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基盤教育(令和元年10月10日、10月17日)
福島大学共生システム理工学類
物理・システム工学コース 岡沼信一
2
磁界に関する基礎知識①~⑥
磁気回路と等価回路
電磁誘導とインダクタンス
電磁エネルギー
内 容
3
磁界に関する基礎知識①
クーロンの法則 (クーロン(1736~1806),仏人の土木技術者)
磁石には地球の北極を指すN磁極と南極を指すS磁極があり、N磁極とS磁極には引力が、N磁極同士およびS磁極同士には斥力が働く。
磁極に働く力の大きさF(N)は、磁極の大きさ(これをm1, m2で表す)の積に比例し、磁極間の距離r(m)の二乗に比例する。(クーロンの法則)
ただし、μ0=4π✕10-7H/mは真空の透磁率(定数)。磁極の強さm1, m2はWb(ウェーバー)の単位を使用する。
※磁極1Wbとは真空あるいは空気中で1m隔てた磁極間に働く力6.33✕104 Nであるときの磁極の強さ。
221
041
rmmF ×
⋅=πµ
4
磁界に関する基礎知識②
磁界と磁界の強さクーロンの法則では、二つの磁極の大きさとその間隔(距離)に関係して磁極に力が働くと考えているが、これを磁極m1により空間に磁気的な“ひずみ”が生じ、このひずんだ空間に磁極m2をおくと、m2は力を受けるとも考えられる。
このとき磁気的な空間のひずみを磁界(Magnetic Field)といい、クーロンの法則は次のように書き換えられる。(実験式)
ただし、Hは磁極m2の位置における磁界の強さで、単位はA/m。※1 磁界の強さは1Wbの磁極が受ける力の大きさに等しい。※2 1Wb磁極から1m離れた点では A/mの磁界
の強さ。
1 2 12 22 2
0 0
1 14 4
m m mF m H mr rπµ πµ
×= ⋅ = ⋅ × = ⋅
01 (4 )H πµ=
5
磁界に関する基礎知識③
磁力線磁石の上から砂鉄を振りかけると、下図(左)に示すように線状の模様ができる。この模様は目に見えない次回の方向を可視化する指力線で磁力線(Line of Magnetic Force)と呼ばれる。
この磁力線には次の性質を持つものとして定義される。
(1) N極から出てS極に入る。(下図中参照)(2) 接線の方向と磁界の方向が一致。(3) 磁力線の密度は、その点の磁界の強さに等しい。
1[Wb]
1[m]
H[A/m]
6
※1Wbの磁極から放出する磁力線の総数
+1WbのN磁極の中心から半径1mの仮想球を考える。↓
仮想球の表面における磁界の強さは、 A/m(前述)↓
半径1mの仮想球の表面積は m2
磁力線の総数をN本とする磁力線の密度は、 (本/m2)
磁力線の密度は、その点の磁界の強さに等しいことより、
※ 磁力線は、その数が多いため実用的ではない。
1[Wb]
1[m]
H[A/m]
01 (4 )H πµ=
4π
(4 )N π
7 5
0
1 1 10 7.96 104
Nµ π
= = × ≅ ×
7
磁界に関する基礎知識④
磁束と磁束密度磁界の視力線としての磁力線は、その数が多いため実用的ではない。
そこで磁力線を束として扱い、これを磁束(Magnetic Flux)。↓
単位は、磁極の大きさと同じWb(ウェーバー)を使用する。
※m(Wb)の磁極からは、 m/μ0(本)の磁力線が出ているが、これをm (Wb)の磁束と考える。
一方、磁束の面積密度を磁束密度(Magnetic Flux Density)Bという。単位はWb/m2.
