-5
総合解説
形 式 クロスローラーテーブル リニアボールスライド LMローラー
外 観
特 長
・ 取付容易なユニットタイプ ・ 多種多様な使用方法の選択が可能
・ 取付容易なユニットタイプ ・ 軽量コンパクト ・ 極めて小さな摩擦係数での転がり運動が可能
・ ローコスト
・ コンパクトで大きな耐荷重タイプ
・ 自動スキュー矯正タイプ
ストローク 有限ストローク 有限ストローク 無限ストローク
主な用途
・ 測定機器ステージ ・ 光学ステージ ・ 工具研削盤 ・ プリント基板穴明機 ・ 医療機器 ・ 自動旋盤 ・ 内面研削盤 ・ 小型平面研削盤
・ 小型電子部品組立機 ・ ハンドラ ・ 自動記録装置 ・ 測定機器ステージ ・ 光学ステージ ・ 医療機器
・ 精密プレスラムガイド部 ・ プレス金型交換装置 ・ 各種重量物搬送装置 ・ ベンダマシン
紹介ページ B8-1~ B9-1~ B10-1~
選定のポイント直動システムの形式と特長
513J
B0-6
形 式 フラットローラー スライドパック スライドレール
外 観
特 長
・ 耐荷重性能が大きい ・ 90V面と平面用の組み合せ精度を標準化
・ 互換性タイプ ・ ローコスト簡易タイプ
・ 薄型コンパクト ・ ローコスト簡易タイプ ・ 高強度、高耐久性
ストローク 有限ストローク 無限ストローク 有限ストローク
主な用途
・ プレーナ ・ プラノミラ ・ ロール研削盤 ・ 平面研削盤 ・ 円筒研削盤 ・ 光学測定器
・ アミューズメントマシン ・ 高級家具 ・ 軽量・重量扉 ・ 工具キャビネット ・ 厨房装置 ・ 自動供給装置 ・ コンピュータ周辺機器 ・ 複写機 ・ 医療機器 ・ 各種事務機器
・ アミューズメントマシン ・ 高級家具 ・ 軽量・重量扉 ・ 各種事務機器 ・ 店舗什器 ・ ストッカー
紹介ページ B11-1~ B12-1~ B13-1~
513J
B0-7
総合解説
定格荷重 直動システムの寿命 直動システムが荷重を受けて転がり運動をする場合、転動面や転動体(ボールあるいはローラー)には、絶えず繰り返し応力が作用するので、限界に達すると、転動面は疲れ破損し、表面の一部がうろこ状にはく離します。これを、フレーキングと呼んでいます。 直動システムの寿命とは、転動面あるいは転動体のどちらかに、材料の転がり疲れによる最初のフレーキングが発生するまでの総走行距離をいいます。
定格寿命 直動システムの寿命は同じように製作されたものを同一運転条件で使用しても、多少のバラツキを示します。このため直動システムの寿命を求める目安として、つぎのように定義された定格寿命を使用します。 定格寿命とは、一群の同じ直動システムを同じ条件で個々に運動させたとき、そのときの90%がフレーキングをおこすことなく到達できる総走行距離をいいます。
基本定格荷重 直動システムの基本定格荷重には寿命算出に使用する基本動定格荷重(C)と静的許容荷重の限度を定めた基本静定格荷重(C 0 )の2種類があります。
基本動定格荷重 C 基本動定格荷重(C)とは、一群の同じ直動システムを同じ条件で個々に運動させたとき、定格寿命(L)がボールを使用した直動システムでは L=50km、ローラー使用の場合では L=100kmとなるような、方向と大きさの変動しない荷重をいいます。 基本動定格荷重(C)は、直動システムが荷重を受けて運動する場合の寿命計算に使用します。 直動システム個々の値は本カタログの寸法表中に記載してあります。
選定のポイント定格荷重
513J
B0-8
基本静定格荷重 C 0 直動システムが、静止あるいは運動している状態で、過大な荷重を受けたり大きな衝撃荷重を受けた場合、転動面と転動体との間に局部的な永久変形が生じます。この永久変形量がある限度をこえると直動システムのスムーズな運動を妨げるようになります。 基本静定格荷重とは、最大応力を受けている接触部において、転動体の永久変形量と転動面の永久変形量との和が、転動体の直径の0.0001倍になるような方向と大きさの一定した静止荷重をいいます。直動システムではラジアル荷重で定義してあります。 基本静定格荷重C 0 は作用荷重に対する静的安全係数を算出するために使用します。 直動システム個々の値は本カタログの寸法表中に記載してあります。
