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環境報告書 名古屋市上下水道局 2012

環境報告書1 平成25年2月 名古屋市上下水道局長 長谷川 和司 はじめに 環境報告書の基本要件 対象組織:名古屋市上下水道局 対象分野:水道事業、下水道事業、工業用水事業

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Page 1: 環境報告書1 平成25年2月 名古屋市上下水道局長 長谷川 和司 はじめに 環境報告書の基本要件 対象組織:名古屋市上下水道局 対象分野:水道事業、下水道事業、工業用水事業

環境報告書

名古屋市上下水道局

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平成 25年 2月

名古屋市上下水道局長 長谷川 和司

はじめに

○ 環境報告書の基本要件

■対象組織:名古屋市上下水道局   ■対象分野:水道事業、下水道事業、工業用水事業

環境省「環境報告書ガイドライン(2012 年度版)」を参考にしています。

 上下水道事業は、良質な原水を取水して安全でおいしい水道水をお届けすること、都市か

ら排出された汚水をきれいにして河川に返すこと、またこれらの事業活動に伴い多大なエネ

ルギーを消費し温室効果ガスを排出していることなど、水を通じて環境と深く関わっていま

す。

 上下水道局では、「環境首都なごや」をめざした本市の方針や取り組みを踏まえて、上下水

道事業の環境保全施策を具体化した「第2次名古屋市上下水道局環境基本計画」を策定し、

環境負荷の低減と水環境の向上に取り組んでいます。

 電力需給バランスが厳しい状況となった東日本大震災以降、全国的に節電・省エネルギー

への取り組みが進められるとともに、再生可能エネルギーの普及促進が図られています。こ

うした状況のなかで、多くのエネルギーを消費する上下水道事業においても、節電、電力ピー

ク時間帯の水運用を変更するピークシフト対策や、省エネ設備の導入を図るなどの対策を実

施してきました。

 平成24年は、下水道供用開始100周年を迎えました。また、平成26年には、水道給

水開始100周年という大きな節目を迎えます。これまでも、上下水道局は、環境との調和

を常に考えて環境保全活動に取り組んできました。長引く景気の低迷を受け厳しい経営環境

が続いておりますが、深刻化する環境問題への対応として、環境に配慮した事業を持続して

いく必要があると考えています。

 この環境報告書は、上下水道局における事業活動に伴う環境保全への取り組みとその結果

を多くのみなさまに知っていただくため毎年度作成し、公表しています。報告書の作成にあ

たっては、わかりやすく環境保全活動の内容を紹介するとともに、

環境会計などを活用して環境保全のためのコストや環境負荷の削

減量などを数値で表しています。

 今後も、上下水道事業に対するお客さまのご理解・ご協力をい

ただきながら、環境保全活動を通じて、環境への負荷の少ない上

下水道事業、環境を守る上下水道事業をめざしていきます。

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第 1部 環境保全の取り組み

上段左「創設時の堀留下水処理場(現在:堀留水処理センター)」、上段右「鍋屋上野浄水場 ろ過池上部の太陽光発電設備」中段左「配水管敷設工事(栄二丁目五番付近)」中段右「下水道の歴史メモリアルゾーンのマンホール蓋をモチーフとした修景」下段左「柴田水処理センター 施設上部」、下段右「鍋屋上野浄水場 旧第一ポンプ所」

【表紙写真】

水環境の向上ヒートアイランド対策悪臭防止対策の推進騒音・振動対策の推進地盤沈下の防止

上下水道局温室効果ガス排出削減中長期計画の運用再生可能エネルギー省エネルギー下水汚泥処理にともなうN2O排出量などの削減

1 上下水道事業と環境のかかわり

2 環境にやさしいまちづくり

3 温室効果ガス排出量の削減

4 省資源・リサイクルの推進

環境にやさしい工事副産物の有効利用

5 環境にやさしいライフスタイルの提案

じゃ口回帰への取り組み次世代を担う子供たちの環境意識の醸成環境にやさしいオフィス活動情報の発信

6 上下流交流から流域連携へ

7 環境活動に取り組む上下水道局の体制

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第 2部 平成 23 年度 環境活動データ P26 ~ 38

