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発達障害の理解と指導 特別支援教育の在り方 新潟大学教育学部 長澤正樹

発達障害の理解と指導 特別支援教育の在り方nagasawa/2010727.pdf · 指導・支援の充実 • 教育課程の弾力的編成 – 生徒の実態に即した各教科・科目の選択

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発達障害の理解と指導

特別支援教育の在り方

新潟大学教育学部

長澤正樹

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特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議

高等学校ワーキング・グループ報告書より

資料

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特別支援教育の必要性

• 法的根拠

• 生徒の多様化

• 進路の多様化

学校教育法施行規則の一部改正(H19/3/30)特別支援教育の推進について:文部科学省局長通達(H19/4/1)

発達障害と思われる生徒:2.2%、不登校、人間関係の悩みなど

特別支援学級からの進学者、23%

高等学校でも、特別支援教育実施の必要性

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特別な教育支援とは

• 通常学級での支援

• 実態にあった学習支援

• 通常学級以外の支援

生徒の実態にあった教材・プリントの使用、板書や説明の工夫教室内の座席や場所の配慮、介助員の配置、ICT機器の使用許可

能力に応じたグループ指導、個別学習支援(授業中、放課後など)

通級指導教室(週1回1時間程度、対人関係の指導など:小中学校)特別支援学級(知的障害、情緒障害など:小中学校)

特別支援学校(高等部、高等養護学校)

特別な支援は通常学級でも実施できます

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支援体制の充実強化

• 校内支援体制の整備状況

– 現状と課題

• 管理職や教職員の理解・認識の向上

• 生徒・保護者の理解・認識の向上

• 支援員の配置

– 例:荒川高校

• 生徒指導・教育相談等の既存の校内組織との連携

WG報告より

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特別支援教育の対象

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生徒が抱える困難(1)発達障害だけではなく

何らかの困難を抱える

グループが存在する

「○○障害」でなくても、困難さを抱える生徒が存在する

LD PDD

ADHD

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生徒が抱える困難(2)

• それらの困難は、形を変えて違った問題として表れることもある

不登校ひきこもり

学力不振

反社会的行動

いじめ

非行犯罪

うつ病強迫神経症対人恐怖

中途退学

年齢が上がれば二次的な問題として表れやすい

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さまざまな誤解

• 発達障害は病気ではありません

• 人格障害や精神異常でもありません

• 多くの生徒は、通常学級で学習します

基本的には、通院し治療を受ける必要はない

多くの生徒とは少し違った特性を持っている

生徒の実態にあった特別な支援が必要

変わった特性を「治す」のではなく、みんなと同じ学校生活が送れるよう「支援する」

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さまざまな障害、疾患

• うつ(気分障害)

– 薬物療法、認知行動療法など。軽視しないこと

• 選択性かん黙

– 心理療法、行動療法

• 強迫神経症、PTSD – カウンセリング、薬物療法

• 統合失調症

– 医療による治療中心+社会復帰

変化に気づき、専門機関と連携して対応

極端な落ち込み、ハイテンション

特定の場面だけしか話さない

何かに追い立てられる症状フラッシュバック

幻覚、人格の変調

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(参考)境界性パーソナリティー障害

• 見捨てられることへの極端な不安

• 対人関係が両極端で不安定

• めまぐるしく気分が変わる

• 怒りや感情のブレーキがきかない

• 自殺企画や自傷行為を繰り返す

• 自己を損なう行為に耽溺する

• 心に絶えず空虚感を抱く

• 自分が何であるかわからない 岡田(2009)

カウンセリングが効かない。深入りせず専門機関へ

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大切なこと:特別な支援

医学的診断

治 療

生徒が抱える困難さの把握

特別な教育的支援

よりも

よりも

何の障害?集中できない、人の視線が怖い

学校、家庭こそが中心に支援を!