静的許容モーメント M 0 直動システムにモーメントが作用したときには、直動システム内の転動体の応力分布から両端部の転動体が最大応力を受けます。 静的許容モーメント(M 0 )とは、最大応力を受けている接触部において、転動体の永久変形量と転動面の永久変形量との和が、転動体の直径の0.0001倍になるような方向と大きさの一定したモーメントをいいます。 直動システムではM A ・M B ・M C の3方向で定義してあります。
N•mTc N Pc
MA
MC
MB モーメント
ローリング方向 モーメント
ヨーイング方向
ピッチング方向 モーメント
P C :ラジアル荷重 T C :モーメントトルク方向
M A1 :モーメントピッチング方向 M A2 :モーメントピッチング方向
直動システム個々の静的許容モーメント値は各形式の許容モーメントの項に記載してあります。
513J
B0-9
総合解説
静的安全係数 f S 直動システムが、静止あるいは運動中に振動・衝撃や起動停止による慣性力の発生などにより、予期せぬ外力が作用することが考えられます。こうした作用荷重に対して静的安全係数を考慮する必要があります。
【静的安全係数 f S 】 静的安全係数(f S )は、直動システムに作用する負荷に対して直動システムの負荷能力(基本静定格荷重 C 0 )が何倍あるかで表します。
または ………(1)
fC•C0
P fS = fC•M0
M fS =
f S :静的安全係数 f C :接触係数 ( B0-12 表2 参照) C 0 :基本静定格荷重 M 0 :静的許容モーメント (M A ・M B ・M C ) P :計算荷重 M :計算モーメント
【静的安全係数の目安】 表1 に示す静的安全係数を使用条件における下限の目安としてください。
表1 静的安全係数の目安
運動条件 荷重条件 f S の下限
常時運動しない場合 衝撃も小さく、軸のたわみも小さい場合 1.0~3.5
衝撃があり、こじり荷重が作用する場合 2.0~5.0
普通運動の場合 普通荷重で、軸のたわみも小さい場合 1.0~4.0
衝撃があり、こじり荷重が作用する場合 2.5~7.0
選定のポイント定格荷重
513J
B0-10
寿命計算式 【定格寿命の算出】 定格寿命(L 10 )は基本動定格荷重(C)と直動システムに負荷される計算荷重(P C )から次式により求められます。 ボールを使用した直動システムの場合は定格寿命が50kmとなる基本動定格荷重、ローラーを使用した直動システムの場合は定格寿命が100kmとなる基本動定格荷重を使用し、定格寿命を算出します。
• ボールを使用した直動システムの場合 (定格寿命が50kmとなる基本動定格荷重を使用)
CP
L10 =
503
………………(1)
L 10 :定格寿命 (km) C :基本動定格荷重 (N) P :負荷荷重 (N)
• ローラーを使用した直動システムの場合 (定格寿命が100kmとなる基本動定格荷重を使用)
CP
L10 =
100103 ………………(2)
※ ストローク長さが直動システムの有効負荷域部長さの2倍以下の場合は、上記の定格寿命式が適用されない可能性がございます。
定格寿命(L 10 )の比較を行う際には、基本動定格荷重が50km、100kmのどちらで定義しているかを考慮する必要があり、必要に応じてISO 14728-1に基き基本動定格荷重の換算を行います。
ISOで規定されている基本動定格荷重の換算式:
• ボールを使用した直動システムの場合
C100 = C50
