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9 特殊な舗装工法や製品の環境配慮[1] 新しい舗装工法や製品の開発に力を入れ、ヒートアイランド現象の緩和などの環境配慮を進めています。 路面温度の上昇を抑制してヒートアイランド 現象を緩和 ◆クールパービアス 熱を遮り温度上昇を抑える クールパービアス(遮熱排水性舗装)は、排水性舗装 の表面に赤外線を反射する塗料を混ぜた樹脂を散布 した舗装です。水はけがよく騒音が少ないという排水性 舗装の特徴に加え、舗装の蓄熱を防ぎ、路面温度の 上昇を抑える機能を持ちます。 クールパービアスを採用すると、通常のアスファルト舗装 に比べ、濃い灰色の樹脂を塗った場合は最大で約15℃、 灰色の樹脂を塗った場合には最大で約20℃、路面温度 が低くなります。この工法は、国土交通省関東地方整 備局が推進する「環境舗装東京プロジェクト」で、ヒート アイランド対策に有効な舗装技術の一つとして評価され ました。 (NETIS登録番号:TH-020057) クールポリシール 打ち水効果で路面温度を下げる クールポリシール(保水性舗装)は、空隙のたくさん あるアスファルト混合物の隙間にクールグラウトという保 水材料を詰めた舗装です。降雨や散水で舗装に浸透 した水を蓄え、水が蒸発する際の気化熱による打ち 水効果で路面温度を下げます。 クールポリシールを採用すると、通常のアスファルト舗 装に比べ、路面温度が最大で約15℃下がるため、ヒ ートアイランド現 象を緩 和し、歩 行 者の快 適 性を確 保 することができます。また、クールポリシールは保水量が 1m 2 当たり最大約6リットル(舗装厚5cmの場合)と保水 力が高いうえ、その水を保持する力も優れています。 (NETIS登録番号:KT-030054) クールパービアスが温度上昇を抑える仕組み クールポリシールが路面温度を下げる仕組み 東京都内での施工例(手前:濃灰色樹脂を使用、奥:灰色樹脂を使用) 横浜市内での施工例 拡大図

特殊な舗装工法や製品の環境配慮[1] · アイランド対策 に有効な舗装技術の一つとして評価され ました。(NETIS登録番号:TH-020057 ... NETISはインターネットで一般公開されており、誰でも

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特殊な舗装工法や製品の環境配慮[1]新しい舗装工法や製品の開発に力を入れ、ヒートアイランド現象の緩和などの環境配慮を進めています。

路面温度の上昇を抑制してヒートアイランド現象を緩和◆クールパービアス 熱を遮り温度上昇を抑える

クールパービアス(遮熱排水性舗装)は、排水性舗装

の表面に赤外線を反射する塗料を混ぜた樹脂を散布

した舗装です。水はけがよく騒音が少ないという排水性

舗装の特徴に加え、舗装の蓄熱を防ぎ、路面温度の

上昇を抑える機能を持ちます。

クールパービアスを採用すると、通常のアスファルト舗装

に比べ、濃い灰色の樹脂を塗った場合は最大で約15℃、

灰色の樹脂を塗った場合には最大で約20℃、路面温度

が低くなります。この工法は、国土交通省関東地方整

備局が推進する「環境舗装東京プロジェクト」で、ヒート

アイランド対策に有効な舗装技術の一つとして評価され

ました。(NETIS登録番号:TH-020057)

◆クールポリシール 打ち水効果で路面温度を下げる

クールポリシール(保水性舗装)は、空隙のたくさん

あるアスファルト混合物の隙間にクールグラウトという保

水材料を詰めた舗装です。降雨や散水で舗装に浸透

した水を蓄え、水が蒸発する際の気化熱による打ち

水効果で路面温度を下げます。

クールポリシールを採用すると、通常のアスファルト舗

装に比べ、路面温度が最大で約15℃下がるため、ヒ

ートアイランド現象を緩和し、歩行者の快適性を確保

することができます。また、クールポリシールは保水量が

1m2当たり最大約6リットル(舗装厚5cmの場合)と保水

力が高いうえ、その水を保持する力も優れています。

(NETIS登録番号:KT-030054)