必要な情報収集生徒の困り感を見つけ支援の早急な提供

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専門機関

教育センター特別支援教育サポートセンター(新潟)

特別支援学校児童相談所

小児医療センター、精神医療センター発達障害者支援センター

障害者就業・生活支援センター障害者職業センター・ハローワーク

大学(新潟、上越教育)

困ったことは気軽に相談できます

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特別支援教育の推進体制

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通常の学級

相談室保健室

校内委員会

市町村教育委員会

医療・福祉・労働相談機関

特別支援学校

広域特別支援連携協議会

都道府県教育委員会

市町村

A高等学校

専門相談員

特別支援教育の支援体制

中学校

教委・支援学校が核となり、特色ある支援体制を

特別支援教育コーディネーター

幼稚園小学校

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特別支援教育の取り組み

• 校内委員会の設置

– 対応のための組織作り

– 既存の組織の活用

– コーディネーターの任命

• 支援が必要な生徒の把握

• 必要な支援と実現可能な支援の決定

– 個別の教育支援計画、指導計画の作成

• 定期的な評価

特別支援教育の推進役

本人・保護者の申し出校内実態把握

スクリーニングテストの実施

校内組織を作り実態を把握して早急に計画→対応→評価

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通常の学級

相談室・SC生徒指導部

保健室・養護教諭各教科の補習・補講

校内委員会

校内支援体制の構築

個別支援の実施教科の補充生徒指導

心理的なケア

実態把握支援の決定支援計画作成

評価

校内委員会で校内支援体制の構築を検討

学年部

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実態把握リスト(例)

生徒名

主 訴 発達障害の疑い

緊急度 優先順位

1-2A

学習の遅れ

生活上の問題

対人関係

1:学習障害

2:ADHD3:高機能自閉症

4:該当せず

1:担任対応

2:学年対応

3:学校対応

コーディネーターが優先順位をつける

障害の有無にこだわらず、指導につながる実態把握を対象の認定基準は、学校で定めて良い

校内委員会で対応

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支援計画(例)

生徒名

主 訴 支 援 担 当 評 価

1-2A

・同級生とうまくかかわれず、孤立している

・SCによる定期的なカウンセリング

・B(生徒)による声がけ

・実技系教科の授業での記録

・SC、相談部

・担任

・実技系教科担任

・定期的にカウンセリングを受けた

・Bに質問す

るようになった

適切な役割分担

主訴を明確にし、継続可能な支援をきめ、文書にまとめる

校内で対応できる支援内容をきめる

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共通理解を図るには

• 教員の意識、校内のリソースの調査

• 管理職のリーダーシップ

• 既存の組織の活用

• できることからはじめる

特別支援教育を推進する環境かどうか

校長が職員に対し基本方針を示す

負担を増やさない工夫、既存の組織の再編

全校の問題も一つの事例解決から

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教育相談・生徒指導と特別支援教育

• 教育相談、心理的ケア

– カウンセリング

– ソーシャルスキルトレーニング(SST)– ストレスマネジメント教育

• 生徒指導

– 問題行動への対応

– 非行の予防、対応

従来の体制・リソースを基本に、発達障害の視点を!他の生徒同様、ルールに従い対処して良いが、

障害特性を考慮する

生徒の話をよく聴く、受け止める

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定時制、通信制課程における対応

• 発達障害を含め困難のある生徒が多数在籍→実態把握と体制整備を

• 特に通信制では実態把握を十分に

• 不登校経験者、心の問題を抱える生徒の存在→SCなど、専門機関との連携

WG報告より

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指導・支援の充実

• 教育課程の弾力的編成

– 生徒の実態に即した各教科・科目の選択

– 特別な科目の新設

• 障害の特性に応じた教科指導の配慮や工夫

– 学習のユニバーサルデザイン化(後述)– ADHD、PDDの特性理解と支援の提供(後述)