1.26 • ローラーを使用した直動システムの場合
C100 = C50
1.23
C 50 :定格寿命が50kmとなる基本動定格荷重 C 100 :定格寿命が100kmとなる基本動定格荷重
【使用条件を考慮した定格寿命の算出】 実際の使用では稼動中に振動や衝撃を伴う場合が多いため、直動システムへの作用荷重の変動が考えられ正確に把握することは容易ではありません。また、転動面の硬さや使用環境温度、直動システムを密着に近い状態で使用する場合も寿命に大きく影響します。これらの条件を考慮すると、次式(3)及び(4)により使用条件を考慮した定格寿命(L 10m )を算出することができます。
● 使用条件を考慮した係数
α = fH•fT•fC
fW
:使用条件を考慮した係数 f H :硬さ係数 ( B0-11 図1 参照) f T :温度係数 ( B0-11 図2 参照) f C :接触係数 ( B0-12 表2 参照) f W :荷重係数 ( B0-12 表3 参照)
513J
B0-11
総合解説
● 使用条件を考慮した定格寿命 L 10m • ボールを使用した直動システムの場合
………(3)L10m = α
50CP
3
• ローラーを使用した直動システムの場合
………(4)L10m = α
100CP
103
L 10m :使用条件を考慮した定格寿命 (km) C :基本動定格荷重 (N) P :負荷荷重 (N)
● f H :硬さ係数 直動システムの負荷能力を十分発揮させるためには、転動面の硬さを58~64HRCとする必要があります。 この硬さより低い場合、基本動定格荷重および基本静定格荷重が低下しますので、それぞれに硬さ係数(f H )を乗じます。
転動面硬さ(HRC)
硬さ係数 fH
1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1
60 50 40 30 20 10
図1 硬さ係数(f H )
● f T :温度係数 直動システムを使用する使用環境が100℃をこえるような高温の場合は、高温による悪影響を考慮して 図2 の温度係数を乗じます。 また、直動システムも高温対応の製品にする必要がありますのでご注意ください。 注) 使用環境温度が80℃をこえる場合は、シール、エンドプレートの材質を高温仕様に変更する必要があります。
注) 使用環境が120℃をこえるような高温の場合は寸法安定化処理を行う必要があります。
注) ボールリテーナ入りLMガイド及びローラーリテーナ入りLMガイドの使用温度は80℃以下なので適用されません。
転動面温度(℃)
温度係数 fT
0.8
0.9
1.0
0.7
0.6
0.5
100 150 200
図2 温度係数(f T )
選定のポイント寿命計算式
513J
B0-12
● f C :接触係数 直動案内をするブロックを密着に近い状態で使用する場合では、モーメント荷重や取付面精度が影響し均一な荷重分布を得ることが困難です。従って、複数のブロックを密着使用する場合は、 表2 の接触係数を基本定格荷重(C)、(C 0 )に乗じてください。 注) 大型の装置に不均一な荷重分布が予想される場合は 表2 の接触係数を考慮してください。
表2 接触係数(f C )
密着時のブロック数 接触係数 f C
2 0.81
3 0.72
4 0.66
5 0.61
6以上 0.6
通常使用 1
● f W :荷重係数 一般的に往復運動をする機械は運転中に振動や衝撃を伴うものが多く、特に高速運転時に発生する振動や、常時繰返される起動停止時の衝撃などのすべてを正確に求めることは困難です。従って、速度・振動の影響が大きい場合は、経験的に得られた 表3 の荷重係数を基本動定格荷重(C)に除してください。
表3 荷重係数(f W )
振動・衝撃 速度(V) f W
微 微速の場合 V≦0.25m/s
1~1.2
小 低速の場合 0.25<V≦1m/s
