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- 1 - 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会/学術分科会学術研究推進部会 脳科学委員会 調査検討作業部会(第4回) 議事録 1. 日 時 平成20年7月15日(水)17:00~19:00 2. 場 所 文部科学省 3階1特別会議室 3. 出席者 (委 員)宮下主査、川人主査代理、伊佐委員、入來委員、大隅委員、岡部委員、高田委員、 高橋委員、本田委員、本間委員、桝委員、森委員 (事務局)菱山ライフサイエンス課長、生田ライフサイエンス課長補佐、北風学術研究助成 課企画室長、松永学術機関課研究調整官 4. 議 題 (1)「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(審議経過報告)」 (案)について (2)平成21年度拡充課題の事前評価について (3)第一次答申(中間取りまとめ)(案)の構成について (4)その他 5. 配付資料 資料4-1 脳科学委員会 調査検討作業部会(第3回)議事録(案) 資料4-2 長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(審議経過 報告)(案) 資料4-3 平成21年度拡充課題の事前評価について 資料4-4 第一次答申(中間取りまとめ)(案)の構成について(案) 6.議 事 【宮下主査】 それでは、ただいまから第4回脳科学委員会調査検討作業部会を開催いたしま す。本日はご多忙のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。 それでは、本日の出席状況について、事務局からご報告をお願いいたします。 【生田ライフサイエンス課長補佐】 本日は、委員の皆様全員にご出席いただける予定ですが、 高橋先生からは、少し遅れられるとのご連絡をいただいております。 【宮下主査】 よろしいですか。それと、研究振興局長が磯田局長に交代されました。もしお 時間があればお見えになるかもしれませんので、その際はご挨拶いただきたいと思います。前任 の德永局長は高等教育局のほうに異動されましたが、おそらく引き続き脳科学研究に関心をお持

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科学技術・学術審議会

研究計画・評価分科会/学術分科会学術研究推進部会

脳科学委員会 調査検討作業部会(第4回) 議事録

1. 日 時 平成20年7月15日(水)17:00~19:00

2. 場 所 文部科学省 3階1特別会議室

3. 出席者

(委 員)宮下主査、川人主査代理、伊佐委員、入來委員、大隅委員、岡部委員、高田委員、

高橋委員、本田委員、本間委員、桝委員、森委員

(事務局)菱山ライフサイエンス課長、生田ライフサイエンス課長補佐、北風学術研究助成

課企画室長、松永学術機関課研究調整官

4. 議 題

(1)「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(審議経過報告)」

(案)について

(2)平成21年度拡充課題の事前評価について

(3)第一次答申(中間取りまとめ)(案)の構成について

(4)その他

5. 配付資料

資料4-1 脳科学委員会 調査検討作業部会(第3回)議事録(案)

資料4-2 長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(審議経過

報告)(案)

資料4-3 平成21年度拡充課題の事前評価について

資料4-4 第一次答申(中間取りまとめ)(案)の構成について(案)

6.議 事

【宮下主査】 それでは、ただいまから第4回脳科学委員会調査検討作業部会を開催いたしま

す。本日はご多忙のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、本日の出席状況について、事務局からご報告をお願いいたします。

【生田ライフサイエンス課長補佐】 本日は、委員の皆様全員にご出席いただける予定ですが、

高橋先生からは、少し遅れられるとのご連絡をいただいております。

【宮下主査】 よろしいですか。それと、研究振興局長が磯田局長に交代されました。もしお

時間があればお見えになるかもしれませんので、その際はご挨拶いただきたいと思います。前任

の德永局長は高等教育局のほうに異動されましたが、おそらく引き続き脳科学研究に関心をお持

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ちいただけると思いますので、その意味では、我々にとっては大変励みになることだと思います。

それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【生田ライフサイエンス課長補佐】 それでは、本日の配付資料を確認させていただきます。

お手元の議事次第にございますように、本日の配付資料といたしましては、4-1で前回の第

3回調査検討作業部会の議事録(案)、4-2といたしまして審議経過報告(案)、4-3といた

しまして「平成21年度拡充課題の事前評価について」、4-4といたしまして「第一次答申(中

間取りまとめ)(案)の構成について(案)」でございます。また、これ以外に、委員の皆様方に

は机上配付といたしまして、本日付の日本経産新聞の朝刊29面に、「神経科学の応用 慎重に」

という記事がございましたので、こちらをご参考までに配付させていただいております。以上で

ございます。

【宮下主査】 それでは続きまして、資料4-1、前回の第3回調査検討作業部会議事録(案)

ですが、各委員には既に内容のご確認をいただいております。いただいたご意見を踏まえて、修

正しておりますので、もしこれで差し支えなければ、了承とさせていただきたいのですがよろし

いでしょうか。

(委員了承)

【宮下主査】 ありがとうございます。それでは、本日の議事に入りたいと思います。

初の議題は、「長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(審議経過報

告)」(案)についてでございます。この審議経過報告案がどういう意味合いであるかというのは、

これはもう既にこの作業部会の一番初めにお話ししたはずですが、もう一度思い出していただく

のもよろしいかと思います。事務局からのご報告のときに、この審議経過報告案の意味合いがど

ういうことかということも含めて、ご説明いただくのがよろしいと思います。

この案は、これまでこの作業部会で、先生方に非常によく議論していただいたことを、6月3

0日に開催された脳科学委員会に向けてまとめたメモがございましたが、それに基づいておりま

す。さらに、前回の脳科学委員会において、色々なご意見が出ましたので、それを踏まえてさら

に修正をして、ここに案としてお出ししたということでございます。それでは、本件に関しまし

て、事務局からご説明をお願いいたします。

【菱山ライフサイエンス課長】 それでは、ご説明申し上げます。資料4-2でございます。

まず、今、宮下主査からご説明がありましたが、この審議経過報告案の位置づけについて、復習

の意味も含めまして、全体をまずご説明したいと思います。

この資料の57ページを見ていただきますと、「今後の審議予定」という資料があります。今ま

でこの作業部会では2月からずっとご検討いただきまして、また、脳科学委員会でも、先ほど宮

下先生からご説明がありましたが、6月30日に第3回が開催されて色々とご議論をいただきま

した。今後、諮問に対して答申をするということでございますが、その前にまず8月に、この5

7ページの一番下にありますように、審議経過報告を取りまとめて、科学技術・学術審議会総会

へ報告することを考えております。その後の予定といたしましては、まだ残っている検討事項が

ございますので、9月から12月にさらに審議をしていただきまして、来年1月には、第一次答

申の中間取りまとめ案を取りまとめていただきたいと考えております。その後、科学技術・学術

審議会総会での審議を経てパブリックコメントに付しまして、さらに議論を重ねて、約1年ぐら

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い先ではございますが、来年の6月に第一次答申という形で取りまとめていこうと考えておりま

す。それが全体のスケジュールであります。

この資料4-2の審議経過報告案は、今までの審議をまとめたものでございます。6月30日

に脳科学委員会が開催されまして、そこでも各検討事項に関する議論がされましたし、また、そ

の後、委員の先生方からコメントをいただいておりまして、それを踏まえて修正しております。

また、本日、学術研究助成課の北風企画室長が見えられておりますし、学術機関課からは松永研

究調整官にも出席していただいておりますが、こういった省内の関係課からもご意見をいただい

ております。特に、人材育成のところで大学院関係の記載がございますので、高等教育局にも中

身を確認していただいております。そういったものをまとめたのが、本日配布しているこの資料

でございます。

まず、表紙をめくっていただきますと、目次がございます。第Ⅰ章として「国内外における脳

科学研究の現状と問題点について」、それから、第Ⅱ章として「大学、大学共同利用機関、独立行

政法人等における脳科学研究の推進体制及び効果的な連携の在り方について」、第Ⅲ章に「脳科学

研究人材の育成の在り方について」、第Ⅳ章に「脳科学に係る研究開発ロードマップについて」、

第Ⅴ章に「今後の審議予定について」という形でまとめております。

簡単にご説明いたしますが、1ページにありますように、「はじめに」で経緯が書いてあります。

後の段落にありますように、「まだ審議を行っていない検討事項を含め、今後、さらに議論を深

めていく予定である」というふうに書いてございます。

2ページ目からは、「国内外における脳科学研究の現状と問題点について」ということでありま

す。これは、まず脳科学の社会的意義と科学的意義が述べられております。脳科学は、哲学、心

理学、教育学、社会学、倫理学、経済学等の人文・社会科学なども対象になっておりますし、ま

た、前回の脳科学委員会で芸術などについても触れられていましたので、そういった文言も入っ

ております。さらに、ご参考までに机上配付いたしました資料にもございますが、経済学の分野

でも脳科学が取り上げられているということでございます。それから、2ポツとして、これまで

の脳科学研究の主な成果がございます。

そして、8ページに、国内外における脳科学政策の現状というのがございます。ここでは過去

10年間の脳科学研究の推移を振り返って、かつ、今後はこういう方向に進んだほうがいいので

はないかということが書いてございますが、これも先生方にご議論いただいたものであります。

また、9ページ目の一番下にありますように、科学研究費補助金の関係では、 近の動向なども

取りまとめております。

それから、13ページから第Ⅱ章でございます。ここは、「大学、大学共同利用機関、独立行政

法人等における脳科学研究の推進体制及び効果的な連携の在り方について」ということで、 初

に現状が書かれております。14ページを開いていただきますと、それぞれの機関の役割の基本

理念が書かれています。次に、15ページからが、効果的な研究推進体制ということでございま

す。当初、大学における研究は「散在型」と書いてありましたけれども、大学における研究の独

創性や規模を鑑み、「小規模個別型研究」というような文言にしています。

それから、21ページ目は、社会還元を目指した産学連携に向けた取組ということで、ここは

脳科学委員会に産業界からご参加いただいている委員に少し考え方を示していただいて、そうい

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ったものを組み入れたものでございます。

次に、23ページでございますが、ここは「脳科学研究人材の育成の在り方について」という

ことで、色々とご議論いただいたところであります。 初に「学際的・融合的学問としての脳科

学」というのがありますが、他の箇所でも同じような内容の記載がございますので、今後、報告

書を取りまとめるときには、あまり繰り返しがないようにしたいと考えています。それから、こ

このところは、脳科学委員会において、脳科学や神経科学のご専門でない委員からも、幾つかコ

メントがございましたので、そういったものを取り入れております。

それから、24ページでございますが、脳科学大学院教育というのがかなり詳細に書かれてお

りまして、これは先生方から色々とお知恵を出していただいたものでございます。これに対して

は、高等教育局などから幾つかコメントをいただいたんですが、全体として、大学が各自で考え

るようなことを、あまり国が押しつけるような形で書かないほうがいいんじゃないかとか、ある

いは、大学院の設置などは認可事項になっておりますので、大学が勝手にできるふうに書くのは

避けたほうがいいというコメントがありまして、若干書きぶりを変えております。

それから、これは我々事務局から見て若干思ったところがあったので、少し書き加えたんです

けれども、どちらかというと、この作業部会も大学の先生方が多いので、大学で教えるほうの見

方、あるいは、人材を育成するほうの見方が大きいと思いますし、また、後継者づくりという意

味では非常によく考えていただいたんですけれども、学生は研究室を継ぐ方ばかりではないので、

そういったことに配慮して、少し付け加えて、例えば、「社会においてどのような人材が求められ

ているのかを十分に考慮する必要がある。」といったことを、 初のパラグラフに入れさせていた

だいたりしております。

それから、31ページの「脳科学に係る研究開発ロードマップについて」でございます。ここ

は、1ポツに「脳科学研究開発の推進に関する基本的考え方」ということで、まず基礎研究、基

盤技術開発、社会への応用、それから学際的・融合的環境の整備といったことが、研究の中身で

はなくて、研究のフェーズという意味で整理されております。

次に、34ページからは、「重点的に推進すべき研究領域・研究課題」ということでございます。

ここでは 初、政策に関するパラダイムという言葉を使っておりましたが、脳科学委員会におい

て、パラダイムという言葉を使わなくても説明できるのではないかというご意見がありましたの

で、こういった書き方に修正しております。中身については、大きな変更はありません。

重点的に推進すべき研究領域・研究課題としては、まず、35ページにありますように「健康

脳」、36ページにありますように「社会脳」、38ページの「情報脳」という3つの領域がござ

いまして、それから、それらを支える基盤技術開発ということで整理しておりまして、それぞれ

あまり細かく年数は分けずに、短期的な取組、中長期的な取組、それから、社会への応用として

はこういうことが考えられるというように整理しております。

後に、41ページの「今後の審議予定について」でございますけれども、今後の検討事項と

いうのがありますが、まだ審議を行っていない検討事項を今後議論していくとともに、今まで審

議したことについても、フィードバックして、全体としてこういうふうに変えたほうがいいんじ

ゃないかといったことも、今後ご議論いただきたいと考えております。

繰り返しになりますが、来年1月を目途に、第一次答申の中間取りまとめ案を作成して、その

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後、パブリックコメントなどを実施していきたいと考えております。簡単ではございますが、以

上です。

【宮下主査】 ありがとうございました。

それでは、これから本件につきまして、ご意見やご質問、もしくはご議論をいただくわけでご

ざいますけれども、時間がある程度限られていますので、本日の会議で何を議論するのが一番重

要かということに関して、私の個人的な見解を始めにちょっとだけ申します。

今後のタイムテーブルを先ほどご説明いただきましたが、本日のこの作業部会での審議を経て、

8月19日に開催される脳科学委員会で審議経過報告を取りまとめて、その後、科学技術・学術

審議会総会に報告されるわけです。ですから、この審議経過報告案について、実際に先生方全員

にお集まりいただいてご議論いただけるのは、今日だけということになるわけです。当然、本日

より後にメールでもご議論いただきますが、先生方もよくご存知のように、メール会議というの

は、ブレーンストーミング的に色々なアイデアを出すのには非常に向いているんですが、 終的

に議論を収束させるときにはなかなか難しい部分がありまして、そういう点では、こういう実際

に皆さんにお集まりいただいて議論する会議というのが、やはり非常に重要です。ですから、今

日は、全員がいらっしゃるところで本当に議論しないとこれはもう案として出せないよというよ

うな、そういうタイプの話題を取り上げていただいて、ご議論いただくのがよろしいというふう

に思います。ただ、どんなことを今日ご議論いただくかに関しては、もちろん、先生方のお考え

次第でございます。ご議論いただく内容は、個々の文言、ワーディングから全体の構造、どんな

ふうにわたっても結構です。

さて、それでは、とりあえず私から口火を切るという意味で、幾つか申し上げようかと思うん

ですが、1つは、今こんなことを言うと事務局は困るかもしれないんですが、課長のほうから、

大学の研究体制を特徴づける言葉を「小規模個別型」というふうに書くことにしたとご説明いた

だいたのですが、本当にこれでいいのかどうかということは、本日ここで議論しないと、多分、

収拾がつかなくなる可能性があります。ここには色々な立場の先生がいらっしゃるわけですから、

この「小規模個別型」というのが出ていってしまっていいかどうかということに関しては、多分

色々とご意見がおありじゃないかと思いますが、今日ここで収束してくれないと困るので、ご議

論いただくのがいいかなと思います。

もう1つ大きなことは、ロードマップが、例えば「脳科学研究ルネサンス」などと比べても非

常に特徴がある。その内容自身も、もちろんそうなんですが、そもそもこのロードマップを置く

場所というのが、この文章全体の中でどこにするのがいいのかに関しては、私はいまだに悩んで

おります。現在のバージョンは第Ⅳ章というところに置いてあります。これは本当にここでいい

のかどうか。例えば、もっと冒頭のほうに出して、全体のインパクトを高めるほうがいいかもし

れない。でも、全体の流れからいって、やはりこの位置にあるのがいいという考え方もあるかも

しれない。

これに関しては、できれば本日、色々と議論していただくのがいいかもしれないんですが、し

かし、あまりにも大きな問題なので、もし難しければ、この審議経過報告案の段階では、必ずし

も完全な決着はつけずに、その次の第一次答申の中間取りまとめ案というところで、 終的に決

着をつけるというのでもよろしいかもしれません。しかし、それにしても、やはりこの審議経過

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報告案というのも重いものでございますので、先生方の忌憚のないご意見をいただくのもいいか