• ICT機器等を活用した支援の推進

– ノートパソコン、デジカメ、プロジェクター

• 多様な評価方法やテストにおける配慮(後述)– レポート、時間延長など WG報告より

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通常学級での特別支援教育

「学習のユニバーサルデザイン」

UDL:Universal Design for Learning

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誰もがわかる授業作り

• 授業構成の工夫

• 指示、説明、発問の工夫

• 板書と机間支援の工夫

• 視覚情報や作業・動作の活用

授業の流れを示す、導入の工夫、準備のタイミングの明示

簡潔化、具体的、肯定的表現、活動がイメージできる表現

きれいな黒板、分割法、机間支援と一斉支援・個別支援

視覚的手がかり、「見て→読んで→書く」、作業動作で集中

学習のユニバーサルデザイン化(UDL)

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ユニバーサルデザインとは

子どもたちにわかりやすく提示する、

伝えるための方法

子どもたちが容易にできる意思表示・伝達方法

CAST,2008

(例)理解しやすい板書パワーポイント使用わかりやすい指示授業展開の工夫

(例)質問を適宜受け付け積極的参加を強化ペアグループ活動

積極的傾聴寛容な雰囲気

子どもたちが自己管理、自己選択、自己解決

できるための方法

(例)達成できる課題

1授業完結型プリント自己解決を支援

生徒同士で活動・解決反復学習(定着化)

新潟県立荒川高校(2009)の実践より

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正徳館高校(出雲崎高校)

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段階的な学習支援

• 通常の授業– 課題理解の教材、個別支援

– 学習のユニバーサルデザイン化を図る

• 補習授業– 選択科目で教科の補習、放課後の補習

• テストでの特別な配慮(時間延長など)

• 単位認定基準の変更

• 習熟度別のコース制

• 学科の新設

介入(小)

介入(大)

生徒の実態や校内のリソースにあわせた学習支援の実施を

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テストアコモデーション(配慮)

• プレゼンテーションの仕方

• 反応の仕方

• セッティング

• 時間延長

読み上げ、手話、点字、仮名ふり、拡大

パソコン、高等、特別な筆記具、手話

別室、個別、付き添い

諸外国では権利として法的に認められている大学入試センター試験では、発達障害にも適用へ

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認知特性に応じた支援とは

視覚認知が強いので、視覚的な支援

検査は生徒にあった支援を見つけるために実施する

高校生は、WAIS-R

(成人用知能検査)

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チームアプローチ:さまざまな連携

1. コーディネーターと教員による連携

2. 複数の教員による連携:校内委員会

3. 保護者と教員との連携

4. 関係機関との連携

– 特別支援学校

– ハローワーク

– その他の機関

連携を保障する個別計画(支援計画、指導計画)の作成を

協働作業一つの問題に対して、異なる立場の人が、協力して問題を解決すること

高等学校でも保護者のかかわりが重要

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連携、他にも

• 虐待、親の資質の問題

• 非行、学校外での問題行動

• 診断、告知、医療的ケア、親支援

• 親支援、心の支え、情報交換

児童相談所、民生委員

警察(生活安全課)、家庭裁判所、保護観察所

医療機関、発達障害者支援センター、児童相談所

親の会、NPO

ひとりで抱え込まず、支援機関の活用を

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進路について

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卒業後の進路について

• 高校卒業後

– 68%が進学(専門学校、短大、大学)

• 就職

– 一般就労:38%

– 障害者枠就労:12%

• 手帳の取得:36.8%• 進路指導上の悩み

• 利用した相談機関

全国LD親の会(2007)

全国LD親の会(2005)

適性がわからない、とりあえず進学

教育相談センター発達障害者支援センター

ハローワーク、障害者職業センター

卒業したけれど就職できない(していない)現状

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就労の問題と対応

• ニートになっている発達障害

– 障害特性による問題によって、障害者を対象とした教育・雇用・訓練いずれも該当しない

– 就労における課題の先送り状態

• 就労の必要要件

– 手帳の取得

– 職業リハビリテーションサービス

– サポートステーション

障害者枠での雇用、さまざまな就労支援

手帳がなくても受けられる

ニート対策の活用、障害認定の可能性は?