1.2~1.5
中 中速の場合 1<V≦2m/s
1.5~2
大 高速の場合 V>2m/s
2 ~3.5
513J
B0-13
総合解説
剛性 直動システムの使用にあたっては、機械・装置の必要な剛性を得るため使用条件に合わせた形式とすきま(予圧)を選定する必要があります。
直動システムのすきま・予圧の選定 直動システムのすきま・予圧は、それぞれの製品ごとに規格化されていますので使用条件に合わせて選定が行えます。 また、分離形の製品については、THKより出荷時にすきまの調整ができませんので、組付時にユーザ側での調整が必要となります。 以下の項を参考にすきま・予圧を決定してください。
すきまと予圧
【すきま(内部すきま)】 すきまとは直動システムのブロック(外筒)、レール(シャフト)ボール(またはローラー)間にあるあそびのことで、上下方向すきまの総和をラジアルすきま、円周方向すきまの総和をアンギュララッシ(回転方向すきま)とそれぞれ呼んでいます。 (1) ラジアルすきま
LMガイドではラジアルすきまは、LMレールを固定して、LMレールの長さ方向の中央部で、LMブロックを上下一定の力で軽く動かしたときの、ブロック中央部の動きの数値をいいます。
(2) アンギュララッシ(回転方向すきま) ボールスプラインではアンギュララッシ(回転方向すきま)は、スプライン軸を固定して、外筒を一定の力で軽く正逆に回したときの外筒が回転した数値をいいます。
ラジアルすきま
図3 LMガイドのラジアルすきま
P
T
図4 ボールスプラインのアンギュララッシ
選定のポイント剛性
513J
B0-14
【予圧(プリロード)】 予圧(プリロード)とは、直動システムのすきまをなくし、剛性を高めることを目的として、あらかじめ転動体に与える荷重のことをいいます。 直動システムのすきま表示でマイナスすきま(マイナスの値)のものは予圧(プリロード)が与えられています。
表4 LMガイド HSR形のラジアルすきま表示例 単位:m
表示記号 普 通 軽予圧 中予圧 呼び形番 無記号 C1 C0 HSR 15 ‒4~+2 ‒12~‒4 ̶ HSR 20 ‒5~+2 ‒14~‒5 ‒23~‒14 HSR 25 ‒6~+3 ‒16~‒6 ‒26~‒16 HSR 30 ‒7~+4 ‒19~‒7 ‒31~‒19 HSR 35 ‒8~+4 ‒22~‒8 ‒35~‒22
すきまと予圧に関してはそれぞれの形式の項に記載されていますのでご参照ください。
予圧と剛性 直動システムに予圧(プリロード)を与えるとその予圧量に応じて剛性を高めることができます。 図5 に各すきま(普通すきま、C1すきま、C0すきま)の変位量を示します。(LMガイド HSR形の例)
変位量 普通すきま
2.8P0 荷重 P0 : 予圧荷重
P0
C0すきま
C1すきま
δ 0
2δ 0
図5 剛性データ
このように予圧の効果は予圧荷重の約2.8倍まであり、予圧のない場合と比べて同一荷重に対する変位量は減少し、剛性は大幅に向上します。 直動システムLMガイドのラジアル変位が、予圧によりどのように変化するかを 図6 に示します。 図6 のように、LMガイドのブロックにラジアル荷重2.45kNを負荷した場合、ラジアルすきまゼロ(普通すきま)では9mのラジアル変位、ラジアルすきま‒30m(C0すきま)では2mのラジアル変位となり剛性比は4.5倍に向上します。
ラジアル変位
ラジアルすきま(μm)
δ
P=2.45kN
δ(μm) 10
5
0 -7 -14 -21 -28 -35
図6 ラジアルすきまと変位量
具体的なすきまの選定は、各直動システムのラジアルすきまの選定の項をご参照ください。
513J
B0-15
総合解説