クールパービアスが温度上昇を抑える仕組み クールポリシールが路面温度を下げる仕組み

東京都内での施工例(手前:濃灰色樹脂を使用、奥:灰色樹脂を使用) 横浜市内での施工例

拡大図

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CO2排出量を減らして地球温暖化防止に貢献◆エコファイン CO2排出量を約15%削減

エコファイン(中温化混合物)は、従来よりも約30℃低い

温度で製造・舗装できるアスファルト混合物です。フォーム

セットという特殊添加剤を使用し、アスファルト中に非常に

細かな泡を発生させ、これにベアリングのような効果を発

揮させることにより、低温での製造・舗装を可能にしまし

た。品質や施工性は従来と変わりません。

エコファインは、製造温度が低いためエネルギー使用

量が減り、CO2排出量を従来よりも約15%削減できます。

また、舗装後は従来よりも約1時間早く道路の使用を開

始できるため、交通渋滞の緩和にも貢献できます。またそ

の他の使い方として、従来と同じ温度で製造・舗装して

も軽いローラーだけで十分な締め固め効果を得ることが

でき、寒冷期ではアスファルト混合物の使用時間を延ば

すこともできます。(NETIS登録番号:CB-980017)

雨水を地下に浸透させ、都市型洪水を抑制◆アクアパービアス 雨水を地下に通す舗装

アクアパービアス(車道透水性舗装)は雨水を地下に

浸透させる舗装です。従来、雨水を通す透水性舗装は

歩道や生活道路などにしか使用できませんでしたが、舗

装材料の耐久性を向上させることで、車道にも採用でき

るようにしました。

アクアパービアスは、1日当たり36mm以上の雨水を舗

装の中にためる能力を持ちます。環境保全の面では、下

水処理施設への負荷低減、雨水の地下水涵養、街路

樹保護、騒音の低減などの効果があります。また、車輌

走行の安全性では、雨天時の水はね防止やハイドロプ

レーニング現象の抑制といった効果があります。アクアパ

ービアスのフィルター層には、タイルくずや焼却灰の溶融ス

ラグなど、廃棄物を原料として再利用することもできます。

(NETIS登録番号:CB-010032)

NIPPO Environmental Report 2004 10

アクアパービアスにおける雨水の流れ

一般舗装における雨水の流れ

高速道路での施工例

一般舗装

アクアパービアス

NETISとは、新技術に関する情報収集・共有を図るために国

土交通省が整備したデータベースシステム「新技術情報提供シ

ステム(New Technology Information System)」です。この

NETISはインターネットで一般公開されており、誰でも容易に新

技術情報を入手できるようになっています。

NETISとは

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走行速度を抑え、沿道の生活環境を改善◆スピードセーブ工法 スピードの出しすぎを防ぐ

スピードセーブ工法(速度抑制舗装)は、制限速度を

超過した車両に揺れを生じさせ、不快感を与えて速度

抑制を促す舗装工法です。滑らかな正弦波を連続して

5波程度設けた路面で、制限速度を超過した車両にだ

け揺れを生じさせます。従来使われていた凸型円形ハン

プ(車道上の突起)とは異なり、スムーズな減速効果が得

られるため、荷崩れや車体の損傷などが起こる心配はあ

りません。制限速度に応じて波高・波長が選べるので、

生活道路や構内道路、主要幹線道路などに施工するこ

とができます。交通事故の減少、沿道騒音の低減、山

岳路や直線道路での集団暴走行為の排除などの効果

が期待できます。(NETIS登録番号:KT-980117)