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進路指導の基本

• 自己理解を促す

– 興味・関心、適性(障害特性)、学力

– 興味・関心に結びつく職業調べ

• さまざまなスキルトレーニング

– ソーシャルスキル、パソコン、資格、免許

• 社会体験(就労体験)

– インターンシップ、ボランティア、アルバイト(?)

自己決定の尊重、具体的できめ細かなプログラムをハローワーク等との連携、

職業リハビリテーションサービスの活用

客観的で前向きな自己理解を

自分の特性にあった大学、専門学校を

選択

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ライフステージに応じた支援プログラム

自立生活

ライフスキル対人システム理解、対人関係調整生活管理、自己理解、余暇活用

アカデミックスキル(読み書き計算)

ソーシャルスキル

小貫(2009)一部修正

学力とSSを元に、生きるために必要なスキルの獲得を

就労

就労スキル

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個別の移行計画

• 将来の「就労」「生活」「余暇」について目標をきめ、目標達成のために獲得すべきことがらを整理した計画書

• 個別の教育支援計画の一種• (例)http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/IESP.pdf

就労、卒業後の生活のビジョンを具体化し、高校で学ぶことを具体化すること

入学後、できるだけ早期に作成することが望ましい本人、保護者の参画

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①入学時の実態 ②卒業時の姿

③3年間の中で取り組む学習内容

④自己評価

卒業後の目標と達成のための学習を計画し、継続的に評価する。高校生活に見通しを持たせる

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参考:社会人講座(いなほの会)

• 就労や自立生活に必要な知識やスキルを学ぶ学習プログラム

• メニュー

– ガイダンス(自己紹介)、事前事後学習

– 調理実習、フリーマーケット参加

– 職場実習

• 成果引きこもりから社会へ、就労へ。わかり合える仲間との出会い

学校教育と社会生活をつなぐ「何か」が必要

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全国の取り組み

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例1:福島県立川俣高校

1. 支援が必要な生徒の実態把握

2. 支援対象生徒の決定と支援内容の検討

• 困難さの程度から4段階の学習支援

• 学習のユニバーサルデザイン化(スケジュール表、教材教具の工夫など)

3. 通常学級での支援

• 学習支援員(大学生)

• ストレスマネジメント教育

• インターンシップ、職業訓練

適切な指導を学校全体で実施

授業への取り組みの変化(生徒)

集団適応が良好に(生徒)

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例2:都立世田谷泉高校

• 日常の相談活動

• 校内委員会、コーディネーター、巡回相談、校内研修、地域の特別支援学校からの支援

• 授業改善

• 推進のポイント

カウンセリング、大学臨床心理コースとの連携

生徒による授業評価 → UDLの実施、共通理解

診断名を使用しない、一人一人の特性を認める困難を克服する方略を教える、チームで対応

専門家との連携、親の会との連携

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例3)静岡県立土肥高等学校

• 職業教育・キャリア教育に重点

• 「自己実現の時間」(新設)

– インターンシップ、不登校生徒への対応、職業観・勤労観の育成

– バイオセラピー:園芸を通して自信を回復

– カウンセリング:学習支援員、相談支援員

植物や野菜を育て収穫する。地域の方との交流生産的効果、経済的効果、

心理・生理的効用、社会的効用、教育的効用http://www.shizuoka-c.ed.jp/toi-h/

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例4)奈良工業高等専門学校• 学校組織

– 教務・学生・療務委員会、学生委員会を中心

– 「なんでも相談室」

• 発達障害への支援– 障害学生修学支援プロジェクト

– 修学支援計画表の作成

– 授業補修・授業補助

– 評価方法の変更

• 連携体制– 学級担任と教科担任

授業、学校、家庭に求める支援を表にし、

教科担当者が共有

不得意科目の補講(放課後、個人指導)