摩擦係数 直動システムは、転動面間にボールあるいはローラーなどの転動体を介在させ、転がり運動を行うので、摩擦抵抗がすべり案内に比べ、1/20~1/40の値になります。特に、静摩擦は格段に小さく、動摩擦との差もほとんどないためスティックスリップが生じません。このためサブミクロンの送りも可能となります。 直動システムの摩擦抵抗は、直動システムの形式、予圧量、潤滑剤の粘性抵抗、直動システムに作用する荷重などによって変化します。 特に、モーメントを負荷した場合や、剛性を向上させるために予圧(プリロード)を与えた場合には摩擦抵抗は増加します。 通常の摩擦係数は直動システムの形式により 表5 のようになります。
摩擦係数(
μ)
C:基本動定格荷重
P:負荷荷重
負荷荷重比(P/C)
0.2 0.1 0
0.005
0.010
0.015
図7 負荷荷重比と摩擦係数の関係
表5 各種直動システムの摩擦係数
直動システムの種類 主 な 形 式 摩擦係数
LMガイド SSR、SHS、SRS、RSR、HSR、NR/NRS 0.002 ~ 0.003
SRG、SRN 0.001 ~ 0.002
ボールスプライン LBS、LBF、LT、LF 0.002 ~ 0.003
リニアブッシュ LM、LMK、LMF、SC 0.001 ~ 0.003
LMストローク MST、ST 0.0006 ~ 0.0012
LMローラー LR、LRA 0.005 ~ 0.01
フラットローラー FT、FTW 0.001 ~ 0.0025
クロスローラーガイド・クロスローラーテーブル VR、VRU、VRT 0.001 ~ 0.0025
リニアボールスライド LS 0.0006 ~ 0.0012
カムフォロア・ローラーフォロア CF、NAST 0.0015 ~ 0.0025
選定のポイント摩擦係数
513J
B0-16
精度 直動システムの運動精度には、平面に固定する形式は走り精度、軸を支持する形式は振れ精度で規定されており、それぞれ精度等級が定められています。 詳細は各製品ごとのページをご参照ください。
潤滑 直動システムの機能を十分に発揮させるためには、使用条件に応じた潤滑を行ってください。無給脂のままで使用すると、転動部の摩耗が増加し、早期寿命の原因となる場合があります。 潤滑剤には以下の作用があります。 (1) 各運動部の摩擦を小さくして焼付けを防ぎ、摩耗を減らす。 (2) 転動面に油膜を形成させ、表面に働く応力を緩和し、転がり疲れ寿命を長くする。 (3) 金属表面を油膜で覆い、錆の発生を防ぐ。 なお直動システムはシール付きでも内部の潤滑剤が運動中にわずかずつ外部へ流出するので、使用条件に合わせて適当な間隔での給脂が必要です。 潤滑の詳細については B24-1 以降をご参照ください。
【潤滑剤の種類】 直動システムの潤滑剤は、主にグリースや摺動面用油が用いられます。 潤滑剤に要求される条件は、一般的に以下の通りです。 (1) 極圧性が高い。 (2) 摩擦を小さくする。 (3) 耐摩耗性を向上させる。 (4) 熱安定性に優れる。 (5) 防錆性に優れる。 (6) 流動性に優れる。 (7) グリースが繰り返しかく拌されても、著しいちょう度変化がない。
表6 一般使用の潤滑剤
潤 滑 剤 種 類 商 品 名
オイル 摺動面油またはタービン油 ISOVG32~68
ダフニースーパーマルチオイル(出光興産) モービル バクトラオイルナンバードシリーズ(エクソンモービル) モービル バクトラオイルNo.2SLC(エクソンモービル) モービル DTEオイルシリーズ(エクソンモービル) シェル トナ S3 M(昭和シェル石油) 相当品
513J
B0-17
総合解説
表7 特殊な環境で使用する潤滑剤
使用環境・条件 潤滑の対策 THK製品への対策
クーラントの飛散する環境
・ クーラントによる乳化を防ぎ、洗い流れにくいグリースをご使用ください。 ・ 極圧性が高く、防錆性の良いグリースをご使用ください。 ※特に水溶性のクーラントが飛散する環境では、中粘度の潤滑油を使用しても、クーラントの種類によっては、乳化や水洗により潤滑性の著しい低下、適切な油膜形成がしにくいものもあるため、クーラントと潤滑油の相性をご確認ください。