もしれないと、例えばそんなふうに思います。それ以外にも、多分色々と論点があると思います

ので、先生方にご議論いただきたいと思います。

それでは、ご意見やご質問など、積極的にご発言いただきたいと思います。よろしくお願いい

たします。いかがでしょうか。本田先生、どうぞ。

【本田委員】 私と高田先生が第Ⅰ章をまとめたのと、ロードマップのところも川人先生とま

とめるように言われたものですから、色々なところで私個人の考え方がちょっと反映され過ぎて

いるのかもしれないと、若干自己批判をしております。

それで、構成上の問題なんですが、第Ⅰ章の冒頭の意義のところで、社会的意義が来てから、

その後に科学的意義が来ているんですけど、これは細かいことなんですけど、諮問文も先に科学

的意義が来ていたので、やはり科学的意義から社会的意義にいったほうがいいかなと思います。

これは、実はただ順番だけの話ではなくて、この審議経過報告案は、社会に貢献する脳科学とか、

社会応用をかなり全体的なトーンとして強く打ち出しているところがやはりあると思うんですけ

ど、その点についてはこの間の脳科学委員会でも少しご意見がありましたけれども、決して拙速

な社会応用というのを目指しているのではなくて、やはり今の段階では社会にそのままでは応用

できないところもあるので、ちゃんと応用できるように基礎、基盤を固めましょうということが

主に思うところだったんですけれども、書き方によっては、なかなかそういうふうに取っていた

だけなくて、そういう論点というのはちょっと伝わりにくいなということを全体的に思いました。

ですから、ここはやはり科学的意義から始めて、社会的意義というふうな形にいったほうが無難

かなと、自己批判も含めて思っているところでございます。

それから、もう1つは、先ほどもありましたけれども、各セクションにおきまして、脳科学の

意義と問題点というのを、それぞれのお立場で分析していただいておりますけど、これは総論的

に第Ⅰ章でまとめていくべき内容かなというふうに思っておりまして、これは、そういうふうに

お認めいただければ、ぜひそうさせていただきたいと思います。ただ、第Ⅰ章ですべてをまとめ

るというわけにもいかないので、それは総論的なまとめ方をして、個別的な問題は、もちろん個

別のところでと思いますけれども、同じような表現が色々なところに出てきていまして、脳の全

体性というのも、僕がどこかで書いたと思うんですけど、ずっと出てきているので、そういう全

体を通したトーンということが、自己批判も含めた意見でございます。以上です。

【宮下主査】 ありがとうございます。確かに明らかに重複している部分があるので、これは

手を入れていただければ、文書として非常に良くなると思いますので、ぜひお願いいたします。

それから、もう1つ、前回の脳科学委員会にご出席いただいた先生方が何人かいらっしゃると

思いますが、色々なコメントをいただきましたので、脳科学委員会でのご指摘は反映させたいと

思います。広い見地からのご意見をいただきましたので、そういうことを配慮して、もともと先

生方に起草していただいた原案をさらによくするという方向でお考えいただければいいと思いま

す。

今の本田先生からのご指摘も、確かに大分そういう意見が出ましたね。ですから、誠にごもっ

ともでありまして、科学的意義から書き始めるほうが、脳科学委員会の意向を反映する可能性は

あると、私も思います。ほかに何かございますか。

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【入來委員】 今のことに関連して、全体の書きぶりなんですけれども、特に本田先生がご担

当になった第Ⅰ章の現状と問題点なんですが、冒頭のセクションなので、結論を明確にポンと言

っていくというのは、文書の書き方としてひとつあり得るとは思うんですけれども、先ほどご自

身でご指摘になった、例えば、社会に貢献する脳科学などのことも含めてなんですが、結論が先

にポンと出て、それを後で説明するというような書きぶりになっているところと、あと、科学論

文としてはこれでいいのかもしれませんが、その結論に到達するための非常に断定的なワーディ

ングになっているところがあります。具体的な例を幾つかご指摘したいと思うんですけれども、

審議会の答申としては、やはり全体のバランスですとか調整を着々とやりながら結論へ持ってい

くという形にしたほうが、これは先ほどご紹介があったように、この文書がこのまま外に出てい

った場合、コミュニティーの品位といいますか、見識を問われかねないところなどがあるように

思いますので、そこは注意するのがいいんじゃないかということが幾つかあります。

具体的なことを3つほど申し上げますと、1つは、今の社会に貢献する脳科学というところで

すが、資料4-3のポンチ絵にもはっきり書かれていたんですが、これは多分、アウトプットを

明確にするということで結論にはなるかもしれませんが、アメリカやヨーロッパなどでも、 近

は科学研究をとにかく追求して、その追及のために産み出される派生技術が、結果として応用さ

れることによって社会に大いに貢献するというようなスタンスの受け止め方に今なっているよう

なので、現状のようにあからさまに 初から社会に迎合するような形に取られかねないような書

きぶりですと、やはり納税者といいますか、国民はそれなりの感情を抱くのではないかと思いま

す。つまり、脳科学コミュニティーに対してその品位を問われることがあるやに危険を感じます

ので、やはり本田委員がおっしゃったように、科学的なことを追求して、その結果出てくるもの

が貢献できるような仕組みをつくるとか、あるいはその理論的な積み上げをするほうがいいので

はないかというところが1点です。

あと2点あるんですが、もう1つは、第Ⅰ章の3-1の 後のところに、予算のことと機関の

連携のことが書いてあって、予算が小さくなって機関の連携体制が講じられなかったことが大き

な問題点として挙げられるということで、ならば、その仕組みをつくるというような結論に持っ

ていくようなことになっているんですが、このレベルではまだそこら辺は明らかではなくて、お

そらく研究予算が少なくなったことによって連携がうまくいかなかったということが歴史的にあ

って、その予算を大きくするためにこの委員会が設置されて、我々は一生懸命考えているのでは

なかろうかと思うので、その辺の因果関係が、やはり結論が唐突に出てきて、その結論に到達す

るためのプロセスが十分に吟味されていないような、結果的にこういう結論になるのかもしれま

せんが、その咀嚼のプロセスというのを、例えば後ろのほうを参照するなりして、明確にした上

で積み上げていかないと、やはり、因果関係の齟齬を来すような読まれ方になってしまうと非常

に危ないかなという感じがします。

後の点として、このセクションの 後の4ポツのところなんですが、例えば、2番目の段落

で、「『脳科学』という枠組みの中に閉塞する」とあって、脳科学は非常に広い枠組みだと言って

いるのにもかかわらず、その中に閉塞するというのはちょっと変な感じがします。それから、す

べての人がこういうふうにある必要もないわけで、多分、書きぶりの問題だと思うんですが、旧

来のものを否定して、かつ、代わりのものを提案して、そうでなければならないというような書

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きぶりになっていますし、あるいは、4段落目の抜本的見直しというのは、ちょっとこういう審

議会の答申としてはなじまないような書きぶりであるやに感じるところがあります。結局、総括

すると、やはり結論が先にポンと出てくるような書きぶりというのが、多少考慮の余地があるの

ではないかなというふうに思います。ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【宮下主査】 ありがとうございます。ご指摘いただいた点は、もっともな部分ももちろんご

ざいまして、ことに 後に総括としておっしゃったことは全くそのとおりだと思いますし、先生

の3つの論点のうち、 後の3つ目の書きぶりその他に関しては、全くそのとおりだと思うんで

すが、初めの2つに関しては、私はちょっとコメントがあります。

2つ目の点は、大きな論点になる可能性があるので、先ほど3-1ということでご指摘いただ

きましたが、それをもうちょっと具体的におっしゃっていただければありがたい。単なる字句の

問題であれば、先ほども申しましたようにメールでできますが、もっと大きな内容が引っかかっ

てくるようなところは、今日の段階で具体的にご指摘いただくほうがいいと思います。

それから、一番目に先生がおっしゃったことは、これは誤解が含まれていると思いますので申

します。先生はポンチ絵のことをおっしゃいましたが、ポンチ絵とこの審議経過報告というのは、

非常に性格の違うものだということをご理解ください。ポンチ絵のほうは、これは後で別の議題

として出てきますが、脳科学研究戦略推進プログラムの予算要求に関係するものでして、ある意

味では、ライフ課絡みというふうにご理解いただいてよろしいと思います。しかし、審議経過報

告のほうはそうではなくて、この作業部会若しくは脳科学委員会が受けた諮問に応える文書であ

りますので、大臣若しくは学術審議会というもっと広いところから問われていますので、広いと

ころに返すという位置づけです。ですから、この2つは画然と位置づけが違います。ですから、

それを一緒にされては、議論が混乱すると思いますので、その点はちょっとご注意いただいたほ

うがよろしいと思います。

私見を申しましたが、もしよろしければ、先ほどの2番目の論点に絡んで、先生は非常に重要

なことをおっしゃったので、具体的にこういうふうに変えたらいいんじゃないかというご指摘を

いただいたほうがありがたいと思います。お願いいたします。

【入來委員】 はい、2点目は論理構成の大枠の問題だと思うんですが、9ページ目の下から

2番目の「他方」で始まる段落の真ん中辺りに、「大規模なプロジェクトが新たに推進させること

はなかった。」というのがあります。つまり、その後は新たな予算がつかなかったということです

が、これは確かだと思うんですね。

それを受けて、その後のロジックとして、「大学、大学共同利用機関、理化学研究所BSI等の

協同体制の下、重点的に取組む方策が採られなかったこと等が問題点として指摘できる。」とあり、

また、それらの機関が連携して、「多様な脳研究に重点的に取組む体制を講じなかったことも課題

として挙げられる」とございます。

ここでは、予算がつかなかったということと、それから、連携体制がとられなかったというこ

とが出てきているんですが、それらのどちらが原因でどちらが結果かということが吟味されるよ

うな文言が挟まれることなく、連携体制をつくることが必要であるというふうに、 後の「すな

わち」で始める段落で結論が述べられているということは、問題点は2つあったんだけれども、

それを受けて、後者のほうを改善することが必要であるという結論になっているんですね。この

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委員会の目的は、おそらく前者のほうを改善することであったと思うんですが、それが、後者を

改善すれば前者が改善できるのかどうかというようなことは、もし後者が前者の原因であればそ

うなんだろうけれども、そこら辺の因果関係が、これはすっと取り違えかねないような書きぶり

になっている。そこの間の構造を分析するようなことが、ここで余裕がなければ、後ろのほうに

参照すればいいと思うんですけれども、そういう問題点の洗い出しというところが、この辺は若

干誤解を招くようなことがあるのではなかろうか。おそらく、ここで結論していることは大事な

ことだと思うんですけれども、この結論が先にあるかのような印象を持つのではなかろうかとい

うような危惧を持ったということで、その全体の論理的なものですが、現状分析の論理構成がち

ょっと気になったというところです。

【宮下主査】 分かりました。理解できました。おっしゃることは誠にごもっともだと思いま

す。今、先生がご指摘されたことであれば、多分、文言を書き足せばいいと思うのですが、例え

ば、「すなわち」のところに、そもそも大規模なプロジェクトを起こさなければいけないというこ

とを書き足すとかですね。

【入來委員】 はい、多分そこが一番大事なところだと思います。

【宮下主査】 例えば、幾つかの問題点を書き直すことによって、先生がご指摘の趣旨は、実

現できると思いますので、多分、この場でご議論いただく必要は、それほどなかろうと思います。

誠にごもっともな指摘だというふうに理解できました。

ほかに何か先生方、重要な論点で、ぜひここで議論しなくてはというようなことに関しては、

どんどんご発言ください。

【大隅委員】 今のところに関係して少し小さなことと、それから、4ポツのことをお話しし

たいんですけれども、先ほどの9ページ目のところですが、平成12年度以降、大規模なプロジ

ェクトが新たに推進されることはなかったと書いてあるんですけれども、CRESTで津本先生

が研究統括の領域と、それから、樋口先生の領域が今走っていて、津本先生のはあと少しで終わ

るところですけれども、そこら辺のことを書いておかなくてよいのかというのが気になった点の

1つです。

それと、11ページ以降の4ポツのところなんですが、おそらくこの第Ⅰ章でここが一番重い

ところなんだと思うんですけれども、それにしては、ここの書き方が一体何をねらっているのか

というのが、私にはちょっと分かりにくい感じがいたしました。これは多分、ここでご議論され

たほうがいいことだと思うんですけれども、つまり、研究体制の見直しということが、今後の脳

科学の推進の上で、例えば、どういう課題をより進めなければいけないのかということよりも、

先に述べなければいけないのかと。それで問題がないのであれば、今のこの目次の並びでいいの

かもしれないんですけれども、やはり、あくまでも脳科学研究をどういうふうに推進するのかが

重要であって、先ほど本田委員がおっしゃっていましたが、社会的意義と科学的意義の順番は逆

の方が良いということだとすれば、例えばロードマップのような、どういう順番で脳科学研究を

推進していくのがより効果的であるかというようなことのほうが全体としては先に来る。すなわ

ち、目次で言うところの第Ⅳ章が第Ⅰ章の後に来るというような大幅な構造の組み直しというの

が、1つ考えられることではないかと思います。

そして、4ポツのところというのは、それをどうするかというようなことをご議論いただいた

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上で、それに合わせた形で書かないといけないのではないかなと思います。現状では、課題と在