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1 上下水道事業と環境のかかわり

ダム

取水場

放流口

汚泥処理場

水処理センター

雨水滞水池

放流口

上下水道事業では、水道事業、下水道事業、工業用水事業の3つの事業を行っています。

課題)・浄水処理に使用するエネルギーの削減

・送水に使用するエネルギーの削減

・副産物の有効利用

対策)・高効率機器の採用・再生可能エネルギーの導入

・位置エネルギーを利用した配水方法への変更

・送水ポンプのインバータ制御化

・直結給水方式の普及促進

・浄水発生土の有効利用

課題)・下水処理に使用するエネルギーの削減

・副産物の有効利用

対策)・揚水ポンプのインバータ制御化

・超微細気泡散気装置の採用

・高効率機器の採用・再生可能エネルギーの導入

・下水沈砂の有効利用・下水処理水の有効利用

課題)・水環境の保全

対策)・合流式下水道の改善・高度処理の導入・下水再生水の河川への供給

課題)・汚泥処理に使用するエネルギーの削減

・汚泥処理で発生するCO2、N2O の削減

・副産物の有効利用

対策)・高効率機器の採用

・高温焼却の推進・汚泥焼却燃料の都市ガスの採用

・汚泥焼却灰の有効利用

課題)・汚れの度合いが大きい降り始めの雨水の流出抑制

対策)・雨水滞水池の建設など合流式下水道の改善

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雨水ポンプ所

雨水

工事現場

局用車

オフィス

配水場

浄水場

水道

工業用水道

水道事業給 水 人 口人 口 普 及 率年 間 給 水 量有 効 率配 水 管 延 長事業運用費用

2,388,959 人100.0%286,289,251m397.2%8,315km493 億円

下水道事業処 理 人 口人 口 普 及 率年間処理水量下 水 管 延 長事業運用費用

2,239,300 人99.0%442,503,800m3

7,656km733 億円

工業用水道事業給 水 事 業 所年 間 給 水 量浄 水 場配 水 管 延 長事業運用費用

109 事業所22,892,712m3

3 ヶ所100km8 億円

これらの事業を行うことによる環境保全に対する課題と対策は多岐にわたります。

課題)・雨水排水で使用するエネルギーの削減

対策)・高効率機器の採用

課題)・廃棄物等の排出削減

・副産物の有効利用

・騒音、振動の発生抑制

対策)・非開削工法など環境にやさしい工事の推進

・建設発生土、リサイクル資材等の有効利用

・防音ハウスの設置

課題)・局用車の燃料使用量の削減

対策)・低公害、低燃費車の導入

課題)・オフィスにおける環境負荷の削減

対策)・高効率照明器具の採用(Hf 蛍光灯、LED電球等)・高効率空調設備の導入・再生可能エネルギーの導入

・下水熱を利用したヒートポンプの活用

・グリーン購入の推進・用紙類使用量の削減

課題)・漏水の防止

対策)・水道管の漏水の現地調査

課題)・地盤沈下の防止

対策)・地下水の代替水源としての工業用水道の供給

課題)・ヒートアイランド現象の抑制

・悪臭の発生抑制

対策)・施設の緑化・せせらぎの創出・雨水流出抑制の推進 等・ビルの地下排水槽の臭気調査

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2 環境にやさしいまちづくり水環境の向上

 市内を流れる多くの河川では、水処理センターで処理された下水処理水が水源の一部となっ

ています。河川水質の向上とともに、一定水量を確保することで豊かな川の流れを支えています。

下水道の普及により市内河川や伊勢湾の水環境は向上してきました。今後も人口普及率 100%

を目標に下水道の整備に取り組むとともに、さらなる水質の向上をめざし、合流式下水道の改

善や下水の高度処理にも取り組んでいきます。

 下水を運ぶ方法には、汚水と雨水を同じ管で運ぶ

合流式下水道と、別々の管で運ぶ分流式下水道があ

ります。

 合流式下水道では、弱い雨の時は汚水と一緒に雨

水も水処理センターに送り、処理しますが、雨量が

増加し一定量を超えた場合は、路面など街の汚れや

汚水の一部を含んだ雨水が、雨水吐室や雨水ポンプ

所から直接河川へ放流されます。

 このことが河川の汚れの一因となっていることか

ら、汚れの度合いの大きい降雨初期の雨水を一時的

に貯留し、降雨終了後に水処理センターへ送水する雨水滞水池を建設するとともに、雨天時に

水処理センターで実施する簡易処理の処理水質を向上させるために簡易処理高度化施設を設置

するなど、合流式下水道の改善を進めています。

合流式下水道の改善

整備された雨水滞水池(堀川右岸雨水滞水池)