体育の授業補助実習での大学生による支援時間延長、代替評価

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例5)新潟県立出雲崎高校

• 生徒の情報収集、共有– 中学校訪問、校内情報交換会

• 支援チーム、連携による支援– 担任、養護教諭、単位制活性化相談員

– 発達障害者支援センター、障害者就業生活支援センターとの連携、保護者との連携

• 生徒の観察と分析

• 個別の移行計画の作成

• 障害特性に応じた対応

• 研修会の実施

「学校のみでは抱えきれない」という共通認識

応用行動分析による支援

その年次にクリアすべき課題の明確化

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21年度指定校の取組の概要

• SST、人間関係

• キャリア教育

• 学力向上、授業のユニバーサルデザイン化

– 基礎学力養成のあり方

• ボランティアの活用・保護者連携

• 校内支援体制の構築(教育相談など)

• 3年間の進路指導

• 生徒の自己肯定感の育成

キーワード:対人関係、学力、進路、支援体制、連携

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大学での取り組み(LD学会調査)

• 発達障害学生への支援あり:63.4%– 特別な支援組織、非公式な組織、随時支援

• 困難さ– 人間関係の構築(同胞、教員)、こだわり

– 特性に合わない進路選択、リテラシー不足

• 支援内容– 自己解決支援、特性の説明、学習支援、相談

• 学習支援– 環境作り、個別指導、ICTの活用、試験時間延長など

大学でも発達障害学生への支援は実施している

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特別支援教育の現状と課題

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2009年度文部科学省の事業

• 発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業(継続)

• 発達障害等に対応した教材等の在り方に関する調査研究事業

• 発達障害早期総合支援モデル事業

• 高等学校における発達障害支援モデル事業

• 特別支援学校等の指導充実事業

– PT、OT、ST等の活用

2008年度からの流れは変わらない

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2010年度文部科学省の事業(一部)

• 特別支援教育総合推進事業304,979千円(664,371千円)

• 民間組織・支援技術を活用した特別支援教育研究事業40,175千円(67,737千円)

• 特別支援教育支援員(幼・小・中) 約34,000人相当

事業仕分けにより、予算規模縮小県予算による対応

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法改正の動き

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障害者自立支援法(2006)• 障害のある人が普通に暮らせる地域作り

• 障害のある人のニーズや適性に応じた自立支援

• 市町村を中心とするサービス提供体制の確立

• 効果的・効率的なサービス利用の推進

• 費用の公平な負担と資源配分の確保

費用を負担できる程度の収入が得られるのか?就労の場が確保できるのか?

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障害者自立支援法改正へ

• 利用者負担の見直し

• 障害者の範囲及び障害程度区分の見直し

• 相談支援の充実(相談支援センターの設置)

• 障害児支援の強化

• 地域における自立した生活のための支援の充実

発達障害者も支援の対象に

施設の一元化、通所サービスを市町村へ放課後型のデイサービス

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発達障害者支援(法)の動向

• 課題

– サービスを必要とする発達障害者が適切に利用できる普遍的な仕組みへの検討

– 障害者自立支援法との関連

• 新潟県の発達障害者支援の動向

– サポートノート作成

– 普及啓発

– 連携体制の検討

• 新潟市の動向:発達障がい支援センターの設置

県HP掲載、商工団体への協力依頼

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県の施策(2010)

発達障害への理解と支援を広げるためのシンボル マーク

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さまざまな支援を保障し継続するための支援ツール

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高等学校に求められること

• 実態把握と校内支援組織の設置

• 必要な支援の実施

• 関連機関との連携

• 基本的なこと

スクリーニングテスト、校内委員会、コーディネーターの任命

支援計画の作成、学習支援、カウンセリング、SST

特別支援学校、発達障害者支援センター、ハローワーク

診断されていなくても、特別な教育的支援は可能である

現状の把握、組織の設置、できることから始める

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役に立つサイト

• 文部科学省http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material.htm

• 発達障害教育情報センター

• http://icedd.nise.go.jp/index.php?page_id=0• 新潟県発達障がい者支援センター

• http://www.niigata-rise.net/• 新潟市発達障がい支援センター

• http://www6.ocn.ne.jp/~join/index.html

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長澤研究室

http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/メールマガジン、特別支援教育・発達障害の情報、資料