り方というふうに書かれつつ、後ろのところの大事なキーワードが全然入ってきていないと思い

ますので、重複は避けなければいけないとは思いますけれども、場合によっては、この第Ⅰ章の

ところだけ読めば大体のことが分かるように、もう少し段階性、階層性があったほうがいいのか

なと思います。

【宮下主査】 ありがとうございます。大隅先生、誠にごもっともでありまして、というのは、

実は、本日の後ろのほうの議題で、第一次答申の中間取りまとめ案の作成に向けて、今後、この

作業部会がどのようなことを議論しなくてはならないかということのリストが出てくるんですが、

実はそこで、まさに先生がご指摘された在り方というものを、この第Ⅰ章に組み込んで書かない

といけないという問題提起をする予定でして、後でその話が出てきます。つまり、我が国におけ

る脳科学研究の在り方というのが、本来9月以降の議論としてあるんですが、それはこの報告書

の第Ⅰ章の中に組み込んで議論するのが良いのではないか、と考えまして、それを先生方に今後

の課題としてお願いしようと後ろの資料4-4にそう書いてあります。

ただ、この段階で、つまり、もう先生方にお集まりいただくことができないという段階で、こ

の第Ⅰ章、それから4ポツをどの程度いじっていいのかということに関しては、私はちょっと判

断がつきかねるところがあります。だから、もし今日の段階で先生方が、やはりこの4ポツは何

とかしないといけないということであれば、積極的にここで議論いただいて直すという方向もあ

りますが、それは9月以降に本格的にやっていただく予定なので、とりあえず現在の審議経過報

告案の段階では、それほど大幅にいじらないという考え方もあり得ると思います。それに関して

は、私は判断がつきかねますので、先生方のご意見をいただきたいと思います。

今のご指摘に関しては、どういたしましょう。ここでもっと議論いたしましょうか。それとも、

9月以降に送りましょうか。今日は時間があまりなくて、個人的には、先ほどの小規模個別型が

気になっておりまして・・・。

【本田委員】 大変申しわけないんですが、もともとここは仮置きなんです。ほかのところで

課題や問題点、それから、やはり展望が出てこないとここのところは書けないのですが、ただ審

議の順番が一番初めになっていたので、とりあえず課題と在り方という項目を立てて、総論的な

ところを入れたというのが実情でございまして、大隅先生おっしゃることは、全くごもっともだ

と思います。

今後のやり方としましては、主査がおっしゃったように、本格的な議論は9月以降に送るとい

うことでいいかと思うんですけど、既に第Ⅱ章から第Ⅳ章のところで出ている問題点などについ

ては、それを要約するような形でここのところに持ってくるというようなことを、これはもう何

か新しいポリシーをこの中に盛り込むということではなくて、それは作業としてできるかなとい

うふうには思っておりますので、少しそれ以降のものとの整合性を文言上つけるというぐらいの

ところでとどめて、本格的な議論は9月より先というのでいかがですか。

【宮下主査】 もし先生方が今の本田先生のご説明でご了承いただければ、やはりこの審議経

過報告案はそういうふうに処理させていただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

よろしいですか。

それでは、先ほどの大学、大学共同利用機関、研究開発独立行政法人の役割に関するご議論は、

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伊佐先生、入來先生、岡部先生が担当してくださって、ことに大学関係だと岡部先生かもしれな

いんですが、この文言の問題はいかがお考えですか。

【岡部委員】 やはり、これを一読して、ここが一番引っかかった事柄でした。これを変えら

れた理由をお聞きしたかったんですけれども、大学に関しては、小規模かというのがまず問題で、

むしろ、小規模から大規模まで多様なものがあって、多様性があるというのが大学の特徴だと思

うんですね。もう1つは自発性というんでしょうか。そういったところが特徴で、自発型多様性

を有する研究機関というような呼び方をされるのであれば、比較的受け入れやすいんですが、小

規模個別型というのはかなり抵抗があります。

第Ⅱ章の1ポツの「我が国における脳科学研究の推進体制の現状」のところの3番目の段落に、

「米国においては、数十名を越す主任研究員を一堂に抱える神経科学の専門研究機関が多くあ

る。」とあって、下に引用があるんですが、そこを見ても、Stanford、Harvard、UCSFと、こ

れらは大学なんですね。大学というのは、ある意味では非常に大規模な研究機関であるというこ

とにもなるわけで、小規模個別というのは、私としてはあまり好ましい言葉ではないというふう

に感じています。

【宮下主査】 いかがでございましょうか、ほかにご意見はございますか。できれば、ご意見

とともに、対案のようなものを出していただけると、今後のメール会議の負荷が少なくて済むと

思うのですが。

【本田委員】 今、岡部先生が言われたとおり、まさに多様性と自由発想型といいますか、そ

ういう拠点というのは、文言としてとてもよろしいのではないかと思います。

これは多分、先ほど主査がおっしゃっていた資料4-4の中間取りまとめの構成案のところで、

実は第Ⅱ章と融合されようとしている「学術研究、基礎研究及び政策課題対応型研究開発の役割

と推進体制の在り方について」の議論を深めるより、先に体制の話がいっているので、出てくる

文言が色々と誤解を招くのではないかと思います。これは、読む人が読むと、大規模は理研だけ

でよろしい、大学は小規模でいい、みたいに読めてしまうので、確かにそれは非常に危険な感じ

がします。ですので、そういう点では、やはり多様で自由発想なとか、そのあたりをうまく盛り

込んでいただくといいんじゃないか。

【宮下主査】 何か、語呂が悪いですね。もうちょっと語呂が良くないと、多分、納得してい

ただけないんじゃないでしょうか。どうぞ、活発にご意見をいただければ。

【川人委員】 よろしいですか。先日の脳科学委員会に出ておりましたけれども、そのときに、

以前使われていました散在型という言葉を、もう少し前向きな言葉にした方がいいという意見が

ございました。

ここの本当の問題は、こうやって2つのものをシャープに対立させようとする書きぶりという

か、多分、予算を取る場合には、ここはこれをやりますよ、これは違うこれをやりますよ、Aと

Bは黒と白で全く重なりはありませんというふうに書くと、説明上は色々と都合がいいんでしょ

うけれども、大学に関しては、先ほどからご意見が出ていますように、小規模個別型や散在型の

ものもあれば、集約型・戦略的研究もあるわけですから、そもそも大学の研究をこうやって括弧

付きで1つの言葉であらわそうとすること自体に、私は無理があるのではないかと思います。

ただし、共同利用機関や独立行政法人に関しては、それなりに何か特徴づけるということは当

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然あってしかるべきだと思うので、そこのところの基本的な考え方の問題かと思うんですけれど。

【宮下主査】 なるほど。川人先生は、もちろん出席されていらっしゃったので、よくお分か

りなんですが。でも、この段階では、基本的に括弧付きで一応コントラストをつける書き方をし

ているんですね。まさに今日、議論するに足るかなり重要な論点です。僕も、この段階でやめて

いいかどうかまではちょっと自信がないのですが、いかがでしょう。

【伊佐委員】 よろしいですか。小規模というのは、13ページの4段落目にもありますが、

現状が小規模でありがちだという認識があるわけです。ただ、個人的に個別型は悪くないなと思

うんですけれども、やはり小規模というのは、現状を追認しているだけであって、今後は、ある

意味でもうちょっと大きくしたほうが良いのかもしれないということも含まれているわけですか

ら、やはり小規模という言葉は、この場合、適切ではないと思います。むしろ、自由発想型とい

うのが、もともとはボトムアップですよね。個別自由発想型というのはいかがですか。

【宮下主査】 いやあ、やはりこれはかなり難しい問題になるのではないかと思います。

【伊佐委員】 やはり何か切り分けが必要だと思います。今ここでこの枠組みを変えてしまう

と、この章の筋立てが大きく崩れてしまうので。

【宮下主査】 難しいですね。私が今伺っていても、想像できることは、例えば、小規模個別

型の代わりに自由発想型というのをもしはめ込んでしまったとすると、「じゃあ、大学以外のとこ

ろは自由発想ではないのか」という反応が容易に予想できます。ですから、物事はそんな簡単で

ないですね。これは、どういたしましょう。

【川人委員】 よろしいですか。今のとある意味逆のことなんですけれども、例えば、平成2

1年度の脳科学研究戦略推進プログラムで、大学に幾つか拠点を足すことを目指してたくさんの

先生方が努力されていると思うんですけれども、それは、どちらかと言えば、集約型・戦略的研

究が大学を拠点にして行われるわけですから、やはりこういう対比そのものは色々な矛盾を含ん

でいると思いますので、大学に関しては、多様な自由発想に基づく研究教育体制で、私は何も問

題はないと思うんですけれど。

【宮下主査】 はい、入來先生。

【入來委員】 先ほどの伊佐先生のお話に戻ると、小規模個別型と明記してしまうと、ほかの

ところに科研費の新学術領域研究が小規模だとか、予算状況が厳しいという文言が幾つかちらほ

ら見えていたんですけれども、それを追認してしまって、その枠組みの中で何とかしようという

ようなことになってしまうとよくないので、やはり枠組み自体を広げるという、予算面での現状

を追認するような書きぶりではないほうがいいと思いいます。

それで、小規模個別型のところに戻りますと、これは、もう1つが集約型・戦略的研究という

ことで、同じディメンジョンの中で2つに切り分けようとするからこういうことになるのではな

いかと思うので、こういう場合には、ディメンジョンを変えてしまって、違うディメンジョンで

やっていく。だから、一方が集約型・戦略的研究であるとすれば、それに同じディメンジョンで

対応させるのではなくて、例えば、自由発想型と似ていますけれども、自己組織型とか、全く違

う概念を持ってきて、違う座標軸にはめるというような文言を探すと割合いいのではないか。

この書きぶりで絶対避けなければいけないのは、やはり脳科学の予算が小さくなってきた現状

に合わせて研究を何とかしようというようなやり方が見えるのは、得策ではないと思います。

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【宮下主査】 いや、全くそのとおりだと思います。これは、本当に重要な問題で、時間はな

いのですが、ここでやめるわけにいかないので、ぜひ先生方に思うところをみんな言っていただ

きたいと思います。これは多分、メール会議で議論しても収束しない問題だと思いますので。

どうしましょうか。川人先生はかなりつらいことをおっしゃっています。というのは、この括

弧書きは、後ろでいっぱい出てくるんですね。

【川人委員】 ああ、なるほど。

【宮下主査】 この括弧書きを取っちゃうと、後ろでそれを何と言ってリファーしたらいいか

という問題も同時にクリアしなくちゃならないので、結構難しいことを先生はおっしゃっている

わけですね。いやあ、どういたしましょう。

【本田委員】 よろしいですか。基本的な考え方としては、今、入來委員の言われた考え方が、

やはり適切なんだろうなというふうに思います。脳科学の現場で 大の問題になっているのは、

やはり理研対反理研なんですよね。すぐこの構図で物事をとらえてしまいたがる。だから、それ

をあおるような形で何か図式化していくというのは、確かにどうかなというふうな気がします。

先ほど第Ⅰ章のところで議論がありましたが、大学、大学共同利用機関、理研の連携がうまく

いかなかったという文言は、これは私が書いた文言ではないということだけはっきり言っておき

ますが、ただし、それは重要な論点だと思っておりまして、そこのところは、今、議論をしてい

る第Ⅱ章ところでも、やはりその連携体制についてはきちっと踏み込んでいかないといけないん

だろうと思うんです。ただ、ディメンジョンを変えるというのは、そういう意味では、無用な対

立を避けるというか、誤解を解くという点ではいいと思います。

【入來委員】 ただ、こういう文書として、その戦略が有効なのかどうかというのは、必ずし

も充分には承知しておりませんので、その辺りはコメントをいただければありがたいかなと思う

んですが。

【高田委員】 いいですか。まず、9ページのほうに戻りまして、先ほど議論になっておりま

した研究費と大学、大学共同利用機関、理研BSIの共同研究体制のところは、そこは僕が書い

たところなんですけれども、他意がなかったわけではないんですが、別に悪意があって書いたわ

けでは決してございません。

それから、研究スタイルの切り分けの話も出てまいりましたが、私も、変えられるものなら、

少なくとも小規模という言葉だけはやめるべきだと思います。先ほど入來委員がちょっとおっし

ゃった自己組織型というのは、宮下先生はご記憶かどうか分かりませんが、以前、こういった答

申ではないんですけれども、我々が別の形でプロポーザルを書いたときに、実は使っていたんで

すね。ここの3-1にもそういう言葉が出てまいりますので、自己組織型というのが一番無難で、

いわゆる自由度の大きさというのは、もちろんこの文言の中には込められておりますし、別にそ

れに対してアゲインストというものが何かということではないので、だから、この文章の中に使

われているということで、私は自己組織型で何とか妥協していただけないかと思うんですが。

【宮下主査】 まず、9ページの問題は、これは多分、文言の修正で収拾できると思います。

私は以前この会議で申しましたけれど、あまり現状肯定的な形でこの答申案を書くというのは、

基本的なスタンスとしてよろしくないだろうと思いますので、そういう意味では、こういう表現

があることは、文言に注意すれば、本質的にはそんなに悪くはないと思うんですね。自己組織型

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という言葉については、入來案に賛成が出ましたが、ほかの先生方はいかがでございましょう。

【高橋委員】 先ほど本田委員が少し言われましたけれども、9月以降の審議事項になる「脳

科学に関する学術研究、基礎研究及び政策課題対応型研究開発の役割と推進体制の在り方につい

て」というのは、これは高田委員と私が担当というふうに宮下主査からご指名いただいているも

のなんですけれども、この内容自体が私自身もよく分かっていなくて、これから考えなければい

けないと思っていたんですが、いずれにしても、この各機関の推進体制と対応させなければいけ

ないわけで、それを考えると、学術研究と基礎研究を大学のほうに割り振って、政策課題対応型

研究というのを研究開発独立行政法人のほうに割り振るというふうな考え方でもいいのではない

かなと思います。学術的、基礎的というのは、決してネガティブな意味はありませんし、政策課

題対応型とオーバーラップしても問題はないので、それはどうでしょうかという提案です。

【宮下主査】 なるほど。具体的には何といたしましょう。

【高橋委員】 学術的・基礎的研究。

【宮下主査】 言葉というのは難しいですね。私がすぐ思いつくことを申しますが、学術的・

基礎的と言うと、「理研は学術的・基礎的でないのか」と必ずや言われますので、これはやはり、

何か非常に不毛な議論ですね。本当に不毛な議論だと思うんですね。だから、それを何とかして

超克したいというふうにずっと思い続けているわけで、その点では、先ほどの入來先生のご意見

は傾聴に値すると私も思います。難しいです。はい、大隅先生。

【大隅委員】 そこのところの良いアイデアがまだちょっと浮かばないんですけれども、後ろ

の組織とか拠点とか中核というところを何と書くかということですが、大学は融合型研究教育組

織となっておりますけれども、これは順番が逆で、研究教育組織というようなところを、教育研

究組織ということに常に順番を統一されたほうがよろしいのではないかなと私は思います。やは

り、大学というところが人材育成の基盤であるということは間違いないことですし、大学の位置

づけというのはまさにそこにあるのではないかと思います。どんな研究をやろうと構わないんで

すけれども、その中で行われることの一番基礎的なところはそこにあるかなと、私は感じていま

す。

【宮下主査】 大隅先生のご指摘は、例えば16ページの一番上のところですね。

【大隅委員】 そうです。幾つかありますけど。

【宮下主査】 これも問題ですね。やはり、こういうのはひとり歩きするので、非常につらい

ですね。うーん。いや、教育研究組織か研究教育組織かというのは、多分、大隅先生はよくご存

知だと思いますが、COEのときに出てきたんですね。一番初めに出てきたのが研究教育組織だ

ったんですけど、どこかの段階で、いつの間にか教育研究組織にすり替わっていて、「何だ、これ

は」という議論が沸騰したというのも僕はよく覚えていますが、こういう文言って、本当に難し

いんですね。

どういたしましょう。先生方にご議論をいただく時間はもう本当にないんですが、しかし、こ

れは物事の重要性から言って、幾つかの言葉の使い方というのは本質的です。もちろん、今後の

中間取りまとめのときに訂正はできますが、しかし、やはり一旦は外に出ていくということの重

みもございますので、もうちょっと時間を使わせていただいて、先生方、活発にご意見をおっし

ゃっていただくとありがたいと思います。

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【森委員】 今の議論なんですけれども、私は、同じディメンジョンにあるべきだというふう