合流式下水道の改善のイメージ図

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下水の高度処理の導入

高度処理の一例(A2O法)

 下水道の放流先である伊勢湾海域においては依然として赤潮が発生しており、その原因とな

る窒素・りんの排出量をさらに削減することが求められています。そのため、水処理センター

において、従来の処理方式に比べ、主に窒素・りんを多く除去できる高度処理の導入を進めます。

りん除去対応の高度処理を、平成 13 年度から熱田水処理センターで、平成 14 年度から打出

水処理センターでそれぞれ行っています。さらに、窒素・りん除去対応の高度処理を、平成

21 年度から柴田水処理センターの一部で、平成 22 年度から西山水処理センターで実施して

います。また、浮遊物質除去対応の高度処理を、平成 22 年度から名城水処理センターで実施

しています。

名城水処理センターの浮遊物質除去装置

下水再生水の河川への供給 下水再生水は都市の貴重な水資源であり、市内河

川の水源として有効利用に努めています。打出水処

理センターの下水再生水※1 を、水源の乏しい荒子

川に供給しています。また庄内用水に対しては庄内

川からの通水が止まる非かんがい期に、堀川に対し

てはかんがい期に守山水処理センターの下水再生水

を供給し、水環境の向上に寄与しています。

下水放流水の管理目標水質の設定

荒子川への下水再生水の供給

 水処理センターの放流水は、水質汚濁防止法等による

水質基準値が定められています。河川などの公共用水域

の水質保全のため、各水処理センターにおいて、生物化

学的酸素要求量や窒素含有量などの汚濁指標の5項目に

ついて、放流水の管理目標水質を水質基準値よりも厳し

く設定し、より良い放流水質をめざしています。 浮遊物質量(SS)

生物化学的酸素要求量(BOD)

化学的酸素要求量(COD)

窒素含有量(T-N)

りん含有量(T-P)

放流水の管理目標放流水の管理目標

※1 通常の下水処理に加え、ろ過・滅菌等をした水のことです。

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工場・事業場排水の規制 下水道を使用する工場・事業場の排水による、下

水道施設の損傷、水処理センターの放流水の水質悪

化を防止するために、事業者からの届出を受け、立

入検査を実施しています。さらに、基準値を超えた

事業者に対して指導を行うことにより、水質の改善

を図っています。

工場・事業場排水の採水

ヒートアイランド対策

施設の緑化 壁面・屋上緑化や緑のカーテンなどの施設の緑化は、葉から蒸発する水蒸気により外気温を

下げるとともに、室内温度の上昇を抑える効果があります。

 周辺環境との調和を図りながら、施設の緑化を進めています。

柴田水処理センターの屋上緑化 天満緑道 水の小径

せせらぎの創出 堀留水処理センターの下水再生水を、若宮大通公

園などのせせらぎ用水として利用し、水の蒸発によ

る冷却効果がある水面積を増やしています。

若宮大通公園のせせらぎ

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雨水タンク

穴あき埋設管

浸透雨水ます

透水性舗装

打ち水の実施 暑い夏を涼しく過ごすための工夫として、省エネ

で、涼を演出する打ち水が見直されています。上下

水道局の各施設で打ち水を実施するとともに、名古

屋打ち水大作戦のイベント会場に下水再生水を提供

するなど、打ち水を応援する取り組みを行っていま

す。

名城水処理センターでの打ち水

雨水流出抑制の推進

水フェスタに設置したドライ型ミスト

ドライ型ミストの紹介 ドライ型ミストは、水道水を細かな霧状にして噴

霧することで、涼しい空間をつくり出す技術です。

水フェスタなどのイベントでミスト発生器を設置し

て、お客さまにその効果を体感していただいていま

す。

 雨水流出抑制とは、雨水を地中に浸み込ま

せることや、雨水を一時的に貯めることをい

います。浸水に対する安全度が向上するほか、

雨水の浸透により地下水の涵養にもつながり、

水循環機能が回復するとともに、土中の水分

の蒸発散作用によるヒートアイランド現

象の緩和などが期待できます。

 本市では、穴あき埋設管や浸透雨水

ますの設置など、市施設において雨水

流出抑制策を実施するとともに、民間

施設への協力要請に努めています。

雨水流出抑制の例

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悪臭防止対策の推進 ビルの地下排水槽(ビルピット)からの悪臭発生を防止するため、予防型臭気対策として、