●L450グリース(THK) ●ダフニースーパーマルチオイル(出光興産) ●モービル バクトラオイルNo.2SLC(エクソンモービル)
・ クーラントが直接THK製品にかかると樹脂、ゴム材等の部品に悪影響を与える恐れがあるため、注意が必要です。 ・ THK製品に直接クーラントがかからないような装置設計をご検討ください。(カバー、ジャバラの検討) ・ THK製品内へのクーラントの流入を防止するための各種防塵オプションをご検討ください。
高温環境 ・ 温度が高くなるほど、グリースは離油し、潤滑性能が低下する恐れがあるため、注意が必要です。
・ 高温仕様の各製品を取り揃えておりますので、THKにお問い合わせください。
クリーンルーム
・ THKではクリーンルーム対応のグリースを取り揃えております。
●AFE-CAグリース(THK) ●AFFグリース(THK) ●L100グリース(THK)
・ 発塵の原因のひとつは転動体同士の相互摩擦や金属接触です。 THKでは、転動体同士の相互摩擦や金属接触を極力少なくできるリテーナ入り製品を取り揃えております。さらにリテーナは潤滑剤を保持する構造になっておりますので、クリーン環境に適した製品です。 ・ 標準仕様では防錆油が塗布されておりますので、不要の際は事前にご指定ください。
真空環境
・ フッ素系の真空用潤滑剤をご使用ください。(銘柄により蒸気圧が異なります) ・ 真空グリースを使用した場合、一般的な工業用グリースに比べ、極圧性が低いことから油膜切れが発生しやすい傾向になります。通常より給脂回数を増やす等の方法により転動面への油分の供給を確実に行い、油膜切れを起こさないように十分にご注意ください。 ※真空用グリースを使用する場合は、汎用グリースに比べて始動抵抗が数倍大きくなるものがありますのでご注意ください。
・ 真空環境では樹脂材、ゴム材からの放出ガスによって、真空度レベル低下の恐れがありますので注意ください。 ・ 防錆対策として、ステンレス鋼品、表面処理品をご検討ください。
高速運動部
・ 潤滑剤の抵抗による発熱を抑えるため基油動粘度が低い潤滑剤をご使用ください。 ・ THKでは高速仕様に優れたグリースを取り揃えております。
●AFAグリース(THK) ●AFGグリース(THK) ●AFJグリース(THK)
・ 製品内部における転動体同士の相互摩擦や金属接触により、騒音の発生や早期破損につながります。 ・ THKでは高速性、静音性に優れたリテーナ入り製品を取り揃えております。
水がかかる環境
・ 耐水性に優れたグリースをご使用ください。 ・ 極圧性が高く流れにくい潤滑剤をご使用ください。
●L450グリース(THK) ●L700グリース(THK)
・ 水に関連する潤滑方法についてはTHKにお問い合わせください。
・ THK製品に水がかからないような装置設計をご検討ください。 (ジャバラやカバーの検討) ・ 防錆の対策として、ステンレス鋼品や表面処理品をご検討ください。 ・ 製品内への水の流入を防止するための各種防塵オプションをご検討ください。
食品機械の場合 ・ 人体に安心な食品用グリースの検討が必要です。
●L700グリース(THK) (NSF H1規格に認証登録)
・ 潤滑剤が万が一飛散したときを想定し、カバーなどをご検討ください。
微振動
・ THKでは微振動に有効なグリースを取り揃えております。
●AFCグリース(THK) ●L450グリース(THK) ●AFJグリース(THK)
・ 転動体と転動面の接触部に形成されている油膜が切れ易い環境です。 ・ 定期的にオーバーストロークさせることにより、転動体と転動面の接触部に潤滑油の油膜が形成されます。
選定のポイント潤滑
513J
B0-18