に思います。大学と理研は違うというようなことではなく、同じディメンジョンで考えたほうが

いい、文言も違うディメンジョンにいるというものを感じさせるようなものにしないほうがいい

と思うんです。ですから、個別型というのでいいんじゃないかと思います。

結局は、独立行政法人の研究所でやろうが、大学でやろうが、研究をやることは同じだと思い

ますので、入來先生は違うディメンジョンの言葉を考えたほうがいいとおっしゃったんですが、

そうではなくて、違うディメンジョンを感じさせない言葉がいいと思います。

【宮下主査】 この段階で私がこういうことをもう一度申し上げるのが必要かどうか分からな

いですし、基本的にはあまり生産的でない議論である可能性もあるんですが、しかし、問題は、

森先生がおっしゃるとおり、学問の内容でもって、色々な研究機関がやることを区別できるわけ

がない。これは当たり前のことです。これは脳科学委員会でも再三私が確認させていただきまし

た。にもかかわらず、ある種の政策的なシチュエーションにおいては、それを区別した説明が必

要になる場合もあるんですね。これはあるんです、間違いなく。そういう場合がないと言ってし

まったら、これはもうフィクションになってしまうと思うんですね。

だけど、その関係というのはそんなに単純ではないので、それをどうつけるかというので、伊

佐先生、入來先生、岡部先生は非常にご苦労されたと思うんですね。当然、事務局にもそういう

問題意識を共有していただいていると思います。私は、森先生がおっしゃることは誠にもっとも

だと思いますが、でも、もうちょっと入り組んだ複眼的な議論をしないと、この場は切り抜けら

れないように思うんですが。

【入來委員】 今のご指摘に対する明確なお答えは、多分、ディメンジョンという言葉の理解

のされ方がちょっと違うのかなと思います。多分、研究という1つの空間があった場合には、そ

の空間の中に多様な評価軸があるわけですから、その1つの軸をディメンジョンと見なして、そ

の程度に従ってこの空間全体を切り分けるのではなくて、違う尺度をはかるという方便が使える

といいのかなと思います。事務局にお聞きしたいのは、そういうロジックが通るかどうかという

のはちょっと分からないので、まずそこを押さえてから議論をしたほうがいいと思います。本当

に1つのディメンジョンに合わせて切り分けなければ通らないものであれば、ちょっとこの議論

は難しいかと思いますし、その辺をぜひお聞きしたいと思います。

【菱山ライフサイエンス課長】 いや、それは可能なので、その議論は不毛ですと言わずに、

お願いをしたいなと思っております。

【入來委員】 じゃあ、安心して。

【宮下主査】 この問題は重要なので、お一方ずつ、まだご発言いただいていない先生には、

必ずご発言いただきたいと思います。では、桝先生、どうぞ。

【桝委員】 今ちょっと議論が混乱していると思うんですけれども。

【宮下主査】 申しわけありません。確かにそうです。

【桝委員】 研究者としてのアクティビティー、あるいは学問ということで考えた場合には、

三者はどこも同じだと思います。それを、組織としての役割というところで切り分けようするこ

とで、立場というか、考え方が分かれているのかなと思うんですね。

共同利用機関とか独法に関しては、比較的役割がはっきりしているんですけれども、大学の役

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割をどういうふうにとらえるかというところで、ここの論調からいくと、大学というのは個別で、

色々な方向にベクトルが向いているので、それを共同利用機関がネットワーク化するとか、そう

いうことが必要だという議論で、そのためにどうしても個別、あるいは小規模という表現が出て

くると思うんですね。ただ、こういうふうに定義してしまうと、大学というのは小規模な研究を

やるところだとか、個別の研究をやるところだという定義づけのように見えてしまうので、そこ

のところをどういうふうにするかということだと思います。

私自身の考え方としては、大学が共同利用機関とか独法ほど明確な定義づけがない中で、色々

なベクトルがあって、多様性があって、その全体を包含して学問として推進しているというとこ

ろの表現を何とか入れたいということで、ちょっと今、適切な言葉が思いつかないんですけれど

も、そういうふうに考えております。

【本間委員】 皆さんのご意見とそれほど違わないですけれども、とにかく3つに分けて、実

際にやっていることはそれほど違わなくても、一応は役割分担をここで明確にするというのは、

これからの議論や予算獲得等のためにも必要だと思います。大学共同利用機関の括弧の部分は割

合問題がないと思いますが、皆さんが問題ないとおっしゃる独法のほうも、やはり集約型・戦略

型研究を行っている国際的研究拠点はここだけかと言われたら、今、大学でも実際には小規模、

あるいは個別の研究だけをやっているわけではなく、かなり大規模な、あるいは融合的な研究を

実施したり、あるいは大型予算を獲得したり、国際的な拠点を目指すというような、色々なこと

をやっております。そういう意味では、何でもありが大学だという感じがいたします。ですから、

大学しかないのは、教育がまずメインの目的であるということと、それから、研究に関しては大

規模も、小規模も、融合型も、集約型もありという、そういうところが分かるような文言にして

いただきたいと思います。

【宮下主査】 具体的な文言をお願いします。

【本間委員】 そうですね。

【宮下主査】 申しわけありませんが、具体的な文言をお願いしたいのですが。

【森委員】 私の頭の中には、大学イコール教育をするところであるという考えがあって、非

常にプリミティブなレベルですけど、研究者の一番初めのところなので。ですから、教育とかい

うのを入れてはいけないんでしょうか。唯一、そこが多分違うと思います。

【宮下主査】 さあ、困りましたね。これは収拾できなくなってきました。いや、こんなふう

になるとは、今日は思っていませんでした。うーん、はい、どうぞ。

【本田委員】 とりあえず、今まで出たやつから文言の案を考えるとしたら、自己組織型多様

性研究とか、あるいは、その中にあるのは、自立型多様性研究というようなものを先に持ってき

て、先ほど森先生おっしゃったような教育の話というのは、やはり2つ目のところに、研究教育

か教育研究かは、これは適切なものでいいと思うんですけど、第Ⅲ章は教育研究センターに全部

なっていたように思うので、それと合わせればいいと思います。やはり、理研は理研で国際的研

究拠点というものを1つの看板として挙げていますし、別に大学とかほかのところが国際的研究

拠点になってはいけないということではないと思います。ただ、自立型という言い方をすると、

金の面倒も全部自立的にやりなさいというふうに取られられないかなという気もするので、自己

組織型研究のほうが無難かなというふうに思います。

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【宮下主査】 なるほど。

【伊佐委員】 私も、自己組織型でいいかと思います。というのは、それで何でもありという

か、色々と多様なものが全部そこにうまく入るのではないかなということで、ここはそういう形

に一旦しておいたほうがよろしいのではないでしょうか。

【宮下主査】 分かりました。もちろん、現在の議論は中間取りまとめ案ですらないのですが、

ただ、一応外に出てきますので、それはそれなりに独立して動くという部分があるので、少し神

経質に先生方に文言を伺っているだけなのです。当然、中間取りまとめ案のときに、違ったやり

方でまた書き直していただくというのはあると思います。

多分、今の議論をメール会議でやり出すと、終わらない可能性がありますので、この頭の部分

に出てくる文言に関しては、今日の段階で先生方のアグリーメントをいただいておいて、それ以

外のところの記述については、先生方にメール会議で直していただくのがよろしいと思うんです

が、どういたしましょう。

ですから、文言としては、14ページから15ページに出てくるかぎ括弧の中ですね。それか

ら、もう1つは、16ページ以降に出てくる括弧の中の特徴づけですね。それで、17ページの

3-3のところにあります独法の国際的研究拠点ということに関しては、確かにご議論もありま

したけど、これは、恐縮ですが9月以降に引き取らせていただいて、この段階ではこのままにさ

せていただいてもよろしいでしょうか。確かにご議論があったということは覚えておきますし、

それは議事録にも残ると思いますので、9月以降にまたご議論いただくことにして、今回の段階

では、この国際的研究拠点というのは触らないことにしたいと思います。

それから、16ページの融合型研究教育組織にするか、教育研究組織にするかは、これも悩ま

しいところでして、実は、私は個人的にはグローバルCOEで教育研究組織と言われたときに、

非常に強い反論をしました。大学はやはり研究教育組織であるというふうに、私は個人的には主

張したんです。先生方それぞれにお立場があって、議論が収束しない可能性もありますが、どう

しましょう。ここは、もし先生方が教育研究組織というふうに書き換えろというのであれば、も

ちろん、それでも結構だと思います。

【岡部委員】 私も、個人的には、どちらかというと研究を先に出したい。と言いますか、あ

くまで大学は研究組織であると言いたいんですね。ですから、1つの案としては、人材育成型の

研究組織としてしまうということです。

【宮下主査】 いやあ、それはそれでもしかしたら、「じゃあ、大学以外は人材育成をしないの

か」という議論を呼びかねない。実に不毛な議論なんですね。これは、明らかに問題の枠組みが

悪いんですよ。だから、その意味では、川人先生がおっしゃるように、問題の枠組み自身を消し

てしまうというのもあるんですが、ただ、消してしまうというのは、あくまでも消極的な対応策

なので、できればコンストラクティブな対応が可能であれば良いのですが。

【大隅委員】 私自身は、大学でも研究が主体であるということに全く同意しているんですね。

ですから、これはあくまで文部科学省としてどう扱うかということで、お任せしてしまってもい

いのかなとちょっと思っています。そこにわざわざ大学人がいちいち目くじらを立てなくてもい

いのかなと。やっぱり研究が大事だよね、いい研究をしなかったらいい学生は育たないよねとい

う、そういう気持ちです。

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【宮下主査】 はい。大隅先生のご意見は誠にごもっともだと思います。 終的に、これは脳

科学委員会の意向でどっちになるのか決まるので、作業部会は作業部会としての意見しか言えな

いのですが、それにしても、やはり作業部会としての意見は言っておいたほうがいいんじゃない

かと思うんですね。私としてはどちらでも結構です。この部分に関しては、先生方のご意見に従

いたいと思います。

【高橋委員】 よろしいですか。文言の案ですけれども、研究開発独立行政法人が集約型・戦

略的研究となっているんですが、集約型というのが大体いけないんじゃないかと思うんですね。

こっちに政策対応型というのを入れたらどうでしょうか。それで、それと自由発想型を対応させ

る。さらに、戦略的に対応させるのは、学術的というのはどうかというふうに思います。

【宮下主査】 なるほど。森先生、どうぞ。

【森委員】 違う意見を言おうと思っていたんですが、でも、戦略的と学術的を対比させると、

それは独法の方が怒るのではないでしょうか。何かちょっとトートロジーというか、堂々めぐり

のような感じがします。

【高田委員】 これは、今後、研究の内容のところでまた出てくるんですけど、私の理解がも

し違っていなければ、いわゆる学術研究というのは、その中にどういう中身が込められているか

というのは、あんまり明確なものはなくて、要は、簡単に文部科学省の研究振興局のフレームワ

ークで言いますと、学術研究助成課が、主に科研費をメインとした研究に対して使っている文言

なんですよね。それに対して政策課題型というのは、もう少し大きな、どちらかというとこの委

員会が扱っているようなライフ課主導の脳科学研究戦略推進プログラムであるとか、あるいはC

RESTであるとか、そういったものを対極に置いているわけで、ここでも今後の議論の中に出

てきますが、その中間にある基礎研究というのは何者かというのは、誰も知らないわけです。

ですから、そういう意味では別にそれぞれに定義をつける必要はないんだけれども、学術研究

というのは、私の理解が間違っているかもしれないけれども、本来はそういう内容なので、だか

ら、自由発想型と政策課題型というのはもちろん対極にあるんだけれども、別に学術研究と政策

課題型は必ずしも対極にあるわけじゃなしに、ただ、どういうサポートによって推進されている

研究かということです。多分、私の理解が間違っていなければ、学術というのは主に助成課が使

っている言葉であって、政策課題型というのはそこでは扱わないことが多いですから、当然、ラ

イフ課でやるということなのです。ですから、ここでは別にあまり目くじらを立てないで、理研

に関しては、別に集約型・戦略的と書いてあっても、じゃ、大学でそういうことをやっちゃいけ

ないのかというわけでもないし、より特徴的なものを出すという意味では、それでいいかと思う

んですね。けれども、絶対に小規模はやめて欲しいので、手を打つのであれば、自己組織型かな

というふうに思います。

【川人委員】 すみません。何か落ち着いてきたところで、またまぜ返すというパターンなん

ですけれども、やはり、段々私は、この言葉の問題ってすごく重要な気がしてきました。という

のは、歴史的に考えると、10年前でしょうか、昔の脳科学委員会で、それ以前に比べて脳科学

の予算が増えたときに使われた論理が、戦略研究だったわけですよね。基礎研究でもなく、応用

研究でもなく、国が重要だと認めた分野に関して戦略的に研究をする。ただ、戦略研究の中には、

実は自由発想型の基礎研究も含むというような、非常にうまい枠組みで始まったわけですよね。

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ところが、10年間経ってみますと、予算を取るときには応用研究、戦略研究と言うのに、し