市域全域を調査範囲としてビルピットの実態調査と臭気調査を行っています。臭気発生源の可

能性が高い施設については、ビルピットの維持管理方法や構造についてビル管理者に改善を働

きかけています。

臭気調査のイメージ図

地下排水槽の臭気調査 地下排水槽から発生する硫化水素ガスの測定

騒音・振動対策の推進 平成 15 年 10 月 1 日から「市民の健康と安全を確保する環境保全に関する条例」(環境保

全条例)が施行されました。この条例に基づき、上下水道局の施設においては、ポンプや発電

機などの設備を屋内に設置し、騒音・振動を抑制するよう努めています。

 また、建設工事における騒音対策として、防音ハウスを設置するなど周辺環境に配慮した工

事を実施しています。

地盤沈下の防止 工業用水道事業は、地下水の代替水源として誕生し、地下水の大量くみ上げによる地盤沈下

の防止を目的として、給水を行っています。名古屋市では、公害防止条例による揚水規制を開

始した昭和 49 年以降、地盤沈下はほぼ沈静化しています。

 今後も、引き続き、地下水の代替水として工業用水の供給を行うとともに、工業用地下水か

ら工業用水道への転換を促進していきます。

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3 温室効果ガス排出量の削減上下水道局温室効果ガス排出削減中長期計画の運用