8
※磁界の強さと磁束密度の関係
磁極m(Wb)を中心とする半径r(m)の仮想球の表面の磁界の強さHは、
磁極からは磁束φ=m (Wb)が放射状に放出されると、仮想球表面の磁束密度Bは、
従って、磁束密度Bは、
※磁束密度Bは単位はWb/m2であるが、現在、1 Wb/m2=1T(テスラ)としてテスラが使用されている。
204
1rmH ⋅=
πµ
24mB
rπ=
HB ⋅= 0µ
9
磁界に関する基礎知識⑤
アンペアの周回路の法則導線に電流を流すと、導線の周りに磁界が発生する。
↓磁界の方向はアンペアの右ネジの法則に従う。磁界の大きさは、アンペアの周回路の法則に従う。
※アンペアの周回路の法則任意の閉曲面を仮想するとき、閉曲面周囲の微小区間dsと微小区間の磁界の強さHtとの積Ht ✕dsを閉曲面の周囲について線積分した値は、閉曲面を通過する電流I に等しい。
任意の閉曲面
IdsH t =∫
10
r
I [A]
H
(a)
※アンペアの周回路の法則の適用例(その1)
下図(a)に示すように無限に長い導線に電流I(A)が流れている。導線からr(m)離れた点の磁界の強さH(A/m)は、
↓①閉曲面を(b)のように導線を中心にr(m)を半径とする円とする。②仮想円の周囲では軸対称であるため、磁界の強さは同一。
2 , (A/m)2
IHds H ds H r I Hr
ππ
= = × = ∴ =∫ ∫
※アンペアの周回路の法則の適用例(その2)
下図(a)に示すように無限長の円筒形の導体の物体にコイルを巻いた(ここでは1mあたりn回)ものを無限長ソレノイドという。この無限長ソレノイドの磁界の強さは以下のように求めることができる。
①アンペア周回路の法則を適用するため、閉曲面を下図(a)に示すように閉曲面を□GHFE,□EFDC,□CDBAとする。
②各閉曲面で法則を適用する。
(1) □GHFE:ソレノイドに垂直な辺HFとEGの磁界の強さが零(HHF=HEG=0)同図(b)参照であるため、
0,0
GH FE
GH FE
H l H lH H⋅ + ⋅ =
∴ = =
11
12
(2) □EFDC:この四辺形を通過する電流は、 (A)である。また、(1)の
結果よりHHF=0である。 従って、□EFDCに法則を適用させると、
(3) □CDBA:この四辺形を通過する電流は、
( ) ,DC DCH l n l I H n I× = ⋅ × ∴ = ⋅
( )n l I⋅ ×
0,CD BA BA CDH l H l H H⋅ + ⋅ = ∴ = −
BA CD DCH H H n I= − = = ⋅
H n I= ⋅
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磁界に関する基礎知識⑥
物質の磁性による分類われわれの周りには磁界によって力を受ける物質(磁石に吸引されやすい物質)と、力を受けないあるいは受けにくい物質がある。
強磁性体 鉄、ニッケル、コバルト、マンガンとその化合物
常磁性体アルミニュウム、白金、すず、イリジュウム、酸素、空気など
反磁性体ビスマス、炭素、燐(りん)、金、銀、銅、セシウム、アンチモン、亜鉛、鉛、水銀、窒素、アルゴン、硫酸、塩酸、水など
なぜ鉄は磁石にくっつくのか?磁石になりやすいのか?
物質の磁性による分類(電機理論Ⅰ、小林淑郞著 学研社より)
14
※磁性体の磁化(分子磁石説)
鉄は、元々内部に微小な磁石(分子磁石)を持っている。↓
通常はこの分子磁石がランダムに配列されているため、外部に磁石としての性質を現さない。
↓磁石を近づける(或いは磁界を加える)と同図(b)(c)のように、分子磁石は磁界の方向に揃うように移動する。
NS
N
SN
S
NS
NS
NS
NS
N
S NS N
S
NS
N
S
NS
NS
NS NS
NS NS NS
NS NS NS
NS
( a ) ( b ) ( c )
分子磁石
15
※鉄心の磁化特性
鉄心に巻線を巻いて電流Iを流すと磁界Hが発生する。(スイッチを切り替えて電流の方向を変える。)
↓磁界の強さHと鉄心の磁束(密度B)の関係を測定すると、下図(b)のような曲線となる。(磁化特性曲線)
↓磁性材料の性質を判断(指標となる)する重要な特性
ソフト
0Hc H
B
Br
(a) (b)
I
12 HB
1
2
345
6
7
89
10 11
12
13
14
Hc H
B
Br
(a)
0 H
B
Br
(b)
Hc
ハード
磁気回路と等価回路
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磁気回路の磁束は、下図(a)の磁気回路において、鉄心内の磁界の強さH(A/m) は、アンペアの周回路の法則より、H=NI/ℓである。従って、磁心の磁束φ(Wb)は、
NI S NIB S H S S NIl l l
S
µφ µ µ
µ
= ⋅ = ⋅ = = =
17
NI S NIB S H S S NIl l l
S
µφ µ µ
µ
= ⋅ = ⋅ = = =
下表のように磁気回路と電気回路を対応させれば、磁気回路を電気回路として扱うことができる。磁気回路の解析が容易。
電気回路 磁気回路電圧(起電力) E (V) 起磁力 NI (A)
電流 I (A) 磁束 φ (Wb)電気抵抗 R (Ω) 磁気抵抗 (A/Wb)
電気回路のオームの法則: 磁気回路のオームの法則:
磁束起磁力
磁気抵抗
18
※磁気回路の等価回路計算例(その1)
下図に示す磁気回路において、磁束φ1を求めよ。ただし、漏れ磁束を無視し、透磁率をμとする。
1 2 31 2 3
1 2 3
, ,l l lR R RS S Sµ µ µ
= = =
ヒント:磁気回路の各部分の磁気抵抗をそれぞれR1, R2, R3とすると、
断面積
磁路長
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※回答例(その1)
1 2 31 2 3
1 2 3
, ,l l lR R RS S Sµ µ µ
= = =
磁気回路の各部分の磁気抵抗をそれぞれR1, R2, R3とすると、
2 3 3 3 2 31 2 1
0 1 2 2 3 3 1 2 3 2 3 1 2 2 3 3 1
2 2 2 33 1
2 3 2 3 1 2 2 3 3 1
, ,NI R R R R R RNI NIR R R R R R R R R R R R R R R R R
R R R R NIR R R R R R R R R R
φ φ φ
φ φ
+ += = = = + + + + + +
+= = + + + +
従って、
等価回路