かし、一旦お金が取れてしまえば、皆さん、自由発想型の基礎研究をやりたいという。そういう

構造が、それは別に独立行政法人だけに限らず、大学でも、大学共同利用機構でもあるわけです。

ただ、ここでどういう言葉を使うかということが、10年前の脳科学委員会に対応するような、

やはり大きな問題だということに、私は黙って聞いているうちに、段々そういうふうな気がして

きました。

大切なことは、戦略研究という言葉を、10年前と同じように光輝く言葉としてちゃんと前面

に出してやるのか、それとも、社会への応用ということがいっぱい書かれるようになってきて、

社会への応用と基礎研究というのはそんなに相反するものではないですよという形で、応用とい

う言葉で頑張って中央突破を図るのか、多分、そこの合意をまず取らなければいけない。

それからもう1つ、大学に関して言えば、すべてのスペクトルを含んでいるというところに、

本当に大学の大学たるゆえんがあると僕は思っていて、探索的で、ある意味網羅的で、それこそ

小規模個別型もあるだろうし、中には集約型・戦略的のものもあるという、非常に広いスペクト

ルを含んでいるということを書いたほうがいいのではないか。だから、大学はどっちにも対応し

ますよと。

でも、逆に言うと、また理研も実は両方を含んでいるわけで、集約型・戦略的に非常に向いて

いる研究をされている方もいれば、実は小規模個別型でいい研究をやっている人もいるので、そ

このところをもうちょっとリ・オーガナイズするような、そういった前向きな考え方を、その戦

略的研究という言葉の再定義と結びつけたほうが生産的なのかなと思いました。

すみません、せっかく落ち着きそうになったのに。

【宮下主査】 いやいや、川人先生のおっしゃるとおりだと思いますね。私も同感です。多分、

先生方は今まで何の議論をしてきたのか、完全には釈然としなかったかもしれないんですが、要

するに、この作業部会は、実はこういう議論をしてきたんですね。これは、この第4回まで議論

してきたことの中で、本当は一番先鋭に意識しながら議論してこなくてはならなかったことで、

そういうことが改めて表に出てきたということです。

ですから、これはやはり、今、川人先生がおっしゃったことを含めて、9月以降にそういう問

題意識を持って、もう一度議論し直す。そういう問題意識を持って、中間取りまとめ案というの

を来年の1月に向けてつくっていくということで、本日は大変意義があったと思うんですが、た

だ、言葉だけは何とか収拾しなくてはいけないので、私はとりあえずのご提案として、ここでは

一番コンサバティブな案を出します。

それは、先ほど高田先生がおっしゃったのと同じ案ですが、大学を特徴づける中での小規模個

別型というところだけは、自己組織型に変える、それ以外のところは触らないという、一番コン

サバティブな案でいかがかと思います。もちろん、先ほど申しましたように、こういうのは、川

人先生がおっしゃったように、問題設定自身も含めて、9月以降にもう一度議論しないといけま

せん。もし必要があったら、大幅に書き直さないといけないものだと思いますが、しかし、今日

の段階では、先生方がおっしゃったことのミニマムを取ると、多分そういうことかなと思います。

多分、この件はメール会議にかけられませんので、この場でもし先生方からさらにご意見があれ

ば、いただきたいと思います。いかがでしょうか。

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よろしいでしょうか。それでは、この言葉の問題に随分長く引っかかってしまいましたが、そ

れだけ重要なことだったということなんです。先ほど申しましたように、本当に重要な問題に関

しては、やはり今日ここで議論していただかないと収束しません。もちろん、先ほどから何回か

出てきました例で言いますと、9ページの下のほうのパラグラフのように、文言を直せば収束で

きるようなことは、先生方にメールでおっしゃっていただければ済むので、よろしいと思います

が、それ以外のことで、ぜひ今ここで言っておきたいということがあれば、ぜひご発言をお願い

いたします。

【入來委員】 第Ⅲ章の人材のところなんですけれども、特に申し上げたいのは、24、25

ページの辺りで、先ほど事務局から説明がありましたけれども、これは大学制度、大学院制度に

関わることなので、ほかの部署との調整が必要だということでしたから、それに鑑みて、ぱっと

読んでいて幾つか気になることがあったので、ご指摘させていただければと思います。

まず、24ページのところで、COEやグローバルCOEのことが随分書いてあるんですが、

文部科学省が行っている大学支援施策というのは、COEやグローバルCOEだけではなくて、

教育GPや特色ある大学院教育など、もう多種多様なものがあると思うんですね。それとの連携

というのも可能なわけですから、ここには、そのほかの大学院支援制度に対する言及というのも

ある程度必要だと思います。COEやグローバルCOEだけ書いていくと、大学人として、目配

せの点で問題があるやに受け取られかねないのを避ける工夫をした方が良いのかなというふうに

感じました。

また、そのCOEに関しては、似たような分野のCOEとかグローバルCOEでクラスターを

つくって、連携教育や連携研究をしているところもありますので、そういったことを脳科学でも、

現行の制度でできる同じ分野のネットワークをさらに推進するということを書き加えてもいいか

なというふうに思いました。

それから、次の25ページですが、一番上の段落の 後のところで、「世界の優れた大学との共

同学位プログラムの設置等、可能な大学等から積極的に取り組んでいくことが望まれる。」という

ことが書いてありますが、これは、今、制度上できないはずだった気がしますが、ご確認頂けな

いでしょうか。これは以前、我々も別な枠組みで幾つか考えて難しかったので、確か本格的な博

士の共同学位は基本的にできないはずだったのではないかと思います。それについて、やはり制

度改革が必要であるというようなことをこういう文書で書き込むのがもし不適当であれば、現場

からそういうことが望まれているというような適切な書きぶりが必要なのではなかろうかと思い

ます。制度的にできることとできないこと、それから、先ほどちょっとありました認可が必要な

ことというところの切り分けは、もうちょっと明確にする必要があるのではなかろうかと思いま

す。

それから、その項の一番下の段落で、2-1の直前のところですけれども、「個々の大学等の自

主性による創意工夫と積極的な取組」とあります。これは、今の法人化以降の大学の中では、大

学の中期計画、中期目標に沿った大学の自主性というようなことが強く出された大学運営がされ

ていますので、大学横断的なことを個々の自主性によることだとすると、私は、現実問題として

は多分難しいのではないかと思います。多分、文部科学省の施策としては、縦糸を通すような個々

の大学の強化ということに加えて、横糸と言いますか、学問分野の横断的な連携教育が必要だと

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いうことで、分野によっては既に始まっているものもありましょうし、大学の自主性によってや

るのではなくて、既にある例ですと、学会がかなり努力をして大学横断的な仕組みをつくって、

実際に予算措置ができているということがありますので、大学の運営には認可が必要なこともあ

りますけれども、これはぜひコミュニティーから積極的にアプローチして関わっていくような横

断的な仕組みが必要だということで、高等教育政策の面からも今かなり求められているのではな

いかと思いますので、その辺の書きぶりの切り分けを整理する必要があるような気がいたします。

【宮下主査】 ありがとうございます。今の入來先生からの3つのご指摘に関して、事務局側

で、それは困るという部分はございますか。

【菱山ライフサイエンス課長】 大学の制度の問題ですので、そこは高等教育局とよく相談を

したいと思います。ただ、3番目に入來先生がおっしゃった2-1の上の段落の話については、

学会がやることもやはり自主的な取組なので、いずれにしろ、これは文部科学省への答申になり

ますので、大学に対して強制的なものとか、あるいは、学会に対して強制的なものになるのは望

ましくないというふうに思います。

【宮下主査】 多分、今の入來先生のご指摘は、入來先生から具体的な形で書き直しのご提案

をいただいて、その中で事務局として、そもそも制度的に無理なものは無理と、そうでないもの

は基本的に積極的に取り入れていただくというやり方で処理が可能のような気がします。ここで、

先生方にご議論をいただくほどのことはないだろうと思いますので、入來先生、具体的にご提案

ください。

【入來委員】 多分、ここに書いてあることをもっと明確に整理いただければ、それで済む話

のような気がします。例えば、次のページにあるような国内の共同学位というのは、もう既にで

きるはずなので、これはどんどんやればいいというように、その辺りのできること、できないこ

と、すぐやればいいことというのを整理すればいいと思います。

【宮下主査】 それでは、ほかに何かございますでしょうか。伊佐先生、はい。

【伊佐委員】 29ページの「3-2 脳科学研究専門技術者の育成と支援」のところで、1

つのキャリアパスとして専門技術職ということが書かれていて、これは、非常に必要なポジショ

ンだと思うんですが、多くの機関で、特に大学等でいわゆる技官のポジションというのは、もう

ほとんどなくなってきているのではないかと思うんですね。

JSTなどでは、ちゃんとフルタイムでこういう技術職員を雇用できるようになってきている

んですが、やはり、この点についてこういうことを書くのであれば、実際にはどういう形で、特

に大学等でこういうことが可能になっているかということについて、少し事務局からもお伺いし

たいし、これはいいんですけれども、実際にどうやって実現できるのかということは少し疑問に

思います。

【宮下主査】 もっともなご指摘だと思いますが、要するに、これを実現するためには、もう

ちょっと具体的に、例えば、政策的な提言ができるかどうかとか、そういうことですよね。

【伊佐委員】 はい。

【宮下主査】 ですから、それは多分、中間取りまとめに向けて書き加えていくというのに適

した作業ではないかと思うんですね。伊佐先生のおっしゃることは非常にもっともだと思います

が、この段階での文章は、完璧なものである必要はないと思います。このキャリアパスの多様化

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は非常に重要なことなんですが、現実問題として、予算のないところで一体どうやるんだという

のは、具体的に主張すべきだと思うんですね。その意味では、今、伊佐先生ご指摘のようなこと

をきちっと書き込む。もし具体的な提言が可能であれば、この場でご提言いただきたいのですが、

多分、1分や2分でできることではないので、これはやはり9月以降のご議論で取り込んでいた

だくという方向かなと思います。もちろん、今日の段階で、ちょっとした文言の修正だけで済む

ことであれば、いただきたいとは思います。ほかによろしいですか。

【高田委員】 記載の順序なんですけれど、次の中間取りまとめのときに、ある程度の完成バ

ージョンになるわけですから、当然、もう少し吟味して整理すればいいと思うんですが、ただ、

この段階で、もう近々に親委員会に上げなければいけない審議経過報告案ということで、今これ

だけの内容で出すと考えた場合に、この作業部会のもう1つの重要なミッションは、やはり、平

成21年度へ向けての概算要求のための重点研究課題を提案するということなので、 初に宮下

先生がちらっとおっしゃったんですけれど、第Ⅰ章の現状と問題点に続けるのは、このままでは

何となく収まりが悪いかもしれないけれども、研究開発ロードマップを上に上げたほうが、何か

インパクトがあるんじゃないかなというふうに思います。

【宮下主査】 すみません、もう時間がないのに、重要な問題が残ってしまいました。これは、

今日は時間的にちょっと収拾できませんね。重要な問題なんですが、やはりこれは無理ですね。

先生方に、何が重要だということに関して、もう一度頭の中で整理していただくのに、もうちょ

っと時間的余力があればいいと思いますが、今日は2時間しか会議の時間を取ってございません。

申しわけありませんけど、これについては、今日は諦めて、このままでもよろしいですか。問

題の重要さに比して、議論の時間が十分取れないのは残念なことに思いますが。

申しわけありません。では、この辺で引き取らせていただきたいんですが、先ほど申しました

ように、これは8月の脳科学委員会で議論されて、審議経過報告という形で出ていく予定の文書

でございます。先ほど事務局からご説明がございましたが、57ページにありますように、今後、

来年1月の中間取りまとめ、さらに来年6月の第一次答申に向けて、本日ご議論いただいたよう

なことをみんな盛り込んで、さらにいい答申案へとつくり上げていきたいと思いますが、今日の

段階では、この辺りでまず大きなものに関しては、先生方の合意が得られる範囲でまとめさせて

いただきたいと思います。基本的に先ほどの文言のような大きなものに関しては、先ほども申し

ましたように、ミニマムのアグリーメント、コンサバティブにするということで、それから、順

序に関しても、ちょっと今の段階では無理のような感じはしますので、引き取らせてください。

基本的には、本日のご議論を踏まえまして、審議経過報告(案)を修正いたしまして、8月1

9日に開催を予定しております脳科学委員会に提出することにいたしたいと思います。ですから、

本日おっしゃったことのまとめも含めて、ほかにご意見やお気づきの点等がございましたら、恐

縮ですが、7月22日の火曜日までに事務局までご連絡いただきたい。

というのは、メール会議という形で先生方の間にクロスファイアーが起こると、収拾できなく

なりますので、事務局までご連絡いただきたい。もちろん、それはCCとしてほかの先生方が見

えるような形でお送りいただいて構いませんし、それに関して、もしどうしても重要なご意見が

あれば、当然、お述べいただいて結構でございます。それらのご意見を踏まえて、審議経過報告

(案)を修正いたしますけれども、本作業部会としての 終的な取りまとめにつきましては、私、

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主査にご一任いただくということでよろしいでしょうか。

(委員了承)

【宮下主査】 ありがとうございました。では、そのように進めさせていただきたいと思いま

す。

それでは、時間が遅れてしまって恐縮ですが、次の議題に進ませていただきます。次の議題は、

「平成21年度拡充課題の事前評価について」ということでございます。本件につきまして、事

務局からご説明をお願いいたします。

【生田ライフサイエンス課長補佐】 それでは、お手元の資料4-3をご覧ください。

平成21年度の拡充課題の事前評価ということで、先ほどご議論いただきました内容に比べて、

かなりスコープを狭めて、これはあくまでもライフサイエンス課から予算要求をさせていただく

「脳科学研究戦略推進プログラム」の内容でございます。なぜここでこれを提示しているかと申

し上げますと、8月19日の脳科学委員会におきまして、こちらの内容をご審議いただく予定に

なっておりますので、その前に一回、作業部会の方々にこれをお諮りしたいという趣旨で、本日

ご説明をさせていただきたいと思います。

もうご案内のように、この内容につきましては、先ほどご議論いただきました審議経過報告案

のロードマップのところから一部使わせていただいて、新規課題の拡充要求という形でつくらせ

ていただいております。

内容につきましてですけれども、まず、平成21年度の要求額につきましては、現在省内で調

整中でございますので、ここには書いてございません。ただ、少なくとも平成20年度の17億

円よりは、当然増やしていくことを考えております。

4ポツの「施策の背景・概要」でございますけれども、これにつきましては、従来から諮問文

にも書いてございますように、科学的意義、それから社会的意義が高い脳科学につきまして、よ

り戦略的にこれを推進し成果を社会に還元することを目指して、このプログラムは立ち上げたも

のでございます。現在ちょうど走り出しております平成20年度は、「BMIの開発」と「独創性

の高いモデル動物の開発」ということで、研究開発拠点が整備されて、研究開発が推進されてい

るところでございます。

5ポツのところでございますが、研究開発拠点の整備ということで、その背景といたしまして

は、昨年10月の諮問を受け、そして、11月に脳科学委員会が設置され、2ページ目にござい

ますけれども、現在、先ほどご議論いただきました審議経過報告の内容を取りまとめていただい

ている 中でございます。

その審議経過報告案のロードマップの部分におきまして、2パラのところでございますが、現

代社会が直面する様々な課題の克服に向けた脳科学に対する社会からの要請に応えるため、「社会

に貢献する脳科学の実現」を目指し、「社会脳」、「健康脳」、「情報脳」の3つの重点的に推進すべ

き研究領域と、これらを支える基盤技術開発、及び各領域等における重点的に推進すべき研究課

題が設定されております。

この3つの研究領域の中には、いわゆる基礎研究も含まれると思いますが、そういった中でも、

特に明確に社会への応用を見据えた対応が急務とされる重点研究課題については、政策課題対応

型の研究開発プログラムで戦略的な研究の推進が求められるという形で整理をさせていただいて

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おります。具体的な研究課題の内容でございますけれども、これまでの作業部会で各委員から色々