 平成 20 年の「エネルギーの使用の合理化に関

する法律」(省エネ法)の改正により、特定事業者

は事業全体のエネルギー使用を報告し、エネルギー

使用量に関する中長期計画を提出することが義務

付けられました。また、平成 21 年度の「地球温

暖化対策の推進に関する法律」(温対法)の改正に

より、特定排出者は事業全体の温室効果ガス排出

量を報告することになりました。

 名古屋市は平成 21 年度に「低炭素都市 2050

なごや戦略」を策定し、その中で温室効果ガス排

出量の削減目標を、平成 2 年度比で平成 32 年度

に 25%、2050 年に 8 割としています。また、

平成 22 年度には「名古屋市役所環境行動計画

2020」を策定しています。

 これら法の改正や市の計画を受け、平成 22 年

度に「上下水道局温室効果ガス排出削減中長期計

画」を策定し、温室効果ガス排出量を平成 2 年度

比で平成 27 年度までに 15%、平成 32 年度までに 25%削減することを目標としました。

 本計画は、計画期間における施設の更新計画や運用変更をとりまとめ、項目ごとの積算によ

り削減効果を積み上げたものです。今後、新技術の導入やさらなる施設管理の改善を図り、着

実な目標達成に努めていきます。

太陽光発電設備の設置

柴田水処理センターの太陽光発電設備

再生可能エネルギー

 上下水道施設の上部空間などを利用して、太陽光

発電設備の設置を進めています。平成 23 年度まで

に、鍋屋上野浄水場、北部管路センター、南部管路

センター及び柴田水処理センターの4か所で、合計

311kW の設備を設置しました。

 発電した電力は、事務所の照明など施設内で利用

しています。

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省エネルギー

 高台の配水場からの位置エネルギーを利用して配水する方法により、送・配水に伴う電力使

用量の削減を図っています。

高効率変圧器の採用 変圧器は、電力会社から送られた高い電圧の電力を、利用しやすい低い電圧の電力に変換す

る機器ですが、変換の際に電力損失が発生します。高効率変圧器は、使用材料等の改良により、

この損失を従来より大幅に削減したものです。当局では設備の更新に合わせて高効率変圧器を

導入し、電力損失を減らしています。

送・配水方法の変更

平和公園アクアタワー 鳴海配水塔

超微細気泡散気装置の導入 下水処理は、微生物の力を活用して水をきれい

にしています。その微生物の活性化に必要な空気

を送る散気装置を、超微細な気泡が発生するタイ

プに変更することで、汚水中に酸素が溶けやすく

なり、空気量を抑えることができます。この散気

装置は従来型に比べて消費電力を約 2~3 割削減

することができます。

 宝神水処理センターを始め 10 か所に超微細気

泡散気装置を導入しました。今後、他の水処理セ

ンターにも散気装置の更新にあわせて、順次、導

入を進めていきます。

散気装置から出る微細気泡

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 水道施設において、水需要に応じて送配水量を調

整できるよう、送配水ポンプの回転数を変化させて

います。従来の制御設備は液体抵抗により電動機の

回転数制御を行っており、エネルギーを有効に使用

しているとはいえません。これを送配水に必要な電

力のみをポンプのモーターに供給できるインバータ

制御方式のポンプにすることで、回転数制御の効率

が良くなり、電力使用量を削減することができます。

 犬山取水場を始め、大治浄水場や猪高配水場など 10 か所でインバータによるポンプ回転数

制御が導入されており、今後もインバータ化を進めていきます。

 下水道施設において、水をポンプで揚水する場合の揚水量の調整は、ポンプ出力を 100%稼

動させた状態でバルブ開度を調節する方法が従来から行われてきました。一方、インバータ制

御方式のポンプは、揚水量が少ない時にポンプ回転数を落として流量を調整するため、バルブ

制御と比較して、電力使用量を削減することができます。

 平成 23 年度までに、堀留水処理センターを始め 18 か所に回転数制御式ポンプを導入しま

した。

ヒートポンプの活用 ヒートポンプは熱を移動させるポンプで、下水処理水の水温が、外気温と比較して冬暖かく、

夏冷たいという特性を利用しています。冷暖房用熱源として堀留水処理センターを始め 6 か所

の水処理センターのほか、「ランの館」でも活用されています。

インバータ制御方式のポンプ導入

高効率送風機の採用 下水処理は、微生物の力を活用しますが、その微生物に酸素を送るために送風機を使用しま

す。高効率送風機は従来の送風量制御に比較して 4%程度の電力使用量が削減されることから、

送風に要する電力を削減することができます。守山水処理センターを始め、12 か所で導入さ

れています。

堀留水処理センターのヒートポンプ

電力使用量削減のイメージ

削減効果 約45%

削減効果 約30%

0 20 40 60 80 100 使用電力量割合[%]

抵抗制御方式水

   

下 水 道

インバータ制御方式

バルブ制御方式

インバータ制御方式

ポンプ回転数70%運転時

揚水量70%運転時

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 水道管は地下に埋設されており、漏水をすぐに発見することができません。そのため、地上

から漏水探知器等で調査することにより、漏水の早期発見に努めています。

 電気化学的な腐食が発生しやすい水道管では、腐食傾向を調査・確認するために電位測定を

実施し、漏水の発生防止に努めています。また、軌道下に埋設した管路や、軌道上に添架した

管路は、相関式漏水探知機による漏水調査を年 1 回の頻度で実施しています。

 水道管の漏水を防止することにより、貴重な水を守るとともに、環境負荷の低減につながっ

ています。

直結給水の普及促進 中高層の集合住宅などにおいて、受水槽を経由することなく配水管から直接新鮮な水をお届

けする直結給水の普及を促進しています。直結給水方式は、受水槽方式に比べ、配水管の水圧

を有効に活用できるため、ポンプの電力使用によ

る CO2

排出量を削減できます。

 安全でおいしい水を給水するため給水区域内の

すべての小規模貯水槽水道を点検・指導していま

すが、この点検・指導時や設計相談時、各種イベ

ントなどの機会を利用して、直結給水の普及促進

に努めています。

漏水防止の推進

個別電力量計の設置 浄水場や水処理センターなどでは、施設系統ごと

に電力量計を設置し、電力使用量の詳細な把握を行

い、その結果を電力使用量の抑制方法の検討に利用

しています。

相関式漏水探知器による漏水場所の特定

漏水

漏水音の伝播時間差から漏水箇所を特定

電力量計

受水槽方式 直結給水方式

配水管の水圧を利用して給水する

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 下水汚泥には元来、窒素分が多く含まれるため、焼却時に下水汚泥の中の窒素分が熱分解され、

一酸化二窒素(N2O)を多く排出します。この一酸化二窒素(N

2O)は、CO

2に比較して

310 倍の温室効果(地球温暖化係数)をもっています。

 下水汚泥の焼却時に発生する一酸化二窒素(N2O)は、高温(850℃以上)で焼却すると大

幅に削減できるため、高温で焼却できるよう対策を進めています。

柴田汚泥処理場の高温焼却設備

下水汚泥の高温焼却の推進

下水汚泥処理にともなうN2O排出量などの削減

 下水汚泥の焼却炉で使用する燃料を、従来の重油から都市ガスにすることにより、CO2

の排

出量を削減することができます。施設の改築・更新等に併せ、都市ガスの採用を進めています。

燃料別温室効果ガス排出量の比較

焼却燃料の都市ガスの採用

重油を使用 都市ガスを使用

10073

※ 重油を 100 とした場合の温室効果ガス排出量(熱量当たり)