車線の逸脱を防ぎ、走行時の安全性を向上◆ランブルストリップス 車線逸脱を知らせる

ランブルストリップス(切削型注意喚起舗装)は路上に

溝を作り、車線逸脱を防ぐ注意喚起舗装の一つです。

道路の中央部や端を不連続的に切削し、凹型の切削

溝を設けます。タイヤがランブルストリップス上を通過する

とゴロゴロという音と振動が発生。これにより車線から

外れそうになっていることを運転者に知らせ、事故を防

止します。

従来からセンターポールなどによる正面衝突防止対策

が取られていますが、除雪作業の妨げとなり、取り外しに

手間と費用がかかるため、設置が進んでいません。ラン

ブルストリップスは設置費用が安く、維持費用もほとんど

かかりません。二輪車に対する安全性も高くなっていま

す。独立行政法人北海道開発土木研究所との共同開

発工法です。(NETIS登録番号:HK-030032)

団地内道路での施工例 センターライン上での施工例

特殊な舗装工法や製品の環境配慮[2]製品や舗装工法の工夫を通して、自動車の安全性向上やリサイクル促進などにも力を入れています。

■スピードセーブによる走行速度の低減効果の例

採用事例 テクノポート福井福井港に隣接する工業団地「テクノポート福井」では、夜に

なるとよくカーレースが行われていました。夜間作業の従業

員が帰宅途中危険に晒される、車の騒音がひどい、レース

の参加者と見物人がごみを放置するなどの問題で立地し

ている企業はとても困っていました。そこで企業連絡会とし

て対策を依頼し、その結果スピードセーブ工法が採用されま

した。施工後はカーレースがまったく行われなくなり、みんな

喜んでいます。テクノポート福井企業連絡会副会長 大津 明孝氏

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NIPPO Environmental Report 2004 12

廃棄物リサイクルを促進◆ニューランソフトブロック 廃タイヤを再資源化

ニューランソフトブロック(廃タイヤ利用弾性ブロック)は、

下層にリサイクルラバーと廃タイヤ粉末、上層にカラーゴム

チップを用いた2層構造のインターロック式弾性ブロックで

す。高機能で安全性が高く、快適な歩き心地と歩行空

間を実現します。色は9種類、厚みは2種類(15mmと

25mm)あります。

(エコマーク認定番号:第96022005号、NETIS登録番号:

KT-980124)

周辺環境の保全と作業環境の改善に貢献◆テフィックス 新タイプの固化材で塵の発生を防ぐ

テフィックス(テフロン 処理防塵固化材)は、セメントや

石灰などをテフロン樹脂で加工した防塵型の土質安定

材です。施工時に塵が発生しにくく(従来の固化材に比

べ塵の発生量は1/10~1/100)、作業現場周辺の環境

保全や作業環境の改善に貢献します。テフィックスC(セ

メント系)、テフィックスS(六価クロム対応型)、テフィックス

L(消石灰系)、テフィックスQ(生石灰系)の4種類があり、

土質に応じて選べます。(NETIS登録番号:CB-980051)

◆ミックスラガ 廃ガラスを再資源化

ミックスラガ(ガラス再資源化ブロック・タイル)は、空きび

んや廃ガラスを主原料(70%使用)とした焼成ブロック・タ

イルです。廃棄物削減に貢献するほか、低温で焼成でき

るため、従来の焼成ブロックなどに比べ省エネルギー化

を図っており、CO2排出量を26%削減しています。グリー

ン購入特定調達品にも指定されています。

(NCT2シリーズ:透水性ブロックタイプ、NCLBシリーズ:ブロッ

クタイプ、NFTシリーズ:タイル。エコマーク認定番号:第

97064004号、第97064005号。NETIS登録番号:KT-

980119)

透水性ブロック(NCT2シリーズ)

歩道橋での施工例 商店街での施工例

(上)通常のセメント上で建設機械を移動させた場合(下)テフィックスC上で建設機械を移動させた場合

歩道での施工例