とご提案いただいているものを題材として作成させていただいております。

2ページ目の下のほうにございますように、まず、1ポツの社会脳の具体的な課題といたしま

しては、「社会的行動を支える脳基盤の評価・支援技術の開発」でございます。

いわゆる脳の活動は、社会集団を形成する上でも決定的な役割を果たしており、こういったコ

ミュニケーション等を含む社会行動やそれらの習得過程において、脳の基盤の各階層がどのよう

に関与しているかといった研究が可能になりつつあります。

3ページ目でございますけれども、社会性障害については、疾患群のみならず、健常者におけ

る「希薄な人間関係」といった形で、広汎なスペクトルが存在しますので、そういった内容につ

いて、実験脳科学を基礎としたアプローチを導入して、人文・社会科学と脳科学を融合しつつ、

ヒトの社会性を生む基盤となる脳内メカニズムを明らかにすることが有効的であると考えており

ます。

こうしたことから、社会的行動の基盤となる脳の生物学的指標を開発するとともに、社会的行

動や社会環境と脳機能の双方向的関係性を明らかにする。そして、将来的にはヒトの社会性障害

の理解・予防・治療に応用していくといった研究内容をここでは提案しております。

2つ目でございますが、健康脳の研究課題でございます。これは「健康と生命を支える脳幹機

能の研究」という研究課題でございまして、4ページ目でございますが、内分泌や自律神経系を

介して体内の恒常性を維持し、生体リズムの維持、摂食・代謝の調節等を司っております脳幹の

機能障害を解明していこうという研究でございます。

具体的には、生命、健康、QOLを維持し、活力に満ちた日々の生活を送ることに深く関わっ

ている「睡眠・リズム」、「摂食・代謝」、「ストレス」、「保育・母性」の4つの重要課題につきま

して、その仕組みの解明等に向けた研究開発を進めていこうという内容でございます。

続きまして、3番でございますが、これは情報脳の研究課題でございまして、この「BMIの

開発」につきましては、括弧内に既存と書いてございますように、平成20年度から実施してい

る研究の内容でございます。ここの内容については省略させていただきます。

次に、5ページ目の(4)基盤技術開発でございますが、ここには2つの研究課題がございま

して、1つ目は新規で、6ページ目にあります「独創性の高いモデル動物の開発」は既存でござ

います。

まず、新規の部分でございますが、これは「光による脳機能モジュールの操作・抽出技術の開

発」といった研究課題でございまして、光科学技術につきましては、平成19年2月、文部科学

省の研究振興局長の下に懇談会が設置されており、その中では、光科学技術分野のシーズとライ

フサイエンス等の他分野におけるニーズを有機的に結合させた新しい光の開拓、それから、その

利用研究の推進が求められているという中間報告書がまとめられております。

そこで、脳科学研究の推進に当たりましては、優れた時間的・空間的制御、それから波長の選

択特性を持つ光科学技術を利用することによりまして、分子・細胞レベルの脳機能と個体レベル

での脳機能を直結させる新たな展開が期待されますので、光による脳機能モジュールの操作・抽

出技術の開発を進めていこうという内容でございます。

6ページ目でございますが、先ほど申し上げましたように、この「独創性の高いモデル動物の

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開発」につきましては、既存の内容でございますので、内容のご説明は省略させていただきます。

後に、ポンチ絵をつけてございますが、これは今申し上げた内容について、全体を俯瞰する

形で1枚にまとめたものでございまして、先ほどからご議論がありましたように、あくまでもこ

れはライフ課の予算事業で、どちらかと言ったらトップダウン的な政策課題対応型の研究といっ

た内容の書きぶりでございますので、「社会に貢献する脳科学の実現」というところは、赤字にし

てかなり目立つ形で書いている次第でございます。以上でございます。

【宮下主査】 ありがとうございました。強調して説明していただきましたので、よくお分か

りいただけたと思います。先ほどの資料4-2の審議経過報告もそうでございますが、この資料

4-3の「平成21年度拡充課題の事前評価について」というのも、これは先生方にこれまで3

回の作業部会でご議論いただいたことをまとめたものでございます。

ただし、その2つの性格は非常に違います。この作業部会は幾つかのミッションを持っている

わけで、先ほどの審議経過報告は、あくまでも文部科学大臣の諮問に応えるということでござい

まして、こちらの事前評価については、ライフサイエンス課の施策に対するプロポーザルという

ことになっております。ただ、どちらも先生方にご議論いただいた内容をまとめたものでござい

ます。

どういたしましょうかね。先生方から具体的に色々なご意見を言っていただくのがよろしいと

思いますが、これも口火を切る意味で、 初に私が1つだけ申します。例えば、「社会的行動を支

える脳基盤の評価・支援技術の開発」は、なかなか工夫されたいい名前がついたと思うんですが、

「評価」っていい言葉ですかね。例によって、 後になると言葉が気になってくるのですが、「評

価」は非常に色々なニュアンスを持っている言葉なので、本当に評価・支援技術で大丈夫ですか

ね。誤解の余地はないですかね。これは多分、桝先生、岡部先生、本田先生あたりが一生懸命考

えてくださったと思うんですがいかがですか。岡部先生、どうぞ。

【岡部委員】 これは数日前に色々ともめて付けた題名でして、「評価」になった理由は、ソー

シャル・ブレイン・マーカーという生物学的指標を中心にして、こういう社会性障害に対する客

観的な基準をつくりたいということで、それで評価になったわけですね。もちろん、何かもう少

しいい言葉があればと思ったんですが、これが時間的な限界の中で出た 後の案ということにな

ります。

【宮下主査】 もちろん、そういうことはよく分かっているんですが、しかし、こういうのは、

こういった場で改めて違うコンテクストで見直してみると、「あ、大丈夫かな」ということに気が

つくもので、そういうことも含めて、先生方からご意見をいただきたいですね。はい、川人先生、

どうぞ。

【川人委員】 多分、宮下先生がおっしゃるのは、優生学的なニュアンスにとられると危険だ

ろうということだと思うので、すごくニュートラルに「計測」にしたらいかがですか。

【宮下主査】 なるほど。

【川人委員】 それと関連しているんですけど、もう1つは、質問といいますか、コメントな

んですけど、ソーシャル・ブレイン・マーカーというのは、多分、社会的な特性に関して、コグ

ニティブ・ゲノミクスでSNPsなどと対応させるという、そういうものをもっと広く開発しよ

うということだと思うんですけれども、CRESTで走っている樋口先生の領域とオーバーラッ

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プは生じないですか。多分、向こうは病気だけだと思うので、こっちはもうちょっと広いという