安全設計 直動システムは様々な環境で使用されます。クリーンルーム、真空、耐食、高温、低温などの特殊環境で使用される場合、使用環境に適した材質や表面加工の選定が必要です。 THKでは様々な特殊環境での使用にお応えするために、直動システムに下記の材質・表面処理をご用意しております。
内 容 形 番 特長・能力
材質
マルテンサイト系ステンレス鋼
HSR SSR
HR
RSR SHW
HRW SRS SR
防錆能力 ★★★
マルテンサイト系ステンレス鋼
SR-M1 HSR-M1 RSR-M1
高温対応 ★★★★★ ※ ただし150℃まで。
オーステナイト系ステンレス鋼
HSR-M2
防錆能力 ★★★★★
表面処理
AP-HC
THK AP-HC
低発塵性 ★★★★★ 防錆能力 ★★★ 表面硬さ ★★★★★
AP-C
THK AP-C
防錆能力 ★★★★
AP-CF
THK AP-CF
防錆能力 ★★★★★
※ 上記以外の表面処理を希望される場合は、THKにご相談ください。
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呼び形番の構成例
B0-19
総合解説
材質の決定 直動システムは、通常のご使用条件の場合直動システム用鋼材を使用しますが、特殊環境下で使用される場合、使用環境に適した材質の選定が必要です。 特に耐食性の必要な箇所にはステンレス材が使用されます。
材質仕様
ステンレス鋼製 ●素材…マルテンサイト系ステンレス鋼/オーステナイト系ステンレス鋼
耐食を必要とする環境で使用される場合は、マルテンサイト系ステンレス鋼で対応可能な製品があります。 直動システムの形式にM記号の表示のあるものはステンレス品を示しますので、各形式の項をご参照ください。
LMレールが ステンレス鋼
LMブロックが ステンレス鋼
精度記号
ラジアル すきま記号
潤滑装置 QZ付き
同一平面に使用される軸数記号
LMレール長さ (mm表示)
防塵用部品記号
1軸に組合わせる LMブロックの個数
LMブロックの種類
呼び形番
HSR25 A 2 QZ UU C0 M +1200L P M -Ⅱ
選定のポイント安全設計
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呼び形番の構成例
B0-20
表面処理 直動システムのレールや軸には、防錆や美観の目的で表面処理が施せます。 THKでは直動システムに最適な表面処理としてTHK-AP処理をご用意しております。 THK-AP処理はおもに下記の3種類があります。
AP-HC ●表面処理…工業用硬質クロムめっき ●皮膜硬さ…750HV以上
工業用の硬質クロムめっきに相当するもので、マルテンサイト系ステンレス鋼とほぼ同等の耐食性が得られます。また、皮膜硬さが750HV以上と非常に硬いため耐摩耗性に優れています。
AP-C ●表面処理…工業用黒クロム皮膜処理
耐食性の向上を目的とした工業用の黒クロム皮膜処理で、マルテンサイト系ステンレス鋼に比べ低コストで、それ以上の耐食性が得られます。
AP-CF ●表面処理…工業用黒クロム皮膜処理 特殊フッ素樹脂コーティング
黒クロム皮膜処理+特殊フッ素樹脂コーティングの複合表面処理で、高耐食性を要求される場合に適しています。 上記処理以外に、アルカリ着色処理(黒染)や有色アルマイト処理など、転動面以外の部分に処理を施す場合がありますが、直動システムに適さない表面処理もありますので、THKにお問い合わせください。 なお、転動面に表面処理を施した直動システムを使用される場合は安全係数を高めに設定してください。
LMレール長さ (mm表示)
LMブロック 表面処理付き
LMレール 表面処理付き
1軸に組合わせる LMブロックの個数
LMブロックの種類
呼び形番
SR15 V 2 F + 640L F
注) 取付穴内部には、表面処理が施されませんのでご注意ください。
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B0-21