のは分かるんですけど、その辺はどれぐらい気を使われているのかというのは、ちょっとお聞き

したいんですが。

【宮下主査】 いかがですか。

【本田委員】 まず、言葉の問題ですが、「計測」というのはいいかなと思います。もともとこ

れは「制御」という名前になっていたのですが、ちょっと5年間で制御まではいかないだろうと

いうことで、まずは5年間でしっかりとした指標を明らかにすることができれば、さらにその向

こう5年間に何か見えてくる、応用が見えてくるだろうということだったので、そのときは苦し

紛れに「評価」にしたんですが、確かに「計測」にしたほうが、より乾いているような感じでい

いかなと思います。

それから、樋口先生の領域とのオーバーラップは、今おっしゃっていただきましたように、や

はりあれはかなり疾患に寄っていると私は理解しております。疾患の中には、もちろん、社会的

な精神疾患等も含まれていますので、社会的行動について問題を起こしてくる疾患というのもあ

ると思うんですけれども、これもこの文章の中に少し盛り込みましたように、必ずしも現代社会

で問題になっている社会性障害というのは、疾患として析出されたものに限定されずに、例えば、

自閉症スペクトルやADHDのスペクトルから、もっと現代人の心の隙間みたいなところまでを

含めた形で、なおかつ、その中には、例えばコミュニケーションのベースになっているような脳

基盤といったようなものも、より幅広に入ってきます。そのスペクトルの中のノーマルからプラ

ス・マイナス3SDを超えたところに疾患群というものは位置づけられるのかなということで、

コントラストは出せると思います。ただ、確かに実際にやる研究は、オーバーラップが生じない

ように気をつけていく必要があるというふうに思います。

【宮下主査】 ありがとうございます。この段階では、先生方からご自由に、各課題若しくは

全体に対して、事前評価の観点からご意見をいただきたいと思います。

【大隅委員】 これは、あくまで平成20年度と同じように、大きな拠点というものにプラス

して個別研究という、そういった仕組みを想定されているのでしょうか。その辺りのところが、

この課題はそういうことに本当に馴染むのかというようなことをちょっと危惧しますけれども。

【生田ライフサイエンス課長補佐】 具体的な制度設計については、予算がどれだけ取れるか

というのもまだ分からない状況ですので、額が見えてきた頃に考えていきたいと思っております。

【入來委員】 (2)の健康脳のところですけれども、3ページ目です。課題の名称が脳幹機

能の研究となっていて、脳構造を絞った形で書かれているんですが、これは意図的にやられたの

かどうか。脳の構造で絞るというのは、色々なことがあるのではないかと思いまして、例えば、

4ページ目の2段落目の下から2行目で、脳幹機能の計測として、低侵襲マルチ電極、脳機能イ

メージングとあるんですが、私は脳幹の低侵襲マルチ電極を知らないですし、機能イメージング

とあるのは、これはマイクロPETのことでしょうか。

というようなことで、これは、あまり脳構造を絞らないほうがいいのではないかということと、

生理学者として、健康と生命を支える脳幹機能と見ると、まさに思い浮かべるのは植物機能のこ

とで、それでもいいんですけれども、ここに記載されている趣旨の研究だと、必ずしも脳幹に絞

らなくても、機能で絞って、例えば脳根幹機能とか、何か構造につながらないほうがいいような

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気がしますけれども、いかがでしょう。

【宮下主査】 それは重要な問題だと思います。多分、時間のない中で議論するに値する重要

な問題だと思いますので、先生方から活発なご意見をいただいたほうがいいと思います。もちろ

ん、脳幹に絞った理由が当然あると思いますので、本間先生、どうぞ。

【本間委員】 提案したときには、脳幹と絞ってなかったのですが、事務局のほうから、やは

りある程度絞ったほうが良いというご意見があってこうなりました。実際には、確かに脳幹の間

脳・中脳あたりが中心ですけれども、大脳辺縁系ももちろん非常に重要ですし、高次機能も関係

しますので、できればあまり絞らないほうが私としては大変助かるのですが。

それから、先ほどの低侵襲マルチ電極ですけれども、in vivo での脳幹までの低侵襲マルチ電

極はかなり難しいですけれども、ある程度侵襲すればできます。それから、イメージングのほう

は、むしろ遺伝子発現とか、タンパク質の発光のイメージングなどが、in vivo でできるように

なっていますので、そういうことまでも含めて、ところどころは ex vivo 計測も含めてですけれ

ども、現在行われており、発展しつつあるようなことを書きました。

脳幹に絞るとかなり範囲が狭くなってしまい、生命維持そのものという印象を受けます。むし

ろ、心の健康や体の健康、よく寝られて、食事が美味しくてというような健康な生活を子供から

老人まで送ることができるように、ストレスフルな社会に対応していこうという意図ですので、

できれば脳幹に限らないでいただきたいと思います。

【宮下主査】 本間先生、必ず後で具体的な対案を伺いに戻りますから、宜しいですか、よく

考えておいてください。

【本間委員】 はい。

【宮下主査】 しばらくはほかの先生のご意見を伺いますが、必ず対案を聞きに戻ります。対

案が必要です。先生方、入來先生から非常にいいご指摘だったと思いますが、今の問題若しくは

この資料全体に関して、ほかに何かそういうレベルのご意見をお願いいたします。はい、川人先

生、どうぞ。

【川人委員】 このポンチ絵なんですけれども、社会脳、健康脳、情報脳には1つずつ、基盤

技術開発には2つ対応して研究課題が掲げられていて、非常に収まりが良くて、平成21年度の

援護射撃という意味では分かりやすい絵なんですけれども、BMI拠点の代表研究者としては、

ブレイン・マシン・インターフェースは、情報脳の趣はもちろんあるんですけれども、ただ、今

走っているものは、8:2とか9:1ぐらいで、健康脳に重きがあると思っておりますので、ど

こかに括弧付きでもいいですから、健康脳にも入っているというのを入れておいていただいたほ

うが、22年度以降の情報脳がやりやすくなるのではないかと思います。

【宮下主査】 はい。川人先生、これはもう間違いなく対案を出してください。これは、事務

局に言うのはかわいそうですから、川人先生が対案を出してくださらない限りは無理だと思いま

す。ほかに先生方、どうぞ。

【入來委員】 やはり、このポンチ絵の「社会に貢献する」というのが気になっていて、研究

者が主体で出すものとしては、社会におもねるような、その結果として足元を見られてしまうよ

うなにおいが感じられるので、対案としては、例えば言葉をひっくり返すだけなんですが、「脳科

学の社会貢献を促進する」とか、「脳科学の社会貢献の具体化」というようなことではいけないん

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でしょうか。

【宮下主査】 具体的には、どこをどのように置き換えるんですか。

【入來委員】 「社会に貢献する脳科学の実現」の部分を、「脳科学の社会貢献を具体化する技

術の実現」とかにするのはどうですか。つまり、脳科学自体が社会におもねると言うと、言葉が

過ぎるかもしれませんけれども、やはり、社会に対して、ある意味、脳科学者がそんなにいい印

象を持たれないような雰囲気が醸し出される気がして、社会から見たら脳科学者の見識を損なう

ことになりかねませんし、脳科学から見た社会との関係というのも、ちょっといかがなものかな

という気がしますので、科学自体をいじるのではなくて、科学と社会の橋渡しを実現する施策と

すれば、アウトプットがかえってはっきりするような感じがします。

【宮下主査】 先ほどと同じようなシチュエーションですね。重要な問題が、 後に残ってし

まいました。

【本田委員】 この部分は、多分、私と入來さんが先鋭的に対立しているところなんですね。

これは政策プログラムなので、私は、「社会に貢献する脳科学の実現」というのを出さざるを得な

いと思います。そこのところで、別に脳科学者がおもねるわけではなくて、要するに、科学とい

うものの位置づけについての科学史とか科学哲学的なとらえ方の違いだけだと思うんです。そん

な話をここで議論してもしょうがないのですが、私はむしろここのところは、「社会に貢献する脳

科学の実現」というのが、シャープでいいというふうに思っています。

それは、本来そうあるべきだったですが、この10年間、色々とわき上がるようにできてきた

ものの中でも、使いものになるものもあれば、ならないものもありましたが、やはり脳科学は、

社会に貢献すべき側面を持っていて、そのためには何を実現していくかということなので、ここ

はこのままでいいんじゃないかというのが私の意見です。

【入來委員】 先鋭的に対立するというご指摘なので、その当否は皆さんのご判断を仰ぎたい

と思うんですが、この問題の根底には科学哲学史的な見解から、科学が何によってサポートされ

ているのかということが、この近代社会において随分変わってきたということがあるんだと思い

ます。私は以前、本田先生が今おっしゃったようなことを考えていて、数年前にそれに関して本

を書いたこともあるんですが、それに対して、今はちょっと考えを改めていまして、そういう動

きが確かにあって、そういう形の科学哲学の論調があって、欧米なんかもそうだと思うんですが、

数年前にそういう方向にかなりシフトして舵を切ったという過去の経験があるわけですね。

ところが現在は、それに対する批判といいますか、日本以外の世界的な研究者や科学者、ある

いは科学哲学者の間で揺り戻しが起こりつつある現状において、数年前のパラダイムといいます

か、このような考え方を今になって我々がまた出していくというのは、国際学術研究環境の中に

おいて、ちょっといかがなものか鼎の軽重を問われるではないかということを感じます。そこに

ついては多分先鋭的に対立するものがあるのではなかろうかと思います。数年前までは、実は私

もそう思っていましたが、現状では世界の趨勢は大きく動いています。

【宮下主査】 いや、重要な論点ですね。要するにこういうことを僕らは議論してきたんです

ね。

私はよく覚えていますが、入來先生が以前のメール会議の中で、学問と政策というのを2枚重

ね合わせるのは難しいから、間に制度というものを1つ置いて、学問と制度と政策という、そう

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いうふうに配置しないと、物事は収まりがつかないんだという議論をされているのを読んで、こ

れはいい議論で、先生方はこれにどんなふうに反応してくださるかなと思っていたんですが、あ

の時はあんまり大きな反応はなかったんですよ。どうしましょうか。

【本田委員】 よろしいでしょうか。そう言われても、まだ私は先鋭的に対立しているんです

が、アメリカで失敗したからといって、それを後追いをしているというわけでは全然ないという

ことをまず言いたいということと、それともう1つは、先ほどから学術研究と基礎研究は何かと

いうような話があったと思うんですけど、実はそれ、諮問の文書を読んでみると、それなりに分

かりやすく書いてあって、研究者の自由な発想に基づく学術研究や、政策に基づき将来の応用を

目指す基礎研究というふうに定義されていて、基礎研究というのは、実は政策に基づき将来の応

用を目指す研究ということだと思うんですね。

私自身は、ここのところで書かれている「社会に貢献する脳科学の実現」というのは、まさに、

これは審議経過の中にも書いてあるんですけれども、脳科学というのは、今のままですぐ浅薄に

応用できるような状態にはありませんということをはっきりと述べておりますし、ただ、脳科学

が役に立つためにはどういうふうにしていけばいいのかというところを、問題を掘り起こすとこ

ろからやっていく。だから、当然その内容は、基礎研究というものが主体になるだろうというこ

となので、そこのところで、米国の動きというものを追随するような形でやっているというのと

は、全然わけが違うというふうに私は考えています。

【宮下主査】 さて、これは収拾できませんね。

【菱山ライフサイエンス課長】 この資料自体は、ライフサイエンス課のクレジットになって

おりまして、私どもが責任を持って予算要求をしなければいけないということで、こういう形で

書いております。

これは予算要求のテクニックだけではなくて、先ほど両先生の対立がありましたが、多分、先

生方がおっしゃりたいのは、いわゆるモード2の話だったと思うんですけれども、我々としては、

やはり社会の課題を解決するためにどう科学が役に立つかという観点で進めていきたい。これは

脳科学だけではなくて、例えばiPSも、当然、基礎研究ではあるけれども、色々な医学に役に

立つのではないかということでやっていきたいと考えております。

また、ほかの分野でも、例えば気候変動に関しても、それは当然、基礎研究がデータを出して

政策に影響を与えているわけですから、必ずしも基礎研究だからといって、社会から離れている

というわけではないと私どもでは考えておりまして、ここは「社会に貢献する」という形でしっ

かりと説明をしていくことが重要ではないか。

当然、本田先生がおっしゃるように、明日にでもすぐに役に立つというような説明をしてはい

けないということは考えております。基本的に、ライフサイエンス課としては、こういう形で予

算要求をしていきたいと思っております。

【宮下主査】 さて、形式的には、事態はそんなに難しくないんですよね。私が一番始めに申

しましたように、これは基本的にライフサイエンス課の施策の問題なんです。ただ、私がやりた

くないのは、これをライフサイエンス課に一生懸命お願いしておきながら、中間取りまとめの段

階で表現が変わってしまって、かえってライフ課にご迷惑をかけるようなことが起こるのは望ま

しくないというふうにも思うんですよね。どうしますかね。

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【川人委員】 よろしいですか。適切なコメントになるか分かりませんけれども、より成熟し

た学問として、例えば物理学や化学を考えれば、基礎研究と社会への本当の応用がほとんど同じ

か、むしろ、実効的には応用の部分の学問分野のほうが大きいぐらいに成熟しているわけですね。

脳科学に関しては、その応用と呼べる部分が、本当にきちんとしたものがほとんどないというの

は、皆さんも納得しているところだと思うんです。例えば、物理学が1対1で基礎と応用がある

とすれば、今の神経科学、脳科学というのは、99.9対0.1というような、そんな関係かもし

れません。

しかし、一旦きちんと応用できるようになれば、我々の心の問題とか、社会の問題にものすご

く大きなインパクトを与えるという、そういう夢はやはり研究者は持ち続けるべきだと思います

し、また、5年後なのか、10年後なのか、100年後なのか知りませんけれど、そういう将来

の応用を考えた基礎研究というのは、より深い原理の探求につながると私は信じています。です

から、そういう高邁な精神なのであって、応用というと何か低いもので、魂を売ったとか、そう

いうふうにとられないように、この諮問に対する答申案をきちっと書くことで、10年前の戦略

研究がブレークしたような、何か新しいブレークスルーを出さないと、全く同じ論理で減ってき

た予算や、あるいは世の中からあんまり重要だとみなされていない脳科学を元気づけることはな

かなかできないと思いますので、私は基本的に本田先生の意見と一緒です。

それと、先ほどの宿題ですけれども、非常におざなりの提案ですけれども、この社会脳と健康

脳の位置を変えていただくのはどうでしょう。

【宮下主査】 それはだめでしょう。

【川人委員】 だめですか。

【宮下主査】 できればもうちょっと違う案をお願いいたします。

でも、その前に川人先生がおっしゃったことに関しては、私も賛成のところが沢山あります。

つまり、 後の結論はちょっと別として、やはり学問としての成熟度ということに関しては、よ

くよく自分たちの学問をほかのフィールドと比べてみる必要があるわけですね。その意味では、

まだまだ脳科学というのは若い学問であるということは、全くご指摘のとおりだと思います。

ただ、川人先生、どうしますかね。ライフ課がここまで一生懸命に力を入れてつくってくださ

った方向を、基本的にサポートするということでよろしいですかね。

【川人委員】 そうですね。

【宮下主査】 だから、後でかえってライフ課の足を引っ張るようなことが起こっては絶対い

けないと思うので、その点は、よくよく今の段階で考えておく必要があるということですね。

【大隅委員】 ちょっといいですか。これは、来年度のキャッチフレーズも、これでいけそう

なんですか。

【宮下主査】 22年度という意味ですか。

【大隅委員】 要するに、今年これを使っちゃった後に、それはまた来年考えればいいという

ことなのかもしれないんですけれども、ちょっとそういった意味でどうかなというのが、少しだ

け気になります。

【宮下主査】 大隅先生のご発言の意図をちゃんと理解しているかどうか自信はないんですが、

ただ、もし21年度のときはこれを使って、22年度はまた別のものを考えなさいってライフ課

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が言ったら、僕も困ると思いますね。これは、やはり先ほど川人先生がおっしゃったように、

終的にはロングレンジのものを考えた表現なのであって、そんな1年で使い捨てにされるような

ものではないというふうに理解したいので。お答えとしてちょっと見当外れですか。

【大隅委員】 いや、よく分かりました。

【入來委員】 先ほど本田委員と先鋭に対すると申し上げましたけれども、多分、その考える

心は同じなんだと思うんですね。やはり気になるのは、ここの表現が気になるなということだっ

たんですが、それはライフ課がこれでいきたいということであれば、無用な誤解を生まないよう

に、しかるべきところにちゃんと書き込んでおくとか、あるいは、このポンチ絵の中にそういう

仕掛けを入れておくということで、誤解さえ生まなければ、おそらくものの考え方というのは、

川人委員が今おっしゃったようなことで、皆さん共通しているのではなかろうかと思うんです。

その辺りさえ対応していただければ、そんなに対立点はないような気もします。

【宮下主査】 個人的なことを言うのはあまり良くないかもしれないんですが、私は、入來先

生がメール会議のときに書かれた社会の要求と学問との関係というのは、非常に聞くべき意見だ

なと思って拝聴していたので、先生のおっしゃることは非常によく分かるんですよね。入來先生、

どう思われますか。今、先生がおっしゃったように、本当にこれは書き方の問題で、後々、1月

までに収拾できると思いますか。

【入來委員】 いや、書き方であれば「脳科学の社会貢献の実現」とか、実現というとちょっ

と言葉は浮いてしまうのですが、つまり、これは社会貢献が脳科学にかかっているから違和感を

持つので、脳科学が主語になった形の何か言い回しがあると、誤解を生まないような気がするん

ですけれども。すみません、明確な対案がなくて申しわけないんですけれども。

【伊佐委員】 ちょっとよろしいですか。私は、今のタイトルはそんなに悪くないなと思いま

す。貢献というのは、色々な貢献があり得ると思うのですが、あまり狭義にとらえる必要はなく

て、脳科学はやはり基本的に社会に貢献するものであって、それを広くとらえるということであ

れば、この「社会に貢献する」でよろしいのではないかと思います。

【宮下主査】 なるほど。さて、先生方、申しわけないんですが、実はもう時間が過ぎており

まして、終わりにしないといけないんですね。ただ、あまりにも重要な問題なので、ちょっと打

ち切りかねております。

とにかく、これが9月、10月で議論されるべき重要な問題であること自体はお分かりいただ

けたと思いますが、ただ、私が先ほどから言っていますように、これが持っている重さというの

がありますし、今後のことも一応にらんで、その上で、今、伊佐先生がおっしゃってくださった

ような格好で収拾してよろしければ、これでいきたいと思うんですが、いかがでしょうかね。

【森委員】 同感です。実はここのところなんですが、メール会議の時に、本田先生が書かれ

たパラダイムシフトがものすごく引っかかったんですけれども、皆さんのお話を聞き、ライフ課

のお話も聞いて、これでいいと思います。

【宮下主査】 はい。

【伊佐委員】 具体的なことを1点だけ質問したいんですが、よろしいですか。これ、脳科学

研究戦略推進プログラムの事業期間が、平成20年から24年となっていますよね。

【菱山ライフサイエンス課長】 すみません、間違いです。

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【伊佐委員】 ですから、21年度から始まるやつは、また5年間なんですよね。

【菱山ライフサイエンス課長】 おっしゃるとおりです。

【宮下主査】 それは重要な点ですので、修正してください。さて、もしよろしければ、本間

先生の宿題を除いて、収拾したいと思うんですが、本間先生、どういたしましょう。何と書き換

えますか。

【本間委員】 ライフ課の方から何度か言われたんですけれども、この脳幹の「幹」は抜いて

はまずいでしょうか。

【菱山ライフサイエンス課長】 「幹」を抜くのは構わないんですけれども、そうすると「健

康と生命を支える脳機能の研究」となって、何でもありになるんです。それで、我々としては、

どうにか絞っていただけませんかというので、「幹」を入れていただいたんです。「幹」を除くの

はいいんですが、その場合、何でもありになってしまうので、もうちょっと絞っていただくのが

ありがたいなと思います。

【宮下主査】 本間先生、私も実は、菱山課長と同じことを考えていました。「幹」を抜くこと

自体は、別にいけないとは申しませんが、単に「幹」を抜くだけでは、これは成立しないと思い

ます。もうちょっとお考えください。その間に、先ほどの先生方のアグリーメントをもう一度と

りにいきます。

そうしますと、この資料本体のほうですが、先ほどの入來先生と本田先生のご意見は、これは

お二人とも意識して問題点を明らかにするためにご発言いただいたんだというふうに思います。

つまり、問題点がどこにあるかということを明確にすることは非常に重要ですから、そのつもり

で本田先生と入來先生からご発言いただいたというふうに理解しておりまして、私はその点で非

常に感謝しております。これは、審議経過報告案そのものに、根深く組み込まれている問題です

ので、9月と10月にもう一度ご議論いただかなくてはいけません。

ただ、今日の段階でも、何らかの格好で収拾しなくてはいけないのも事実です。ですから、そ

の意味では非常に難しいのですが、ミニマムな、コンサバティブなということになると、これは

このままでいくということになりますがいかがでしょうか。

【本田委員】 ちょっとよろしいですか。先ほど入來先生もおっしゃったように、ポンチ絵と

いうのはひとり歩きをしやすいという面もあるので、確かにこの概要だけを読むと、入來先生の

おっしゃる懸念というのは、やはりあると思うんですね。ですので、私としては、今すぐに作文

しろと言われてもちょっとできないですけど、やはり、この概要の中にその心の部分を少し書き

込むような形に工夫をして、このポンチ絵がひとり歩きをしたとしても、その精神がちゃんと分

かるように、書けと言われれば書きますので、そういう形にして、タイトルのシャープさはその

ままにしておくというのはどうでしょうか。

【宮下主査】 いや、本当に厳しい話ですね。

【入來委員】 さっきからずっとにらんでいるんですけれども、貢献するのは脳科学自体では

なくて、脳科学を究明するために開発する色々な派生技術とか、そこから出てくるものが、大い

に社会に貢献するんだと思うんですよね。だから、「社会に貢献する脳科学派生技術の充実」とか、

派生と言うとまずいんですけれども、脳科学自体のかじを切るのではなくて、それを追求するた

めに必要なものが、行く行くは社会に貢献するという言い回しになるといいのですが。

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【宮下主査】 いや、本間先生にお願いしているのと全く同じことを入來先生にもお願いしな

いといけない。具体案をお願いします。厳しいことになってきましたね。

【川人委員】 単に言葉遊びかもしれませんけれども、「社会に貢献することを目指す脳科学」

にして、「の実現」は取ってしまう。その気持ちは、目指すんですから、100年後かもしれない

し、1万年後かもしれない。それで十分、基礎研究も中に入ると。やはり、ライフサイエンス課

のプログラムという意味では、貢献を目指すというのは、私は当然だと思うんですけれど。

【宮下主査】 ありがとうございます。川人先生は、2つの提案をおっしゃってくださいまし

た。1つは、「目指す」を入れる。もう1つは、「の実現」を取り除く。でも、この2つは、イン

ディペンデントですね。

【川人委員】 かもしれないですね。

【宮下主査】 ですよね。多分、インディペンデントだと私は理解しますが、具体的なたたき

台を川人先生は2つくださいました。「目指す」を入れると、「の実現」を取り除く。具体的にご

意見をいただきたいと思います。

【入來委員】 「社会貢献に資する脳科学の探究」というのはどうですか。あっ、探究はだめ

だったですか。

【宮下主査】 探究はだめです。

【本田委員】 探究と解明は禁句だそうです。

【宮下主査】 問題の性質はご理解いただいたと思うので、この件に関してご発言いただいて

いない先生方にご発言いただくのがいいかもしれません。高橋先生、桝先生、いかがでしょうか。

【高橋委員】 私は、このままでいいと思います。川人先生のおっしゃるのは誠にもっともだ

と思うんですが、「目指す」というのはモデスト過ぎると思うんですね。だから、「社会に貢献す

る」というのはすごく広い意味ですから、これは全然問題ないと思います。

【宮下主査】 「実現」はどうしましょう。

【高橋委員】 「実現」は、いいんじゃないでしょうか。

【宮下主査】 強硬なご意見ですね。桝先生、どうぞ。

【桝委員】 「社会に貢献する」というのがどういうふうにかかっているのか、そのとり方だ

と思うんですけれども、脳科学がいかにも社会に貢献するという目的のために使われるという形

のところに、少し違和感がある方がいらっしゃるのかなと思うんですけれども、私自身も、この

ままでいいと思います。このままでいいというのは、「脳科学の実現」というところがコアで、そ

の目的みたいなものが頭にかかっているというふうにも読めるので、私はこれでいいのかなと思

います。

【宮下主査】 私としては、川人先生がせっかくいい助け船をくださったので、もうちょっと

これを何とか取り込めないかというふうにも思っていたんですが。

【川人委員】 多分、宮下先生が非常に心配されているのは、これがこのまま走って、脳科学

委員会でひっくり返されると、えらいことになると。そういう意味では、なるべくモデストな表

現のほうが僕はいいと思うんですけど。

【宮下主査】 はい、私の心配はそのとおりです。モデストがいいかどうかは、難しい読みな

んですが。はい、大隅先生。

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【大隅委員】 私は、川人先生のご意見に賛成いたします。どちらかと言えば、「実現」を取る

ほうのバージョンですかね。「社会に貢献することを目指す脳科学」というキャッチフレーズで終

えておくというような形が、一番マイルドかと思います。

【宮下主査】 さあ、先生方、お考えください。私は川人先生に感謝しております。選択肢を

くださったので、これは大変ありがたい。どうですかね。どこかで、事務局の意見も伺いますが。

【高橋委員】 私は、意見を変えて、「実現」を取ります。

【宮下主査】 「実現」を取り除く。多分、先生方も、考えているうちに気持ちが揺れると思

うんですよね。本間先生、どうぞ。

【本間委員】 本当にちょっとだけ文言を変えたて、「社会に貢献することを目指す」ではなく

て、「社会への貢献を目指す脳科学」ではだめでしょうか。

【宮下主査】 「実現」は取り除くんですか。

【本間委員】 はい、取ります。

【宮下主査】 うーん。いや、本当に難しい判断なんですが、さて、どうしましょうかね。高

田先生、いかがですか。

【高田委員】 基本的に、僕はこのままでも別に違和感はないですね。というのは、重点的に

推進すべき研究領域等というところの上の3項目は、どう考えても社会に貢献する脳科学であっ

て、だから、これを書いた以上は、貢献という言葉にあまりこだわって、おもねるであるとかそ

ういう危惧をするのであれば、むしろその左側を変えるべきであって、そういう意味からいけば、

別に私自身としては違和感がないし、それから、この言葉は結局、一番上の社会脳のところに書

いてあることを少し書きかえてあるだけなんですね。ですから、基本的にこのままでも別に違和

感はないです。それに、目指すのは当たり前であって、別に「目指す」を入れたから、そんなに

モデストな表現になるとは思わないですね。

【宮下主査】 なるほど。

【大隅委員】 もし「ことを目指す」というのがモデスト過ぎるということであれば、やはり、

私は「社会に貢献する脳科学」というキャッチフレーズであれば分かるんですけれども、「社会に

貢献する脳科学の実現」と言われてしまうと、ちょっとニュアンスが違うかなというふうに思い

ますので、もしそういった方向に集約されるのでしたら、私もその意見に賛成です。

【宮下主査】 なるほど。この辺りで事務局の意見を聞きます。例えば、大隅先生がご提案く

ださったような「社会に貢献する脳科学」というキャッチフレーズは、事務局的にはいかがです

か。

【菱山ライフサイエンス課長】 それで全然問題はないと思います。

【宮下主査】 そうすると、その辺りになるんですかね。

【入來委員】 後に、もう1ついいですか。このサブテーマを見てみると、技術開発という

ことが主にあるので、「技術」を入れて、「社会に貢献する脳科学技術の実現」とか、「社会に貢献

する脳科学系技術の実現」とかにすると、いわゆるサイエンスのほうからは違和感がないような

気がしますけど、それはどうなんでしょう。

【宮下主査】 個人的な意見で恐縮ですが、ちょっと今のはいまいちの感じがしますね。複雑

すぎる。どちらかというと、私は、もしこの場で収拾するんでしたら、個人的には、大隅先生の

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ご提案で収拾するということかなと思います。いかがでしょうか。

【高田委員】 いいですか。脳科学のままで終わってもいいし、あるいは、もし「実現」とい

うのに抵抗があれば、「推進」とかでもいいのかなというふうに思います。

【大隅委員】 それでしたら、「社会に貢献する脳科学」のほうが、コピーライター的な感覚で

言うと、言葉のインパクトとしてはあると思います。

【宮下主査】 はい。私も今の大隅先生のご意見に賛成です。もしよろしければ、もう一度繰

り返させていただきますが、現在の「社会に貢献する脳科学の実現」を、「社会に貢献する脳科学」

に置き換えさせていただくということで、今日の作業部会での議論としては引き取らせていただ

いてよろしいでしょうか。

ありがとうございます。それでは、本間先生に宿題を伺う必要があります。本間先生、どうぞ。

【本間委員】 色々と言いましたけれども、「脳幹」で結構です。

【宮下主査】 はい、分かりました。

【本間委員】 脳幹機能の生命維持と言うと、ただ生命を維持するというような印象を受ける

人がいるかと思い、ちょっと心配したんですけれども、中の文面のところで、4つの柱がきちん

と書いてありますので、単なる生命維持のことを今言っているわけではないということがはっき

りすれば、大丈夫だと思います。

【大隅委員】 それで結構だと思うんですけれども、やはり文章の中に、どこかで「脳幹等」

とか、ほかの脳の部位もきちんと挙げていただくとか、そういったことをしておいていただけれ

ばいいと思います。

【宮下主査】 この脳幹という部分に関して、入來先生が 初にご指摘してくださったことは、

実は個人的に同感でありまして、もっといいワーディングがあれば、できれば脳幹は避けたいと

思うんですね。

【伊佐委員】 例えば、「自律的な脳」とか、「自律機能」とか、「自律脳」とか、脳の前にもう

1つ修飾をつけ加えられてはいかがですか。

【宮下主査】 なるほど。それはいいですね。もう時間がありませんので、この問題に関して

は、前の議題と同じように、ほかにご意見やお気づきの点等がございましたら、7月22日の火

曜までに事務局あてにご連絡ください。委員の皆様からのご意見を踏まえまして、資料を修正し

た上で、8月19日に開催を予定しております脳科学委員会に提出することにいたしますけれど

も、本作業部会としての 終的な取りまとめにつきましては、恐縮ですが、主査に一任していた

だくということで、よろしいでしょうか。

(委員了承)

【宮下主査】 ありがとうございました。それでは、次の議題に移らせていただきます。

次の議題は、「第一次答申(中間取りまとめ)(案)の構成について」ということでございます。

これに関して、事務局からご説明をお願いします。

【菱山ライフサイエンス課長】 資料4-4でございまして、1枚目のところを見ていただき

ますと、今までの議論を踏まえて、中間取りまとめ案の構成としては、こういうふうにしてはど

うかということで、 初の議題でもご議論いただきましたけれども、第1回の作業部会でご検討

いただいた各検討事項をまとめてみると、右側の四角のような構成になるのではないかというこ

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とで、 初のところは問題点だけでなくて、在り方や人社融合も入れるということですね。それ

から、体制、人材育成、社会との調和、研究開発ロードマップという構成を考えております。こ

の順番については、また色々とご議論があるかと思います。

そして、2枚目を見ていただきますと、今まで各検討事項のご担当者が決まっていましたけれ

ども、それを1ページ目の案に沿ってご担当を入れますと、このような形になるということでご

ざいまして、各先生方に各章のご担当をお願いしたいというところでございます。

【宮下主査】 ありがとうございます。本日、既に大隅先生や高田先生からご発言をいただい

たことそのものであります。この作業部会が始まりましたときに、検討事項というのを一覧にし

まして、その担当委員というのを割り振らせていただきました。ただ、本日の 初の議論でも先

生方からご指摘がありましたように、明らかに今の段階になると、初めに括った検討事項という

のは、不適当な部分が沢山ある。つまり、まとめて議論しなくてはならないところが沢山あると

いうことです。

例えば、「我が国における脳科学研究の在り方について」というのは、初めは独立して考えてお

りましたけれど、これは明らかにそうはいかなくて、一番目の現状と問題点というところと一緒

にやらなければおかしい。それから、「脳科学に関する学術研究、基礎研究及び政策課題対応型研

究開発の役割と推進体制の在り方について」というのは、そもそも各機関の効果的な連携の在り

方と一緒にやらなければおかしいということで、そういう項目を一緒にまとめさせていただいて、

そこから先は機械的ですが、今、課長のほうからご説明いただいた資料4-4の参考というのが

ございまして、各検討事項の担当委員というのを 初の作業部会でお願いいたしましたが、その

項目に張りついていただいた担当委員の方は、項目の合併と一緒に、機械的に一緒にしてお願い

するという、そういうストラテジーでお許しいただければ、これをもとに、9月、10月の議論

と討論をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでし

ょうか。

それでは、9月19日に開催を予定しております次回の作業部会に向けて、各委員におかれま

しては、資料4-4の参考にございます担当委員一覧に基づきまして、各章のメモの作成を進め

ていただきたいと思います。

また、中間取りまとめ案の各章の順番につきましては、先ほど課長からもご説明がありました

ように、それから、私が途中でちょっと申しましたように、ロードマップの位置を一体どこにし

たらいいのかという重要な問題とも関わりがありますので、引き続きメール会議にて審議を進め

たいというふうに思いますので、ご対応をよろしくお願いいたします。

さて、本日予定していた議事に関しましては、以上でございますけれども、ほかにご意見やご

質問がございましたら、お願いしたいと思います。桝先生、どうぞ。

【桝委員】 ポンチ絵についてなんですが、全体のタイトルも大事だと思うんですけれども、

1番目の研究課題で、先ほど評価・支援技術というところを「計測」と言っていただきまして、

そのほうが非常にドライでいいと思うんですけれども、ここで考えておりますものというのは、

生物学的指標で、岡部先生にソーシャル・ブレイン・マーカーという言葉をうまく考えていただ

いたんですけれども、もう少し遺伝子とか生化学的なバイオマーカーに近いものとか、かなり広

いものを含んでおりますので、「計測」という言葉で妥当なのかとちょっと考えておりまして、例

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えば、「生物学的指標」あるいは「生物指標」というような言葉などで置き換えられるのかどうな

のかなと考えております。

【宮下主査】 もうこれは具体的でないとだめですので、そうしますと、今の先生のご提案は、

「評価」を「生物指標」に置き換えるということですか。

【桝委員】 私自身としては、そのほうがもう少し具体的かなと思ったんですが。

【宮下主査】 「社会的行動を支える脳基盤の生物指標・支援技術の開発」にするということ

ですか。

【桝委員】 はい。

【宮下主査】 でも、これはちょっと長いですね。

【桝委員】 ちょっと長い感じで、語呂が悪いんですけれども。

【森委員】 「解析」とか「分析」ではだめですか。

【宮下主査】 それはだめですね。学術研究助成課ならいいかもしれませんが。桝先生、お考

えください。さて、桝先生からご指摘がなければ、「計測」でいこうかと思っていたんですが、し

かし、これは、私が先ほど一任を受けた範囲内で処理させていただきますので、具体案をぜひご

提案ください。 終的には、私が自分の責任で収拾いたします。

ほかにご意見はございますか。もしないようでしたら、本日の作業部会はここまでということ

で、事務局のほうから連絡事項をお願いいたします。

【生田ライフサイエンス課長補佐】 はい。長い時間ありがとうございました。先ほど宮下先

生からもお話がありましたように、本日ご審議いただきました資料の4-2と4-3につきまし

ては、ほかにご意見等ございましたら、7月22日までに事務局までご連絡いただきたいと思い

ます。いただいたコメント等を踏まえながら、宮下主査とご相談させていただいて、調整等をし

ていきたいと思います。

また、次回の作業部会は、9月19日の14時から17時までの開催を予定しております。後

日、正式な開催案内をご連絡いたします。

それから、本日の配布資料は事務局から送付させていただきますので、そのまま机上に残して

いただければと思います。紙ファイルの参考資料集は、お持ち帰りにならないようお願いいたし

ます。以上でございます。

【宮下主査】 ありがとうございます。それでは、引き続き22日までメール会議をいたしま

すので、桝先生と本間先生だけではなく、ほかの先生方からもご意見をいただければ幸いに存じ

ます。

それでは、本日の調査検討作業部会は、これで閉会とさせていただきます。本日はどうもあり

がとうございました。

―― 了 ――