総合解説
【AP処理における発塵比較データ】 <試験条件>
項 目 内 容
LMガイド形番 SSR20WF+280LF(AP-CF、シールなし) SSR20UUF+280LF(AP-CF、シールあり) SSR20WUUF+280LF(AP-HC、シールあり)
封入グリース THK AFE-CAグリース グリース封入量 1cc(1LMブロック)
速度 30m/min(MAX) ストローク 200mm 計測流量 1リットル/min
クリーンルーム容積 1.7リットル(アクリルケース) 計測器 ダストカウンター 測定粒径 0.3m以上
0
20
40
60
80
AP-CF(シールあり)
50 時間 (hour)
AP-CF(シールなし)
AP-HC(シールあり)
発塵量 (p/1・min)
10 20 30 40
THK AP-HC処理は、表面硬度が高く耐摩耗性に優れています。なお、上図で初期に摩耗が多いのは、エンドシールの初期摩耗と考えられます。 注) THK AP-HC処理(硬質クロムめっき相当) THK AP-CF処理(黒クロムめっき+フッ素樹脂コーティング相当)
選定のポイント安全設計
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B0-22
【防錆比較データ】 <塩水噴霧サイクル試験>
項 目 内 容
噴霧液 1%NaCl溶液
サイクル 6時間噴霧、6時間乾燥
温度条件 噴霧時35℃
乾燥時60℃
試材 オーステナイト系ステンレス鋼
マルテンサイト系ステンレス鋼
THKAP-HC
THKAP-C
THKAP-CF 時間
試験前
6時間
24時間
96時間
試験結果
防錆能力 ◎ ○ ○ ◎ ◎
耐摩耗性 ○ ◎ ◎ △ ○
表面硬さ △ ◎ ◎ △ △
密着性 ̶ ̶ ◎ △ ○
外観 金属光沢 金属光沢 金属光沢 黒色光沢 黒色光沢
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B0-23
総合解説
防塵 直動システムの使用にあたっては防塵は最も重要となります。直動システムにごみや異物が侵入すると、異常摩耗や早期寿命の原因になります。 従って、ごみや異物の侵入が考えられる場合は使用環境条件にあった効果的な密封装置や防塵装置を選定する必要があります。 (1) 直動システム専用シール
各直動システムには防塵シールとして下図のような耐摩耗性に優れた特殊合成ゴム製のシール(積層形接触スクレーパLaCSなど)や、ワイパーリングなどを用意しています。 また、使用環境の劣悪な箇所には、専用ジャバラや専用カバー等が形番により用意されています。 詳しい内容やシール記号については各種製品のオプション(防塵)の項をご参照ください。 また切削屑や切削液などが飛散する使用環境でボールねじの防塵も同時に行うには全体をカバーするテレスコピックカバーや大型ジャバラを使用します。
(2) 専用ジャバラ LMガイドには規格化された専用ジャバラを用意しています。 ボールねじ、ボールスプラインなど他の直動システムについても専用ジャバラを製作しますのでTHKにお問い合わせください。
インナシール プレートカバー
潤滑装置QZ エンドシール
エンドシール
金属スクレーパ サイドシール
LMガイド用防塵シール
ボールねじ用ワイパーリング
LMガイド専用ジャバラ
ボールねじ用防塵カバー
ジャバラ
シール止め輪
シール止め輪
ボールねじ軸
ボールねじナット
ワイパーリング
ワイパーリング
スクリューカバー ジャバラ
LaCS
選定のポイント安全設計
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B0-24
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